説明

ロボットのコントローラ

【課題】電源からロボット用電源とコントローラ用電源とを分岐して供給する構成のロボットシステムで、大電流を流すサーキットプロテクタを設けない構成とする。
【解決手段】交流電源ACからロボット本体1側にはコンタクタ5を介して給電し、コントローラ20側には直接整流回路10に給電している。コントローラ20は、コントローラCPU9、スイッチングIC16、遅延回路37、電源スイッチ20aなどから構成される。電源スイッチ20aがオンされると、コントローラCPU9が給電されてコンタクタ5をオンさせ、ロボット本体1を駆動制御する。電源スイッチ20aがオフされると、コントローラCPU9はロボット本体1の停止動作を行い、コンタクタ5をオフさせ、遅延時間をおいてトランジスタ35がオフされると、自身の給電が停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに対して電源からロボット用電力およびコントローラ用電源とに分岐して給電する構成を有するロボットのコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の生産ラインなどで用いられるロボットシステムは、ロボット本体とこれを駆動制御するコントローラが設けられている。この場合、同じ電源からロボット用電源とコントローラ用電源を生成することが一般的である。また、生産ラインの小型化の推進に伴い、ロボットシステムに対してロボット本体およびコントローラの小型化が要求されている。
【0003】
図6は従来のロボット本体1の駆動制御を行うためのコントローラ2を含めた電気的構成を示すものである。三相の交流電源ACから電流ヒューズ3およびサーキットプロテクタ4を介してコンタクタ5に給電されるもので、整流回路6および平滑回路7を介して変換された直流電源が駆動回路8に供給される。駆動回路8は、スイッチング素子をブリッジ接続してなるインバータ主回路を含んで構成されるもので、コントローラCPU9から駆動制御信号が与えられる。
【0004】
コントローラ2は、整流回路10、平滑回路11を備え、交流電源ACから電流ヒューズ3を介して給電される。平滑回路11からの直流出力は、降圧電源回路12においてコントローラCPU9などに必要な直流電圧に変換される。降圧電源回路12は、スイッチング素子13が直列に接続された一次コイルと、必要な電圧を発生するための二次コイルを有するトランス14と、直流に変換するための直流電源回路15から構成されている。スイッチング素子13は、スイッチングIC16からオンオフの駆動信号が与えられる。
【0005】
スイッチングIC16は、平滑回路11から与えられる直流出力を電源として抵抗分圧回路から給電され、スイッチング素子13をオンオフ制御することによりトランス14を介して直流電源回路15側に降圧した交流入力を発生させる。直流電源回路15が所定の直流電圧を出力すると、コントローラCPU9およびスイッチングIC16は正規の直流電源が与えられる。
【0006】
電源用CPU17は、三相の交流電源ACの2本の電源ラインに接続された停電検知用の判定回路18から停電検知信号を受信すると、コントローラCPU9に電源オフの処置信号を与えてロボット本体1に所定の停止動作を行わせるものである。
【0007】
上記構成においては、ロボット本体1の電源のオンオフはサーキットプロテクタ4のオンオフにより行う構成であるが、ロボット駆動系の電源は200V以上の高電圧が印加されるラインなので、サーキットプロテクタ4は大電流を流すための構成が必要であった。このため、サーキットプロテクタ4を設けるためのコストが高いものとなっていた。
【0008】
また、上記構成のようにサーキットプロテクタ4を用いて直接的に電源の通断電を行う構成のものに対して、例えば特許文献1には、半導体スイッチング素子を電気的に通断電の制御を行う構成のものが開示されている。これにより、電気的な接触に関する物理的な構成は不要となるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−196908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した従来構成のものでは、通断電の制御に半導体スイッチング素子を用いる場合に、依然として大電流を遮断する必要がある点では同様のコスト高を招くものであった。
