説明

ロードヒーティング設備とその運転方法

【課題】 燃料電池による発電電力及び温排水を有効に融雪に利用することができるロードヒーティング設備とその運転方法を提供する。
【解決手段】 道路もしくはその類似物の表面下部に、電気ヒータを用いる発熱ユニット及び温水パイプを用いる発熱ユニットを埋設し、前記各ユニットに接続して発熱量を制御する給電装置及び熱源装置を備えたロードヒーティング設備であって、該給電装置及び熱源装置は、燃料電池コージェネレーションシステムに配備されていることとしたものであり、前記電気ヒータは、温水パイプを用いる発熱ユニットの上流側から下流側に向かって漸増するように敷設するのがよく、その運転方法において、降雪が予想される所定時間前に所定の出力の待機運転を行い、その電力及び温排熱で発熱ユニットの予熱運転を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路又はその類似物である階段、駐車場あるいは玄関などの表面の雪氷を融解し除去するための燃料電池コージェネレーションシステムを使用したロードヒーティング設備とその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にロードヒーティング設備は、設置個所の過去の気象条件などから、大半の降雪に対応できるように設定した設計熱量を算出し、ロードヒーティング面積から発熱線(電気ヒータ)による発熱ユニットに対する給電装置又は温水パイプによる発熱ユニットに対する熱源装置の融雪能力を決定している。
特に、熱源装置を伴う温水パイプによるロードヒーティング設備は、コスト的にメリットが大きいといわれ、多くの個所に導入されている。
厳寒期に降雪を検知して前記設計熱量で融雪を開始する場合、路面温度は融雪に至る温度より更に低下している場合が多い。従って、融雪能力から決定された設備容量の融雪設備では、融雪温度に到達するために数時間を要する場合もある。
【0003】
ロードヒーティングにおいては、前記路面温度が、融雪開始時の温度から融雪温度に到達するまでの時間を短縮することが重要な課題の一つである。
天然ガスなどを燃料として水素に富むガスに改質し、この水素と空気などの酸化剤との電気化学的反応により発電し、その発電量にほぼ匹敵する排熱利用が可能な燃料電池は、低公害で騒音値も低く、コージェネレーション機器として今後の発展が期待されている。一般的な家庭などにおいては、発電電力を家庭内の各種電力負荷に供給し、更にこの排熱を給湯槽などに蓄熱し、浴槽あるいは台所などの温水需要に利用している。
寒冷地においては、冬場の積雪対策は、歩行あるいは交通安全確保のために重要な課題である。
一般的にロードヒーティング設備は、地下に敷設した電熱線(電気ヒータ)に商用電力を供給して融雪を行う融雪設備、あるいは地下に温水流通パイプを敷設して、ボイラーで作られた温水を供給し、融雪を行う融雪設備が知られている。
【特許文献1】特開平2004−100347号公報
【特許文献2】特開2001−228263号公報
【特許文献3】特許第2825443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これらの融雪設備に替わって、燃料電池コージェネレーションシステムの発電電力及び温排水を有効に融雪に利用することができるロードヒーティング設備とその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では、道路もしくはその類似物の表面下部に、電気ヒータを用いる発熱ユニット及び温水パイプを用いる発熱ユニットを埋設し、前記各ユニットに接続して発熱量を制御する給電装置及び熱源装置を備えたロードヒーティング設備であって、該給電装置及び熱源装置は、燃料電池コージェネレーションシステムに配備されていることを特徴とするロードヒーティング設備としたものである。
前記ロードヒーティング設備において、電気ヒータを用いる発熱ユニットは、加熱能力が、前記温水パイプを用いる発熱ユニットの上流側から下流側に向かって漸増するように敷設することができ、また、前記燃料電池コージェネレーションシステムは、固体高分子型燃料電池を用いた燃料電池コージェネレーションシステムとすることができる。
また、本発明では、前記ロードヒーティング設備の運転方法において、気象情報に基づき、降雪が予想される所定時間前に燃料電池コージェネレーションシステムを起動して所定の出力の待機運転を行い、待機運転における電力及び温排熱を使用して、前記2つの発熱ユニットの予熱運転を行うことを特徴とするロードヒーティング設備の運転方法としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、比較的起動時間が短い固体高分子型燃料電池においても、起動から定格運転に至るまでには燃料改質器昇温のため、通常40分から60分を要するので、気象情報などから降雪が予想される場合には、予測時間の所定時間前に燃料電池起動の指令を行い、降雪に至るまでに部分負荷状態(待機運転状態)として、降雪に先駆けて予熱を実施することができる。こうすることにより、降雪が検知されたとき、定格運転に至るまでの時間を格段に短縮できると共に、事前の待機運転よる予熱によって、地温はある程度上昇しているので、迅速な融雪運転へと移行できることとなる。
