説明

ワイパブレード

【課題】ワイパブレードの水引き現象の発生を防止しつつウインドウォッシャ液を噴射したときのスプラッシュの発生を抑制することである。
【解決手段】ワイパブレード14をブレードラバー21とブレードラバー21を覆った状態で保持するラバーホルダ22とにより構成し、ラバーホルダ22の天壁23aに車両走行時におけるワイパブレード14の浮き上がりを防止するためのフィン部35を設ける。ラバーホルダ22の天壁23aにワイパブレード14の背面側の負圧発生を抑制して水引き現象を抑制するための通風孔41を設け、ラバーホルダ22の通風孔41に対してフィン部35とは反対側にウインドウォッシャ液が通風孔41から侵入してウインドシールドガラスに向けてスプラッシュ状態で排出されることを防止するための水避け壁42を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のワイパ装置に用いられるワイパブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、ウインドシールドガラスに付着した雨水等の付着物を払拭するためにワイパ装置が設けられている。ワイパ装置は車体に回動自在に支持されたワイパ軸に固定されるワイパアームを有しており、このワイパアームの先端にはワイパブレードが取り付けられている。ワイパ軸はリンク機構を介してワイパモータに連結されており、ワイパモータによりワイパ軸が揺動駆動されると、ワイパアームとともにワイパブレードがウインドシールドガラス上に設定された下反転位置と上反転位置との間の払拭範囲を揺動して、ガラス面が払拭される。
【0003】
このようなワイパ装置に用いられるワイパブレードとしては、ブレードラバーを保持するラバーホルダを天壁と一対の側壁とを備えた断面略コの字のカバー状に形成し、ブレードラバーの一部をラバーホルダにより覆うとともにラバーホルダの長手方向両端部に設けた保持爪をブレードラバーに係合させてブレードラバーをラバーホルダに保持させるようにした所謂2点保持式のものが知られている。
【0004】
2点保持式のワイパブレードでは、ラバーホルダの天壁にその長手方向に沿ってフィン部を設け、車両走行時には、このフィン部により走行風を受けてワイパブレードの浮き上がりを防止するようにしている。しかしながら、ラバーホルダの天壁にフィン部を設ける構造では、走行風がフィン部に沿って上方へ流されることによりワイパブレードの背面側つまり揺動方向後方側に負圧が発生し、この負圧によりワイパブレードが水引き現象を生じて運転者等の視界が妨げられるおそれがある。つまり、上反転位置においてワイパブレードにより払拭範囲の外側に掃き出された雨水等が、下反転位置に向けて移動するワイパブレードの背面側に生じた負圧により再度払拭領域内に引き込まれ、その引き込まれた雨水等により視界が妨げられることになる。
【0005】
そこで、例えば特許文献1〜3に記載されるワイパブレードでは、ラバーホルダのフィン部や天壁に通風孔を設け、この通風孔によりラバーホルダの外面側を流れる走行風の一部をフィン部を介さずに車両後方側に導いて、ワイパブレードの背面側に発生する負圧を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−058701号公報
【特許文献2】特開2006−290220号公報
【特許文献3】特開2000−190818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献に示されるようにラバーホルダに通風孔を設けた構造では、ウインドシールドガラスの汚れを取り除くためにノズルからウインドウォッシャ液を噴射した状態でワイパブレードを払拭動作させると、通風孔に吹きかけられたウォッシャ液が当該通風孔からワイパブレードの背面側に向けてスプラッシュ状態で排出され、視界を不良にするおそれがある。このスプラッシュは車両の低速走行時よりも高速走行時(80km/h以上)に顕著に発生するので、視界確保のための対策が重要である。
【0008】
