説明

ロール表層欠陥検出装置

【課題】圧延ロールの表層に存在するノイズ源の影響を低減し、圧延時の使用に耐えうるリフトオフを確保する。
【解決手段】本発明のロール表層欠陥検出装置は、励磁信号により圧延ロール3aの表層部に渦電流を発生させる少なくとも1つの励磁コイルと、渦電流により誘起された磁束を検出する少なくとも2つの検出コイルとを有するE形センサ6と、2つの検出コイルによる検出信号の差分を差動増幅して差分信号を出力する差動増幅器と、差分信号を励磁信号により同期検波する検波器とを備え、励磁コイルおよび検出コイルは、圧延ロール3aの回転軸方向に配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板を圧延するための圧延ロールの表層欠陥を検出するロール表層欠陥検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延や冷間圧延において使用される圧延ロールは、圧延時に熱負荷や摩擦負荷が表層にかかる。よって、同一の圧延ロールを繰り返し使用していると、表層に割れや欠けなどの欠陥が生じたりする。このような欠陥が発生した圧延ロールで圧延を行うと、圧延ロールの欠陥が鋼板に転写され、鋼板にも欠陥を生じさせてしまうので、圧延ロールの欠陥は鋼板製造上の大きな問題である。しかも、鋼板に転写された欠陥がその後の圧延工程を経た場合、欠陥が圧延されるため、後の工程にてその欠陥を発見することは困難になってしまう。このような状況を避けるため、圧延ロールは定期的(一定期間毎もしくは一定量圧延毎)にオフライン(ロールショップなど)で研削および研磨などのメンテナンスが行われる。
【0003】
例えば従来の圧延ロールのメンテナンス方法として、特許文献1には、メンテナンス毎に光学式検査装置で表面を探傷する方法が記載されている。特許文献1に記載の技術は、メンテナンス時の研削深さを、光学式の検査装置を利用して決定する方法である。また、特許文献2には、渦流探傷方式の検査装置が記載されている。特許文献2に記載の技術は、渦流探傷信号を複数のフィルタにて解析して2次元表示し、欠陥の種類や大きさを判断する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−208347号公報
【特許文献2】特開昭60−082958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の圧延ロールのメンテナンス方法では、圧延ロールの欠陥を圧延時に監視しているわけではないため、欠陥が発生しても圧延を継続してしまう場合があり、結果、大量に不良品の鋼板を製造してしまう可能性があった。そのような状況を避けるため、従来の圧延ロールのメンテナンス方法では、余裕を持って(まったく欠陥が発生する兆候が無くとも)圧延ロールのメンテナンスをする必要があった。
【0006】
圧延時に圧延ロールの欠陥を検出することができれば、上記問題を解決することができ、適切なタイミングでの圧延ロールのメンテナンスが可能になり、不良品の発生を防ぐだけでなく圧延ロールの延命につながる。しかしながら、圧延ロールの欠陥を圧延時に検出することは容易ではない。なぜならば、圧延ロールの表層にはノイズ源が存在し、欠陥の検出を困難にするからである。検出器を圧延ロールに近接させれば、ノイズ源の影響を低減することもできるが、圧延ロールの振動等の影響を鑑みると、圧延時に使用するためには、検出器のリフトオフを小さくすることができない。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、圧延ロールの表層に存在するノイズ源の影響を低減し、圧延時の使用に耐えうるリフトオフを確保することができるロール表層欠陥検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るロール表層欠陥検出装置は、励磁信号により圧延ロールの表層部に渦電流を発生させる少なくとも1つの励磁コイルと、該渦電流により誘起された磁束を検出する少なくとも2つの検出コイルと、を有する渦流探傷センサと、前記2つの検出コイルによる検出信号の差分を差動増幅して差分信号を出力する差動増幅手段と、前記差分信号を前記励磁信号により同期検波する同期検波手段とを備え、前記励磁コイルおよび前記検出コイルは、前記圧延ロールの回転軸方向に配列されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るロール表層欠陥検出装置によれば、圧延ロールの表層に存在するノイズ源の影響を低減し、圧延時の使用に耐えうるリフトオフを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置を適用する圧延機の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、センサボックスの内部構成の一例を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置のE形センサを拡大して表示した模式図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置の全体構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置による欠陥検出の例を示す画像および検出値である。
