説明

ロータリ耕耘装置

【課題】ロックピンをツールバー取付フレームの調節ピン孔に挿入し取付フレームを押圧固定することにより、支持フレーム内で取付フレームの抜け止め及びガタつきの発生を防止することができるロータリ耕耘装置を提供する。
【解決手段】耕耘部15の上方に設けた支持フレーム26を中空のパイプとなして、ツールバー29の取付フレーム27をスライド自在に内嵌すると共に、上記支持フレーム26に進退自在に支持したロックピンを、取付フレーム27に穿設した複数の調節ピン孔の何れかの孔に挿入して、ツールバー29の前後動を規制すると同時に、取付フレーム27を支持フレーム26の内周面の一側に向けて押圧して、ツールバー29のガタつきを阻止する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに装着されるツールバーを備えるロータリ耕耘装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタに装着されるロータリ耕耘装置は、その機体フレームから後方に延設した左右一対のパイプ状の支持フレームに、尾輪や畝立機等が着脱可能に装着されるツールバーをスライド可能に内嵌すると共に、支持フレームのロックピン孔とツールバーの取付フレームに穿設される複数の調節ピン孔の1つにロックピンを差し込み、ツールバーの前後位置調節を行うツールバー部を備えている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1に示されるツールバー部は、支持フレームのロックピン孔と取付フレームの調節ピン孔に、スプリングによってロック方向に付勢されるロックピンを差し込みツールバーの支持位置調節を行うと共に、左右方向に回動操作されるハンドルによって、ロックピンをスプリング力に抗し調節ピン孔から引き抜いてロックを解除した調節姿勢にする構成となっている。
【特許文献1】実開平3−99902公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1で示されるツールバー部は、ワンタッチで操作されるハンドルによってロックピンを抜き差しするので、ツールバーの前後位置調節を簡単に行える利点がある。然し、スプリングで付勢されるロックピンはロックピン孔から調節ピン孔に単に挿入しているだけなので、取付フレームの前後移動(抜け止め等)を防止することはできるが、ロックピンと調節ピン孔及び支持フレームと取付フレームの間に間隙があるため、機体振動によって生ずる、ガタつきやビビリ音を防止することができない欠点がある。
またワンタッチ操作を行うハンドルによってロックピンを抜き差しするために、リンク部材やスプリング等の多くの部品を必要とし構造が複雑化する等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために本発明のロータリ耕耘装置は、第1に、耕耘部15の上方に設けた支持フレーム26の後部に、尾輪や畝立機等を装着するツールバー29を前後位置調節自在に取付けてなるロータリ耕耘装置1において、前記支持フレーム26を中空のパイプとなして、ツールバー29の取付フレーム27をスライド自在に内嵌すると共に、上記支持フレーム26に進退自在に支持したロックピン33を、取付フレーム27に穿設した複数の調節ピン孔35の何れかの孔に挿入して、ツールバー29の前後動を規制すると同時に、取付フレーム27を支持フレーム26の内周面の一側に向けて押圧して、ツールバー29のガタつきを阻止するように構成したことを特徴としている。
第2に、前記ロックピン33を大径部41と小径部42によって形成して、その小径部42を取付フレーム27に穿設した複数の調節ピン孔35の何れかの孔に挿入すると共に、小径部42から大径部41に連なる段付き部43を取付フレーム27に接当させて、取付フレーム27を支持フレーム26の内周面の一側に向けて押圧するように構成したことを特徴としている。