本発明の目的は、ワイパブレードの水引き現象の発生を防止しつつウインドウォッシャ液を噴射したときのスプラッシュの発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のワイパブレードは、ワイパ軸に固定されたワイパアームの先端に取り付けられ、ウインドシールドガラス上に設定された下反転位置と上反転位置との間の払拭範囲を払拭するワイパブレードであって、前記ウインドシールドガラスに接するブレードラバーと、天壁と一対の側壁とを備えた断面略コの字のカバー状に形成され、前記ブレードラバーを覆った状態で保持するラバーホルダと、前記天壁に該天壁の長手方向に沿って設けられ、走行風を受けて前記ラバーホルダに前記ウインドシールドガラスに向けた押し付け力を付与するフィン部と、前記天壁に設けられ、前記ラバーホルダの外面側を流れる走行風の一部を前記ラバーホルダの内部に導く通風孔と、前記ラバーホルダの外面の前記通風孔に対して前記フィン部とは反対側に設けられる水避け壁とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のワイパブレードは、前記通風孔を前記ワイパブレードの長手方向に沿って延びる長孔に形成するとともに、前記水避け壁を前記通風孔の長手方向に対して傾斜させて設けたことを特徴とする。
【0011】
本発明のワイパブレードは、前記水避け壁を前記ワイパ軸側となる一端部側から他端部側に向けて徐々に前記通風孔に近づく方向に傾斜させるとともに、前記水避け壁の他端部と前記フィン部とを連結する連結壁を前記通風孔の長手方向端部に沿って設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明のワイパブレードは、前記水避け壁の前記ブレードラバーの長手方向に沿う長手方向寸法を、前記通風孔の長手方向寸法以上に設定したことを特徴とする。
【0013】
本発明のワイパブレードは、前記水避け壁の前記ワイパ軸側の一端部の高さを該端部に向けて徐々に低くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ラバーホルダに設けた通風孔により走行風の一部をラバーホルダの内部を介してワイパブレードの背面側から排出させることができるので、ワイパブレードの背面側の負圧の発生を抑制して、ワイパブレードの上反転位置における水引き現象を防止することができる。また、ラバーホルダの通風孔の前方側に水避け壁を設けるようにしたので、ワイパ作動時にウインドウォッシャ液が噴射されても、水避け壁によりウインドウォッシャ液の通風孔への侵入を抑制して、ウインドウォッシャ液が通風孔を介してウインドシールドガラスにスプラッシュ状態で付着することを防止することができる。これにより、ウインドシールドガラスを通しての運転者の前方視認性を高めることができる。
【0015】
本発明によれば、水避け壁をワイパ軸側となる一端部側から他端部側に向けて徐々に水避け孔に近づく方向に傾斜させるとともに水避け壁の他端部を連結壁によりフィン部に連結させるようにしたので、ワイパブレードが噴射されたウインドウォッシャ液に当たる位置にあるときには水避け壁により通風孔へのウインドウォッシャ液の侵入を防止し、ワイパブレードが上反転位置付近にあるときには水避け壁により走行風を効率よく通風孔に導くことができる。これにより、ウインドウォッシャ液が通風孔を介してスプラッシュ状態でウインドシールドガラスに付着することを防止しつつ、ワイパブレードが上反転位置付近にあるときにおける走行風の通風孔への流入速度を高め、ワイパブレードの背面側への負圧の発生を効果的に抑制して水引き現象を効果的に低減させることができる。
【0016】
本発明によれば、水避け壁のブレードラバーの長手方向に沿う長手方向寸法を、通風孔の長手方向寸法以上に設定するようにしたので、ワイパブレードがウインドウォッシャ液に当たる位置にあるときには水避け壁により通風孔へのウインドウォッシャ液の侵入を効果的に防止することができ、また、ワイパブレードが上反転位置付近にあるときには水避け壁により走行風を通風孔に効果的に導くことができる。
【0017】
本発明によれば、水避け壁のワイパ軸側の一端部の高さを該端部に向けて徐々に低くするようにしたので、このワイパブレードの美観を高めるとともに水避け壁の当該端部における乱流の発生を抑制して、ワイパブレードが上反転位置付近にあるときにおける通風孔への走行風の流入速度をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ワイパ装置が設けられた車両の一部を示す正面図である。
【図2】図1に示すワイパ装置に用いられた本発明の一実施の形態であるワイパブレードの斜視図である。
【図3】図2におけるA−A線に沿う断面図である。
【図4】(a)、(b)はそれぞれラバーホルダの保持部の構造を示す説明図である。
【図5】図2に示すワイパブレードの通風孔周りの拡大図である。
【図6】ワイパブレードが上反転位置付近にあるときの通風孔周りの走行風の流れを示す説明図である。
【図7】図6の縦断面図である。
【図8】図6に示す場合における通風孔を流れる走行風の上下方向流速を示す特性線図である。
【図9】ワイパブレードがウインドウォッシャ液の噴射範囲にあるときの通風孔周りの走行風の流れを示す説明図である。
