説明

ワイパ装置

【課題】ノズル側ホースの組み付け性をより向上させることができるワイパ装置を提供する。
【解決手段】ワイパモータ21の先端部24aにウォッシャ液Wを噴射させるウォッシャノズル34を有したワイパアーム33の基端部31を固定し、ウォッシャノズル34とウォッシャタンク39とを各ホースジョイント36,37を介してノズル側ホース35及びタンク側ホース38で接続したワイパ装置10において、インナパネル16の貫通孔16aと出力軸24との間にグロメット40を設け、このグロメット40の前側にノズル側ホース35を接続したノズル側ホースジョイント36を嵌め込むノズル側ホースジョイント接続部44を形成し、このノズル側ホースジョイント接続部44の頂面44cに、ノズル側ホースジョイント36の接続部36aを位置決めして組み付けるための位置決め用凹部44dを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のウインドガラスをウォッシャノズルより噴射したウォッシャ液を介して払拭するウォッシャノズル付きワイパに用いて好適なワイパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のワイパ装置として、図5に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このワイパ装置1は、図5(a)に示すように、車体本体に回動自在に支持されるピボット軸(ワイパ軸)2にワイパアーム3の基端部3aを固定してある。このワイパアーム3の基端部3aには、カバー4を取り付けてある。また、ワイパアーム3の先端部には、ウォッシャ液を噴射させる図示しないウォッシャノズルを取り付けてある。このウォッシャノズルには、図示しないウォッシャタンクのウォッシャ液を供給するためのチューブ(ホース)5を連結してある。
【0004】
さらに、ピボット軸2はゴム製のピボットキャップ6により被冠されている。図5(b)に示すように、ゴム製のピボットキャップ6には、ピボット軸2を貫通させる軸貫通孔6aと、チューブ5の中途部5aを貫通させるチューブ貫通孔6bを形成してある。また、図5(a)に示すように、ピボットキャップ6にはチューブ5の中途部5aを挟むように保持する一対の係止爪6c,6cを突設してある。
【0005】
【特許文献1】特開2003−327090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来のワイパ装置1では、ワイパアーム3の揺動に追従するようにピボットキャップ6に突設した一対の係止爪6c,6cでチューブ5の中途部5aを保持しているが、チューブ5に方向性を持たせて配索する組み付け作業等に熟練を要し、ピボットキャップ6にチューブ5の中途部5aを位置決めして組み付けることが難しかった。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、ノズル側ホースの組み付け性をより向上させることができるワイパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、インナパネルの内側に出力軸を有したワイパモータを配設し、この出力軸の先端部を前記インナパネルに形成された貫通孔からアウタパネルに形成された貫通孔にそれぞれ貫通させて外側に露出させ、この外側に露出した出力軸の先端部にウォッシャ液を噴射させるウォッシャノズルを有したワイパアームの基端部を固定し、かつ、前記ウォッシャノズルとウォッシャタンクとをホースジョイントを介してノズル側ホース及びタンク側ホースで接続したワイパ装置において、前記インナパネルの貫通孔をシールするグロメットを前記出力軸に嵌合し、このグロメットの外周面に前記インナパネルの貫通孔に取り付けられる環溝状の嵌合凹部を形成し、かつ、前記グロメットの前側に前記アウタパネルの貫通孔の周りの内面に圧接して該アウタパネルの貫通孔をシールするシール部を一体形成すると共に、該グロメットの前側に前記ノズル側ホースを接続したノズル側の前記ホースジョイントを嵌め込むノズル側ホースジョイント接続部を形成し、このノズル側ホースジョイント接続部に前記ノズル側ホースジョイントを位置決めする位置決め手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載のワイパ装置であって、前記グロメットの前側に前記ノズル側ホースジョイント接続部を一体突出形成し、このノズル側ホースジョイント接続部の頂面に前記ノズル側ホースジョイントの接続部が位置決めされる前記位置決め手段としての位置決め用凹部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、インナパネルの貫通孔をシールするグロメットを出力軸に嵌合し、このグロメットの外周面にインナパネルの貫通孔に取り付けられる環溝状の嵌合凹部を形成し、かつ、グロメットの前側にアウタパネルの貫通孔の周りの内面に圧接して該アウタパネルの貫通孔をシールするシール部を一体形成したことにより、1つのグロメットでインナパネルとアウタパネルの2つの車体パネルをシールすることができる。