【0011】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、ロボット用電源および制御用電源を同一の電源から分電する構成のロボット装置において、ロボット本体側に対する電源のオンオフに際して必要となる構成を大電流を考慮する必要のない安価な構成で実現できるようにしたロボットのコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明によれば、電源入力は、分岐回路を介してロボット用電力とコントローラ用電力とに分岐して供給される構成であり、ロボット用電力はコンタクタがオンされるとロボット本体側に給電されるものであり、コントローラ用電力はコンバータ回路に給電されている。
【0013】
この状態で電源スイッチがオン操作されると、スイッチング制御回路遮断回路がオンされ、スイッチング制御回路に動作電源が供給されると共に、CPUに対してオン制御信号が与えられる。スイッチング制御回路により、コンバータ回路のスイッチング素子がオンオフ駆動され、CPUに制御電源が供給され、自己の動作電源がコンバータ回路から給電されるように切り替える。CPUは、コンタクタをオンさせてロボット本体にロボット用電力を供給すると共に動作制御を行うようになる。
【0014】
また、電源スイッチがオフ操作されると、CPUに対してオフ制御信号が与えられ、所定の遅延時間が経過した後にスイッチング制御回路遮断回路がオフされてスイッチング制御回路の動作電源が停止される。CPUは、オフ制御信号が与えられると直ちに動作してロボット本体に対して停止制御を行うと共にその終了後にコンタクタをオフさせる。スイッチング制御回路により、スイッチング素子のオンオフ駆動が停止されてCPUへの給電が停止される。
【0015】
これにより、コントローラ用電源の通電経路に設けた電源スイッチをオンオフ操作することでコンタクタをオンオフ制御することができ、これによってロボット本体への電源供給のオンオフ制御をおこなうことができ、電源のオンオフに際して必要となる構成を大電流を考慮する必要のない安価な構成として実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す給電系統の電気的構成図
【図2】ロボットシステムの構成を示す斜視図
【図3】コンデンサの端子電圧とトランジスタのオンオフの関係を示す図
【図4】本発明の第2の実施形態を示す降圧電源回路の電気的構成図
【図5】本発明の第3の実施形態を示す図1相当図
【図6】従来例を示す図1相当図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1〜図3を参照して説明する。なお、従来相当の図6で示した構成と同様の構成については同一符号を付すと共に説明を簡略化している。
【0018】
図2は、一般的な産業用ロボットのシステム構成を示している。この図2に示すロボットシステムは、ロボット本体1と、このロボット本体1を制御するコントローラ20と、このコントローラ20に接続されたティーチングペンダント21および例えば液晶表示器を主体とする表示装置22とから構成されている。コントローラ20には、物理スイッチに相当する電源スイッチ20aが設けられている。ティーチングペンダント21は、ロボットアームの動作点を教示する機能の外、各種データを入力する入力手段およびロボット本体1を遠隔操作するための操作手段として機能するもので、各種の操作スイッチ21aおよび表示部21bを備えている。
【0019】
ロボット本体1は多関節型として構成されたもので、ベース23と、このベース23に水平方向に旋回可能に支持されたショルダ部24と、このショルダ部24に上下方向に旋回可能に支持された下アーム25と、この下アーム25に上下方向に旋回可能に且つ回転(捻り動作)可能に支持された上アーム26と、この上アーム26に上下方向に旋回可能に支持された手首27とから構成されている。手首27は、先端部に回転(捻り動作)可能なフランジ28を備えている。上記ショルダ部24、下アーム25、上アーム26、手首27およびフランジ28はロボットアームを構成するもので、アーム先端の手先部であるフランジ28には、カメラ29が取り付けられている。
【0020】
