説明

ロボットハンド溶接ガンシステムおよびその動作方法

【課題】ロボットハンドのコンパクト化を図り得るロボットハンド溶接ガンシステム、およびその動作方法を提供する。
【解決手段】ロボットハンド溶接ガンシステム100は、ロボットアーム410の先端に、加工対象のワーク500を溶接するための溶接ガン200と、ワークを移動するためのロボットハンド300とを接続している。ロボットハンド溶接ガンシステムはさらに、ロボットハンドに移動自在に備えられ、ワークを保持するための保持部310、320、330を有している。そして、保持部は、ワークを移動するときにワークを保持する保持位置と、ワークを溶接するときに溶接ガンから退避した退避位置との間を、自重によって移動自在となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド溶接ガンシステムおよびその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの溶接および搬送を行うための装置として、例えば特許文献1のように、ロボットアームの先端に、加工対象のワークを溶接するための溶接ガンと、ワークを移動するためのロボットハンドとを接続したロボットハンド溶接ガンシステムがある。ロボットハンドは、ワークを把持するクランプユニットを備えている。
【0003】
溶接ガンによってワークを溶接するときには、クランプユニットは、ワークに干渉して溶接の邪魔とならないように、ロボットハンドに設けたアクチュエータによって、溶接ガンから退避した退避位置に移動する。溶接後、クランプユニットは、ワークを保持する保持位置にアクチュエータによって移動し、ワークを把持する。そして、ロボットアームを駆動し、ワークを搬送している。
【特許文献1】特開平11−99494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術は、1台のロボットによってワークの溶接および搬送を行うことから、溶接ガンおよびロボットハンドの各々に対して1台ずつロボットを用いる場合に比べて設備をコンパクトにできる。
【0005】
しかしながら、クランプユニットを保持位置または退避位置に移動するアクチュエータをロボットハンドに設けていることから、ロボットハンドのコンパクト化が難しく、ロボットハンド溶接ガンシステム全体のコンパクト化に制限がある。
【0006】
本発明は、このような事情からなされたものであり、ロボットハンドのコンパクト化を通してコンパクト化を図り得るロボットハンド溶接ガンシステム、およびそのようなコンパクト化を図ったロボットハンド溶接ガンシステムの動作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明のロボットハンド溶接ガンシステムは、ロボットアームの先端に、加工対象のワークを溶接するための溶接ガンと、ワークを移動するためのロボットハンドとを接続している。ロボットハンド溶接ガンシステムはさらに、ロボットハンドに移動自在に備えられ、ワークを保持するための保持部を有している。そして、保持部は、ワークを移動するときにワークを保持する保持位置と、ワークを溶接するときに溶接ガンから退避した退避位置との間を、自重によって移動自在となっている。
【0008】
上記目的を達成するための本発明のロボットハンド溶接ガンシステムの動作方法は、上記の保持部を、保持部の自重によって、溶接ガンから退避した退避位置に移動させる退避工程と、溶接ガンによってワークを溶接する溶接工程と、を有する。溶接工程が終了すると、ワークを移動するために、保持部を、保持部の自重によって、ワークを保持する保持位置に移動させる(保持工程)。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ロボットハンドに備えた保持部をその自重によって移動しているため、保持部の移動のためにアクチュエータのような駆動装置をロボットハンドに設ける必要がなく、ロボットハンドのコンパクト化を通して、ロボットハンド溶接ガンシステム全体のコンパクト化を図り得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
図1はロボットハンド溶接ガンシステムの概略構成図、図2は図1の矢印2からの矢視図、図3はロボットハンドの平面図、図4(A)(B)はロボットハンドとワークとの平面図である。図5はロボットハンドの側面図、図6は図5の矢印6からの矢視図、図7はクランプユニットの動作を説明するためのロボットハンドの側面図である。図8および図9は退避工程におけるロボットハンド溶接ガンシステムの概略図である。図10は溶接工程におけるロボットハンド溶接ガンシステムの概略図である。図11、図12、図13および図14は保持工程におけるロボットハンド溶接ガンシステムの概略図である。図15はワークを搬送するときのロボットハンド溶接ガンシステムの概略図である。
【0012】
