説明

ロール用キャップとその製造方法及びロール搬送用枠材

【課題】 従来の紙製の芯材を使わない、シート状の材料や製品のみからなるロールの中心孔の形崩れによるロールの中心側のシート状の材料や製品が損傷することを防止でき、環境への負荷を激減させることのできるロール用キャップと、このロール用キャップを台紙上に複数個配置したロール搬送用枠材を提供する。
【解決手段】 中心部6と該中心部6から放射状に外側に延出した複数の分割片7,7,7,・・・とからなる積層平板合紙の型紙を成形加工して製作したフランジ付き有底略円筒形状のロール用キャップ1であって、フランジ付き有底略円筒形状のフランジ部3の底側には、該フランジ部3の平面形状と略同一の円環状の積層平板合紙からなる補強部材5が接着固定されたロール用キャップ1を台紙34上に複数個配置してロール搬送用枠材33を完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シート状の紙、布、合成樹脂を円筒状に巻き取ったロールの形崩れ及びその端部の損傷を防止するために、端部に取り付けられるロール用キャップと、このロール用キャップを台紙上に複数個配置したロール搬送用枠材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙、布、合成樹脂等からなるシート状の製造ラインや加工ラインの最終工程でシート状の紙、布、合成樹脂を円筒状に巻き取った各種ロールが存在していた。これらのロールの中心部には一般に紙製の円筒状の芯材があり、この芯材によってロールの形崩れが防止されるようになっていた。
【0003】
そこで、紙製の芯材は、二次加工の際に巻き取り機の軸に通したり、搬送の際にその中空部にワイヤ等を通してロールをクレーンやフォークリフトの爪に吊り下げて移動することが行われるため、紙製の芯材の端部が潰れたり傷が付いてしまうことがあった。そのため、巻き取られたシート状の材料や製品を使い切った後の紙製の芯材を回収したとしても再利用できるものは僅かであり、そのほとんどは焼却処分されコストの増大と資源の無駄遣いを招いていた。
【0004】
このような状況に鑑み、一部では、紙製の芯材を使わずに紙、布、合成樹脂等からなるシート状の材料や製品を巻き取る技術が開発され、紙製の芯材の使用によるコストの増大や資源の無駄遣いの問題を解決することが行われている(たとえば、特許文献1を参照のこと)。
【0005】
この紙製の芯材を使わない、シート状の材料や製品のみからなるロールにあっても、次の工程や他のユーザーへ搬送しなければならず、その搬送の際にロールの中心孔の形崩れによるロール中心側のシート状の材料や製品が損傷することがある。そのため、ロールの中心孔の両端開口部に筒状部の一端にフランジ部を一体に形成した合成樹脂製の短筒状保護具を嵌着することで、ロール中心側のシート状の材料や製品の損傷を防止することが考えられていた。
【0006】
この短筒状保護具を使用すれば、紙製の芯材を使わない、シート状の材料や製品のみからなるロールであっても、ロールの中心孔とその両端部が保護されるから、次の工程や他のユーザーへ搬送の際の取扱いにおいても、ロール中心側のシート状の材料や製品の損傷が防止されることになる。
【特許文献1】特開2001−225998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、巻き取られたシート状の材料や製品を使い切った後は、合成樹脂製の短筒状保護具を回収して再利用することになるが、樹脂成分によっては再利用が難しい場合があり、その場合には埋め立て処分とならざるを得なかった。そして、埋め立てする場合は、それが生分解樹脂以外のものでは環境への負荷を防止するものとはいえない。
【0008】
そこで、この発明は、従来の紙製の芯材を使わない、シート状の材料や製品のみからなるロールの中心孔の形崩れによるロール中心側のシート状の材料や製品が損傷することを防止でき、環境への負荷を激減させることのできるロール用キャップと、このロール用キャップを台紙上に複数個配置したロール搬送用枠材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、請求項1に記載の発明は、中心部と該中心部から放射状に外側に延出した複数の分割片とからなる積層平板合紙の型紙を成形加工して製作したフランジ付き有底略円筒形状のロール用キャップであって、前記フランジ付き有底略円筒形状のフランジ部の底側には、該フランジ部の平面形状と略同一の円環状の積層平板合紙が接着固定されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロール用キャップが、搬送用容器の平面形状の内形と一致する外形を有する平板状の台紙に前記ロール用キャップのフランジ部で固定されていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明は、中心部と該中心部から放射状に外側に延出した複数の分割片とからなる積層平板合紙の吸水率が15〜50%となるように吸水した原料型紙を、フランジ付き有底略円筒形状の空間を形成した雄型と雌型とからなる成形金型にセットし、前記原料型紙に0.7〜1ton/cmの圧力を加え、前記原料型紙を100〜250℃の温度に加熱し、前記原料型紙の吸水率が2〜3%になるまで加圧加熱脱水加工を行うことにより、加工終了時の板厚が吸水前の前記積層平板合紙の板厚の50〜80%である成形品を得ることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加えて、前記雌型のフランジ付き有底略円筒形状の空間のフランジ部の底側には、前記フランジ部の平面形状と略同一の円環状の空間を設けており、該円環状の空間に積層平板合紙の吸水率が15〜50%となるように吸水した補強部材の原料型紙をセットすることで、前記フランジ付き有底略円筒体の原料型紙と前記補強部材の原料型紙とを一体成形することを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の構成に加えて、一つの原料型紙の分割片同士の間の切り欠き部を他の原料型紙の分割片が塞ぐように複数の原料型紙を重ねたことを特徴としている。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5のいずれか一つに記載の構成に加えて、前記雄型と前記雌型との間には中間金型を有し、該中間金型には前記原料型紙の位置決め手段と前記雄型が通り抜けることのできる貫通孔を有し、前記原料型紙が前記雄型に押し下げられて前記中間金型を通過した後、前記雌型に導入されるようにしたことを特徴としている。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項3乃至6のいずれか一つに記載の製造方法によって成形されたロール用キャップが、搬送用容器の平面形状の内形と一致する外形を有する平板状の台紙に前記ロール用キャップのフランジ部で固定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
この発明は以上のような構成を有するため、請求項1に記載の発明によれば、フランジ付き有底略円筒形状のフランジ部の底側には、該フランジ部の平面形状と略同一の円環状の積層平板合紙が接着固定されているので、円環状の積層平板合紙の内形がフランジ付き有底略円筒部の上端の外形形状を規制するとともに、円環状の積層平板合紙の分だけフランジ部の厚みが増加することで、フランジ部の強度が大きくなることは勿論ロール用キャップの全体の剛性を高めることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、搬送用容器の平面形状の内形と一致する外形を有する平板状の台紙にロール用キャップのフランジ部で固定されているので、ロール用キャップにシート状の紙、布、合成樹脂を円筒状に巻き取ったロールの中心孔を嵌合すれば、搬送用容器の内形とロールの外形との間隔又はロールの外形と他のロールの外形との間隔を所定寸法に維持した状態でロールを搬送することができる。そのため、搬送の際にロールの中心孔の形崩れによるロール中心側のシート状の材料又は製品を損傷することなく目的の場所まで移動することができる。
【0018】
また、ロール搬送用枠材を構成するロール用キャップと台紙がともに紙製品であるため、耐用回数に達したものを回収した後、合紙として再生することが可能であるから、従来のものに比べて環境への負荷を激減することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、中心部と該中心部から放射状に外側に延出した複数の分割片とからなる積層平板合紙の吸水率が15〜50%となるように吸水した原料型紙を、フランジ付き有底略円筒形状の空間を形成した雄型と雌型とからなる成形金型にセットし、原料型紙に0.7〜1ton/cmの圧力を加え、原料型紙を100〜250℃の温度に加熱し、原料型紙の吸水率が2〜3%になるまで加圧加熱脱水加工を行うことにより、加工終了時の板厚が吸水前の積層平板合紙の板厚の50〜80%である成形品を得るようにしたので、紙製の高密度立体成形品であるロール用キャップが完成する。