次に、図1を参照して上記構成のロボットシステムにおける電源系統を主体としたコントローラ20の電気的構成について説明する。本実施形態においては、三相の交流電源AC(たとえば200Vあるいは250V)から電流ヒューズ3を介して直接コンタクタ(電磁接触器)5に給電される構成となっており、サーキットプロテクタを設けない構成である。コンタクタ5は整流回路6および平滑回路7に接続され、三相の交流電源ACは直流電源に変換されて駆動回路8に供給される。駆動回路8は、FET,IGBTあるいはバイポーラトランジスタなどのスイッチング素子をブリッジ接続してなるインバータ主回路を主体として構成されるもので、コントローラCPU9から駆動制御信号が与えられる。コンタクタ5は、コントローラCPU9からオンオフの制御信号が与えられてオン状態とオフ状態が切り替えられる。
【0021】
コントローラ20は、交流電源ACから電流ヒューズ3を介してロボット本体1への給電経路から分岐して(分岐回路に相当)給電され、整流回路10、平滑コンデンサからなる平滑回路11が接続されている。平滑回路11からの直流出力は降圧電源回路12において、コントローラCPU9や他の制御回路に必要な直流電圧に変換される。降圧電源回路12は、スイッチング素子13と、このスイッチング素子13を直列に接続した一次コイルおよび降圧用の二次コイルを有するトランス14と、直流に変換するための直流電源回路15から構成されている。スイッチング素子13は、コンバータ遮断回路としても機能するように設けられたもので、FETやIGBTあるいはバイポーラトランジスタからなり、トランス14による降圧変換をするためのオンオフ駆動信号がスイッチングIC16から与えられる。
【0022】
スイッチング制御回路31は、平滑回路11の正極端子から逆流阻止用のダイオード32を介して抵抗33a、33bの直列回路からなる抵抗分圧回路33が接続されており、抵抗33bの端子電圧が電源入力として与えられる構成である。抵抗33bにはコンデンサ34が並列に接続されており、この抵抗33bに発生する端子電圧がpnp型のトランジスタ35を介して与えられる。また、トランジスタ35は、スイッチング制御回路遮断回路として機能するもので、降圧電源回路12の直流電源回路15の所定の直流電圧を出力する端子からも逆流阻止用のダイオード36を介して給電される。また、トランジスタ35は、遅延回路37から抵抗38を介してベース端子にオンオフの信号が与えられる。
【0023】
遅延回路37は、時定数回路39とコンパレータ40とから構成される。時定数回路39は、抵抗39a、39bおよびコンデンサ39cからなり、抵抗39aとコンデンサ39cにより積分回路を構成し、抵抗39bとコンデンサ39cは放電回路を構成している。コンパレータ40は、基準電圧が抵抗41a、41bの分圧回路41から与えられる構成である。
【0024】
電源スイッチ20aは、操作ノブ42と、第1接点43aおよび第2接点43bを有する構成である。操作ノブ42のオンオフ操作に応じて第1接点43a、第2接点43bが同時にオンオフ動作する。第1接点43aは、一端側が抵抗分圧回路33の抵抗33a、33bの共通接続点に接続され、他端側が時定数回路39の抵抗39aに接続されている。第2接点43bは、一端側が直流電源回路15の出力端子DCに接続され、他端側がコントローラCPU9の制御入力端子に接続されている。
【0025】
次に上記構成の作用について図3も参照しながら説明する。
電源スイッチ20aがオフ状態にあるときには、コンタクタ5がオフ状態にあることから、交流電源ACからの給電はロボット本体1側についてはコンタクタ5で遮断されている。また、コントローラ20側については、交流電源ACからの給電が電流ヒューズ3を介して整流回路10に与えられている。平滑回路11の端子間には交流入力を整流平滑した直流出力が発生している。これにより、コントローラ20側には、ダイオード32を介して抵抗分圧回路33に分圧出力を待機電源として発生している。なお、このときまだトランジスタ35はオフ状態であるのでスイッチングIC16は動作していない。また、降圧電源回路12もスイッチング素子13がオフ状態であるので直流電源回路15の出力端子には直流出力が発生していない。
【0026】
