説明

ロッド接続用締結金具とそのねじ部切断用治具

【課題】突起物のない状態で補強材となるロッド端末部同士の確実な締結状態を確保する。
【解決手段】少なくとも両自由端が重なり合うリング状に形成された固定バンド3と、固定バンド3を貫通し一方にねじ部7が、他方に前記重なり合う自由端領域にねじ頭部19がそれぞれ突出し、ロッド第1締付け部21とロッド第2締付け部23とに分ける固定ねじ5と、突出した前記固定ねじ5のねじ部7と螺合し前記ロッド第1,第2締付け部21,23の開口径を拡縮させる固定ナット9とで構成し、前記固定ねじ5のねじ部7に、締付け完了時に固定ナット9から突出するねじ部分を折って短くするための切断用の長さ調整溝31を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コンクリート製電柱の内部に使用される補強材となるロッドの端末同士を接続するのに適するロッド接続用締結金具とそのねじ部切断用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製電柱の経年変化に対して、例えば、中空に作られた電柱の内部に、例えば、アラミド繊維で作られた補強材となるロッドを所定の間隔で配置した後、内部をモルタル等の充填材で固めることで耐用年数の向上が図られている。
【特許文献1】特開2004−92376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンクリート製電柱の補強は、今まで経年変化が起き易い下半分に対して行なわれてきたが、近年は電柱の全領域にわたって行なわれるようになっている。
【0004】
このために、アラミド繊維で作られた補強材となるロッドは電柱の上から下まで届く長さが要求されるが、あまり長いと搬送作業及び保守、管理の面で望ましくないところから、例えば、現在あるロッドを順次継ぎ足すことで、一本の連続した補強用のロッドとして使用することが考えられる。
【0005】
この場合、各ロッドの端末同士を継ぎ足す時には一般的に締結金具が用いられ、その代表例として、例えば、各ロッドの端末同士を抱持する帯板状のバンド部分に、ボルト、ナット、あるいはビス、ナットからなる締付け部分を設けたものが知られている。締付け部分となるボルト、ナットは、ボルトを弛める方向へ回転させることで、各ロッドの端末部分が挿入しやすいようにバンド部分の開口径を大きくすることができる。
【0006】
一方、ナットに対してボルトを締付ける方へ回転させることでバンド部分による強い締付け力が得られるようになるが、この時、ボルトの先端はナットから突起物として大きく突出する。突起物として大きく突出する現象は、例えば、径の大きいものから径の小さいものまで1つで対応を図ろうとする時に顕著となる。これは、径の小さいものを使用した時にその締付け代が大きくなるためその分、ボルトの先端はナットからの突出量が多くなるためである。
【0007】
この突起物は、例えば、電柱の頭部上端開口からロッドを継ぎ足しながら内部へ垂らしながら挿入していく時、電柱内壁面に引っかかる等、作業が一時中断し挿入作業に時間がかかる等作業能率の面で望ましくない。
【0008】
特に、電柱の内部はコンクリートが打ちっ放しの状態にあるため凹凸が多い上に、補強用のワイヤが一部分に露出する等挿入作業に支障をきたす条件が揃っており、このような条件下でも円滑に挿入作業が行なえるよう締結金具の改善が求められている。
【0009】
そこで、本発明は突起物のない状態で補強材となるロッド端末同士の締結が行なえるロッド接続用締結金具とそのねじ部切断用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的達成するために、本発明にあっては、
少なくとも両自由端が重なり合うリング状に形成された固定バンドと、固定バンドを貫通し一方にねじ部が、他方に前記重なり合う自由端領域にねじ頭部がそれぞれ突出し、ロッド第1締付け部とロッド第2締付け部とに分ける固定ねじと、突出した前記固定ねじのねじ部と螺合し前記ロッド第1、第2締付け部の開口径を拡縮させる固定ナットとからなり、前記固定ねじのねじ部に、少なくとも1つ以上の切断用の長さ調整溝を設けるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、固定ねじを固定ナットから一杯に弛めた状態とすることで第1、第2締付け部の開口径を大きくすることができるため、補強材となるロッド端末部を容易に挿入セットすることができる。次に、固定ナットに対して固定ねじを締付ける方向へ回転させることで固定バンドによって各ロッド端末部同士を確実に締結することができる。