【0011】
また、グロメットの前側にノズル側ホースを接続したノズル側のホースジョイントを嵌め込むノズル側ホースジョイント接続部を形成し、このノズル側ホースジョイント接続部にノズル側ホースジョイントを位置決めする位置決め手段を設けたことにより、ノズル側ホースジョイント接続部にノズル側ホースジョイントを簡単に位置決めして組み付けることができるため、車室内外でノズル側ホースの組み付け作業を分けて行うことができると共に、ノズル側ホースに方向性を持たせて配索することができる。その結果、ノズル側ホースの組み付け性をより向上させることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、グロメットの前側にノズル側ホースジョイント接続部を一体突出形成し、このノズル側ホースジョイント接続部の頂面にノズル側ホースジョイントの接続部が位置決めされる位置決め手段としての位置決め用凹部を形成したことにより、ノズル側ホースジョイント接続部の位置決め用凹部にノズル側ホースジョイントの接続部を嵌め込むだけの簡単な作業で、ノズル側ホースジョイント接続部にノズル側ホースジョイントをより簡単かつ確実に位置決めして組み付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態のワイパ装置を示す分解斜視図、図2は同ワイパ装置の要部の断面図、図3は同ワイパ装置に用いられるグロメットを前側から見た斜視図、図4は同グロメットを後側から見た斜視図である。
【0015】
図1に示すように、ワイパ装置10は、ワイパモータユニット20と、このワイパモータユニット20のピボット軸(出力軸)24により揺動するウォッシャノズル付きワイパ30とを備えており、図示しない車両のリヤウインドガラスをウォッシャノズル34より噴射したウォッシャ液Wを介して払拭するものである。
【0016】
ワイパモータユニット20は、ワイパアーム33を装着するピボット軸(出力軸)24を有したワイパモータ21と、このワイパモータ21を取り付けたブラケット25とを備えている。このワイパモータ21は、モータ部22と、このモータ部22の回転軸の回転を減速する減速機構部23とを備えており、図示しないボルト等を介してブラケット25に固定されている。また、減速機構部23からピボット軸24が外側に突出するように設けられている。そして、このワイパモータユニット20は、ブラケット25の複数の取付片25aに取り付けられたラバー26を介してインナパネル16より内側に設けられた図示しない車体パネルに取り付けられるようになっている。
【0017】
ウォッシャノズル付きワイパ30は、ピボット軸24の先端部24aにナット18を介して固定されたアームヘッド(基端部)31と、このアームヘッド31を覆うヘッドカバー32と、アームヘッド31の支軸31aを介して払拭面方向に回動自在に支持されると共に、リヤウインドガラスの払拭面を払拭する図示しないワイパブレードが連結されたワイパアーム33と、このワイパアーム33に設けられてウォッシャ液Wをリヤウインドガラスの払拭面に噴射させるウォッシャノズル34と、アームヘッド31及びワイパアーム33に沿って配索されると共に、ウォッシャノズル34に連結されてウォッシャ液Wを供給するノズル側ホース35とを備えている。
【0018】
図2に示すように、インナパネル16の内側に配設されたワイパモータ21のピボット軸24の先端部24aは、インナパネル16に形成された貫通孔16aからアウタパネル17に形成された貫通孔17aにそれぞれ貫通して外側に露出している。この外側に露出したピボット軸24の先端部24aには、ウォッシャ液Wを噴射させるウォッシャノズル34を有したワイパアーム33の基端部を成すアームヘッド31をナット18を介して締結固定してある。そして、図1に示すように、ウォッシャノズル34とウォッシャタンク39とは、各ホースジョイント36,37と後述するグロメット40を介してノズル側ホース35及びタンク側ホース38で接続されている。