【図6】図6は、E形センサの励磁コイルのコアと検出コイルのコアが、圧延ロールの円周方向に配列された場合の欠陥検出の例を示す画像および検出値である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置を用いて検出した検出データ中から欠陥の存在を判定するアルゴリズムの例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の変形実施形態に係るロール表層欠陥検出装置の櫛形センサの構成および機能を示す図である。
【図9】図9は、本発明の変形実施形態に係るロール表層欠陥検出装置のセンサボックスの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置について説明する。
【0012】
〔実施形態の構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置を適用する圧延機1の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、圧延機1の概略構成を示す側面の模式図であり、図1(b)は、圧延機1の概略構成を示す上方からの模式図である。図1に示されるように、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置を適用する圧延機1は、鋼板2を圧延する上下一対の圧延ロール3a,3bと、上下一対の圧延ロール3a,3bをバックアップする上下一対のバックアップロール4a,4bとを備える。図1に示される構成により、圧延機1は、上下一対の圧延ロール3a,3b間に鋼板2を搬送する圧延工程を複数回繰り返して、鋼板2を目的の形状に圧延する。
【0013】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置を適用する圧延機1は、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置のセンサボックス5を鋼板2の上面側の圧延ロール3aに近接して備える。本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置のセンサボックス5は、後述するように内部に渦流探傷センサを備え、圧延ロール3aの欠陥を検出する。なお、図1に示される圧延機1では、鋼板2の上面側の圧延ロール3aのみにセンサボックス5を設けているが、鋼板2の下面側の圧延ロール3bにもセンサボックス5を設ける構成も可能である。
【0014】
図2は、図1に示されたセンサボックス5の内部構成の一例を示す模式図である。図2は、図1に示されたセンサボックス5を上方から眺めた内部構成を図示している。すなわち、図2は、図1(b)に対応したセンサボックス5の内部構成である。
【0015】
図2に示されるように、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置のセンサボックス5は、渦流探傷センサとしてのE形センサ6と、E形センサ6を駆動するリニアステージ7と、距離計8とを内部に備える。図2に示されるように、リニアステージ7は、E形センサ6を圧延ロール3aの幅方向(つまり回転軸方向)に駆動することができるように設けられている。距離計8は、圧延ロール3aとセンサボックス5との距離を測定することができるように設けられており、E形センサ6のリフトオフを監視する。
【0016】
図3は、図2に示された本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置のE形センサ6を拡大して表示した模式図である。図3に示されるように、E形センサ6は、コアが「E」字形をしており、このE字形の中央のコアに励磁コイルAが巻かれ、両端のコアに検出コイルB,B’が巻かれている。励磁コイルAは、励磁信号が通電されることにより発生する交流磁界により、検査対象となる圧延ロール3aの表層部に渦電流を誘起する機能を担う。一方、検出コイルB,B’は、この渦電流によって圧延ロール3aの表層部に発生した磁束による誘起電圧を検出する機能を担う。
【0017】
図2および図3から解るように、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置のE形センサ6は、E字形のコアの脚部が圧延ロール3aの回転軸方向に配列している。すなわち、このE字形のコアの脚部に巻かれている励磁コイルAおよび検出コイルB,B’も圧延ロール3aの回転軸方向に配列している構成である。
【0018】
また、E形センサ6は、脚部の間隔をDとし、リフトオフをLとした場合に、下記条件式を満たすように構成することが好ましい。
D>0.6L
図2および図3から解るように、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置のE形センサ6は、E形センサ6の脚部の間隔(つまり励磁コイルAのコアと両端の検出コイルB,B’のコアとの間隔)が8mmであり、E形センサ6の厚みが5mmであり、リフトオフが7mmであるので、上記条件式を満たしている。
【0019】
次に、図4を参照して本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置の全体構成について説明する。図4は、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置の全体構成を示すブロック図である。
【0020】
