説明

ロボットハンド及び搬送ロボット

【課題】被搬送物Wがロボットハンド9から落下することを回避して、被搬送物Wの搬送作業の煩雑化を十分に抑えること。
【解決手段】ハンド本体11に設けられかつ真空圧を利用して被搬送物を吸着する複数のベローズ型吸着パッド19と、吸着状態における各ベローズ型吸着パッド19の軸長を測定する軸長センサ29と、各軸長センサ29から測定された各ベローズ型吸着パット19の軸長に基づいて、搬送中における被搬送物Wの姿勢を判定するコントローラ31と、を備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物(ワーク)を保持するロボットハンド、及び被搬送物を搬送する搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、搬送ロボットは種々の分野に利用されており、それに伴い、搬送ロボットについて技術開発が進んでいる。そして、搬送ロボットの一般的な構成等は、次のようになる(特許文献1〜3参照)。
【0003】
即ち、搬送ロボットは、多関節構造のロボットアームを備えており、このロボットアームは、先端側に、フランジを有している。また、ロボットアームのフランジ(先端部)には、被搬送物を保持するロボットハンドが設けられている。そして、ロボットハンドは、ロボットアームのフランジに設けられたハンド本体と、このハンド本体に設けられかつ真空圧を利用して被搬送物を吸着する複数の吸着パッドとを備えている。更に、通常、ロボットアーム又はロボットハンドの適宜位置には、複数の吸着パッド内の真空度が設定真空度(所定の真空度)に達したことを検知する真空センサが設けられている。
【0004】
従って、搬送ロボットを用いて、被搬送物を出発位置から目標位置に搬送する搬送作業を行う場合には、まず、ロボットアームの先端部を出発位置に接近する方向へ移動させることにより、ハンド本体を被搬送物に対して接近させて、複数の吸着パッドを被搬送物に接触させる。次に、複数の吸着パッドによって真空圧を利用して被搬送物を吸着することにより、ロボットハンドによって被搬送物を保持する。そして、ロボットアームの先端部を目標位置に接近する方向へ移動させることにより、被搬送物を搬送して、目標位置に位置させる。最後に、複数の吸着パッドの吸着状態を解除して、ロボットアームの先端部を目標位置に離反する方向へ移動させることにより、ハンド本体を被搬送物に対して離反させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−126584号公報
【特許文献2】実公平7−44470号公報
【特許文献3】特開平1−104533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、真空センサの検知の有無(換言すれば、真空センサからの検知信号の有無)に基づいてロボットハンドによる被搬送物の保持の有無を判定することができるものの、搬送中における被搬送物の姿勢の良否(換言すれば、ロボットハンドの保持状態の良否)まで判定することはできない。そのため、搬送中における被搬送物の姿勢が不良な状態が継続されると、被搬送物がロボットハンドから落下することがあり、被搬送物の搬送作業の煩雑化を招くことになる。
【0007】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のロボットハンド及び搬送ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴は、被搬送物(ワーク)を搬送する搬送ロボットに用いられ、被搬送物を保持するロボットハンドにおいて、ハンド本体と、前記ハンド本体に設けられ、弾性力によって軸心方向へ伸縮可能であって、真空圧(負圧)を利用して被搬送物を吸着する複数のベローズ型吸着パッドと、吸着状態における各ベローズ型吸着パッドの軸長を測定する軸長センサと、を備えたことを要旨とする。
【0009】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲の記載において、「搬送」とは、水平方向へ搬送する水平搬送の他に、垂直方向(上下方向)へ搬送する垂直搬送を含む意である。また、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、介在部材を介して間接的に設けられたことを含む意である。
【0010】
第1の特徴により、前記搬送ロボットを用いて、被搬送物を出発位置から目標位置に搬送する搬送作業を行う場合には、まず、前記ロボットアームの先端部を前記出発位置に接近する方向へ移動させることにより、前記ハンド本体を被搬送物に対して接近させて、複数の前記ベローズ型吸着パッドを被搬送物に接触させる。次に、複数の前記ベローズ型吸着パッドによって真空圧を利用して被搬送物を吸着することにより、前記ロボットハンドによって被搬送物を保持する。そして、前記ロボットアームの先端部を前記目標位置に接近する方向へ移動させることにより、被搬送物を搬送して、前記目標位置に位置させる。最後に、複数の前記ベローズ型吸着パッドの吸着状態を解除して、前記ロボットアームの先端部を前記目標位置に離反する方向へ移動させることにより、前記ハンド本体を被搬送物に対して離反させる。
【0011】
ここで、被搬送物の搬送中、各軸長センサによって各ベローズ型吸着パッドの軸長を測定される。そして、前記搬送ロボットにおけるコントローラ(判定部)によって各ベローズ型吸着パッドの軸長に基づいて搬送中における被搬送物の姿勢の良否(換言すれば、前記ロボットハンドの保持状態の良否)が判定される。
