ロール金型の製造方法及びロール金型、並びに光学シート
【課題】円筒表面の凹凸を寸法精度よく容易に作製することができる金型ロールの製造方法、及びその方法を用いた加工対象のシートにバリを発生させず、凹凸を寸法精度よく形成することができる金型ロール、並びにその金型ロールを使用して作製される光学シートを提供する。
【解決手段】内周面に微細な凹凸が形成された円筒形状の原盤の内周面にめっき処理を施し、ついで前記原盤をはずして、外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの円筒形状のめっき部分(金属円筒)30をロール型母材MRの外周に嵌め込みロール金型40とする。
【解決手段】内周面に微細な凹凸が形成された円筒形状の原盤の内周面にめっき処理を施し、ついで前記原盤をはずして、外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの円筒形状のめっき部分(金属円筒)30をロール型母材MRの外周に嵌め込みロール金型40とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムなどの表面加工に使用するロール金型の製造方法、及びロール金型、並びに光学シートに関するものである。とくに、液晶表示装置のバックライトユニットに使用されるプリズムシート、プロジェクションテレビやマイクロフィルムリーダ等の投射スクリーンに使用されるフレネルレンズシート、レンチキュラレンズシート、光拡散シート等の光学シートの製造に使用されるロール金型の製造方法及びロール金型、並びに光学シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒表面に凹凸を有するロール金型は、その凹凸形状を目的とする部材に押出成形などにより転写し機能を発現させるために使用されている。とくに液晶表示装置のバックライトユニットに使用されるプリズムシート、プロジェクションテレビやマイクロフィルムリーダ等の投射スクリーンに使用されるフレネルレンズシート、レンチキュラレンズシート、光拡散シート等の光学シートの用途では、その微細な凹凸形状に所定の光学性能が要求されるため、その製造に使用されるロール金型にもその円筒表面にサブミクロンオーダーの寸法精度で凹凸形状が形成されることが求められている。
【0003】
このような用途で使用されるロール金型の製造方法として、表面に微細な凹凸形状が刻印された雄型を転写して該雄型に対応するフィルム状又は薄板状の雌型を作製し、該雌型をロール型母材の円筒表面に取り付けることによりロール金型を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−25431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記方法ではロール型母材へフィルムを取り付けてロール金型とするためにロール金型の円筒表面に継ぎ目が生じ、押出成形時にこの金型継ぎ目部分によりシート上にバリが発生するという問題があった。とくに、光が当たるとバリの部分が目立つために光学シートとして不適であり、大面積化が困難であった。
【0006】
また、上記方法では雌型となるフィルムを人手によりロール型母材への取り付けを行うために雌型表面の凹凸に触れて損傷させる可能性があり、さらに該フィルムは薄いためにしわが入りやすく、目標の寸法精度でのロール金型の作製は難しかった。とくにロール金型が大きくなるほど、その作製が困難であった。
【0007】
また、ロール型母材への雌型フィルムの固定は容易ではなく、成形加工時に該フィルムがロール型母材上でスリップすることがあり、加工対象のシートの凹凸形状に悪影響を及ぼすことがあった。
【0008】
また、上記方法では雄型をマスター原盤として雌型フィルムを繰り返し作製することが可能であるが、雌型は硬質であるために雄型のダメージが大きいために、1つの雄型で雌型を繰り返し作製できる回数は少なく限度があった。
【0009】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、円筒表面の凹凸を寸法精度よく容易に作製することができる金型ロールの製造方法、及びその方法を用いた加工対象のシートにバリを発生させず、凹凸を寸法精度よく形成することができる金型ロールを提供し、さらにその金型ロールを使用して作製される光学シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために提供する本発明は、内周面に微細な凹凸が形成された円筒形状の原盤の内周面にめっき処理を施し、ついで前記原盤をはずして、外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの円筒形状のめっき部分をロール型母材の外周に嵌め込むことを特徴とするロール金型の製造方法である(請求項1)。
【0011】
ここで、前記原盤は、基板表面に微細な凹凸を形成した後、該基板表面の凹凸形状を、可撓性を有するフィルムの表面に転写させ、ついで前記フィルムを、凹凸が転写された面を内側に向けて円筒形状に撓ませて保持したものであることが好ましい。
【0012】
また、前記めっき処理として、最初に無電解めっき処理を施し、ついで電気めっき処理を施すとよい。
さらに、前記めっき部分のロール型母材への嵌めこみは、焼き嵌めにより行うことが好ましい。
【0013】
前記課題を解決するために提供する本発明は、ロール型母材と、該ロール型母材の外周に嵌め合わされた外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの金属円筒とからなることを特徴とするロール金型である(請求項5)。
【0014】
ここで、前記金属円筒は、内周面に微細な凹凸が形成された円筒形状の原盤の該内周面にめっき処理を施してなるめっき部分であることが好ましい。
【0015】
また、前記金属円筒は、基板表面に微細な凹凸を形成した後、該基板表面の凹凸形状を、可撓性を有するフィルムの表面に転写させ、ついで前記フィルムを、凹凸が転写された面を内側に向けて円筒形状に撓ませて保持した状態で、該フィルムの円筒内周面にめっき処理を施し、ついで前記フィルムをはずすことにより得られるめっき部分であることが好適である。
【0016】
前記課題を解決するために提供する本発明は、請求項5〜7のいずれか一に記載のロール金型で表面が加工されてなることを特徴とする光学シートである(請求項8)。
【発明の効果】
【0017】
