説明

ローラ、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られるローラ、該ローラを具備するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供する。
【解決手段】導電性基体の外周上に、弾性層と、該弾性層上に、少なくとも2層からなる被覆層とを有するローラにおいて、該被覆層が、少なくとも内層に、20質量%以上50質量%以下のカーボンブラックと融点が90℃以上170℃以下であるワックスを含有する層であることを特徴とするローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に使用されるローラ、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真法としては多数の方法が知られているが、一般には、まず感光体を帯電後、種々の像露光手段により感光体上に電気的潜像を形成する。次いで前記潜像をトナーで現像を行って可視像とし、必要に応じて紙等の転写材にトナー画像を転写した後、熱・圧力等により転写材上にトナー画像を定着して複写物を得る。また、転写材上に転写されずに感光体上に残ったトナー粒子は、クリーニング工程により感光体上より除去される。
【0003】
近年、感光体の帯電装置として、接触帯電装置が実用化されている。接触帯電装置は、従来から用いられているコロナ帯電装置と比較して、感光体の帯電に伴うオゾンの発生を抑制でき、また帯電に必要な消費電力を低減させることができる。そして、特に帯電部材として帯電ローラを用いたローラ帯電方式は、帯電の安定性という点から好ましく用いられている。
【0004】
ローラ帯電方式は、導電性の弾性ローラを感光体に加圧当接させ、これに電圧を印加することによって感光体への帯電を行うものである。
【0005】
ところで、接触帯電装置による帯電は、帯電部材(帯電ローラ)から感光体への放電によって行われ、ある閾値電圧以上の電圧を帯電ローラに印加することによって感光体の帯電が開始される。例を示すと、厚さ25μmの感光層を有する有機感光体(OPC感光体)に対して帯電ローラを加圧当接させた場合、絶対値で約640V以上の電圧を帯電ローラに印加すると感光体の表面電位が上昇し始める。それ以降は印加電圧に対して傾き1で線形に感光体表面電位が増加する。以後、この閾値電圧を帯電開始電圧Vthと定義する。
【0006】
つまり、電子写真に必要とされる電子写真感光体表面電位Vdを得るためには、帯電ローラにはVd+Vthという画像形成自体に必要とされる以上の電圧の印加が必要となる。
【0007】
帯電部材に電圧を印加して帯電する方法として、直流電圧(DC電圧)のみを帯電部材に印加して帯電を行う方法があり、これをDC帯電方式と称する。しかし、DC帯電方式においては環境変動等によって帯電部材の抵抗値が変動し易い。また、感光体の使用に伴い、感光層が徐々に削れることによって感光層の膜厚が変化するとVthが変動する。これらの理由により、感光体の電位を所望の値に制御することは容易ではなかった。
【0008】
このため、更なる帯電の均一化を図るために、所望のVdに相当するDC電圧に2×Vth以上のピーク間電圧を持つ交流成分(AC成分)を重畳した電圧を帯電部材に印加するAC+DC帯電方式が用いられている(例えば、特許文献1)。これは、ACによる電位の均し効果を目的としたものであり、感光体の電位はAC電圧のピークの中央であるVdに収束し、環境等の外乱に影響されにくい。
【0009】
しかしながら、DC電圧印加時における放電開始電圧(Vth)の2倍以上のピーク間電圧である高圧のAC電圧を重畳させるため、DC電源とは別にAC電源が必要となり、装置自体のコストアップを招く。更には、AC電流を多量に消費することにより、帯電ローラ及び感光体の耐久性が低下し易いということから、DC帯電の方がより好まれる傾向にある。
【0010】
帯電ローラとしては、基体上に弾性層を有する導電性支持部材上に、導電性シームレスチューブにより被覆層を形成した例がある(例えば、特許文献2)。更には、フッ素樹脂からなるシームレスチューブによる例が開示され(例えば、特許文献3)、導電性の異なる層構成よりなる多層チューブによる例も開示されている(例えば、特許文献4)。このような帯電ローラの製造方法としては、前記従来技術として、被覆層を挿入により形成する方法が挙げられている。また、クロスヘッド押出機を用いた被覆層形成方法も提案されている(例えば、特許文献5)。
【0011】
このような、シームレスチューブにより帯電ローラを形成する方法は、基体上の弾性層として発泡体を用いても、それを更にシームレスチューブによって被覆することにより、平滑な面を形成することができ、感光体をより均一に帯電することができる。
【0012】
