説明

ワイピング方法、ワイピング制御装置及び液体噴射装置

【課題】払拭部材による液体噴射ヘッドのノズル形成面のワイピングミス及び払拭部材の劣化を抑制することができるワイピング方法、ワイピング制御装置及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクを噴射する複数のノズル開口24aからなるノズル列25B,25Y,25M,25Cが複数列設けられたノズル形成面22aを有する記録ヘッド22において複数のノズル列におけるノズル列と交差する方向の一方側及び他方側に分割された第1のノズル列群及び第2のノズル列群のうち何れの側のノズル列群におけるノズル開口からインクを排出する選択クリーニングが実行されたかを判断し、その判断結果に基づいて選択クリーニングが実行されたノズル列を含むノズル列群が位置する側から記録ヘッドにおけるノズル形成面の払拭をワイパー51が開始するように、ノズル列と交差する方向におけるワイパーと記録ヘッドとの相対移動を制御するCPUと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイピング方法、ワイピング制御装置及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録媒体に対して液体を噴射する液体噴射装置の一種として、インクジェット式プリンターが広く知られている。このプリンターは、液体噴射ヘッドに形成されたノズルからインク(液体)を噴射することにより、記録媒体に記録を施すようになっている。このようなプリンターでは、ノズルの目詰まりなどに起因するインクの噴射不良を低減するため、液体噴射ヘッドをメンテナンスするメンテナンス装置が設けられている(例えば特許文献1)。
【0003】
この特許文献1のメンテナンス装置は、液体噴射ヘッドのノズル開口が形成されたノズル形成面にノズル開口を囲うように当接するキャップと、そのようにノズル形成面に当接したキャップ内を吸引する吸引ポンプとを備える。そして、吸引ポンプによりキャップ内を吸引することで、ノズルに負圧を与えてインクと共に気泡や増粘インクをノズルからキャップ内に吸引して排出させる、所謂クリーニングが行われる。
【0004】
また、このメンテナンス装置は、水平方向(ノズル形成面と平行な方向)に往復移動する液体噴射ヘッドのノズル形成面に対して摺接することにより、ノズル形成面を払拭(所謂ワイピング)可能とされた2つのワイパー(払拭部材)を備えている。そして、クリーニング後など、ノズル形成面のワイピングが必要な際には、そのときの液体噴射ヘッドの移動方向(往方向又は復方向)によって2つのワイパーを使い分けながら、ノズル形成面をワイパーによって払拭することにより、ノズル形成面に付着した不要なインクを除去したりノズルのメニスカスを整えたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−190512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の液体噴射装置では、液体噴射ヘッドのノズル形成面に対するワイパーのワイピング方向(すなわち、そのワイピング時に使用されるワイパーのノズル形成面に対する進行方向)がワイパー毎に一方向のみとなっている。そのため、液体噴射ヘッドのノズル形成面にワイピング方向へ間隔をおくようにして形成された複数のノズル列のうち一部のノズル列において選択的にインクを排出するクリーニング(所謂選択クリーニング)が行われる場合には、次のような問題が生じる。
【0007】
すなわち、ノズル列と交差する方向の一方側から他方側に向けてワイピングを実行する場合において、全ノズル列のうちワイピング方向の一方側に位置する一方側ノズル列においてクリーニングが行われていないと、そのワイピングを開始したときに一方側のノズル列はノズル形成面にインクが付着していない状態でワイピングが行われることになる。