説明

ローラ、及び、それを有する定着装置

【課題】弾性層を有するローラにおける該弾性層を構成する樹脂材料の加熱減量に基づいて生じていた紙しわ、カール等による通紙不良の発生を少なくすると共に、ローラのニップを通過することにより発生する紙しわの発生を少なくし、しかも、経時劣化を少なくして長寿命としたローラを提供する。
【解決手段】本発明のローラ3は、芯軸1の表面にポリイミドで構成される多孔質弾性層2を有するローラ3において、前記ローラ3の外径が該ローラ3の中央部分D3から両端部分D1,D2にかけて漸次大きくなるように、前記ポリイミドで構成される多孔質弾性層2が鼓状に形成されているものとする。前記ポリイミドで構成される多孔質弾性層2の表面には、好ましくは、ポリイミドで構成される離型層が設けられる。また、前記離型層は、好ましくは、微小な突起に覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPC、LBP、ファクシミリなどの電子写真方式を採用した画像形成装置において定着ローラ、加熱ローラ、加圧ローラ等として用いられるローラ、及び、それを有する定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置(特許文献1を参照。)が提案されている。図5は、従来の定着ローラを用いた電子写真方式の画像形成装置の説明図である。従来の電子写真方式の画像形成装置100、例えば、複写機及びレーザプリンタは、静電潜像が形成される感光体ドラム101、感光体ドラム101に接触して帯電処理を行う帯電ローラ102、レーザビーム等の露光手段103、感光体ドラム101の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ104、帯電ローラ102にDC電圧を印加するためのパワーパック105、感光体ドラム101上のトナー像を記録紙107に転写処理する転写ローラ106、転写処理後の感光体ドラム101をクリーニングするためのクリーニング装置108、感光体ドラム101の表面電位を測定する表面電位計109、並びに、加熱定着ローラ111及び加圧ローラ112からなるローラ方式の熱定着装置110によって構成されている。
【0003】
この電子写真方式を用いる画像形成装置100は、回転する感光体ドラム101の感光体層を帯電ローラ102を用いて一様に帯電させた後にレーザビーム等の露光手段103で露光して静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーによって現像することによりトナー像とし、このトナー像を記録紙107上に転写し、そして、この記録紙107を定着ローラ111及び加圧ローラ112からなるローラ方式の熱定着装置110に通過させてトナー像を熱定着するように構成されている。
【0004】
図6は、従来の定着無端ベルトの使用状態を示す説明図である。図6に示されているように、従来の画像形成装置においては、定着ローラ116と、該定着ローラ116に間隔をあけて平行に設けられた加熱ローラ117と、該定着ローラ116と該加熱ローラ117との間に回動可能に設けられた定着ベルト114と、該定着ベルト114を介して定着ローラ116に当接するように設けられた加圧ローラ115と、を有するベルト方式の定着装置113が用いられている。このような定着ベルト114の基体の上には、離型性及び耐久性を考慮したシリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料で構成される弾性層を直接形成させたものが提案されている。
【0005】
この定着装置113においては、トナー像が転写された記録紙107は、定着ベルト114と加圧ローラ115との間に規定される定着領域に通過されるので、トナー像が溶融されて、記録紙107に定着される。加圧ローラ115、定着ベルト114の外周面上には、前記した定着領域を通過された記録紙107を剥離させる剥離爪(図示せず)、前記加圧ローラ115及び定着ベルト114の表面に残留した残留トナーを除去するクリーニング部材(図示せず)、及び、表面温度を検知するサーミスタ(図示せず)が設けられている。
【0006】
前記クリーニング部材は、シリコーンオイルを含浸させたフェルトパット、半透膜等により、残留トナーを除去すると同時に加熱ローラ117の表面にシリコーンオイルを塗布する。加熱ローラ117は、高い熱伝導性を有するアルミ、鉄、銅等の金属ローラの表面に厚さ10〜30μmのフッ素系樹脂材料をコートして形成されている。フッ素系樹脂コートは、耐熱性に優れているとともにトナーに対する剥離性に優れ、加熱ローラ117の表面へのトナー付着により生じるオフセット画像を抑制する。一方、加圧ローラ115は、シリコーンゴムローラの表面にフッ素系樹脂材料薄膜をコート又は被覆して形成されている。このように加圧ローラ115の表面にフッ素系樹脂薄膜を形成すると、加圧ローラ115の表面のトナーによる汚れを抑制することができるので、加圧ローラ115の寿命を長くすることができる。
