説明

ロータリ耕耘装置

【課題】耕耘作業時には水平に近い姿勢を保ちながら加圧手段によって耕耘した土を所定の押圧力で掻き均すと共に、耕耘開始時および終了時には耕耘爪によって耕耘した土の後方への飛散を阻止する整地体を提供する。
【解決手段】整地体17の前部をリヤカバー11の下端部に回動自在に枢支すると共に、整地体17の後部を加圧手段26によって下方に付勢して、整地体17が非接地状態ではリヤカバー11の下端に整地体17が連続して耕耘した土の後方への飛散を阻止し、また、接地状態では整地体17の後部が上下動しながら加圧手段26の押圧力で耕耘した土を掻き均すように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の耕耘を行うロータリ耕耘装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耕耘爪の上方を覆うメインカバーと、耕耘爪の後方を覆うリヤカバーと、リヤカバーの下端部に整地体を設けるロータリ耕耘装置が知られている。また、リヤカバーの下端部に設ける整地体を、水平に近い姿勢を保ちながら付勢手段によって耕耘した土を所定の押圧力で整地するものが提案されている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−151404号公報
【特許文献2】特開平11−103605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これら特許文献1、2に記載されたロータリ耕耘装置は、その整地体を水平に近い姿勢に保たせるために大掛かりなリンク機構を設ける必要があって製造コストがアップする他、耕耘開始時および終了時に耕耘爪によって耕耘した土がリヤカバーの下端から後方にそのまま飛散してしまい、耕耘開始時には盛り土を作り、また、耕耘終了時には窪みを作ることとなって、その後の整地作業を余議なくされるという問題がある。
そこで、本発明は、係る問題点に鑑みて、整地体を耕耘作業時には水平に近い姿勢を保ちながら加圧手段によって耕耘した土を所定の押圧力で掻き均すものとしながら、耕耘開始時および終了時には耕耘爪によって耕耘した土の後方への飛散を極力阻止することができるロータリ耕耘装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の技術的手段は、耕耘爪の上方を覆うメインカバーと、耕耘爪の後方を覆うリヤカバーと、リヤカバーの下端部に整地体を設けるロータリ耕耘装置にあって、整地体の前部をリヤカバーの下端部に回動自在に枢支すると共に、整地体の後部を加圧手段によって下方に付勢して、当該整地体が非接地状態ではリヤカバーの下端に整地体が連続して耕耘した土の後方への飛散を阻止し、また、接地状態では整地体の後部が上下動しながら加圧手段の押圧力で耕耘した土を掻き均すように構成してあることを特徴とする。
また、前記加圧手段の加圧開始点を変更自在として、整地体の掻き均し姿勢を耕深の深・浅に拘らず略一定となるように構成してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のロータリ耕耘装置によれば、整地体を耕耘作業時には水平に近い姿勢として整地体の広い接地面により土を鎮圧しながら均平にすることができる他、整地体に付与した加圧手段の押圧力で細かな土塊を掻き均すことができ、しかも、整地体の支持機構として大掛かりなリンク機構を必要としないため安価にロータリ耕耘装置を提供することができる。
また、耕耘開始時および終了時に整地体が非接地状態になると、整地体の後部が自重で下降してリヤカバーの下端に整地体が連続する状態となり、耕耘した土の後方への飛散を阻止することができるため、その後の整地作業を不要にして、作業能率を向上させることができる。
さらに、加圧手段の加圧開始点を変更自在として、整地体の掻き均し姿勢を耕深の深・浅によって変更可能に構成することによって、耕耘作業への適応性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】耕耘開始時におけるロータリ耕耘装置の側面図である。
【図2】深耕作業時におけるロータリ耕耘装置の側面図である。
【図3】浅耕作業時におけるロータリ耕耘装置の側面図である。
【図4】リヤカバーに整地体を取り付けた状態の側面図である。
【図5】リヤカバーに整地体を取り付けた状態の一部平面図である。
【図6】深耕作業時における整地体の姿勢を示す側面図である。
【図7】浅耕作業時における整地体の姿勢を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1乃至図3において、ロータリ耕耘装置1は、トラクタ2の後部にトップリンク3と左右のロアリンク4,4とによって構成される三点リンク機構を介して連結されたオートヒッチ5に着脱自在に連結される。そして、トラクタ2に設けた左右のリフトアーム6がリフトシリンダによって回動することによってロータリ耕耘装置1は、三点リンク機構を介して昇降自在となっている。
【0009】