このロール用キャップをロールの中心孔に嵌合することでロール中心側のシート状の材料又は製品を損傷することなく目的の場所まで移動することができ、耐用回数に達したロール用キャップは合紙として再生することが可能であるから、従来のものに比べて環境への負荷を激減することのできる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加えて、雌型のフランジ付き有底略円筒形状の空間のフランジ部の底側には、フランジ部の平面形状と略同一の円環状の空間を設けており、該円環状の空間に積層平板合紙の吸水率が15〜50%となるように吸水した補強部材の原料型紙をセットすることで、フランジ付き有底略円筒体の原料型紙と補強部材の原料型紙とを一体成形するようにしたので、円環状の空間に円環状の原料型紙をセットした後、雄型と雌型とからなる成形金型を型締めを行い加圧加熱脱水加工を行うことで、フランジ部の底側には、フランジ部の平面形状と略同一の円環状の積層平板合紙が一体化されるため、フランジ部の強度が大きくなるとともに全体の剛性を高めたロール用キャップを完成することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、請求項3又は4に記載の発明の効果に加えて、一つの原料型紙の分割片同士の間の切り欠き部を他の原料型紙の分割片が塞ぐように複数の原料型紙を重ねているので、加圧加熱脱水加工後の製品にあっては、重なり合った積層平板合紙のそれぞれの切り欠き部の繋ぎ目が重なり合うことなく一体化されるため繋ぎ目の強度不足を補うことができるため、板厚の増加と相俟ってより耐荷重の大きなロール用キャップを完成することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、請求項3乃至5のいずれか一つに記載の発明の効果に加えて、雄型と雌型との間には中間金型を有し、中間金型には原料型紙の位置決め手段と雄型が通り抜けることのできる貫通孔を有し、原料型紙が雄型によって中間金型を通過した後、雌型に導入されるようにしたので、雄型を中間金型が通過する段階で平板形状の原料型紙を大凡の有底略円筒形状の立体形状に変形させてから雄型と雌型とからなる成形金型を型締めを行い加圧加熱脱水加工を行うことができるため、原料型紙に複数の積層平板合紙を使用する場合や一枚の板厚の大きな積層平板合紙を使用する場合でも成形性を損なうことのない成形加工が可能となる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、請求項3乃至6のいずれか一つに記載の発明の効果に加えて、搬送用容器の平面形状の内形と一致する外形を有する平板状の台紙にロール用キャップのフランジ部で固定しているので、ロール用キャップにシート状の紙、布、合成樹脂を円筒状に巻き取ったロールの中心孔を嵌合すれば、搬送用容器の内形とロールの外形との間隔又はロールの外形と他のロールの外形との間隔を所定寸法に維持した状態でロールを搬送することができるロール搬送用枠材を完成することができる。また、ロール搬送用枠材を構成するロール用キャップと台紙がともに紙製品であるため、耐用回数に達したものを回収した後、合紙として再生することが可能であるから、従来のものに比べて環境への負荷を激減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
[発明の実施の形態1]
【0026】
図1はこの発明の実施の形態1に係るロール用キャップの斜視図であり、図2はその成形前の主たる素材の形状を示した平面図であり、図3はその成形前の従たる素材の形状を示した平面図である。
【0027】
この発明の実施の形態1に係るロール用キャップ1は、この発明者が既に発明し提案した、特開2000−177033号公報に記載された合紙を原料とする精密三次元立体薄硬紙プレス形成法、又はこれに準じた成形方法を採用して、積層平板合紙を立体形状に成形したものであって、有底略円筒部2の一端にフランジ部3を有するフランジ付き有底略円筒形状をしているフランジ付き有底略円筒本体4と、そのフランジ付き有底略円筒本体4のフランジ部3の底側(下面側)に一体的に固定された円環状の補強部材5とを有している。
【0028】
具体的には、図2に示したような、中心部6とこの中心部6から放射状に外側に延出した複数の分割片7,7,7,・・・とからなる積層平板合紙の型紙8の破線部9に沿って谷折りして有底略円筒部2を立ち上げ、二点鎖線部10を山折りしてフランジ部3を外側に開くように成形加工している。
【0029】
積層平板合紙の型紙8に設ける切り欠き部11の開き角θは、有底略円筒部2の立ち上がり部12の個数と、立ち上がり部12の立ち上がり角度、及び型紙8の板厚に応じて、成形後に隣り合う立ち上がり部12同士の間に隙間が生じないように、その角度を調節する。
【0030】
実施の形態1で示したものであれば、8個の立ち上がり部12からなり、立ち上がり角度を85度としたフランジ付き有底略円筒本体4を板厚3mmで成形した場合、積層平板合紙の型紙8の切り欠き部11の開き角θを約40度とすることで、隣り合う立ち上がり部12の側端面同士が互いに接触した隙間のないものが完成できた。