上述の状態において、まず、電源を投入するために電源スイッチ20aの操作ノブ42がオン操作されると、第1接点43a、第2接点43bが共にオン状態に移行する。この場合、第1接点43aがオンすると、平滑回路11の端子間に発生している直流電圧が、ダイオード32を介して抵抗分圧回路33に与えられ、所定の直流電圧に分圧された出力として遅延回路37の時定数回路39側に与えられる。
【0027】
図3(a)、(b)は、電源スイッチ20aのオンオフ操作に伴う時定数回路39のコンデンサ39cの端子電圧Vin(コンパレータ40の入力電圧)とトランジスタ35の動作状態の推移を示している。遅延回路37においては、電源スイッチ20aのオン操作に伴って抵抗39aを介してコンデンサ39cに充電を開始し、時間Td1が経過してコンデンサ39cの端子電圧Vinが所定レベルに達すると、コンパレータ40の入力レベルが抵抗41bにより与えられる基準電圧を超えるので、出力がハイレベルからロウレベルに反転する。
【0028】
これにより、トランジスタ35はベース電位が下がってオンし(図3(b)参照)、スイッチングIC16への給電経路が導通する。スイッチングIC16は、平滑回路11の端子電圧がダイオード32、抵抗33aトランジスタ35を介して供給されるので、所定のスイッチング動作を開始する。これにより、降圧電源回路12のトランス14の一次コイルに設けられたスイッチング素子13が所定周波数でオンオフ動作され、二次コイル側に巻き数比に対応した電圧の変換出力を発生させる。直流電源回路15はトランス14の二次コイル側から入力される交流入力を所定の直流電圧に変換して各出力端子に供給するようになる。これによってスイッチングIC16は、直流電源回路15の出力側からダイオード36を介して給電状態が保持されるようになる。
【0029】
一方、電源スイッチ20aの第2接点43bがオンすると、直流電源回路15により出力されている直流電圧DCの電圧がオン制御信号として第2接点43bを介してコントローラCPU9の制御入力端子に入力される。これにより、コントローラCPU9は、ロボット本体1に対する制御動作を開始する。まず、コンタクタ5にオン信号を出力してコンタクタ5をオン状態に移行させ、整流回路6および平滑コンデンサ7によりロボット用電源として直流電源を生成する。また、コントローラCPU9は、駆動回路8にPWM信号を与えてロボット本体1の各部に設けられたモータを駆動制御する。この動作の制御は、別途動作を制御するためのプログラムに従って行われる。
【0030】
次に、ロボット本体1の運転を停止すべく、電源スイッチ20aの操作ノブ42がオフ操作されると、第1接点43a、第2接点43bが共にオフ状態に移行する。この場合、第2接点43bがオフすることによりコントローラCPU9はオン制御信号が停止され(オフ制御信号に相当)、ロボット本体1に対する動作を停止動作させるように制御する。この場合、停止動作はロボット本体1の動作状態を下アーム25、上アーム26を所定の安全な位置まで移動させる動作である。この後、コントローラCPU9は、コンタクタ5にオフ信号を与えてオフさせ、ロボット用電源の供給を停止する。
【0031】
一方、電源スイッチ20aの第1接点43aがオフすることで、遅延回路37においては、時定数回路39の充電動作が停止されるので、コンデンサ39cの電荷は抵抗39bを介して放電される。これに伴い、コンデンサ39cの端子電圧Vinは図3(a)に示したように低下してゆき、遅延時間Td2が経過すると、コンパレータ40の出力がハイレベルに移行する。これにより、トランジスタ35はオフし、スイッチングIC16は給電が停止してスイッチング素子13のスイッチング動作を停止する。これによって降圧電源回路12も動作が停止されて直流電源出力がゼロになる。また、これによってコントローラCPU9の給電も停止するので制御動作を停止する。
【0032】
なお、上記の通常の電源スイッチ20aによるオンオフ動作とは別に、停電などの不測の事態による状況においては、交流電源ACの給電が停止したことを電源用CPU17により判定する。三相の電源ラインの2本に接続された停電検知用の判定回路18が停電により端子間電圧が所定レベル以下になったことをもって停電検知信号を電源用CPU17に与える。すると、電源用CPU17は、コントローラCPU21に電源オフの処置信号を与えてロボット1に上記したような所定の停止動作を行わせる。
