説明

ロータ及びモータ

【課題】コギングトルクを低減させることができるロータを提供する。
【解決手段】複数対のロータコアである第1及び第2ロータコア21,22と第3及び第4ロータコア31,32は、同磁極のロータコア22,31同士が隣接して配置され、各対のロータコア21,22、31,32間で周方向にずれる態様で配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ及びモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータに使用されるロータとしては、周方向に複数の爪状磁極をそれぞれ有して組み合わされる対のロータコアを備え、それらの間に界磁磁石を配置して各爪状磁極を交互に異なる磁極に機能させる所謂永久磁石界磁のランデル型構造のロータがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−43749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなロータでは、図8に示すように対の同一形状のロータコア101,102を組み付けた組付体SA10と、対の同一形状のロータコア103,104を組み付けた組付体SA20とを軸方向に複数段(図8では2段)積層配置した所謂タンデム構造とすることができる。このようにロータ100を構成することで、モータ出力向上を図ることが可能となる。しかしながら、所謂永久磁石界磁のランデル型構造のロータでは、ロータの表面磁束に高調波を含みやすく、コギングトルクが大きくなる虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、コギングトルクを低減させることができるロータ及びモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転軸に沿って配列された複数対のロータコアと、各対のロータコア間に配置され、軸方向に沿って磁化された界磁磁石と、を備え、各対のロータコアは、円盤状のコアベースの外周部から突出するとともに軸方向に沿って互いに逆方向に延出形成され、周方向に沿って交互に配置された複数の爪状磁極をそれぞれ有し、前記複数対のロータコアは、同磁極のロータコア同士が隣接して配置され、前記各対のロータコア間で周方向にずれる態様で配置されることをその要旨とする。
【0007】
この発明では、複数対のロータコアは、同磁極のロータコア同士が隣接して配置され、各対のロータコア間で周方向にずれる態様で配置されるため、対のロータコアで発生するコギングトルクの位相がずれることとなるため、位相のずれたコギングトルク同士で打ち消し合うことができ、合成コギングトルクを低減させて振動の発生を抑えることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロータにおいて、前記各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、極対数をPとしたときに、0<θ≦50°/Pの範囲に設定されることをその要旨とする。
【0009】
この発明では、各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、極対数をPとしたときに、0<θ≦50°/Pの範囲に設定されるため、図4に示すように鎖交磁束量の低下、つまりトルクの低下を抑えつつ、コギングトルクを低減させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のロータにおいて、前記各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、0<θ≦35°/Pの範囲に設定されることをその要旨とする。
【0011】
この発明では、各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、0<θ≦35°/Pの範囲に設定されるため、図4に示すように鎖交磁束量の低下、つまりトルクの低下をより抑えつつ、コギングトルクを低減させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のロータにおいて、前記各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、0<θ≦20°/Pの範囲に設定されることをその要旨とする。
【0013】