燃料電池の発電電力による融雪と温水による融雪は、その地域の状況により設計されており、その予測通りの場合には、燃料電池システムは、定格運転を実施することになるが、地温などの監視により融雪能力に余裕があると判断された場合には、燃料電池の発電出力を低減する制御を行うことができ、また、温水による熱の供給量も発電電力の低減に比例して低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、一般的にロードヒーティング設備、すなわち地下に敷設した電熱線(電気ヒータ)に商用電力を供給して融雪を行う融雪設備、あるいは地下に温水流通パイプを敷設して、ボイラーで作られた温水を供給し融雪を行う融雪設備に替わって、燃料電池コージェネレーションシステムの発電電力及び温排水を有効に融雪に利用するシステムである。
前述のごとく、燃料電池コージェネレーションシステムは水素と空気などの酸化剤との電気化学的反応により発電し、その発電量にほぼ匹敵する排熱利用が可能であり、低公害で騒音値も低いコージェネレーションシステムであり、この発電電力と温排水を同時に融雪に使用することで、燃料電池システムとして高い総合効率(一般的に80%以上)で運転を行うことが可能となる。
【0008】
一般の家庭において、この燃料電池コージェネレーションシステムを使用する場合には、いわゆる熱主電従運転が一般的であり、貯熱量が満杯となると発電を停止するという運転が行われる。燃料電池コージェネレーションを利用した融雪設備においては、その電力及び温水を全部融雪に使用できるので、電力あるいは温水需要に応じた発電制御を行う必要がない。
また、冬以外の融雪を必要としない季節においては、通常のコージェネレーションシステムとして、例えば家庭用電力負荷への電力供給及び風呂あるいは台所への給湯設備として使用できる。
また、本発明では、発熱線(電気ヒータ)による発熱ユニットの加熱能力が、温水パイプによる発熱ユニットの上流側から下流側に向かって漸増するように敷設されている。温水パイプ敷設による融雪設備においては、上流側では温水温度が高いが、下流側に行くにつれて温度が低下し融雪能力が低下する結果、いわゆる「融雪むら」が生じる問題があった。
【0009】
本発明は、この問題を解決するために、敷設された温水パイプによる発熱ユニットの上流側から下流側に向かって発熱線(電気ヒータ)による発熱ユニットの加熱能力を増加するように敷設することにより、温水パイプによる発熱ユニットの下流側における融雪能力低下を補完することができ、「融雪むら」を回避することができる。
天然ガスなどの炭化水素系燃料を改質して水素に富むガスを生成し、これを燃料として発電を行う場合、例えば固体高分子型燃料電池においては、改質器の温度上昇に時間を要し、起動から定格発電にいたるまでに通常40分から60分を要し、降雪が認められた時点で起動を行っても、電力及び温水供給に遅れが生じ、迅速に融雪運転にいたらないという問題点がある。
【0010】
本発明では、燃料電池コージェネレーションシステムを利用した融雪設備において、メタンなどの炭化水素燃料を改質して水素に富むガスを生成して、それを燃料として発電を行うシステムにおいて、降雪を検出してから定格運転に至るまでの時間の遅れを考慮したものである。
天気予報などの気象情報に基づいて、降雪が予測される場合に燃料電池コージェネレーションシステムの立ち上がり時間を考慮した所定の時間前に、システムの起動を行い、降雪が検出されるまでの間は、燃料電池の発電効率が極端に低下しない部分負荷運転(通常のシステムにおいては定格の約30%といわれている)を行い、この部分負荷運転により発生する電力及び温排水を使用して、道路の予熱を行おうとするものである。
【0011】
こうすることにより、降雪が検出されたときには、既に燃料電池システムは待機運転状態となっているので、迅速に定格運転へと移行でき、さらに部分負荷運転から発生する電力及び温水を用いて余熱が行われているから、即座に融雪運転に移行することが可能となる。
燃料電池自体の発電は行わず、改質装置のみをホット状態に待機させる、待機運転とすることも可能である。この場合には予熱は行わないが、定格運転への時間を短縮することが可能となる。
本発明では、前記燃料電池コージェネレーションシステムが固体高分子型燃料電池を用いた燃料電池コージェネレーションシステムを用いる。固体高分子型燃料電池は、その作動温度が他のタイプの燃料電池と比較して起動時間が短いという利点がある。
【0012】
次に、本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る融雪システムを示す模式図であり、燃料電池で発電された電力は、敷設された発熱ヒータの発熱に使用され、スタック及び燃焼排ガスとの熱交換(後述)により得られた温水は、敷設された融雪パイプラインに供給される。融雪により低温となった温水は、燃料電池コージェネレーションシステムに戻される。
図2は、本発明にかかる融雪システムを説明するための別の模式図であり、発熱線(電気ヒータ)による発熱ユニットの加熱能力が、温水パイプによる発熱ユニットの上流側から下流側に向かって漸増するように敷設されている。本図においては、発熱線の敷設密度を変化することにより、温水パイプによる発熱ユニットの上流側から下流側に向かって加熱能力を漸増するようにしてあるが、温水パイプによる発熱ユニットの上流側から下流側に向かって発熱能力の大きい発熱線を使用するようにして、温水パイプによる発熱ユニットの上流側から下流側に向かって加熱能力を漸増するようにしてもよい。
【0013】