【0033】
さらに、ロボット本体1側へのロボット用電源あるいはコントローラ用電源のいずれかに過電流が流れた場合には、過電流により電流ヒューズ3の温度が上昇し、一定の条件以上に温度が上昇すると溶断して上記した停電状態を呈するようになる。したがって、この場合においても、同じようにして停止動作が行われる。
【0034】
このような本実施形態によれば、ロボット本体1へのロボット用電源のオンオフ操作を電源スイッチ20aを設けることで、従来設ける必要があったサーキットプロテクタなどの大電流を通電するための大型でコストのかかる構成を設ける必要がなくなり、小型化且つ低コスト化を図れる構成としながら、停止時のロボット本体1の停止動作を確実に実施する制御動作を確保したものとすることができる。
【0035】
また、ロボットシステムの構成によっては、サーキットプロテクタに過電流保護の機能が設けられている構成の場合には、本実施形態の構成におけるようにサーキットプロテクタを設けないため過電流保護の機能も無くなるが、電流ヒューズ3を設けることでその機能を確保することができるものである。
【0036】
(第2の実施形態)
図4は本発明の第2の実施形態を示すもので、第1の実施形態と異なるところは、コンバータ回路である降圧電源回路12のトランス14に代えて降圧チョッパ回路44を設ける構成としたところである。降圧チョッパ回路44は、平滑回路11側の入力端子にスイッチング素子としてのトランジスタ45が設けられ、コイル46を介して出力端子に接続されている。トランジスタ45のエミッタと平滑回路11の負極端子との間にはダイオード47が設けられると共に、出力端子間にはコンデンサ48が接続されている。
【0037】
トランジスタ45は、スイッチングIC16によりオンオフ信号が与えられ、これによってコイル46とダイオード47の動作によりコンデンサ48に降圧された所定の直流電圧を発生させるものである。出力端子はさらに所定の電圧に調整すべく直流電源回路を介して直流電源DCなどを生成する構成である。
このような構成によっても簡単かつ安価な構成で第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
(第3の実施形態)
図5は本発明の第3の実施形態を示すもので、以下、第1の実施形態と異なる部分について説明する。
スイッチング制御回路31に代わるスイッチング制御回路49は、トランジスタ35を省いた構成としている。スイッチングIC16は、トランジスタを介さずに分圧回路33の直流電圧が直接供給される構成である。また、遅延回路37を構成から省き、物理スイッチとしての電源スイッチ20aを電流ヒューズ3とダイオードブリッジからなる整流回路10との間の給電経路に設ける構成とした。さらに、電源スイッチ20aから整流回路10に至る給電経路に給電監視手段として交流電圧検出装置50を設け、コントローラCPU9により、交流電圧検出装置50の検出出力を入力して電源スイッチ20aのオンオフ状態を判断する構成とした。電源用CPU17および判定回路18の構成も省いている。これは、停電検出用に設けた電源用CPU17の機能は、この実施形態においてはコントローラCPU9が兼用することができるからである。
【0039】
次に、上記構成の作用について説明する。
電源スイッチ20aがオフ状態にあるときには、コンタクタ5がオフ状態にあることから、交流電源ACからの給電はロボット本体1側についてはコンタクタ5で遮断されている。また、コントローラ20側についても電源スイッチ20aがオフであることから電源が遮断されている。
【0040】
この状態において、ロボット本体1の運転を開始すべく、電源スイッチ20aの操作ノブ42がオン操作されると、交流電源ACから電流ヒューズ3を介して整流回路10に給電され、平滑コンデンサからなる平滑回路11の端子間に交流入力を整流平滑して変換された直流出力が発生する。これにより、コントローラ20側には、ダイオード32を介して抵抗分圧回路33に分圧出力が発生する。スイッチングIC16はこの分圧出力が供給されると、所定のスイッチング動作を開始する。これにより、降圧電源回路12のトランス14の一次コイルに設けられたスイッチング素子13が所定周波数でオンオフ動作され、二次コイル側に巻き数比に対応した電圧の変換出力を発生させる。
【0041】