この発明では、各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、0<θ≦20°/Pの範囲に設定されるため、図4に示すように鎖交磁束量の低下、つまりトルクの低下を更に抑えつつ、コギングトルクを低減させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のロータにおいて、前記各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、磁極数とロータと対向するステータのスロット数との最小公倍数をMSとし、n=1又は2とした場合に、180°×n/MS−5°≦θ≦180°×n/MS+5°の範囲に設定されることをその要旨とする。
【0015】
この発明では、各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、磁極数とロータと対向するステータのスロット数との最小公倍数をMSとし、n=1又は2とした場合に、180°×n/MS−5°≦θ≦180°×n/MS+5°の範囲に設定される。このため、図5に示すようにコギングトルクをより低減させることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のロータにおいて、前記複数対のロータコアは、対のロータコア毎に軸方向長さが異なるように構成され、周方向に隣り合う前記爪状磁極の間に配置されるとともに前記周方向に隣り合う爪状磁極と同極性が対向するように磁化された極間磁石を備え、前記各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、前記極間磁石の周方向幅θmとしたときに、0<θ≦θmの範囲に設定されることをその要旨とする。
【0017】
この発明では、複数対のロータコアは、対のロータコア毎に軸方向長さが異なるように構成され、周方向に隣り合う爪状磁極の間に配置されるとともに前記周方向に隣り合う爪状磁極と同極性が対向するように磁化された極間磁石を備え、各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、極間磁石の周方向幅θmとしたときに、0<θ≦θmの範囲に設定される。ここで、対のロータコア毎で軸方向長さが同一の場合、対のロータコア毎で磁気回路(経路)が完結して互いに均衡することとなり、対のロータコアの磁極間での短絡磁束は小さいが、軸方向長さが対のロータコア毎で異なる場合、前記短絡磁束が増加する傾向となる。そこで、極間磁石の周方向幅θm以内のずれ角度θとすることで、極間磁石による磁束の整流効果が作用し、図7に示すように磁極から他の磁極への短絡磁束を抑えることができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のロータにおいて、前記各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、0<θ≦θm/2の範囲に設定されることをその要旨とする。
【0019】
この発明では、各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、0<θ≦θm/2の範囲に設定されるため、極間磁石による磁束の整流効果が作用し、図7に示すように磁極から他の磁極への短絡磁束をより抑えることができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のロータを備えたことをその要旨とする。
この発明では、コギングトルクを低減することができるモータを提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
従って、上記記載の発明によれば、コギングトルクを低減させることができるロータ及びモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態におけるモータの断面図。
【図2】同上におけるロータの斜視図。
【図3】同上におけるロータの断面図。
【図4】同上におけるロータコア間のずれ角度θと鎖交磁束量との関係を示すグラフ。
【図5】同上におけるロータコア間のずれ角度θとコギングトルクとの関係を示すグラフ。
【図6】別例におけるロータの斜視図。
【図7】別例におけるロータコア間のずれ角度θと鎖交磁束量との関係を示すグラフ。
【図8】従来のロータ構造を説明するための斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、モータ1のモータケース2は、有底筒状に形成された筒状ハウジング3と、該筒状ハウジング3のフロント側(図1中、左側)の開口部を閉塞するフロントエンドプレート4とを有している。また、筒状ハウジング3のリア側(図1中、右側)の端部には、回路基板等の電源回路を収容した回路収容ボックス5が取着されている。
