説明

ローラーミルによる被粉砕材料の粉砕方法

本発明は、粉砕プレートと、少なくとも1つの粉砕ローラーと、ローラーミルを駆動するための少なくとも2つの駆動装置(13,14)とを備えるローラーミル(1)を用いて被粉砕材料を粉砕する方法に係り、駆動装置(13,14)のために電力整合用制御装置(22)が設けられており、該制御装置は少なくとも一方の駆動装置の回転速度を制御することによって、各駆動装置の電力を相互に所定の比率に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミル盤と、少なくとも1つのミルローラーと、ローラーミルを駆動する少なくとも2つの駆動装置とを備えるローラーミルを使用し、駆動装置に対して補償制御動作を行いながら被粉砕材料を粉砕する方法に係る。
【背景技術】
【0002】
実際のローラーミルにおいては、ミル台上でミルローラーを駆動するミル盤が駆動されるのが普通である。ところが、これによって電力に大きな変動が生じることになり、その結果駆動機構に大きな負荷がかかるため、安全に伝達できる駆動力が大きく制限される結果となる。
【0003】
このため、下掲の特許文献1では、ローラーを駆動することが提案されている。また、同文献は、個々のミルローラーが回転駆動に関して、ミル盤とその上に位置する粉砕材料または粉砕材料層を介して連結される一方、消費電力の点で大きく異なり得る点も指摘している。消費電力の違いは、例えばミル盤の転動直径(摩擦点/直径)の違い、個々のミルローラーの動作直径の違い(摩耗等による)、ミル盤およびミルローラーと連動しての粉砕材料の取り込みを伴う挙動の違いなどによるものである。
【0004】
個々のミルローラー間の速度がわずかに変化しても、個々の駆動装置における電力変動は相対的に大きなものとなる。この結果、ミルローラーが常に加速または減速される状態、すなわち、個別に駆動されるミルローラーが相互に逆らうように機能することになり、その結果、粉砕動作において必要とされる電力またはエネルギーが大幅に増大する。
【0005】
従って、特許文献1では、全ての被駆動ミルローラーの個々の回転駆動装置間の動作変動を共通の負荷補償制御動作によって補償することを提案している。しかしながら、ミル盤とミルローラーとの間で動的伝達が変化する場合、各駆動装置の電力消費は非常に異なったものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE 197 02 854 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、駆動装置の補償制御動作を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、この課題は請求項1に記載の本発明の特長によって解決される。
【0009】
本発明による被粉砕材料の粉砕方法は、ミル盤と、少なくとも1つのミルローラーと、ローラーミルを駆動するための少なくとも2つの駆動装置とを備えるローラーミルを使用する。さらに電力補償制御動作が行われるが、この時少なくとも1つの駆動装置の速度を制御することによって、各駆動装置の電力を相互に関して所定の比率に制御する。
【発明の効果】
【0010】
こうすることで、ミル盤とミルローラーとの間の動的伝達の相違を確実に補償することが可能となり、いろいろな速度を各駆動装置に対して極めて周密に許容可能とできる。
【0011】
好適な実施形態によると、少なくとも2つのミルローラーが関連する駆動装置によってそれぞれ駆動される。ミル盤の駆動は、これら少なくとも2つのミルローラーと被粉砕材料だけで行われる。ただし、独立した駆動装置をミル盤と関連させても良い。
【0012】
駆動装置の速度は周波数変換器によって制御されるが、これらの周波数変換器は好ましくは磁界方向制御で機能する。
【0013】
好適な実施形態によると、電力補償制御システムは、ミル盤速度の制御をさらに含み、ミル盤の所定の速度を好ましくは維持するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電力補償制御を有するローラーミルを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のその他の利点および構成について、以下の記載と添付図面を参照して、より詳細に説明する。
【0016】
図1は、ミル盤10と、少なくとも2つのミルローラー11,12と、これら2つのミルローラー11,12を駆動するための少なくとも2つの駆動装置13,14とを備えるローラーミル1を概略的に示している。各駆動装置はモーター13a,14aと 歯車装置13b,14bとを含んでいる。本発明では、複数のミルローラー、特に3つ、4つ、またはそれ以上のミルローラーを備えても良いのはもちろんである。
【0017】
ミル盤10は回転軸10aの周りで自由に回転することができ、被駆動ミルローラー11,12と、該ミルローラーとミル盤との間で粉砕される材料3だけで回転される。ただし、独立した駆動装置をミル盤と関連づけて設けても良い。
【0018】
ミルローラー11,12の回転運動のミル盤10への伝達は、被粉砕材料3を介して行われる。粉砕材料層が実際には比較的不均等に形成されるため、ミルローラーからミル盤への伝達比は連続的に変化する。最終的に伝達比を決めるのは、ミルローラー軸とミル盤軸との間の加力点の距離である。図では、回転軸10aに対するミルローラー11の加力点の距離rの方が、回転軸10aに対するミルローラー12の摩擦点の距離rより小さくなっている。
【0019】
しかしながら、伝達比が異なると、ミルローラー11,12の速度が同じでもミル盤に伝達されるトルクが異なる結果となる。それによって、一方の駆動装置が他方の駆動装置に対して制動または加速される。その結果生じる各駆動装置の大きな電力変動によって、必要なエネルギーが増大する結果となる。駆動装置間の望ましい電力配分も損なわれてしまう。
【0020】
これらの効果を防止するために、電力補償制御システム2を設け、少なくとも一方の駆動装置の速度を制御することによって、動装置13,14の電力を相互に所定の比率に制御する。図示の実施形態では、同じ構成の2つのミルローラー11,12に同様の駆動装置13,14を設け、電力補償制御システムが2つの駆動装置の電力を同レベルに維持するようにしている。
