説明

ロボット教示システム

【課題】ロボットの教示作業に必要な時間を短縮することができ、ロボットを実際に動作させずにオフラインで教示することができるロボット教示システムを提供する。
【解決手段】ロボット教示システム10は、ロボット11と、ロボットコントローラ12と、ロボット11に取付自在のツール13と、ロボットコントローラ12とツール13とに接続されたツールコントローラ14とを備えている。ツールコントローラ14とロボットコントローラ12とを制御する制御部20は、加工位置情報25を入力する加工位置情報入力部21と、ツール13に合わせたロボット11の動作内容を求める動作内容演算部22と、この動作内容をロボットコントローラ12へ送る出力部23とを有している。このようにして、ロボット11の手動操作を行なうことなく加工位置情報25に基づいてロボット11の教示作業を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象に対して加工作業を行なうロボットを教示(ティーチング)するロボット教示システムに係り、とりわけロボットの教示作業に必要な時間を短縮することができるロボット教示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半田付け、ねじ締め等の作業をロボットに行なわせる場合、予め各作業に対応するツールをロボット先端に取付け、その後ロボットに各作業位置を教示する。この場合、ロボットを手動で実際に操作して位置決めを行ない、各作業位置を1箇所ずつロボットに教示する必要がある。
【0003】
このため、ロボットを実際に動作させることなくオフラインで教示作業を行なうことが難しく、ロボットの教示作業に時間がかかっている。
【0004】
すなわち図3に示すように、ロボットシステム50は、ロボット51と、ロボット51に接続されたロボットコントローラ52とを有している。ロボット51の教示作業を行なう際、ロボット51にツール53を取付け、ロボットコントローラ52を介してロボット51を操作して各作業位置を教示する。またこれと並行してツールコントローラ54を介してツール53の設定も行なう必要がある。
【特許文献1】特開平11−188778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、ロボットの教示作業に必要な時間を短縮することができ、ロボットを実際に動作させずにオフラインで教示することができるロボット教示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、加工対象に対して加工作業を行なうロボットを教示するロボット教示システムにおいて、ロボットと、ロボットに接続されたロボットコントローラと、ロボットに取付自在のツールと、ロボットコントローラに接続されるとともにツールに接続されたツールコントローラと、ツールコントローラとロボットコントローラとを制御する制御部とを備え、制御部は、加工対象に対する加工位置情報を入力する加工位置情報入力部と、加工位置情報入力部に接続され、この加工位置情報に基づいて対応するツールに合わせたロボットの動作内容を求める動作内容演算部と、この動作内容演算部で求めた動作内容をロボットコントローラへ送る出力部とを有することを特徴とするロボット教示システムである。
【0007】
本発明は、制御部は、加工対象に対する加工位置情報に基づいて、対応するツールの作業内容を特定する作業内容特定部を更に有し、制御部は、出力部を介して作業内容を対応するツールコントローラへ出力することを特徴とするロボット教示システムである。
【0008】
本発明は、制御部は、教示作業終了後にロボットコントローラおよびツールコントローラから切離されることを特徴とするロボット教示システムである。
【0009】
本発明は、ツールは、半田付け用ツール、ねじ締め用ツール、溶接用ツール、および塗装用ツール等からなる群から選択されることを特徴とするロボット教示システムである。
【0010】
本発明は、ツールは、交換装置を介してロボットに取付けられることを特徴とするロボット教示システムである。
【0011】
本発明は、ロボットの先端側に、ロボットに正しくツールが取付けられているかを判定する判定手段が設けられていることを特徴とするロボット教示システムである。
【0012】
本発明は、ツールコントローラは、ロボットコントローラにより制御されることを特徴とするロボット教示システムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロボットの手動操作を行なうことなく、加工対象に対する加工位置情報に基づいてロボットの教示作業を行なうことができるので、教示作業を短時間で正確に行なうことができる。
【0014】
また本発明によれば、制御部は各ツールの作業内容を特定する作業内容特定部を有しているので、各ツールが行なう作業内容をオフラインで容易に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図1乃至図2を参照して説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施の形態を示す全体構成図であり、図2は、複数のツールが用いられる場合におけるロボット教示システムを示す構成図である。
【0016】
まず、図1により、本実施の形態によるロボット教示システムの概略について説明する。
図1に示すように、ロボット教示システム10は、ロボット11と、ロボット11に接続されたロボットコントローラ12と、ロボット11に取付自在のツール13と、ロボットコントローラ12に接続されるとともにツール13に接続されたツールコントローラ14とを備えている。