本発明のロール金型の製造方法によれば、円筒形状の原盤の内周面にめっき処理して得られるめっき部分をロール金型の外周部分とすることにより、シームレスの表面を有するロール金型が容易に得られる。また、基板からフィルムへの凹凸の転写は平面上で行われるために、寸法精度よく凹凸形状が写し取れるので、最終的にロール金型上に凹凸を目標通り形成することができる。さらに、可撓性を有するフィルムを使用することにより、所望の円筒形状に撓ませることができるので原盤の作製が容易である。また、微細な凹凸を形成した基板を硬質のマスター原盤とし、該マスター原盤から比較的軟質のフィルムへの凹凸の転写が行われて原盤(マザー原盤)が作製されるようにすると、マスター原盤のダメージは少なく、1つのマスター原盤から多くのマザー原盤を繰り返し作製することが可能である。また、円筒形状のめっき部分をロール型母材へ焼き嵌めすることにより、両者は固着した状態となる。その際、めっき部分の外周部分に触れることなく装着が可能であり、外周部分の凹凸を損傷することがない。さらに、めっき部分をある程度厚くしておくことで取り扱いが容易となり、しわが入ることなく確実に嵌め込みできる。
本発明のロール金型によれば、金型表面がシームレスであるために、シートを加工した際にバリの発生がなく、大面積のシートを作製できる。また、金属円筒をロール型母材へ焼き嵌めすると、両者は固着した状態となるため、ロール金型使用時に金属円筒はスリップすることはなく、シート上に凹凸を寸法精度よく形成することが可能となる。
本発明の光学シートによれば、金型ロールの加工面にバリの発生がないため、光学的に均一な面が得られ、大面積の光学シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るロール金型の製造方法について、その作製手順に従って説明する。
(S1)基板表面を加工して微細な凹凸を形成して、マスター原盤10とする(図1)。マスター原盤10の縦幅方向は最終的にロール金型の幅方向となり、横幅方向はロール金型の円周方向となる。
【0019】
基板は、凹凸を形成する加工ができ、該凹凸部分が型としてある程度の強度をもつものであれば特に限定されない。例えば、アルミニウム、真鍮、ステンレス、銅、無酸素銅、ニッケル等の金属板;ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂等の樹脂板などが挙げられる。
【0020】
凹凸形状は、ロール金型の加工対象であるシートの用途、要求特性に応じて設定する。例えば、プリズムシートを作製するためのものであれば、マスター原盤10の横幅方向の断面形状を三角形状の溝あるいは突起が連続して配列されたもの(図1(b))とし、縦幅方向にこの断面形状の三角柱がマスター原盤10上に規則的に配置されたものとする(図1(a))。あるいは、マスター原盤10の横幅方向の断面形状を半球形状のピットとし、縦幅方向にこの断面形状の溝が原盤10上に規則的に配置されたものとしてもよい。また、光拡散シートを作製するためのものであれば、微細な凹凸がランダムに配列されたものとする。
【0021】
この凹凸を形成する加工方法は、上記凹凸形状に応じて適切な方法を選択すればよい。例えば、精密加工機を用いて基材表面を切削加工、あるいはUV、電子線又はレーザー光を用いたフォトリソグラフィの手法を用いて凹凸形状を作製する方法、サンドブラストにより研削剤を吹き付けて基板表面を研削して凹凸形状を作製する方法等が挙げられる。
【0022】
(S2)つぎに、可撓性のあるフィルム20をマスター原盤10の凹凸形成面に重ねて(図2)、所定の処理によりマスター原盤10表面の凹凸形状を、フィルム20の表面に転写させる(図3)。その後、マスター原盤10から表面に凹凸形状が転写されたフィルム20を剥して、マザー原盤21とする(図4)。
【0023】
具体的には、マスター原盤10の凹凸面上にアクリル系UV樹脂、あるいは光硬化型のPSA(Pressure Sensitive Adhesive)などのエネルギーを吸収して硬化するタイプの樹脂を介してフィルム20を重ね合わせ、加圧しながらUV照射することにより前記樹脂を硬化させてマスター原盤10の凹凸を転写する層とし、同時にフィルム20に接着させるとよい。マスター原盤10とフィルム20との間に挟む樹脂として、熱硬化型のものでもよい。この場合、加圧しながら加熱して硬化させる。
【0024】
なお、フィルム20は後述の工程において撓ませて円筒形状とできる程度に可撓性のあるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適である。また、フィルム20の厚さは、薄すぎると後述のめっき処理時にロール型冶具22表面の粗さからの悪影響を受け、厚すぎると円筒形状に撓ませることが困難となることから、例えばPETフィルムの場合、0.2〜0.5mm程度が好ましい。
【0025】
(S3)つぎに、マザー原盤21を、凹凸が転写された面を内側に向けて撓ませて(図5)、円筒形状に保持する(図6)。マザー原盤21を円筒形状に保持するためには、例えば図6に示すように、円筒形状に撓ませたマザー原盤21をその外周からロール型治具22で押さえるとよい。このとき、マザー原盤21は広がろうとする反発力を有しているため、ロール型治具22の内周面に張り付くような状態となり固定される。これにより、マザー原盤21の内周面の真円度並びに寸法精度が向上する。また、マザー原盤21の横幅方向の両端部は接合部分e1で突き合わされた状態であるが、これらの端部の凹凸面(内周面)を同じ高さに揃え、接合部分e1として段差が生じないようにすることが好ましい。
【0026】
ロール型治具22は、その内周面でマザー原盤21を円筒形状で保持する治具である。そのため、その内周面の真円度や寸法精度が確保されるのであれば、複数のパーツからなり、組み立て分解可能なものであるほうが好ましい。
【0027】
(S4)つぎに、円筒形状のマザー原盤21の内周面にめっき処理を施す。具体的には、めっき処理として、最初に無電解めっき処理を施し、ついで電気めっき処理を施すことが好ましい。めっき材料は、マザー原盤21内周面の凹凸形状を転写することができ、後述の工程でめっき部分単体での取り扱いが可能な程度の強度をもち、さらにロール金型として使用する際の加工に耐えられる程度の耐磨耗性を有していることが必要である。例えば、NiやCrが挙げられる。また、めっき処理前に必要に応じて、マザー原盤21内周面について脱脂などの清浄化処理を行うとよい。
【0028】
図7に、無電解めっき処理の状態を示す。
図6に示すロール型治具22に装着されたマザー原盤21を、無電解めっき浴B1の無電解めっき液m1中に浸漬させ、無電解めっき処理を行い、マザー原盤21の内周面上に無電解めっき層30aを形成する。このとき、マザー原盤21及びロール型治具22を回転させながらめっき処理を行うと、無電解めっき液m1が攪拌され反応面に対して絶えず新鮮な無電解めっき液m1が供給されるため好ましい。無電解めっき層30aの膜厚は、少なくともマザー原盤21内周面の凹凸を埋める程度の膜厚であることが好ましい。