図3は、燃料電池コージェネレーションシステム及び融雪システムの運転方法を説明するための図であり、説明に不必要なバルブその他の機器は省略している。
燃料電池コージェネレーションシステムは、燃料電池発電システムと、このシステムからの排熱を利用するコージェネレーションシステムとから構成される。燃料電池システムは、天然ガスに代表される炭化水素系燃料を水蒸気改質・一酸化炭素変成、更に固体高分子型燃料電池の場合には一酸化炭素除去を行い、これらの燃料を水素に富んだガスに改質する燃料改質装置、この改質ガスと空気とを燃料として電気化学的に発電を行うスタック、発電電力を変換して負荷に供給するコンバータ、燃料電池制御部及び熱交換器、循環ポンプ、バルブなどの補機(一部不図示)で構成される。
【0014】
熱交換器1は、燃焼排ガスの排熱を熱交換によりガス温度を下げるためのものであり、熱交換器2は、発電に伴うスタックの発熱を排熱するために用いられる。スタック自身の冷却は、内部における電気伝導度の上昇を避けるために、間接熱交換方式とし、スタック冷却水ラインには通常純水が使用される。
コンバータにより交流電力に変換された電力は、通常時には商用電源と連係され、家庭内の照明・電気器具などの一般的負荷に接続されて使用される。
燃料電池システムの外部には、通常貯湯槽が設置され、貯湯槽内の水は、貯湯槽循環ポンプにより前述の熱交換器1及び2に循環され、ここで熱交換を行い温水となって貯湯槽に戻される。
例えば、固体高分子型燃料電池からの温排水は、60〜70℃程度で排出されるため、使用用途によっては、ミキシングユニットにより適温に希釈されて供給される。また、貯湯槽内温水の水温が低い場合には、給湯器により加温(いわゆる追い炊き)されて供給される場合もある。
【0015】
一般の燃料電池コージェネレーションシステムは、いわゆる熱主・電従運転が行われることが一般的であり、電力負荷の状況により運転を開始し、電力負荷追従運転を行うが、この運転による熱回収により貯湯槽の能力一杯まで貯熱されると、運転を停止する運転方式をとる。
図3に示す融雪システムを備えた燃料電池コージェネレーションシステムにおいては、上記の構成の他に、一般負荷と融雪負荷とを切り替える負荷切り替え装置と、貯湯槽への循環戻りラインを融雪ラインに切り替える三方弁及びこれらを制御する制御部とを備える。なお、この制御装置は、燃料電池の制御装置の一部として構成されているものでも良い。
【0016】
通常運転を行っている場合には、燃料電池は発電を行っており、貯湯槽への蓄熱も行われているので、融雪の必要があると判断されたときには、負荷切り替え装置により負荷を融雪ヒータ側に切り替え、融雪ヒータに給電を行う。また、貯湯槽循環ラインの温水は、三方弁を切り替えることにより融雪パイプラインに供給される。融雪により降温した温水は、貯湯槽下部に戻され再度加温されて循環される。
運転の切り替えに、降雪センサからの信号を用いるのも好適である。
【0017】
燃料電池が停止している場合には、負荷切り替え装置により負荷を融雪ヒータ側に切り替え、三方弁を融雪パイプラインに切り替え、貯湯槽循環ポンプを起動すると共に、燃料電池発電システムに起動指令を発令する。こうすることにより、貯湯槽に温水が貯蓄されている場合には、燃料電池発電が定格に至るまで、この温水を予熱用として使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の融雪システムの一例を示す模式図。
【図2】本発明の融雪システムの他の例を示す模式図。
【図3】本発明に用いる燃料電池コージェネレーションシステムの一例を示すフロー構成図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路もしくはその類似物の表面下部に、電気ヒータを用いる発熱ユニット及び温水パイプを用いる発熱ユニットを埋設し、前記各ユニットに接続して発熱量を制御する給電装置及び熱源装置を備えたロードヒーティング設備であって、該給電装置及び熱源装置は、燃料電池コージェネレーションシステムに配備されていることを特徴とするロードヒーティング設備。
【請求項2】
前記電気ヒータを用いる発熱ユニットは、加熱能力が、前記温水パイプを用いる発熱ユニットの上流側から下流側に向かって漸増するように敷設されていることを特徴とする請求項1に記載のロードヒーティング設備。
【請求項3】
前記燃料電池コージェネレーションシステムは、固体高分子型燃料電池を用いた燃料電池コージェネレーションシステムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のロードヒーティング設備。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のロードヒーティング設備の運転方法において、気象情報に基づき、降雪が予想される所定時間前に燃料電池コージェネレーションシステムを起動して所定の出力の待機運転を行い、待機運転における電力及び温排熱を使用して、前記2つの発熱ユニットの予熱運転を行うことを特徴とするロードヒーティング設備の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−274624(P2006−274624A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93698(P2005−93698)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】