説明

ローラミル装置

【課題】ハウジングの振動が抑制されるローラミル装置を提供する。
【解決手段】ローラミル装置は、ハウジング20と、鉛直方向に延びる回転軸40を有する回転装置36と、回転軸40に固定された状態でハウジング20内に配置され、回転軸40と同心の環状の粉砕面43を有するテーブル42と、テーブル42の粉砕面43と協働して原材料を粉砕するローラ61をそれぞれ備え、ハウジング20によって揺動可能に支持された複数のローラユニット50と、ローラ61の各々をテーブル42の粉砕面43に向けて付勢するように、ローラユニット50に荷重を加える付勢装置72と、ハウジング20の振動に対応する検出信号を出力する振動センサ84と、粉砕面43に対する原材料の供給量及び振動センサ84の検出信号に基づいて、付勢装置72によってローラユニット50の各々に加えられる荷重を制御する制御装置14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラミル装置に係わり、より詳しくは、ローラミル装置のハウジングの振動を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated
Gasification Combined Cycle)システム等では、燃料の石炭を微粉炭にするためにローラミル装置が用いられている。
ローラミル装置はハウジングを有し、ハウジング内に、回転駆動されるテーブルとローラユニットが配置される。ローラユニットは、テーブルと協働して石炭を粉砕するローラを含み、ハウジングに揺動可能に支持されている。
【0003】
そして、ハウジングには油圧シリンダが取り付けられ、油圧シリンダはローラユニットに荷重を加える。このローラユニットに加えられる荷重は、従来、特許文献1に先行技術として記載されているように、ローラミル装置への石炭供給量及びミルロールリフト量に応じて調整されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−104939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ローラミル装置で石炭を粉砕する場合、油圧シリンダに対して、ローラユニットから反力が作用し、反力は、油圧シリンダを支持するハウジングにも作用する。そして、反力は変動するため、ハウジングの振動を引き起こす。特に、ローラミル装置が大型になると、反力が大きくなり反力の変動も大きくなるとともに、ハウジングも大きくなるので、ハウジングの振動が顕著になる。そこで、大型のローラミル装置の開発のために、新規な振動対策が求められている。
【0006】
一方、ローラミル装置の価格低減のため、ハウジングの軽量化を図ることが考えられている。しかしながら、ハウジングを軽量化した場合、ハウジングの剛性が低下し、ハウジングが振動し易くなる。そこで、ローラミル装置の軽量化のためにも、新規な振動対策が求められている。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ハウジングの振動が抑制されるローラミル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するために、本発明は、略筒形状のハウジングと、鉛直方向に延びる回転軸を有する回転装置と、前記回転軸に固定された状態で前記ハウジング内に配置され、前記回転軸と同心の環状の粉砕面を有するテーブルと、前記テーブルの粉砕面と協働して原材料を粉砕するローラをそれぞれ含み、前記ハウジングによって揺動可能に支持された複数のローラユニットと、前記ローラの各々を前記テーブルの粉砕面に向けて付勢するように、前記ローラユニットに荷重を加える付勢装置と、前記ハウジングの振動に対応する検出信号を出力する振動センサと、前記粉砕面に対する前記原材料の供給量及び前記振動センサの検出信号に基づいて、前記付勢装置によって前記ローラユニットの各々に加えられる荷重を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、制御装置が、振動センサの検出信号に基づいて、ローラユニットの各々に加えられる荷重を制御しており、ローラユニットからハウジングに作用する反力を利用して、ハウジングの振動が抑制される。
【0010】
好ましい態様として、前記付勢装置は、供給される油圧に応じて前記荷重を発生させる油圧シリンダを備え、前記制御装置は、前記油圧シリンダに供給される油圧を調整するとよい。
