説明

ロール回転駆動装置

【課題】 波動歯車減速機に起因する角度伝達誤差を低減させる。
【解決手段】 ブランケットロールの両端のロール軸の端部に、個別の駆動モータに接続した第1と第2の波動歯車減速機の出力側を取り付けて、ブランケットロールを一方向に回転させるときに、各波動歯車減速機の出力側から見た出力の回転方向が相対的に逆になるようにする。各波動歯車減速機について角度伝達誤差を計測すると、それぞれの角度伝達誤差の波形は、線Aと線Bのように、ほぼブランケットロールの回転角度方向に反転した形状となるため、一方の波動歯車減速機の角度伝達誤差の最大値12aと最小値12bに、他方の波動歯車減速機の角度伝達誤差の最小値13aと最大値13aがそれぞれ重なるように各波動歯車減速機の位相をずらす。各波動歯車減速機の角度伝達誤差を相殺させることで、ブランケットロールに対する角度伝達誤差の振れを低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷装置のブランケットロール等のように、位置決め(回転角度)の制御が必要とされるロールを回転駆動するためのロール回転駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
減速機の一つである波動歯車減速機は、入力軸に取り付けられるウェーブ・ジェネレータと、出力軸に取り付けられるフレクスプラインと、ケーシングに固定されるサーキュラ・スプラインとからなる構成としてあり、小型軽量、高回転精度、高減速比、高トルク容量、高効率、バックラッシがない等の特徴を有することから、高い位置決め精度(回転角度の制御性)が要求される用途に広く利用されている。
【0003】
そのため、オフセット印刷装置において、ブランケットロールの回転駆動機構として、該ブランケットロールのロール軸の一端に、サーボモータの如き駆動モータを、波動歯車減速機を介して取り付けた構成とすることが従来考えられている。
【0004】
ところで、近年、金属蒸着膜のエッチング等による微細加工に代えて、導電性ペーストを印刷用のインクとして用いた印刷技術、たとえば、凹版オフセット印刷技術を用いて基板上に液晶ディスプレイ等の画像表示素子の電子回路を印刷して形成する手法が提案されてきている。
【0005】
上記基板上に電子回路を印刷により形成する場合は、電極となる線幅として、たとえば、10μm程度と微細なものが要求されることがあり、よって、紙等に文字や画像を印刷する通常のオフセット印刷に比して高い印刷精度が要求される。
【0006】
オフセット印刷装置では、ブランケットロールの回転精度は、印刷精度に直結するため、上記のような高い印刷精度が要求されるオフセット印刷装置では、上記印刷ロールの回転を高精度に制御する必要がある。
【0007】
しかし、波動歯車減速機は、その特性として、入力側に接続してある上記サーボモータの軸が1回転する毎に2周期となる周期的な角度伝達誤差が生じているのが実状である。
【0008】
この波動歯車減速機の角度伝達誤差は、その回転方向に先行する側と遅れ側の振れ幅がたとえば、0.01〜0.02度程度と小さいため、紙等に文字や画像を印刷する通常のオフセット印刷では問題にならないが、上記したように基板上に電子回路を印刷により形成する場合のような高い印刷精度が求められるような場合は上記波動歯車減速機の角度伝達誤差が影響する虞が懸念される。
【0009】
なお、波動歯車減速機による角度伝達誤差を補正する方法としては、その角度伝達誤差を厳密に計測し、その計測値を基に、上記駆動モータを駆動させる際の指令値に補整を与える手法が従来提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0010】
又、2台の駆動モータを減速機やギアを介して機械的に連結して1つの負荷を駆動する考え自体は、従来提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4254454号公報
【特許文献2】特許第4052490号公報
【特許文献3】特開平4−109890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記特許文献1、特許文献2に示されているように、波動歯車減速機の角度伝達誤差を制御的に補正する手法では、印刷ロールと、駆動モータのロータとのイナーシャ比(回転慣性比)を十分に小さく、たとえば、10以下にすることが望まれるが、大判印刷用に印刷ロールが大型となる場合は、上記所望のイナーシャ比を実現するためには極めて大型の駆動モータが必要になってしまう。