図1に示すように、ロボットハンド溶接ガンシステム100は、加工対象のワーク500を溶接するための溶接ガン200を有する。ロボットハンド溶接ガンシステム100はまた、動作を制御するための複数の関節を備えるロボットアーム410を有する。溶接ガン200は、ロボットアーム410の先端に接続している。ロボットアームの先端412は、ロボットアーム410の関節であり、回転できる。
【0013】
ロボットハンド溶接ガンシステム100は、ロボットアーム410の先端412に接続されワーク500を移動するためのロボットハンド300を有する。ロボットハンド溶接ガンシステム100は、ロボットハンド300に移動自在に備えられ、ワーク500を保持するためのクランプユニット(保持部)310、320、330(図1、図3参照)を有する。
【0014】
ロボット溶接ガンシステム100はまた、ロボットハンド300に備えられ、クランプユニット310、320、330の移動をガイドするレール(ガイド部)340、350、360(図1、図3参照)を有する。ロボット溶接ガンシステム100はさらに、ロボットアーム410の姿勢を制御することによってロボットハンド300の姿勢を制御するコントローラ(制御部)400を有する。
【0015】
ワーク500は、例えば自動車のリアフロアパネルである。ロボットハンド溶接ガンシステム100は、ワーク500の加工ラインにおいて動作する。ロボットハンド溶接ガンシステム100は、作業者または搬送用のロボットがワーク500を支持する治具(不図示)にワーク500をセットした後、ワーク500を溶接し、その後、ワーク500を搬送する。加工ラインでは、異なる複数のワーク500が流れる。ロボットハンド溶接ガンシステム100は、異なる複数のワーク500の溶接および搬送を行う。コントローラ400は、CPUおよびメモリを主体とした構成を有し、メモリにロボットハンド溶接ガンシステム100全体の動作を記憶している。
【0016】
図2に示すように、溶接ガン200は、ロボットアームの先端412に接続した本体202と、本体202から延びる鉤形状のガンアーム204と、を有する。ガンアーム204は、ワーク500を溶接するための固定電極206を先端に備える。溶接ガン200は、固定電極206に対向し固定電極206とともにワーク500を溶接する可動電極208を有する。
【0017】
可動電極208は、本体202に内蔵するサーボモータによって、固定電極206に対して近接離間する。溶接ガン200は、固定電極206および可動電極208によってワーク500を挟み、固定電極206と可動電極208との間に溶接2次電流を流してワーク500をスポット溶接する。コントローラ400は、本体202内のサーボモータの動作、および固定電極206と可動電極208との間に流す溶接2次電流を制御する。
【0018】
図3に示すように、ロボットハンド300は、3つのクランプユニット310、320、330を有する。ロボットハンド300は、ロボットハンド300の骨格をなすT字状の部材302を有し、この部材302の3つの直線部分の各々に沿ってレール340、350、360を設けた構成を有する。
【0019】
クランプユニット310、320、330は、レール340、350、360の各々に接続しており、レール340、350、360に沿ってスライド移動可能である。3つのクランプユニット310、320、330の位置関係は、三角形の頂点の位置関係に対応する。また、クランプユニット310、320、330の各々は独立して自重によって移動できる。
【0020】
ロボットハンド300は、クランプユニット310、320、330がレール340、350、360から抜けるのを防止するストッパ341、342、351、352、361、362を、レール340、350、360の各々の両端に有する。
【0021】
ロボットハンド300は、クランプユニット同士が近接する方向に位置するストッパ341、351、361に、クランプユニット310、320、330を検出するための検出装置343、353、363を有する。検出装置343、353、363は、従来技術を利用でき、例えば近接センサ、リミットスイッチ、またはリードスイッチである。検出装置343、353、363は、コントローラ400に電気的に接続している。
【0022】
クランプユニット310、320、330は、ワーク500を移動するときにワーク500を保持する保持位置と、ワーク500を溶接するときに溶接ガン200から退避する退避位置との間を、自重によって移動する。保持位置は、ワーク500によって異なり、レール340、350、360に沿って異なる位置に存する。
【0023】
図4(A)および(B)に示すように、例えば大きさの異なるワーク502、504のうち、大きいワーク502を保持する保持位置は、ストッパ342、352、362寄りにある。一方、小さいワーク504を保持する保持位置はストッパ341、351、361寄りにある。また、保持位置は、ワーク500の大きさだけでなく、ワーク500の形状等によっても異なる。
【0024】
退避位置は、クランプユニット310、320、330が溶接の邪魔にならない位置であり、本実施形態ではストッパ341、351、361がクランプユニット310、320、330を停止させる位置である。