【0031】
有底略円筒部2の立ち上がり部12の分割数は、有底略円筒部2の機械的強度を大きくするためには少ない程よい。この発明のように、紙によって合成樹成形品と同等の剛性を持たせた高密度圧縮成形品を製作する場合には、予め成形前に積層平板合紙の型紙8に吸水させて成形性を向上させるようにしているが、それにしても積層平板合紙自体は可塑性や伸延性が極めて小さいので、有底略円筒部2の立ち上がり部12の分割数が少ない場合には、成形後の製品にクラックが発生するといった問題が生じるおそれがある。そのため、成形品の仕様によって、適当な分割数を決定しなければならない。
【0032】
実施の形態1で示したフランジ付き有底略円筒本体4は、高さが34mm、有底略円筒部2の最大径が75mm、フランジ部3の外径が94mmであり、全幅が約15mmの立ち上がり部12を8個としたが、このような仕様であれば立ち上がり部12の分割数を5以上にすることが望ましい。
【0033】
有底略円筒部2の立ち上がり角度は、垂直荷重強度のみを考えると90度とするのが良いが、ロールの中心孔に嵌合させる際の作業性を考慮し、85〜90度未満に設定するとよい。
【0034】
円環状の補強部材5は、フランジ付き有底略円筒本体4と同じ積層平板合紙から型抜きしたものに水溶性の接着剤を塗布して、フランジ付き有底略円筒本体4のフランジ部3の底側(下面側)に固定した状態で、成形金型の中でフランジ付き有底略円筒本体4と一体成形する。これにより、目的とする紙製の高密度圧縮成形品であるロール用キャップ1が得られる。
【0035】
この発明の実施の形態1に係るロール用キャップ1によれば、積層平板合紙からなる円環状の補強部材5の内側の形状によって有底略円筒部2の上端の外形形状を規制するとともに、積層平板合紙からなる円環状の補強部材5の分だけフランジ部3の厚みが増加することで、フランジ部3の強度が大きくなることは勿論ロール用キャップ1の全体の剛性を高めることができる。
【0036】
円環状の補強部材5とフランジ付き有底略円筒本体4とを接着する接着剤としては、水溶性の酢酸ビニル系接着剤を使用する。具体的には、たとえば、ペガール210PR、ペガール100HHR、ペガール1540,ペガール517R等(高圧ガス工業株式会社製)が推奨できる。これらは、食品衛生法・食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)に適合することが確認されており、作業者や環境に対する負荷が小さい。また、塗布し易くするため、接着剤に対し水を体積比で10%乃至100%添加して、薄めて使用してもよい。
【0037】
水溶性の酢酸ビニル系接着剤を使用した場合には、ロール用キャップ1全体を水に浸すことで、フランジ付き有底略円筒本体4、円環状の補強部材5、接着剤の全ての構成部材を水に溶かすことができるので、新たな積層平板合紙の原料として容易に再利用ができることとなる。
【0038】
次に、実施の形態1に係るロール用キャップ1の第1の製造方法について説明する。
【0039】
図4はこの発明の実施の形態1に係るロール用キャップの成形金型の要部断面図であり、図5はその雌型の主要部の平面図である。
【0040】
成形金型13は、完成品であるフランジ付き有底略円筒形状をしたロール用キャップ1の外形形状と同じ大きさのフランジ付き有底略円筒形状の空間14を形成した雄型15と雌型16とからなっている。そして、完成品であるロール用キャップ1の有底略円筒部2の最小外径部17とフランジ部3の内径部18との屈曲部位にクラックが発生しないように、積層平板合紙の型紙8の破線部9の谷折りする箇所と二点鎖線部10の山折りする箇所に相当する雄型15と雌型16の角部は、所定の大きさのR状に形成している。
【0041】
実施の形態1の仕様のものを製作する成形金型13の場合では、雄型15の凸部角19aは半径3mm、凹部角19bは半径6mmとし、雌型16の凹部角19cは半径約6mmのR状とした。その結果、後述する成形条件で成形した完成品の屈曲部位にクラックは認められなかった。
【0042】
また、雌型16のフランジ付き有底略円筒形状の空間14のフランジ部空間20の下面には、フランジ付き有底略円筒本体4のフランジ部3の平面形状と略同一の円環状の空間21を設けている。
【0043】
このような成形金型13を使用して実施の形態1に係るロール用キャップ1を成形する場合には、まず、中心部6とこの中心部6から放射状に外側に延出した複数の分割片7,7,7,・・・とからなる厚さ3mmの積層平板合紙を使ったフランジ付き有底略円筒本体4の型紙8の成形性を向上させるため、成形前に積層平板合紙の型紙8を15〜50%の吸水率になるよう吸水させたフランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aを準備する。同時に、フランジ付き有底略円筒本体4と同じ積層平板合紙から円環状に型抜きした補強部材5を15〜50%の吸水率になるよう吸水させた補強部材の原料型紙5aを準備する。