直流電源回路15はトランス14の二次コイル側から入力される交流入力を所定の直流電圧に変換して各出力端子に供給するようになる。これによってスイッチングIC16は、直流電源回路15の出力側からダイオード36を介して給電状態が保持されるようになる。また、コントローラCPU9は、直流電源回路15により出力されている直流電圧DCが供給され、これにより、コントローラCPU9は、ロボット本体1に対する制御動作を開始する。
【0042】
コントローラCPU9は、まず、コンタクタ5にオン信号を出力してコンタクタ5をオン状態に移行させ、整流回路6および平滑回路7によりロボット用電源として直流電源を生成する。また、コントローラCPU9は、駆動回路8にPWM信号を与えてロボット本体1の各部に設けられたモータを駆動制御する。この動作の制御は、別途動作を制御するためのプログラムに従って行われる。
【0043】
さらに、コントローラCPU9は、交流電圧検出装置50の検出電圧の信号を入力しており、交流電源ACからの端子電圧が発生していることをもって電源スイッチ20aがオン状態すなわち交流電源ACの給電状態にあることを判断する。そして、電源スイッチ20aがオン状態にある場合は、コントローラCPU9は上記したロボット本体1の制御動作を継続する。
【0044】
次に、ロボット本体1の運転を停止すべく、電源スイッチ20aの操作ノブ42がオフ操作されると、交流電圧検出装置50からの検出電圧の信号がゼロレベルになることから、コントローラCPU9は、電源スイッチ20aがオフ状態となって交流電源ACの給電が停止したことを判断する。なお、この状態で、コントローラCPU9は、平滑回路11つまり平滑コンデンサの充電電荷が所定電圧を保持している期間中は制御動作が可能であるので、この期間中にロボット本体1に対する動作を停止動作させるように制御する。
【0045】
この場合、停止動作は、コントローラCPU9により、ロボット本体1の動作状態を下アーム25、上アーム26を所定の安全な位置まで移動させる動作と、その後、コンタクタ5にオフ信号を与えてオフさせ、ロボット用電源の供給を停止する動作である。この後は、平滑回路11を構成する平滑コンデンサの充電電荷による給電も不足するため、コントローラCPU9自身への給電も停止し、コントローラ20全体の動作が停止する。
【0046】
なお、前述した通常の電源スイッチ20aによるオンオフ動作とは別に、停電などの不測の事態による状況においては、電源スイッチ20aがオフしていない場合でも、交流電圧検出装置50による検出電圧が電源スイッチ20aのオフ動作時と同じ状態を呈するので、コントローラCPU9により、ロボット本体1に対する上記と同様の停止動作を行うことになる。この場合、前述同様に、ロボット本体1を停止動作させるまでの間の動作電源が平滑回路7を構成する平滑コンデンサの充電電荷により賄うことができることが条件となる。
【0047】
このような第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、ロボット本体1へのロボット用電源のオンオフ操作を電源スイッチ20aを設けることで、従来設ける必要があったサーキットプロテクタなどの大電流を通電するための大型でコストのかかる構成を設ける必要がなくなり、小型化且つ低コスト化を図れる構成としながら、停止時のロボット本体1の停止動作を確実に実施する制御動作を確保したものとすることができる。
【0048】
また、コントローラ20の構成中の平滑コンデンサ11の充電電荷を利用して、電源スイッチ20aのオフ動作後のコントローラCPU9の動作電源を賄うので、電源オフ時にはコントローラ20の待機電力を不要とすることができると共に、遅延回路37や電源用CPU17の機能も兼用することができるので、回路構成をさらに簡単化することができる。
【0049】
なお、上記構成においては、給電監視手段としての交流電圧検出装置50を、交流電源ACが給電停止を検出することをもってコントローラCPU9が停止制御を行うこととしているが、これに限らず、たとえば、交流電源ACが所定の給電電圧から変動する状態を検出電圧によって監視し、電圧の変動状況に応じてロボット本体1動作制御に支障を来すことのないように予防的に動作制御することにも用いることができる。