このように、ワイパーによってノズル形成面に対してインクが付着していない状態でのワイピング(所謂空ワイピング)が行われると、ノズルのメニスカスが破壊されるなどのワイピングミスが生じたりワイパーが劣化したりする原因となる虞があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、払拭部材による液体噴射ヘッドのノズル形成面のワイピングミス及び払拭部材の劣化を抑制することができるワイピング方法、ワイピング制御装置及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のワイピング方法は、液体を噴射する複数のノズル開口からなるノズル列が複数列設けられたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、複数の前記ノズル列における当該ノズル列と交差する方向の一方側及び他方側に分割された第1のノズル列群及び第2のノズル列群のうち何れか一方のノズル列群における前記ノズル開口から前記液体を排出させる選択クリーニングを行うクリーニング手段と、前記液体噴射ヘッドにおける前記ノズル形成面を前記ノズル列と交差する方向に摺接しながら払拭する払拭部材とを有する液体噴射装置におけるワイピング方法であって、前記選択クリーニングを実行するクリーニング工程と、当該クリーニング工程において前記選択クリーニングが前記第1のノズル列群及び前記第2のノズル列群のうち何れのノズル列群において実行されたかを判断する判断工程と、当該判断工程において前記選択クリーニングが実行されたと判断されたノズル列群が位置する側から前記ノズル形成面の払拭を開始するように払拭部材と前記液体噴射ヘッドとを前記ノズル列と交差する方向において相対移動させる移動工程と、を備える。
【0010】
この構成によれば、選択クリーニングが実行されたノズル列を含む側のノズル列群のノズル開口付近には液体が付着するため、そのノズル列群側から払拭部材を液体噴射ヘッドに対してノズル列と交差する方向において相対移動させることにより、払拭部材をワイピング開始段階で濡らすことができる。そのため、複数のノズル列が形成されたノズル形成面については、選択クリーニングが実行されておらずノズル開口付近が乾燥している側のノズル列群の領域も、払拭部材が濡れた状態で払拭することができる。したがって、払拭部材による液体噴射ヘッドのノズル形成面のワイピングミス及び払拭部材の劣化を抑制することができる。
【0011】
なお、本明細書において、「第1のノズル列群」は、複数のノズル列のうちノズル列と交差する方向において最も一方側に位置するノズル列は含む一方で最も他方側に位置するノズル列は含まない少なくとも一つのノズル列からなるノズル列群であって、最も一方側に位置する一つのノズル列からなる場合もありうる。その一方、「第2のノズル列群」は、複数のノズル列のうちノズル列と交差する方向において第1のノズル列群に含まれるノズル列以外の他方側に位置する少なくとも一つのノズル列からなるノズル列群であって、最も他方側に位置する一つのノズル列からなる場合もありうる。
【0012】
本発明のワイピング方法において、前記クリーニング手段は、前記液体噴射ヘッドにおける前記第1のノズル列群に含まれるノズル列の前記ノズル開口と前記第2のノズル列群に含まれるノズル列の前記ノズル開口とを別々に囲うように前記液体噴射ヘッドに当接することにより前記ノズル形成面との間に密閉空間を区画形成可能なキャップと、前記密閉空間に負圧を発生させる吸引手段とを有し、前記クリーニング工程においては、前記吸引手段が前記密閉空間を吸引することにより前記ノズル開口から前記液体を吸引して排出させる吸引クリーニングが実行される。
【0013】
この構成によれば、吸引クリーニングが実行されたノズル列群のノズル開口付近に確実に液体を付着させることができるため、払拭部材をワイピング開始段階で確実に濡らすことができる。
【0014】
本発明のワイピング方法において、前記払拭部材は、前記液体噴射ヘッドに個別対応させて当該液体噴射ヘッドの設置数と同数設けられているとともに、前記移動工程においては、前記払拭部材が個別対応する前記液体噴射ヘッドに対して前記ノズル列と交差する方向において往方向及び復方向の両方向に相対移動可能である。
【0015】
この構成によれば、液体噴射装置の部品点数を増やすことなく選択クリーニングが実行されたノズル列群側から払拭部材を液体噴射ヘッドに対して相対移動させることができる。したがって、装置の大型化を抑制しつつ、払拭部材による液体噴射ヘッドのノズル形成面のワイピングミス及び払拭部材の劣化を抑制することができる。
【0016】