【0024】
筒状ハウジング3の内周面にはステータ6が固定されている。ステータ6は、径方向内側に延びる複数のティースを有する電機子コア7と、電機子コア7のティースに巻装されたセグメントコンダクタ(SC)巻線8とを有する。モータ1のロータ11は回転軸12を有し、ステータ6の内側に配置されている。回転軸12は非磁性体の金属シャフトであって、筒状ハウジング3の底部3a及びフロントエンドプレート4に支持された軸受13,14により回転可能に支持されている。
【0025】
ロータ11は、図2及び図3に示すように、第1及び第2組付体SA1,SA2を備える。
第1組付体SA1は、図2及び図3に示すように、対の第1及び第2ロータコア21,22と、界磁磁石としての環状磁石23と、背面補助磁石24、極間磁石25とを備える。尚、図2及び図3中の実線で示す矢印は各磁石23,24,25の磁化方向(S極からN極向き)を示している。
【0026】
図2に示すように、第1組付体SA1の第1ロータコア21は、略円盤状の第1コアベース21aの外周部に、等間隔に複数(本実施形態では5個)の第1爪状磁極21bが形成されている。第1爪状磁極21bは、第1コアベース21aに対して径方向外側に突出された突出部21cと、この突出部21cから軸方向に延出形成された爪部21dとを有する。
【0027】
第1爪状磁極21bの周方向端面21e,21fは径方向に延びる(軸方向から見て径方向に対して傾斜していない)平坦面とされ、突出部21cは軸直交方向断面が扇形状とされている。突出部21cの径方向外側の端部部分には、爪部21dが周方向の幅を一定として軸方向に沿って延出形成されている。各第1爪状磁極21bの周方向の角度、即ち前記周方向端面21e,21f間の角度は、周方向に隣り合う第1爪状磁極21b同士の隙間の角度より小さく設定されている。
【0028】
図2及び図3に示すように、第2ロータコア22は、略円盤状の第2コアベース22aの外周部に、等間隔に複数の第2爪状磁極22bの突出部22cが形成されている。突出部22cは、軸直交方向断面が扇形状とされ、径方向外側の端部部分には爪部22dが軸方向に沿って延出形成されている。
【0029】
第2爪状磁極22bの周方向端面22e,22fは径方向に延びる平坦面とされ、第2爪状磁極22bは軸直交方向断面が扇形状とされている。各第2爪状磁極22bの周方向の角度、即ち前記周方向端面22e,22f間の角度は、周方向に隣り合う第2爪状磁極22b同士の隙間の角度より小さく設定されている。
【0030】
そして、第2ロータコア22は、各第2爪状磁極22bの爪部22dがそれぞれ対応する各第1爪状磁極21bの爪部21d間に配置されるようにして、第1コアベース21aと第2コアベース22aとの軸方向の間に環状磁石23(図3参照)が配置(挟持)されるようにして第1ロータコア21に対して組み付けられる。このとき、第1爪状磁極21bの一方の周方向端面21eと第2爪状磁極22bの他方の周方向端面22fとが軸方向に沿って平行をなすように形成されるため、各端面21e,22f間の間隙が軸方向に沿って略直線状をなすように形成されることとなる。また、第1爪状磁極21bの他方の周方向端面21fと第2爪状磁極22bの一方の周方向端面22eとが軸方向に沿って平行をなすように形成されるため、各端面21f,22e間の間隙が軸方向に沿って略直線状をなすように形成されることとなる。
【0031】
ここで、環状磁石23は、その外径が第1及び第2コアベース21a,22aの外径と同じに設定され、第1爪状磁極21bを第1の磁極(本実施形態ではN極)として機能させ、第2爪状磁極22bを第2の磁極(本実施形態ではS極)として機能させるように、軸方向に磁化されている。
【0032】
各第1爪状磁極21bの背面21g(径方向内側の面)と第2コアベース22aの外周面22hとの間には、背面補助磁石24が配置されている。また、各第2爪状磁極22bの背面22gには、第1爪状磁極21bと同様に、背面補助磁石24が配置されている。各背面補助磁石24は、その軸直交方向断面が扇形状とされ、第1爪状磁極21bの背面21gに当接する側と第1コアベース21aの外周面21hに当接する側とがN極となるように磁化されている。そして、各背面補助磁石24は、第2コアベース22aの外周面22hに当接する側と第2爪状磁極22bの背面22gと当接する側とが同第2コアベース22aと同極のS極となるように磁化されている。
【0033】
各背面補助磁石24は、環状磁石23が配置されるロータ11の軸方向位置で互いに軸方向に重なるように、言い換えると、ロータ11の両面から環状磁石23が配置される軸方向位置に達するまで配置されるように軸方向の長さが設定されている。