支持部材をシームレスチューブで被覆する具体的な方法として、支持部材にシームレスチューブを外嵌させる方法がある。具体的には、シームレスチューブの内径を被覆すべき支持部材の外径よりも大きくして、物理的あるいは化学的手段、例えば、熱によりチューブを収縮させ嵌合させる方法がある。また、シームレスチューブ内径を被覆すべき支持部材の外径よりも小さくして、物理的あるいは化学的手段、例えば、空気圧によりチューブを押し広げ嵌合させる方法がある(例えば、特許文献6)。
【0013】
しかしながら、DC帯電方式においては、ローラ抵抗として望ましい物が得られず良好な画像は得られなかった。具体的には、初期においては問題ない帯電特性と画像が得られたが、長期保管後の画像において、帯電ローラピッチにスジ状の画像不良が発生した。
【0014】
すなわち長期保管をする場合、感光体と帯電ローラのセット位置にて帯電ローラが変形し、帯電ムラが生じ、それにより、画像に横スジが現れるという問題がある。従来のAC帯電方式においてはACによる電位のならし効果のため多少の帯電ムラがあっても画像には現れにくかった。しかし、より均一な帯電が求められるDC帯電方式においては、このような帯電ムラがあると画像に現れてしまう。そのため、長期にわたって当接しても帯電ムラのない帯電ローラが必要であった。
【0015】
一方、カーボンブラック等を配合し、帯電ローラ全体の抵抗を下げることで、帯電ムラはある程度改善される。しかし、内層の主成分である熱可塑性樹脂と、カーボンブラック等を配合し、押出成型してシームレスチューブを作製する場合、カーボンブラックの分散不良が生じ、それに伴いローラ表面に凹凸が浮き出て現れた。また、樹脂の粘度バランスの悪さなどに起因するチューブ形状不良が発生した。ローラ表面の凹凸や、チューブ形状不良が発生すると、帯電ローラとして用いた際、斑模様、画像ムラ等の画像不良の原因となる。
【0016】
【特許文献1】特開昭63−149669号公報
【特許文献2】米国特許4967231号明細書
【特許文献3】特開平5−2313号公報
【特許文献4】特開平5−96648号公報
【特許文献5】特開平6−58325号公報
【特許文献6】特開平10−228156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、長期保管後においても帯電ムラがなく、ローラ表面の凹凸の低減、更にチューブ形状を良化させ、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られるローラを提供することを目的とする。さらには、該ローラを具備するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題は、導電性基体の外周上に、弾性層と、該弾性層上に複数の層からなる被覆層とを有するローラにおいて、該被覆層が、少なくとも内層に、20質量%以上50質量%以下のカーボンブラックと融点が90℃以上170℃以下であるワックスを含有する層であることを特徴とするローラによって達成される。また、前記課題は、前記本発明のローラを具備していることを特徴とするプロセスカートリッジ及び電子写真装置によって達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、ローラと感光体が当接状態にあり、長期保管後においても帯電ムラがなく、ローラ表面の凹凸の低減、更にチューブ形状を良化する、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られるローラを提供できる。さらには、該ローラを具備するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明者等は、ローラの被覆層の形成に用いるシームレスチューブについて鋭意検討を行った。この検討により、シームレスチューブを押出成型により作製する際、内層に、20質量%以上50質量%以下のカーボンブラックと、融点が90℃以上170℃以下であるワックスとを配合することを見出した。これにより、ローラの帯電ムラが無く、配合したカーボンブラック等の顔料等の分散が良くなり、チューブ形状不良が抑制された。
【0021】
本発明におけるローラの実施形態の一例を図1に示す。図1に示した実施形態の本発明のローラは、導電性基体Aの外周上に、弾性層Bと、該弾性層B上に、内層Dと外層Eの2層からなる被覆層Cを有する。また、本発明のローラは、弾性層Bの外周上に更に導電層又は抵抗層を有し、その外周上に被覆層Cを有する構成としてもよい。
【0022】
導電性基体Aとしては、円柱状や円筒状の形態を有している、通常、鉄、銅及びステンレス等の金属、カーボン分散樹脂、金属あるいは金属酸化物分散樹脂等の材料から製造されたものを使用することが好ましい。
【0023】