【0017】
このうちロボット11は、加工対象に対して加工作業を行なうロボットであり、例えば直交ロボット、スカラロボット、垂直多関節ロボット等からなっている。またツール13は、後述するように、例えば半田付け用ツール、ねじ締め用ツール、溶接用ツール、および塗装用ツール等からなる群から適宜選択されるツールからなっている。
【0018】
また、ツールコントローラ14とロボットコントローラ12とを制御する制御部20が設けられている。この制御部20は、ワーク等の加工対象に対する加工位置情報25を入力する加工位置情報入力部21と、加工位置情報入力部21に接続され、この加工位置情報25に基づいて、対応するツール13に合わせたロボット11の動作内容を求める動作内容演算部22とを有している。また加工位置情報入力部21に、加工位置情報25に基づいて、対応するツール13の作業内容を特定する作業内容特定部24が接続されている。なお加工位置情報25としては、例えばDXFファイル等のCADデータ、あるいはガーバーデータ等のCAMデータを用いることができる。
【0019】
動作内容演算部22に、動作内容演算部22で求めた動作内容をロボットコントローラ12へ送る出力部23が接続されている。この出力部23は、作業内容特定部24にも接続されているので、作業内容特定部24からの作業内容を、出力部23を介して対応するツールコントローラ14へ出力することもできる。
【0020】
次に図2により、複数のツールを用いる場合におけるロボット教示システムの構成について説明する。
すなわち図2に示すように、ロボット教示システム10は、ロボット11に取付自在の複数のツール13(半田付け用ツール13A、ねじ締め用ツール13B、溶接用ツール13C、および塗装用ツール13D)と、各ツール13A〜13Dにそれぞれ接続されたツールコントローラ14(各ツールコントローラ14A〜14D)とを有している。
【0021】
このうち各ツール13A〜13Dに、それぞれツール側交換装置15Bが取付けられ、他方ロボット11に、各ツール側交換装置15Bと着脱自在なロボット側交換装置15Aが取付けられている。これらロボット側交換装置15Aとツール側交換装置15Bとにより交換装置15(ハンドチェンジャー)が構成される。すなわち各ツール13A〜13Dは、交換装置15を介してロボット11に取付けられるようになっている。
【0022】
またロボット11の先端側に、ロボット11に正しくツール13A〜13Dが取付けられているかを判定する判定手段16が設けられている。
【0023】
一方、制御部20は、コンピュータ20Aの中に設けられるとともに、イーサネット(登録商標)、RS232C等からなる接続部17を介してロボットコントローラ12およびツールコントローラ14A〜14Dと接続されている。またロボットコントローラ12は、接続部18を介して各ツールコントローラ14A〜14Dと接続されている。
【0024】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について、図1および図2を用いて説明する。
まず、DXFファイル等のCADデータまたはガーバーデータ等のCAMデータ等からなる加工位置情報25を加工位置情報入力部21に入力する。この場合、加工位置情報25は、予めコンピュータ20Aの中に蓄積されていても良く、あるいはコンピュータ20Aに接続された他の外部機器から入力されても良い。
【0025】
次に、この加工位置情報25が動作内容演算部22に送られ、動作内容演算部22は、加工位置情報25に基づいて、対応する各ツール13A〜13Dに合わせたロボット11の動作内容を求める。なお、ロボット11の動作内容とは、ロボット11が移動する位置、ロボット11の移動方法(移動速度、座標系等)、ロボット11の停止時間、およびロボットコントローラ12からの信号のオンオフ等、ロボット固有の制御内容を含む概念である。
【0026】
例えば加工位置情報25がプリント基板に関するデータである場合、動作内容演算部22は、半田付け用ツール13Aが半田付け作業を行なうためのデータ(例えば穴の位置、穴径、線の太さ等)を抽出し、ロボット11の動作内容(ロボット座標に変換した穴位置、移動速度、穴位置での停止時間等)を求める。あるいは、加工位置情報25がねじ締め加工を行なうワークのデータである場合、動作内容演算部22は、ねじ締め用ツール13Bがねじ締め作業を行なうためのデータ(例えばワークの形状、ねじ穴の位置、ねじの大きさ等)を抽出し、ロボット11の動作内容(ロボット座標に変換したねじ穴位置、移動速度、ねじ穴位置での停止時間等)を求める。また溶接用ツール13Cおよび塗装用ツール13Dの場合も同様にして、各作業を行なうためのデータを抽出し、ロボット11の動作内容を求める。
【0027】
この際、動作内容演算部22は、用いられる各ツール13A〜13Dの形状も考慮に入れ、各ツール13A〜13Dの先端と加工対象の加工位置とが一致するように動作内容を適宜補正する。なお、動作内容演算部22において、ユーザが、不要な位置データを削除したり位置データを修正したりする等、動作内容の微調整が行なえるようになっていても良い。
【0028】