第3に、前記ロックピン33を支持フレーム26のガイド体37に内嵌すると共に、ガイド体37に形成したカム溝36にロックピン33のカムピン39を貫挿して、ロックピン33に設けたハンドル40を回動することにより、ロックピン33を上記カム溝36及びカムピン39で構成するカム機構を介して支持フレーム26に進退自在に支持したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によるロータリ耕耘装置は次のような効果を奏する。すなわち、支持フレームに内嵌した取付フレームをスライドさせツールバーの前後位置調節を行い、支持フレームに進退自在に支持したロックピンを取付フレームの調節ピン孔に挿入することにより、ロックピンがツールバーの前後動を規制すると同時に、取付フレームを支持フレームの内周面の一側に向けて押圧するので、ツールバーの前後位置調節が簡単に行えると共に、ツールバーのガタつきを阻止してビビリ音の発生を防止することができる。
また支持フレームに大径部と小径部で形成したロックピンを進退自在に設けたことにより、ツールバーの前後調節位置において、小径部を取付フレームの調節ピン孔に挿入しツールバーの前後動を規制した状態で、大径部の段付き部が取付フレームを支持フレームの内周面の一側に向けて押圧するので、簡単にツールバーのガタつきを阻止することができる。
さらに、ハンドルを介しロックピンのカムピンがガイド体に形成したカム溝に沿って移動することによって、支持フレームのガイド体に内嵌したロックピンを進退させることができるので、ツールバーの前後位置調節機構を簡潔な構成にすることができ、またロックピンの位置決め保持をワンタッチ操作で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1,図2において符号1は、トラクタ2の後部に構成される3点リンク方式の昇降機構3aに設けたオートヒッチ3を介し、昇降作動可能に装着されるロータリ耕耘装置であり、本発明に係わるロック機構5を有するツールバー部6を備えている。このロータリ耕耘装置1はオートヒッチ3の中央上部と下方左右に形成される取付部に対し、トラクタ2のPTO軸に接続される入力軸7aを有するギヤケース7に設けたトップマスト8と、該ギヤケース7の左右に延設される横フレーム9,9の取付部を接続することにより着脱可能に装着される。
【0007】
以下各部の構成について詳細に説明する。ロータリ耕耘装置1の機体フレームは、ギヤケース7の両側に延設される筒状の横フレーム9,9の端部に、伝動ケース10と支持フレーム11をそれぞれ一体的に設けて形成され、伝動ケース10と支持フレーム11の軸受部に、複数の耕耘爪12を後述する構成によって取付ける耕耘軸13を軸支して耕耘部15を回転駆動する構成としている。
【0008】
耕耘部15の回転駆動は、入力軸7aの回転動力を左側の横フレーム9内に軸支される横伝動軸16から伝動ケース10内のチェーン伝動機構16aを介し、耕耘軸13を回転させることによって行われる。
そして、耕耘部15の上方及び側方は、機体フレーム側に取付固定される耕耘カバー17によって覆われ、後方は耕耘カバー17に回動可能に接続されるリヤカバー18によって覆われる。
【0009】
また図4,図5で示すように耕耘爪12は、耕耘軸13の外周面に突設された爪ホルダー19に挿入され、爪ホルダー19の側方から挿入されるボルト或いは止めピンからなる爪固定具20によって取付固定される。この爪ホルダー19は図5で示すように、外周面を回転方向に流線型をなす舟型形状に形成しており、中央部に耕耘爪12を挿入する長方形断面の取付孔21を形成している。
これにより爪ホルダー19は、滑らかな湾曲側面が収れんする先細の集合部22にすることができるので、土はけをよくし耕耘土との接触抵抗の小さい土付着を防止した耕耘をスムーズに行うことができる。
【0010】
また上記形状からなる爪ホルダー19は型鍛造或いはロストワックス鋳造等の手段によって簡単に製造することができ、耕耘軸13に対し多数の爪ホルダー19の基部側を溶接するものである。
この場合に、溶接ロボットのハンドが保持するアーク棒による溶接は、爪ホルダー19の基部に沿って楕円を描くように1工程で連続的に行うことができるから、従来の長方形断面の爪ホルダーのように、溶接開始点から終了点に至るまでの溶接工程を増やすことなく能率よく行うことができる。
【0011】
次に図1,図2及び図6〜図9を参照しツールバー部6について説明する。このツールバー部6は、横フレーム9,9から突設したブラッケットに取付軸25を介し回動可能に軸支したパイプ杆からなる支持フレーム26,26と、該支持フレーム26,26内にスライド可能に挿入される取付フレーム27,27を有したツールバー29と、上記支持フレーム26,26の後部を連結する横杆部30とトップマスト8に支持されるネジ式のツールバー昇降具31とからなる。これによりツールバー昇降具31を伸縮操作すると、取付軸25を支点に支持フレーム26,26及び取付フレーム27,27を介し、尾輪或いは畝立機等を装着するツールバー29の上下高さを調節することができる。