【0012】
本発明の第2の特徴は、被搬送物を搬送する搬送ロボットにおいて、多関節構造のロボットアームと、前記ロボットアームの先端部に設けられ、第1の特徴からなるロボットハンドと、各軸長センサから測定された各ベローズ型吸着パットの軸長に基づいて、搬送中における被搬送物の姿勢の良否を判定するコントローラ(判定部)と、を備えたことを要旨とする。
【0013】
第2の特徴によると、第1の特徴による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被搬送物の搬送中に、各ベローズ型吸着パッドの軸長に基づいて搬送中における被搬送物の姿勢の良否が判されるため、被搬送物の姿勢が不良と判定された直後に、前記搬送ロボットによる搬送作業を一旦中断することにより、被搬送物が前記ロボットハンドから落下することを回避でき、被搬送物の搬送作業の煩雑化を十分に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る搬送ロボットの一部を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るロボットハンドを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る制御ブロックを示す図である。
【図4】図4(a)は、搬送中における被搬送物の姿勢が良好である場合を示す図、図4(b)は、搬送中における被搬送物の姿勢が不良である場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図1から図4を参照して説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る搬送ロボット1は、被搬送物Wを搬送する装置であって、多関節構造のロボットアーム3を備えている。また、ロボットアーム3は、先端側に、フランジ5を有しており、ロボットアーム3のフランジ5は、任意方向へ移動できるようになっている。
【0018】
ロボットアーム3のフランジ(先端部)5には、接続部材7が設けられており、この接続部材7には、被搬送物Wを保持するロボットハンド9が設けられている。換言すれば、ロボットアーム3のフランジ5には、ロボットハンド9が接続部材7を介して設けられている。そして、ロボットハンド9の具体的な構成は、次のようになる。
【0019】
ロボットハンド9は、ハンド本体11を備えており、このハンド本体11は、接続部材7に設けられた第1取付プレート13、及び第1取付プレート13に複数の連結バー15を介して対向して設けられた第2取付プレート17等からなっている。また、第2取付プレート17には、真空圧を利用して被搬送物Wを吸着する複数(2つのみ図示しているが、本発明の実施形態にあっては4つ)のベローズ型吸着パッド19が取付金具21を介して設けられており、各ベローズ型吸着パッド19は、弾性力によって軸心方向(ベローズ型吸着パッド19の軸心方向)へ伸縮可能である。そして、第1取付プレート13には、ベローズ型吸着パッド19と同数の真空エジェクタ(真空圧発生源の一例)23が設けられており、各真空エジェクタ23は、対応するベローズ型吸着パッド19にエア配管25及び取付金具21を介して接続してある。更に、各真空エジェクタ21は、各ベローズ型吸着パッド19内の真空度が設定真空度に達したことを検知する真空センサ27を備えている。なお、各真空エジェクタ23が対応するベローズ型吸着パッド19に接続する代わりに、共通の真空ポンプ(図示省略、真空圧発生源の一例)が複数のベローズ型吸着パッド19に接続するようにしても構わない。
【0020】
第2取付プレート17における各ベローズ型吸着パッド19の近傍には、被搬送物Wに向かって照射した光の反射光Bに基づいて被搬送物Wまでの距離、換言すれば、吸着状態における各ベローズ型吸着パッド19の軸長を測定する光電センサ(軸長センサの一例)29が設けられている。なお、軸長センサとして光電センサ29を用いる代わりに、ポテンションメータ又は接触式リニアエンコーダ等の適宜のセンサを用いても構わない。
【0021】
本発明の実施形態に係る搬送ロボット1は、前述のロボットアーム3及びロボットハンド9の他に、図3に示すように、コントローラ31を備えており、このコントローラ31は、制御プログラム等を記憶するメモリ(図示省略)と、制御プログラムを実行するCPU(図示省略)とを有してあって、複数(本発明の実施形態にあっては、4つ)の真空センサ27及び複数(本発明の実施形態にあっては、4つ)の光電センサ29が電気的に接続されている。そして、コントローラ31のCPUは、各光電センサ29によって測定された各ベローズ型吸着パット19の軸長に基づいて、搬送中における被搬送物Wの姿勢の良否(換言すれば、ロボットハンド9の保持状態の良否)を判定する判定部としての機能を有している。具体的には、コントローラ31のCPUは、各真空センサ27から検知信号が出力されていることを条件として、各光電センサ29から測定された吸着状態における各ベローズ型吸着パッド19の軸長が判定用の基準の長さを越えていない場合(図4(a)に示すような場合)には、搬送中における被搬送物Wの姿勢を良好と判定し、いずれかの光電センサ29から測定された吸着状態におけるベローズ型吸着パッド19の軸長が判定用の基準の長さを越えている場合(図4(b)に示すような場合)には、搬送中における被搬送物Wの姿勢を不良と判定するものである。なお、判定用の基準の長さとは、被搬送物Wの搬送試験に基づいて予め設定した値であって、被搬送物Wの種類毎に設定してある。