【0007】
定着ベルト114は、ポリイミドベースの無端ベルト上に設けられたシリコーンゴムで構成された数十μ〜数百μ厚の弾性層と、前記弾性層上に設けられた数十μm厚の離型層と、を有したたものが主流となっている。定着ローラ116は、定着ベルト114が存在する構成の場合、加圧ローラ115の圧力を定着ベルト114の内面から受けるローラで、φ20〜φ60程のシリコーンゴム発泡体の中心に金属製のジャーナルを持つ構造となっている。
【0008】
前述のような定着装置113の各部材は、記録紙107の通紙による摩擦や各部材同士の摩擦、熱によるへたりなどにより機能が低下してしまう。さらに、定着温度は、一般に160℃から200℃以上もの高温になるので、定着装置113を構成する各部材は熱により経時的に劣化していく。その上、加熱ローラ117、加圧ローラ115、定着ベルト114、定着ローラ116への加熱は、実際に複写動作を行う時だけでなく、待機中にも予熱するために加熱されている。したがって、複写動作を実行している時間より複写動作を待機している時間の方が極端に長いような使われ方をした場合、各部材毎に設定した限界通紙枚数に達する前に、熱の影響による機能低下のために部材の交換が必要となる場合が考えられる。定着ベルト114においては、例えば、熱による接着剤の劣化が起こるので、接着剤の凝集破壊やシリコーンゴムの劣化によるゴム部分の凝集、破壊等が起こる。
【0009】
このような加圧ローラ115、定着ローラ116、加熱ローラ117等のシリコーンゴムで構成される弾性層を有するローラにおいては、1)熱によりシリコーンゴムの加熱減量を生じるので、しわ、カール等による通紙不良を生じ易くなること、2)内層を構成するシリコーンゴムの硬度が低下するので十分な加圧ができなくなること、等の問題があった。これらの現象は、定着不良の原因となるので、ユーザーへ無用な負担を負わせることになるが、特に、最近では、マシンの要求特性としての限界通紙枚数が長くなってきたので、熱に対して余裕のあるローラが望まれている。
【特許文献1】特開2004−271751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0011】
即ち、本発明は、従来、弾性層を有するローラにおける該弾性層を構成する樹脂材料の加熱減量に基づいて生じていた紙しわ、カール等による通紙不良の発生を少なくすると共に、ローラのニップを通過することにより発生する紙しわの発生を少なくし、しかも、経時劣化を少なくして長寿命としたローラ、及び、それを有する定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載された発明は、芯軸の表面にポリイミドで構成される多孔質弾性層を有するローラにおいて、前記ローラの外径が該ローラの中央部分から両端部分にかけて漸次大きくなるように、前記ポリイミドで構成される多孔質弾性層が鼓状に形成されていることを特徴とするローラである。
【0013】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記ポリイミドで構成される多孔質弾性層の表面に、離型層が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記離型層がポリイミドで構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4に記載された発明は、請求項2又は3に記載された発明において、前記離型層が微小な突起に覆われていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載された発明において、前記芯軸がポリイミドで構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項6に記載された発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載された発明において、前記ローラが定着ローラ、加熱ローラ、又は、加圧ローラであることを特徴とするものである。
【0018】
請求項7に記載された発明は、定着ローラと、該定着ローラに間隔をあけて平行に設けられた加熱ローラと、該定着ローラと該加熱ローラとの間に回動可能に設けられた定着ベルトと、該定着ベルトを介して定着ローラに当接するように設けられた加圧ローラと、を有する定着装置において、該定着ローラ、該加熱ローラ、及び/又は、該加圧ローラとして、請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラを有していることを特徴とする定着装置である。
【0019】
