説明

ロール紙を用いた印刷装置

【課題】 本発明は、印刷出力を急ぐ必要がない印刷ジョブに関して、簡易な設定により印刷装置の使用頻度が少ない時間帯にまとめて印刷を行えるロール紙プリンタ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 印刷出力を急ぐ必要がない印刷ジョブに対して終夜運転印刷を行う属性データを持たせ、終夜運転印刷時にまとめて印刷を行う。またユーザーに注意を促すことで終夜運転印刷を行う印刷ジョブの印刷用紙種類を1種類に絞り、人手を介さずにまとめて印刷が行えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙プリンタ、特に巻き取り機を接続可能なプリンタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール紙へ印刷するプリンタはロール紙給紙装置により供給された印刷用紙に対して、プリンタヘッドによりインク吐出を行って印刷が行われ、ページ単位の印刷処理が完了した時点でカッターにより印刷出力結果が切断されて排紙トレイへ送られる。
【0003】
また、ロール紙に印刷するプリンタにおいて排紙トレイの代わりに巻き取り機を装備できるものがある。これにより、印刷出力結果をページ毎にカッターで切り離さずに、そのまま巻き取り機に巻き取らせて印刷出力を行うことが可能であり、連続して印刷を行っても印刷出力結果が折れ曲がったり、床に散らばったりせずに印刷出力結果の品位を保つことができる。
【0004】
またB0やA0等の大判用紙の印刷を行うプリンタはA3やA4等の用紙の印刷を行う一般のプリンタに比べ、スループットが遅くまた1台あたりの価格も効果なため、1台あたりの稼動効率をよくすることが特に求められている。
【0005】
上記の問題解決手段として印刷用紙としてロール紙、印刷出力結果の収納方法として巻き取り機を用いて、プリンタ本体のHDDにスプールされている印刷データをまとめて終夜運転で印刷を行う方法がある。
【0006】
またにHDDに印刷ジョブを格納し、RTC内蔵の印刷装置により指定した時間に印刷を行うことにより、使用頻度の多い時間帯を避けて印刷を行う方法が知られている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2004−009368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1のように指定した時間に印刷を行うことにより、使用頻度の多い時間帯を避けて印刷を行う場合に、使用頻度の少ない時間を設定することが判別しにくい時があることや電源がOFFにされた場合への対応が必要となる。
本発明は上記問題を解決し、印刷出力を急ぐ必要がない印刷ジョブに関して、簡易な設定により印刷装置の使用頻度が少ない時間帯にまとめて印刷を行うことが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、ホストコンピュータから印刷ジョブを受信し、前記印刷ジョブに基づく印刷をロール紙へ行う印刷装置であって、ユーザーから指定された特定の印刷ジョブを行う印刷手段を終夜運転モードとすると、前記印刷ジョブの属性データに終夜運転モードによる印刷が指定されている場合に、前記印刷ジョブを印刷装置の記憶部に格納し、終夜運転モードによる印刷時に前記記憶部に格納された印刷ジョブの印刷が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により印刷出力を急ぐ必要がない印刷ジョブに関して、簡易な設定により印刷装置の使用頻度が少ない時間帯にまとめて印刷を行うことが可能となる。
【0010】
また印刷ジョブの要求している印刷用紙と印刷装置に設定されている印刷用紙の相違がある場合もユーザーに適切な対応方法を示すことで前記問題を回避可能できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、たとえば、図1の斜視図に示すようなロール紙プリンタ装置100に適用される。
【0012】
120は印刷出力結果、113は巻き取り機を示す。
【0013】
また図2はロール紙プリンタ装置100のブロック図を示したものである。