【0013】
更に、上記波動歯車減速機の角度伝達誤差を制御的に補正する手法は、実機に適用する場合には、該実機に合わせたパラメータの調整が必須となるため、このパラメータの調整のための手間が嵩むというのが実状である。
【0014】
なお、特許文献3に示されたものは、波動歯車減速機に関する記載はないため、波動歯車減速機に特有の角度伝達誤差を減少させる手段が何ら示唆されるものではない。
【0015】
そこで、本発明は、制御的な補正によることなく駆動モータと駆動対象ロールのロール軸との間に介装させる波動歯車減速機の角度伝達誤差を低減させた状態で上記駆動対象ロールの回転駆動を実施することができるロール回転駆動装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、駆動対象ロールの軸両端部に、駆動モータの出力側に接続した同一形式の波動歯車減速機の出力側を、該各波動歯車減速機の出力側より見た出力の回転方向が互いに逆方向となるように接続し、且つ上記各波動歯車減速機について予め計測した角度伝達誤差を基に、一方の波動歯車減速機の角度伝達誤差の一周期における最大値と最小値が、他方の波動歯車減速機の角度伝達誤差の一周期における最小値と最大値にそれぞれ重なるように、上記一方の波動歯車減速機と他方の波動歯車減速機の位相をずらしてなる構成を有するロール回転駆動装置とする。
【0017】
又、上記構成において、駆動対象ロールの片方の軸端部と、対応する波動歯車減速機の出力側との間に、メカロック機構を介装するようにした構成とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のロール回転駆動装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)駆動対象ロールの軸両端部に、駆動モータの出力側に接続した同一形式の波動歯車減速機の出力側を、該各波動歯車減速機の出力側より見た出力の回転方向が互いに逆方向となるように接続し、且つ上記各波動歯車減速機について予め計測した角度伝達誤差を基に、一方の波動歯車減速機の角度伝達誤差の一周期における最大値と最小値が、他方の波動歯車減速機の角度伝達誤差の一周期における最小値と最大値にそれぞれ重なるように、上記一方の波動歯車減速機と他方の波動歯車減速機の位相をずらしてなる構成としてあるので、機械的な組み合わせによる構成のみで、制御的な補正を要することなく、上記各駆動モータにより駆動対象ロールを回転させるときに生じる角度伝達誤差を、上記波動歯車減速機に固有の角度伝達誤差に比して低減させることができる。
(2)したがって、上記駆動対象ロールの回転精度や位置決め精度を高めることができる。
(3)よって、本発明のロール回転駆動装置を、オフセット印刷装置におけるブランケットロールを駆動対象ロールとして、その駆動を行うことにより、オフセット印刷の印刷精度の向上化を図ることが可能になることから、基板上に電子回路を印刷により形成する場合のような高い印刷精度が要求される場合に有利なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のロール回転駆動装置の実施の一形態として、オフセット印刷装置のブランケットロールの駆動に適用した例を示す一部切断概略正面図である。
【図2】図1の装置による波動歯車減速機に起因する角度伝達誤差の低減の原理を示すもので、(イ)はブランケットロールを一方向に回転させる際に第1の波動歯車減速機で生じる角度伝達誤差の周期的変化を示す図、(ロ)は第2の波動歯車減速機で生じる角度伝達誤差の周期的変化を示す図、(ハ)は各波動歯車減速機で生じる角度伝達誤差を、両者の位相を所定量ずらして合成させた波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1及び図2は本発明のロール回転駆動装置の実施の一形態として、たとえば、オフセット印刷装置のブランケットロールの駆動に適用する場合を示すもので、以下のようにしてある。
【0022】
すなわち、ブランケットロール1の両端のロール軸2a,2bを、該ブランケットロール1の軸心方向に沿って延びるロールホルダ3の両端部に、個別の軸受4を介して回転自在に支持させる。
【0023】