【0022】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0023】
搬送ロボット1を用いて、被搬送物Wを出発位置から目標位置に搬送する搬送作業を行う場合には、まず、ロボットアーム3のフランジ5を出発位置に接近する水平方向へ移動させることにより、複数のベローズ型吸着パッド19を被搬送物Wの上方位置に位置させる。次に、ロボットアーム3のフランジ5を下方向へ移動させることにより、ハンド本体11を被搬送物Wに対して接近させて、複数のベローズ型吸着パッド19を被搬送物Wに接触させる。そして、複数の真空エジェクタ23の駆動により複数のベローズ型吸着パッド19内に真空圧を発生させて、複数のベローズ型吸着パッド19によって被搬送物Wを吸着することにより、ロボットハンド9によって被搬送物Wを保持する。
【0024】
ロボットハンド9によって被搬送物Wを保持した後に、ロボットアーム3のフランジ5を上方向へ移動させることにより、被搬送物Wを上方向へ垂直搬送して、出発位置の上方位置に位置させる。そして、ロボットアーム3のフランジ5を目標位置に接近する水平方向へ移動させることにより、被搬送物Wを水平搬送して、目標位置の上方位置に位置させる。更に、ロボットアーム3のフランジ5を下方向へ移動させることにより、被搬送物Wを下方向へ垂直搬送して、目標位置に位置させる。最後に、複数のベローズ型吸着パッド19の吸着状態を解除して、ロボットアーム3のフランジ5を上方向へ移動させることにより、ハンド本体11を被搬送物Wに対して離反させる。
【0025】
ここで、被搬送物Wの垂直搬送中及び水平搬送中に、各光電センサ29によって各ベローズ型吸着パッド19の軸長が測定される。そして、各光電センサ29から測定された吸着状態における各ベローズ型吸着パッド19の軸長が判定用の基準の長さを越えていない場合には、各真空センサ27から検知信号が出力されていることを条件として、コントローラ31のCPUによって搬送中における被搬送物Wの姿勢(換言すれば、ロボットハンド9の保持状態)が良好と判定される。一方、いずれかの光電センサ29から測定された吸着状態におけるベローズ型吸着パッド19の軸長が判定用の基準の長さを越えている場合には、各真空センサ27から検知信号が出力されていることを条件として、コントローラ31のCPUによって搬送中における被搬送物Wの姿勢(換言すれば、ロボットハンド9の保持状態)が不良と判定される。
【0026】
従って、本発明の実施形態によれば、被搬送物Wの垂直搬送中及び水平搬送中に、コントローラ31のCPUによって各ベローズ型吸着パッド19の軸長に基づいて搬送中における被搬送物Wの姿勢の良否が判定されるため、被搬送物Wの姿勢が不良と判定された直後に、搬送ロボット1による搬送作業を一旦中断することにより、被搬送物Wがロボットハンド9から落下することを回避でき、被搬送物Wの搬送作業の煩雑化を十分に抑えることができる。
【0027】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0028】
W 被搬送物
1 搬送ロボット
3 ロボットアーム
5 フランジ
7 接続部材
9 ロボットハンド
11 ハンド本体
13 第1取付プレート
15 連結バー
17 第2取付プレート
19 ベローズ型吸着パッド
21 取付金具
23 真空エジェクタ
25 エア配管
27 真空センサ
29 光電センサ
B 反射光
31 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を搬送する搬送ロボットに用いられ、被搬送物を保持するロボットハンドにおいて、
ハンド本体と、
前記ハンド本体に設けられ、弾性力によって軸心方向へ伸縮可能であって、真空圧を利用して被搬送物を吸着する複数のベローズ型吸着パッドと、
吸着状態における各ベローズ型吸着パッドの軸長を測定する軸長センサと、を備えたことを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
被搬送物を搬送する搬送ロボットにおいて、
多関節構造のロボットアームと、
前記ロボットアームの先端部に設けられた請求項1に記載のロボットハンドと、
各軸長センサから測定された各ベローズ型吸着パットの軸長に基づいて、搬送中における被搬送物の姿勢を判定するコントローラと、を備えたことを特徴とする搬送ロボット。
【請求項3】
前記コントローラは、各軸長センサから測定された吸着状態における各ベローズ型吸着パッドの軸長が判定用の基準の長さを越えていない場合には、搬送中における被搬送物の姿勢を良好と判定し、いずれかの前記軸長センサから測定された吸着状態における前記ベローズ型吸着パッドの軸長が前記判定用の基準の長さを越えている場合には、搬送中における被搬送物の姿勢を不良と判定することを特徴とする請求項2に記載の搬送ロボット。
【請求項4】
複数のベローズ型吸着パッド内の真空度が設定真空度に達したことを検知する真空センサと、を備えたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の搬送ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−156610(P2011−156610A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18978(P2010−18978)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】