請求項8に記載された発明は、定着ローラと、該定着ローラに当接するように設けられた加圧ローラと、を有する定着装置において、該定着ローラ及び/又は該加圧ローラとして、請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラを有していることを特徴とする定着装置である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1,6に記載された発明によれば、芯軸の表面にポリイミドで構成される多孔質弾性層を有するローラにおいて、前記ローラの外径が該ローラの中央部分から両端部分にかけて漸次大きくなるように、前記ポリイミドで構成される多孔質弾性層が鼓状に形成されているので、従来、弾性層を有するローラにおける該弾性層を構成する樹脂材料の加熱減量に基づいて生じていた紙しわ、カール等による通紙不良の発生を少なくすると共に、ローラのニップを通過することにより発生する紙しわの発生を少なくし、しかも、経時劣化を少なくして長寿命としたローラとすることができる。また、芯軸の表面にポリイミドで構成される多孔質弾性層を有しているので、その表面に離型層を有していても、問題を生じることはなく、むしろ、離型性を高めることとなる。
【0021】
請求項2に記載された発明によれば、前記ポリイミドで構成される多孔質弾性層の表面に、離型層が設けられているので、トナー等の固着を防止することができる。また、前記ポリイミドで構成される多孔質弾性層がポリイミドで構成されているので、従来、弾性層を有するローラにおける該弾性層を構成する樹脂材料の熱劣化に基づいて生じていた離型層の剥がれを防止することができる。
【0022】
請求項3に記載された発明によれば、前記離型層がポリイミドで構成されているので、従来、弾性層を有するローラにおける該弾性層を構成する樹脂材料の熱劣化に基づいて生じていた離型層の剥がれをいっそう防止することができる。
【0023】
請求項4に記載された発明によれば、前記離型層が微小な突起に覆われているので、ローラ表面が超撥水性を有するものとなり、そのために、トナーがローラの表面にいっそう固着しなくなり、よって、ローラ寿命が向上する。
【0024】
請求項5に記載された発明によれば、前記芯軸がポリイミドで構成されているので、前記弾性層及び前記芯軸を構成する樹脂材料がポリイミドで同一となり、そのために、前記弾性層と前記芯軸とが接着することなくシームレスとなって固着され、よって、前記弾性層と前記芯軸との剥離が全くなくなる。
【0025】
請求項7に記載された発明によれば、定着ローラと、該定着ローラに間隔を開けて平行に設けられた加熱ローラと、該定着ローラと該加熱ローラとの間に回動可能に設けられた定着ベルトと、該定着ベルトを介して定着ローラに当接するように設けられた加圧ローラと、を有する定着装置において、該定着ローラ、該加熱ローラ、及び/又は、該加圧ローラとして、請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラを有しているので、従来、弾性層を有する定着ローラ、加熱ローラ、加圧ローラ等のローラにおける該弾性層を構成する樹脂材料の加熱減量に基づいて生じていた紙しわ、弾性層を有するローラにおける該弾性層を構成する樹脂材料の加熱減量に基づいて生じていた紙しわ、カール等による通紙不良の発生を少なくすると共に、定着ローラと加圧ローラとの間に形成されるニップを通過することにより発生する紙しわの発生を少なくし、しかも、経時劣化を少なくして長寿命としたローラとすることができ、それらのために、ローラの経時劣化による不具合が改善され、よって、該定着装置の信頼性を高めることができる。
【0026】
請求項8に記載された発明によれば、定着ローラと、該定着ローラに当接するように設けられた加圧ローラと、を有する定着装置において、該定着ローラ及び/又は該加圧ローラとして、請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラを有しているので、従来、弾性層を有するローラにおける該弾性層を構成する樹脂材料の加熱減量に基づいて生じていた紙しわ、カール等による通紙不良の発生を少なくすると共に、ローラのニップを通過することにより発生する紙しわの発生を少なくし、しかも、経時劣化を少なくして長寿命としたローラとすることができ、それらのために、ローラの経時劣化による不具合が改善され、よって、該定着装置の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本発明の他の一実施の形態を示すローラの平面図である。図2は、本発明の一実施の形態を示すローラの表面に離型層として被覆するチューブである。図3は、本発明の一実施の形態を示す定着装置である。図4は、本発明の他の一実施の形態を示す定着装置である。
【0029】
図1に示されているように、本発明のローラ3は、芯軸1の表面にポリイミドで構成される多孔質弾性層2を有している。そして、前記ローラ3の外径が該ローラ3の中央部分D3から両端部分D1,D2にかけて漸次大きくなるように、前記ポリイミドで構成される多孔質弾性層2が鼓状に形成されている。