弾性層Bは、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、EPDMゴム、ポリウレタンゴム、エポキシゴム及びブチルゴム等のゴム又はスポンジや、スチレンブタジエン共重合体、ポリウレタン、ポリエステル樹脂及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂で形成することができる。通常、これらのゴムや樹脂には、カーボンブラック、金属及び金属酸化物粒子等の導電剤を含有させることが好ましい。
【0024】
被覆層Cを形成する材料としては、カーボンブラックを含有する熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0025】
前記熱可塑性エラストマーは、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ(スチレン−水添ブタジエン−オレフィン)3元ブロック共重合体(SEBC)、ポリ(スチレン−水添ブタジエン−スチレン)3元ブロック共重合体(SEBS)、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)3元ブロック共重合体(SBS)、ポリ(スチレン−水添イソプレン−スチレン)3元ブロック共重合体(SEPS)、ポリ(スチレン−ビニルイソプレン−スチレン)3元ブロック共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ(エーテル−エステル)共重合体、ポリ(ウレタン−エーテル)共重合体、ポリ(アミド−エーテル)共重合体、ポリ(ウレタン−エステル)共重合体などが挙げられる。
【0026】
また、導電性被覆層Cを形成する材料には、前記熱可塑性エラストマーのほかに、さらに熱可塑性樹脂や無機顔料等を添加してもよい。
【0027】
被覆層Cに導電性を持たせるために用いられる前記カーボンブラックは、特に限定されるものではないが、例えば、好ましいカーボンブラックとして、「ケッチェンブラック」(商品名、ライオンアクゾ社製)、「Printex」(商品名、デグサ製)、「Special Black」(商品名、デグサ製)、「Color Black」(商品名、デグサ製)、「BLACK PEARLS」(商品名、キャボット社製)、「旭カーボン」(商品名、旭カーボン社製)、「三菱カーボン」(商品名、三菱化学社製)、「デンカブラック」(商品名、電気化学工業社製)、「シースト」(商品名、東海カーボン社製)、「トーカブラック」(商品名、東海カーボン社製)等が挙げられる。これらのカーボンブラックは、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、イオン導電剤等を用いて導電性を持たせる場合もあるが、電子写真感光体と当接するために塩が電子写真感光体を汚染する場合や、環境変動が大きくなる場合にはイオン導電剤等の配合を控えることが好ましい。
【0028】
なお、導電性被覆層Cの抵抗値は、通常、1×106Ω・cm以上1×1011Ω・cm以下とすることが好ましい。
【0029】
前記カーボンブラックは、電子写真感光体との当接点における帯電ローラの変形による低抵抗化の影響を小さくするため、少なくとも内層Dに20質量%以上50質量%以下含まれる。内層Dが複数層ある場合も同様である。また、外層Eに含まれるカーボンブラックの含有量は上記抵抗値が達成される量であれば特に限定されるものではない。
【0030】
導電性被覆層Cは、少なくとも内層Dに、融点が90℃以上170℃以下のワックスを含有する。該ワックスを含有させることで、カーボンブラックの分散不良による、ローラ表面の凹凸を低減する。該ワックスの融点は、シームレスチューブの押出成型を行う際の温度よりも低い(170℃以下)ほうが樹脂の流動性が良くなり、成型性が向上する。しかしながら、90℃を下まわる融点を有するワックスを使用した場合、該ワックスが先に溶融して分散が悪くなる。
【0031】
前記ワックスとしては、炭化水素系ワックス、脂肪酸、脂肪酸アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アミン類などの極性ワックスが好ましい。
【0032】
炭化水素系ワックスとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンワックスなどがあげられる。市販品としては、「サンワックス LEL−250」(商品名、三洋化成工業(株)製)、「ビスコール650‐P」(商品名、三洋化成工業(株)製)等が挙げられる。
【0033】
極性ワックスとしては、例えば、脂肪酸アミド系やウレタン系をポリエチレンなどの炭化水素と極性成分(脂肪酸、脂肪酸アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アミン類)を混合した複合ワックス等が挙げられる。市販品としては、「アマイイミド−6」(商品名、川研ファインケミカル(株)製)、「AX−2000」(商品名、川研ファインケミカル(株)製)、「バンルーブ N−18」(商品名、ハリマ化成(株)製)、「HAD−5150」(商品名、日本精蝋(株)製)、「花王ワックス230−2」(商品名、花王(株)製)、「ユーメックス1010」(商品名、三洋化成工業(株)製)等が挙げられる。