【図10】図9の縦断面図である。
【図11】図9に示す場合における通風孔を流れる走行風の上下方向流速を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1に示す車両11は乗用車等の自動車であり、この車両11に設けられたワイパ装置12はワイパアーム13とワイパブレード14とを備えている。
【0021】
車両11のウインドシールドガラス(フロントガラス)15の下方の車両側部側にはワイパ軸(ピボット軸)16が回動自在に設けられており、ワイパアーム13はその基端部においてワイパ軸16の先端に固定されている。ワイパ軸16はリンク機構(不図示)を介して車両11に搭載された図示しないワイパモータに連結されており、ワイパモータが作動すると、ワイパアーム13はワイパ軸16とともにワイパモータに駆動されて所定の角度範囲で揺動する。ワイパブレード14はワイパアーム13の先端に取り付けられており、ワイパモータが作動すると、ワイパアーム13とともにワイパ軸16を中心として揺動する。ワイパブレード14の揺動範囲はウインドシールドガラス15上に設定された下反転位置(図1に実線で示すワイパブレードの位置)P1と上反転位置P2との間に設定されており、つまりワイパブレード14は下反転位置P1と上反転位置P2との間の払拭範囲Sを揺動する。これにより、ウインドシールドガラス15の払拭範囲Sがワイパブレード14により払拭される。
【0022】
なお、図示する場合では、下反転位置P1はウインドシールドガラス15の下辺部分に設定され、上反転位置P2はウインドシールドガラス15の側辺部分に設定されており、払拭範囲Sは下反転位置P1と上反転位置P2との間の約90°の範囲とされている。
【0023】
ワイパ装置12はウインドシールドガラス15の下方にノズル17を備えており、このノズル17からウインドシールドガラス15の中央部分に向けてウインドウォッシャ液(図1中に破線で示す)を噴射できるようになっている。
【0024】
図2、図3に示すように、本発明の一実施の形態であるワイパブレード14はブレードラバー21とラバーホルダ22とを有している。
【0025】
ブレードラバー21はゴム材により形成されており、図3に示すように、断面矩形のヘッド部21a、ウインドシールドガラス15に接するリップ部21b及びヘッド部21aとリップ部21bとを連ねるネック部21cを有する長手方向に断面一様な棒状となっている。
【0026】
一方、ラバーホルダ22はプライマリレバー23と一対のセカンダリレバー24,25とを備えており、それぞれのセカンダリレバー24,25がプライマリレバー23の長手方向の各端部に連結される構成となっている。プライマリレバー23の長手方向寸法はブレードラバー21の長手方向寸法の半分程度とされており、セカンダリレバー24,25の長手方向寸法はプライマリレバー23のさらに半分程度とされている。
【0027】
プライマリレバー23の長手方向中央部には取付部26が一体に設けられており、この取付部26においてプライマリレバー23つまりワイパブレード14はワイパアーム13の先端に取り付けられるようになっている。
【0028】
図3に示すように、プライマリレバー23は天壁23aと一対の側壁23b,23cとを備えており、これらが樹脂材料により一体に形成された構成となっている。天壁23aはブレードラバー21の長手方向に沿って延びる板状に形成され、ブレードラバー21のヘッド部21aの上面に対向するように配置されている。一対の側壁23b,23cは、それぞれ天壁23aの払拭方向に向く両側部に一体に連ねて設けられており、ブレードラバー21のヘッド部21aの払拭方向を向く両側部に対向するように配置されている。このように、プライマリレバー23は、ブレードラバー21の長手方向に沿って延びるとともにブレードラバー21のヘッド部21aを覆う断面略コの字のカバー状に形成されている。
【0029】
詳細は図示しないが、一対のセカンダリレバー24,25もプライマリレバー23と同様に天壁と一対の側壁とを備えた断面略コの字のカバー状に形成されており、それぞれブレードラバー21のプライマリレバー23から長手方向に突出した部分におけるヘッド部21aを覆っている。
【0030】
図4(a)、(b)に示すように、プライマリレバー23の長手方向の両端部には、それぞれ保持部31,32が設けられている。保持部31,32は、それぞれ側壁23b,23cの内面から互いに対向する方向に突出する一対の保持爪(図4中には一方のみを示す)31a,32aを備えている。これらの保持爪31a,32aはブレードラバー21の両側部(ヘッド部21aとネック部21cとの間)に設けられた保持溝21dに係合され、これによりブレードラバー21はプライマリレバー23つまりラバーホルダ22に2点保持されるようになっている。
