説明

ロボット用電力供給システム

【課題】独立して移動する移動型ロボットと、該移動型ロボットに電力を供給する電力供給部とを備えるロボット用電力供給システムにおいて、電力供給時に確実にかつ簡単に移動型ロボットの非常停止を行うこと。
【解決手段】移動型ロボットと、該移動型ロボットに対して電力を供給する固定型電力供給部とからなるロボット用電力供給システムにおいて、固定型電力供給部に、独立して設けられた電力供給側非常停止回路と、該電力供給側非常停止回路を作動させる回路作動部とを設けるとともに、移動型ロボットに、独立して設けられたロボット側非常停止回路と、該ロボット側非常停止回路を作動させるスイッチとを設け、固定型電力供給部から移動型ロボットに電力を供給する際に、ロボット側非常停止回路が、電力供給側非常停止回路を作動させるための回路作動部と電気的に接続されるように構成することで、ロボット側非常停止回路を作動可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定位置に設置された充電ステーション等の固定型電力供給部と、この固定型電力供給部に対して独立して移動可能であるとともに、この電力供給部から電力を供給される移動型ロボットから構成されるロボット用電力供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、作業現場に固定され、所定の作業を行わせる産業用ロボットが知られている。このようなロボットの動作を安全に制御するために、電力供給がされたロボットの動作を緊急に停止させるための非常停止回路をロボットに設けることが一般的である。しかしながら、このような産業用ロボット自体が作業現場に設置されるため、ロボット本体にこのような非常停止回路を作動させる作動部を設けたとしても、作業者がその作動部を作動させるためには作業現場に行かなければならず、現実的に非常停止を行うことが難しい。
【0003】
そこで、ロボットを安全に非常停止用させるために、該ロボットの動作を制御する教示装置(ティーチングペンダント)などにロボットの動作を停止させるための非常停止回路を設け、この教示装置を介してロボットを停止させる技術が開発されている。(例えば特許文献1、2参照)
【0004】
ところで、近年においては、作業現場に固定された産業用ロボットのみならず、屋内や屋外を移動し、予め定められた作業や自律動作を行う移動型ロボットが開発されつつある。このような移動型ロボットは、内部に充電可能なバッテリーを備え、このバッテリーに蓄えられた電気容量が所定量以下に減少すると、指定された位置座標等の目標地点に設けられた充電ステーションまで自律的に移動するなどの制御が予め組み込まれるのが一般的である。また、このような充電ステーションは移動型ロボットと独立して、すなわち物理的に分離して設けられており、移動型ロボットは充電する必要の無い場合に自由な動作を行うことを可能にしている。
【特許文献1】実開平6−11982号公報
【特許文献2】実開昭60−11792公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような移動型ロボットを充電するための電力供給システムにおいては、通常、電力供給を行う充電ステーション側において、非常時に電力供給等を停止するための非常停止回路が設けられる。しかしながら、移動型ロボットを充電している際に、その非常停止回路を作動させても、移動型ロボットのバッテリーに電力が蓄えられていると、移動型ロボットは動作を継続することができるため、電力供給を行う充電ステーションに非常停止回路を設けただけでは、移動型ロボットの非常停止を行うことができない。そのため、移動型ロボットの内部にも動作を停止させるための非常停止回路を組み込む必要が生じるが、移動型ロボットは自律的に独立して移動するため、移動型ロボットを緊急に停止させるためには、外部からこの非常停止回路を作動させるための信号を無線などの信号送信手段により移動型ロボットに向けて送信し、この回路を作動させる必要がある。
【0006】
しかしながら、このような無線等の通信により非常停止を行う信号を送信する場合、信号の送受信の信頼性が十分に得られないと、確実に非常停止を行うことができない。したがって、このような無線による非常停止を行うことは非常停止を行う信頼性の問題上、好ましいとは言えず、移動型ロボットを確実に停止させるためには、移動型ロボットの内部に設けられた非常停止回路を作動させる作動部(スイッチなど)を、移動型ロボット本体に設けることになる。
【0007】
しかしながら、移動型ロボットは自律的に移動するため、外部と接触しやすい位置にそのような作動部を設けると、偶然の接触により作動部が作動し、非常停止が行われてしまう場合がある。したがって、このような作動部は外部と接触しにくい位置に設ける必要があるが、そのためロボット側に設けた作動部によりロボットを非常停止させる作業が煩雑になるという問題がある。
