説明

ロータリーエンコーダおよびロータリーエンコーダ付モータ

【課題】内部の空気が攪拌されて熱を持った回路基板周辺の空気を循環でき、粉塵による検出精度の劣化を防止でき、回転時の応力によって回転符号板が面振れや変形を起こして検出精度を悪化させることを防止できるロータリエンコーダおよびロータリエンコーダ付モータを提供する。
【解決手段】回転符号板への送風を行う送風手段であって、回転符号板から離間した位置にあって回転軸によって回転される送風手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーエンコーダおよびロータリーエンコーダ付モータに関し、特に光学式のロータリーエンコーダを用いたものに適する。
【背景技術】
【0002】
光学式のロータリーエンコーダは、回転運動を行なう物体の回転角度や回転方向の位置・速度などを検出するために広範に使用されており、工作機器、FA機器およびOA機器等の駆動を制御するのに用いられる。
【0003】
特許文献1に示される光学式ロータリーエンコーダについて、側断面図を図3に示す。図3において、46は発光素子46aと受光素子46bを対向配置しモジュール化した光学センサ、44は回転符号板、45は前記回転符号板44の周縁部に多数設けられた回転被検出部である。47は回路基板、48はICやコンデンサといった電気素子、55はエンコーダカバー、53はロータリーエンコーダ装置の基台、54は軸受け、41は回転軸、42は回転符号板44を回転軸41に取付けるための回転符号板取付け部材である。
【0004】
光学式のロータリーエンコーダは、入力軸である回転軸41を回すことによって、回転符号板取付け部材42を介し、回転符号板44が同期的に回転する。そして、回転符号板44の周縁部には、回転方向の検出パターンとして多数のスリットが設けられた回転被検出部45を挟む位置に、発光素子46aと記受光素子46bを対向配置してモジュール化された光学センサ46を配置する。このようにして、回転被検出部45のスリット有無による透過光量の変化を検出することで、回転軸41の回転に伴って回転角に応じたパルス列を出力できるようにしている。
【0005】
回転運動を行なう物体の回転角度や回転方向の位置・速度などの検出を高精度で行なうためには、回転符号板44の回転被検出部45の精度が重要となる。そのため、一般に回転符号板44は、金属薄板をエッチング処理にて製作され、厚さが50〜100ミクロン程度の極めて薄いものとなる。この極めて薄い前記回転符号板44を、回転軸41に同軸良く固定する為に、回転符号板取付け部材42が用いられている。
【0006】
光学式ロータリーエンコーダは、その構造上、粉塵などが光学センサ46に付着すると検出エラーを起こしてしまう為、周囲に粉塵など発生もしくは侵入しやすい場合、周囲と遮断するためエンコーダカバーにて密閉している。
【0007】
図3は、光の透過を利用した透過型の例で、回転被検出部45の上方に46a、下方に46bを設けている。なお、反射型として、回転被検出部45に光反射パターンと光吸収パターンが同一面に設けられ、両パターンが設けられた面側に発光素子・受光素子を対峙配置することにより、反射光量の変化を検出するものもある。図4は、回転符号板44として特許文献2における回転符号板を例示するもので、(A)は正面図、(B)は側面図である。図4において、44は回転符号板、45は回転符号板44の周縁部に多数設けられた回転被検出部、43はラジアルファンとしての役割を担うフィンである。
【0008】
フィン43は、図4(A)に示すように、回転符号板44を切り欠いて折り曲げてラジアルファン(軸直角ファン)にしたものであるが、そのラジアルファンは回転符号板44と別部品で製作し、回転符号板44に貼り付けて使用する場合もある。特許文献2において、回転符号板44を切り欠いて折り曲げる場合、図4(A)に示されるように、回転方向に沿って回転符号板44の一方側、次に他方側と交互に折り曲げられている。
【0009】
回転符号板44の回転に伴って、前記フィン43により発生された風が、回転符号板44の半径方向(回転軸方向および回転方向に交差する方向)に送風され、回転被検出部45の表面又は近辺の粉塵を吹き飛ばし、粉塵による光源遮断を防止することができる。更に、磨耗粉の発生するブレーキ等との間の遮断板を使用することなく、安価に光源遮断防止ができる。
【0010】
又、特許文献3では、ロータリーエンコーダの回転符号板に影響を与えないように、回転符号板の中央貫通部を介してエアポンプから回転軸方向の送風を与え、これをロータリーエンコーダを含む回転体の回転駆動力として利用する装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−298555号公報
【特許文献2】特開平10−225064号公報
【特許文献3】特開2007−315804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1の光学式ロータリーエンコーダは、エンコーダカバーによって密閉されているため、回路基板上のICや光学センサ等による発熱や、これに加えてモータ等の回転体から熱が回転軸を介した伝導により、エンコーダカバー内の温度を上昇させる。また、基板上のIC等による発熱は、この部品の近傍に停滞し、これによって基板上の部品の温度が動作制限温度を超えるという問題がある。
【0013】
特許文献2では、金属薄板回転符号板が直接風圧を受け、回転時に応力による面振れや変形が発生しやすく、検出精度が極めて低くなるという問題がある。
