説明

ロータリーバルブ

【課題】格別な駆動機構を備えることなくロータリーバルブの開弁状態を変化させるとともに、ロータリーバルブを所望の状態で固定する。
【解決手段】ロータリーバルブ1は、流体が衝突する衝突板2bを備え、当該衝突板に流体が衝突することによって回転する本体部2と、前記本体部に設けられ、複数の掛合凹部4a、4b、4cが形成された側壁と、前記掛合凹部に掛合して前記本体部の姿勢を維持する掛合ピン6と、前記掛合ピンの駆動手段と、前記掛合凹部との掛合が解除された前記掛合ピンの先端部を前記側壁に押し当てる付勢部材7とを備える。掛合ピンは掛合凹部から次の掛合凹部に相対移動する間に側壁に押し当てられているので、次の掛合凹部に容易に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリーバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の冷却水の循環に関し、種々の提案がされている。例えば、特許文献1には、二つの吐出口を備えるとともに、冷却水送出手段から送出される冷却水の送出先を選択する回転弁(ロータリーバルブ)を備えたウォータポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−77837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されたウォータポンプは、回転弁の駆動機構を備える。回転弁を駆動するための部品を装備することは、車両への搭載面や、コスト面で不利となる。また、格別の駆動機構を備えることなく、流体(冷却水)が流れる力を利用して開弁状態を変化させることが考えられる。ところが、冷却水の吐出圧は一定ではなく、ロータリーバルブの動作速度は不安定になりがちである。このため、所定の位置でロータリーバルブを固定することが困難になることが想定される。
【0005】
そこで本明細書開示のロータリーバルブは、格別な駆動機構を備えることなくロータリーバルブの開弁状態を変化させるとともに、ロータリーバルブを所望の状態で固定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本明細書開示のロータリーバルブは、流体が衝突する衝突板を備え、当該衝突板に流体が衝突することによって回転する本体部と、前記本体部に設けられ、複数の掛合凹部が形成された側壁と、前記掛合凹部に掛合して前記本体部の姿勢を維持する掛合ピンと、前記掛合ピンの駆動手段と、前記掛合凹部との掛合が解除された前記掛合ピンの先端部を前記側壁に押し当てる付勢部材と、を備えている。
【0007】
側壁は、掛合ピンが押し当てられながら回転することになるので、掛合ピンは、側壁に形成された掛合凹部に容易に、そして、確実に挿入される。付勢部材によって付勢された掛合ピンは、掛合凹部と一致することにより、自動的に掛合凹部に挿入される。
【0008】
前記掛合ピンは、先端に向かうに従って先端部を先細形状とするテーパ面を有することができる。掛合ピンは、その先端部端面が掛合凹部の開口部内に位置することにより、掛合凹部内に挿入可能な状態となる。テーパ面を有し、先端部の端面の面積が小さくなれば、掛合ピンは、掛合凹部に挿入され易くなる。すなわち、掛合ピンの先端部端面の大きさが、掛合凹部の開口部の大きさと比較して小さいほど掛合ピンは、掛合凹部に挿入され易くなる。
【0009】
前記テーパ面は、前記掛合ピンの流体流通方向下流側に設けることができる。これにより、スムーズに掛合ピンを掛合凹部に挿入することができる。
【0010】
ロータリーバルブは、前記掛合ピンの先端部と前記側壁との摩擦力を低減する摩擦力低減手段を備えることができる。摩擦力を低減することにより、流体の流れる力が小さいとき、例えば、内燃機関がアイドル状態であって、冷却水の吐出圧が低いときであっても、本体部を容易に回転させ、ロータリーバルブを所望の状態とすることができる。
【0011】
前記摩擦力低減手段は、低摩擦係数処理が施された前記掛合ピン及び/又は低摩擦係数処理が施された前記側壁とすることができる。側壁の低摩擦係数処理は、前記掛合ピンの摺動軌跡にのみ施すことができる。低摩擦係数処理は、該当部分を研摩することによって摩擦係数を低下させたり、該当部分の材質を低摩擦係数のものに変更したりすることによって行うことができる。