【0008】
さらに、ロボットの外形(意匠)の問題上、作動部を設ける位置に制約が生じる場合もある。そのため、このような移動型ロボットに設けた非常停止回路を確実に作動させるために、ロボットの取り得る構造に制約が生じ、設計上の問題となっていた。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、独立して移動する移動型ロボットと、該移動型ロボットに電力を供給する電力供給部とを備えるロボット用電力供給システムにおいて、電力供給時に確実にかつ簡単に移動型ロボットの非常停止を行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるロボット用電力供給システムは、自律的または規定の制御プログラムに基づいて動作する移動型ロボットと、該移動型ロボットに対して物理的に接触することで電力を供給する固定型電力供給部と、から構成されるとともに、前記固定型電力供給部において、独立して設けられた電力供給側非常停止回路と、該電力供給側非常停止回路を作動させる回路作動部とが備えられ、さらに、移動型ロボットにおいて、独立して設けられたロボット側非常停止回路と、該ロボット側非常停止回路を作動させるスイッチとが備えられ、前記固定型電力供給部から移動型ロボットに電力を供給する際に、前記ロボット側非常停止回路が、前記電力供給側非常停止回路を作動させるための回路作動部と電気的に接続され、前記回路作動部を操作することによって、該ロボット側非常停止回路を作動可能にしたことを特徴としている。
【0011】
このようなロボット用電力供給システムは、移動型ロボットに設けられた非常停止回路が、移動型ロボットの充電時において固定型電力供給部の非常停止回路を作動させる回路作動部に連動して作動するため、移動型ロボットの充電時において、移動型ロボットの非常停止回路をも作動させることが可能となる。そのため、移動型ロボットの電力供給時において、確実にかつ簡単に移動型ロボットの非常停止を行うことが可能となる。
【0012】
なお、前記固定型電力供給部から移動型ロボットに電力を供給する際に、電力供給側非常停止回路が前記ロボット側非常停止回路を作動させるためのスイッチに対して電気的に接続され、前記移動型ロボットに備えられたスイッチを切り換えることにより、前記電力供給側非常停止回路を作動するように構成することがより好ましい。このようにすると、移動型ロボットの充電中において、移動型ロボット側を非常停止させる際に、併せて固定型電力供給部も非常停止させることが可能となる。
【0013】
このようなロボット用電力供給システムの一例としては、回路開閉部により電気的に開いた状態を取り得る閉回路が移動型ロボット側に設け、前記固定型電力供給部から移動型ロボットに電力を供給する際に、前記閉回路を介してロボット側非常停止回路をと前記固定型電力供給部側の回路作動部とが電気的に接続し、前記回路開閉部により閉回路を開いた状態にすることで、前記固定型電力供給部側の回路作動部の操作に連動させる構成が考えられる。このようにすると、固定型電力供給部に設けられた非常停止回路を、簡単に移動型ロボットのスイッチに連動させて作動させることが可能となる。なお、前記回路開閉部としては、リミットスイッチなど、安定した作動性を有するとともに、安価なものが好適に用いられる。
【0014】
また、このようなロボット用電力供給システムにおいては、前記移動型ロボットは、固定型電力供給部から電力を供給されるものであれば、特にその構成が限定されるものではないが、ロボット内部にバッテリーが設けられ、前記移動型ロボットと固定型電力供給部とが物理的に分離して構成されているものであってもよい。このようなロボット用電力供給システムにおいては、移動型ロボットの充電時においては、ロボットが固定型電力供給部と電気的に接続し、前記バッテリーに対して電力供給部から電力が供給される。
【0015】
なお、本発明は、必要なときにのみ充電を行うようなロボット用電力供給システムに限られるものではなく、例えば有線(電力供給線)を介して固定型電力供給部に接続され、この電力供給線を介して移動型ロボットに常に電力が供給されるものであってもよい。この場合、電力供給線を介して、前記ロボット側非常停止回路と、前記電力供給側非常停止回路を作動させるための回路作動部とが電気的に接続されることになる。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように、本発明によると、固定型電力供給部から電力を供給される移動型ロボットを、その電力供給時に確実にかつ簡単に非常停止を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の実施の形態1.