【0031】
図4(a)に示すように、一方の保持部31においては、保持爪31aはブレードラバー21の保持溝21dに設けられた一対のストッパ33a,33bの間に配置されてブレードラバー21に対してその長手方向への移動が規制されている。一方、図4(b)に示すように、他方の保持部32においては保持溝21dにはストッパは設けられず、保持爪32aはブレードラバー21の保持溝21dに沿って長手方向へ移動自在となっている。
【0032】
図3、図4に示すように、ブレードラバー21のヘッド部21aの両側部にはそれぞれ装着溝21eが長手方向に沿って延びて形成されており、各装着溝21eにはそれぞれバーティブラ(板ばね)34が装着されている。バーティブラ34は鋼板等の板材により形成され、ウインドシールドガラス15に垂直な方向に弾性変形自在となっている。また、バーティブラ34は自然状態ではウインドシールドガラス15の側に向けて湾曲しており、バーティブラ34が装着されたブレードラバー21も自然状態ではリップ部21bが内側となるようにウインドシールドガラス15の側に向けて湾曲している。
【0033】
ブレードラバー21がウインドシールドガラス15に設置され、ワイパアーム13からの押し付け力がプライマリレバー23を介してブレードラバー21に加えられると、ブレードラバー21はバーティブラ34をウインドシールドガラス15のガラス面に沿う形状に弾性変形させながらガラス面に沿うように湾曲する。これにより、ワイパアーム13の押し付け力がバーティブラ34により長手方向に分散されてブレードラバー21長手方向全体がウインドシールドガラス15に均一な圧力で接触する。
【0034】
なお、セカンダリレバー24,25はそれぞれプライマリレバー23に対してウインドシールドガラス15に接近離反する方向に回動自在に連結され、これにより、ブレードラバー21の変形に追従できるようになっている。また、プライマリレバー23の一方の保持部32の保持爪32aは保持溝21dに沿って移動自在に係合するので、ブレードラバー21の弾性変形がラバーホルダ22の保持部31,32により阻害されることがない。
【0035】
車両11の走行時におけるワイパブレード14のウインドシールドガラス15からの浮き上がりを防止するために、ラバーホルダ22にはフィン部35が設けられている。
【0036】
フィン部35はラバーホルダ22の天壁23aに一体に設けられ、プライマリレバー23から各セカンダリレバー24,25の先端にまで延びている。つまり、フィン部35はラバーホルダ22(天壁23a)の長手方向全体に亘ってラバーホルダ22(天壁23a)の長手方向に沿って延びて設けられている。また、フィン部35は、ワイパブレード14が下反転位置P1にあるときに天壁23aの中央部に対して車両後方側(走行風の風下側)となる一方の側壁23bの側に偏って配置され、その背面部分は当該側壁23bに連ねられている。さらに、フィン部35の車両前方側を向く部分は車両前方側から後方側に向けて徐々に高さが高く形成されている。これにより、車両11の走行時には、車両前方側から流れてくる走行風をフィン部35により受け、ラバーホルダ22にウインドシールドガラス15に向けた押し付け力つまりダウンフォースを付与することができる。そして、押し付け力が付与されることにより、車両走行時におけるワイパブレード14の払拭性を高めることができる。
【0037】
このワイパブレード14では、車両走行時にフィン部35がワイパブレード14の背面側(車両後方側)に生じる負圧を抑制して、ワイパブレード14が上反転位置P2付近において生じる水引き現象を防止するために、ラバーホルダ22に通風孔41を設けるようにしている。この通風孔41は、ラバーホルダ22の外面側を当該外面に沿って流れる走行風の一部を、ラバーホルダ22のブレードラバー21を収容する内部に導くとともに、当該内部を介してワイパブレード14の背面側に案内し、ワイパブレード14の背面側に発生する負圧を抑制するものである。
【0038】
なお、水引き現象とは、上反転位置P2においてワイパブレード14により払拭範囲Sの外側に掃き出された雨水等が、下反転位置P1に向けて反転移動するワイパブレード14の背面側に生じた負圧により再度払拭範囲S内に引き込まれる現象のことである。
【0039】