【0029】
図8に、電気めっき処理の状態を示す。
無電解めっき処理が終了したマザー原盤21及びロール型治具22を、電気めっき浴B2の電気めっき液m2中に浸漬させ、マザー原盤21の内周面の無電解めっき層30aをカソード電極とし、マザー原盤21の円筒中央にアノード電極を配置して電気めっき処理を行い、マザー原盤21の内周面の無電解めっき層30a上に電気めっき層30bを形成する。電気めっき層30bの膜厚は、少なくともめっき部分単体での取り扱いが可能な程度の強度をもつような膜厚であることが好ましい。
【0030】
(S5)めっき処理終了後に、ロール型治具22及びマザー原盤21をはずして、めっき部分(無電解めっき層30a及び電気めっき層30b)からなるサン原盤30を得る(図9)。
サン原盤30は、外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの金属円筒であり(図10)、その凹凸形状は、MMS(マスター・マザー・サン)プロセスで転写されてきた凹凸の形状である。例えば、プリズムシート加工用であれば円筒外周方向の断面形状は三角形状の溝あるいは突起が連続して配列されたもの(図10(b))であり、円筒長手方向にこの断面形状の三角柱が規則的に配置されたものとなる(図10(a))。
【0031】
なお、サン原盤30において、マザー原盤21の接合部分e1に対応する部分e2にバリが発生することがあるが、このバリは凸形状であるために研削などにより削除して容易に修正することができる。
【0032】
(S6)最後に、サン原盤30をその内周部分をロール型母材MRの外周に嵌め込むことによりロール金型40を完成する(図11)。すなわち、ロール金型40は、円柱形状のロール型母材MRと、該ロール型母材MRの外周に嵌め合わされた外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの金属円筒のサン原盤40とからなることを特徴とする。
【0033】
このとき、サン原盤30のロール型母材MRへの嵌めこみは、焼き嵌めにより行うことが好ましい。すなわち、サン原盤30を例えば約200℃に加熱して、膨張したときにロール型母材MRには嵌め込む。ついでサン原盤30が常温に戻ると収縮するのでロール型母材MRに固く嵌まり込む。
【0034】
図12にロール金型40の使用例を示す。上記ロール金型40の外周にサポートロール41,42を使用してシートS1を押し当ててシートS1の表面上に連続的にロール金型40の凹凸形状を転写する押出成形加工により、所望の凹凸形状のシートS2を得ることができる。
このとき、本発明のロール金型40によれば、金型表面がシームレスであるために、シートS1を加工した際にバリの発生がなく、大面積のシートを作製することができる。また、サン原盤30、ロール型母材MR両者は固着状態であるため、押出成形加工時にサン原盤30はスリップすることはなく、シート上に凹凸を寸法精度よく形成することが可能となる。
【実施例】
【0035】
本発明の実施例を以下に示す。なお、本実施例は例示であり、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0036】
(実施例)
本発明のロール金型を次の手順で作製した。
(S11)以下の条件で基板を加工してマスター原盤10を作製した。
・基板:Niめっきが施され、その表面が鏡面に仕上げられたステンレス基板(厚さ20mm、横幅1.6m、縦幅1m)
・凹凸加工機:先端部分の頂角が90度の二等辺三角形であり、加工方向に対して逃げ角を設けたV字溝加工用のダイヤモンドバイトを用いた精密切削加工機
・加工方法:基板の鏡面に対して、ダイヤモンドバイトが深さ30μmまで彫るように設定し、横平均ピッチ50μm、平均深さ30μmのV字溝を縦幅方向にスライド加工により隙間なく形成した。
【0037】
(S12)つぎに、前記マスター原盤10上に、50μmに光硬化型のPSAシートを乗せ、次いで厚さ0.2mmのPETフィルム(フィルム20)を乗せて上から加圧してPSAシートをマスター原盤10の凹凸に沿うように変形させ、ついでUV照射してPSAシートを硬化させることによりマスター原盤10の凹凸が転写された層とし、同時にフィルム20に接着させた(図3)。このとき、フィルム20の横幅、縦幅は、マスター原盤10と同寸法とし、PSAシートの横幅、縦幅はマスター原盤10の各寸法より5mm小さいものを用いた。その後、マスター原盤10からフィルム20及びPSAシートを剥し、この出来上がったシートについて横幅を1.57mとなるように切断したものをマザー原盤21とした(図4)。
【0038】
(S13)つぎに、マザー原盤21を、凹凸が転写された面を内側に向けて撓ませて(図5)、横幅方向の両端部は接合部分e1で突き合わされた状態で円筒形状とし、塩化ビニルからなる厚さ5mmのロール型冶具22(内径φ500mm×長さ1000mm)の内周面に挿入した(図6)。
【0039】
(S14)つぎに、ロール型冶具22に装着されたマザー原盤21の内周面(凹凸面)に無電解Niめっき処理のための前処理を行った。詳しくは、純水リンスの後、表面処理液による脱脂処理10sec後、純水リンスを行い、次いで純水、触媒付与液を塗布10sec後、純水リンスを十分に行い、次いで触媒活性化液を塗布20sec後、純水で十分に洗浄を行った。
【0040】
(無電解めっき)
前処理されたロール型冶具22に装着されたマザー原盤21を、塩化ニッケル、コハク酸ナトリウム、ホスフィン酸ナトリウムなどを含むNi−Pの無電解めっき液m1を満たした無電解めっき浴B1に5分間浸漬させた(図7)。このとき、該無電解めっき液m1は、pH7.1、液温50℃に管理し、該マザー原盤21はロール型冶具22と共に回転するようにし、攪拌により反応面に対して絶えず新しいめっき液が供給されるようにしてめっきを行った。この時のめっき層30aの膜厚は、100nmとした。
【0041】
(電気めっき)
ついで、pH4.0、液温50℃に管理されたスルファミン酸ニッケル、界面活性剤を含む電気めっき液m2を満たしたNiめっきB2に、ロール型冶具22に装着されたマザー原盤21を浸漬させカソード電極につないだ。一方、Ni玉を詰めたφ300mm×1mの円筒かごをアノード電極Eとし、該マザー原盤21の凹凸面から一定距離となるよう冶具を用いて配置した。ついでロール型冶具22とともにマザー原盤21を回転させながら、循環ポンプによりめっき液m2を撹拌し、剥がれなどが起きないように電流レベルを徐々に上げながら通電しマザー原盤21内面のめっき層30a上にめっきを行った(図8)。この時のめっき層30bの膜厚は300uμmとした。
【0042】