【0019】
また、図2に示すように、インナパネル16の貫通孔16aとピボット軸24との間にはゴム製のグロメット40を介在してある。
【0020】
図1〜図4に示すように、グロメット40は、ゴム製のグロメット本体41を有している。このグロメット本体41は、両端側の一方が大径になると共に他方が小径となった略楕円板状に形成してあり、その外周面41aにインナパネル16の貫通孔16aに取り付けられる環溝状の嵌合凹部42を形成してある。グロメット本体41の大径の一端側にはピボット軸24が貫通して圧接される円形の取付孔43を形成してある。また、グロメット本体41の前面41bの小径の他端側には、ウォッシャ液Wを導出する液体導出口(液体吐出口)44aを有したノズル側ホースジョイント接続部44を一体突出形成してあると共に、該グロメット本体41の後面41cの小径の他端側には、ウォッシャ液を導入する液体導入口(液体供給口)45aを有したタンク側ホースジョイント接続部45を一体突出形成してある。ここで、グロメット本体の前面とは、出力軸24が車室内からアウタパネル17に形成された貫通孔17aを通って外側に向かう方向を前面としている。そして、ノズル側ホースジョイント接続部44とタンク側ホースジョイント接続部45とは側面L字形に形成されている。即ち、ノズル側ホースジョイント接続部44のウォッシャ液Wを導出する液体導出口44aとタンク側ホースジョイント接続部45のウォッシャ液Wを導入する液体導入口45aとは、L字形の連通流路46で連通されている。
【0021】
また、図1及び図3に示すように、ノズル側ホースジョイント接続部44の外周面44bは円錐面状に形成してある。さらに、図2,図3に示すように、ノズル側ホースジョイント接続部44は、アウタパネル17に形成された貫通孔17aまで突出するように長尺に形成されている。そして、アウタパネル17の貫通孔17a内に露出したノズル側ホースジョイント接続部44の液体導出口44aには、一方の接続部36aをノズル側ホース35に接続したノズル側ホースジョイント36の他方の接続部36bを嵌め込むようになっている。さらに、図1及び図4に示すように、タンク側ホースジョイント接続部45は円柱状に形成してあり、該円柱状のタンク側ホースジョイント接続部45の液体導入口45aには、一方の接続部37aをタンク側ホース38に接続したタンク側ホースジョイント37の他方の接続部37bを嵌め込むようになっている。
【0022】
また、図1及び図3に示すように、ノズル側ホースジョイント接続部44の頂面44cには、ノズル側ホースジョイント36の一方の接続部36aが位置決めされて嵌め込まれるU字状に凹んだ位置決め用凹部(位置決め手段)44dを形成してある。
【0023】
さらに、図1〜図4に示すように、グロメット本体41の前面41bの外周縁部にはアウタパネル17の貫通孔17aの周りの内面17bに圧接するシール部47を一体突出形成してある。このシール部47は、薄肉環状の吸盤形状に形成されている。
【0024】
以上実施形態のワイパ装置10によれば、図2に示すように、インナパネル16の貫通孔16aとワイパモータ21のピボット軸24との間にゴム製のグロメット40を設け、このグロメット40のグロメット本体41の外周面41aにインナパネル16の貫通孔16aの内周面に取り付けられる環溝状の嵌合凹部42を形成し、かつ、グロメット本体41の前面41bにアウタパネル17の貫通孔17aの周りの内面17bに圧接するシール部47を一体突出形成したことにより、1つのグロメット40でインナパネル16とアウタパネル17の2つの車体パネルをシールすることができる。その結果、インナパネル16とアウタパネル17にグロメットをそれぞれ組み付けなくても良く、その分、組付作業性を向上させることができると共に、コストを削減することができる。即ち、グロメット40のシール部47を薄肉環状の吸盤形状に形成したことにより、1つのグロメット40の環溝状の嵌合凹部42と薄肉環状で吸盤形状のシール部47の圧着力で、インナパネル16とアウタパネル17の2つの車体パネルを簡単かつ確実にシールすることができる。
【0025】
また、グロメット40のグロメット本体41の前面41bに一体突出形成したノズル側ホースジョイント接続部44の頂面44cに、ノズル側ホースジョイント36の一方の接続部36aを位置決めする位置決め用凹部44dを形成したことにより、ノズル側ホースジョイント接続部44にノズル側ホースジョイント36を簡単に位置決めして組み付けることができる。即ち、ノズル側ホースジョイント36の一方の接続部36aの向きの誤組を簡単かつ確実に防止することができる。これにより、車室内外でノズル側ホース35の組み付け作業を分けて行うことができると共に、ノズル側ホース35に方向性を持たせて配索することができる。その結果、ノズル側ホース35の組み付け性をより向上させることができる。