上記ブランケットロール1の一端側(図1では左側)のロール軸2aの端部に、第1の波動歯車減速機5の出力側5oを取り付け、該第1の波動歯車減速機5の入力側5iには、サーボモータの如き第1の駆動モータ7の出力軸7aを接続する。
【0024】
更に、上記第1の波動歯車減速機5と同一形式の第2の波動歯車減速機6を、その出力側6oが上記第1の波動歯車減速機5の出力側5oと対向するように配置させた状態で、該第2の波動歯車減速機6の出力側6oを、上記ブランケットロール1の他端側(図1では右側)のロール軸2bの端部に連結する。該第2の波動歯車減速機6の入力側6iには、サーボモータの如き第2の駆動モータ8の出力軸8aを接続する。
【0025】
これにより、上記ブランケットロール1を或る方向、たとえば、図1に矢印rで示す方向へ回転駆動するときに、上記第1の波動歯車減速機5の出力側5oから見た出力の回転方向と、上記第2の波動歯車減速機6の出力側6oから見た出力の回転方向が、相対的に逆方向となるようにする。図1では、上記ブランケットロール1を矢印r方向に回転させるときに、上記第1の波動歯車減速機5の出力側5oから見た該波動歯車減速機5の出力の回転方向が時計回り方向となり、上記第2の波動歯車減速機6の出力側6oから見た該波動歯車減速機6の出力の回転方向が反時計周り方向となるようにしてある。
【0026】
更に、上記各波動歯車減速機5及び6の出力側5o及び6oから出力する回転駆動力を上記ブランケットロール1の各ロール軸2a及び2bへ伝えるときに、該各波動歯車減速機5と6の有する周期的に変化する角度伝達誤差が後述する所定の位相で重なるようにした状態で、互いの回転角度を固定してなる構成とする。
【0027】
詳述すると、上記第2の波動歯車減速機6の出力側6oには、動力伝達軸9の一端部を取り付けると共に、該動力伝達軸9の他端部を、上記ブランケットロール1の他端側のロール軸2bの端部に、図示しないくさび型部材による摩擦力を利用して機械部品同士を締結する機構、いわゆるメカロック機構10を介して取り付けるようにしてある。これにより、上記メカロック機構10による上記ブランケットロール1の他端側のロール軸2bと上記動力伝達軸9との締結を解除した状態では、上記ブランケットロール1の一端側のロール軸2aに取り付けてある上記第1の波動歯車減速機5と、上記動力伝達軸9に取り付けてある上記第2の波動歯車減速機6の角度伝達誤差の位相をそれぞれ容易に調整できるようにしてあると共に、その後、上記メカロック機構10により上記ブランケットロール1の他端側のロール軸2bと上記動力伝達軸9とを締結することにより、上記各波動歯車減速機5と6の出力側同士を、上記ブランケットロール1及びそのロール軸2a,2bと、上記動力伝達軸9を介して一体に固定することができるようにしてある。よって、上記各波動歯車減速機5と6の有する周期的に変化する角度伝達誤差を上記所定の位相で重ねるための調整作業を容易に実施することができるようにしてある。
【0028】
11は上記ブランケットロール1の回転を検出するためにいずれか一方のロール軸2a,2bの外周に取り付けたリングタイプのロータリエンコーダである。なお、図1では他端側のロール軸2bに上記ロータリエンコーダ11を取り付けた状態が示してある。
【0029】
ここで、上記第1の波動歯車減速機5の角度伝達誤差について述べると、上記第1の波動歯車減速機5は、波動歯車減速機としての特性として、上記ブランケットロール1を図1に矢印rで示す方向に回転駆動する際、入力側5iに接続してある上記第1の駆動モータ7の出力軸7aが1回転する間を2周期として、たとえば、図2(イ)に線Aで示すように、各周期毎に最大値12aと最小値12bを取る波形の周期的な角度伝達誤差が生じている。なお、図2(イ)における縦軸は角度伝達誤差[deg]、横軸は上記第1の波動歯車減速機5の出力側に連結してある上記ブランケットロール1の回転を、片方のロール軸方向、たとえば、一端側のロール軸2a側より見たときの回転方向を基準とする回転角度[deg]である(後述する図2(ロ)(ハ)も同様)。
【0030】