また、上記目的を達成するために、本発明のワイピング制御装置は、液体を噴射する複数のノズル開口からなるノズル列が複数列設けられたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドにおいて複数の前記ノズル列における当該ノズル列と交差する方向の一方側及び他方側に分割された第1のノズル列群及び第2のノズル列群のうち何れの側のノズル列群における前記ノズル開口から前記液体を排出する選択クリーニングが実行されたかを判断する判断手段と、当該判断手段の判断結果に基づいて前記選択クリーニングが実行されたノズル列を含むノズル列群が位置する側から前記液体噴射ヘッドにおける前記ノズル形成面の払拭を払拭部材が開始するように、前記ノズル列と交差する方向における当該払拭部材と前記液体噴射ヘッドとの相対移動を制御する移動制御手段と、を備える。
【0017】
この構成によれば、選択クリーニングが実行されてノズル開口付近に液体が付着したノズル列群側から払拭部材による液体噴射ヘッドのノズル形成面の払拭が開始される。そのため、複数のノズル列が形成されたノズル形成面については、選択クリーニングが実行されておらずノズル開口付近が乾燥している側のノズル列群の領域も、払拭部材が濡れた状態で払拭することができる。したがって、払拭部材による液体噴射ヘッドのノズル形成面のワイピングミス及び払拭部材の劣化を抑制することができる。
【0018】
さらに、上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、液体を噴射する複数のノズル開口からなるノズル列が複数列設けられたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、複数の前記ノズル列における当該ノズル列と交差する方向の一方側及び他方側に分割された第1のノズル列群及び第2のノズル列群のうち何れか一方のノズル列群における前記ノズル開口から前記液体を排出させる選択クリーニングを行うクリーニング手段と、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル形成面に対して前記ノズル列と交差する方向に相対移動しながら摺接することにより前記ノズル形成面を払拭する払拭部材と、上記構成のワイピング制御装置と、を備える。
【0019】
この構成によれば、液体噴射装置において上記ワイピング制御装置の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態におけるプリンターの概略斜視図。
【図2】記録ヘッドを下方から見た平面図。
【図3】プリンターの電気的構成の要部を示すブロック図。
【図4】記録ヘッドが第1位置に位置した状態にあるメンテナンスユニットの模式図。
【図5】クリーニング装置が第1のノズル列群の選択クリーニング動作を実行中のメンテナンスユニットの模式図。
【図6】ワイピング装置が払拭位置に位置した状態にあるメンテナンスユニットの模式図。
【図7】ワイピング装置がワイピング動作を実行中のメンテナンスユニットの模式図。
【図8】クリーニング装置が第2のノズル列群の選択クリーニングを実行中のメンテナンスユニットの模式図。
【図9】記録ヘッドが第2位置に位置したメンテナンスユニットの模式図。
【図10】ワイピング装置が払拭位置に位置した状態にあるメンテナンスユニットの模式図。
【図11】ワイピング装置がワイピング動作を実行中のメンテナンスユニットの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」ともいう。)に具体化した実施形態を図1〜図11に従って説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいう場合は、特に説明がない限り、各図において矢印で示す「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいうものとする。また、この場合における「前後方向」はその後側から前側に向かう方向が記録媒体の搬送方向に相当すると共に、「上下方向」は鉛直方向に相当し、「左右方向」は記録媒体の搬送方向と交差する方向に相当する。
【0022】