【0014】
このロール紙プリンタ100は、ユーザから要求された印刷ジョブに対して、プリンタヘッド111、給紙装置、巻き取り機113およびカッター装置を制御して、紙に印刷出力を行う機能を有するものである。
【0015】
ロール紙プリンタ装置100は、後述する機能により構成されている。ホストコンピュータ116からの印刷ジョブを受けとる外部I/F101。印刷処理等の装置全体の動作制御を司るCPU102。印刷処理などの動作のプログラムを格納するROM103。印刷処理時に印刷ジョブなど各種のデータを書込及び読出が行われるRAM104。プリンタ装置内の各モータを制御するモータ駆動制御装置105。プリンタヘッドを制御するヘッド制御装置110。巻き取り機113の動作を制御する巻き取り機制御装置112。プリンタの状態表示およびユーザ入力によるプリンタ動作指示を行うパネル105。印刷ジョブの格納を行うHDD114。そしてこれらはバス115を介して互いにデータ授受するようになされている。
【0016】
また、モータ駆動制御装置106には、ヘッド駆動モータ107、給紙駆動モータ108、カッター駆動モータ109が接続されている。
【0017】
ヘッド駆動モータ107はプリンタヘッド111が接続され、プリンタヘッド111の駆動に用いられる。給紙駆動モータ108はロール紙給紙装置で使用され、カッター駆動モータ109はカッターを駆動することに使用される。
【0018】
ヘッド制御装置110には、プリンタヘッド111が接続され、プリンタヘッド111から吐出されるインク滴の制御を行う。巻き取り機制御装置112には、巻き取り機113が接続され、印刷出力された印刷用紙の長さを検知しながら巻き取る量を制御する。
【0019】
本発明実施例の印刷ジョブの受信について図3を用いて説明を行う。
【0020】
なお図3のフローチャートは1つの印刷ジョブの受信に関するものであり、印刷ジョブの受信はロール紙プリンタ100がオンラインの状態中は常に行われている。
(S101)
ホストコンピュータ116から外部I/F101を介して、ロール紙プリンタ装置100に印刷ジョブが送られる。このときホストコンピュータ116のプリンタドライバにおいて終夜運転モードによる印刷を決めるチェックボックスが配置され、印刷ジョブに対して終夜運転モードによる印刷を行うか決めることができる。印刷ジョブに対して終夜運転モードによる印刷を行う設定にした場合、印刷ジョブの属性データに終夜運転モードによる印刷を行うことを示すデータが付与される。
【0021】
なおここでいう終夜運転モードとはHDD114にスプールされた印刷ジョブを巻き取り機113を使用して連続印刷を行う印刷モードを意味する。従って終夜運転モードは夜だけに限定されたものではないが、深夜に無人の環境で自動運転印刷が行われることを想定している。
【0022】
またプリンタドライバからは印刷ジョブに対して印刷用紙種類を設定することができ、前記印刷用紙種類に適した画像データが作成される。そして印刷ジョブの属性データに印刷用紙種類を示すデータが付与される。
(S102)
印刷ジョブの属性データに終夜運転モードによる印刷を行うことを示すデータが付与されていなければ前記印刷ジョブはロール紙プリンタ装置100のHDD114にスプールされる。
【0023】
印刷ジョブの属性データに終夜運転モードによる印刷を行うことを示すデータが付与されている場合はS103に進む。
(S103、S104)
終夜運転モードとは、ロール紙と巻き取り機113を用いて自動運転によりまとめて印刷を行うものであり、HDD114にスプールされ、終夜運転モードを行う予定の印刷ジョブに印刷用紙種類に相違があるとまとめて印刷を行えずに不都合が生じる。従って終夜運転モードを行う印刷ジョブを送信するユーザーに対して、同じ印刷用紙種類で印刷ジョブを出してもらう必要がある。
【0024】
そこでHDD114に既にスプールされている終夜運転モードによる印刷を行う予定の印刷ジョブに対して、印刷用紙種類に相違がない場合にはS105に進み、相違がある場合には印刷ジョブを送信したホストコンピュータ116に対して次の通知を行う。
【0025】
「終夜運転モードの用紙種類が一致しません。設定を見直してください」