【0012】
前記摩擦力低減手段は、前記掛合ピンの先端部に装着された回転部材とすることができる。例えば、球状部材や、ローラ部材といった回転部材を装備することにより、掛合ピンと側壁との間の摩擦抵抗を低減することができる。
【0013】
さらに、前記摩擦力低減手段は、前記掛合ピンが前記複数の掛合凹部の間に位置するときに、前記側壁へ間欠接触させる前記掛合ピンの振動装置とすることができる。両者を間欠接触させることにより、両者間の見かけ上の摩擦抵抗を低減することができ、本体部をスムーズに回転させることができる。
【0014】
このように、掛合ピンと側壁とを間欠接触させる振動装置を備えるとき、前記掛合ピンを前記側壁へ間欠接触させる間隔と前記本体部の回転角度の関係から故障判定を行う制御部を備えることができる。
【0015】
本体部は、掛合ピンが当接しているときとしていないときとでは、その回転に対する抵抗が異なるため、回転速度が変化すると考えられる。そこで、掛合ピンを側壁へ接触させる間隔(インターバル)を変化させ、この変化に応じた回転角度の変化が観測されているか否かによって、ロータリーバルブの故障を判定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本明細書に開示されたロータリーバルブによれば、格別な駆動機構を備えることなくロータリーバルブの開弁状態を変化させ、ロータリーバルブを所望の状態で固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例1のロータリーバルブの概略構成を示す説明図である。
【図2】図2は、実施例1のロータリーバルブに含まれる本体部の5面図である。
【図3】図3は、実施例1のロータリーバルブが組み込まれる冷却水通路を示す説明図である。
【図4】図4(A)、(B)は、実施例1のロータリーバルブが用いられる内燃機関における冷却水の流れを模式的に示す説明である。
【図5】図5は、水止め状態のロータリーバルブを示す説明図である。
【図6】図6は、シリンダヘッド側へ冷却水を供給する状態のロータリーバルブを示す説明図である。
【図7】図7は、シリンダブロック側へ冷却水を供給する状態のロータリーバルブを示す説明図である。
【図8】図8(A)〜(E)は、掛合凹部に挿入されている掛合ピンが抜き取られ、他の掛合凹部に挿入される過程を示す説明図である。
【図9】図9(A)〜(C)は、実施例2のロータリーバルブが状態を変化させる過程を示す説明である。
【図10】図10(A)、(B)は、掛合ピンの先端部を拡大し、掛合凹部に掛合ピンが挿入される様子を示す説明図である。
【図11】図11は、実施例3のロータリーバルブを示す説明図である。
【図12】図12は、実施例3のロータリーバルブの掛合ピンの先端部を拡大して示す説明図である。
【図13】図13(A)、(B)は、実施例4のロータリーバルブの動作を示す説明図である。
【図14】図14は、掛合ピン側壁への接触状態と、本体部の回転角度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。ただし、図面中、各部の寸法、比率等は、実際のものと完全に一致するようには図示されていない場合がある。また、図面によっては細部が省略されている場合もある。また、説明の都合上、部品の装着の向きが実際のものと異なっている場合がある。
【実施例1】
【0019】
まず、実施例1のロータリーバルブ1の概略構成を図1、図2を参照しつつ説明する。図1は、実施例1のロータリーバルブ1の概略構成を示す説明図である。図2は、実施例1のロータリーバルブ1に含まれる本体部2の5面図である。より具体的には、図2(A)は正面図、図2(B)は左側面図、図2(C)は右側面図、図2(D)は背面図、図2(E)は底面図である。
【0020】
ロータリーバルブ1は、図4に示す内燃機関100における冷却水の流通制御を行う。ロータリーバルブ1は、本体部2を備える。本体部2は、側面から見たときに中心角90°の扇形形状を備える。中心角の頂点部分に回転軸部材2aを備えている。本体部2は、流体、すなわち、冷却水が衝突する衝突板2bを備える。これにより、本体部2は、冷却水が衝突板2bに衝突することにより、回転軸部材2aを回転軸として回転することができる。なお、本体部2が冷却水の流通経路21に装着されるときは、図5に示すように復帰バネ部材9が装着される。復帰バネ部材9は、本体部2を閉弁方向に付勢する。すなわち、復帰バネ部材9は、本体部2を冷却水の流れに逆らう向きに付勢している。なお、回転軸部材2aは角度センサ3に接続されている。