【0025】
コントローラ400は、ロボットハンド300の姿勢を制御することによって、レール340、350、360に沿って異なる位置に存する複数の保持位置のうちのいずれかの保持位置に、クランプユニット310、320、330を自重によって移動させる。
【0026】
図5に示すように、クランプユニット310は、レール340にスライド移動可能に噛み合ったガイドブロック344、およびガイドブロック344とクランプユニット310とを接続するスライドベース346を介して、レール340に接続している。
【0027】
また、移動するクランプユニット310を停止させるためのブレーキユニット(ブレーキ)345が、スライド移動可能にレール340に噛み合っている。ブレーキユニット345は、スライドベース346に接続している。
【0028】
レール340およびブレーキユニット345は、公知の技術を用いることができ、例えばCKD株式会社のLMBシリーズである。公知の技術であるためここでの詳述は避けるが、ブレーキユニット345の内部は、エアーを送り込むための吸気経路(不図示)と、エアーを排気するための排気経路(不図示)とに連通している。ブレーキユニット345は、ブレーキユニット345の内部からエアーを排気した状態のとき停止し、ブレーキユニット345の内部へエアーを圧入した状態のとき、レール340に沿って移動できる。
【0029】
吸気経路および排気経路に連通したソレノイドバルブ(不図示)が、コントローラ400からの信号を受けて経路を切り替える。ソレノイドバルブが経路を切り替えることによって、ブレーキユニット345内にエアーが流入したり、ブレーキユニット345内からエアーが出たりする。
【0030】
図6に示すように、クランプユニット320、330も、クランプユニット310と同様の構成によってレール350、360に接続している。また、ブレーキユニット345と同様の構成のブレーキユニット355が、クランプユニット320とレール350とを接続するためのガイドブロック356に接続している。また、ブレーキユニット345と同様の構成のブレーキユニット365が、クランプユニット330とレール360とを接続するためのガイドブロック366に接続している。
【0031】
図7に示すように、クランプユニット310は、ワーク500を把持するためのクランプ313と、クランプ313を開閉するための油圧シリンダ314と、を有する。クランプユニット310は、クランプ313と油圧シリンダ314との組み合わせを2組有する(図6参照)。
【0032】
クランプ313は、回転自在な支持構造のヒンジ316によって接続した一対のクランプ爪311、312を有する。一方のクランプ爪312は、油圧シリンダ314から伸びるピストンロッド315に接続し、ピストンロッド315の伸縮に応じてヒンジ316によって回転する。クランプ爪312が回転することよって、クランプ313は開いたり閉じたりする。
【0033】
クランプユニット320、330も、クランプユニット310と同様の構成を有する。すなわち、クランプユニット320、330は、油圧シリンダ324、334によってクランプ爪の一方を回転させ、クランプを開いたり閉じたりする。クランプユニット320、330は、クランプユニット310と異なり、油圧シリンダとクランプとの組み合わせを1組のみ有する。
【0034】
ロボットハンド溶接ガンシステム100の動作方法について説明する。
【0035】
ロボットハンド溶接ガンシステム100の動作方法は、クランプユニット310、320、330を、クランプユニット310、320、330の自重によって、溶接ガン200から退避した退避位置に移動させる退避工程を有する。また、ロボットハンド溶接ガンシステム100の動作方法は、退避工程の後、溶接ガン200によってワーク500を溶接する溶接工程を有する。ロボットハンド溶接ガンシステム100の動作方法はさらに、溶接工程の後、ワーク500を移動するために、クランプユニット310、320、330を、クランプユニット310、320、330の自重によって、ワーク500を保持する保持位置に移動させる保持工程を有する。
【0036】
退避工程においては、ロボットアーム410の姿勢を制御してロボットハンド300の姿勢を制御することによって、クランプユニット310、320、330は、ロボットハンド300に備えられたレール340、350、360に沿って移動がガイドされながら退避位置に自重によって移動する。
【0037】
図8に示すように退避工程では、まずコントローラ400は、メモリが記憶したプログラムに従ってロボットアーム410を動かしてロボットハンド300の姿勢を定める。このときの姿勢は、レール340、360が水平方向に対して傾き、ブレーキユニット345、365を解除したときクランプユニット310、330がストッパ341、361に向かって移動する姿勢である。
【0038】