(S15)ついで、めっき処理を施したロール型冶具22及びマザー原盤21を電気めっき液m2より引き上げ、十分に純水で洗浄し、ロール型治具22及びマザー原盤21をはずして、めっき部分(無電解めっき層30a及び電気めっき層30b)からなるサン原盤30を得た(図9)。このサン原盤30は、外周面に凹凸が転写されたシームレスな金属円筒である。
【0043】
(S16)最後に、サン原盤30を加熱しながらその内周部分をロール型母材MRの外周に嵌め込み、ついで冷却することにより装着してロール金型40を完成した(図11)。
【0044】
図12に示すシート押出成形加工機に作製したロール金型40を用い、透明の光学用途のシートS1について押出成形を行い、ロール金型40外周面の凹凸を表面に転写させた光学シートS2を作製した。
【0045】
(比較例)
比較例としてのロール金型を次の手順で作製した。
(S21)実施例と同じ条件で基板を加工してマスター原盤10を作製した。
【0046】
(S22)ついで、マスター原盤10の凹凸面を過マンガンカリウムで表面酸化させた。その後、pH4.0、液温50℃に管理されたスルファミン酸ニッケル、硝酸、界面活性剤からなるめっき液で満たされたNiめっき浴に、該マスター原盤10を浸漬させカソード電極につないだ。一方、Ni板電極をアノード電極とし、該マスター原盤10の凹凸面から一定距離となるよう冶具を用いて配置した。ついで、循環ポンプによりめっき液を撹拌しながら、剥がれなどが起きないように電流レベルを徐々に上げながら通電しマスター原盤10の凹凸面上にめっき処理を施して、めっき層部分を凹凸が転写されたマザー原盤として得た。なお、この時のめっき層の膜厚は200μmとした。
【0047】
(S23)つぎに、得られたマザー原盤を、その凹凸面を外側に向けて円筒形状のロール型母材の外周面に巻きつけ、両者をエポキシ樹脂を介して接着して、比較用のロール金型とした。得られたロール金型を用いて実施例と同様のシートの押出成形の加工を行った。
【0048】
以上の結果、実施例のロール金型で作製した光学シートでは、加工面にバリの発生がなく、加工面とは反対面(裏面)から光を当てて加工面(おもて面)側からその光を目視観察しても光学シート上のどの箇所においても異常は認められず、大面積の光学シートとして使用可能であることが確認された。
これに対して比較例のロール金型で作製した光学シートでは、マザー原盤の継ぎ目が光学シートの加工面に凸形状のバリとして発生しており、裏面から光を当てておもて面から目視観察すると前記バリの部分が目立ち、まわりの部分とは光の放射状態が異なることが認められた。すなわち、その部分を含めた大面積の光学シートとしては使用できないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(1)である。
【図2】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(2)である。
【図3】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(3)である。
【図4】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(4)である。
【図5】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(5)である。
【図6】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(6)である。
【図7】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(7)である。
【図8】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(8)である。
【図9】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(9)である。
【図10】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(10)である。
【図11】本発明に係るロール金型の構成を示す概略図である。
【図12】本発明に係るロール金型の使用例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0050】
10・・・マスター原盤(基板)、20・・・フィルム、21・・・マザー原盤、22・・・ロール型治具、30・・・金属円筒(サン原盤)、30a・・・無電解めっき層、30b・・・電気めっき層、40・・・ロール金型、41,42・・・サポートロール、B1・・・無電解めっき浴、B2・・・電気めっき浴、E・・・電極、e1・・・接合部分、e2・・・e1対応部分、m1…無電解めっき液、m2・・・電気めっき液、MR・・・ロール型母材、S1・・・シート、S2・・・光学シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムなどの表面加工に使用するロール金型の製造方法、及びロール金型、並びに光学シートに関するものである。とくに、液晶表示装置のバックライトユニットに使用されるプリズムシート、プロジェクションテレビやマイクロフィルムリーダ等の投射スクリーンに使用されるフレネルレンズシート、レンチキュラレンズシート、光拡散シート等の光学シートの製造に使用されるロール金型の製造方法及びロール金型、並びに光学シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒表面に凹凸を有するロール金型は、その凹凸形状を目的とする部材に押出成形などにより転写し機能を発現させるために使用されている。とくに液晶表示装置のバックライトユニットに使用されるプリズムシート、プロジェクションテレビやマイクロフィルムリーダ等の投射スクリーンに使用されるフレネルレンズシート、レンチキュラレンズシート、光拡散シート等の光学シートの用途では、その微細な凹凸形状に所定の光学性能が要求されるため、その製造に使用されるロール金型にもその円筒表面にサブミクロンオーダーの寸法精度で凹凸形状が形成されることが求められている。
【0003】
このような用途で使用されるロール金型の製造方法として、表面に微細な凹凸形状が刻印された雄型を転写して該雄型に対応するフィルム状又は薄板状の雌型を作製し、該雌型をロール型母材の円筒表面に取り付けることによりロール金型を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−25431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記方法ではロール型母材へフィルムを取り付けてロール金型とするためにロール金型の円筒表面に継ぎ目が生じ、押出成形時にこの金型継ぎ目部分によりシート上にバリが発生するという問題があった。とくに、光が当たるとバリの部分が目立つために光学シートとして不適であり、大面積化が困難であった。