【0021】
本体部2は、第1側壁2cと、これに対向配置された第2側壁2dを備えている。図2(E)に示すように第1側壁2cと第2側壁2dとの挟まれた領域であって、衝突板2bと90°をなす面には、冷却水の流入口2eが形成されている。また、図2(D)に示すように第1側壁2cと第2側壁2dとの挟まれた領域であって、円弧に沿った面には、遮蔽板2fが配置されるとともに、第1流出口2gが設けられている。
【0022】
第1側壁1cには、円弧状の摺動軌跡2c1が刻まれている。摺動軌跡2c1は、後に詳述するように、掛合ピン6が接触する。第1側壁1cは、摺動軌跡2c1に沿って三つの掛合凹部4a、4b、4cが設けられている。掛合凹部4a、4b、4cは、本体部2の内側に向かって延びる筒状部材によって形成されている。第2側壁2dには、第2流出口2hは形成されている。
【0023】
ロータリーバルブ1は、掛合凹部4a、4b、4cに掛合して本体部2の姿勢を維持する掛合ピン6を備えている。また、ロータリーバルブ1は、掛合ピン6の駆動手段としてのソレノイド5を備えている。さらに、ロータリーバルブ1は、掛合凹部4a、4b、4cとの掛合が解除された掛合ピン6の先端部6a、より具体的には端面6a1を第1側壁2cに押し当てる付勢部材としてのバネ部材7を備えている。バネ部材7は、掛合ピン6に設けられた鍔部6bとソレノイド5に設けられたバネ受け5aとの間に挟持されている。バネ部材7は、掛合ピン6を付勢しているため、掛合ピン6の先端部6aの位置が掛合凹部4a等に一致したときに、掛合ピン6を掛合凹部4a等に押し込む作用を創出する。
【0024】
ロータリーバルブ1は、掛合ピン6の先端部6a、より具体的にはその端面6a1と前記側壁2c、より具体的には摺動軌跡2c1との摩擦力を低減する摩擦力低減手段を備えている。具体的には、摺動軌跡2c1と端面6a1に鏡面研摩による低摩擦係数処理が施されている。このような低摩擦係数処理は、摺動軌跡2c1と端面6a1のいずれか一方にのみ施すことができる。また、低摩擦係数処理として、他の部分、例えば、摺動軌跡2c1の材料として、摺動軌跡2c1の周囲よりも摩擦係数が小さい材料を採用することもできる。これらの摩擦低減処理を行うことにより、掛合ピン6が第1側壁2cへ押し当てられることの本体部2の回転動作への影響を低減することができる。
【0025】
ソレノイド5は、ECU(Electronic control unit)8と電気的に接続されている。ECU8には水温センサ等、各種センサが電気的に接続されており、ソレノイド5は、ECU8の指令に基づいて動作する。ソレノイド5は、掛合ピン6によってロータリーバルブ1の位置決めをすることができればよい。すなわち、ソレノイド5は、ロータリーバルブ1自体を動作させなくてもよいため、その出力は小さくてよい。
【0026】
このようなロータリーバルブ1は、図3に示すウォータポンプ20の下流側の冷却水通路21に組み込まれる。冷却水通路21には、ウォータポンプ20によって圧送された冷却水が流通する。冷却水通路21には、隔壁22が設けられ、連通路22aが形成されている。そして、隔壁22の上流側にシリンダブロック101へ冷却水を導入するためのブロック側導入口23が設けられている。また、隔壁22の下流側には、シリンダヘッド側へ冷却水を導入するためのヘッド側導入口24が設けられている。ここで、図4(A)、図4(B)を参照しつつ、ロータリーバルブ1により実現される内燃機関100における冷却水の流通制御について説明する。内燃機関100は、シリンダブロック101とシリンダヘッド102を備える。シリンダヘッド102は、シリンダブロック101よりも高温となり易いため、シリンダヘッド102のみに冷却水を供給したい場合がある。このような場合は、図4(A)に示すようにシリンダヘッド102へのみ冷却水を導入する。また、暖機完了後、シリンダブロック101を適切に冷却したときは、図4(B)に示すようにまずシリンダブロック101に冷却水を導入し、その後、シリンダヘッド102へ冷却水を循環させる。なお、内燃機関100を積極的に冷却したいときは、ラジエータにより冷却された冷却水を図4(B)に示すようにシリンダブロック101、シリンダヘッド102の順に流通させることができる。また、ロータリーバルブ1は、その状態により、シリンダブロック101、シリンダヘッド102のいずれにも冷却水を循環させない完全水停止状態とすることもできる。