以下に、図1から図9を参照しつつ本発明の実施の形態に係るロボット用電力供給システムについて説明する。この実施の形態においては、ロボット用電力供給システムを構成する移動型ロボットは1対の車輪を駆動することで平面上を自律的に移動する車輪駆動型のロボットであり、固定型電力供給部はロボットの移動領域内に設置された充電ステーションである例を示すものとする。
【0018】
図1は、移動する平面としての床部F上の限られた移動領域P(破線に囲まれた領域)内を、移動型ロボット1が移動する一実施形態を概略的に示すものである。この実施の形態においては、移動領域P内には充電ステーション100が載置されており、移動型ロボット1は、移動領域P内を自律的に移動することができるものとする。
【0019】
この移動型ロボット1は、一対の対向する2つの駆動輪を備えるとともに、床面P上に部分的に搭乗された物体(障害物)を避けるように移動可能に構成されている。以下、詳細に説明する。
【0020】
図2に示すように、移動型ロボット1は、移動体本体10と、移動体本体10に一体的に固定された支持軸C(図示せず)に対して各々独立して回転可能な、1対の対向する駆動輪W1および駆動輪W2と、を備えている。そして、移動体本体10は、箱型形状の胴体部12と、胴体部12の上部に回動自在に接続された頭部11と、胴体部12の両側に各々一端が接続されたアーム部としての右腕部21および左腕部22と、これらの両腕部の他端に各々接続された保持部としての右ハンド部31、左ハンド部32と、を備えている。
【0021】
胴体部12は、図3に示すように、箱型形状をなすフレームの内部において、1対の対向する駆動輪W1、駆動輪W2(以下、単に駆動輪という)を支持する支持軸C(C1,C2)を備え、この支持軸Cを駆動する駆動部としてのモータ131、132と、鉛直方向に対する傾斜度合いを検出するジャイロ14と、前述の駆動輪を駆動するための制御信号を作成し、モータ131、132にその制御信号を送信する制御部15と、これらの構成要素に電力を供給するためのバッテリー16と、その前方に配置され、移動する床面の形状等や障害物等を光学的に認識するための検出部17、17を備えている。
【0022】
モータ131、132は、前述の駆動輪を各々独立して駆動するものであり、これらの駆動輪の回転数を制御部15からの制御信号により変化させることで移動型ロボット1の進行方向を変化させたり、旋回動作を行ったりすることを可能とする。なお、モータには、電力供給により過熱状態となることを検出するための図示しない温度センサが設けられ、この温度センサにより過熱状態を検出し、後述する制御部に検出信号を出力することで、モータによる最大トルクの出力ができなくなるといった状態を回避することができる。
【0023】
ジャイロ14は、胴体部12の鉛直方向に対する傾斜度合いを検出するセンサであり、自身の位置が鉛直方向から所定時間の間に傾斜する量、例えば傾斜角速度を検出し、検出した角速度を電気信号に変換して出力可能に構成されている。検出した傾斜角速度に基づいた傾斜角速度信号を制御部15に送信する。そして、移動型ロボット1の移動中に微小時間間隔で検出される、移動体の傾斜角速度を積分することで、移動体本体10(胴体部12)の傾斜量を求めることができる。なお、ジャイロから出力される電気信号は、図示しないフィルターを介してノイズ等が除去された後に、制御部15に送信される。また、本実施形態では胴体部12の移動方向(前後方向)についての傾斜角のみを検出するものを用いているが、左右方向についての傾斜角を検出するセンサを用いることも可能である。
【0024】
制御部15は、所定のCPUやメモリなどの記憶領域15aを備える小型のコンピュータであり、この記憶領域15aには、入力される信号に基づいて駆動輪を駆動する駆動量を決定するための所定のプログラムとともに、移動する移動領域に関するマップ情報などが記憶されている。この駆動輪を駆動するために入力される信号としては、前述のジャイロ14から送信される傾斜角信号などが用いられる。
【0025】
また、制御部15は、移動型ロボット1の倒立状態を維持するための制御を行うための倒立制御を行う。具体的には、図4に示すような、移動型ロボット1の駆動輪が床面Pに対して接地する接地点から鉛直方向に伸びる、車軸Cを通る直線と、移動型ロボット1の重心位置と車軸Cとを結ぶ直線とが目標傾斜角度η(例えばη=0度)をなすように駆動輪W1、駆動輪W2の回転駆動を制御する。これによって、移動体が所定の倒立状態を維持し続けるように、前進および後退する移動動作を行うことができる。この傾斜角度ηは、前述したように移動型ロボット1に設けられたジャイロ14によって求められる。このように、床面に対して接地する一対の駆動輪に適切なトルクが付与されることで、移動体本体が鉛直方向に対してなす傾斜角度がある一定の値を超えて増加しないように倒立状態が保たれ、かつ、その倒立状態を維持するように移動制御される。