【0006】
また、上記方法では雌型となるフィルムを人手によりロール型母材への取り付けを行うために雌型表面の凹凸に触れて損傷させる可能性があり、さらに該フィルムは薄いためにしわが入りやすく、目標の寸法精度でのロール金型の作製は難しかった。とくにロール金型が大きくなるほど、その作製が困難であった。
【0007】
また、ロール型母材への雌型フィルムの固定は容易ではなく、成形加工時に該フィルムがロール型母材上でスリップすることがあり、加工対象のシートの凹凸形状に悪影響を及ぼすことがあった。
【0008】
また、上記方法では雄型をマスター原盤として雌型フィルムを繰り返し作製することが可能であるが、雌型は硬質であるために雄型のダメージが大きいために、1つの雄型で雌型を繰り返し作製できる回数は少なく限度があった。
【0009】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、円筒表面の凹凸を寸法精度よく容易に作製することができる金型ロールの製造方法、及びその方法を用いた加工対象のシートにバリを発生させず、凹凸を寸法精度よく形成することができる金型ロールを提供し、さらにその金型ロールを使用して作製される光学シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために提供する本発明は、内周面に微細な凹凸が形成された円筒形状の原盤の内周面にめっき処理を施し、ついで前記原盤をはずして、外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの円筒形状のめっき部分をロール型母材の外周に嵌め込むことを特徴とするロール金型の製造方法である(請求項1)。
【0011】
ここで、前記原盤は、基板表面に微細な凹凸を形成した後、該基板表面の凹凸形状を、可撓性を有するフィルムの表面に転写させ、ついで前記フィルムを、凹凸が転写された面を内側に向けて円筒形状に撓ませて保持したものであることが好ましい。
【0012】
また、前記めっき処理として、最初に無電解めっき処理を施し、ついで電気めっき処理を施すとよい。
さらに、前記めっき部分のロール型母材への嵌めこみは、焼き嵌めにより行うことが好ましい。
【0013】
前記課題を解決するために提供する本発明は、ロール型母材と、該ロール型母材の外周に嵌め合わされた外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの金属円筒とからなることを特徴とするロール金型である(請求項5)。
【0014】
ここで、前記金属円筒は、内周面に微細な凹凸が形成された円筒形状の原盤の該内周面にめっき処理を施してなるめっき部分であることが好ましい。
【0015】
また、前記金属円筒は、基板表面に微細な凹凸を形成した後、該基板表面の凹凸形状を、可撓性を有するフィルムの表面に転写させ、ついで前記フィルムを、凹凸が転写された面を内側に向けて円筒形状に撓ませて保持した状態で、該フィルムの円筒内周面にめっき処理を施し、ついで前記フィルムをはずすことにより得られるめっき部分であることが好適である。
【0016】
前記課題を解決するために提供する本発明は、請求項5〜7のいずれか一に記載のロール金型で表面が加工されてなることを特徴とする光学シートである(請求項8)。
【発明の効果】
【0017】
本発明のロール金型の製造方法によれば、円筒形状の原盤の内周面にめっき処理して得られるめっき部分をロール金型の外周部分とすることにより、シームレスの表面を有するロール金型が容易に得られる。また、基板からフィルムへの凹凸の転写は平面上で行われるために、寸法精度よく凹凸形状が写し取れるので、最終的にロール金型上に凹凸を目標通り形成することができる。さらに、可撓性を有するフィルムを使用することにより、所望の円筒形状に撓ませることができるので原盤の作製が容易である。また、微細な凹凸を形成した基板を硬質のマスター原盤とし、該マスター原盤から比較的軟質のフィルムへの凹凸の転写が行われて原盤(マザー原盤)が作製されるようにすると、マスター原盤のダメージは少なく、1つのマスター原盤から多くのマザー原盤を繰り返し作製することが可能である。また、円筒形状のめっき部分をロール型母材へ焼き嵌めすることにより、両者は固着した状態となる。その際、めっき部分の外周部分に触れることなく装着が可能であり、外周部分の凹凸を損傷することがない。さらに、めっき部分をある程度厚くしておくことで取り扱いが容易となり、しわが入ることなく確実に嵌め込みできる。
本発明のロール金型によれば、金型表面がシームレスであるために、シートを加工した際にバリの発生がなく、大面積のシートを作製できる。また、金属円筒をロール型母材へ焼き嵌めすると、両者は固着した状態となるため、ロール金型使用時に金属円筒はスリップすることはなく、シート上に凹凸を寸法精度よく形成することが可能となる。
本発明の光学シートによれば、金型ロールの加工面にバリの発生がないため、光学的に均一な面が得られ、大面積の光学シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るロール金型の製造方法について、その作製手順に従って説明する。
(S1)基板表面を加工して微細な凹凸を形成して、マスター原盤10とする(図1)。マスター原盤10の縦幅方向は最終的にロール金型の幅方向となり、横幅方向はロール金型の円周方向となる。
【0019】
基板は、凹凸を形成する加工ができ、該凹凸部分が型としてある程度の強度をもつものであれば特に限定されない。例えば、アルミニウム、真鍮、ステンレス、銅、無酸素銅、ニッケル等の金属板;ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂等の樹脂板などが挙げられる。
【0020】
凹凸形状は、ロール金型の加工対象であるシートの用途、要求特性に応じて設定する。例えば、プリズムシートを作製するためのものであれば、マスター原盤10の横幅方向の断面形状を三角形状の溝あるいは突起が連続して配列されたもの(図1(b))とし、縦幅方向にこの断面形状の三角柱がマスター原盤10上に規則的に配置されたものとする(図1(a))。あるいは、マスター原盤10の横幅方向の断面形状を半球形状のピットとし、縦幅方向にこの断面形状の溝が原盤10上に規則的に配置されたものとしてもよい。また、光拡散シートを作製するためのものであれば、微細な凹凸がランダムに配列されたものとする。
【0021】