【0027】
つぎに、図5〜図7を参照して、ロータリーバルブ1の状態と、冷却水の流通状態について説明する。
【0028】
図5を参照すると、掛合ピン6は、第1掛合凹部4aに挿入されている。この状態では、衝突板2bが冷却水通路21を閉塞する。衝突板2bの位置は、ブロック側導入口23及びヘッド側導入口24の上流側に位置している。このため、シリンダブロック101、シリンダヘッド102双方における冷却水の循環が停止する完全水止め状態となる。例えば、内燃機関100が暖機中であるときは、完全水止め状態とする。
【0029】
つぎに、図6を参照すると、掛合ピン6は、第2掛合凹部4bに挿入されている。この状態では、連通路11aと第1流出口2gの位置とが一致する。このため、冷却水は、隔壁22の下流側に開口するヘッド側導入口24へ冷却水を導入することができる。一方、ブロック側導入口23は、衝突板2bにより閉塞された状態となるため、シリンダブロック101への冷却水の導入は停止される。
【0030】
つぎに、図7を参照すると、掛合ピン6は、第3掛合凹部4bに挿入されている。この状態では、遮蔽板2fが連通路22aを閉塞し、隔壁22よりも下流側への冷却水の流入を遮断する。これにより、シリンダヘッド102への冷却水の導入は停止される。一方、第2流出口2hの位置がブロック側導入口23と一致する。このため、シリンダブロック101へ冷却水を導入することができる。
【0031】
以上説明したように、ロータリーバルブ1は、その状態によって、冷却水の流通状態を制御することができる。ここで、図8(A)〜(E)を参照して、ロータリーバルブ1の状態が変化するときの本体部2及び掛合ピン6の動きについて説明する。なお、図8(A)〜(E)では、第1掛合凹部4aに掛合していた掛合ピン6が第2掛合凹部4bに掛合する過程を示しているが、第2掛合凹部2bに掛合している第3掛合凹部4cに掛合する場合も同様である。
【0032】
まず、図8(A)に示すように掛合ピン6が第1掛合凹部4aに掛合している状態のときに、ECU8の指令に基づいてソレノイド5に通電する。すると、図8(B)に示すように、掛合ピン6が、バネ部材7を圧縮しつつ第1掛合凹部4aから引き抜かれる。これにより、本体部2は、衝突板2bが受ける冷却水の流体力によって回転する。ECU8は、掛合ピン6の掛合が解除されたら即座にソレノイド5への通電を停止する。ソレノイド5への通電が停止されると、バネ部材7に付勢された掛合ピン6は、第1側壁2cに押し当てられる。本体部2は、回転しているため、図8(D)に示すように、掛合ピン6の先端部6aは、第1側壁上を相対的に摺動移動する。そして、図8(E)に示すように、掛合ピン6の先端部6aが第2掛合凹部2bと一致すると、バネ部材7に付勢されている掛合ピン6は、容易に第2掛合凹部2b内に挿入される。このように、掛合ピン6は、摺動軌跡2c1(第1側壁2c)に押し当てられつつ、相対移動するので、格別の制御を要することなく自動的に第2掛合凹部4b内に挿入される。本体部2は、衝突板2bが受ける流体力によって回転するため、その回転速度は、流体力の大小等の条件に左右され易く、安定しにくい。このように本体部2の動きが安定し難い場合であっても、掛合ピン6は、容易に第2掛合凹部4bを捉え、挿入される。
【0033】
実施例1のロータリーバルブ1によれば、流体力により状態を変化させるため、格別な駆動機構を備えることなくその開弁状態を変化させ、ロータリーバルブを所望の状態で固定することができる。
【0034】
なお、本体部2は、復帰バネ部材9の弾性により、元の位置に復帰することができる。
【実施例2】
【0035】
つぎに、実施例2について、図9(A)〜(C)、図10(A)、図(B)を参照しつつ説明する。実施例2が実施例1と異なる点は、実施例2が実施例1の掛合ピン6に代えて掛合ピン16を備えている点である。その他の点は、実施例1と共通するので同一の構成要素には、図面中、同一の参照番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0036】