図1に示すように、プリンター11は、インクジェット式のシリアルタイプのプリンターであって、略矩形箱状をなすフレーム12を備えている。このフレーム12内の下部には、記録媒体の一例である記録用紙Pを記録時に支持する支持部材13が、主走査方向X(図1において左右方向)に沿って延設されている。この支持部材13上には、フレーム12の後面下部に設けられた紙送りモーター14を駆動源とする給送装置15の駆動に基づき、用紙Pが後方側から前方に向けて給送される。また、フレーム12内において支持部材13の上方には、この支持部材13の長手方向(左右方向)と平行な棒状のガイド軸16が設けられている。このガイド軸16には、その軸線方向(左右方向であって、主走査方向X)に往復移動可能な状態でキャリッジ17が支持されている。
【0023】
フレーム12の後壁内面におけるガイド軸16の両端部と対応する各位置には、駆動プーリー18及び従動プーリー19が回転自在な状態で支持されている。駆動プーリー18にはキャリッジ17を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモーター(以下、「CRモーター」ともいう。)20の出力軸が連結されると共に、これら一対のプーリー18,19間には一部がキャリッジ17に連結された無端状のタイミングベルト21が掛装されている。したがって、キャリッジ17は、ガイド軸16にガイドされながら、CRモーター20の駆動力により無端状のタイミングベルト21を介して主走査方向X(左右方向)に移動可能となっている。
【0024】
キャリッジ17の下面側には、液体噴射ヘッドの一例である記録ヘッド22が設けられる一方、キャリッジ17上には、記録ヘッド22に対して供給する液体の一例であるインクを貯留する複数(本実施形態では4つ)のインクカートリッジ23が着脱可能に搭載されている。記録ヘッド22には、各色のインク滴を噴射するためのノズル24が複数設けられている(図2参照)。図2に示すように、記録ヘッド22の下面側となるノズル形成面22aには、複数のノズル24のノズル開口24aにより、副走査方向Y(図2において前後方向)に延びる複数(本実施形態では4つ)のノズル列25B,25C,25M,25Yが形成されている。すなわち、ノズル形成面22aには、副走査方向Yに沿って延びる複数(本実施形態では4つ)のノズル列25B,25Y,25M,25Cが主走査方向X(図2において左右方向)に一定の間隔をおいて形成されている。
【0025】
そして、インクカートリッジ23内のインクは、記録ヘッド22に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカートリッジ23から記録ヘッド22へと供給される。また、記録ヘッド22のノズル形成面22aに形成された複数のノズル開口24aから支持部材13上に供給された記録用紙Pに対してインク滴が噴射されることにより、記録が施されるようになっている。
【0026】
また、図1に示すように、フレーム12内において記録用紙Pが搬送される記録領域の右側には、記録用紙Pが搬送されないホームポジション領域HPが形成されている。このホームポジション領域HPには、記録ヘッド22のクリーニングなどの各種メンテナンスを行なうためのメンテナンスユニット26が設けられている。
【0027】
次に、メンテナンスユニット26について説明する。
図4に示すように、メンテナンスユニット26は、記録ヘッド22のクリーニングを行うクリーニング手段の一例であるクリーニング装置27と、ノズル形成面22aをワイピングするためのワイピング装置28と、制御装置29(図3参照)とを備えている。クリーニング装置27は、ノズル24の乾燥を防止するためのキャッピングに用いられる他、インクカートリッジ23内のインクをノズル24から吸引することで、気泡や増粘したインクを排出させる吸引クリーニングを実行する際に用いられる。一方、ワイピング装置28は、ノズル形成面22aを払拭して紙粉やインク等の付着物を除去したり、ノズル24のメニスカスを整えたりするためのワイピングを実行する際に用いられる。
【0028】
まず、クリーニング装置27について説明する。
図4に示すように、クリーニング装置27は、有底四角箱状をなすキャップ部材31と、このキャップ部材を昇降可能な第1昇降機構32と、吸引手段の一例である吸引ポンプ33とを備えている。キャップ部材31には、内部に第1キャップ室34aを有する有底四角箱状をなす第1キャップ34と、内部に第1キャップ34よりも広い第2キャップ室35aを有する有底四角箱状をなす第2キャップ35とが一体に形成されている。第1キャップ34は、第2キャップ35の左側に配置されており、これら第1キャップ34及び第2キャップ35の上面同士は互いに面一になっている。