図2に示すように、本実施の形態においては、通風孔41はラバーホルダ22のプライマリレバー23と、プライマリレバー23に対してワイパ軸16の側に配置されるセカンダリレバー24とに設けられている。プライマリレバー23に設けられる通風孔41は、プライマリレバー23の長手方向中央部に対してワイパ軸16の側にずれて配置されており、セカンダリレバー24に設けられる通風孔41はセカンダリレバー24のプライマリレバー23に近い一端側に配置されている。これらの通風孔41の構造は基本的に同一であるので、以下では、プライマリレバー23に設けられる一方の通風孔41についてのみ説明する。
【0040】
図5は図2に示すワイパブレードの通風孔周りの拡大図である。
【0041】
通風孔41は、プライマリレバー23つまりブレードラバー21の長手方向に沿って延びる矩形の長孔として形成されており、プライマリレバー23のフィン部35の根本部分に配置されている。図3に示すように、通風孔41はプライマリレバー23の天壁23aを貫通し、プライマリレバー23の外部と内部とを連通させている。プライマリレバー23の内部においては、これに収容されるブレードラバー21のヘッド部21aとフィン部35に連なる側の側壁23bとの間に隙間が設けられている。通風孔41によりプライマリレバー23の内部に導かれた走行風は、ヘッド部21aと側壁23bとの間の隙間を介してプライマリレバー23のウインドシールドガラス15側を向く開口部からワイパブレード14の背面側に流され、この流れによりワイパブレード14の背面側における負圧の発生が抑制される。これにより、ワイパブレード14が上反転位置P2において生じる水引き現象を防止することができる。
【0042】
一方、このワイパブレード14では、ワイパブレード14が図1に示す上反転位置P2付近にあるときには通風孔41に走行風を積極的に案内し、ワイパブレード14が図1に示すウインドウォッシャ液の噴射範囲内の位置P3にあるときにはウインドウォッシャ液が通風孔41から侵入してスプラッシュ状態でウインドシールドガラス15に付着することを防止するために、プライマリレバー23の通風孔41の車両前方側つまり通風孔41に対してフィン部35とは反対側に水避け壁42を設けるようにしている。
【0043】
なお、セカンダリレバー24にも、これに設けられた通風孔41の車両前方側つまり通風孔41に対してフィン部35とは反対側に水避け壁42が設けられるが、これらの水避け壁42は基本的に同様の構成であるので、以下では、プライマリレバー23に設けられた水避け壁42についてのみ説明する。
【0044】
水避け壁42はプライマリレバー23と一体に樹脂材料により形成されており、プライマリレバー23の天壁23aの外面から上方(フィン部35の高さ方向)に突出している。水避け壁42のブレードラバー21の長手方向に沿う長手方向寸法は、通風孔41の長手方向寸法よりも大きく設定されており、これにより、通風孔41の車両前方側の全範囲が水避け壁42に囲われている。また、水避け壁42は通風孔41の長手方向に対して、ワイパ軸16の側となる一端部側から他端部側に向けて徐々に通風孔41に近づく方向に傾斜して設けられており、つまり、水避け壁42とフィン部35の間隔はワイパブレード14の基端側(ワイパブレード14の長手方向中央部からワイパ軸16側)から先端側(ワイパブレード14の長手方向中央部からワイパ軸16と離反する側)に向けて徐々に狭くなっている。
【0045】
水避け壁42のワイパブレード14の先端側の一端部は通風孔41の長手方向端部に達しており、この水避け壁42の一端部とフィン部35との間には、水避け壁42の一端部とフィン部35とを連結する連結壁43が水避け壁42やフィン部35と一体に設けられている。この連結壁43は水避け壁42の一端部とフィン部35との間に通風孔41の長手方向端部に沿って設けられており、これにより通風孔41は、水避け壁42、連結壁43及びフィン部35により3方を囲まれている。
【0046】
一方、水避け壁42のワイパ軸16の側となる他端部は、その高さが当該端部に向けて徐々に低くなるように傾斜した形状に形成されている。これにより、当該端部は滑らかにプライマリレバー23の外面に連ねられ、その美観が高められている。
【0047】
次に、このような構成を有するワイパブレード14の作用について説明する。
【0048】
図示しないワイパモータが作動すると、ワイパブレード14は下反転位置P1と上反転位置P2との間の払拭範囲Sを揺動し、ウインドシールドガラス15の払拭範囲Sを払拭する。車両走行時には、走行風をラバーホルダ22に設けたフィン部35で受けることによりワイパブレード14の浮き上がりが防止され、車両走行時におけるワイパブレード14の払拭性が高められる。
【0049】
