説明

ロボットの接触力検出装置

【課題】 簡単かつ信頼性の高い構成で、アームの任意の箇所に加えられた接触力を検出可能な、ロボットアームの接触力検出装置を提供する。
【解決手段】 ロボット本体1においては、ロボットアーム101の根元部のロボットベース102に力検出器103を設けて、ロボットアーム101に加わる力を検出する。制御装置2においては、接触力算出部250を設けて、ロボットアーム101に加わる力からロボットアーム101自身の動作による内力を差し引くことにより、ロボットアーム101に作用する接触力を算出し、また関節回避量算出部220を設けることにより、前記接触力を用いて接触力回避動作を算出し、さらに動作制御部230およびモータ制御部240を設けることにより、ロボットアーム101の接触力回避動作を実行させる。これにより、ロボット本体1の安全な動作を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボットの接触力検出装置に関し、特にロボットのアームが周囲の人や物と接触する可能性がある作業を行う場合に、このロボットのアームに対する接触力を検出し、この接触力を回避する動作をロボットに行わせて、安全なロボットの動作を行わせるための、ロボットの接触力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアームに対する外部からの接触力を検出するための従来の装置としては、ロボットアームの表面に感圧センサー等の接触センサーを貼り付けて検出するものや、ロボットアームの関節部にトルクセンサーを設置して検出するものや、ロボットアームの表面の接触センサーとロボットアームの関節部のトルクセンサーとの両者より検出するものなどがあった(例えば、特許文献1参照)。図3は、特許文献1に記載された従来のロボットアームの接触力検出装置を示すものである。
【0003】
図3において、301はロボットアーム、302はロボットアーム301の手首に設置された力センサー、303は各関節軸の根元に設置された磁歪型等のトルクセンサー、304はロボットアーム301の表面に設置された表面感圧センサーである。そして、これらのセンサー302〜304によりロボットアーム301に加えられる接触力を検出し、その検出情報によりロボットアーム301のインピーダンス制御を実施している。
【特許文献1】特許第3383614号公報(第5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロボットアーム301の表面に貼り付ける構成の接触式の感圧センサー304では、センサー304からの配線が多く、信号処理が複雑であり、かつロボットアーム301の可動部に配線を設置する必要があるので断線・ノイズ等の信頼性確保の点でも課題を有していた。さらに、関節部等の可動部には接触式のセンサー304自体が貼り付けられないという課題も有していた。
【0005】
また、関節部に設けた力センサー302やトルクセンサー303の場合も、ロボットアーム301の可動部に配線を設置する必要があるので、接触式のセンサー304と同様に、断線・ノイズ等の信頼性確保の点で課題を有していた。さらに、設置し易い手首部等にのみセンサー302、303を設置しただけでは、アーム301の全体における接触力を検出できないという課題も有していた。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、簡単で信頼性の高い構成で、アームの任意の箇所に加えられた接触力を検出可能なロボットアームの接触力検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のロボットの接触力検出装置は、外部からロボットアームに対して加えられる接触力を検出し、その外部からの接触力を回避するようにロボットアームを動作させるロボットシステムにおいて、外部からの接触力を検出する力検出器を、ロボットアーム根元のロボットベース部に設置したものである。
【0008】
本発明によれば、ロボットアーム自身の動作により発生した外力相当分の力を推定する手段と、力検出器で検出される外力全体から、前記推定されたロボットアーム自身の動作により発生した外力相当分の力を差し引くことにより、ロボットアームに対する接触力を検出する手段とを具備することが好適である。
【0009】
したがって本発明によれば、アームの任意の位置に加えられた接触力の大きさと方向の概略値を簡単な構成で検出することができ、この接触力を回避するような動作指令をロボットに与えて、ロボットのアームを動作させることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明のロボットの接触力検出装置によれば、複雑なセンサー配置や配線が不要な簡単な構成で、アームの任意の箇所に加えられた接触力を、接触力回避動作の目的に使用可能な精度で検出可能であり、しかも断線・ノイズ等の不具合も少なく信頼性が高いという効果を得ることができる。したがって、ロボットアームに人または物が接触した場合にロボットアームが接触力を回避するような動作をすることが可能となり、ロボット動作により人または物に危害が加わることを避けることができる安全なロボットを簡単な構成で達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1のロボットの接触力検出装置のブロック図である。