【0034】
前記ワックスは、内層Dに0.1質量%以上20質量%以下含有することが好ましい。また、0.5質量%以上6.5質量%以下含まれることがより好ましい。内層Dが複数層ある場合も同様である。ワックスの含有量を0.1質量%以上20質量%以下とすると、前述したカーボンブラックの分散不良による表面欠陥の発生を容易に低減し、また、粘度バランスが良くなり、チューブ形状良化を容易に行うことができる。
【0035】
導電性被覆層Cを形成する材料には、その他、必要に応じて導電性充填剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、補強剤、充填剤などを配合してもよい。必要に応じて配合する導電性充填剤としては、グラファイト、金属酸化物を挙げることができる。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化鉛、などが挙げられる。
【0036】
導電性被覆層Cの形成は、形成方法等特に制限されるものではない。従来安定生産が難しいとされた中抵抗領域の導電性を有するローラを安定して生産できるという観点から、シームレスチューブを作製し、このシームレスチューブを導電性基体と弾性層からなる支持部材上に被覆して形成することが好ましい。
【0037】
導電性被覆層Cの形成に使用する前記シームレスチューブの作製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、次のようにして作製することができる。すなわち、まず熱可塑性エラストマー、カーボンブラック、ワックス、その他の添加剤を混練し、続いてこれをペレット化する。次に、得られたペレットを押出成形機により押し出し、シームレスチューブを作製する。複数の層を有するシームレスチューブは、例えば、各々の層を形成するための材料ペレットを、共押出機を用いて同時に押し出して作製すればよい。
【0038】
前記シームレスチューブの厚みは、特に限定されるものではないが、通常、100μm以上600μm以下とすることが好ましい。
【0039】
また、前記支持部材は、導電性基体の外周上に、弾性層を形成することにより作製することができる。支持部材の作製方法は、特に限定されず、例えば、公知の方法のなかから適したものを選択すればよい。具体的には、例えば、次のようにして作製することができる。まず、表面に導電性接着剤を塗布した導電性基体を用意する。一方、弾性層B形成用の材料として、熱可塑性樹脂、ゴム、カーボンブラック、金属及び金属酸化物粒子等の導電剤、加硫剤及びその他の添加剤を用い、これらを混練してゴムコンパウンドを調製する。次に、このゴムコンパウンドを押出機でチューブ状に押し出し、加硫して中心部に孔を有する弾性チューブを作製する。そして、表面に導電性接着剤を塗布した導電性基体上にこの弾性チューブを被覆し、続いて加硫した後、不要な弾性チューブ端部をカットして除き、その後、研磨することにより所定の直径の弾性層を有する支持部材を作製する。
【0040】
次に、このようにして作製した支持部材の弾性層上に前記シームレスチューブを被覆し、ローラを製造することができる。
【0041】
前記シームレスチューブを前記支持部材の弾性層上に被覆する方法は、特に限定されない。例えば、中心部の孔が、前記支持部材の弾性層の外径より小さいシームレスチューブを準備する。この中心部の孔の内径を、エアー圧等を利用して拡大し、そこに前記支持部材を挿入した後に、エアー圧等を開放して、シームレスチューブの収縮力で弾性層の周面に密着させて被覆する方法を挙げることができる。また、シームレスチューブを熱収縮性のシームレスチューブとし、前記支持部材の弾性層上に被覆した後に加熱し、収縮させて密着させる方法等を挙げることができる。
【0042】
前記シームレスチューブの作製に用いるチューブ押し出し装置の一例を図2により説明する。成形に用いるダイス4には、空気導入用の中央通孔5の周囲に内外二重の環状の押し出し流路6,7が設けられている。成形に際しては、中央通孔5から空気を吹き込みながら、内側流路6に第1押し出し機8から被覆チューブを構成する内層材料を、また外側流路7に第2押し出し機9から被覆チューブを構成する外層材料をそれぞれ加圧注入する。内層Dと外層Eを重ね合わせ一体化して押し出して得られたチューブ3の内部を空気で膨らませながら、その外周に設けた水冷リング10にて冷却する。冷却されたチューブはチューブ引き取り装置22により送られ、所定長さに順次切断し、目的のシームレスチューブを得る。
【0043】