【0034】
また、図2に示すように、第1爪状磁極21bと第2爪状磁極22bとの周方向の間には、極間磁石25が配置されている。より詳しくは、本実施形態の極間磁石25は、第1爪状磁極21bの一方の周方向端面21eと、第2爪状磁極22bの他方の周方向端面22fとの間に配置されている。そして、もう一方の極間磁石25は、第1爪状磁極21bの他方の周方向端面21fと、第2爪状磁極22bの一方の周方向端面22eとの間に配置されている。各極間磁石25は、第1及び第2爪状磁極21b,22bとそれぞれ同極性が対向するように(第1爪状磁極21b側がN極で、第2爪状磁極22b側がS極となるように)周方向に磁化されている。各極間磁石25の回転軸12側(ロータ11の径方向内側)には、漏れ磁束防止の空隙Kが設けられている。
【0035】
第2組付体SA2は、第1組付体SA1と略同形状とされ、対の第3及び第4ロータコア31,32と、界磁磁石としての環状磁石33と、背面補助磁石34と、極間磁石35とを備える。尚、図2及び図3中の実線で示す矢印は各磁石33,34,35の磁化方向(S極からN極向き)を示している。
【0036】
第2組付体SA2を構成する第3ロータコア31は、図2及び3に示すように、前記第2ロータコア22を軸直交方向を基準に反転したものであり、略円盤状の第3コアベース31aの外周部に、等間隔に複数(本実施形態では5個)の第3爪状磁極31bが形成されている。第3爪状磁極31bは、第3コアベース31aに対して径方向外側に突出された突出部31cと、この突出部31cから軸方向に延出形成された爪部31dとを有する。
【0037】
前記第3ロータコア31は、図3に示すように、その軸方向一端側の端面が第2ロータコア22の軸方向他端側の端面と当接するように回転軸12に組み付けられる。このため、前記爪部31dは、第2ロータコア22の爪部22dと軸方向反対側に延出するように構成される。
【0038】
第3爪状磁極31bの周方向端面31e,31fは径方向に延びる(軸方向から見て径方向に対して傾斜していない)平坦面とされ、突出部31cは軸直交方向断面が扇形状とされている。突出部31cの径方向外側の端部部分には、爪部31dが周方向の幅を一定として軸方向に沿って延出形成されている。各第3爪状磁極31bの周方向の角度、即ち前記周方向端面31e,31f間の角度は、周方向に隣り合う第3爪状磁極31b同士の隙間の角度より小さく設定されている。
【0039】
一方、第2組付体SA2を構成する第4ロータコア32は、前記第1ロータコア21を軸直交方向を基準に反転したものであり、第3ロータコア31と略同形状であって、略円盤状の第4コアベース32aの外周部に、等間隔に複数の第4爪状磁極32bの突出部32cが形成されている。突出部32cは、軸直交方向断面が扇形状とされ、径方向外側の端部部分には爪部32dが軸方向に沿って延出形成されている。
【0040】
第4爪状磁極32bの周方向端面32e,32fは径方向に延びる平坦面とされ、第4爪状磁極32bは軸直交方向断面が扇形状とされている。各第4爪状磁極32bの周方向の角度、即ち前記周方向端面21e,32f間の角度は、周方向に隣り合う第4爪状磁極32b同士の隙間の角度より小さく設定されている。
【0041】
そして、第4ロータコア32は、各第4爪状磁極32bの爪部32dがそれぞれ対応する各第3爪状磁極31bの爪部31d間に配置されるようにして、第3コアベース31aと第4コアベース32aとの軸方向の間に環状磁石33(図3参照)が配置(挟持)されるようにして第3ロータコア31に対して組み付けられる。このとき、第3爪状磁極31bの一方の周方向端面31eと第4爪状磁極32bの他方の周方向端面32fとが軸方向に沿って平行をなすように形成されるため、各端面31e,32f間の間隙が軸方向に沿って略直線状をなすように形成されることとなる。また、第3爪状磁極31bの他方の周方向端面31fと第4爪状磁極32bの一方の周方向端面32eとが軸方向に沿って平行をなすように形成されるため、各端面31f,32e間の間隙が軸方向に沿って略直線状をなすように形成されることとなる。また、第4爪状磁極32bは、その爪部32dの軸方向先端面32iが第1爪状磁極21bの爪部21dの軸方向先端面21iと軸方向において当接するように第3ロータコア31及び回転軸12と組み付けられる。
【0042】