【0026】
そして、制御部15は、駆動輪を倒立制御により駆動するだけではなく、所定の位置に対して駆動輪を移動させるように駆動輪の回転駆動を制御するような、いわゆる位置制御により駆動輪を駆動する制御を行う。このような倒立制御と位置制御による駆動輪の駆動制御の切り換えは、制御部15により自律的に判断して行うことが可能である。
【0027】
さらに、制御部15は、駆動輪を駆動して倒立制御や位置制御を行うだけでなく、記憶領域15a内に記憶されたプログラム等にしたがって、アーム部(右腕部21および左腕部22)の駆動やハンド部(右ハンド部31および左ハンド部32)の駆動動作など、移動型ロボット1の全体の動作を制御する。特に、後述するハンド部により物体を把持するために、把持対象となる物体の形状や素材に対応する把持動作の制御データに関するデータテーブルを、前述した記憶領域15a内に記憶しており、これらのデータテーブルから適宜制御データを読み出すことによって、ハンド部の動作を制御することができる。このような制御によって、例えば荷物の運搬などのアーム部を用いた所定の作業を行うことが可能となる。
【0028】
さらに、制御部15は、記憶領域15aに記憶したマップ情報などに基づいて、その移動経路を自律的に作成する。このマップ情報は、移動する床面Pの全体形状に、略一定間隔に配置された格子点を結ぶグリッド線を仮想的に描写することで得られるグリッドマップから構成されており、このグリッド線で囲まれたグリッド単位を用いて、移動型ロボット1の自己位置に相当する場所や目標地点である移動終了点、および移動終了点における移動型ロボット1の移動方向などが特定される。なおグリッドマップにおける格子点の間隔は、移動型ロボット1の移動可能な曲率や絶対位置を認識する精度などの条件に応じて、適宜変更可能である。そして、制御部15は、このグリッドマップ上において特定された自己位置を移動始点とし、この移動始点から目的地である移動終点までの移動経路を作成するとともに、駆動輪の回転数などから求めた移動速度や移動距離からリアルタイムに自己位置を算出し、作成された移動経路に沿って移動を行うように移動制御を行う。
【0029】
バッテリー16は、胴体部12の表面から突出して設けられた被充電用端子161(図5参照)に対して電気的に導通しており、後述する充電ステーションに設けられた充電用端子と、前述の被充電用端子161とを接触させることで、電力が供給され、充電される。バッテリー16に蓄えられた電力の残量は、制御部15によって定期的に監視されている。なお、バッテリー16と制御部15との間には、図5に示すように、バッテリー16には胴体部内部に設けられた非常停止回路162が接続され、非常停止回路162を作動させるためのスイッチ163を操作することで、バッテリーからの電力供給が停止し、移動型ロボット1の動作を非常停止させることができる。なお、スイッチ163は移動体本体10の外部に突出するように設けられており、外部からの簡単な操作により非常停止を行うことが可能となる。以下、この非常停止回路162を作動させるための詳細な構造について説明する。
【0030】
スイッチ163により非常停止回路162を作動させる構成は、図5に示すように、3つの独立した回路(回路160a、回路160b、回路160c)により構成されている。回路160aは、スイッチ163を操作することにより電気的に接続した状態および切断した状態を切り換え可能な切り換え回路であり、移動型ロボット1が充電ステーションから独立した状態(充電されていない状態)においては、スイッチ163の操作により非常停止回路162を単独で作動させるための回路を構成している。
【0031】
回路160bは、被充電用端子161に備えられた端子161aおよび端子161bに各々リード線を介して接続された、同じくスイッチ163を操作することにより電気的に接続した状態および切断した状態を切り換え可能な切り換え回路である。この回路160bは、移動型ロボット1が充電ステーションから独立した状態(充電されていない状態)においては移動型ロボット1の動作に何ら影響を及ぼすことがない。
【0032】