この構成によれば、油圧荷重を用いた簡単な構造で付勢装置を構成できるため、ハウジングの振動を的確に抑制できる。
【0011】
好ましい態様として、前記付勢装置は、前記荷重に応じて位置が変化する自由端及び前記荷重から独立して位置が規定される可動端を有する圧縮コイルばねと、前記圧縮コイルばねの前記可動端の位置を変化させるアクチュエータとを備え、前記制御装置は、前記アクチュエータを作動させて前記圧縮コイルばねの前記可動端の位置を調整するとよい。
この構成によれば、圧縮コイルばねを用いた簡単な構造で付勢装置を構成できるため、ハウジングの振動を的確に抑制できる。
【0012】
好ましい態様として、前記制御装置は、前記原材料の供給量に基づいて、前記付勢装置によって前記ローラユニットの各々に加えられるべき荷重の共通の目標値を設定する荷重目標値設定部と、前記振動センサの検出信号に基づいて、前記ローラユニット毎に、前記共通の目標値の補正量を演算する荷重補正量演算部とを備え、前記荷重補正量演算部は、前記補正量の平均値がゼロになるように前記補正量を演算するとよい。
この構成によれば、ローラユニットに加えられる荷重が、共通の目標値から正側及び負側に変化させられる。この場合、複数のローラユニットによってテーブルに加えられる荷重の合計が、最終的には共通の目標値になる。このため、荷重を変化させたとしても、テーブル及びローラの強度不足や摩耗が問題となることはなく、また粉砕性等の変化が問題となることもない。
【0013】
好ましい構成として、前記振動センサの検出方向は水平方向であるとよい。
この構成によれば、振動センサの検出信号に基づいて、ハウジングの水平方向の振動を的確に求めることができる。この結果として、ハウジングの振動を的確に抑制できる。
【0014】
好ましい態様として、前記振動センサは前記ハウジングの頂部に取り付けられるとよい。
この構成によれば、ハウジング全体の振動を的確に求めることができる。この結果として、ハウジングの振動を的確に抑制できる。
【0015】
好ましい構成として、ローラミル装置は複数の前記振動センサを備え、前記制御装置は、前記振動センサの各々から出力された複数の前記検出信号に基づいて、前記付勢装置が前記ローラユニットの各々に加える荷重を制御するとよい。
この構成によれば、複数の振動センサの検出信号に基づくことにより、ハウジングの局所的な振動のモードの影響が低減され、ハウジング全体の振動が的確に求められるため、結果として、ハウジングの振動を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ハウジングの振動が抑制されるローラミル装置が提供され、ローラミル装置のハウジングの軽量化による価格低減や、大型のローラミル装置の実用化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る、ローラミル装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1中の領域Aを拡大して示す図である。
【図3】ローラミル本体のハウジングを断面にして、ローラユニットを上から見た概略的な平面図である。
【図4】図1中の制御装置のローラミル本体及び油圧回路との関係における機能的な構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】第2実施形態に係るばねシリンダ及び電動シリンダの構成を概略的に示す図である。
【図6】第2実施形態に係る制御装置のローラミル本体及び駆動回路との関係における機能的な構成を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0019】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態のローラミル装置10の概略的な構成を示している。ローラミル装置10は、例えば、石炭ガス化複合発電システム等のために、原材料の石炭を粉砕して微粉炭にする。
ローラミル装置10は、図1中に断面にて示されたローラミル本体12、並びに、ブロックで示された制御装置14及び油圧回路16によって構成されている。
【0020】
〔ローラミル本体〕
ローラミル本体12は基礎18の上に設置されている。ローラミル本体12は、金属製のハウジング20を有し、ハウジング20は略筒形状を有する。ハウジング20の上蓋22は石炭投入管24によって貫通され、石炭投入管24を通じて、粉砕すべき原材料の石炭が上方からハウジング20内に供給される。そして、上蓋22には、送出孔26が設けられ、送出孔26から粉砕された微粉炭が送り出される。