図4に示されるように、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9は、センサボックス5と、信号処理部10と、エンコーダ11と、計算機12とを備える。さらに、信号処理部10は、発振器13と差動増幅器14と位相器15と検波器16とを内部に備える。なお、先述のようにセンサボックス5は、圧延機1の圧延ロール3aに近接して配置される必要があるが、信号処理部10、エンコーダ11、および計算機12は、圧延機1の近傍に配置される必要はなく、圧延機1から距離を置いた制御室などに配置される構成とすることも可能である。
【0021】
発振器13は、周波数8kHzの励磁信号を発振する発振器である。発振器13で発振した励磁信号は、励磁信号ケーブルを介してE形センサ6の励磁コイルAに流れ、検査対象となる圧延ロール3aの表層部に渦電流を誘起する。
【0022】
差動増幅器14は、E形センサ6の検出コイルB,B’に接続され、検出コイルBと検出コイルB’とが検出した検出信号の差分を増幅する。差動増幅器14にて差動増幅された検出信号としての差分信号は位相器15を通り、位相器15が位相を調整する。位相器15は、振動等によって生じる信号と欠陥にかかる信号との弁別性を向上させるためのものである。
【0023】
位相器15の出力信号は、検波器16に入力され、発振器13からの励磁信号にて同期検波される。すなわち、検波器16は、位相器15の出力信号と発振器13からの励磁信号とを乗算することによって同期検波をする。
【0024】
検波器16によって検波された検出信号は、A/Dコンバータを介して計算機12へ入力される。計算機12は、検出信号を適切なデジタル信号処理して、検出信号のデータから欠陥を弁別する。
【0025】
一方、計算機12は、センサボックス5およびエンコーダ11からの入力を受ける。センサボックス5からの入力信号は、E形センサ6を駆動するリニアステージ7の位置の情報を取得するためのものであり、エンコーダ11からの入力信号は、圧延ロール3aの回転の情報を取得するためのものである。
【0026】
本実施形態の例では、エンコーダ11は、直径600mmの圧延ロール3aが80rmpの回転速度で回転するときに、圧延ロール3aの表面の円周方向に関して1mmの間隔でサンプリングできるようにパルスの周波数を設定している。一方、センサボックス5内でE形センサ6を駆動するリニアステージ7は、圧延ロール3aの回転に同期して駆動し、圧延ロール3aの1回転につき10mm移動するように設定している。計算機12は、これらリニアステージ7の位置の情報およびエンコーダ11の回転の情報から、圧延ロール3aの表面における幅方向および円周方向の位置情報を復元し、E形センサ6が検出した検出信号と圧延ロール3aの表面における位置とを関連付けることができる。
【0027】
さらに、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9の計算機12は、センサボックス5から距離計8が計測したリフトオフの情報を取得することも可能である。取得したリフトオフの情報は、計算機12により検出信号の出力の補正または欠陥判定の閾値の補正などに用いられる。
【0028】
〔検出例〕
次に、図5および図6を参照して、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9による欠陥検出の例について説明する。図5は、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9による欠陥検出の例を示す画像および検出値である。図6は、比較例として、E形センサ6の励磁コイルAと両端の検出コイルB,B’とが、圧延ロール3aの円周方向に配列された場合の欠陥検出の例を示す画像および検出値である。
【0029】
図5および図6において検出された欠陥は同一の欠陥であり、大きさが2mm×3mmであり深さが0.3mmである。図5および図6における画像は、この欠陥を含む領域として、圧延ロール3aの一周分(約2000mm)×幅18mmの画像データを抜粋して掲載した。図5および図6における検出値のグラフは、画像中破線部分に対応したE形センサ6の検出信号の電圧値のグラフである。
【0030】
図5および図6を比較することにより解るように、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9による欠陥検出の例では、欠陥の存在も明確でありSN比も高いが、比較例では、欠陥の存在も不明瞭でありSN比も低い。これは、圧延ロール3aの材質起因の電磁気的ノイズ源は圧延ロール3aの回転軸方向に長い分布をしているからである。E形センサ6の検出信号は差動増幅器14にて差分が増幅されるので、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9のように、励磁コイルAのコアと両端の検出コイルB,B’のコアが、圧延ロール3aの回転軸方向に配列している場合、この回転軸方向に長い分布をした材質起因の電磁気的ノイズの影響が相殺されて検出される。一方、圧延ロール3aの欠陥は、点状であったり、周方向に割れたりするものが多いので、欠陥に係る検出信号は、相殺されずに検出することが可能である。
【0031】
〔欠陥判定方法〕
ここで、図7を参照しながら、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9に適用される欠陥判定方法の例について説明する。図7は、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9を用いて検出した検出データ中から欠陥の存在を判定するアルゴリズムの例を示すフローチャートである。