回路160cは、被充電用端子161に備えられた端子161cおよび端子161dを各々リード線を介して非常停止回路162に接続したものであり、その接続途中においてリミットスイッチLS1により閉回路を形成している。このリミットスイッチLS1が閉じられた状態においては、前述のように閉回路が構成され、この回路160cが非常停止回路161の作動に及ぼす影響はないが、リミットスイッチLS1が開いた状態になると、非常停止回路162が端子161cおよび端子161dに接続された状態となり、後述するように外部からの信号により非常停止回路161を作動させ得る状態となる。この非常停止回路161を外部から作動させるための構成については、その詳細を後述する。
【0033】
検出部17は、胴体部12の下方前面について左右対称に設置されており、各々赤外線レーザを照射するとともに、そのレーザの照射方向を水平方向および鉛直方向について揺動するように変化させ、その反射光を受光することで、胴体部12の前面下方の床面形状を検出するものである。この検出部17により検出された床面形状に関する情報によって、床面上に存在する段差や障害物等の凸部に関する高さや、移動型ロボット1の現在位置から凸部までの距離などが求められる。
【0034】
頭部11は、その前面にカメラ111、112を備えており、移動型ロボット1の周囲に存在する人物や物体を光学的に撮像し、その撮像データを制御部15に送信する。制御部15は、これらのカメラ111、112により得られた撮像データより、周囲の環境を判断し、自律的に移動する方向や行動パターンを選択し、駆動輪W1、W2やアーム部等の駆動制御を行う。
【0035】
右腕部21および左腕部22は、胴体部12にその一端が接続されるとともに、人間の肩部や肘部に相当する箇所に複数の関節部分を備え、これらの関節部分において自在に関節駆動可能に構成されている。この関節駆動により、右腕部21および左腕部22はその姿勢を自在に変更し、外観を変形させることができる。
【0036】
また、これらの右腕部21および左腕部22の他端には、各々右ハンド部31、左ハンド部32が接続されている。これらのハンド部は、詳細については省略するが、関節駆動する複数の指部と、これらの指部を支持する支持部とを備えており、制御部15からの制御信号によってこれらの指部を関節駆動させることにより、頭部11に備えられたカメラ111、112により認識した物体を把持することができる。なお、認識した物体の形状や素材に応じて、これらの指部の駆動する関節や駆動する力の大きさや速度が適宜選択される。
【0037】
次に、充電ステーション100について、図6を用いて説明する。図6に示すように、充電ステーション100は、充電器本体101と、充電器本体101からを制御するためのコントローラ103と、を備えている。コントローラ103は、充電器本体101の動作、すなわち充電作業等を停止するための非常停止回路(電力供給側非常停止回路)201と、非常停止回路201を作動させるための回路作動部202と、充電用端子203と、を備えている。そして、移動型ロボット101のバッテリー16に対して電力を供給するために、該コントローラ103に設けられた充電用端子203と、充電用端子203をロボット側の被充電用端子161に接触させることで、充電器本体101からバッテリー16に対する充電を行う。
【0038】
コントローラ103に設けられた回路作動部202は、押しボタンやレバーなどの簡単な操作によりON/OFF動作が可能な所定の形状で構成される操作部であり、充電ステーション(すなわち充電器本体)を非常停止させたい場合に外部から操作されるものである。この非常停止回路201を回路作動部202により作動させるための詳細な構成について、以下に説明する。
【0039】
回路作動部202により非常停止回路201を作動させる構成を、図6を用いて説明する。図6に示すように、回路作動部202により非常停止回路201を作動させる構成は、3つの独立した回路(回路103a、回路103b、回路103c)により構成されている。回路103aは、回路作動部202を操作することにより電気的に接続した状態および切断した状態を切り換え可能な切り換え回路であり、移動型ロボット1が充電ステーションから独立した状態(充電されていない状態)においては、回路作動部202の操作により非常停止回路201を単独で作動させるための回路を構成している。
【0040】