ロータリ耕耘装置1は、図示しないギヤケースとギヤケースから左右方向に突設されたパイプフレームにより機枠が構成され、ギヤケースの上部にはトップマスト7が上方に向かって突設されている。また、トップマスト7にはトップピンが設けてあり、このトップピンがオートヒッチ5のトップフック5aに係合する一方、パイプフレームの中途部にブラケットを介して設けたロアピンがオートヒッチ5のロアフック5bに係合して、ロータリ耕耘装置1がオートヒッチ5に着脱自在に連結される。
【0010】
左側のパイプフレームの端部にはチェーンケース8が連結されていると共に、右側のパイプフレームの端部にはサイドプレートが下方に向かって延設されている。チェーンケース8の下端部とサイドプレートの下端部との間には耕耘筒9が回転自在に軸支され、該耕耘筒9には多数の耕耘爪9aが装着されている。そして、トラクタ2の図示しないPTO軸からユニバーサルジョイントを介して伝達された動力はギヤケース内に伝動され、左側のパイプフレーム内に軸支した伝動軸及びチェーンケース8内のチェーンを介して耕耘筒9が回転駆動される。
【0011】
耕耘爪9aは、その回転軌跡に沿う円弧状のメインカバー10によって上方が覆われ、このメインカバー10は機枠に固定、又は耕耘筒9回りに前後回動調節可能に固定される。上記メインカバー10の後端にはリヤカバー11の前端が支点軸Aを介して回動自在に連結してあり、リヤカバー11は耕耘爪9aの後方を覆うものとなっている。また、メインカバー10とリヤカバー11との間には吊りロッド12が介装されていて、吊りロッド12はリヤカバー11の下降側の限界を設定し、リヤカバー11の耕耘爪9aとの接当を阻止する。なお、13は尾輪や畦立機等を取り付けるツールバーであって、ツールバー13を取り付ける支持アーム14とトップマスト7の後側の上端部とが伸縮ロッド15を介して連結され、伸縮ロッド15の前端部に設けた調整ハンドル16を回転させることによってツールバー13はその高さが調整される。
【0012】
次に、リヤカバー11の下端部に取り付ける整地体17について説明する。図4及び図5に示すようにリヤカバー11の整地面となる下面と反対側の上面には前後方向の補強フレーム11a,11aがそれぞれ左右両端部に溶接されており、この補強フレーム11a,11aには整地体17を取り付けるための上下2本のピン11b,11bが横設されている。この上下2本のピン11b,11bには、整地体17をリヤカバー11に取り付けるブラケット18の凹部18a,18aが下方側から係合するとともに、ブラケット18から突設した支点軸Pに軸支したロックプレート19のフック部19aが上側のピン18aに上方側から係合することによって、ブラケット18、乃至は整地体17がリヤカバー11に取り付けられる。なお、ロックプレート19の把持部19bを握って時計回りにロックプレート19を回動させると、フック部19aが上側のピン11bとの係合を解除してブラケット18、乃至は整地体17をリヤカバー11から取り外すことができる。
【0013】
一方、整地体17は、上下の板体20a,20bと側板20cとを一体に溶接して、その断面が略矩形状を呈する中空の本体20を備え、この長尺な本体20の左右側端側の上面20aには前側プレート20dと後側プレート20eがそれぞれ溶接されている。そして、この前側プレート20dの上部に穿設した孔20fには支点ピン21が嵌挿され、前記ブラケット18の下部に穿設した孔に支点ピン21を嵌挿して抜け止めすることによって、整地体17の本体20はその前部をブラケット18に回動自在に軸支されることになる。また、上記支点ピン21には整地体17の加圧手段としての2枚のリンクプレート22,22の前部が回動自在に装着してあり、この左右のリンクプレート22,22の後部に穿設した孔22aにはホルダ23の軸部23aが嵌挿されている。そして、ホルダ23の中央部には孔23bが穿設されていて、この孔23bに加圧ロッド24の上部が摺動自在に嵌挿してある。
【0014】
加圧ロッド24の下部は前述した整地体17の後側プレート20eにピン25を介して固定されると共に、加圧ロッド24の外周には圧縮スプリング26が装着されている。この圧縮スプリング26は下端が後側プレート20eのピン25に接当し、整地体17の本体20が前部の支点ピン21を中心として後部が所定量だけ持ち上げられると圧縮スプリング26の上端がホルダ23の下面に接当し、以後、リンクプレート22の後部を持ち上げる。なお、24aは加圧ロッド24の上部に設けた抜け止め用の鍔である。
【0015】
次に、加圧手段の加圧開始点を変更するストッパについて説明する。左右のリンクプレート22,22のそれぞれ中央部の上下2箇所には、ストッパピン27を嵌挿する深耕孔22bと浅耕孔22cが穿設してある。そして、深耕孔22b又は浅耕孔22cにストッパピン27を嵌挿して抜け止めすると、図6又は図7に示すように整地体17の本体20が前部の支点ピン21を中心として後部が持ち上げられ、また、その結果、圧縮スプリング26を介してリンクプレート22の後部が持ち上げられると、ストッパピン27はブラケット18の下縁に接当し、それ以上のリンクプレート22の回動が阻止される。このリンクプレート22の回動が阻止された状態で、さらに整地体本体20の後部が土圧によって持ち上げられようとすると、圧縮スプリング26が圧縮されて整地体本体20に加圧力が作用することになる。また、前述のストッパピン27を深耕孔22b又は浅耕孔22cに嵌挿し変えることによって、整地体本体20の姿勢はリヤカバー11に対して異なる角度に変更される。