【0032】
図7に示されるように、本欠陥判定方法のアルゴリズムは、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9により圧延ロール3aの1周分×幅500mmの検出データを取得することにより始める(ステップS1)。その後、検出データの中から所定の閾値を超えた箇所が有るかを判定する(ステップS2)。ステップS2にて、検出データの中から所定の閾値を超えた箇所が存在しない場合(ステップS2:No)、オンラインでの欠陥検出を継続し、次の圧延ロール3aの1周分×幅500mmの検出データを取得する(ステップS1)。
【0033】
一方、ステップS2にて、検出データの中から所定の閾値を超えた箇所が存在する場合(ステップS2:Yes)、所定の閾値を超えた箇所が単発であるかエリアであるかを判定する(ステップS3)。すなわち、所定の閾値を超えた箇所が一定の面積を有する領域で検出された場合(特にロール回転軸方向に幅をもって検出した場合)、閾値を超えた箇所がエリアであると判定し、ロール回転方向に走査する際に単発的に閾値を超えた箇所がある場合、閾値を超えた箇所が単発であると判定する。
【0034】
ステップS3にて、閾値を超えた箇所がエリアであると判定した場合(ステップS3:エリア)、その箇所に欠陥が存在すると判定し(ステップS4)、オペレータに欠陥の存在を知らせるためにアラームを表示し(ステップS5)、本欠陥判定方法のアルゴリズムの処理を終了する。
【0035】
一方、ステップS3にて、閾値を超えた箇所が単発であると判定した場合(ステップS3:単発)、前回の検出においてもその箇所で閾値を超えたか否かを判定する(ステップS6)。前回の検出においてもその箇所で閾値を超えていた場合(ステップS6:Yes)、この場合も、その箇所に欠陥が存在すると判定し(ステップS4)、オペレータに欠陥の存在を知らせるためにアラームを表示し(ステップS5)、本欠陥判定方法のアルゴリズムの処理を終了する。
【0036】
また、前回の検出においてはその箇所で閾値を超えてない場合(ステップS6:No)、今回の検出においては欠陥であると判定せずに、閾値を超えた箇所を記録し(ステップS7)、再度の欠陥検出を継続し、次の圧延ロール3aの1周分×幅500mmの検出データを取得する(ステップS1)。そして、この再度の欠陥検出においてもその箇所で閾値を超えた場合に、改めて当該箇所を欠陥であると判定するのである(ステップS6:Yes)。
【0037】
以上、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9に適用される欠陥判定方法の例について説明したが、本発明の実施は上記欠陥判定方法の例に限定されず、様々な変更をすることが可能である。例えば、閾値判定の際に、単位面積あたりの平均値を用いて閾値判定を行えば、単発での大きい出力値と、ある程度の面積でのある程度の大きさの出力値と、の両方の場合を一回で欠陥であると判定することができる。また、本発明の実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9は距離計8を有して、リフトオフ変動(微小な振動、ロール磨耗などによるオフセットズレ)を監視しているので、距離計8の検出値により、検出信号または閾値を補正することにより、より高精度な欠陥判定を行うことができる。
【0038】
〔変形実施形態の構成〕
以下、図8および図9を参照しながら、本発明の変形実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9について説明する。図8および図9に示される変形実施形態は、上記説明した実施形態における渦流探傷センサを、E形センサ6の代わりに櫛形状のセンサ(以下、これを櫛形センサと云う)とする構成である。この構成により、本発明の変形実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9は、渦流探傷センサを圧延ロール3aの回転軸方向に走査することをしない構成である。
【0039】
したがって、本発明の変形実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9の構成は、上記に説明したロール表層欠陥検出装置9の構成と重複している部分が多いので、以下では相違する構成のみ説明を行う。
【0040】
図8は、本発明の変形実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9の櫛形センサの構成および機能を示す図である。図8に示されるように、本発明の変形実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9の櫛形センサ17は、櫛形状のコアを有しており、この櫛形状のコアの各々の脚部に巻かれたコイル(コイル1、コイル2、コイル3、・・・)が励磁コイルまたは検出コイルとして機能する。
【0041】
櫛形センサ17のコイル(コイル1、コイル2、コイル3、・・・)は、同一構成とすることができるので、それぞれのコイルを励磁コイルまたは検出コイルとして固定して使用することも、励磁コイルまたは検出コイルとして切り替えて使用することも可能である。
【0042】