掛合ピン16は、先端に向かうに従って先端部を先細形状とするテーパ面16a2を有している。テーパ面16a2は、掛合ピン16の流体流通方向下流側に設けられている。掛合ピン16は、テーパ面16a2を備えることにより、端面16a1の面積を小さくすることができている。図9(A)に示すように第1側壁2c上を摺動する掛合ピン16は、図9(B)に示すように第2掛合凹部4bの位置と一致すると挿入可能な状態となる。そして、図9(C)に示すようにバネ部材7に付勢された掛合ピン6は、第2掛合凹部4bに挿入される。ここで、掛合ピン6が第2掛合凹部4bに挿入される過程における各部の位置関係につき、図10(A)、図10(B)を参照しつつ説明する。なお、説明の都合上、図10(A)、図10における端面16a1は、第1側壁2cから離して描かれているが、実際は、両者は当接した状態となっている。また、図10(B)における端面16a1と第1側壁2cは、実際よりも離して描かれている。
【0037】
第1側壁2cが移動すると、掛合ピン16と第2掛合凹部とが相対的に接近する。そして、図10(A)に示すように、まず、図中A1で示した縁部が第2掛合凹部4bの下流側縁部4b1を越える。しかしながら、図10(A)で示した状態では、掛合ピン6は、未だ第2掛合凹部4bに挿入することができない。
【0038】
第1側壁2cがさらに移動し、図中A2で示した縁部が第2掛合凹部4bの下流側縁部4b1を越えると端面16a1が完全に第2掛合凹部4b内に位置することになる。これにより、掛合ピン16は、第2掛合凹部4bに挿入可能な状態となる。このように、テーパ面16a2を設けることにより、端面16a1を小さくすることにより、早期に掛合ピン16を第2掛合凹部4bに挿入可能な状態とすることができる。掛合ピン16は、A2で示した縁部が下流側縁部4b1を越えると、下流側縁部4b1にテーパ面16a2を当接させつつ、第2掛合凹部4b内に挿入される。なお、仮に、テーパ面16a2を流体流通方向上流側に設けると、テーパ面が上流側縁部4b2に衝突するおそれがあり、掛合ピン16のスムーズな挿入が阻害されるおそれがある。このため、テーパ面16a2は、体流通方向下流側に設けられることが望ましい。
【実施例3】
【0039】
つぎに、実施例3について図11、図12を参照しつつ説明する。実施例3は、摩擦力低減手段として、掛合ピン17の先端部に球状部材17aを備えている。球状部材17aは、回転部材の一例である。なお、他の構成要素は、実施例1と同様であるので、共通する構成要素には、図面中、同一の参照番号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0040】
球状部材17aを備えることにより、掛合ピン17と第1側壁2cとは、転がり摩擦となり、両者の摩擦は低減される。これにより、掛合ピン17が第1側壁2cに押し当てられることの本体部2の回転動作への影響を低減することができる。
【実施例4】
【0041】
つぎに、実施例4について図13を参照しつつ説明する。実施例4は、摩擦力低減手段として、掛合ピン6が複数の掛合凹部4a〜4cの間に位置するときに、第1側壁2cへ間欠接触させる掛合ピン6の振動装置を備えている。振動装置の機能は、ECU8とソレノイド5によって実現することができる。すなわち、ECU8の指令に基づいて、ソレノイド5に間欠通電することのより、掛合ピン6を振動させる。なお、実施例4の構成は、実施例1の構成と共通しており、ECU8の通電制御のみが異なっている。
【0042】
掛合ピン6が、第1側壁2cへ間欠接触することにより、両者の見かけ上の摩擦は低減される。これにより、掛合ピン6が第1側壁2cに押し当てられることの本体部2の回転動作への影響を低減することができる。
【0043】
このように、ECU8が間欠通電を指示するとき、ECU8は、ロータリーバルブ1の故障判定を行う制御部として機能することができる。この故障検出について、図14(A)、図14(B)を参照しつつ説明する。
【0044】