この凹凸を形成する加工方法は、上記凹凸形状に応じて適切な方法を選択すればよい。例えば、精密加工機を用いて基材表面を切削加工、あるいはUV、電子線又はレーザー光を用いたフォトリソグラフィの手法を用いて凹凸形状を作製する方法、サンドブラストにより研削剤を吹き付けて基板表面を研削して凹凸形状を作製する方法等が挙げられる。
【0022】
(S2)つぎに、可撓性のあるフィルム20をマスター原盤10の凹凸形成面に重ねて(図2)、所定の処理によりマスター原盤10表面の凹凸形状を、フィルム20の表面に転写させる(図3)。その後、マスター原盤10から表面に凹凸形状が転写されたフィルム20を剥して、マザー原盤21とする(図4)。
【0023】
具体的には、マスター原盤10の凹凸面上にアクリル系UV樹脂、あるいは光硬化型のPSA(Pressure Sensitive Adhesive)などのエネルギーを吸収して硬化するタイプの樹脂を介してフィルム20を重ね合わせ、加圧しながらUV照射することにより前記樹脂を硬化させてマスター原盤10の凹凸を転写する層とし、同時にフィルム20に接着させるとよい。マスター原盤10とフィルム20との間に挟む樹脂として、熱硬化型のものでもよい。この場合、加圧しながら加熱して硬化させる。
【0024】
なお、フィルム20は後述の工程において撓ませて円筒形状とできる程度に可撓性のあるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適である。また、フィルム20の厚さは、薄すぎると後述のめっき処理時にロール型冶具22表面の粗さからの悪影響を受け、厚すぎると円筒形状に撓ませることが困難となることから、例えばPETフィルムの場合、0.2〜0.5mm程度が好ましい。
【0025】
(S3)つぎに、マザー原盤21を、凹凸が転写された面を内側に向けて撓ませて(図5)、円筒形状に保持する(図6)。マザー原盤21を円筒形状に保持するためには、例えば図6に示すように、円筒形状に撓ませたマザー原盤21をその外周からロール型治具22で押さえるとよい。このとき、マザー原盤21は広がろうとする反発力を有しているため、ロール型治具22の内周面に張り付くような状態となり固定される。これにより、マザー原盤21の内周面の真円度並びに寸法精度が向上する。また、マザー原盤21の横幅方向の両端部は接合部分e1で突き合わされた状態であるが、これらの端部の凹凸面(内周面)を同じ高さに揃え、接合部分e1として段差が生じないようにすることが好ましい。
【0026】
ロール型治具22は、その内周面でマザー原盤21を円筒形状で保持する治具である。そのため、その内周面の真円度や寸法精度が確保されるのであれば、複数のパーツからなり、組み立て分解可能なものであるほうが好ましい。
【0027】
(S4)つぎに、円筒形状のマザー原盤21の内周面にめっき処理を施す。具体的には、めっき処理として、最初に無電解めっき処理を施し、ついで電気めっき処理を施すことが好ましい。めっき材料は、マザー原盤21内周面の凹凸形状を転写することができ、後述の工程でめっき部分単体での取り扱いが可能な程度の強度をもち、さらにロール金型として使用する際の加工に耐えられる程度の耐磨耗性を有していることが必要である。例えば、NiやCrが挙げられる。また、めっき処理前に必要に応じて、マザー原盤21内周面について脱脂などの清浄化処理を行うとよい。
【0028】
図7に、無電解めっき処理の状態を示す。
図6に示すロール型治具22に装着されたマザー原盤21を、無電解めっき浴B1の無電解めっき液m1中に浸漬させ、無電解めっき処理を行い、マザー原盤21の内周面上に無電解めっき層30aを形成する。このとき、マザー原盤21及びロール型治具22を回転させながらめっき処理を行うと、無電解めっき液m1が攪拌され反応面に対して絶えず新鮮な無電解めっき液m1が供給されるため好ましい。無電解めっき層30aの膜厚は、少なくともマザー原盤21内周面の凹凸を埋める程度の膜厚であることが好ましい。
【0029】
図8に、電気めっき処理の状態を示す。
無電解めっき処理が終了したマザー原盤21及びロール型治具22を、電気めっき浴B2の電気めっき液m2中に浸漬させ、マザー原盤21の内周面の無電解めっき層30aをカソード電極とし、マザー原盤21の円筒中央にアノード電極を配置して電気めっき処理を行い、マザー原盤21の内周面の無電解めっき層30a上に電気めっき層30bを形成する。電気めっき層30bの膜厚は、少なくともめっき部分単体での取り扱いが可能な程度の強度をもつような膜厚であることが好ましい。
【0030】
(S5)めっき処理終了後に、ロール型治具22及びマザー原盤21をはずして、めっき部分(無電解めっき層30a及び電気めっき層30b)からなるサン原盤30を得る(図9)。
サン原盤30は、外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの金属円筒であり(図10)、その凹凸形状は、MMS(マスター・マザー・サン)プロセスで転写されてきた凹凸の形状である。例えば、プリズムシート加工用であれば円筒外周方向の断面形状は三角形状の溝あるいは突起が連続して配列されたもの(図10(b))であり、円筒長手方向にこの断面形状の三角柱が規則的に配置されたものとなる(図10(a))。
【0031】
なお、サン原盤30において、マザー原盤21の接合部分e1に対応する部分e2にバリが発生することがあるが、このバリは凸形状であるために研削などにより削除して容易に修正することができる。
【0032】
(S6)最後に、サン原盤30をその内周部分をロール型母材MRの外周に嵌め込むことによりロール金型40を完成する(図11)。すなわち、ロール金型40は、円柱形状のロール型母材MRと、該ロール型母材MRの外周に嵌め合わされた外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの金属円筒のサン原盤40とからなることを特徴とする。
【0033】
このとき、サン原盤30のロール型母材MRへの嵌めこみは、焼き嵌めにより行うことが好ましい。すなわち、サン原盤30を例えば約200℃に加熱して、膨張したときにロール型母材MRには嵌め込む。ついでサン原盤30が常温に戻ると収縮するのでロール型母材MRに固く嵌まり込む。
【0034】
図12にロール金型40の使用例を示す。上記ロール金型40の外周にサポートロール41,42を使用してシートS1を押し当ててシートS1の表面上に連続的にロール金型40の凹凸形状を転写する押出成形加工により、所望の凹凸形状のシートS2を得ることができる。