このとき、第1組付体SA1を構成する対の第1及び第2ロータコア21,22と、第2組付体SA2を構成する対の第3及び第4ロータコア31,32とが周方向に所定角度であるずれ角度θだけずれるように回転軸12に組み付けられる。ここで、ずれ角度θは、極対数をP(本実施形態では5)としたときに、0<θ≦50°/Pの範囲である、0<θ≦10°(図4中X1として示す)に設定されることが望ましく、ずれ角度θを0<θ≦35°/Pの範囲である、0<θ≦7°(図4中X2として示す)に設定することがより望ましい。また更に好ましくは、ずれ角度θを0<θ≦20°/Pの範囲である、0<θ≦4°(図4中X3として示す)に設定することが望ましい。
【0043】
環状磁石33は、前記環状磁石23とその磁化方向が逆方向となるように設けられる。環状磁石33は、その外径が第3及び第4コアベース31a,32aの外径と同じに設定され、第3爪状磁極31bを第2の磁極(本実施形態ではS極)として機能させ、第4爪状磁極32bを第1の磁極(本実施形態ではN極)として機能させるように、軸方向に磁化されている。
【0044】
各第3爪状磁極31bの背面31g(径方向内側の面)と第4コアベース32aの外周面32hとの間には、背面補助磁石34が配置されている。また、各第4爪状磁極32bの背面32gには、第3爪状磁極31bと同様に、背面補助磁石34が配置されている。各背面補助磁石34は、その軸直交方向断面が扇形状とされ、第3爪状磁極31bの背面31gに当接する側と第3コアベース31aの外周面31hに当接する側とがS極となるように磁化されている。そして、各背面補助磁石34は、第4コアベース32aの外周面32hに当接する側と第4爪状磁極32bの背面32gと当接する側とが同第4コアベース32aと同極のN極となるように磁化されている。
【0045】
各背面補助磁石34は、環状磁石33が配置されるロータ11の軸方向位置で互いに軸方向に重なるように、言い換えると、ロータ11の両面から環状磁石23が配置される軸方向位置に達するまで配置されるように軸方向の長さが設定されている。
【0046】
また、第3爪状磁極31bと第4爪状磁極32bとの周方向の間には、極間磁石35が配置されている。より詳しくは、本実施形態の極間磁石35は、第3爪状磁極31bの他方の周方向端面31fと、第4爪状磁極32bの一方の周方向端面32eとの間に配置されている。そして、もう一方の極間磁石35は、第3爪状磁極31bの一方の周方向端面31eと、第4爪状磁極32bの他方の周方向端面32fとの間に配置されている。そして、各極間磁石35は、第3及び第4爪状磁極31b,32bとそれぞれ同極性が対向するように(第4爪状磁極24b側がN極で、第3爪状磁極23b側がS極となるように)周方向に磁化されている。各極間磁石35の回転軸12側(ロータ11の径方向内側)には、漏れ磁束防止の空隙(図示略)が設けられている。
【0047】
上記のように構成された第1組付体SA1と第2組付体SA2とは、図3に示すようにそれぞれの軸方向長さL1,L2が同一長さとなるように構成される。
上記のように構成されたモータ1は、回路収容ボックス5内の電源回路を介してセグメントコンダクタ(SC)巻線8に駆動電流が供給されると、ステータ6でロータ11を回転させるための磁界が発生され、ロータ11が回転駆動される。
【0048】
次に、上記のように構成されたモータ1の作用について説明する。
本実施形態のモータ1のロータ11は、対の第1及び第2ロータコア21,22を備えた第1組付体SA1と、対の第3及び第4ロータコア31,32を備えた第2組付体SA2とが積層された所謂タンデム構造とされる。そして、対の第1及び第2ロータコア21,22と、対の第3及び第4ロータコア31,32とが周方向にずれる態様で配置される。ここで、所謂永久磁石界磁のランデル型構造のロータでは、ロータの表面磁束に高調波を含みやすく、コギングトルクが大きくなる虞がある。そのため、対のロータコア21,22及び対のロータコア31,32のそれぞれで発生するコギングトルクの位相がずれることとなるため、位相のずれたコギングトルク同士で打ち消し合うことができ、合成コギングトルクを低減させて振動の発生を抑えられる。
【0049】
また、対のロータコア21,22及び対のロータコア31,32のずれ角度θは、極対数をP(本実施形態では5)としたときに、0<θ≦50°/P(P=5)の範囲に設定することで、図4中のX1の範囲として鎖交磁束量の低下を10%以内に抑えつつ、コギングトルクが低減される。また、ずれ角度θを、0<θ≦35°/Pの範囲に設定することで図4中のX2の範囲として鎖交磁束量の低下を5%以内に抑えられる。更に、ずれ角度θを、0<θ≦20°/Pの範囲に設定することで図4中のX3の範囲として鎖交磁束量の低下を1%以内に抑えられる。