【0012】
図1において、1はロボット本体、2はロボットの制御装置、3はロボット動作に関する環境認識装置である。なお、この実施の形態では、ロボット本体1として、6軸垂直多関節のものを例示している。
【0013】
ロボット本体1において、ロボットアーム101には6個の関節部が設けられており、ロボットアーム101は各関節部J1〜J6で回動または捩り動作が可能な構成となっている。図1では一部のみを図示しているが、各関節部J1〜J6には、それぞれ、モータ104、減速機105、回転角検出器106などが設置され、制御装置2よりの指令で各関節部J1〜J6の回転角度を制御している。ロボットアーム101の先端にはハンド107が設置されており、物品の把持を行う。ロボットアーム101の根元部にはロボットベース102が設置されており、このロボットベース102の下部100でロボット本体1を架台や移動台車等に固定している。
【0014】
103は力検出器である6軸力センサーで、ロボットベース102に設置されており、ロボットベース102よりも上部に配置されたロボットアーム101に係わる力が変化した場合に、その出力が変化する。ここでロボットアーム101に係わる力とは、ロボットアーム101に外部より加えられる接触力、およびロボットアーム101自身が動作することによって加えられる力(以降この力を「内力」と呼ぶ)が考えられる。
【0015】
制御装置2は、制御計画部200と、作業制御部210と、関節回避量算出部220と、動作制御部230と、モータ制御部240と、接触力算出部250との機能ブロックより構成されており、モータ制御部240の出力値によりロボット本体1の各関節部に設けられたモータ104の回転角度を制御している。制御計画部200において、201は動作計画部、202は作業計画部、203は接触回避計画部である。接触力算出部250は、力検出部251と力補正部252とを有する。
【0016】
環境認識装置3は、ロボットアーム101の位置・姿勢を認識する視覚認識装置や、ロボット本体1による作業対象物の位置・姿勢を認識する視覚認識装置や、ロボット動作に関する情報を検出する各種のセンサー類などにて構成されている。
【0017】
かかる構成において、ロボットアーム101に対して外部よりの接触などが無い通常の場合は、ロボットベース102に設置された力検出センサー103はロボットアーム101自身の動作による内力しか検出しない。このロボットアーム101自身の動作による内力は、回転角検出器106よりのモータ回転角情報や、環境認識装置3よりの環境認識情報や、動作制御部230よりのモータ回転角指令値等を利用して、制御装置2の力補正部252において概略値を推定できる。そして、制御装置2における力検出部251の出力値は、力補正部252の出力値と概略相殺される。その結果、制御装置2の関節回避量算出部220による接触力回避動作は算出されず、通常の作業計画に基づき、動作制御部230において各関節のモータ104に対する回転角指令が算出され、モータ制御部240を介してモータ104の回転角の制御が行われる。
【0018】
一方、ロボットアーム101に対して人が接触したり障害物が干渉したりして接触力が発生した場合に、ロボットベース102に設置された力検出センサー103は、ロボットアーム101に対する接触力の概略の大きさと概略の方向とを検出することができる。この場合も、ロボットアーム101自身の動作による内力が力検出センサー103に加わっている。しかし、このロボットアーム101自身の動作による内力は、前記と同様に、回転角検出器106よりのモータ回転角情報や、環境認識装置3よりの環境認識情報や、動作制御部230よりのモータ回転角指令値等を利用して、力補正部252において概略値を推定し、その推定値を力検出部251の出力より差し引くことができる。この差し引きにより補正された後の力検出値を用いて、関節回避量算出部220において、各関節部J1〜J6の回避方向と回避角度が算出される。この算出の際には、ロボットアーム101に対する接触力が低減する方向への根元側の関節の回避動作を優先的に行わせるような方針がとられる。動作制御部230においては、作業制御部210からのハンド位置および姿勢に関する指令値と、関節回避量算出部220からの接触力回避動作指令とを用いて、各関節部J1〜J6のモータ104についての最終的な回転角指令値が算出される。算出結果は、モータ制御部240に与えられる。モータ制御部240は、モータ104の角度をフィードバック制御しており、この角度が動作制御部230からの回転角指令値となるように、各モータ104の回転角制御を行う。
【0019】
以上のように、ロボットアーム101に外部よりの接触が無い場合は、制御装置2の制御計画部200の作業計画部202にて計画される作業計画に基づいてロボット本体1の動作が実行される。これに対し、ロボットアーム101に人または障害物の干渉により接触力が加えられた場合は、ロボット本体1のロボットベース102に設けられた力検出器103によってロボットアーム101に対する接触力が検出され、制御装置2の関節回避量算出部220にてロボット本体1の各関節の回避量が算出され、動作制御部230およびモータ制御部240を通して各軸のモータ104の回転角が制御されて、接触力が低減する方向にロボットアーム101を回避動作させることや、さらにはロボットアーム101の動作を停止させることが実行される。