前記の通知を印刷ジョブの送信者に示し、印刷ジョブの印刷用紙種類に対して変更を行わせる。
(S105、S106)
次にロール紙プリンタ装置100に給紙されている印刷用紙種類と終夜運転モードによる印刷を行う予定の印刷用紙種類が違うときがある。前記の印刷用紙種類に相違がある場合、印刷ジョブを送信したホストコンピュータ116に次の通知を行う。
【0026】
「印刷ジョブとプリンタの印刷用紙種類に違いがあります。終夜運転モード開始時にプリンタの印刷用紙種類を変更する必要があります。」
前記の通知を印刷ジョブの送信者に示すことで、終夜運転モード開始時にはロール紙プリンタ装置100の印刷用紙種類の変更が必要なことを認知させる。
(S107)
終夜運転モードや印刷用紙種類の情報に関する属性データが付与された印刷ジョブがロール紙プリンタ装置100のHDD114にスプールされる。
【0027】
本発明実施例の印刷動作について図4を用いて説明を行う。
(S201)
ロール紙プリンタ装置100が終夜運転モードの状態であるかを判別し、終夜運転モードの状態であればS205に進み、終夜運転モードの状態でないつまり通常の印刷モードであればS202に進む。
(S202〜S204)
ロール紙プリンタ装置100が通常の印刷モードの場合について説明を行う。通常の印刷モードでは属性データに終夜運転モードによる印刷を行うことを示すデータが付与されていない印刷ジョブの印刷を行う。印刷が終了した印刷ジョブはHDD114から消去される。印刷を行う印刷ジョブの順番は、HDD114にスプールされた順番に行われる。HDD114にスプールされた印刷ジョブが無くなると印刷ジョブの待ち状態となる。
(S205〜S208)
ロール紙プリンタ装置100が終夜運転モードの場合について説明を行う。ロール紙プリンタ装置100のパネル105から終夜運転モードの開始を入力することで終夜運転モードが開始される。終夜運転モードを行うにはロール紙プリンタ装置100において、HDD114に終夜運転モードによる印刷が指定された印刷ジョブがスプールされており、巻き取り機113がセッティングされていることが必要となる。またロール紙プリンタ装置100に給紙されている印刷用紙種類と終夜運転モードによる印刷を行う予定の印刷用紙種類が同一である必要がある。前記印刷用紙種類が違う場合はロール紙プリンタ装置100のパネル105に次の通知を行う。
【0028】
「印刷ジョブとプリンタの印刷用紙種類に違いがあります。プリンタの印刷用紙種類を変更する必要があります。」
印刷用紙種類の変更が行われ前記印刷用紙種類の不一致がなくなると終夜運転モードが開始される。
【0029】
終夜運転モードでは属性データに終夜運転モードによる印刷を行うことを示すデータが付与された印刷ジョブの印刷を行う。印刷が終了した印刷ジョブはHDD114から消去される。印刷を行う印刷ジョブの順番は、HDD114にスプールされた順番に行われる。そしてHDD114にスプールされた印刷ジョブが無くなると終夜運転モードによる印刷が終了したことをユーザーにパネル105から通知する。ユーザーがパネル105から終夜運転モードの終了を入力するとロール紙プリンタ装置100は通常の印刷モードの状態になる。ロール紙プリンタ装置100が終夜運転モードの状態の時に、終夜運転モードによる印刷を行うことを示す属性データが付与されていない印刷ジョブを受け取るとその印刷ジョブはHDD114にスプールされるが印刷は通常の印刷モードになるまで印刷は行われない。
【0030】
なおロール紙プリンタ装置100が終夜運転モードである状態とはパネル105から終夜運転モードの開始を入力してから、S208において終夜運転モードが終了するまでの期間である。
【0031】
また終夜運転を指定した印刷ジョブを送った以外の者がロール紙プリンタ装置100の印刷用紙を交換してしまい印刷用紙種類が変わる場合がある。この場合には印刷用紙を変更した者に対して、変更前の印刷用紙種類に戻す通知をロール紙プリンタ装置100のパネル105から行う。
【0032】
なおロール紙プリンタ装置100の印刷用紙種類を識別する方法としては、印刷用紙の交換時にロール紙プリンタ装置100のパネル105から印刷用紙種類を入力する方法がある。前記の手段以外にも印刷用紙にメモリや特別なマークを持たせ、ロール紙プリンタ装置100がメモリや特別なマークを読み取ることで印刷用紙種類を識別することでも構わない。