このとき、本発明のロール金型40によれば、金型表面がシームレスであるために、シートS1を加工した際にバリの発生がなく、大面積のシートを作製することができる。また、サン原盤30、ロール型母材MR両者は固着状態であるため、押出成形加工時にサン原盤30はスリップすることはなく、シート上に凹凸を寸法精度よく形成することが可能となる。
【実施例】
【0035】
本発明の実施例を以下に示す。なお、本実施例は例示であり、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0036】
(実施例)
本発明のロール金型を次の手順で作製した。
(S11)以下の条件で基板を加工してマスター原盤10を作製した。
・基板:Niめっきが施され、その表面が鏡面に仕上げられたステンレス基板(厚さ20mm、横幅1.6m、縦幅1m)
・凹凸加工機:先端部分の頂角が90度の二等辺三角形であり、加工方向に対して逃げ角を設けたV字溝加工用のダイヤモンドバイトを用いた精密切削加工機
・加工方法:基板の鏡面に対して、ダイヤモンドバイトが深さ30μmまで彫るように設定し、横平均ピッチ50μm、平均深さ30μmのV字溝を縦幅方向にスライド加工により隙間なく形成した。
【0037】
(S12)つぎに、前記マスター原盤10上に、50μmに光硬化型のPSAシートを乗せ、次いで厚さ0.2mmのPETフィルム(フィルム20)を乗せて上から加圧してPSAシートをマスター原盤10の凹凸に沿うように変形させ、ついでUV照射してPSAシートを硬化させることによりマスター原盤10の凹凸が転写された層とし、同時にフィルム20に接着させた(図3)。このとき、フィルム20の横幅、縦幅は、マスター原盤10と同寸法とし、PSAシートの横幅、縦幅はマスター原盤10の各寸法より5mm小さいものを用いた。その後、マスター原盤10からフィルム20及びPSAシートを剥し、この出来上がったシートについて横幅を1.57mとなるように切断したものをマザー原盤21とした(図4)。
【0038】
(S13)つぎに、マザー原盤21を、凹凸が転写された面を内側に向けて撓ませて(図5)、横幅方向の両端部は接合部分e1で突き合わされた状態で円筒形状とし、塩化ビニルからなる厚さ5mmのロール型冶具22(内径φ500mm×長さ1000mm)の内周面に挿入した(図6)。
【0039】
(S14)つぎに、ロール型冶具22に装着されたマザー原盤21の内周面(凹凸面)に無電解Niめっき処理のための前処理を行った。詳しくは、純水リンスの後、表面処理液による脱脂処理10sec後、純水リンスを行い、次いで純水、触媒付与液を塗布10sec後、純水リンスを十分に行い、次いで触媒活性化液を塗布20sec後、純水で十分に洗浄を行った。
【0040】
(無電解めっき)
前処理されたロール型冶具22に装着されたマザー原盤21を、塩化ニッケル、コハク酸ナトリウム、ホスフィン酸ナトリウムなどを含むNi−Pの無電解めっき液m1を満たした無電解めっき浴B1に5分間浸漬させた(図7)。このとき、該無電解めっき液m1は、pH7.1、液温50℃に管理し、該マザー原盤21はロール型冶具22と共に回転するようにし、攪拌により反応面に対して絶えず新しいめっき液が供給されるようにしてめっきを行った。この時のめっき層30aの膜厚は、100nmとした。
【0041】
(電気めっき)
ついで、pH4.0、液温50℃に管理されたスルファミン酸ニッケル、界面活性剤を含む電気めっき液m2を満たしたNiめっきB2に、ロール型冶具22に装着されたマザー原盤21を浸漬させカソード電極につないだ。一方、Ni玉を詰めたφ300mm×1mの円筒かごをアノード電極Eとし、該マザー原盤21の凹凸面から一定距離となるよう冶具を用いて配置した。ついでロール型冶具22とともにマザー原盤21を回転させながら、循環ポンプによりめっき液m2を撹拌し、剥がれなどが起きないように電流レベルを徐々に上げながら通電しマザー原盤21内面のめっき層30a上にめっきを行った(図8)。この時のめっき層30bの膜厚は300uμmとした。
【0042】
(S15)ついで、めっき処理を施したロール型冶具22及びマザー原盤21を電気めっき液m2より引き上げ、十分に純水で洗浄し、ロール型治具22及びマザー原盤21をはずして、めっき部分(無電解めっき層30a及び電気めっき層30b)からなるサン原盤30を得た(図9)。このサン原盤30は、外周面に凹凸が転写されたシームレスな金属円筒である。
【0043】
(S16)最後に、サン原盤30を加熱しながらその内周部分をロール型母材MRの外周に嵌め込み、ついで冷却することにより装着してロール金型40を完成した(図11)。
【0044】
図12に示すシート押出成形加工機に作製したロール金型40を用い、透明の光学用途のシートS1について押出成形を行い、ロール金型40外周面の凹凸を表面に転写させた光学シートS2を作製した。
【0045】
(比較例)
比較例としてのロール金型を次の手順で作製した。
(S21)実施例と同じ条件で基板を加工してマスター原盤10を作製した。
【0046】
(S22)ついで、マスター原盤10の凹凸面を過マンガンカリウムで表面酸化させた。その後、pH4.0、液温50℃に管理されたスルファミン酸ニッケル、硝酸、界面活性剤からなるめっき液で満たされたNiめっき浴に、該マスター原盤10を浸漬させカソード電極につないだ。一方、Ni板電極をアノード電極とし、該マスター原盤10の凹凸面から一定距離となるよう冶具を用いて配置した。ついで、循環ポンプによりめっき液を撹拌しながら、剥がれなどが起きないように電流レベルを徐々に上げながら通電しマスター原盤10の凹凸面上にめっき処理を施して、めっき層部分を凹凸が転写されたマザー原盤として得た。なお、この時のめっき層の膜厚は200μmとした。
【0047】
(S23)つぎに、得られたマザー原盤を、その凹凸面を外側に向けて円筒形状のロール型母材の外周面に巻きつけ、両者をエポキシ樹脂を介して接着して、比較用のロール金型とした。得られたロール金型を用いて実施例と同様のシートの押出成形の加工を行った。
【0048】
以上の結果、実施例のロール金型で作製した光学シートでは、加工面にバリの発生がなく、加工面とは反対面(裏面)から光を当てて加工面(おもて面)側からその光を目視観察しても光学シート上のどの箇所においても異常は認められず、大面積の光学シートとして使用可能であることが確認された。
これに対して比較例のロール金型で作製した光学シートでは、マザー原盤の継ぎ目が光学シートの加工面に凸形状のバリとして発生しており、裏面から光を当てておもて面から目視観察すると前記バリの部分が目立ち、まわりの部分とは光の放射状態が異なることが認められた。すなわち、その部分を含めた大面積の光学シートとしては使用できないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(1)である。