【0044】
次に、雌型16の円環状の空間20に補強部材の原料型紙5aをセットし、補強部材の原料型紙5aの表面に水溶性の接着剤を塗布する。その上にフランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aを重ねるようにして雌型16のフランジ付き有底略円筒本体4の平面形状の彫り込み部22にセットする。
【0045】
補強部材の原料型紙5aとフランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aの所定位置へのセッティングが完了したら、雄型15を雌型16側に向けて降下させて行き型締めすることで、補強部材5の原料型紙5aとフランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aとに0.7〜1ton/cmの圧力を加える。この圧縮工程と同時に、補強部材5の原料型紙5aとフランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aを100〜250℃の温度に加熱し、最終的に完成品であるロール用キャップ1全体が吸水率が2〜3%になるまで加圧加熱脱水加工を行う。これにより、加工終了時の板厚が吸水前の積層平板合紙の型紙8の板厚の50〜80%である圧縮成形品を得る。
【0046】
ここで、圧縮成形による圧縮率は、吸水前の積層平板合紙の型紙8の板厚を100%として、板厚が1mm〜3mm以下の場合には70〜80%、板厚が3mmを超え30mm以下の場合、又は3mm以下の板厚のものを複数枚重ねて3mm以上にした場合には50〜70%とすると、圧縮成形品の機械的性質が高い値を示すことを確認している。
【0047】
また、積層平板合紙の型紙8を複数枚重ね合わせる場合には、フランジ付き有底略円筒本体4の一つの原料型紙8aの分割片7同士の間の切り欠き部11を他の原料型紙8aの分割片7が塞ぐように複数の原料型紙8aを重ねることで、重なり合った積層平板合紙の原料型紙8aのそれぞれの切り欠き部11の繋ぎ目が重なり合うことなく一体化されるため繋ぎ目の強度不足を補うことができる。これにより、板厚の増加と相俟ってより機械的強度の大きなロール用キャップ1を完成することができる。
【0048】
なお、複数枚重ねる場合、重ね面には水溶性の接着剤を塗布するが、水を30%以上加えた接着剤を用いると、圧縮成形品の機械的強度が1割弱低下する場合がある。使用する用途に応じて、圧縮成形品の機械的強度を重視する場合は原液接着剤を使用し、塗布の作業性を重視する場合は適宜薄めた接着剤を使用するとよい。
【0049】
実施の形態1に係る第1の製造方法によって製造されたロール用キャップ1によれば、シート状の紙、布、合成樹脂を円筒状に巻き取ったロール23の中心孔を嵌合すれば、搬送用容器24の内形とロール23の外形との間隔又はロール23の外形と他のロール23の外形との間隔を所定寸法に維持した状態でロール23を搬送することができる。そのため、搬送の際にロール23の中心孔25の形崩れによるロール23の中心側のシート状の材料又は製品を損傷することなく目的の場所まで移動することができる。
【0050】
[発明の実施の形態2]
【0051】
次に、実施の形態1に係るロール用キャップ1の第2の製造方法について説明する。
【0052】
図6は、この発明の実施の形態1に係るロール用キャップの第2の製造方法に関する成形金型の断面図である。
【0053】
この第2の製造方法では、雄型15と雌型16との間に中間金型26を使用する点が特徴である。中間金型25の上面には、予め積層平板合紙の型紙8に設けられた位置決め用の丸孔27に嵌合する位置決めピン28が設けられている。なお、図6で示した成形金型13では、積層平板合紙の型紙8に設けられた位置決め用の丸孔27と中間金型25に設けられた位置決めピン28とで位置決め手段が構成ているが、位置決め手段はこれに限らず、たとえば、積層平板合紙の型紙8の素材の外形に一致した彫り込みを中間金型25の表面に設けるといったように、必要に応じて他の位置決め手段を採用してもよい。
【0054】
中間金型25には、雄型15が通り抜けることのできる貫通孔29が形成されており、原料型紙8aが雄型15によって中間金型25を通過した後、雌型16に導入されるようになっている。
【0055】