【0021】
また、石炭投入管24にはプロペラ状の回転分級器28が同心にて取り付けられ、上蓋22上にはモータ30が設置されている。モータ30は例えばベルト32を介して回転分級器28を回転させ、回転分級器28は回転することによって、微粉炭の粒径分布を調整する分級機能を発揮する。
【0022】
基礎18には凹み34が設けられ、凹み34は、ハウジング20の中央部の下に位置している。凹み34には減速機(回転装置)36の本体38が設置され、減速機36の出力軸(回転軸)40は、凹み34から、鉛直方向にて上方に向けて突出している。出力軸40は、ハウジング20の底壁を貫通してハウジング20内に突出しており、出力軸40には、金属製のテーブル42が同心且つ相対回転不能に固定されている。
【0023】
テーブル42は、ハウジング20内にて石炭投入管24と同軸上に配置されている。テーブル42は、上側に、出力軸40と同心に配置される環状の粉砕面43を有する。
減速機36に外部から回転力が供給されると、出力軸40がテーブル42と一体に回転する。なお、テーブル42とハウジング20の底壁との間の隙間は、テーブル42に固定されたスカート44によって覆われている。
【0024】
また、ハウジング20の周壁46の下部にはダクト48が取り付けられている。ハウジング20内には、ダクト48を通じて、空気や窒素ガス等のキャリアガスが送り込まれる。キャリアガスは、粉砕された微粉炭とともに送出孔26から流出する。つまり、ハウジング20の内部には、ダクト48から送出孔26に渡るキャリアガスの流路が規定されている。
【0025】
更に、ハウジング20内には、例えば3つのローラユニット50が設けられている。図1では、作図の都合により、2つのローラユニット50が180°対称な位置に配置されているが、実際には、ローラユニット50は、出力軸40を中心として同心上に120°間隔にて配置されている。
【0026】
図2は、図1中の領域Aを拡大して示す図である。
ローラユニット50は、筒形状のロッドホルダ52を有し、ロッドホルダ52には、ロッド54の基端側が相対回転不能に固定されている。ロッドホルダ52は、テーブル42の径方向外側であって、テーブル42よりも上方に配置されている。ロッド54は、出力軸40の軸線に向かって延び、且つ、ロッド54の先端が基端よりもテーブル42に近付くように、水平方向に対して斜めに延びている。
【0027】
ロッド54の先端側には、ラジアル軸受56を介して回転筒58が相対回転可能に嵌合され、回転筒58には、環状の摺動部材60が相対回転不能に嵌合されている。回転筒58及び摺動部材60はローラ61を構成している。摺動部材60の外周面は、径方向外側に向かって凸状の曲面によって構成されている。
【0028】
石炭は、石炭投入管24から投入されるとテーブル42上に落下する。そして、石炭は、テーブル42の回転に伴い、摺動部材60とテーブル42の隙間に進入して粉砕され、微粉炭になる。なお石炭の粉砕の際、ローラ61は、ロッド54を中心として回転する。
【0029】
テーブル42と摺動部材60との隙間を調整可能とすべく、ローラユニット50は揺動可能である。具体的には、ロッドホルダ52には、テーブル42の外周の接線方向に延びるピン62が一体的に設けられている。そして、図3は、ハウジング20を断面にして、ローラユニット50を上からみた概略的な平面図であり、ローラユニット50は、ピン62を介して周壁46によって支持されている。
【0030】
再び図2を参照すると、テーブル42と摺動部材60との最小隙間を規定するために、ロッドホルダ52には、下方に向けて延びる突起64が一体的に設けられ、周壁46の螺子孔には螺子66が螺合されている。隙間が小さくなる方向にローラユニット50が傾動している場合に、突起64が螺子66の先端に当接すると、隙間がそれ以上小さくなることが防止される。螺子66は、モータ68によって回転させることができ、制御装置14は、モータ68の回転を制御することによって、最小隙間を可変制御することができる。
なお、螺子66及びモータ68に代えて、電動シリンダを用いることもできる。
【0031】
一方、揺動可能なローラユニット50を用いて石炭を粉砕するために、ローラユニット50には適当な荷重が作用させられる。