【0026】
特に、ノズル側ホースジョイント接続部44の位置決め用凹部44dをU字状に形成したことにより、該U字状の位置決め用凹部44dにノズル側ホースジョイント36の一方の接続部36aを嵌め込むだけの簡単な作業により、ノズル側ホースジョイント接続部44にノズル側ホースジョイント36をより簡単かつ確実に位置決めして組み付けることができる。
【0027】
尚、前記実施形態によれば、リヤウインドガラス用のワイパ装置に適用した場合について説明したが、前記実施形態をフロントウインドガラス用のワイパ装置に適用しても良いことは勿論である。また、グロメット及びシールラバーはゴム製のものを用いたが、柔軟性のある樹脂製等のものでも良い。さらに、ノズル側ホースジョイント接続部にノズル側ホースジョイントの接続部を位置決めして組み付ける位置決め手段として、ノズル側ホースジョイント接続部の頂面に位置決め用凹部を形成したが、位置決め手段は凹部に限られるものではないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態のワイパ装置を示す分解斜視図である。
【図2】上記ワイパ装置の要部の断面図である。
【図3】上記ワイパ装置に用いられるグロメットを前側から見た斜視図である。
【図4】上記グロメットを後側から見た斜視図である。
【図5】(a)は従来のワイパ装置の要部の斜視図、(b)は同要部に取り付けられるグロメットを背面側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
10 ワイパ装置
16 インナパネル
16a 貫通孔
17 アタパネル
17a 貫通孔
17b 内面
21 ワイパモータ
24 ピボット軸(出力軸)
24a 先端部
31 アームヘッド(基端部)
33 ワイパアーム
34 ウォッシャノズル
35 ノズル側ホース
36 ノズル側ホースジョイント
36a 接続部
38 タンク側ホース
39 ウォッシャタンク
40 グロメット
41a 外周面
41b 前面
42 嵌合凹部
44 ノズル側ホースジョイント接続部
44c 頂面
44d 位置決め用凹部(位置決め手段)
47 シール部
W ウォッシャ液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナパネルの内側に出力軸を有したワイパモータを配設し、この出力軸の先端部を前記インナパネルに形成された貫通孔からアウタパネルに形成された貫通孔にそれぞれ貫通させて外側に露出させ、この外側に露出した出力軸の先端部にウォッシャ液を噴射させるウォッシャノズルを有したワイパアームの基端部を固定し、かつ、前記ウォッシャノズルとウォッシャタンクとをホースジョイントを介してノズル側ホース及びタンク側ホースで接続したワイパ装置において、
前記インナパネルの貫通孔をシールするグロメットを前記出力軸に嵌合し、このグロメットの外周面に前記インナパネルの貫通孔に取り付けられる環溝状の嵌合凹部を形成し、かつ、前記グロメットの前側に前記アウタパネルの貫通孔の周りの内面に圧接して該アウタパネルの貫通孔をシールするシール部を一体形成すると共に、該グロメットの前側に前記ノズル側ホースを接続したノズル側の前記ホースジョイントを嵌め込むノズル側ホースジョイント接続部を形成し、このノズル側ホースジョイント接続部に前記ノズル側ホースジョイントを位置決めする位置決め手段を設けたことを特徴とするワイパ装置。
【請求項2】
請求項1記載のワイパ装置であって、
前記グロメットの前側に前記ノズル側ホースジョイント接続部を一体突出形成し、このノズル側ホースジョイント接続部の頂面に前記ノズル側ホースジョイントの接続部が位置決めされる前記位置決め手段としての位置決め用凹部を形成したことを特徴とするワイパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−12815(P2010−12815A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172175(P2008−172175)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】