【0014】
本発明は、これら問題を解決し、回転符号板が面振れや変形を起こして検出精度を低下させるということを防止でき、発熱および/または塵埃の問題を解決して信頼性に優れたロータリーエンコーダおよびロータリーエンコーダ付モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係わるロータリーエンコーダの代表的な構成は、回転駆動体に連結する回転軸と、前記回転軸に同軸に取付けられる取付け部材と、前記取付け部材に取付けられ、回転検出用符号パターンが設けられた回転符号板と、前記回転検出用符号パターンを検出するセンサを有し、回転情報を検出するロータリーエンコーダにおいて、前記回転符号板への送風を行う送風手段であって、前記回転符号板から離間した位置にあって前記回転軸によって回転される送風手段を有することを特徴とする。
【0016】
なお、上記ロータリーエンコーダを備え、上記回転駆動体がモータであるロータリーエンコーダ付モータも本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、送風手段が回転符号板と離間することで、回転時の応力によって回転符号板が面振れや変形を起こして検出精度を低下させるということを防止できる。また、以下の1)および/または2)の効果を有する。
【0018】
1)回転符号板取付け部材に送風機能が備わることで、ロータリーエンコーダ内部の空気が攪拌され、熱を持った回路基板周辺の空気を循環でき、発熱の影響を低減することができる。
【0019】
2)発生した風で、センサの表面又は近辺の粉塵を吹き飛ばし、粉塵による検出精度の劣化を防止でき、塵埃の侵入を遮断するカバーを使用することなく、低コスト化を図ることができる。同様に、塵埃が発生するモータと分離することなく、モータケース内に内蔵することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光学式ロータリーエンコーダの構造図で、(A)は側断面図、(B)は正面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る光学式ロータリーエンコーダを内蔵するブラシ付モータの構造図である。
【図3】従来例1の光学透過式ロータリーエンコーダの構造図である。
【図4】従来例2の回転符号板の構造図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
《第1の実施形態》
(ロータリーエンコーダ)
図1に、本実施形態に係る光学式ロータリーエンコーダの構造図を示す。本実施形態に係る光学式ロータリエンコーダは、周縁部に回転検出用符号パターンとして多数のスリットが設けられた回転被検出部5を備える回転符号板4を回転駆動体に連結する回転軸1に同軸良く固定する為に、回転符号板取付け部材2を用いる。そして、回転符号板取付け部材2の外周から半径方向に回転被検出部5近傍へ延びるフィン3が、回転符号板が配置される面を挟んで両側に、且つ対向(一方側と他方側で同じ回転方向位置)するように形成されている。これにより、回転符号板4の変形(回転軸方向および回転軸方向に直交する方向)は極力抑えられる。
【0023】
フィン3は、回転符号板への送風面が回転符号板が配置される面に交差するように配置(直交配置または回転方向或いは逆方向にかぶせる様に斜設)される。ここで、フィン3は回転時に風圧による変形がある為、回転符号板4と接触しないよう回転符号板4から離間させて配置される。即ち、回転符号板4に対し、隙間を設けることで、回転符号板4が変形されないようにする。
【0024】
これにより、回転軸1の回転時、即ち回転符号板取付け部材2の回転時には、回転被検出部5及び光学センサ6近傍に気流が発生する。この気流によって、周囲の空気が攪拌されて基板7周辺の熱を持った空気を循環させることができ、更に回転被検出部5及び光学センサ6への粉塵付着を防止することができる。この結果、ファン等の冷却装置や、粉塵の侵入を遮断するカバーを新規に追加することなく、信頼性の高いロータリーエンコーダを安価に得ることができる。即ち、回転符号板4への塵埃の侵入を遮断するカバーを設けることなく、回転符号板4が露出される形態とすることができる。
【0025】
(検出される回転情報)
本願発明において、ロータリーエンコーダで検出される回転情報は、回転角度、回転位置、回転速度、回転加速度のいずれかである。
【0026】
《第2の実施形態》
(ロータリーエンコーダ付モータ)
図2は、本実施形態に係る光学式ロータリーエンコーダを内蔵するブラシ付モータの構造図である。本実施形態は、第1の実施形態の光学式ロータリーエンコーダをブラシ付モータ29に内蔵したもので、回転軸21に回転符号板取付け部材22を介して回転符号板24を固定し、モータケース30に光学センサ26を固定することで内蔵している。
【0027】
ブラシ付モータ29は、整流子31に摺接しながら電気を供給するブラシ32が備えられており、駆動に伴い磨耗粉が発生する。しかしながら、第1の実施形態で説明したように回転符号板取付け部材22の外周から半径方向に延びるフィン23が形成されているため、回転被検出部25及び光学センサ26へのブラシ磨耗粉の付着を防止することができる。
【0028】
(変形例1)
以上、送風手段としてのフィンの取付け位置に関し、回転符号板から離間するように回転符号板取付け部材に設けることを述べたが、フィンを回転符号板から離間するように回転軸に設けても良い。