具体的には、ロッドホルダ52には、上方に延びるアーム70が一体的に設けられ、アーム70の先端に対し、付勢装置72が荷重を加える。付勢装置72は、プランジャ74と油圧シリンダ76を含み、プランジャ74は、周壁46に設けられたポート部78の内側にすべり軸受80を介して配置されている。油圧シリンダ76のロッド82は、プランジャ74と同軸に配置され、ロッド82が周壁46の内側に向けて延びると、プランジャ74がアーム70に押し付けられる。
【0032】
油圧シリンダ76には、油圧回路16が接続されており、油圧回路16は、図示しないけれども、ポンプ、モータ及び圧力制御弁等によって構成されている。制御装置14は、油圧回路16から油圧シリンダ76に供給される油圧を調整可能であり、油圧の調整によって、油圧シリンダ76からプランジャ74を介してアーム70に付与される荷重が変化する。すなわち、油圧の調整によって、ローラ61からテーブル42上の石炭に加えられる荷重も変化する。
【0033】
そして、本実施形態では、制御装置14は、ハウジング20の振動に応じて、油圧を調整可能であり、振動の検出のために、振動センサ84がハウジング20に取り付けられている。例えば、振動センサ84は、ハウジング20の周壁46の外側に取り付けられている。そして、周壁46における振動センサ84の周方向位置は、3つのローラユニット50のうち1つと一致している。振動センサ84は、好ましい態様として、検出方向が水平方向の加速度センサであり、振動センサ84の検出信号は、制御装置14に入力される。
【0034】
〔制御装置〕
図4は、ローラミル本体12及び油圧回路16との関係における、制御装置14を説明するための構成ブロック図である。
なお、以下の説明では、3つのローラユニット50を区別して、第1ローラユニット50a、第2ローラユニット50b及び第3ローラユニット50cともいう。そして、第1ローラユニット50a、第2ローラユニット50b及び第3ローラユニット50cの油圧シリンダ76を、それぞれ第1油圧シリンダ76a、第2油圧シリンダ76b及び第3油圧シリンダ76cともいう。
【0035】
制御装置14は、例えば、コンピュータによって構成され、演算装置、記憶装置及び入出力装置等を有する。そして、制御装置14は、荷重目標値設定部86、振動解析部88、荷重補正量演算部90、荷重目標値補正部92、及び、油圧目標値演算部94を有する。
【0036】
制御装置14には、ローラミル本体12に供給される石炭供給量が入力される。荷重目標値設定部86は、入力された石炭供給量に基づいて、ローラユニット50の各々に作用させる荷重の目標値(荷重目標値)を設定する。例えば、荷重目標値設定部86は、入力された石炭供給量に基づいて、予め設定された関数又はマップデータを利用して、荷重目標値を設定する。
なお、荷重目標値設定部86によって設定される荷重目標値は、ローラユニット50間で共通であるため、共通荷重目標値ともいう。
【0037】
一方、制御装置14には、振動センサ84から、ハウジング20の振動に対応する検出信号が入力される。具体的には、検出信号は、振動センサ84の取り付け位置におけるハウジング20の加速度を示す信号である。
ここで、制御装置14は、振動センサ84の取り付け位置での局所的な振動ではなく、ハウジング20全体の水平方向での振動を抑制するように構成されている。ハウジング20全体の水平方向での振動とは、ハウジング20の頂部、則ちハウジング20の上蓋22における水平方向の振動であり、例えば振動数が5Hz程度の振動である。
【0038】
そこで、振動解析部88は、検出信号に基づいて、ハウジング20の上蓋22の水平方向での加速度を求める。そのために、予め、有限要素法(FEM:Finite
Element Method)を用いて、検出信号とハウジング20の頂部の加速度との関係を示すマップデータを作成し、得られたマップデータが制御装置14に格納される。振動解析部88は、検出信号に基づいて、マップデータを利用してハウジング20の頂部の加速度を求めることができる。なお、加速度を求めるということは、加速度の大きさと共に方向も求めるということである。
【0039】
荷重補正量演算部90は、振動解析部88の解析によって求められたハウジング20の頂部の加速度に基づいて、ハウジング20の振動が低減されるように、共通荷重目標値の補正量を演算する。演算される補正量には、第1荷重補正量、第2荷重補正量及び第3荷重補正量の3つがあり、第1荷重補正量、第2荷重補正量及び第3荷重補正量は、それぞれ、第1ローラユニット50a、第2ローラユニット50b及び第3ローラユニット50cに加えられる荷重を補正するための補正量である。