そこで、この第2の製造方法の作業手順としては、最初に、15〜50%の吸水率に吸水させたフランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aと補強部材5の原料型紙5aを準備することは、第1の製造方法と同様である。
【0056】
次に、雌型16の円環状の空間22に補強部材5の原料型紙5aをセットし、補強部材5の原料型紙5aの表面に水溶性の接着剤を塗布する。
【0057】
次に、中間金型25の位置決めピン28にフランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aに設けられている位置決め用の丸孔27を嵌合させるようにして、フランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aをセットする。
【0058】
次に、雄型15を雌型16側に向けて降下させていくと、雄型15の先端面30が中間金型24にセットされたフランジ付き有底略円筒本体4の原料素材からフランジ付き有底略円筒本体4の平面形状の原料型紙8aを抜き去り、中間金型25の貫通孔29を通過した後、雌型16の中に導入されることになる。このとき、雄型15の先端面30でフランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aの中心部6が押し下げられながら中間金型25の貫通孔29通過することになり、その際に貫通孔29の内壁によって分割片7が立ち上げられた状態になってから、フランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aが雌型16の中に導入されることになる。
【0059】
フランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aが雌型16の底面31に最も接近した位置に到達すると同時に、雄型15のフランジ押圧部32の下面が雌型16の表面に最も接近し、フランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aの分割片7の外周部を外側に開くことでフランジ部3が成形される。このとき、雌型16の表面の円環状の空間22には水溶性の接着剤が塗布された補強部材5の原料型紙5aをセットされているので、補強部材5の原料型紙5aとフランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aのフランジ部3とが固着されて一体に成形されることになる。
【0060】
ここで、雄型15と雌型16とによる成形金型13を型締めすることで、補強部材5の原料型紙5aとフランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aとには、0.7〜1ton/cmの圧力が加わるようになっている。また、この圧縮工程と同時に、補強部材の原料型紙5aとフランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aを100〜250℃の温度に加熱し、最終的に完成品であるロール用キャップ1全体が吸水率が2〜3%になるまで加圧加熱脱水加工を行う。これにより、加工終了時の板厚が吸水前の積層平板合紙の型紙8の板厚の50〜80%であるロール用キャップ1を得る。
【0061】
加圧加熱脱水加工が完了したら、完成品であるロール用キャップ1を雌型16から取り出すとともに、中間金型25の表面からフランジ付き有底略円筒本体4の平面形状の素材8bが抜き去られた後の積層平面合紙の型紙8の素材を取り出せば、次の成形作業が行えるようになる。
【0062】
次に、この第2の製造方法の変形例として、積層平板合紙の型紙8を複数枚重ね合わせた機械的強度の大きなロール用キャップ1を製作する場合の製造方法について説明する。
【0063】
図7は、この発明の実施の形態1に係るロール用キャップの第2の製造方法(実施の形態2)で使用する中間金型の主要部の平面図であり、第1の積層平板合紙の型紙の素材をセットした状態を示したものである。図8は、同じく第2の製造方法(実施の形態2)で使用する中間金型の主要部の平面図であり、第2の積層平板合紙の型紙の素材をセットした状態を示したものである。
【0064】
まず、図7では、12個の分割片7のうちの90度置きに位置する4個の分割片7の中心が図面上の上下左右に配置した形態になるようにフランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aの型抜き形状を象ったものとしている。これに対して、図8では、12個の分割片7のうち90度置きに位置する4個の分割片7の中心が図7の形態と30度ずらした位置になるようにフランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aの型抜き形状を象ったものとしている。そのため、図8では、図面上の上下左右に分割片7同士の間の切り欠き部11の中心が配置されることになる。