【図2】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(2)である。
【図3】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(3)である。
【図4】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(4)である。
【図5】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(5)である。
【図6】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(6)である。
【図7】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(7)である。
【図8】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(8)である。
【図9】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(9)である。
【図10】本発明に係るロール金型の製造方法における、ロール金型作製手順の説明図(10)である。
【図11】本発明に係るロール金型の構成を示す概略図である。
【図12】本発明に係るロール金型の使用例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0050】
10・・・マスター原盤(基板)、20・・・フィルム、21・・・マザー原盤、22・・・ロール型治具、30・・・金属円筒(サン原盤)、30a・・・無電解めっき層、30b・・・電気めっき層、40・・・ロール金型、41,42・・・サポートロール、B1・・・無電解めっき浴、B2・・・電気めっき浴、E・・・電極、e1・・・接合部分、e2・・・e1対応部分、m1…無電解めっき液、m2・・・電気めっき液、MR・・・ロール型母材、S1・・・シート、S2・・・光学シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に微細な凹凸が形成された円筒形状の原盤の内周面にめっき処理を施し、ついで前記原盤をはずして、外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの円筒形状のめっき部分をロール型母材の外周に嵌め込むことを特徴とするロール金型の製造方法。
【請求項2】
前記原盤は、基板表面に微細な凹凸を形成した後、該基板表面の凹凸形状を、可撓性を有するフィルムの表面に転写させ、ついで前記フィルムを、凹凸が転写された面を内側に向けて円筒形状に撓ませて保持したものであることを特徴とする請求項1に記載のロール金型の製造方法。
【請求項3】
前記めっき処理として、最初に無電解めっき処理を施し、ついで電気めっき処理を施すことを特徴とする請求項1に記載のロール金型の製造方法。
【請求項4】
前記めっき部分のロール型母材への嵌め込みは、焼き嵌めにより行うことを特徴とする請求項1に記載のロール金型の製造方法。
【請求項5】
ロール型母材と、該ロール型母材の外周に嵌め合わされた外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの金属円筒とからなることを特徴とするロール金型。
【請求項6】
前記金属円筒は、内周面に微細な凹凸が形成された円筒形状の原盤の該内周面にめっき処理を施してなるめっき部分であることを特徴とする請求項5に記載のロール金型。
【請求項7】
前記金属円筒は、基板表面に微細な凹凸を形成した後、該基板表面の凹凸形状を、可撓性を有するフィルムの表面に転写させ、ついで前記フィルムを、凹凸が転写された面を内側に向けて円筒形状に撓ませて保持した状態で、該フィルムの円筒内周面にめっき処理を施し、ついで前記フィルムをはずすことにより得られるめっき部分であることを特徴とする請求項5に記載のロール金型。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一に記載のロール金型で表面が加工されてなることを特徴とする光学シート。
【請求項1】
内周面に微細な凹凸が形成された円筒形状の原盤の内周面にめっき処理を施し、ついで前記原盤をはずして、外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの円筒形状のめっき部分をロール型母材の外周に嵌め込むことを特徴とするロール金型の製造方法。
【請求項2】
前記原盤は、基板表面に微細な凹凸を形成した後、該基板表面の凹凸形状を、可撓性を有するフィルムの表面に転写させ、ついで前記フィルムを、凹凸が転写された面を内側に向けて円筒形状に撓ませて保持したものであることを特徴とする請求項1に記載のロール金型の製造方法。
【請求項3】
前記めっき処理として、最初に無電解めっき処理を施し、ついで電気めっき処理を施すことを特徴とする請求項1に記載のロール金型の製造方法。
【請求項4】
前記めっき部分のロール型母材への嵌め込みは、焼き嵌めにより行うことを特徴とする請求項1に記載のロール金型の製造方法。
【請求項5】
ロール型母材と、該ロール型母材の外周に嵌め合わされた外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの金属円筒とからなることを特徴とするロール金型。
【請求項6】
前記金属円筒は、内周面に微細な凹凸が形成された円筒形状の原盤の該内周面にめっき処理を施してなるめっき部分であることを特徴とする請求項5に記載のロール金型。
【請求項7】
前記金属円筒は、基板表面に微細な凹凸を形成した後、該基板表面の凹凸形状を、可撓性を有するフィルムの表面に転写させ、ついで前記フィルムを、凹凸が転写された面を内側に向けて円筒形状に撓ませて保持した状態で、該フィルムの円筒内周面にめっき処理を施し、ついで前記フィルムをはずすことにより得られるめっき部分であることを特徴とする請求項5に記載のロール金型。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一に記載のロール金型で表面が加工されてなることを特徴とする光学シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−123393(P2006−123393A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315755(P2004−315755)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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