具体的には、荷重補正量演算部90は、振動解析部88によって求められたハウジング20の頂部の加速度を、予め設定された制御関数である加速度−荷重補正量関数に代入することによって、第1荷重補正量、第2荷重補正量及び第3荷重補正量をそれぞれ演算する。
【0040】
荷重目標値補正部92は、第1荷重補正量、第2荷重補正量及び第3荷重補正量の各々と共通荷重目標値を加算して、第1荷重目標値、第2荷重目標値及び第3荷重目標値を演算する。第1荷重目標値、第2荷重目標値及び第3荷重目標値は、それぞれ、第1ローラユニット50a、第2ローラユニット50b及び第3ローラユニット50cに加えられる荷重の目標値である。
【0041】
油圧目標値演算部94は、第1ローラユニット50a、第2ローラユニット50b及び第3ローラユニット50cに加えられる荷重が、第1荷重目標値、第2荷重目標値及び第3荷重目標値にそれぞれ設定されるように、第1油圧シリンダ76a、第2油圧シリンダ76b及び第3油圧シリンダ76cに供給される油圧の目標値を演算する。油圧の目標値についても、第1荷重目標値、第2荷重目標値及び第3荷重目標値の各々に対応して、第1油圧目標値、第2油圧目標値及び第3油圧目標値が演算される。
【0042】
演算された第1油圧目標値、第2油圧目標値及び第3油圧目標値は、油圧回路16に入力される。油圧回路16は、第1油圧シリンダ76a、第2油圧シリンダ76b及び第3油圧シリンダ76cにそれぞれ油圧を供給する第1油圧回路部16a、第2油圧回路部16b及び第3油圧回路部16cを有する。第1油圧回路部16a、第2油圧回路部16b及び第3油圧回路部16cは、第1油圧シリンダ76a、第2油圧シリンダ76b及び第3油圧シリンダ76cに供給される油圧がそれぞれ第1油圧目標値、第2油圧目標値及び第3油圧目標値に設定されるように動作する。具体的には、圧力制御弁の弁開度を調整すること等によって油圧を調整する。
【0043】
以下、ローラミル装置10の動作の一例を説明する。
石炭の粉砕時にハウジング20が振動し、振動センサ84及び振動解析部88によって、図3に矢印で示すハウジング20の頂部の加速度が求められたとする。この場合、荷重補正量演算部90は、第1荷重補正量を減少させ、第2荷重補正量及び第3荷重補正量を増加させる。
【0044】
これにより、第1荷重目標値が減少し、第1油圧シリンダ76aから第1ローラユニット50aに加えられる荷重が減少するとともに、第2荷重目標値及び第3荷重目標値が増加し、第2油圧シリンダ76b及び第3油圧シリンダ76cから第2ローラユニット50b及び第3ローラユニット50cに加えられる荷重が増加する。
【0045】
第1油圧シリンダ76aから第1ローラユニット50aに加えられる荷重が減少すると、第1ローラユニット50aから第1油圧シリンダ76aが受ける反力が減少する。反力は、第1油圧シリンダ76aを支持するハウジング20にも作用しており、反力が減少すると、反力と同じ方向でのハウジング20の変位が抑制される。
ここで、図3では、第1油圧シリンダ76aが受ける反力の方向は、振動によるハウジング20の頂部の加速度の方向と一致しており、第1ローラユニット50aに加える荷重を減少させて反力を減少させれば、振動によるハウジング20の変位を抑制することができる。
【0046】
一方、第2ローラユニット50b及び第3ローラユニット50cに加えられる荷重が増加すると、第2油圧シリンダ76b及び第3油圧シリンダ76cがそれぞれ受ける反力が増加する。反力は、第2油圧シリンダ76b及び第3油圧シリンダ76cを支持するハウジング20にも作用しており、反力が増加すると、反力の方向でのハウジング20の変位が引き起こされる。
【0047】
ここで、図3では、第2ローラユニット50b及び第3ローラユニット50cが受ける反力は、振動によるハウジング20の頂部の加速度の方向とは逆向きの成分を含んでおり、第2油圧シリンダ76b及び第3油圧シリンダ76cから第2ローラユニット50b及び第3ローラユニット50cにそれぞれ加えられる荷重を増加させて反力を増加させれば、振動によるハウジング20の変位を抑制することができる。
換言すれば、図3に示したように、第1油圧シリンダ76a、第2油圧シリンダ76b及び第3油圧シリンダ76cの各々が受ける反力を合成した力の方向が、振動によるハウジング20の頂部の加速度の方向とは逆向きに設定されることで、ハウジング20の振動が抑制される。
【0048】