【0016】
以上説明した本発明の実施形態におけるロータリ耕耘装置1の作用について説明する。先ず、図1に示すように耕耘作業を開始すべくロータリ耕耘装置1を下降させると、耕耘爪9aが耕耘を開始して耕耘した土Sを後方に向けて放擲する。この場合、リヤカバー11は未だ接地していないため吊りロッド12によって吊持されて、下降側の限界位置に回動している。一方、整地体17の本体20は自重によって後部が下方に位置するように回動する。しかし、リヤカバー11の下縁に前側プレート20dの前縁が接当すると、それ以上の前方側への回動が規制されて、図示した起立姿勢(閉鎖姿勢)に保持される。
【0017】
この際、整地体17はリヤカバー11の下端にその整地面が連続することになって、耕耘した土Sの後方への飛散を阻止し、リヤカバー11の後方に盛り土Mを作ることが防止される。そして、更にロータリ耕耘装置1が下降して整地体本体20の後部が接地すると、土圧によって本体20の後部は上方側に回動して、本来の整地姿勢に次第に移行する。また、一行程の耕耘作業が終了してロータリ耕耘装置1を上昇させると、整地体17は上記とは逆に整地姿勢から閉鎖姿勢に移行する。このため耕耘爪9aの上昇によって作られた窪みKに整地体17が集めた土が埋め戻されることとなって、その後の整地作業が不要となる。
【0018】
また、図2に示す深耕を行う場合には、予め図6に示すようにストッパピン27を深耕孔22bに差し替えて耕耘作業を行う。この場合、整地体17の本体20が土圧を受けて後部が上方に回動するとストッパピン27がブラケット18の下縁に接当し、以後、圧縮スプリング26に基づいて耕耘した土を加圧しながら掻き均す整地体17の本来の整地姿勢となる。そして、深耕の場合には浅耕の場合より所定角度Dだけ早めにストッパピン27がブラケット18の下縁に接当する。このため、深耕によってリヤカバー11の下端がより持ち上げられた横臥姿勢となっても、整地体17の本体20の整地姿勢(掻き均し姿勢)は、前部側が若干、浮き上がった水平姿勢に維持されて、耕耘爪9aから放擲された細かな土塊であってもこれを飛散させることなく、押し潰しながら耕耘面を均平に仕上げることができる。
【0019】
同様に、図3に示す浅耕を行う場合には、予め図7に示すようにストッパピン27を浅耕孔22cに差し替えて耕耘作業を行う。そして、浅耕の場合には深耕の場合より所定角度Dだけ遅くストッパピン27がブラケット18の下縁に接当する。このため、浅耕によってリヤカバー11の下端が下がった起立姿勢となっても、整地体17の本体20の整地姿勢(掻き均し姿勢)は、前部側が若干、浮き上がった水平姿勢に維持されて、耕耘爪9aから放擲された土を整地体本体20の広い整地面によって鎮圧しながら、耕耘面を均平に仕上げることができる。
【0020】
さらに、本発明のロータリ耕耘装置1は、リンクプレート22に設けたストッパピン27がブラケット18の下縁と接当すると整地体17が整地姿勢となり、下縁との接当が解放されると整地体17が自由回動状態となって閉鎖姿勢になすことができ、両姿勢の切り替えを自動的に行うことができる。また、整地体17の加圧手段22,23,24,26,27は、リヤカバー11に着脱自在な整地体17自体に備えるものであるため、機枠等に大掛かりなリンク機構を設ける必要がなく、本発明の機能を備えるロータリ耕耘装置1を至って安価に製造することができる。さらに、深耕を行う場合、又は浅耕を行う場合における整地体17に作用する加圧力は、リンクプレート22と整地体本体20との間に介装した圧縮スプリング26によって全く変化しないため、加圧力の調整を深耕又は浅耕によって調整する必要が格別なく、この点でも本発明のロータリ耕耘装置1は、優位性を発揮するものとなっている。
【符号の説明】
【0021】
9a 耕耘爪
10 メインカバー
11 リヤカバー
17 整地体
18 ブラケット
22 リンクプレート
26 圧縮スプリング
27 ストッパピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘爪の上方を覆うメインカバーと、耕耘爪の後方を覆うリヤカバーと、リヤカバーの下端部に整地体を設けるロータリ耕耘装置にあって、整地体の前部をリヤカバーの下端部に回動自在に枢支すると共に、整地体の後部を加圧手段によって下方に付勢して、当該整地体が非接地状態ではリヤカバーの下端に整地体が連続して耕耘した土の後方への飛散を阻止し、また、接地状態では整地体の後部が上下動しながら加圧手段の押圧力で耕耘した土を掻き均すように構成してあることを特徴とするロータリ耕耘装置。
【請求項2】
前記加圧手段の加圧開始点を変更自在として、整地体の掻き均し姿勢を耕深の深・浅に拘らず略一定となるように構成してあることを特徴とする請求項1に記載のロータリ耕耘装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−67117(P2011−67117A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219979(P2009−219979)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】