【0050】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)複数対のロータコアである第1及び第2ロータコア21,22と第3及び第4ロータコア31,32は、同磁極のロータコア22,31同士が隣接して配置され、各対のロータコア21,22、31,32間で周方向にずれる態様で配置されるため、対のロータコア21,22及び対のロータコア31,32で発生するコギングトルクの位相がずれることとなるため、位相のずれたコギングトルク同士で打ち消し合うことができ、合成コギングトルクを低減させて振動の発生を抑えることができる。
【0051】
(2)各対のロータコア21,22、31,32間での周方向へのずれ角度θは、極対数をPとしたときに、0<θ≦50°/Pの範囲である、0<θ≦10°の範囲に設定されるため、図4に示すように鎖交磁束量の低下、つまりトルクの低下を抑えつつ、コギングトルクを低減させることができる。また、ずれ角度θを例えば0<θ≦35°/Pの範囲である、0<θ≦7°に設定することで、図4に示すように鎖交磁束量の低下、つまりトルクの低下をより抑えつつ、コギングトルクを低減させることができる。更に、ずれ角度θを0<θ≦20°/Pの範囲である、0<θ≦4°の範囲に設定することで、図4に示すように鎖交磁束量の低下、つまりトルクの低下を更に抑えつつ、コギングトルクを低減させることができる。
【0052】
(3)第1組付体SA1と第2組付体SA2の軸方向長さL1,L2が同一であるため、対のロータコア21,22、31,32毎で磁気回路(経路)が完結して互いに均衡することとなり、対のロータコア21,22、31,32の磁極間での短絡磁束は小さくなる。
【0053】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、特に言及していないが、例えばロータ11の磁極数とステータ6のスロット数との最小公倍数をMSとし、n=1又は2とした場合に、180°×n/MS−5°≦θ≦180°×n/MS+5°の範囲に設定することが望ましい。たとえば、最小公倍数MS=12とした場合でn=1の場合、ずれ角度θは、10°≦θ≦20°(図5中Y1)の範囲に設定される。また、最小公倍数MS=12とした場合でn=2の場合、ずれ角度θは、40°≦θ≦50°(図5中Y1)の範囲に設定される。このような構成とすることで、図5に示すようにコギングトルクを50%まで低減させることができる。
【0054】
・上記実施形態では、対のロータコア21,22を備えた組付体SA1と、対のロータコア31,32を備えた組付体SA2とを積層して2段の所謂タンデム構造としたが、その積層数は例えば図6に示すように3段やそれ以上に適宜変更してもよい。
【0055】
・上記実施形態では、対のロータコア21,22を備える第1組付体SA1の軸方向長さ(ロータコア21,22の軸方向端面の長さ)と、対のロータコア31,32を備える第2組付体SA2の軸方向長さ(ロータコア31,32の軸方向端面の長さ)とが同一となるような構成としたが、これに限らない。例えば、第1組付体SA1の軸方向長さと、第2組付体SA2の軸方向長さが異なるような構成を採用してもよい。また、例えば、対のロータコア41,42、43,44、45,46を備えた組付体SA3,SA4,SA5を3段以上積層した構成においても同様に軸方向長さが異なるように構成してもよい。ここで、図6に示すロータ11について説明する。ロータ11の各ロータコア41,42、43,44、45,46のコアベースの外周部から突出するとともに軸方向に沿って互いに逆方向に延出形成され、周方向に沿って交互に配置された複数の爪状磁極41b,42b、43b,44b、45b,46bを備える。爪状磁極41b,42b、43b,44b、45b,46bの周方向の間には極間磁石50,51,52を備える。そして、各対のロータコア41,42、43,44、45,46間での周方向へのずれ角度θ(組付体SA3,SA4,SA5間のずれ角度θ)は、極間磁石50,51,52の周方向幅θmとしたときに、0<θ≦θmの範囲に設定される。ここで、対のロータコア41,42、43,44、45,46毎で軸方向長さが同一の場合、対のロータコア毎で磁気回路(経路)が完結して互いに均衡することとなり、対のロータコアの磁極間での短絡磁束は小さい。しかしながら、本構成のように軸方向長さL3,L4,L5が対のロータコア41,42、43,44、45,46毎で異なる場合、短絡磁束が増加する傾向となる。そこで、極間磁石50,51,52の周方向幅θm以内のずれ角度θとすることで、極間磁石50,51,52による磁束の整流効果により図7にZ1として示すように磁極から他の磁極への短絡磁束を抑えることができる。また、ずれ角度θを0<θ≦θm/2の範囲に設定することで、極間磁石50,51,52による磁束の整流効果により図7にZ2として示すように磁極から他の磁極への短絡磁束をより抑えることができる。