なお、好ましくは、荷重補正量演算部90で用いられる加速度−荷重補正量関数は、ハウジング20の頂部の加速度が許容値の半分以下に抑えられるように、予め設定される。
また、好ましくは、第1荷重目標値、第2荷重目標値及び第3荷重目標値の3つの算術平均値が共通荷重目標値に一致するように、荷重補正量演算部90において、第1荷重補正量、第2荷重補正量及び第3荷重補正量は設定される。更に同時に、第1荷重補正量、第2荷重補正量及び第3荷重補正量の各々を二乗した値の和が最小になるように、第1荷重補正量、第2荷重補正量及び第3荷重補正量が設定される。
【0049】
例えば、共通荷重目標値が90tonfである場合に、第1荷重目標値、第2荷重目標値及び第3荷重目標値は、86tonf、92tonf及び92tonfにそれぞれ設定される。このような設定によれば、第1荷重補正量、第2荷重補正量及び第3荷重補正量のうち1つ又は2つが正の値に設定され、2つ又は1が負の値に設定されることになる。
【0050】
以上説明したように、上述した第1実施形態のローラミル装置10によれば、制御装置14が、振動センサ84の検出信号に基づいて、ローラユニット50の各々に加えられる荷重を制御しており、ローラユニット50からハウジング20に作用する反力を利用して、ハウジング20の振動が抑制される。
【0051】
そして、上述した第1実施形態のローラミル装置10によれば、付勢装置72が、供給される油圧に応じて荷重を発生させる油圧シリンダ76を含み、制御装置14が、油圧シリンダ76に供給される油圧を調整することで、簡単な構成にて、ハウジング20の振動が的確に抑制される。
【0052】
また、上述した第1実施形態のローラミル装置10によれば、ローラユニット50に加えられる荷重が、共通荷重目標値から正側及び負側に変化させられる。この場合、複数のローラユニット50によってテーブル42に加えられる荷重の合計が、共通荷重目標値の合計に近くなる。このため、第1荷重補正量、第2荷重補正量及び第3荷重補正量に基づいて荷重を変化させたとしても、テーブル42及びローラ61の強度不足や摩耗が問題となることはなく、また粉砕性等の変化が問題となることもない。
【0053】
更に、上述した第1実施形態のローラミル装置10によれば、振動センサ84の検出方向は水平方向であり、ハウジング20の水平方向の加速を的確に求めることができる。この結果として、ハウジング20の振動が的確に抑制される。
【0054】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、油圧シリンダ76に代えて、図5に概略的な構成が示されたばねシリンダ96を有し、ばねシリンダ96によって、プランジャ74がアーム70に押し付けられる。
具体的には、ばねシリンダ96は、シリンダ内98内に配置された圧縮コイルばね100を有し、圧縮コイルばね100の一端(可動端)100aはばね座102に当接し、圧縮コイルばね100の他端(自由端)100bはロッド104の基端に当接している。
【0055】
ばね座102は、シリンダ98内を移動可能であり、ばねシリンダ96には、ばね座102の位置、換言すれば、圧縮コイルばね100の可動端100aの位置を規定するアクチュエータとして、電動シリンダ106が連結されている。電動シリンダ106は、ばねシリンダ96のシリンダ98に固定されるハウジング108、及び、ハウジング108からシリンダ98内に突出する螺子110を有する。
【0056】
ハウジング108からの螺子110の突出長さは、ハウジング108内の図示しないモータを作動させることによって調整可能であり、螺子110の突出長さに応じて、可動端100aの位置が規定される。可動端100aの位置が変化すると、圧縮コイルばね100の長さが変化し、ばねシリンダ96がローラユニット50に加える荷重も変化する。
【0057】
制御装置14は、駆動回路112を介して電動シリンダ106を制御可能であり、圧縮コイルばね100の可動端100aの位置を調整可能である。図6は、ローラミル本体12及び駆動回路112との関係における、制御装置14の機能的な構成を説明するためのブロック図である。
【0058】
なお、以下の説明では、第1ローラユニット50a、第2ローラユニット50b及び第3ローラユニット50cに荷重を与えるばねシリンダ96をそれぞれ第1ばねシリンダ96a、第2ばねシリンダ96b及び第3ばねシリンダ96cという。また、第1ばねシリンダ96a、第2ばねシリンダ96b及び第3ばねシリンダ96cに連結された電動シリンダ106をそれぞれ第1電動シリンダ106a、第2電動シリンダ106b及び第3電動シリンダ106cという。