一方、車両走行時にワイパブレード14が上反転位置P2付近にきたときには、ラバーホルダ22の外面側を流れる走行風の一部が通風孔41からラバーホルダ22の内部に導かれ、ラバーホルダ22のウインドシールドガラス15側を向く開口部からワイパブレード14の背面側に流される。通風孔41を介してワイパブレード14の背面側に流された走行風は、フィン部35の上方を流れた走行風が生じる負圧を打ち消し、これにより、ワイパブレード14の背面側における負圧の発生が抑制されて、上反転位置P2におけるワイパブレード14の水引き現象が防止される。
【0050】
このように、このワイパブレード14では、ラバーホルダ22に設けた通風孔41により走行風の一部をラバーホルダ22の内部を介してワイパブレード14の背面側から排出させるようにしたので、ワイパブレード14の背面側への負圧の発生を抑制して、上反転位置P2におけるワイパブレード14の水引き現象を防止することができる。
【0051】
また、このワイパブレード14では通風孔41の前方に水避け壁42を設けるようにしているが、図6、図7に示すように、ワイパブレード14が上反転位置P2付近にあるときには、走行風は水避け壁42の長手方向に沿う方向に流れるので、水避け壁42にその流れが妨げられることがない。また、このとき、ワイパブレード14は、水避け壁42とフィン部35の間隔が走行風の下流側から上流側に向けて徐々に狭くなる姿勢となり、さらに、水避け壁42とフィン部35とを連結する連結壁43が通風孔41の長手方向一端側に位置することになるので、走行風は水避け壁42、フィン部35及び連結壁43により通風孔41に効率よく導かれることになる。また、このとき、水避け壁42のワイパ軸16の側の一端部の高さがその端部に向けて徐々に低くされているので、水避け壁42の当該端部における乱流の発生が抑制され、通風孔41への走行風の流入速度がさらに高められる。これにより、通風孔41を介してワイパブレード14の背面側から排出される走行風の流速を高めて、ワイパブレード14の背面側への負圧の発生をより効果的に抑制して、上反転位置P2におけるワイパブレード14の水引き現象の発生を確実に防止することができる。
【0052】
このように、このワイパブレード14では、水避け壁42を通風孔41の長手方向に対して傾斜させるとともに水避け壁42の他端部を連結壁43によりフィン部35と連結させるようにしたので、ワイパブレード14が上反転位置P2付近にあるときに水避け壁42、フィン部35及び連結壁43により走行風を通風孔41に効率的に導くことができる。これにより、図8に示すように、ワイパブレード14が上反転位置P2付近にあるときにおける走行風の通風孔41への流入速度を高めてワイパブレード14の背面側の負圧の発生を抑制し、もってワイパブレード14の上反転位置P2における水引き現象を低減させることができる。
【0053】
一方、ワイパブレード14がウインドウォッシャ液の噴射範囲内の位置P3にあるときには、図9、図10に示すように、水避け壁42により通風孔41へのウインドウォッシャ液の侵入が防止される。つまり、ワイパブレード14がウインドウォッシャ液の噴射範囲内の位置P3にあるときには、水避け壁42は、その長手方向が走行風に対して直交する方向となるので、走行風やウインドウォッシャ液に対して障壁として機能することになる。図9に示すように、ワイパブレード14が位置P3にあるときには、水避け壁42は通風孔41に対して車両前方側つまり走行風の上流側に位置するので、水避け壁42により走行風の通風孔41への流入が妨げられ、図11に示すように、通風孔41への走行風の流入速度は低下する。したがって、ウインドウォッシャ液が走行風の流れにより通風孔41に導かれることがない。また、図10に示すように、ノズル17から噴射されたウインドウォッシャ液は水避け壁42に当たり、直接通風孔41に吹きかけられることがない。したがって、ワイパブレード14の作動時にウインドウォッシャ液が噴射されても、ワイパブレード14の通風孔41からウインドウォッシャ液が侵入し、それがワイパブレード14の背面側からスプラッシュ状態で排出されてウインドシールドガラス15に付着することを防止することができる。
【0054】
このように、このワイパブレード14では、ラバーホルダ22の通風孔41の車両前方側に水避け壁42を設けるようにしたので、ワイパブレード14の作動時にウインドウォッシャ液が噴射されても、そのウインドウォッシャ液が通風孔41を介してワイパブレード14の背面側からスプラッシュ状態で排出されてウインドシールドガラス15に付着することを防止することができる。したがって、ワイパブレード14の作動時にウインドウォッシャ液を噴射させても、不意にウインドシールドガラス15にスプラッシュ状態の水滴が付着して運転者の視界不良が生じることがない。