一方、上記第2の波動歯車減速機6は、波動歯車減速機としての特性として、上記ブランケットロール1を図1に矢印rで示す方向に回転駆動する際、入力側6iに接続してある上記第2の駆動モータ8の出力軸8aが1回転する間を2周期とする周期的な角度伝達誤差が生じているが、この際、該第2の波動歯車減速機6は、上記第1の波動歯車減速機5と同一形式としてあり、且つ上記ブランケットロール1を矢印r方向へ回転駆動するときの該第2の波動歯車減速機6の出力側6oから見た出力の回転方向が、上記第1の波動歯車減速機5の出力側5oから見た出力の回転方向と逆方向となるようにしてあるため、この第2の波動歯車減速機6の角度伝達誤差の波形は、図2(ロ)に線Bで示すように、上記図2(イ)に示した第1の波動歯車減速機5の角度伝達誤差の波形(線A)を、横軸であるブランケットロール1の回転角度変化方向(左右方向)に反転させた形状にほぼ一致した波形となる。よって、上記第2の波動歯車減速機6の角度伝達誤差は、各周期毎に、最小値13aと最大値13aを取ることになる。
【0031】
上記第1の波動歯車減速機5の角度伝達誤差の波形(図2(イ)の線A)と、上記第2の波動歯車減速機6の角度伝達誤差の波形(図2(ロ)の線B)は、上述したように、互いにほぼブランケットロール1の回転角度変化方向(左右方向)に反転させた形状となっているため、上記第1の波動歯車減速機5の角度伝達誤差の波形(図2(イ)の線A)の各周期における最大値12aから最小値12bまでのブランケットロール1の回転角度変化と、上記第2の波動歯車減速機6の角度伝達誤差の波形(図2(ロ)の線B)における最小値13aから最大値13bまでのブランケットロール1の回転角度変化は、ほぼ一致している。
【0032】
なお、本発明者の実施した試験によれば、上記各波動歯車減速機5,6の角度伝達誤差の波形は、速度に依存して変化することが判明している。
【0033】
以上の点に鑑みて、本発明では、上記第1の波動歯車減速機5及び第2の波動歯車減速機6について、その出力側の回転数を、上記ブランケットロール1をオフセット印刷処理で使用する場合の設定回転数に応じて設定した状態で、該各波動歯車減速機5及び6で生じる角度伝達誤差の波形を予め計測しておき、計測された上記第1の波動歯車減速機5の角度伝達誤差の波形(図2(イ)の線A)における最大値12a及び最小値12bに、計測された上記第2の波動歯車減速機6の角度伝達誤差の波形(図2(ロ)の線B)における最小値13a及び最大値13bが重なるように、上記第1と第2の各波動歯車減速機5と6の位相を調整するようにしてある。
【0034】
これにより、上記ブランケットロール1が十分な回転剛性を備えていて捻れることがないため、上記各駆動モータ7と8の回転が各波動歯車減速機5と6を経て上記ブランケットロール1へ伝えられるときには、上記第1の波動歯車減速機5の角度伝達誤差の最大値12aと第2の波動歯車減速機6の角度伝達誤差の最小値13aが常に相殺されると共に、上記第1の波動歯車減速機5の角度伝達誤差の最小値12bと第2の波動歯車減速機6の角度伝達誤差の最大値13bが常に相殺されるようになる。
【0035】
よって、上記各駆動モータ7と8によってブランケットロール1を回転させるときに生じる角度伝達誤差は、上記各波動歯車減速機5と6の双方の角度伝達誤差を足して2で割った角度、すなわち、図2(ハ)に示すように、上記線Aで示した第1の波動歯車減速機5の角度伝達誤差の波形と、上記線Bで示した第2の波動歯車減速機6の角度伝達誤差の波形が合成された線Cで示す如き波形に落ち着くようになるため、上記波動歯車減速機5又は6に固有の角度伝達誤差に比して、誤差の絶対値が低減されるようになる。
【0036】
なお、上記各波動歯車減速機5と6の角度伝達誤差と、上記ブランケットロール1を回転させるときに生じる角度伝達誤差の差分は、ブランケットロール1に比して剛性が小さい各波動歯車減速機5と6における変形として吸収されるようになる。
【0037】
このように、本発明のロール回転駆動装置によれば、ブランケットロール1の両端のロール軸2aと2bに、個別の波動歯車減速機5と6を、上記ブランケットロール1を或る方向へ回転駆動するときの出力側5o,6oから見た出力の回転方向が相対的に逆方向となるように取り付けると共に、上記波動歯車減速機5と6について予め計測した各々の角度伝達誤差の波形を基に、第1の波動歯車減速機5の角度伝達誤差の波形(図2(イ)の線A参照)の1周期における最大値12a及び最小値12bに、第2の波動歯車減速機6の角度伝達誤差の波形(図2(ロ)の線B参照)の1周期における最小値13a及び最大値13bが重なるように位相を調整するという機械的な組み合わせのみで、制御的な補正を要することなく、上記各駆動モータ7と8によってブランケットロール1を回転させるときに生じる角度伝達誤差を、上記波動歯車減速機5と6に固有の角度伝達誤差に比して低減させることができる。この場合、図2(ハ)に示すように、角度伝達誤差を半分以下に低減させることも可能になる。