【0059】
図6に示したように、第2実施形態では、制御装置14は、油圧目標値演算部94に代えて位置目標値演算部114を有する。位置目標値演算部114は、第1荷重目標値、第2荷重目標値及び第3荷重目標値に応じて、第1位置目標値、第2位置目標値及び第3位置目標値をそれぞれ演算する。第1位置目標値、第2位置目標値及び第3位置目標値は、それぞれ、第1ばねシリンダ96a、第2ばねシリンダ96b及び第3ばねシリンダ96cにおける、圧縮コイルばね100の可動端100aの位置の目標値である。
【0060】
駆動回路112は、第1駆動回路部112a、第2駆動回路部112b及び第3駆動回路部112cを有する。第1駆動回路部112a、第2駆動回路部112b及び第3駆動回路部112cは、第1位置目標値、第2位置目標値及び第3位置目標値にそれぞれ基づいて駆動信号を生成し出力する。ここで、駆動信号は、第1ばねシリンダ96a、第2ばねシリンダ96b及び第3ばねシリンダ96cにおける圧縮コイルばね100の可動端100aの位置が、第1位置目標値、第2位置目標値及び第3位置目標値にそれぞれ設定されるように生成される。
なお、駆動回路112は電気回路であるため制御装置14に組み込まれていても良い。
【0061】
そして、第1電動シリンダ106a、第2電動シリンダ106b及び第3電動シリンダ106cは、駆動信号に基づいて作動し、第1ばねシリンダ96a、第2ばねシリンダ96b及び第3ばねシリンダ96cにおける圧縮コイルばね100の可動端100aの位置を第1位置目標値、第2位置目標値及び第3位置目標値にそれぞれ設定する。
【0062】
第2実施形態のローラミル装置10においても、制御装置14が、振動センサ84の検出信号に基づいて、ローラユニット50の各々に加えられる荷重を制御しており、ローラユニット50からハウジング20に作用する反力を利用して、ハウジング20の振動が抑制される。
【0063】
そして、第2実施形態のローラミル装置10によれば、付勢装置72が、ばねシリンダ96及び電動シリンダ106を含んでおり、簡単な構成にて、ハウジング20の振動が的確に抑制される。
【0064】
また、上述した第2実施形態のローラミル装置10においても、第1実施形態の場合と同様に、テーブル42及びローラ61の強度不足や摩耗が問題となることはなく、また粉砕性等の変化が問題となることもない。
【0065】
更に、上述した第2実施形態のローラミル装置10においても、振動センサ84の検出方向は水平方向であり、ハウジング20の水平方向の加速を的確に求めることができる。この結果として、ハウジング20の振動が的確に抑制される。
【0066】
本発明は、上述した第1実施形態及び第2実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、振動センサ84が、ハウジング20の周壁46における、第1ローラユニット50aと同じ周方向位置に取り付けられていたが、振動センサ84の取り付け位置はこれに限定されることはない。
【0067】
例えば、振動センサ84は、ハウジング20の頂部、則ち上蓋22に取り付けられてもよい。この場合、振動センサ84の検出信号は、ハウジング20の頂部の加速度そのものであるため、振動解析部88を省略することができる。
【0068】
また、振動センサ84は、水平方向の加速度を検出する加速度センサであったが、鉛直方向の加速度を検出する加速度センサを用いても良い。この場合、予め、有限要素法を用いて、加速度センサの取り付け位置での鉛直方向の加速度とハウジング20の頂部の水平方向の加速度との関係を示すマップデータを作成し、得られたマップデータが制御装置14に格納される。
【0069】
なお、検出方向が鉛直方向の加速度センサを用いる場合、取り付け位置に関係なく、振動解析部88が必要になる。また、鉛直方向の振動の位相と水平方向の振動の位相の関係は複雑であるため、振動センサとしては、第1実施形態及び第2実施形態のように、検出方向が水平方向の加速度センサを用いるのが好ましい。
【0070】
更に、第1実施形態及び第2実施形態では、1個の振動センサ84が設けられていたが、複数の振動センサ84を設けて、振動センサ84から送られてきた複数の検出信号を総合的に判断してハウジング20の頂部の加速度を求めるようにしてもよい。このようにすれば、ハウジング20の振動のモードのうち、局所的なモードの影響を排除して、ハウジング20全体の振動を検出することができる。