【0033】
このようにホストコンピュータ116のプリンタドライバから印刷出力を急ぐ必要がない印刷ジョブに対して、終夜運転モードによる印刷を示す属性データの付与を行う。そしてロール紙プリンタ装置100を使用頻度が少ない時間帯である夜間等に終夜運転モードに設定してまとめて印刷を行うことで、ユーザーからの操作が簡単なままロール紙プリンタ装置100を効率的に使用ことができる。
【0034】
また終夜運転モードを行う印刷ジョブは同じ印刷用紙種類であることが必要な問題にも、ユーザーに注意を促し、確認を行うことで解決することができる。
【0035】
(産業上の利用可能性)
以上の発明はインクジェット印刷装置に関して説明を行ったがHDDを備えた電子写真等の他の印刷装置への適用も考えられる。
【0036】
また以上の発明では印刷ジョブへの終夜運転モードによる印刷の指定をホストコンピュータ116のプリンタドライバから行っているが、ロール紙プリンタ装置100のパネル105等から印刷ジョブへの終夜運転モードによる印刷の指定を行うことも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のロール紙印刷装置の斜視図。
【図2】本発明の構成を示すブロック図。
【図3】本発明実施例の印刷ジョブの受信を示すフローチャート図。
【図4】本発明実施例の印刷動作を示すフローチャート図。
【符号の説明】
【0038】
100 ロール紙プリンタ装置
101 外部I/F
102 CPU
103 ROM
104 RAM
105 パネル
106 モータ駆動制御装置
107 ヘッド駆動モータ
108 給紙駆動モータ
109 カッター駆動モータ
110 ヘッド制御装置
111 プリンタヘッド
112 巻き取り機制御装置
113 巻き取り機
114 HDD
115 バス
116 ホストコンピュータ
120 印刷出力結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストコンピュータから印刷ジョブを受信し、前記印刷ジョブに基づく印刷をロール紙へ行う印刷装置であって、
ユーザーから指定された複数の印刷ジョブをまとめて印刷する終夜運転モード印刷手段と、前記印刷ジョブの属性データに前記終夜運転モード印刷手段による印刷が指定されている場合に、前記印刷ジョブを印刷装置の記憶部に格納し、前記終夜運転モード印刷手段による印刷時に前記記憶部に格納された印刷ジョブの印刷が行われることを特徴とするロール紙を用いた印刷装置。
【請求項2】
印刷ジョブの属性データに印刷用紙種類を含み、前記印刷ジョブの印刷用紙種類と印刷装置の印刷用紙種類に相違がある場合、印刷ジョブの送信者に警告を行うことを特徴とした請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
印刷ジョブの送信者への警告が、前記終夜運転モード印刷手段の開始時に印刷ジョブと印刷装置の印刷用紙種類を同一にすることであることを特徴とする請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記終夜運転モード印刷手段において印刷が行われる予定であり、なおかつ印刷装置の記憶部に格納された印刷ジョブにおいて、前記印刷ジョブの印刷用紙種類とは違う印刷用紙に交換された場合に、印刷装置の印刷用紙交換を行った者へ警告を行うことを特徴とした請求項1乃至3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
印刷装置の印刷用紙交換を行った者への警告が、印刷終了後、前記印刷用紙交換を行う前に設定された印刷用紙に戻す要求であることを特徴とした請求項4記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−148977(P2009−148977A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328931(P2007−328931)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】