【0030】
このように、芯軸1の表面にポリイミドで構成される多孔質弾性層2を有するローラ3において、前記ローラ3の外径が該ローラ3の中央部分D3から両端部分D1,D2にかけて漸次大きくなるように、前記ポリイミドで構成される多孔質弾性層2が鼓状に形成されていると、従来、弾性層を有するローラにおける該弾性層を構成する樹脂材料の加熱減量に基づいて生じていた紙しわ、カール等による通紙不良の発生を少なくすると共に、ローラ3のニップを通過することにより発生する紙しわの発生を少なくし、しかも、経時劣化を少なくして長寿命としたローラ3とすることができる。また、芯軸1の表面にポリイミドで構成される多孔質弾性層2を有しているので、その表面に離型層を有していても、問題を生じることはなく、むしろ、離型性をいっそう高めることとなる。
【0031】
本発明においては、前記芯軸1は、アルミニウム、鉄、ステンレススチール(SUS)、セラミック、プラスチック、各種焼結金属、発泡金属体等の材料で構成されるが、本発明の目的に反しない限り、それら以外の材料であってもかまわない。
【0032】
本発明においては、前記ポリイミドで構成される多孔質弾性層2の表面に、離型層(図示せず)が設けられている。このように、前記ポリイミドで構成される多孔質弾性層2の表面に、離型層(図示せず)が設けられていると、トナー等の固着を防止することができる。また、前記多孔質弾性層2がポリイミドで構成されていると、従来、弾性層を有するローラにおける該弾性層を構成する樹脂材料の熱劣化に基づいて生じていた離型層の剥がれを防止することができる。
【0033】
従来においては、離形層に使用されるふっ素系樹脂チューブは、難加工性のものが多いが、接着などの工程の際に高温雰囲気下におく必要があったので、ある程度の機能を犠牲にして加工性に優れたふっ素形樹脂チューブを使用していた。しかしながら、本発明のローラ3においては、多孔質弾性層2がポリイミドで構成されているので、加工の際、耐熱性の観点からこれまで使用が限定されていたふっ素系樹脂チューブを利用することができる。前記チューブを構成するフッ素樹脂としては、TFE、FEP、PFA、PTFE、FEP、ETFE、PVDF等が挙げられる。これらの内、TFE、FEP又はPFAは、トナー等の離型性に優れてオフセットが発生しにくいこと、摩擦係数が小さいこと、耐熱性及び耐久性に優れていること、等の特性を有しているので好ましい。
【0034】
本発明においては、前記離型層は、さらに好ましくは、ポリイミドで構成される。このように、前記離型層がポリイミドで構成されていると、従来、弾性層を有するローラにおける該弾性層を構成する樹脂材料の熱劣化に基づいて生じていた離型層の剥がれをいっそう防止することができる。
【0035】
前記離型層を有するローラは、円柱状空間を有する金型の内側に、金型内径よりやや小さい径を有するふっ素樹脂系チューブセットし、接着剤を塗布する。さらに、チューブ内にローラを挿入した後、加熱処理により接着およびチューブの熱収縮を行うことで得られる。
【0036】
本発明においては、前記離型層は、好ましくは、微小な突起に覆われているものである。このように、前記離型層が微小な突起に覆われていると、ローラ表面が超撥水性を有するものとなり、そのために、トナーがローラの表面にいっそう固着しなくなり、よって、ローラ寿命が向上する。
【0037】
このような微小な突起に覆われた離型層を形成するには、チューブ材の軟化点付近まで加熱した微細な凹凸を持つ金型でチューブを挟み込んで、微小な凹凸を持つ金型内部で加硫発泡させること等により、図2に示されているような突起物の高さ(h)に対する相当直径(d)の比(h/d、アスペクト比)が0.8〜2.0の微小な突起郡をもつチューブ(Su)を作成し、これをローラへ被せて接着することにより作成する。この微小突起群は、自己支持性であることが好ましい。微小突起群を構成する突起物は、先端部の相当直径よりも底面部の相当直径がわずかに大きい形状となっている。
【0038】
本発明においては、前記芯軸1は、ポリイミドで構成されている。このように、前記芯軸1がポリイミドで構成されていると、前記多孔質弾性層2及び前記芯軸1を構成する樹脂材料がポリイミドで同一となり、そのために、前記多孔質弾性層2と前記芯軸1とが接着することなくシームレスとなって固着され、よって、前記多孔質弾性層2と前記芯軸1との剥離が全くなくなる。
【0039】
図1,3に示すように、本発明の定着装置30は、定着ローラ21と、該定着ローラ21に間隔をあけて平行に設けられた加熱ローラ23と、該定着ローラ21と該加熱ローラ23との間に回動可能に設けられた定着ベルト24と、該定着ベルト24を介して定着ローラ21に当接するように設けられた加圧ローラ22と、を有している。そして、本発明の定着装置30は、該定着ローラ21、該加熱ローラ23、及び/又は、該加圧ローラ22として、請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラを有している。