【0012】
この時、固定ねじは固定ナットから大きく突出するようになるが、切断用の長さ調整溝から折るようにして切断することで突起物はなくなり、突起感のない締結状態を得ることができる。この結果、例えば、電柱の頭部上端開口から内部へ各ロッドを継ぎ足しながら挿入する時、円滑に挿入作業を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1には、前記固定ナットを、固定バンドに一体に固着して、部品点数の削減を図り管理工数の向上を図る。
【0014】
第2には、前記切断用の長さ調整溝を、リング状の周溝として、ねじ部に対する加工を容易とする。
【0015】
第3には、ロッド接続用締結金具に用いるねじ部切断用治具を、操作把手部と、その操作把手部から所定の長さ延長された治具筒部と、治具筒部に設けられ筒部先端が挿入口となるねじ部挿入孔とで構成し、ねじ部挿入孔をねじ部の長さ調整溝まで挿入し、操作把手部を上下、あるいは左右の何れか一方へ回動させることによって容易に折ることができるようにする。
【0016】
〔実施例〕
以下、図1乃至図7に示す実施形態について具体的に説明する。
【0017】
図1は本発明にかかる締結前のロッド接続用締結金具の概要切断正面図、図2は分解説明図をそれぞれ示している。
【0018】
ロッド接続用締結金具1は、リング状となる固定バンド3と固定バンド3を貫通した固定ねじ5と固定ねじ5のねじ部7と螺合し合う固定ナット9からなっている。
【0019】
固定バンド3は、帯板状の形状でばね性状を備え、そのほぼ中央部位にはナット固定凹部11が、両自由端には長孔13、13がそれぞれ設けられ、両自由端が重ね合わさることでリング状の長円が作られるようになっている。
【0020】
固定ナット9は、内側がねじ孔15となっていて前記ナット固定凹部11に一体に固着され、固定バンド3と一体となることで管理する部品点数は図2に示すように固定バンド3と固定ねじ5の2点で済むようになっている。固定ナット9のねじ孔15は前記ナット固定凹部11に設けられた開口孔17と対向し、ねじ孔15、開口孔17と両自由端に設けられた長孔13とは同一軸線X上に位置する配置構造となっている。
【0021】
固定ねじ5は、ねじ頭部19と前記したねじ部7とからなり、ねじ部7は固定バンド3の両自由端に設けられた長孔13側から挿入され、固定ナット9のねじ孔15と螺合している。これにより、固定バンド3を貫通する前記固定ねじ5によって一方にはロッド第1締付け部21が、他方にロッド第2締付け部23がそれぞれ作られるようになり、ロッド第1、第2締付け部21、23は、固定ねじ5を右回転又は左回転させることで開口径の拡縮が可能となり、強く締付けたり、弛めたりできるようになっている。
【0022】
固定ねじ5のねじ頭部19は、図1仮想線で示すようにレンチ等の工具27によって固定ねじ5を回転させるための六角穴29を有している。この場合、プラス又はマイナスドライバ等の工具によって回転させるビスタイプの場合にはねじ頭部19にはプラス又はマイナス溝が設けられるようになる。
【0023】
固定ねじ5のねじ部7には少なくとも1つ以上の切断用の長さ調整溝31が設けられ、その長さ調整溝31はリング状の周溝33となっている。リング状の周溝33は、例えば、回転自在に支持した固定ねじ5に対してそのねじ部7に切削工具となるバイトをあてることで簡単に作ることが可能となっており、周溝33の溝径はねじ部7より細い径となるため、例えば、図6に示すようにねじ部切断用治具35を用いることで、その部位から折れるようになっている。なお、周溝33の溝形状としては断面V字状、断面U字状等実施に対応した形状としてよい。
【0024】
一方、ねじ部切断用治具35は、操作把手部37とその操作把手部37の中央部位から延長された治具筒部39とからなりその治具筒部39にはねじ部挿入孔41が設けられている。
【0025】