姿勢を定めた後、コントローラ400はブレーキユニット345、365を解除し、自重によってクランプユニット310、330をレール340、360に沿ってスライド移動させる。検出装置343、363(図3参照)がクランプユニット310、330を検出し、コントローラ400が検出装置343、363からの信号を受けたら、コントローラ400はブレーキユニット345、365を停止させ、クランプユニット310、330を退避位置で固定する。
【0039】
次に、コントローラ400はロボットアーム410を動かすとともにその先端412を回転させて、図9に示すようにロボットハンド300の姿勢を定める。このときの姿勢は、レール350が垂直方向を向き、ブレーキユニット355を解除したときクランプユニット320がストッパ351に向かって移動する姿勢である。
【0040】
姿勢を定めた後、コントローラ400はブレーキユニット355を解除し、自重によってクランプユニット320をレール350に沿ってスライド移動させる。検出装置353がクランプユニット320を検出し、コントローラ400が検出装置353からの信号を受けたら、コントローラ400はブレーキユニット355を停止させ、クランプユニット320を退避位置に固定する。クランプユニット310、320、330を退避位置に移動させたら、溶接工程に移る。
【0041】
図10において説明すれば、溶接工程ではまず、コントローラ400はロボットアーム410を動かし、ワーク500に対する溶接ガン200の位置および姿勢を定める。この後コントローラ400の信号に基づいて、溶接ガン200は、固定電極206および可動電極208によってワーク500を挟み、両電極間に溶接2次電流を流してワーク500をスポット溶接する。溶接後、保持工程に移る。
【0042】
保持工程においては、ロボットアーム410の姿勢を制御してロボットハンド300の姿勢を制御することによって、クランプユニット310、320、330は、レール340、350、360に沿って異なる位置に存する複数の保持位置のうちのいずれかの保持位置に自重によって移動する。
【0043】
図11に示すように、ロボットハンド溶接ガンシステム100は、自重によって移動するクランプユニット310、320、330を突き当てて、クランプユニット310、320、330の位置決めを行う位置決め治具600を有する。
【0044】
位置決め治具600は、クランプユニット310、320、330を突き当てるための2つのポール620、630と、ポール620、630を支持する台610と、を有する。また、位置決め治具600は、クランプユニット310、320、330を検出するための検出装置622、632を、ポール620、630の先端に有する。検出装置622、632は、検出装置343、353、363と同様である。検出装置622、632は、コントローラ400に電気的に接続している。
【0045】
保持工程ではまず、コントローラ400は、ロボットアーム410を動かし、位置決め治具600に対するロボットハンド300の位置および姿勢を定める。ロボットハンド300の位置および姿勢は、クランプユニット310、330がスライド移動してポール620、630に突き当たったときの位置が、ワーク500に対応した保持位置となるものである。
【0046】
ロボットハンド300の位置および姿勢を定めたら、図12に示すように、コントローラ400は、ブレーキユニット345、365を解除し、クランプユニット310、330を自重によってレール340、360に沿ってスライド移動させる。
【0047】
クランプユニット310、330は、スライド移動してポール620、630に突き当たる。検出装置622、632がクランプユニット310、330を検出し、コントローラ400が検出装置622、632からの信号を受けたら、コントローラ400はブレーキユニット345、365を停止させ、クランプユニット310、330を保持位置に固定する。
【0048】
次に、コントローラ400は、ロボットアーム410を動かすとともに先端412を回転させ、図13に示すように位置決め治具600に対するロボットハンド300の位置および姿勢を定める。ロボットハンド300の位置および姿勢は、クランプユニット320がスライド移動してポール630に突き当たったときの位置が、ワーク500に対応した保持位置となるものである。
【0049】
ロボットハンド300の位置および姿勢を定めたら、図14に示すように、コントローラ400はブレーキユニット355を解除し、クランプユニット320を自重によってレール350に沿ってスライド移動させる。
【0050】
クランプユニット320は、スライド移動してポール630に突き当たる。検出装置632がクランプユニット320を検出し、コントローラ400が検出装置632からの信号を受けたら、コントローラ400はブレーキユニット355を停止させ、クランプユニット320を保持位置に固定する。
【0051】
クランプユニット310、320、330が保持位置に移動した後、コントローラ400は、ロボットアーム410を動かし、ワーク500に向かってロボットハンド300を移動させる。図15示すように、ロボットハンド溶接ガンシステム100は、ロボットハンド300によってワーク500を把持してワーク500を搬送し、ワーク500を次の工程に移す。