【0065】
そこで、最初に、フランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aの型抜き形状が図7の状態のもので第1回目の型締めして加圧加熱脱水加工することで、1枚目のフランジ付き有底略円筒本体4の成形を行う。次に、フランジ付き有底略円筒本体4の原料型紙8aの型抜き形状が図8の状態のもので第2回目の型締めして加圧加熱脱水加工することで、2枚目のフランジ付き有底略円筒本体4の成形を行う。このようにすることで、自動的にフランジ付き有底略円筒本体4の一つの原料型紙8aの分割片7同士の間の切り欠き部12に他の原料型紙8aの分割片7が塞ぐように2枚目の原料型紙8aを重ねることができる。
【0066】
これにより、重なり合った積層平板合紙の原料型紙8aのそれぞれの切り欠き部11の繋ぎ目が重なり合うことない成形品が完成する。したがって、この方法によれば、複数の原料型紙8aの位置決めを作業者が目視で行う必要がなくなり、歩留まりが向上するとともに作業効率の向上が図れる。 なお、1枚目のフランジ付き有底略円筒本体4と2枚目のフランジ付き有底略円筒本体4との間は水溶性の接着剤にて固着されるようにすれば、より強固な高密度成形品となるので望ましい。
【0067】
この発明の実施の形態2に係る製造方法によれば、雄型15を中間金型25が通過する段階で平板形状の原料型紙8aを大凡の有底略円筒形状の立体形状に変形させてから雄型15と雌型16とからなる成形金型13を型締めを行い加圧加熱脱水加工を行うことができるため、原料型紙8aに複数の積層平板合紙を使用する場合や一枚の板厚の大きな積層平板合紙を使用する場合でも成形性を損なうことのない成形加工が可能となる。
【0068】
[発明の実施の形態3]
【0069】
以下、実施の形態1又は2に係るロール用キャップを所定の大きさの平板状の台紙に固定したロール搬送用枠材について説明する。
【0070】
図9は、この発明の実施の形態3に係るロール搬送用枠材の斜視図である。図10は、この発明の実施の形態2に係るロール搬送用枠材を搬送容器に納めた状態の斜視図である。
【0071】
実施の形態3に係るロール搬送用枠材33は、実施の形態1又は2に係るロール用キャップ1を所定の大きさの平板状の台紙34に所定の間隔を保って配置固定したものである。
【0072】
具体的には、平板状の台紙34は、板厚が3〜5mm程度の積層平板合紙又は紙製段ボールを使用し、その外形を搬送用容器24の平面形状の内形と一致させている。また、予め平板状の台紙34に所定間隔で設けられている取付孔35に、フランジ部3に水溶性の接着剤を塗布したロール用キャップ1の有底略円筒部2を挿入して、平板状の台紙34とロール用キャップ1とを一体化させている。
【0073】
この実施の形態3に係るロール搬送用枠材34を使用する場合には、ロール用キャップ1にシート状の紙、布、合成樹脂を円筒状に巻き取ったロール23の中心孔25を嵌合すれば、搬送用容器24の内形とロール23の外形との間隔又はロール23の外形と他のロール23の外形との間隔を所定寸法に維持した状態でロール23を搬送することができる。そのため、搬送の際にロール23の中心孔25の形崩れによるロール23の中心側のシート状の材料又は製品を損傷することなく目的の場所まで移動することができる。
【0074】
また、この実施の形態3に係るロール搬送用枠材33を構成するロール用キャップ1と平板状の台紙34がともに紙製品であるため、耐用回数に達したものを回収した後、積層平面合紙又は紙製段ボールとして再生することが可能であるから、従来の合成樹脂製のものに比べて環境への負荷を激減することができる。
【0075】
なお、搬送するロール23の仕様や搬送形態によっては、台紙34の素材である積層平板合紙又は紙製段ボールの機械的強度を向上させることが必要なるが、この場合には、前述したこの発明者が発明した合紙を原料とする精密三次元立体薄硬紙プレス形成法、又はこれに準じた成形方法を採用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】この発明の実施の形態1に係るロール用キャップの斜視図である。
【図2】同実施の形態1に係るロール用キャップの成形前の主たる素材の形状を示した平面図である。
【図3】同実施の形態1に係るロール用キャップの成形前の従たる素材の形状を示した平面図である。
【図4】同実施の形態1に係るロール用キャップの第1の製造方法に使用する成形金型の要部断面図である。
【図5】同実施の形態1に係るロール用キャップの第1の製造方法に使用する雌型の主要部の平面図である。
【図6】同実施の形態1に係るロール用キャップの第2の製造方法(同実施の形態2)に関する成形金型の断面図である。