ねじ部挿入孔41は、孔周面が平滑面となっていて筒部先端は前記ねじ部挿入孔41の挿入口41aとなっている。挿入口41aから操作把手部37までとなる治具筒部39の長さLは、ねじ部7を折る時のモーメントMとして作用するところから長い方が良いが、あまり長いと扱いやすさ操作性等が損なわれるところから、それらを考慮して設定されることが望ましい。
【0026】
このように構成されたロッド接続用締結金具1により、例えば、アラミド繊維で作られた補強材となるロッド43、43の各端末部同士を締結するには、まず、図1に示すように固定ねじ5を一杯に弛めてロッド第1、第2締付け部21、23の開口径を大きくしておき、ロッド43の各端末部をロッド第1、第2締付け部21、23に挿入する。この時、大きい開口径によって迅速に挿入できる。挿入完了後、固定ねじ5を締付ける方向へ回転させることで、図4に示すように固定バンド3によって各端末部43を確実に締付けることができる。以下、例えば、図7に示すように3箇所にわたって締付けることで一体に確実に接続することが可能となる。
【0027】
この時、固定ねじ5のねじ部7は図4に示すように固定ナット9から大きく突出するようになるから、突出したねじ部7に仮想線で示すように、ねじ部切断用治具35のねじ部挿入口41を挿入した後、上下、あるいは左右の何れか一方へ回動させれば、周溝33から折れて、図5に示すように突起物のない締付け状態を得ることができる。この結果、電柱45の頭部上端開口からロッド43、43を継ぎ足しながら内部へ挿入する時、電柱内部の凹凸と引っ掛かることなく円滑に挿入作業を完了することができる。尚、本実施形態ではロッドの先端を長さ方向に接続する場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなくロッドの強度を増すために平行に並べた複数のロッドをそれぞれ接続しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる接続用締結金具の概要切断正面図。
【図2】ロッド接続用締結金具の分解説明図。
【図3】図1の概要側面図。
【図4】固定ナットから固定ねじが突出した締付け完了後のロッド接続用締結金具の説明図。
【図5】固定ナットから突出したねじ部を切断し突起物のないロッド接続用締結金具の説明図。
【図6】ねじ部切断用治具の一部切断説明図。
【図7】ロッドの各端末同士を複数のロッド接続用締結金具で締結した状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0029】
3 固定バンド
5 固定ねじ
7 ねじ部
9 固定ナット
19 ねじ頭部
21 ロッド第1締付け部
23 ロッド第2締付け部
31 切断用の長さ調整溝
33 周溝
35 ねじ部切断用治具
37 操作把手部
39 治具筒部
41 ねじ部挿入孔
41a 挿入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも両自由端が重なり合うリング状に形成された固定バンドと、固定バンドを貫通し一方にねじ部が、他方に前記重なり合う自由端領域にねじ頭部がそれぞれ突出し、ロッド第1締付け部とロッド第2締付け部とに分ける固定ねじと、突出した前記固定ねじのねじ部と螺合し前記ロッド第1,第2締付け部の開口径を拡縮させる固定ナットとからなり、前記固定ねじのねじ部に、少なくとも1つ以上の切断用の長さ調整溝を設けるようにしたことを特徴とするロッド接続用締結金具。
【請求項2】
前記固定ナットは、固定バンドに一体に固着されていることを特徴とする請求項1記載のロッド接続用締結金具。
【請求項3】
前記切断用の長さ調整溝は、リング状の周溝となっていることを特徴とする請求項1記載のロッド接続用締結金具。
【請求項4】
請求項1記載のロッド接続用締結金具に用いられるねじ部切断用治具であって、操作把手部と、その操作把手部から所定の長さ延長された治具筒部と、治具筒部に設けられ筒部先端が挿入口となるねじ部挿入孔とからなることを特徴とするねじ部切断用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−153050(P2006−153050A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340835(P2004−340835)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504239984)
【Fターム(参考)】