【0038】
よって、上記ブランケットロール1の回転精度や位置決め精度を高めることができて、オフセット印刷装置における印刷精度の向上化を図ることができることから、基板上に電子回路を印刷により形成する場合のような高い印刷精度が要求されるオフセット印刷装置におけるブランケットロール1を回転駆動するためのロール回転駆動装置に適したものとすることができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、図2(イ)(ロ)(ハ)に示した第1と第2の各波動歯車減速機5と6の角度伝達誤差の波形、及び両者が合成された波形は一例であって、第1と第2の各波動歯車減速機5と6の角度伝達誤差の実際に計測される波形は図示した以外の波形であってもよい。たとえ波形が異なっている場合であっても、前述したように、上記第1の波動歯車減速機5の角度伝達誤差の波形と、上記第2の波動歯車減速機5の角度伝達誤差の波形は、互いにほぼブランケットロール1の回転角度変化方向(左右方向)に反転させた形状となり、上記第1の波動歯車減速機5の角度伝達誤差の波形の各周期における最大値12aから最小値12bまでのブランケットロール1の回転角度変化と、上記第2の波動歯車減速機6の角度伝達誤差の波形における最小値13aから最大値13bまでのブランケットロール1の回転角度変化は、ほぼ一致しているため、上記第1の波動歯車減速機5の角度伝達誤差の波形の最大値12a及び最小値12bに、第2の波動歯車減速機6の角度伝達誤差の波形の最小値13a及び最大値13bがそれぞれ重なるような位相を特定することに何ら問題は生じない。
【0040】
上記実施の形態においては、第1と第2の各波動歯車減速機5と6の角度伝達誤差の波形の双方を予め計測するものとして示したが、上記各波動歯車減速機5と6のうちのいずれか一方のみ角度伝達誤差の波形の計測を予め行ない、その波形をブランケットロール1の回転角度変化方向(左右方向)に反転させることで、上記各波動歯車減速機5と6のうちの他方の角度伝達誤差の波形を推定するようにしてもよい。このような構成としても、上記各駆動モータ7と8によってブランケットロール1を回転させるときに生じる角度伝達誤差を、上記波動歯車減速機5と6に固有の角度伝達誤差に比して低減させることができる。
【0041】
本発明のロール回転駆動装置は、駆動モータを波動歯車減速機を介してロール軸に取り付けるようにしてあるロールであれば、オフセット印刷装置におけるブランケットロール以外のいかなるロールを駆動対象ロールを駆動する場合にも適用してよい。
【0042】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
1 ブランケットロール(駆動対象ロール)
2a,2b ロール軸(軸)
5 第1の波動歯車減速機(波動歯車減速機)
5o 出力側
6 第2の波動歯車減速機(波動歯車減速機)
6o 出力側
7 駆動モータ
8 駆動モータ
10 メカロック機構
12a 最大値
12b 最小値
13a 最小値
13b 最大値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象ロールの軸両端部に、駆動モータの出力側に接続した同一形式の波動歯車減速機の出力側を、該各波動歯車減速機の出力側より見た出力の回転方向が互いに逆方向となるように接続し、且つ上記各波動歯車減速機について予め計測した角度伝達誤差を基に、一方の波動歯車減速機の角度伝達誤差の一周期における最大値と最小値が、他方の波動歯車減速機の角度伝達誤差の一周期における最小値と最大値にそれぞれ重なるように、上記一方の波動歯車減速機と他方の波動歯車減速機の位相をずらしてなる構成を有することを特徴とするロール回転駆動装置。
【請求項2】
駆動対象ロールの片方の軸端部と、対応する波動歯車減速機の出力側との間に、メカロック機構を介装するようにした請求項1記載のロール回転駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−97820(P2012−97820A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246132(P2010−246132)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】