一方、加工位置情報25は作業内容特定部24にも送られる。作業内容特定部24は、加工位置情報25に基づいて、対応する各ツール13A〜13Dの作業内容を特定する。例えば加工位置情報25がプリント基板に関するデータである場合、作業内容特定部24は、半田付け用ツール13Aが行なう半田付け作業に関する作業内容を特定する。この場合、半田付け用ツール13Aの作業内容は、例えば半田の繰出し量、温度等を含む。また加工位置情報25がねじ締め加工を行なうワークのデータである場合、作業内容特定部24は、ねじ締め用ツール13Bが行なうねじ締め作業に関する作業内容を特定する。この場合、ねじ締め用ツール13Bの作業内容は、例えばねじの大きさ、長さ等を含む。また溶接用ツール13Cの作業内容は、例えば溶接温度等を含む。また塗装用ツール13Dの作業内容は、例えば塗布形状(円形、四角形等)、塗布量、塗布圧力等を含む。なお、作業内容特定部24において、ユーザが、作業内容特定部24が提示したいくつかの作業プロファイルから特定の作業内容を選択できるようになっていても良い。
【0029】
次に、動作内容演算部22で求められたロボット11の動作内容は、出力部23を介してロボットコントローラ12へ送られる。また作業内容特定部24で特定された作業内容は、出力部23を介して各ツールコントローラ14A〜14Dへ送られる。
【0030】
このようにして、ロボット11を実際に手動で操作することなく、ロボット11の教示作業をオフラインで完了させることができる。また各ツール13A〜13Dの作業内容の設定をオフラインで行なうことができる。
【0031】
このようにして教示作業が終了した後、ロボットコントローラ12は、教示内容に沿ってロボット11を実際に動作させる。この際ロボット11は、交換装置15を介して適宜ツール13A〜13Dを持替えて加工作業を行なう。この間、各ツールコントローラ14A〜14Dは、接続部18を介してロボットコントローラ12により制御されるので、各ツール13A〜13Dの動作をロボット11の動作に同期させることができる。
【0032】
なお、教示作業終了後に接続部17を取外し、制御部20(コンピュータ20A)をロボットコントローラ12および各ツールコントローラ14A〜14Dから切離しても良い。すなわち通常のロボット11動作時には、制御部20を用いなくても良い。
【0033】
このように、本実施の形態によれば、ロボット11の手動操作を行なうことなく、加工対象に対する加工位置情報に基づいてロボット11の教示作業を行なうことができるので、教示作業を短時間で正確に行なうことができる。
【0034】
また、本実施の形態によれば、制御部20は各ツール13A〜13Dの作業内容を特定する作業内容特定部24を有しているので、各ツール13A〜13Dが行なう作業内容をオフラインで容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明によるロボット教示システムの一実施の形態を示す全体構成図。
【図2】複数のツールが用いられる場合におけるロボット教示システムを示す構成図。
【図3】従来のロボットシステムを示す概略図。
【符号の説明】
【0036】
10 ロボット教示システム
11 ロボット
12 ロボットコントローラ
13 ツール
13A 半田付け用ツール
13B ねじ締め用ツール
13C 溶接用ツール
13D 塗装用ツール
14(14A〜14D) ツールコントローラ
15 交換装置
16 判定手段
17 接続部
18 接続部
20 制御部
21 加工位置情報入力部
22 動作内容演算部
23 出力部
24 作業内容特定部
25 加工位置情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象に対して加工作業を行なうロボットを教示するロボット教示システムにおいて、
ロボットと、
ロボットに接続されたロボットコントローラと、
ロボットに取付自在のツールと、
ロボットコントローラに接続されるとともにツールに接続されたツールコントローラと、
ツールコントローラとロボットコントローラとを制御する制御部とを備え、
制御部は、加工対象に対する加工位置情報を入力する加工位置情報入力部と、加工位置情報入力部に接続され、この加工位置情報に基づいて対応するツールに合わせたロボットの動作内容を求める動作内容演算部と、この動作内容演算部で求めた動作内容をロボットコントローラへ送る出力部とを有することを特徴とするロボット教示システム。
【請求項2】
制御部は、加工対象に対する加工位置情報に基づいて、対応するツールの作業内容を特定する作業内容特定部を更に有し、制御部は、出力部を介して作業内容を対応するツールコントローラへ出力することを特徴とする請求項1記載のロボット教示システム。
【請求項3】
制御部は、教示作業終了後にロボットコントローラおよびツールコントローラから切離されることを特徴とする請求項1記載のロボット教示システム。
【請求項4】
ツールは、半田付け用ツール、ねじ締め用ツール、溶接用ツール、および塗装用ツール等からなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載のロボット教示システム。
【請求項5】
ツールは、交換装置を介してロボットに取付けられることを特徴とする請求項1記載のロボット教示システム。
【請求項6】
ロボットの先端側に、ロボットに正しくツールが取付けられているかを判定する判定手段が設けられていることを特徴とする請求項5記載のロボット教示システム。
【請求項7】
ツールコントローラは、ロボットコントローラにより制御されることを特徴とする請求項1記載のロボット教示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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