回路103bは、充電用端子203に備えられた端子203cおよび端子203dに各々リード線を介して接続された、同じく回路作動部202を操作することにより電気的に接続した状態および切断した状態を切り換え可能な切り換え回路である。この回路103bは、移動型ロボット1を充電しない状態においては、充電ステーションの動作に何ら影響を及ぼすことがない。
【0041】
回路103cは、充電用端子203に備えられた端子203aおよび端子203bを各々リード線を介して非常停止回路201に接続したものであり、その接続途中においてリミットスイッチLS2により閉回路を形成している。このリミットスイッチLS2が閉じられた状態においては、前述のように閉回路が構成され、この回路103cが非常停止回路201の作動に及ぼす影響はないが、リミットスイッチLS2が開いた状態になると、非常停止回路201が端子203aおよび端子203bに接続された状態となり、後述するように、外部からの信号により非常停止回路201を作動させ得る状態となる。なお、本実施形態においては、前述の説明から明らかなように、移動型ロボットにおける非常停止回路161を作動させる構成と、充電ステーション100に内蔵される非常停止回路201を作動させる構成とは、ほぼ同様の構成を有している。
【0042】
次に、前述した移動型ロボット1が充電ステーションにより充電されている際に、移動型ロボットに内蔵される非常停止回路を作動させるための構成について、図7を用いて詳細に説明する。
【0043】
移動型ロボット1が制御部15により充電が必要と判断されると、移動型ロボット1は、その移動目的地を充電ステーションへと変更し、この目的地までの移動を行う。充電ステーション100に到達した移動型ロボット1は、被充電用端子161を充電ステーション100の充電用端子203へ接触させるように、詳細にその位置決めを行い、充電ステーションに対して相対的に近接する。これによって、図7に示すような、被充電用端子161と、充電用端子203とが接触した状態を取り得ることができる。
【0044】
なお、被充電用端子161と、充電用端子203とが接触した際、移動型ロボット1に設けられたリミットスイッチLS1および充電ステーション100に設けられたリミットスイッチLS2は、図7に示すように各々開いた状態となる。すなわち、各々のリミットスイッチが開くことによって、回路160bが閉じた状態から開いた状態へと変化する。このとき、端子161cおよび端子161dが充電ステーション100側の端子203cおよび203dと接触し、移動型ロボット1側の回路160cと充電ステーション100側の回路103bとにより閉じた回路が形成されるため、この状態では非常停止回路162は作動しない。
【0045】
同様に、リミットスイッチLS1が開くことによって、充電ステーション100側の回路103cも開いた状態となるが、充電ステーション側の端子203aおよび端子203bが、移動型ロボット1の端子161aおよび端子161bと接触し、充電ステーション100側の回路103cと移動型ロボット1側の回路160bとにより閉じた回路が形成されるため、この状態では非常停止回路201は作動しない。
【0046】
このように、移動型ロボット1が充電ステーション100により充電可能な状態、すなわち移動型ロボット1の被充電用端子161に備えられた端子161a,161b,161c,161dの各々が、充電ステーション100の充電用端子に備えられた端子203a,203b,203c,203dに接続されると、各々の非常停止回路が、スイッチ163および回路作動部202により作動可能な状態となる。以下、詳細に説明する。
【0047】
図8は、図7に示すような被充電用端子161と、充電用端子203とが接触した状態において、充電ステーション100に設けられた回路作動部202を操作した様子を示している。このように回路作動部202が操作されると、前述した回路103aおよび回路103bが開く。これによって、充電ステーション100側の非常停止回路201が作動するとともに、回路103bおよび回路160cにより構成されていた閉回路が開くため、移動型ロボット1側の非常停止回路162も作動する。これによって、充電ステーションからの電力供給を停止するとともに、移動型ロボット1の動きも停止させることが可能となる。
【0048】
図9は、同様に、図7に示すような被充電用端子161と、充電用端子203とが接触した状態において、移動型ロボット側のスイッチ163を操作した様子を示している。図9に示すように、移動型ロボット側のスイッチ163が操作されると、移動ロボット側の回路160aおよび回路160bが開く。これによって、移動型ロボット1側の非常停止回路162が作動するとともに、回路160bおよび回路103cにより構成されていた閉回路が開くため、移動型ロボットの動きを停止させることができるとともに、充電ステーション100側の非常停止回路201を作動させ、充電ステーションからの電力供給を停止させることができる。
