説明

ロール金型の製造方法及びロール金型

【課題】円筒表面の凹凸を寸法精度よく容易に作製することができるロール金型の製造方法、及びその方法を用いた、凹凸を寸法精度よく形成することができるロール金型を提供する。
【解決手段】内周面に微細な凹凸が形成された円筒形状の原盤の内周面に、原盤を構成する材質より熱膨張係数の異なる材質のメッキ処理を行い、メッキの外周表面に微細な凹凸を施す工程と、加温または冷却することで原盤を前記メッキから取り外し、シームレスの円筒形状のメッキ層を得る工程とを有するロール金型の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムなどの表面加工に使用するロール金型の製造方法、及びロール金型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内周面に微細な凹凸が形成された円筒形状の原盤の内周面にめっき処理を施し、ついで前記原盤をはずして、外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの円筒形状のめっき部分(金属円筒)をロール型母材MRの外周に嵌め込むロール金型が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−123393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記方法では、マザー原盤を外してサン原盤を得るときに、マザー原盤を切り開いてサン原盤を取り出すため、マザー原盤の再利用ができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のロール金型の製造方法は、内周面に微細な凹凸が形成された円筒形状の原盤の内周面に、原盤を構成する材質と熱膨張係数の異なる材質のメッキ処理を行い、メッキの外周表面に微細な凹凸を施す工程と、加温または冷却することで前記原盤を前記メッキから取り外し、シームレスの円筒形状のメッキ層を得る工程と、を有する。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のロール金型は、ロール金型の製造方法により製造された、外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの金属円筒のロール金型である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のロール金型の製造方法によれば、マザー原盤の再利用が可能になる。
【0008】
本発明のロール金型によれば、金型表面がシームレスなので、大面積のシートを作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1のファーザー原盤を示す図
【図2】実施の形態1のファーザー原盤の外側に金属メッキが施された状態を示す図
【図3】実施の形態1のマザー原盤を示す図
【図4】実施の形態1のマザー原盤に金属メッキが施された状態を示す図
【図5】実施の形態1のサン原盤を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態のファーザー原盤を示す図である。図1(a)は、ファーザー原盤の概観図であり、図1(b)は、図1(a)の断面図である。ファーザー原盤11は、円筒形状である。円筒形状の外側には溝12が形成されている。ファーザー原盤11はシリコンで形成されている。
【0012】
なお、ファーザー原盤11は内部が空洞の円筒形状ではなく、内部が空洞でない円柱形状であってもよい。
【0013】
さらに、ファーザー原盤11はシリコンではなく、金属等で形成されていてもよい。
【0014】
ファーザー原盤11の表面にフォトレジストを塗布し、電子線又はレーザーを用いたフォトリソグラフィ手法によって1μm以下の溝12を形成する。
【0015】
図2は、ファーザー原盤11の外側に金属メッキ21が施された状態を示す図である。ファーザー原盤11の溝12の表面部に無電解メッキ方式によって、金属メッキ21の金属層を10〜100μmの均一な厚みで形成する。
【0016】
メッキする金属メッキ21は、ファーザー原盤11からの剥離のしやすさを考慮すると、図1の(a)のファーザー原盤11で使用する金属材料と比較し2.0×10-6/K以上の熱膨張係数が乖離した金属が望ましい。
【0017】
金属メッキ21を施したファーザー原盤11に加温による温度ショックを与えて、2種類の材料熱膨張係数の差を利用し、ファーザー原盤11を抜き取る。抜き取った後の金属メッキ21の金属層がマザー原盤30となる。
【0018】
図3は、マザー原盤を示す図である。図3(a)は、マザー原盤の概観図であり、図3(b)は、図3(a)の断面図である。
【0019】
マザー原盤30は円筒形状であり、ファーザー原盤11の凹凸が内側に転写されている。
【0020】
図4は、マザー原盤30の内側に金属メッキ41が施された状態を示す図である。
【0021】
マザー原盤30の円筒形状の溝表面部に無電解メッキ方式によって、金属メッキ41の金属層を10〜100μm形成する。
【0022】
金属メッキ層の選択については、シームレスロール金型として使用する際の加工に耐えられる強度を満足していることが必要である事と、マザー原盤30からの金属メッキ41の金属層の剥離のしやすさを考慮すると、マザー原盤30で使用する金属材料と比較して、2.0×10-6/K以上の熱膨張係数が乖離した金属が望ましい。
【0023】
金属メッキ41の金属層を施したマザー原盤30に、冷却による温度ショックを与えて2種類の材料熱膨張係数の差を利用し、マザー原盤30を抜き取る事によって、マザー原盤30の溝31が転写されているシームレス化されたサン原盤を作製する。
【0024】
図5はサン原盤を示す図である。図5(a)は、サン原盤の概観図であり、図5(b)は、図5(a)の断面図である。マザー原盤30に施された金属メッキ41の金属層を外した円筒形状のサン原盤50を示す。
【0025】
サン原盤50はシームレスな円筒形状であり、マザー原盤30の凹凸の溝51が外側に転写されている。
【0026】
ファーザー原盤11、サン原盤50は、ニッケルまたはクロムメッキを用いることが好ましい。
【0027】
マザー原盤30は、銅を用いることが好ましい。
【0028】
従来ではマザー原盤を抜き取る際に、マザー原盤を2分割してサン原盤から剥離して取り出していたが、この方式では、熱膨張の差分を利用した剥離を行うので、マザー原盤を2分割しなくてもよく、マザー原盤を再利用する事が可能となり、1つのマザー原盤から複数のサン原盤を作製する事が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、フィルムなどの表面加工に使用するロール金型の製造方法、及びロール金型に関する。
【符号の説明】
【0030】
11 ファーザー原盤
12 溝
21 金属メッキ
30 マザー原盤
31 溝
41 金属メッキ
50 サン原盤
51 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に微細な凹凸が形成された円筒形状の原盤の内周面に、原盤を構成する材質と熱膨張係数の異なる材質のメッキ処理を行い、メッキの外周表面に微細な凹凸を施す工程と、
加温または冷却することで前記原盤を前記メッキから取り外し、シームレスの円筒形状のメッキ層を得る工程と、を有するロール金型の製造方法。
【請求項2】
前記メッキは、前記原盤より熱膨張係数が小さい材質であり、
前記メッキ層を得る工程は、加温によりメッキ層を得ることを特徴とする請求項1記載のロール金型の製造方法。
【請求項3】
前記メッキはニッケルメッキであり、前記原盤はニッケルの熱膨張係数より大きい材質である、請求項1のロール金型の製造方法。
【請求項4】
前記メッキは、前記原盤より熱膨張係数が大きい材質であり、
前記メッキ層を得る工程は、冷却によりメッキ層を得ることを特徴とする請求項1記載のロール金型の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項のロール金型の製造方法により製造された、外周表面に微細な凹凸を有するシームレスの金属円筒のロール金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−35264(P2013−35264A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175807(P2011−175807)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】