【0056】
・上記実施形態では、対の第1及び第2ロータコア21,22と、対の第3及び第4ロータコア31,32とのそれぞれに界磁磁石として1つの環状磁石23,33を設けたが、これに限らない。例えば、複数に分割した永久磁石を回転軸12の周囲で対のロータコア21,22のコアベース21a,22aと、対のロータコア31,32のコアベース31a,32aとのそれぞれの軸方向間に配置する構成を採用してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、特に言及していないが、第1〜第4ロータコア21,22,31,32と電機子コア7は、例えば磁性金属板材の積層や、磁性粉体の成形にて構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…モータ、6…ステータ、11…ロータ、12…回転軸、21,22,31,32,41,42,43,44,45,46…ロータコア、21a,22a,31a,32a…コアベース、25,35,50,51,52…極間磁石、41b,42b,43b,44b,45b,46b…爪状磁極、L1,L2,L3,L4,L5…軸方向長さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に沿って配列された複数対のロータコアと、
各対のロータコア間に配置され、軸方向に沿って磁化された界磁磁石と、
を備え、
各対のロータコアは、円盤状のコアベースの外周部から突出するとともに軸方向に沿って互いに逆方向に延出形成され、周方向に沿って交互に配置された複数の爪状磁極をそれぞれ有し、
前記複数対のロータコアは、同磁極のロータコア同士が隣接して配置され、前記各対のロータコア間で周方向にずれる態様で配置されることを特徴とするロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータにおいて、
前記各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、極対数をPとしたときに、0<θ≦50°/Pの範囲に設定されることを特徴とするロータ。
【請求項3】
請求項2に記載のロータにおいて、
前記各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、0<θ≦35°/Pの範囲に設定されることを特徴とするロータ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のロータにおいて、
前記各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、0<θ≦20°/Pの範囲に設定されることを特徴とするロータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のロータにおいて、
前記各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、磁極数とロータと対向するステータのスロット数との最小公倍数をMSとし、n=1又は2とした場合に、180°×n/MS−5°≦θ≦180°×n/MS+5°の範囲に設定されることを特徴とするロータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のロータにおいて、
前記複数対のロータコアは、対のロータコア毎に軸方向長さが異なるように構成され、
周方向に隣り合う前記爪状磁極の間に配置されるとともに前記周方向に隣り合う爪状磁極と同極性が対向するように磁化された極間磁石を備え、
前記各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、前記極間磁石の周方向幅θmとしたときに、0<θ≦θmの範囲に設定されることを特徴とするロータ。
【請求項7】
請求項6に記載のロータにおいて、
前記各対のロータコア間での周方向へのずれ角度θは、0<θ≦θm/2の範囲に設定されることを特徴とするロータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のロータを備えたことを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−99163(P2013−99163A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241284(P2011−241284)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】