【0049】
以上、説明したように、前述した実施形態によると、移動型ロボットの充電中において、移動型ロボットの非常停止回路を作動させるスイッチ、および充電ステーションの非常停止回路をさせる回路作動部のいずれを操作しても、各々の非常停止回路を作動させることができる。したがって、充電ステーションから電力を供給される移動型ロボットの動作を、その電力供給時において、確実にかつ簡単に非常停止させることが可能となる。
【0050】
また、移動型ロボットの停止を外部より確実に行うことができるため、移動型ロボットに設ける非常停止用のスイッチの位置を通常は外部から接触し難い位置に設けたとしても問題がない。そのため、ロボットの外形(意匠)の制約が減少し、デザインの自由度が増すという効果も得られる。
【0051】
なお、本実施形態においては、移動型ロボットの非常停止回路を作動させるスイッチ、および充電ステーションの非常停止回路をさせる回路作動部のいずれを操作しても、各々の非常停止回路を作動させる構成としているが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、移動型ロボットのスイッチを、充電ステーションの非常停止回路に連動させる必要がない場合においては、充電ステーション側に設けた閉回路(閉回路103c)を設けなくともよい。
【0052】
さらに、本発明は、前述のような、バッテリーに蓄えられた電力が減少した際にのみ充電を行うようなロボット用電力供給システムに限られるものではない。例えば有線(電力供給線)を介して固定型電力供給部に常時接続され、この電力供給線を介して移動型ロボットに常に電力が供給されるものであってもよい。この場合、図7〜9に示すような移動型ロボットと固定型電力供給部(充電ステーション)とを接続するリード線を、所定の長さを有する被覆したフレキシブルなケーブルにより構成し、移動型ロボットが固定型電力供給部に対して自由な動きを取り得るようにすると好適である。このようにすると、移動型ロボットに対して電力が常に供給されるため、移動型ロボット内に設けられたバッテリーの残量等を監視する等の必要がなくなるとともに、ロボットの連続して作業を行わせることができる時間を長くすることが可能となる。このような例としては、例えば倉庫内での荷物の入出力をロボットにより行い、その入出力の記録等を管理可能な自動倉庫などにおいて好適に用いることができる。
【0053】
また、前記移動型ロボットおよび固定型電力供給部において用いられる、回路開閉部としてのリミットスイッチは、確実にその切り換え動作を行わせるために、国際安全規格で定められた安全カテゴリについて、高い安全レベルのものを用いることが好ましい。好適には、国際安全規格で定められた安全カテゴリ4以上の部品を用いると、好適である。
【0054】
また、前述の実施形態においては、移動型ロボットの移動経路は、グリッドマップを用いつつ特定される例を用いて説明しているが、これに代えて、室内GPSやその他の手段により作成することも可能である。いずれの手段によって移動経路が作成される場合であっても、移動型ロボットが、固定型電力供給部(充電ステーション)に対して近接する、固定型電力供給部(充電ステーション)近くの所定エリア内における移動経路については、特に精度よく経路を特定するように移動経路を作成することが好ましい。
【0055】
また、前述の実施形態において、移動型ロボットの一例として、車輪を駆動することで移動する倒立2輪型の移動体を例に挙げて説明を行っているが、これに代えて、脚式歩行型のロボットや、倒立2輪型ではない、通常の車輪駆動により移動する移動型ロボットにおいても、本発明を適用することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態に係るロボット用電力供給システムの一例を概略的に示す概略図である。
【図2】図1に示すロボット用電力供給システムに含まれる、移動型ロボットの外観を概念的に示す概略図である。
【図3】図1および2に示す移動型ロボットの胴体部における内部構成を概略的に示す概略図である。
【図4】図2に示す移動型ロボットを側面から見た様子を概略的に示す図である。
【図5】図1から4に示す移動型ロボットについて、移動型ロボットの動作を停止するための非常停止回路を作動させる内部構成を具体的に示す回路図である。