まず、掛合ピン6は、第1側壁に対し接触と非接触を繰り返す。このとき、角度センサ3により、本体部2の回転角度を継続的に測定する。ロータリーバルブ1は、掛合ピン6が非接触のときに回転角度を増す。回転角度は、内燃機関100の運転状態に応じて適切な値が予め与えられている。図14(A)において(a)で示すように、ロータリーバルブ1が正常であれば、回転角度は、順調に増加する。これに対し、(b)に示すように増加の仕方がやや鈍かったり、(c)に示すように増加の仕方が鈍かったりしたとき、さらには、(d)に示すように回転角度が全く増加しないときは、ロータリーバルブ1の故障が疑われる。
【0045】
そこで、通常制御時に(b)〜(d)に示すような回転角度の増加が観測されたときは、ECU8は、図14(B)に示すように掛合ピン6の第1側壁への非接触機関を長めに設定する。これにより、(b)に示すように回転角度の増加が認められれば、動作は改善したものと判断する。(c)に示すように未だ増加の仕方が鈍く、改善がみられないときは、内燃機関の過熱を回避する安全策として図7に示すようにシリンダブロック101から冷却水を導入する状態でロータリーバルブ1を固定する。非接触時間を長く設定しているにもかかわらず、(d)に示すように回転角度が全く増加しないときは、ロータリーバルブ1は動作できない状態陥っているとして、警告を発するようにする。
【0046】
このように、掛合ピン6を第1側壁2bに間欠接触させる間隔と本体部2の回転角度の関係から、ロータリーバルブ1の故障を検出することができる。
【0047】
上記実施例は本発明を実施するための一例にすぎない。よって本発明はこれらに限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 ロータリーバルブ
2 本体部
2a 回転軸部材
2b 衝突板
2c 第1側壁
2c1 摺動軌跡
2d 第2側壁
2e 流入口
2f 遮蔽板
2g 第1流出口
2h 第2流出口
3 角度センサ
4a 第1掛合凹部
4b 第2掛合凹部
4b1 下流側縁部
4b2 上流側縁部
4c 第3掛合凹部
5 ソレノイド(駆動手段)
5a バネ受け
6、16、17 掛合ピン
6a 先端部
6a1 端面
6b 鍔部
7 バネ部材(付勢部材)
8 制御部
9 復帰バネ部材
16 掛合ピン
16a 先端部
16a1 端面
16a2 テーパ面
17 掛合ピン
17a 球状部材(摩擦低減手段)
20 ウォータポンプ
21 冷却水通路
22 隔壁
23 ブロック側導入口
24 ヘッド側導入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が衝突する衝突板を備え、当該衝突板に流体が衝突することによって回転する本体部と、
前記本体部に設けられ、複数の掛合凹部が形成された側壁と、
前記掛合凹部に掛合して前記本体部の姿勢を維持する掛合ピンと、
前記掛合ピンの駆動手段と、
前記掛合凹部との掛合が解除された前記掛合ピンの先端部を前記側壁に押し当てる付勢部材と、
を備えたロータリーバルブ。
【請求項2】
前記掛合ピンは、先端に向かうに従って先端部を先細形状とするテーパ面を有する請求項1に記載のロータリーバルブ。
【請求項3】
前記テーパ面は、前記掛合ピンの流体流通方向下流側に設けられた請求項2記載のロータリーバルブ。
【請求項4】
前記掛合ピンの先端部と前記側壁との摩擦力を低減する摩擦力低減手段を備えた請求項1乃至3のいずれか一項に記載のロータリーバルブ。
【請求項5】
前記摩擦力低減手段は、低摩擦係数処理が施された前記掛合ピン及び/又は低摩擦係数処理が施された前記側壁である請求項4記載のロータリーバルブ。
【請求項6】
前記摩擦力低減手段は、前記掛合ピンの先端部に装着された回転部材である請求項4又は5に記載のロータリーバルブ。
【請求項7】
前記摩擦力低減手段は、前記掛合ピンが前記複数の掛合凹部の間に位置するときに、前記側壁へ間欠接触させる前記掛合ピンの振動装置である請求項4乃至6のいずれか一項に記載のロータリーバルブ。
【請求項8】
前記掛合ピンを前記側壁へ間欠接触させる間隔と前記本体部の回転角度の関係から故障判定を行う制御部を備えた請求項7記載のロータリーバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−237349(P2012−237349A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105697(P2011−105697)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】