【0040】
このように、定着ローラ21と、該定着ローラ21に間隔をあけて平行に設けられた加熱ローラ23と、該定着ローラ21と該加熱ローラ23との間に回動可能に設けられた定着ベルト24と、該定着ベルト24を介して定着ローラ21に当接するように設けられた加圧ローラ22と、を有する定着装置30において、該定着ローラ21、該加熱ローラ23、及び/又は、該加圧ローラ22として、請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラを有していると、従来、弾性層を有する定着ローラ21、加熱ローラ23、加圧ローラ22等のローラ3における該弾性層を構成する樹脂材料の加熱減量に基づいて生じていた紙しわ、カール等による通紙不良の発生を少なくすると共に、定着ローラ21と加圧ローラ22との間に形成されるニップ通過することにより発生する紙しわの発生を少なくし、しかも、経時劣化を少なくして長寿命としたローラ3とすることができ、それらのために、ローラ3の経時劣化による不具合が改善され、よって、該定着装置の信頼性を高めることができる。
【0041】
図1,4に示すように、本発明の定着装置40は、定着ローラ31と、該定着ローラ31に当接するように設けられた加圧ローラ32と、を有している。そして、本発明の定着装置40は、該定着ローラ31及び/又は該加圧ローラ32として、請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラを有している。このように、定着ローラ31と、該定着ローラ31に当接するように設けられた加圧ローラ32と、を有する定着装置40において、該定着ローラ31及び/又は該加圧ローラ32として、請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラを有していると、従来、弾性層を有する定着ローラ31、加圧ローラ32等のローラ3における該弾性層を構成する樹脂材料の加熱減量に基づいて生じていた紙しわ、カール等による通紙不良の発生を少なくすると共に、定着ローラ31と加圧ローラ32との間に形成されるニップを通過することにより発生する紙しわの発生を少なくし、しかも、経時劣化を少なくして長寿命としたローラ3とすることができ、それらのために、ローラ3の経時劣化による不具合が改善され、よって、該定着装置の信頼性を高めることができる。
【0042】
(実施例1)
1)2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及び、2)2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル等の芳香族ジアミンの混合物を主成分とし、この主成分に、3)ジアミノジシロキサン、及び、テトラアミノビフェニルよりなる発泡均一化のための成分、4)1,2−ジメチルイミダゾ−ルよりなる触媒(触媒量)、並びに、5)メタノ−ル、及びエタノ−ルよりなる溶剤を加えて、これらを均一に混合して溶解させた。この際、前記1)、2)、及び、3)の配合量は、重量比で、1):2):3)=1:1:0.5とした。このようにして得られた混合物をエバポレ−タへ注いで、80℃で減圧蒸発乾固し、そして、真空ポンプでの減圧下において12時間蒸発乾固して粉末化を行うことにより粉末P(以下、「粉末P」という。)を得た後、この粉末Pを2.45GHzのマイクロ波加熱によって加熱して、約150倍(密度 約10kg/m3 に相当)の発泡ポリイミドを得た。次に、この発泡ポリイミドを切断して長さ310mm、1辺33mmの直方体からなる発泡ポリイミドブロックとし、この発泡ポリイミドブロックの中心に直径φ13mm、長さ310mmの孔を空け、この孔に二液性エポキシ接着剤(商品名:セメダインEP001/セメダイン社製)をあらかじめ塗布した直径φ14mm、長さ330mmの芯軸を挿入し、この芯軸を挿入した発泡ポリイミドブロックを熱風等の加熱により、10℃/分程度の昇温速度で200℃程度から徐々に昇温させて、340℃で40分間加熱し、最後は、Tg+20℃の温度にて10分間加熱し、冷却して、これを砥石にて研削を行って、φ30とし、両端を所定の長さでカットして、定着ローラ(P1)を得た。続いて、このようにして得た定着ローラP1を円筒研削機にて外径D1=D2=30.0、D3=29.8(D1、D2及びD3については、図2を参照。)に研削して鼓状に加工することにより定着ローラ(P1b)とした。本実施例では、記載しなかったが、前記約150倍の発泡ポリイミドから金型等を用いた加熱圧縮による圧縮加工によって、発泡倍率を1.5〜100倍に低下させることで、弾性能力(ゴム硬度)を変更することが可能である。
【0043】