【0012】
そして、ツールバー部6は、支持フレーム26,26の後部上面に穿設したロックピン孔32に対応させてロック機構5を設置している。また取付フレーム27,27の軸方向上面には、後述するロックピン33が係脱可能に挿入される調節ピン孔35を所定間隔を有して複数穿設している。この実施形態では各調節ピン孔35はロックピン孔32より小径孔としている。
【0013】
ロック機構5は図7で示すように、カム溝36を筒体の中途部の一側に半周程度の長さで傾斜状に穿設したガイド体37を、支持フレーム26のロックピン孔32の外周表面に取付固定している。このガイド体37は、ロックピン33を進退自在及び回動自在に挿入した状態で、該ロックピン33に穿設したピン孔33aにカムピン39をカム溝36側から貫挿して圧入固定し、ロックピン33をカム溝36及びカムピン39を介して遊嵌支持するカム機構を備えた構成としている。
【0014】
ロックピン33は、上部に側面視でL字状のハンドル40を設けており、下部に前記ロックピン孔32に嵌合する大径部41と、取付フレーム27の調節ピン孔35に嵌合する小径部42とを同心状に形成している。これにより大径部41の段状に形成される下端の段付き部43を、調節ピン孔35回りの取付フレーム27の表面に接当させる押圧部にすることができる。
【0015】
またガイド体37の周方向に傾斜状に穿設されるカム溝36は、カムピン39がガタつきなく滑らかに移動させる溝幅とし、溝両端の上下距離(高さ)で形成されるストロークによって、小径部42を調節ピン孔35に挿入したロック姿勢と、該調節ピン孔35から離脱した調節姿勢とに切り換えることができるようにしている。
【0016】
またカム溝36のカム面は、両端に位置する上手側のカム面(非ロック側カム面)50と下手側のカム面(ロック側カム面)51の角度を中途部の傾斜カム面52よりも緩やかな略水平方向に滑らかに形成し、これによりロックピン33が進退したときガイド体37によって、ロック姿勢及び調節姿勢における位置決め保持を確実に行うことができる。
【0017】
以上のように構成されるロータリ耕耘装置1のツールバー部6は、図8で示すようにロック機構5のカムピン39が、カム溝36の非ロック側カム面50に支持された調節姿勢から、ハンドル40が後方回動操作されてカムピン39がロック側カム面51に至るとき、図9で示すように小径部42が取付フレーム27の選択された調節ピン孔35に挿入され、且つ大径部41がロックピン孔32に挿入された状態となる。
【0018】
そして、ハンドル40がさらに回動操作され、カムピン39が傾斜カム面52からロック側カム面51内に押し込まれることにより、該カムピン39は緩やかなロック側カム面51によって非戻し方向の摩擦力を有して押圧されるので、前記段付き部43によって取付フレーム27の表面を強く押圧することができ、またロック側カム面51によってロックピン33の位置決め保持を確実にすることができる。
【0019】
従って、ロック機構5は支持フレーム26内で調節ピン孔35に挿入された小径部42が、取付フレーム27の前後移動を規制し、また同時に段付き部43が取付フレーム27を支持フレーム26の内周面の一側に向けて押接し、上下のガタつきを生じさせることなくロックピン33と取付フレーム27を支持フレーム26に一体化させた状態とし、振動によるビビリ音の発生も防止することができる。
【0020】
またツールバー29の支持位置(前後調節位置)を変更する場合には、ハンドル40を後方から前方に向けて回動操作すると、カムピン39がロック側カム面51から傾斜カム面52を経て非ロック側カム面50に至り、図8で示すようにロックピン33が上昇しカムピン39を非ロック側カム面50に支持して、小径部42と段付き部43の挿入及び押圧を解除した調節姿勢にすることができる。
【0021】
この状態でツールバー29の引き出し(又は押し込み)を行うと、取付フレーム27,27は支持フレーム26,26内をスライド移動し、所定のツールバーセット位置にすることができる。
次いで、このツールバー29のセット位置において、ハンドル40を後方側に反転回動させると、ロックピン33を下降させて再びロック状態にすることができる。