次に、本発明のプロセスカートリッジについて説明する。
本発明のプロセスカートリッジは、本発明のローラを具備する。本発明のローラを帯電ローラとして具備するプロセスカートリッジの実施形態の一例を図3に示す。本発明のプロセスカートリッジは、前述したように、本発明のローラを具備することを特徴とするものであり、電子写真感光体、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段等は、特に限定されるものではない。
【0044】
図3に示した実施形態のプロセスカートリッジにおいては、電子写真感光体13は、矢印方向に所定の周速度で回転駆動する。電子写真感光体13は回転過程において、一次帯電手段としての本発明の帯電ローラ11により、その周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受ける。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの像露光手段(不図示)からの画像露光14を受ける。こうして電子写真感光体13の周面に静電潜像が順次形成される。
【0045】
形成された静電潜像は次に現像手段15によりトナー現像され、現像されたトナー像は電子写真感光体13と転写手段16との間に電子写真感光体13の回転と同期取りされて、不図示の給紙部から給紙された転写材17に、転写手段16によって順次転写される。
【0046】
像転写を受けた転写材17は、電子写真感光体13面から分離されて像定着手段18へ導入されて像定着を受け、複写物(コピー)として装置外へ排出される。
【0047】
像転写後の電子写真感光体13の表面は、クリーニング手段19によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、繰り返し像形成に使用される。
【0048】
前記例示では、帯電ローラとして使用した例を示したが、本発明のローラは現像手段15内に設けた現像ローラ、転写手段16内に設けた転写ローラ、現像手段15内に現像ローラに当接して設けられた現像剤規制ローラ等に使用できる。
【0049】
本発明の電子写真装置は、本発明のローラを帯電ローラ若しくは転写ローラ、又は現像ローラとして有するものであれば、特に制限されるものではない。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて説明をするが、本発明は本実施例により限定されるものではない。
【0051】
なお、融点測定には、「DSC−6200」(製品名、セイコーインスツルメンツ社製)を用い、装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。サンプルはアルミニウム製のパンを用い対照用に空のパンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行った。
【0052】
(弾性層を有するローラの作製)
[ローラ作製例1](ローラ1の作製)
導電性基体として、鉄材を押出成形により、直径6mmの棒材に押出し、長さ244mmに切断後、ニッケルメッキを厚さ約3μm施したものを用意した。次に、弾性層の材料として、下記材料を用意した。
エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)(商品名:「EPT4070」、三井化学(株)) 100質量部
カーボンブラック(商品名:「ケッチェンブラックEC」、ライオン(株) 16質量部
パラフィンオイル(商品名:「ダイアナプロセスオイルPW―380」、出光興産社製)10質量部
炭酸カルシウム 40質量部
酸化亜鉛 5質量部
ステアリン酸 1質量部
硫黄 1.5質量部
テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD) 1.5質量部
2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT) 0.5質量部
前記エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)に、前記カーボンブラック、加硫剤及びその他の添加剤を加え、2本ローラで混練分散し、ゴムコンパウンドを得た。得られたゴムコンパウンドを単軸押出機でチューブ状に押し出し、160℃、0.7MPaの水蒸気中で30分間加熱して加硫を行い、直径12.5mm、長さ244mm、中心部に直径4mmの孔を有する弾性チューブを作製した。表面に導電性接着剤を塗布した前記導電性基体上にこの弾性チューブを被覆し、続いて200℃、0.7MPaの水蒸気中で30分間加硫した後、不要な端部のゴムを導電性基体の端面より10mm内側にて両端カットして、不要な弾性チューブ端部を除いた。その後、研磨によって直径7.95mmの弾性層を有するローラ(支持部材)を得た。