【0052】
実施形態の効果を述べる。
【0053】
クランプユニット310、320、330が自重によって移動するため、本実施形態は、クランプユニット310、320、330の移動のためにアクチュエータのような駆動装置を必要とせず、ロボットハンド300のコンパクト化を図り得る。また、本実施形態は、ロボットハンド300のコンパクト化を通して、ロボットハンド溶接ガンシステム全体のコンパクト化を図り得る。
【0054】
クランプユニット310、320、330が、異なる位置に存する複数の保持位置のうちのいずれかの保持位置に移動できる。このため本実施形態は、保持すべき位置が異なる様々なワーク500を保持でき、汎用性に優れる。
【0055】
また本実施形態では、クランプユニット310、320、330が、移動して保持位置を変えることによって、保持すべき位置が異なる様々なワーク500を保持する。このため、クランプユニットが移動せず、例えば様々なワークに対応させて、固定したクランプユニットを予めロボットハンドに多数設けておく場合に比べ、少ないクランプユニットによって、保持すべき位置が異なる様々なワーク500を保持できる。したがって、本実施形態は、ロボットハンド300の重量増加を抑制しつつ汎用性を向上し得る。ロボットハンド300の重量増加を抑制できるため、その分、より重いワーク500を搬送できる。
【0056】
3つのクランプユニット310、320、330の各々が独立して移動するため、クランプユニット同士の相対位置を変えられる。したがって、本実施形態は、例えば2つのクランプユニットの相体的な位置関係が一定であるような場合に比べ、より多様なワーク500に対応でき、汎用性が高い。
【0057】
クランプユニットの数は、例えば2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。しかし、2つのクランプユニットによってワーク500を保持する場合、実施形態のように3つの場合に比べて不安定である。また、4つ以上のクランプユニットによってワーク500を保持する場合、安定してワーク500を保持できるが、3つの場合に比べクランプユニットの数が増加し、ロボットハンド300の重量が増す。
【0058】
したがって、実施形態のように3つのクランプユニット310、320、330がワーク500を保持し、かつ3つのクランプユニット310、320、330の位置関係が3角形の頂点の位置関係に対応することが、安定性および軽量化の面から好ましい。
【0059】
本実施形態は、ブレーキユニットによってクランプユニット310、320、330を停止させるため、レール340、350、360上の自由な位置でクランプユニット310、320、330を停止でき、ワーク500に合った適切な保持位置にクランプユニット310、320、330を位置決めできる。
【0060】
位置決め治具600に突き当ててクランプユニット310、320、330の位置決めを行うため、自重によってスライド移動するクランプユニット310、320、330が保持位置からずれて停止するのを防止できる。
【0061】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。
【0062】
例えば、本発明の保持部は、ワーク500を移動させるときにワーク500を保持するものであればよく、クランプの代わりに吸盤であってもよいし、クランプと吸盤との組み合わせであってもよい。だだし、吸盤に比べてワーク500の表面形状の制約を受け難く、多様なワーク形状に対応できるため、クランプユニットのように把持するものが好ましい。
【0063】
また、位置決め治具600は、実施形態に限定されず、クランプユニットを突き当てるものであればよい。例えば他の実施形態として、ポールを一本だけ有するものが挙げられる。この場合、ロボットハンド300の姿勢を3回変え、クランプユニット310、320、330とポールとの突き当てを3回繰り返すことによって、クランプユニット310、320、330を保持位置に移動させる。
【0064】
これに対し、本実施形態の位置決め治具600は、2本のポール620、630を有し、1回の姿勢変化で2つのクランプユニット310、330の位置決めができる。したがって、本実施形態は、前述の例に比べて姿勢変化の回数を抑えることができ、作業効率の面で好ましい。
【0065】
また、検出装置622、632をクランプユニット310、320、330側に設けてもよいが、実施形態のように位置決め治具600に設けることによって、ロボットハンド300を軽量化できる。
【0066】
また本実施形態では、ロボットハンド300によって、溶接後のワーク500を搬送するが、本発明はこれに限定するものではない。すなわち、溶接前に、ロボットハンド300によって、溶接する場所までワーク500を搬送してもよいし、溶接の前後に、ロボットハンド300によってワーク500を搬送するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】ロボットハンド溶接ガンシステムの概略構成図である。