【0071】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、ハウジング20の振動に応じて、3つのローラユニット50に加えられる荷重が全て変化させられるが、1つ又は2つのローラユニット50に加えられる荷重のみが変化させられるようにしてもよい。
【0072】
また更に、ローラユニット50の数についても、3個が好ましいが、これに限定されることはない。
最後に、ローラミル装置10は、石炭の粉砕に適しているが、石炭以外の原材料の粉砕にも適用可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
10 ローラミル装置
12 ローラミル本体
14 制御装置
16 油圧回路
18 基礎
20 ハウジング
22 上蓋
24 石炭投入管
36 減速機(回転装置)
40 出力軸(回転軸)
42 テーブル
43 粉砕面
50 ローラユニット
61 ローラ
72 油圧シリンダ(付勢装置)
84 振動センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略筒形状のハウジングと、
鉛直方向に延びる回転軸を有する回転装置と、
前記回転軸に固定された状態で前記ハウジング内に配置され、前記回転軸と同心の環状の粉砕面を有するテーブルと、
前記テーブルの粉砕面と協働して原材料を粉砕するローラをそれぞれ含み、前記ハウジングによって揺動可能に支持された複数のローラユニットと、
前記ローラの各々を前記テーブルの粉砕面に向けて付勢するように、前記ローラユニットに荷重を加える付勢装置と、
前記ハウジングの振動に対応する検出信号を出力する振動センサと、
前記粉砕面に対する前記原材料の供給量及び前記振動センサの検出信号に基づいて、前記付勢装置によって前記ローラユニットの各々に加えられる荷重を制御する制御装置と
を備えるローラミル装置。
【請求項2】
前記付勢装置は、供給される油圧に応じて前記荷重を発生させる油圧シリンダを備え、 前記制御装置は、前記油圧シリンダに供給される油圧を調整することを特徴とする請求項1記載のローラミル装置。
【請求項3】
前記付勢装置は、前記荷重に応じて位置が変化する自由端及び前記荷重から独立して位置が規定される可動端を有する圧縮コイルばねと、
前記圧縮コイルばねの前記可動端の位置を変化させるアクチュエータと、を備え、
前記制御装置は、前記アクチュエータを作動させて前記圧縮コイルばねの前記可動端の位置を調整することを特徴とする請求項1記載のローラミル装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記原材料の供給量に基づいて、前記付勢装置によって前記ローラユニットの各々に加えられるべき荷重の共通の目標値を設定する荷重目標値設定部と、
前記振動センサの検出信号に基づいて、前記ローラユニット毎に、前記共通の目標値の補正量を演算する荷重補正量演算部と、を備え、
前記荷重補正量演算部は、前記補正量の平均値がゼロになるように前記補正量を演算することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のローラミル装置。
【請求項5】
前記振動センサの検出方向は水平方向であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のローラミル装置。
【請求項6】
前記振動センサは、前記ハウジングの頂部に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のローラミル装置。
【請求項7】
複数の前記振動センサを備え、前記制御装置は、前記振動センサの各々から出力された複数の前記検出信号に基づいて、前記付勢装置が前記ローラユニットの各々に加える荷重を制御することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のローラミル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−107063(P2013−107063A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256273(P2011−256273)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】