【0053】
(シームレスチューブの作製)
[チューブ作製例1](チューブ1の作製)
チューブ1の外層を形成するための樹脂材料ペレットを次のようにして準備した。
スチレン系の熱可塑性エラストマー(商品名:「セプトン8007」、クラレ社製) 100質量部
カーボンブラック(商品名:「スペシャルブラック550」、デグサ(株)) 70質量部
酸化マグネシウム(商品名:「スターマグ」、神島化学(株)製) 10質量部
ステアリン酸カルシウム(商品名:「カルシウムステアレート」、日本油脂(株)製) 1質量部
前記化合物を添加し、加圧式ニーダーを用いて20℃〜220℃で溶融混練した後、冷却し、粉砕機で粉砕し、押出温度140℃〜200℃で押出機を用いて造粒し、ペレットAO1を作製した。
【0054】
次にチューブ1の内層を形成するための樹脂材料ペレットを次のようにして準備した。
熱可塑性ポリウレタンエラストマー TPU(商品名:「クラミロンU」、(株)クラレ製) 100質量部
ウレタン系ワックス(商品名:「HAD−5150」、日本精蝋(株)製、融点101℃) 5質量部
カーボンブラック(商品名:「Printex30」、デグサヒュルスジャパン社製) 60質量部
酸化マグネシウム(商品名:「スターマグ」、神島化学(株)製) 10質量部
ステアリン酸カルシウム(商品名:「カルシウムステアレート」、日本油脂(株)製) 1質量部
前記化合物を添加し、加圧式ニーダーを用いて180℃で15分間混練した後、冷却し、粉砕機で粉砕して、押出温度180℃で押出機を用いて造粒し、ペレットAN1を作製した。
【0055】
次に、前記のペレットAO1及びAN1を用いてチューブ1を作製した。
内径φ16.5mmのダイスと外径φ18.5mmのポイントを備えた二層押出機で、押出温度160℃、チューブ引き取り速度2.5mm/sで押し出し、成型を行った。その後、サイジング、冷却工程を経て、チューブ内径φ7.4mm、最表面層の厚さ100μm、内層の厚さ200μm、長さ25cmのシームレスチューブ(チューブ1)を得た。
【0056】
[チューブ作製例2](チューブ2の作製)
内層において、ワックス、カーボンブラックを下記材料に変更したこと以外はチューブ作製例1と同様に作製チューブ2を作製した。
ポリプロピレンワックス(商品名:「ビスコール 440−P」、三洋化成工業(株)製、融点153℃)5質量部
カーボンブラック(商品名:「Printex30」、デグサヒュルスジャパン社製) 50質量部
カーボンブラック(商品名:「ケッチェンブラックEC」、ライオン(株)製) 10質量部
【0057】
[チューブ作製例3](チューブ3の作製)
外層、内層各々において、下記材料を用いたこと以外はチューブ作製例1と同様に作製チューブ3を作製した。
(外層)
スチレン系の熱可塑性エラストマー(商品名:「ダイナロン4600P」、JSR(株)製) 100質量部
ポリプロピレンワックス(商品名:「ビスコール550P」、三洋化成工業(株)製、融点152℃) 5質量部
カーボンブラック(商品名:「スペシャルブラック550」、デグサ(株)) 70質量部
酸化マグネシウム(商品名:「スターマグ」、神島化学(株)製)10質量部
ステアリン酸カルシウム(商品名:「カルシウムステアレート」、日本油脂(株)製) 1質量部
(内層)
ポリエチレン系ワックス(商品名:「サンワックスLEL−800」、三洋化成工業(株)製、融点133℃) 5質量部
カーボンブラック(商品名:「Printex30」、デグサヒュルスジャパン社製) 50質量部
カーボンブラック(商品名:「ケッチェンブラックEC」、ライオン(株)製) 10質量部
【0058】
[チューブ作製例4](チューブ4の作製)
内層において、エステル系ワックス(商品名:「NPS−9125」、日本精蝋(株)製、融点64℃)5質量部としたこと以外はチューブ作製例1と同様に作製チューブ4を作製した。
【0059】
[チューブ作製例5](チューブ5の作製)
内層において、カーボンブラック(商品名:「Printex30」、デグサヒュルスジャパン社製)を10質量部としたこと以外はチューブ作製例1と同様に作製チューブ5を作製した。
【0060】
[チューブ作製例6](チューブ6の作製)
ワックスを用いなかったこと以外はチューブ作製例1と同様にして、チューブ5を作製した。
【0061】
(実施例1、2、3)
前記チューブ作製例1、2及び3にて得られたチューブ1、2、3の各々を前記ローラ作製例1にて作製したローラ1にチューブ被覆装置(不図示)により嵌め込み、圧密着させ、帯電ローラ1、2及び3の各々を作製した。
【0062】
(比較例1、2、3)
前記チューブ製造例4、5及び6にて得られたチューブ4、5及び6の各々を用いたこと以外は実施例1と同様にして、帯電ローラ4、5及び6の各々を作製した。
【0063】
前記実施例及び比較例で作製したチューブ及び帯電ローラについて次の評価を行った。