【0020】
なお、本実施の形態1においては、ロボット本体1の形式として6軸垂直多関節のものを例示したが、水平多関節等の他のロボットの形式でももちろんよい。力検出器103として6軸力センサーを設けたが、6軸以下の軸数の力センサーでもよく、またロボットベース102の外周に歪検出センサーを設置して力を検出してもよい。また、各関節部の駆動源としてモータ104を用いたが、これは空圧アクチュエータや人口筋肉等の他のアクチュエータでもよい。
【0021】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2のロボットの接触力検出装置におけるロボット本体1の部分を抜き出して示す斜視図である。図2において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0022】
図2において、110はロボットベース102に設けられた円筒状のスペーサで、その外周部に歪ゲージ方式の歪検出器113が装着されている。スペーサ110は、図1を用いて実施の形態1で示したたとえば鋼製のロボットベース102よりも剛性が低くなるように、すなわちある程度の弾性を有するように、アルミニウムにより構成されている。
【0023】
かかる構成によれば、実施の形態1で示したような剛性の高いロボットベース102の外周に歪検出器113を装着するだけでは、ロボットアーム101に対する接触力によるロボットベース102の歪が小さくて、その接触力を検出できないような場合でも、スペーサ110の弾性を最適に設定することにより、接触力によりスペーサ110が大きく歪んで、その接触力を検出できるようになる。この場合に、ロボット本体1の作業が損なわれないようにスペーサ110の弾性値を選定する必要があることは、もちろんのことである。
【0024】
実施の形態2においては、実施の形態1における力検出器103がスペーサ110の外周に設けられた歪検出器113に置き換わっているが、それ以外は実施の形態1と同一である。よって、その詳細な説明は省略する。
【0025】
なお、本実施の形態2において、スペーサ110はアルミ円筒で構成したが、これに代えて、高剛性ゴムや、樹脂や、これら非金属と金属とを組み合わせたものなどで構成してもよい。また、歪検出器113を歪ゲージとしたが、磁歪素子等の検出器でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のロボットの接触力検出装置は、ロボットアームに人または物が接触した場合にロボットアームが接触力を回避するような動作をすることが可能となり、ロボット動作により人または物に危害を加えることを避けることができる安全なロボットを簡単な構成で達成できるという効果を有し、特に人間と共存する作業が必要とされる生活支援型ロボットおよび介護ロボット等の非製造業ロボットの用途に主として適用できる。また、製造業で用いられる産業用ロボットにも、もちろん適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1のロボットの接触力検出装置のブロック図
【図2】本発明の実施の形態2のロボットの接触力検出装置におけるロボット本体の斜視図
【図3】従来のロボットの接触力検出装置のブロック図
【符号の説明】
【0028】
1 ロボット本体
2 制御装置
3 環境認識装置
101 ロボットアーム
102 ロボットベース
103 力検出器
250 接触力算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からロボットアームに対して加えられる接触力を検出し、その外部からの接触力を回避するようにロボットアームを動作させるロボットシステムにおいて、外部からの接触力を検出する力検出器を、ロボットアーム根元のロボットベース部に設置したことを特徴とするロボットの接触力検出装置。
【請求項2】
力検出器を、ロボットアーム根元のロボットベース部に設けた弾性体に設置したことを特徴とする請求項1記載のロボットの接触力検出装置。
【請求項3】
ロボットアーム自身の動作により発生した外力相当分の力を推定する手段と、力検出器で検出される外力全体から、前記推定されたロボットアーム自身の動作により発生した外力相当分の力を差し引くことにより、ロボットアームに対する接触力を検出する手段とを具備することを特徴とする請求項1または2記載のロボットの接触力検出装置。
【請求項4】
力検出器が6軸力センサーであることを特徴とする請求項1または3記載のロボットの接触力検出装置。
【請求項5】
力検出器が歪検出器であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載のロボットの接触力検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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