(実施例2)
長さ310mm、1辺33mmの直方体からなる発泡ポリイミドの中心へ直径φ10mm、長さ310mmの孔を空け、その孔へ直径φ10mm、長さ330mmの接着剤を塗布した芯軸を挿入した以外は、実施例1と同様にして、芯軸を挿入した発泡ポリイミドブロックを得た。このようにして得た芯軸を挿入した発泡ポリイミドブロックを外径φ32まで研削し、これをφ20の円筒形の金型へ挿入し、200℃で40分間加熱した後、360℃で60分間加熱し、冷却したところ、スプリングバックによってφ22程度となった。このφ22程度となった成形物の外径を砥石にて研削してφ20とした後、その両端を所定の長さにカットして定着ローラ(P2)とした。続いて、このようにして得た定着ローラP2を円筒研削機にて、中央部をやや多めのD1=D2=20.0、D3=19.8に研削して鼓状に加工することにより定着ローラ(P2b)とした。
【0044】
以上、実施例1,2における定着ローラ(P1、P2、P1b、P2b)を図3に示される定着装置に装着し、この定着装置に通紙して、発生したしわの枚数を測定した。測定条件は、加速条件:定着ローラ温度230℃、線速400mm/s、及び、ランニング時間300時間(空回し)とし、この測定条件において1000枚通紙した際のしわ発生枚数を測定した。測定結果は、次の表1に示される。
【0045】
【表1】

【0046】
表1より、鼓状に形成した定着ローラ(P1b、P2b)は、定着ローラ(P1、P2)に比べしわ発生量が低減されていることが分かる。
【0047】
(実施例3)
直径φ19.8mmの円柱状空間を有する金型の内側に金型内径よりやや小さいφ19.7の径を有しかつチューブ内面に表面接着処理を施こしたTFEチューブを挿入した後、このチューブ内に前記実施例1における定着ローラ(P2b)を挿入し、このチューブ内に挿入した定着ローラに加熱処理を施して、チューブと定着ローラとの接着、及び、チューブの熱収縮を行って、表面にフッ素系樹脂のチューブを有する定着ローラ(P3a)を得た。同様にして、PFAチューブを被覆した定着ローラ(P3b)、及び、ETFEを被覆した定着ローラ(P3c)を得た。
【0048】
以上、実施例3における定着ローラ(P3a、P3b、P3c)を図4に示される定着装置に装着し、この定着装置に一定枚数のベタ画像の未定着トナー像をホットオフセット発生領域で通過させた後、ローラ表面の固着状況を測定した。測定条件は、加速条件:定着ローラ温度250℃、及び、線速300mm/sとした。そして、この測定条件においてA3ベタ画像を通紙して固着発生までの時間を測定した。測定結果は、次の表2に示される。
【0049】
【表2】

【0050】
表2より、表層をふっ素系樹脂チューブで覆った定着ローラでは、トナーの固着までの時間が延びていることが分かる。
【0051】
(実施例4)
両端に芯軸及び粉末の注ぎ口を有する蓋のついたφ30の円筒状の中空金属パイプへ接着剤を塗布したφ14の芯軸をセットし、注ぎ口から粉末Pを入れ、蓋を押し込むことで、円筒形の金型から取り出しても自重では崩れない程度の圧力をかけ、次に、蓋を外した。そして、このパイプに3.2×106 Paの圧力をかけて300℃で40分間、加硫、発泡を行なって、最表層がポリイミドの定着ローラ(P4)を得た。このようにして得た定着ローラ(P4)、並びに、前記定着ローラ(P3a)、定着ローラ(P3b)及び定着ローラ(P3c)を実施例3と同様に単体ランニング試験を行った。試験結果は、次の表3に示される。
【0052】
【表3】

【0053】
表3より、表層をポリイミドとした定着ローラでは、耐久性が改善されたことがわかる。
【0054】
(実施例5)
直径φ30、長さ310mmの円筒形金型の内面部分に、深さ1μm、直径500nmのピットをピッチ1μmで形成した。その金型へ直径φ30、長さ320mmの内面を水で湿らせたPFAチューブを挿入したあと、金型の開口部を蓋で塞いだ。そして、チューブをセットした金型を260℃に加熱したオーブンへ50分間放置して取り出し、その金型が常温に戻ってから蓋を外して、中から微小な凹凸を持つチューブを取り出してチューブを得た。次に、このチューブに定着ローラ(P2)を挿入し、接着工程を経て表層に突起の高さhが0.6μm、直径dが350nm、ピッチが1μmの微小な凹凸を持つ定着ローラ(P5b)を得た。
【0055】
(実施例6)
直径φ30、長さ310mmの円筒形の割り金型の内面部分に、深さ1μm、直径500nmのピットをピッチ1μmで形成した。その金型へ粉末Pと直径φ14mm、長さ330mmの芯軸を挿入したあと、金型の開口部を蓋で塞いだ。その際、ジャーナルは円筒形金型の中心線に沿うように設置した。そして、セットした金型を350℃に加熱したオーブンへ90分間放置し取り出し、金型が常温に戻ってから、その金型の中より定着ローラを取り出して、突起の高さhが0.7μm、直径dが400nm、ピッチが1μmの微小な凹凸を持つ定着ローラP6を得た。