【0064】
<画像評価>
実施例及び比較例で得られた帯電ローラを2本用意した。1本目は、感光ドラムと当接するローラ位置をマーキングした上で、40℃・95%RHの高温高湿環境下で1ヶ月放置した。その後、プロセスカートリッジ(製品名:「LBP5400用カートリッジ」、キヤノン(株)製)に組み込み、そのプロセスカートリッジをレーザービームプリンター(製品名:「LBP5400」、キヤノン(株)製)に装着した。これを23±2℃、55±5%RHの条件の下で画像出しを行い、得られた画像を目視で検査し、下記基準に基づき長期保管による帯電ローラの帯電ムラを評価した。
【0065】
2本目は長期保管を行わずに帯電ローラをプロセスカートリッジ(製品名:「LBP5400用カートリッジ」、キヤノン(株)製)に組み込み、これをレーザービームプリンター(製品名:「LBP5400」、キヤノン(株)製)に装着した。その後、23±2℃、55±5%RHの条件の下で画像出しを行い、得られた画像を目視で検査し、下記基準に基づきローラ表面の凹凸、チューブ形状の評価をした。
【0066】
<長期保管による帯電ローラの帯電ムラの評価>
前記画像出しにより得られた画像で、帯電ローラピッチの横スジを確認し、以下のように評価した。
○:横スジ無し
×:横スジがみられた
【0067】
<ローラ表面の凹凸の評価>
前記画像出しにより得られた画像で、ローラ表面の凹凸による斑模様の有無を確認し、以下のように評価した。
○:斑模様なし
△:斑模様が極軽微にみられる
×:斑模様がみられる
【0068】
<チューブ形状の評価>
前記画像出しにより得られた画像で、チューブ形状不良による画像ムラの有無を確認し以下のように評価した。
○:画像ムラなし
×:画像ムラが顕著にみられる
【0069】
以上の結果を纏め、表1に示した。
これより、本発明のローラは、長期保管後においても帯電ムラがなく、ローラ表面も凹凸の低減、更にチューブ形状が良化することがわかる。また、これにより安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られるローラ及び本発明のローラを有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することが可能となった。
【0070】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明におけるローラの一例の、導電性基体に垂直な面における断面の該略を示す図である。
【図2】本発明におけるシームレスチューブの作製に用いる、チューブ押し出し装置の一例の概略構成図である。
【図3】本発明のプロセスカートリッジを装着した電子写真装置の該略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
A 導電性基体
B 弾性層
C 被覆層
D 内層
E 外層
4 ダイス
5 中央通孔
6 押し出し流路
7 押し出し流路
8 第1押し出機
9 第2押し出機
10 水冷リング
11 帯電ローラ
12 電源
13 電子写真感光体
14 画像露光
15 現像手段
16 転写手段
17 転写材
18 像定着手段
19 クリーニング手段
20 レール
21 プロセスカートリッジ
22 タイミングプーリー(チューブ引き取り装置部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体の外周上に、弾性層と、該弾性層上に、少なくとも2層からなる被覆層とを有するローラにおいて、該被覆層が、少なくとも内層に、20質量%以上50質量%以下のカーボンブラックと融点が90℃以上170℃以下であるワックスを含有する層であることを特徴とするローラ。
【請求項2】
前記内層が、ワックスを0.1質量%以上、20質量%以下含有する材料から形成されていることを特徴とする請求項1記載のローラ。
【請求項3】
前記被覆層が、複数の層からなるシームレスチューブを用いて形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載のローラ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のローラを具備していることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のローラを具備していることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−69599(P2009−69599A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239191(P2007−239191)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】