【図7】同製造方法(実施の形態2)で使用する中間金型の主要部の平面図であり、第1の積層平板合紙の型紙の素材をセットした状態を示したものである。
【図8】同製造方法(実施の形態2)で使用する中間金型の主要部の平面図であり、第2の積層平板合紙の型紙の素材をセットした状態を示したものである。
【図9】この発明の実施の形態3に係るロール搬送用枠材の斜視図である。
【図10】同実施の形態3に係るロール搬送用枠材を搬送容器に納めた状態の一部透視した斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
1 ロール用キャップ
2 有底略円筒部
3 フランジ部
4 フランジ付き有底略円筒本体
5 補強部材
5a 補強部材の原紙型紙
6中心部
7 分割片
8 型紙
8a 原料型紙
12 立ち上がり部
13 成型金型
14 フランジ付き有底略円筒形状の空間
15 雄型金型
16 雌型金型
22 フランジ部空間
21 円環状の空間部
22 彫り込み部
22 ロール
24 搬送容器
25 中心孔
25 中間金型
27 丸孔
28 位置決めピン
29 貫通孔
32 フランジ押圧部
33 ロール搬送用枠材
34 台紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部と該中心部から放射状に外側に延出した複数の分割片とからなる積層平板合紙の型紙を成形加工して製作したフランジ付き有底略円筒形状のロール用キャップであって、前記フランジ付き有底略円筒形状のフランジ部の底側には、該フランジ部の平面形状と略同一の円環状の積層平板合紙が接着固定されていることを特徴とするロール用キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のロール用キャップが、搬送用容器の平面形状の内形と一致する外形を有する平板状の台紙に前記ロール用キャップのフランジ部で固定されていることを特徴とするロール搬送用枠材。
【請求項3】
中心部と該中心部から放射状に外側に延出した複数の分割片とからなる積層平板合紙の吸水率が15〜50%となるように吸水したフランジ付き有底略円筒体の原料型紙を、フランジ付き有底略円筒形状の空間を形成した雄型と雌型とからなる成形金型にセットし、前記原料型紙に0.7〜1ton/cmの圧力を加え、前記原料型紙を100〜250℃の温度に加熱し、前記原料型紙の吸水率が2〜3%になるまで加圧加熱脱水加工を行うことにより、加工終了時の板厚が吸水前の前記積層平板合紙の板厚の50〜80%である成形品を得ることを特徴とするフランジ付き有底略円筒形状のロール用キャップの製造方法。
【請求項4】
前記雌型のフランジ付き有底略円筒形状の空間のフランジ部の底側には、前記フランジ部の平面形状と略同一の円環状の空間を設けており、該円環状の空間に積層平板合紙の吸水率が15〜50%となるように吸水した補強部材の原料型紙をセットすることで、前記フランジ付き有底略円筒体の原料型紙と前記補強部材の原料型紙とを一体成形することを特徴とする請求項3に記載のフランジ付き有底略円筒形状のロール用キャップの製造方法。
【請求項5】
一つの原料型紙の分割片同士の間の切り欠き部を他の原料型紙の分割片が塞ぐように複数の原料型紙を重ねたことを特徴とする請求項3又は4に記載のフランジ付き有底略円筒形状のロール用キャップの製造方法。
【請求項6】
前記雄型と前記雌型との間には中間金型を有し、該中間金型には前記原料型紙の位置決め手段と前記雄型が通り抜けることのできる貫通孔を有し、前記原料型紙が前記雄型に押し下げられて前記中間金型を通過した後、前記雌型に導入されるようにしたことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一つに記載のフランジ付き有底略円筒形状のロール用キャップの製造方法。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれか一つに記載の製造方法によって成形されたロール用キャップが、搬送用容器の平面形状の内形と一致する外形を有する平板状の台紙に前記ロール用キャップのフランジ部で固定されていることを特徴とするロール搬送用枠材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−52905(P2010−52905A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220828(P2008−220828)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(598171911)株式会社イシバシ (7)
【Fターム(参考)】