【図2】図1の矢印2からの矢視図である
【図3】ロボットハンドの平面図である。
【図4】ロボットハンドとワークとの平面図である。
【図5】ロボットハンドの側面図である。
【図6】図5の矢印6からの矢視図である。
【図7】クランプユニットの動作を説明するためのロボットハンドの側面図である。
【図8】退避工程におけるロボットハンド溶接ガンシステムの概略図である。
【図9】退避工程におけるロボットハンド溶接ガンシステムの概略図である。
【図10】溶接工程におけるロボットハンド溶接ガンシステムの概略図である。
【図11】保持工程におけるロボットハンド溶接ガンシステムの概略図である。
【図12】保持工程におけるロボットハンド溶接ガンシステムの概略図である。
【図13】保持工程におけるロボットハンド溶接ガンシステムの概略図である。
【図14】保持工程におけるロボットハンド溶接ガンシステムの概略図である。
【図15】ワークを搬送するときのロボットハンド溶接ガンシステムの概略図である。
【符号の説明】
【0068】
100 ロボットハンド溶接ガンシステム、
200 溶接ガン、
206 固定電極、
208 可動電極、
300 ロボットハンド、
310、320、330 クランプユニット(保持部)、
311、312 クランプ爪、
313 クランプ、
314、324、334 油圧シリンダ、
340、350、360 レール(ガイド部)、
341、342、351、352、361、362 ストッパ、
343、353、363、622、632 検出装置、
344 ガイドブロック、
346、356、366 スライドベース、
345、355、365 ブレーキユニット(ブレーキ)、
400 コントローラ(制御部)、
410 ロボットアーム、
500 ワーク、
600 位置決め治具、
620、630 ポール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの先端に接続され、加工対象のワークを溶接するための溶接ガンと、
前記ロボットアームの先端に接続され、前記ワークを移動するためのロボットハンドと、
前記ロボットハンドに移動自在に備えられ、前記ワークを保持するための保持部と、を有し、
前記保持部は、前記ワークを移動するときに前記ワークを保持する保持位置と、前記ワークを溶接するときに前記溶接ガンから退避した退避位置との間を、自重によって移動するロボットハンド溶接ガンシステム。
【請求項2】
前記ロボットハンドに備えられ、前記保持部の移動をガイドするガイド部と、
前記ロボットアームの姿勢を制御することによって前記ロボットハンドの姿勢を制御する制御部と、をさらに有し、
前記制御部は、前記ロボットハンドの姿勢を制御することによって、前記ガイド部に沿って異なる位置に存する複数の保持位置のうちのいずれかの保持位置に、前記保持部を自重によって移動させる請求項1に記載のロボットハンド溶接ガンシステム。
【請求項3】
複数の前記保持部を有し、前記複数の保持部の各々は独立して自重によって移動する請求項1または請求項2に記載のロボットハンド溶接ガンシステム。
【請求項4】
前記保持部を停止させるブレーキをさらに有する請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のロボットハンド溶接ガンシステム。
【請求項5】
自重によって移動する前記保持部を突き当てて、前記保持部の位置決めを行う位置決め治具をさらに有する請求項4に記載のロボットハンド溶接ガンシステム。
【請求項6】
ロボットアームの先端に、加工対象のワークを溶接するための溶接ガンと、前記ワークを移動するためのロボットハンドとが接続されたロボットハンド溶接ガンシステムの動作方法であって、
前記ロボットハンドに移動自在に備えられ前記ワークを保持するための保持部を、前記保持部の自重によって、前記溶接ガンから退避した退避位置に移動させる退避工程と、
前記退避工程の後、前記溶接ガンによって前記ワークを溶接する溶接工程と、
前記溶接工程の後、前記ワークを移動するために、前記保持部を、前記保持部の自重によって、前記ワークを保持する保持位置に移動させる保持工程と、を有するロボットハンド溶接ガンシステムの動作方法。
【請求項7】
前記退避工程において、前記ロボットアームの姿勢を制御して前記ロボットハンドの姿勢を制御することによって、前記保持部は、前記ロボットハンドに備えられたガイド部に沿って移動がガイドされながら前記退避位置に自重によって移動し、
前記保持工程において、前記ロボットアームの姿勢を制御して前記ロボットハンドの姿勢を制御することによって、前記保持部は、前記ガイド部に沿って異なる位置に存する複数の保持位置のうちのいずれかの保持位置に自重によって移動する請求項6に記載のロボットハンド溶接ガンシステムの動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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