【0029】
(変形例2)
また、送風手段としてのフィンを、回転符号板が配置される面を挟んで両側に形成されている実施形態を述べたが、いずれか一方側のみに形成されるものでも良い。また、送風手段としてのフィンを、回転方向に多数設ける実施形態を述べたが、2個(180度毎)、4個(90度毎)、8個(45度毎)と離散的に設ける、あるいは1個のみ設けるものても良い。
【0030】
(変形例3)
また送風手段に関しては、回転軸によって回転されるフィン部材に限らず、空気を供給するように回転軸によって回転されるエアポンプ等であっても良い。
【0031】
(変形例4)
また、送風方向に関し、フィンを半径方向に設けて回転符号板の半径方向に送風がなされることを述べたが、本発明はこれに限らず、フィンを回転方向に設けて回転方向に送風されるものでも良い。また、送風路を回転軸方向に設けて回転軸方向に送風されるものでも良い。
【0032】
(変形例5)
ロータリーエンコーダとして、回転符号板への塵埃の侵入を遮断するカバーを設けることなく、回転符号板が露出される実施形態を述べたが、カバーを設けることもできる。この場合、送風手段によって発熱の問題が低減されることとなる。
【0033】
(変形例6)
また、ロータリーエンコーダの種類に関しては、光学式のロータリーエンコーダに限らず、磁気式などのロータリーエンコーダであっても良い。即ち、光センサを用いるものに限らず、磁気センサなどを用いるものであっても良い。なお、光センサとしては光透過型のセンサに限らず、光反射型のセンサであっても良い。
【符号の説明】
【0034】
1、21、41・・回転軸、2、22、42・・回転符号板取付け部材、3、23、43・・フィン、4、24、44・・回転符号板、5、25、45・・回転被検出部、6、26、46・・光学センサ、46a・・発光素子、46b・・受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動体に連結する回転軸と、
前記回転軸に同軸に取付けられる取付け部材と、
前記取付け部材に取付けられ、回転検出用符号パターンが設けられた回転符号板と、
前記回転検出用符号パターンを検出するセンサを有し、回転情報を検出するロータリーエンコーダにおいて、
前記回転符号板への送風を行う送風手段であって、前記回転符号板から離間した位置にあって前記回転軸によって回転される送風手段を有することを特徴とするロータリーエンコーダ。
【請求項2】
前記送風手段は、前記取付け部材に設けられることを特徴とする請求項1に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項3】
前記送風手段は、前記回転軸に設けられることを特徴とする請求項1に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項4】
前記送風手段は、前記回転符号板への送風面が前記回転符号板が配置される面に交差するように半径方向に配置されるフィンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項5】
前記送風手段が、前記回転符号板が配置される面を挟んで両側に設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項6】
前記送風手段が、前記回転符号板が配置される面を挟んで対向するように設けられることを特徴とする請求項5に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項7】
前記回転検出用符号パターンが前記回転符号板の周縁部に設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項8】
前記回転検出用符号パターンがスリットからなり、前記センサが光透過型であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項9】
前記回転検出用符号パターンがスリットからなり、前記センサが光反射型であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項10】
前記回転符号板への塵埃の侵入を遮断するカバーを設けることなく、前記回転符号板が露出されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項11】
前記回転情報は、回転角度、回転位置、回転速度、回転加速度のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のロータリーエンコーダを備え、前記回転駆動体がモータであることを特徴とするロータリーエンコーダ付モータ。
【請求項13】
前記ロータリーエンコーダが前記モータに内蔵されていることを特徴とする請求項12に記載のロータリーエンコーダ付モータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−3121(P2013−3121A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138044(P2011−138044)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000104630)キヤノンプレシジョン株式会社 (79)
【Fターム(参考)】