【0050】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張できる。
【0051】
コンバータ回路12のスイッチング素子13をコンバータ遮断回路として兼用する構成としているが、別々の構成として設けることもできる。
電流ヒューズ3は、必要に応じて設ければよい。たとえば、電源系統の設備として既に備わっている場合には、設ける必要はない。
【0052】
コントローラ20への電源経路にダイオード32を介して常時給電する構成としているが、別途スイッチを設けて給電する構成としても良い。
遅延回路37の遅延時間Td2は適宜の時間に設定することができる。これは、ロボット本体1を安全な状態に停止制御するために必要な時間を確保できる程度であれば良い。
【0053】
電圧検出手段は、交流電圧検出装置50以外に、交流電源が供給されているか否かを判断することができるものであれば利用することができる。たとえばゼロクロス信号が定期的に発生することを検出する回路を設けることで交流電源ACの電圧が供給されていること判定することもできる。
【符号の説明】
【0054】
図面中、1はロボット本体、3は電流ヒューズ、5はコンタクタ、9はコントローラCPU(CPU)、12は降圧電源回路(コンバータ回路)、13はスイッチング素子(コンバータ遮断回路)、16はスイッチングIC(スイッチング制御回路)、20はコントローラ、20aは電源スイッチ(物理スイッチ)、31、49はスイッチング制御回路、35はトランジスタ(スイッチング素子、スイッチング制御回路遮断回路)、37は遅延回路、43aは第1接点、43bは第2接点、50は交流電圧検出装置(電圧検出手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源入力をロボット用電力とコントローラ用電力とに分岐して供給する分岐回路と、
前記分岐回路からロボット本体への給電経路に設けられたコンタクタと、
前記ロボット本体の動作制御を行うためのCPU(central processing unit)と、
前記コントローラ用電力をスイッチング素子のオンオフ制御により制御用電源を生成して前記CPUへ供給するコンバータ回路と、
前記コントローラ用電力を動作電源とし、前記コンバータ回路に設けられた前記スイッチング素子のオンオフ制御をするスイッチング制御回路と、
前記スイッチング制御回路の動作電源の供給経路に設けられたスイッチング制御回路遮断回路と、
前記スイッチング制御回路への動作電源の給電および断電を切り替え制御すると共に前記CPUへのオン制御信号およびオフ制御信号の付与を切り替え制御する電源スイッチとを備え、
前記電源スイッチがオン操作されると、前記スイッチング制御回路遮断回路をオンさせて前記スイッチング制御回路に動作電源を供給させると共に前記CPUに対してオン制御信号を与え、前記スイッチング制御回路は、前記コンバータ回路の前記スイッチング素子をオンオフ駆動して前記CPUに前記制御電源を供給すると共に自己の動作電源を前記コンバータ回路から給電するように切替え、前記CPUは、前記コンタクタをオンさせて前記ロボット本体に前記ロボット用電力を供給すると共に動作制御を行い、
前記電源スイッチがオフ操作されると、前記CPUにオフ制御信号を与えると共に前記スイッチング制御回路遮断回路を所定の遅延時間後にオフさせて前記スイッチング制御回路の動作電源を停止させ、前記CPUは、前記オフ制御信号が与えられると直ちに動作して前記ロボット本体に対して停止制御を行うと共にその終了後に前記コンタクタをオフさせ、前記スイッチング制御回路は、前記スイッチング素子のオンオフ駆動を停止して前記CPUへの給電を停止させることを特徴とするロボットのコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−223881(P2012−223881A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−177156(P2012−177156)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【分割の表示】特願2009−37870(P2009−37870)の分割
【原出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】