図8(a)に示される表は、櫛形センサ17のコイル(コイル1、コイル2、コイル3、・・・)を、励磁コイルまたは検出コイルとして固定して使用する場合の利用方法を示している。本利用方法では、図8(a)に示される表に示されるように、奇数番コイル(コイル1、コイル3、コイル5、・・・)を検出コイルとして使用し、偶数番コイル(コイル2、コイル4、コイル6、・・・)を励磁コイルとして使用する。また、図8(a)に示される表に示されるように、切り替えタイミングR1では、コイル1およびコイル3を検出コイルとして利用し、コイル2を励磁コイルとして利用し、切り替えタイミングR2では、コイル3およびコイル5を検出コイルとして利用し、コイル4を励磁コイルとして利用するというように、切り替えタイミング毎に励磁コイルおよび検出コイルとして機能するコイルの位置が変更する。これにより、櫛形センサ17は、リニアステージ7によりE形センサ6を駆動することの代わりに、脚部の配列方向の走査を行うことができる。
【0043】
図8(b)に示される表は、櫛形センサ17のコイル(コイル1、コイル2、コイル3、・・・)を、励磁コイルまたは検出コイルとして切り替えて使用する場合の利用方法を示している。本利用方法では、図8(b)に示される表に示されるように、切り替えタイミングR1では、コイル1およびコイル3を検出コイルとして利用し、コイル2を励磁コイルとして利用し、切り替えタイミングR2では、コイル2およびコイル4を検出コイルとして利用し、コイル3を励磁コイルとして利用するというように、切り替えタイミング毎に各コイルの励磁コイルおよび検出コイルとしての機能が変更される。この方式によっても、櫛形センサ17は、リニアステージ7によりE形センサ6を駆動することの代わりに、脚部の配列方向の走査を行うことができる。
【0044】
図9は、本発明の変形実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9のセンサボックス5の構成を示す図である。図9に示されるように、本発明の変形実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9のセンサボックス5は、第1の櫛形センサ17aと第2の櫛形センサ17bとを備える。本発明の変形実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9では第1の櫛形センサ17aと第2の櫛形センサ17bとを必要とする理由は、第1の櫛形センサ17aおよび第2の櫛形センサ17bのコアの脚部の真下が不感帯となっているからである。そこで、図9に示されるように、本発明の変形実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9では、第1の櫛形センサ17aと第2の櫛形センサ17bとのコアの脚部が互い違いに配置されるように構成し(いわゆる千鳥配置)、第1の櫛形センサ17aと第2の櫛形センサ17bとの不感帯を互いに補うように構成されている。
【0045】
以上より、本発明の変形実施形態に係るロール表層欠陥検出装置9は、励磁信号により圧延ロール3aの表層部に渦電流を発生させる少なくとも1つの励磁コイルAと、渦電流により誘起された磁束を検出する少なくとも2つの検出コイルB,B’とを有する渦流探傷センサと、2つの検出コイルB,B’による検出信号の差分を差動増幅して差分信号を出力する差動増幅器14と、差分信号を励磁信号により同期検波する検波器16とを備え、励磁コイルAおよび検出コイルB,B’は、圧延ロール3aの回転軸方向に配列されていることので、圧延ロール3aの表層に存在するノイズ源の影響を低減し、圧延時の使用に耐えうるリフトオフを確保することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 圧延機
2 鋼板
3a,3b 圧延ロール
4a,4b バックアップロール
5 センサボックス
6 E形センサ
7 リニアステージ
8 距離計
9 ロール表層欠陥検出装置
10 信号処理部
11 エンコーダ
12 計算機
13 発振器
14 差動増幅器
15 位相器
16 検波器
17 櫛形センサ
17a 第1の櫛形センサ
17b 第2の櫛形センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁信号により圧延ロールの表層部に渦電流を発生させる少なくとも1つの励磁コイルと、該渦電流により誘起された磁束を検出する少なくとも2つの検出コイルと、を有する渦流探傷センサと、
前記2つの検出コイルによる検出信号の差分を差動増幅して差分信号を出力する差動増幅手段と、
前記差分信号を前記励磁信号により同期検波する同期検波手段とを備え、
前記励磁コイルおよび前記検出コイルは、前記圧延ロールの回転軸方向に配列されていることを特徴とするロール表層欠陥検出装置。
【請求項2】
前記渦流探傷センサは、2つの前記検出コイルの間に1つの前記励磁コイルを配置し、E形状のコアにより前記検出コイルと前記励磁コイルとの磁束を結合したE形センサであることを特徴とする請求項1に記載のロール表層欠陥検出装置。
【請求項3】
前記渦流探傷センサは、前記検出コイルと前記励磁コイルと交互に配置し、櫛形状のコアにより前記検出コイルと前記励磁コイルとの磁束を結合した櫛形センサであることを特徴とする請求項1に記載のロール表層欠陥検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−104807(P2013−104807A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249588(P2011−249588)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】