【0021】
しかしながら、ミル盤が1つまたはそれ以上のミルローラーに加えて、それ自身の駆動装置を備えることも可能である。その場合、ミル盤はミルローラーに比べて低い電力または高い電力で駆動できるようになる。
【0022】
図示の実施形態において、電力補償制御システム2は実質的に、駆動装置13,14と関連付けられた周波数変換器20,21と、電力補償制御部22と、ミル盤速度センサー23と、ミル盤速度制御部24とを含んでいる。
【0023】
周波数変換器20,21は、周知の方法で磁界方向制御システムを設けられている。周波数変換器20,21は駆動装置13,14から瞬間的なモーター電流またはモーター電圧を受ける。各駆動装置の消費電力をそこから求め、可変の累加平均値を形成し、係数で重みづけして(各駆動装置の同一電力レベルを0.5とする)、これを駆動装置の所望値とする。抵抗のモーメントが事実上一定である場合、この値は実質的にそれぞれの駆動装置の速度にのみ依存する。
【0024】
駆動装置の実際の電力と所望の電力との間の偏差値が電力補償制御部22に供給され、電力補償制御部22は、駆動装置13,14の一方または両方の速度を2つの駆動装置の電力が所定の比率に制御されるように、この場合では同レベルに制御されるように適応させることによって、2つの駆動装置の電力適応を行う。また、ミル盤10が所定の所望速度nsollで回転することも考慮される。
【0025】
ただし、ミル盤速度用の制御システムを付加的に設けるのが有利であり、この場合はミル盤速度制御部24によってそれが実現されている。ミル盤速度制御部24はミル盤速度センサー23に接続され、ミル盤速度の実際の数値を連続的に受信して、これを所望値nsollと比較し、その結果がシステムの偏差値となる。制御部は、それを基に固定値とされる伝達比を用いて駆動装置13,14の所望速度を生成する。
【0026】
周波数変換器20,21は、内部速度制御部と、共同動作式モーターモデルとを備え、それによって駆動装置の駆動速度とモータートルクを導き出すことができる。周波数変換器は少なくとも5ミリ秒ごとに制御およびステータスデータを入力または出力可能として、電力補償制御システムの機能を保証するようにするのが有利である。
【0027】
技術的な制御用語で言うと、このシステムはカスケード制御方式をとっており、個々のレベルを相互に動的に減結合し、その結果として個々に考慮できるようにしている。上述の制御の利点は、駆動装置13,14の消費電力レベル間の偏差が電力補償制御部によりごく僅かになっており、またシステム内(伝送伝達)の変化が大きくても非常に高速となる点である。
【0028】
また、ここで使用する周波数変換器はミル盤速度を除く全ての関連データを提供するものであるため、複雑で保守集約的測定技術を用いて事実上完全に分配することができ、有利である。周波数変換器により制御介入が事実上電力を用いることなく実施することができるため、全体としての効率は被制御の駆動装置と同等になる。
【符号の説明】
【0029】
1 ローラーミル
2 電力補償制御システム
10 ミル盤
11 ミルローラー
12 ミルローラー
13 駆動装置
14 駆動装置
20 周波数変換器
21 周波数変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミル盤(10)と、少なくとも1つのミルローラー(11,12)と、ローラーミル(1)を駆動するための少なくとも2つの駆動装置(13,14)とを有するローラーミル(1)により、前記駆動装置の補償制御動作を実施しながら被粉砕材料を粉砕する方法であって、
補償制御システムを電力補償制御システム(2)によって形成し、少なくとも一方の駆動装置(13,14)の速度を制御することによって、各駆動装置の電力を相互に所定の比率に制御することを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも2つの被駆動ミルローラー(11,12)を設け、駆動装置(13,14)を各ミルローラーと関連づけることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
ミル盤(10)の駆動を少なくとも2つのミルローラー(11,12)と被粉砕材料(3)とだけで行うことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記電力補償制御システム(2)が、前記ミル盤(10)の速度制御装置をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記駆動装置(13,14)の速度の制御を、前記ミル盤(10)の所定の速度がさらに維持されるように行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記電力補償制御システム(2)がモーターモデルを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記駆動装置(13,14)の速度の制御を、周波数変換器(20,21)によって行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記駆動装置(13,14)の消費電力を検出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
独立した駆動装置を前記ミル盤(10)と関連づけて設けることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−517753(P2010−517753A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548678(P2009−548678)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051354
【国際公開番号】WO2008/095902
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(504043934)ポリシウス アクチェンゲゼルシャフト (21)
【Fターム(参考)】