【0055】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施の形態においては、ラバーホルダ22をプライマリレバー23とこれに連結されるセカンダリレバー24,25とで構成するようにしているが、これに限らず、ラバーホルダ22をプライマリレバー23のみで構成するようにしてもよい。
【0056】
また、前記実施の形態においては、水避け壁42を通風孔41の長手方向に対してワイパ軸16の側となる一端部側から他端部側に向けて徐々に通風孔41に近づく方向に傾斜させるようにしているが、これに限らず、水避け壁42と通風孔41とが略平行となるようにしてもよい。つまり、ウインドウォッシャ液が通風孔41に直接吹き付けられることを抑制する構成とすればよい。
【0057】
さらに、前記実施の形態においては、プライマリレバー23とセカンダリレバー24とに、それぞれ1つずつ通風孔41と水避け壁42とを設けるようにしているが、これに限らず、プライマリレバー23とセカンダリレバー24とに通風孔41や水避け壁42を複数設けるようにしてもよい。また、プライマリレバー23とセカンダリレバー24とのいずれか一方にのみ通風孔41と水避け壁42を設けたり、他方のセカンダリレバー25にも通風孔41と水避け壁42とを設けたりするようにしてもよい。
【0058】
さらに、前記実施の形態においては、水避け壁42の長手方向寸法は通風孔41の長手方向寸法よりも大きく設定されているが、これに限らず、少なくとも同一であればよい。
【符号の説明】
【0059】
11 車両
12 ワイパ装置
13 ワイパアーム
14 ワイパブレード
15 ウインドシールドガラス
16 ワイパ軸
17 ノズル
21 ブレードラバー
21a ヘッド部
21b リップ部
21c ネック部
21d 保持溝
21e 装着溝
22 ラバーホルダ
23 プライマリレバー
23a 天壁
23b,23c 側壁
24,25 セカンダリレバー
26 取付部
31,32 保持部
31a,32a 保持爪
33a,33b ストッパ
34 バーティブラ
35 フィン部
41 通風孔
42 水避け壁
43 連結壁
P1 下反転位置
P2 上反転位置
S 払拭範囲
P3 ウインドウォッシャ液の噴射範囲内の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパ軸に固定されたワイパアームの先端に取り付けられ、ウインドシールドガラス上に設定された下反転位置と上反転位置との間の払拭範囲を払拭するワイパブレードであって、
前記ウインドシールドガラスに接するブレードラバーと、
天壁と一対の側壁とを備えた断面略コの字のカバー状に形成され、前記ブレードラバーを覆った状態で保持するラバーホルダと、
前記天壁に該天壁の長手方向に沿って設けられ、走行風を受けて前記ラバーホルダに前記ウインドシールドガラスに向けた押し付け力を付与するフィン部と、
前記天壁に設けられ、前記ラバーホルダの外面側を流れる走行風の一部を前記ラバーホルダの内部に導く通風孔と、
前記ラバーホルダの外面の前記通風孔に対して前記フィン部とは反対側に設けられる水避け壁とを有することを特徴とするワイパブレード。
【請求項2】
請求項1記載のワイパブレードにおいて、前記通風孔を前記ワイパブレードの長手方向に沿って延びる長孔に形成するとともに、前記水避け壁を前記通風孔の長手方向に対して傾斜させて設けたことを特徴とするワイパブレード。
【請求項3】
請求項2記載のワイパブレードにおいて、前記水避け壁を前記ワイパ軸側となる一端部側から他端部側に向けて徐々に前記通風孔に近づく方向に傾斜させるとともに、前記水避け壁の他端部と前記フィン部とを連結する連結壁を前記通風孔の長手方向端部に沿って設けたことを特徴とするワイパブレード。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、前記水避け壁の前記ブレードラバーの長手方向に沿う長手方向寸法を、前記通風孔の長手方向寸法以上に設定したことを特徴とするワイパブレード。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、前記水避け壁の前記ワイパ軸側の一端部の高さを該端部に向けて徐々に低くしたことを特徴とするワイパブレード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−51475(P2012−51475A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195859(P2010−195859)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】