【0056】
以上、実施例5,6で得た定着ローラ(P5b、P6)を定着ローラ(P3a、P3b、P4)をリファレンスとして、実機ランニングテストを行った。テスト条件は、通紙:画像ベタ、通紙条件:1〜3 A3、通紙タイミング:200sec毎とし、トナー固着及び表面剥離が発生するまでの時間を計測した。結果は同一条件での5サンプル平均を掲載した。その結果は、次の表4に示される。
【0057】
【表4】

【0058】
表4より、定着ローラ(P5b)及び定着ローラ(P6)のいずれにおいても良好な結果が得られた。
【0059】
(実施例7)
粉末Pから発泡成分を除去した粉末Qを作成し、直径φ14長さ330mmの円筒形の金型へ挿入し圧力を掛けることで成形体Q1を得た。次に、胴部が直径φ30、長さ310mmであって、芯軸部がφ14、長さ330mmであるローラ形状をした金型へ粉末Pと前記成形体Q1をセットした後、この金型を350℃で1時間加熱した。そして、金型を常温まで冷却した後、成形物を金型から取り出して、芯軸部、胴部ともにポリイミドからなる定着ローラ(P7)を得た。
【0060】
以上、実施例7で得た定着ローラ(P7)を定着ローラ(P1、P2、P1b、P2b、P3a、P3b、P3c、P4、P5b、P6)をリファレンスとして、実機ランニングテストを行って、異常画像が発生するまでの枚数を測定した。測定結果は、次の表5に示される。
【0061】
【表5】

【0062】
表5より、固着発生までの時間がP6と比べても30%程度長くなることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の他の一実施の形態を示すローラの平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示すローラの表面に離型層として被覆するチューブである。
【図3】本発明の一実施の形態を示す定着装置である。
【図4】本発明の他の一実施の形態を示す定着装置である。
【図5】従来の定着ローラを用いた電子写真方式の画像形成装置の説明図である。
【図6】従来の定着無端ベルトの使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 芯軸
2 多孔質弾性層
3 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯軸の表面にポリイミドで構成される多孔質弾性層を有するローラにおいて、前記ローラの外径が該ローラの中央部分から両端部分にかけて漸次大きくなるように、前記ポリイミドで構成される多孔質弾性層が鼓状に形成されていることを特徴とするローラ。
【請求項2】
前記ポリイミドで構成される多孔質弾性層の表面に、離型層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のローラ。
【請求項3】
前記離型層がポリイミドで構成されていることを特徴とする請求項2に記載のローラ。
【請求項4】
前記離型層が微小な突起に覆われていることを特徴とする請求項2又は3に記載のローラ。
【請求項5】
前記芯軸がポリイミドで構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のローラ。
【請求項6】
前記ローラが定着ローラ、加熱ローラ、又は、加圧ローラであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラ。
【請求項7】
定着ローラと、該定着ローラに間隔をあけて平行に設けられた加熱ローラと、該定着ローラと該加熱ローラとの間に回動可能に設けられた定着ベルトと、該定着ベルトを介して定着ローラに当接するように設けられた加圧ローラと、を有する定着装置において、該定着ローラ、該加熱ローラ、及び/又は、該加圧ローラとして、請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラを有していることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
定着ローラと、該定着ローラに当接するように設けられた加圧ローラと、を有する定着装置において、該定着ローラ及び/又は該加圧ローラとして、請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラを有していることを特徴とする定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−116557(P2008−116557A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297888(P2006−297888)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】