【図6】図1に示す充電ステーションについて、充電ステーションの動作を停止するための非常停止回路を作動させる内部構造の具体的に示す回路図である。
【図7】図5に示す移動型ロボットが図6に示す充電ステーションに接続された様子を示す図である。
【図8】移動型ロボットの充電中において、充電ステーション側の回路作動部を操作した様子を示す図である。
【図9】移動型ロボットの充電中において、移動型ロボット側のスイッチを操作した様子を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1・・・移動型ロボット
10・・・移動体本体
13・・・駆動部(モータ)
15・・・制御部
15a・・・記憶領域
16・・・バッテリー
160c・・・閉回路
161・・・被充電用端子
162・・・非常停止回路(ロボット側非常停止回路)
163・・・スイッチ
100・・・充電ステーション(固定型電力供給部)
101・・・充電器本体
103・・・コントローラ
103c・・・閉回路
201・・・非常停止回路電力供給側非常停止回路)
202・・・回路作動部
203・・・充電用端子
LS1,LS2・・・リミットスイッチ(回路開閉部)
F・・・平面
P・・・移動領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的または規定の制御プログラムに基づいて動作する移動型ロボットと、該移動型ロボットに対して電力を供給する固定型電力供給部と、からなるロボット用電力供給システムであって、
前記固定型電力供給部において、独立して設けられた電力供給側非常停止回路と、該電力供給側非常停止回路を作動させる回路作動部とが備えられるとともに、
移動型ロボットにおいて、独立して設けられたロボット側非常停止回路と、該ロボット側非常停止回路を作動させるスイッチとが備えられ、
前記固定型電力供給部から移動型ロボットに電力を供給する際に、前記ロボット側非常停止回路が、前記電力供給側非常停止回路を作動させるための回路作動部と電気的に接続され、前記回路作動部を操作することによって、該ロボット側非常停止回路を作動可能にしたことを特徴とするロボット用電力供給システム。
【請求項2】
前記固定型電力供給部から移動型ロボットに電力を供給する際に、電力供給側非常停止回路が、前記ロボット側非常停止回路を作動させるためのスイッチに対して電気的に接続され、該スイッチを切り換えることにより、前記電力供給側非常停止回路を作動可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のロボット用電力供給システム。
【請求項3】
回路開閉部により電気的に開いた状態を取り得る閉回路が移動型ロボット側に設けられており、前記固定型電力供給部から移動型ロボットに電力を供給する際に、前記閉回路を介してロボット側非常停止回路をと前記固定型電力供給部側の回路作動部とが電気的に接続されるとともに、前記回路開閉部により閉回路を開いた状態にすることで、前記固定型電力供給部側の回路作動部の操作に連動させて、ロボット側非常停止回路を作動可能に構成したことを特徴とする請求項1または2に記載のロボット用電力供給システム。
【請求項4】
前記回路開閉部がリミットスイッチであることを特徴とする請求項3に記載のロボット用電力供給システム。
【請求項5】
前記移動型ロボットの内部にバッテリーが設けられているとともに、前記移動型ロボットと固定型電力供給部とが物理的に分離して構成されており、移動型ロボットと固定型電力供給部とが物理的に接触した際に電気的に接続することで前記バッテリーに対して電力供給部から電力が供給されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のロボット用電力供給システム。
【請求項6】
前記電力供給部電力を供給するための電力供給線を介して移動型ロボットに接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のロボット用電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−39836(P2009−39836A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209013(P2007−209013)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】