【0022】
尚、図示例のロック機構5は、ロックピン33に大径部41と小径部42を形成し、段付き部43によって取付フレーム27を押圧するようにしたが、これに限ることなくロックピン33を図7の点線で示す、ストレート状のロックピン33にすることもできる。即ち、前記大径部41と小径部42を形成しないでストレート状のロックピン33にした場合には、該ロックピン33を同径状のロックピン孔32及び調節ピン孔35内に挿入することができる。そして、ロックピン33の軸端を押圧部となして、該押圧部を取付フレーム27の内周面に接当させて押圧することにより、前記実施形態のものと同様にツールバー29を簡単なワンタッチ操作によってロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係わるツールバー部を備えたロータリ耕耘装置をトラクタに装着した状態を示す側面図である。
【図2】図1のロータリ耕耘装置の構造を示す斜視図である。
【図3】図2のロータリ耕耘装置の構造を示す断面図である。
【図4】ロータリ耕耘装置の耕耘部の側面図である。
【図5】図4の耕耘部の要部の構成を示す部分平断面図である。
【図6】ツールバー部の左側面図である。
【図7】図6のツールバー部のロック機構の構成及びロック姿勢の状態を示す側断面図である。
【図8】カム機構の調節姿勢の状態を示す側断面図である。
【図9】カム機構の調節姿勢からロック姿勢に至る状態を示す背断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ロータリ耕耘装置
2 トラクタ
5 ロック機構
6 ツールバー部
7 ハンドル
26 支持フレーム
27 取付フレーム
29 ツールバー
32 ロックピン孔
33 ロックピン
35 調節ピン孔
36 カム溝
37 ガイド体
39 カムピン
41 大径部
42 小径部
43 段付き部(押圧部)
50 非ロック側カム面
51 ロック側カム面
52 傾斜カム面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘部(15)の上方に設けた支持フレーム(26)の後部に、尾輪や畝立機等を装着するツールバー(29)を前後位置調節自在に取付けてなるロータリ耕耘装置(1)において、前記支持フレーム(26)を中空のパイプとなして、ツールバー(29)の取付フレーム(27)をスライド自在に内嵌すると共に、上記支持フレーム(26)に進退自在に支持したロックピン(33)を、取付フレーム(27)に穿設した複数の調節ピン孔(35)の何れかの孔に挿入して、ツールバー(29)の前後動を規制すると同時に、取付フレーム(27)を支持フレーム(26)の内周面の一側に向けて押圧して、ツールバー(29)のガタつきを阻止するように構成したことを特徴とするロータリ耕耘装置。
【請求項2】
前記ロックピン(33)を大径部(41)と小径部(42)によって形成して、その小径部(42)を取付フレーム(27)に穿設した複数の調節ピン孔(35)の何れかの孔に挿入すると共に、小径部(42)から大径部(41)に連なる段付き部(43)を取付フレーム(27)に接当させて、取付フレーム(27)を支持フレーム(26)の内周面の一側に向けて押圧するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のロータリ耕耘装置。
【請求項3】
前記ロックピン(33)を支持フレーム(26)のガイド体(37)に内嵌すると共に、ガイド体(37)に形成したカム溝(36)にロックピン(33)のカムピン(39)を貫挿して、ロックピン(33)に設けたハンドル(40)を回動することにより、ロックピン(33)を上記カム溝(36)及びカムピン(39)で構成するカム機構を介して支持フレーム(26)に進退自在に支持したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロータリ耕耘装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−43992(P2007−43992A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233543(P2005−233543)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】