【0029】
第1キャップ34の下面には、内部に第1排出通路36aを有する第1排出部36が下方に向かって突設されている。第1排出部36には可撓性材料よりなる第1排出チューブ37の基端側(上流側)が接続されているとともに、この第1排出チューブ37の先端側(下流側)は流路切換弁38に接続されている。一方、第2キャップ35の下面には、内部に第2排出通路39aを有する第2排出部39が下方に向けて突設されている。第2排出部39には、可撓性材料よりなる第2排出チューブ40の基端側(上流側)が接続されているとともに、この第2排出チューブ40の先端側(下流側)は流路切換弁38に接続されている。
【0030】
流路切換弁38には、可撓性材料よりなる第3排出チューブ41の基端側(上流側)が接続されているとともに、この第3排出チューブ41の先端側(下流側)は排出インクを回収するための直方体状をなす廃インク回収容器42内に挿入されている。なお、廃インク回収容器42内には、排出インクを吸収して保持するためのインク吸収材(図示略)が配設されている。
【0031】
第3排出チューブ41の途中位置(中間部)には、吸引ポンプ33が配設されている。吸引ポンプ33を正方向に駆動させると、この吸引ポンプ33によって第3排出チューブ41内が流路切換弁38側(上流側)から廃インク回収容器42側(下流側)に向かって吸引される。また、吸引ポンプ33を逆方向に駆動させると、第3排出チューブ41内の吸引状態が解消される。
【0032】
流路切換弁38は、第3排出チューブ41内と第1排出チューブ37内とが連通する第1状態と、第3排出チューブ41内と第2排出チューブ40内とが連通する第2状態と、第3排出チューブ41内と第1排出チューブ37及び第2排出チューブ40内とが連通する第3状態との3つの状態の間で切換動作されるようになっている。
【0033】
また、キャップ部材31は、第1昇降機構32におけるモーター32a(図3参照)の駆動に基づいて、キャップ部材31が上下方向に昇降することにより、記録ヘッド22のノズル形成面22aに対して接離する方向に変位可能となっている。そして、第1昇降機構32のモーター32aが正方向に駆動されると、キャップ部材31は、このキャップ部材31の上面が記録ヘッド22のノズル形成面22aに当接する当接位置に上昇するようになっている。このとき、第1キャップ34が記録ヘッド22のノズル列25Bを囲うとともに、第2キャップ35が記録ヘッド22のノズル列25Y、ノズル列25M及びノズル列25Cを囲うようになっている。
【0034】
すなわち、各ノズル列25B,25Y,25M,25Cは、キャップ部材31によってノズル列と直交(交差)する方向(本実施形態では主走査方向Xとなる左右方向)において第1キャップ34に対応する第1のノズル列群(ノズル列25b)と、第2キャップ35に対応する第2のノズル列群(各ノズル列25Y,25M,25C)とに分割される。換言すると、第1のノズル列群は、各ノズル列25B,25Y,25M,25Cのうちノズル列と交差する方向において最も一方側(本実施形態では左側)に位置するノズル列25Bは含む一方で最も他方側(本実施形態では右側)に位置するノズル列25Cは含まない少なくとも一つのノズル列からなる。その一方、第2のノズル列群は、各ノズル列25B,25Y,25M,25Cのうちノズル列と交差する方向において第1のノズル列群に含まれるノズル列(本実施形態ではノズル列25B)以外の他方側(本実施形態では右側)に位置する少なくとも一つのノズル列(本実施形態ではノズル列25Y,25M,25C)からなる。
【0035】
そして、キャップ部材31の上面が記録ヘッド22のノズル形成面22aに当接するとともに流路切換弁38を第1の状態に切り換えた状態で吸引ポンプ33のポンプモーター33a(図3参照)が正方向に駆動されると、第1排出チューブ37を介して第1キャップ室34a内に負圧が発生する。これにより、第1のノズル列群(ノズル列25B)のノズル開口24aからインクが排出される吸引クリーニングが実行される。一方、キャップ部材31の上面が記録ヘッド22のノズル形成面22aに当接するとともに流路切換弁38を第2状態に切り換えた状態で吸引ポンプ33のポンプモーター33aが正方向に駆動されると、第2排出チューブ40を介して第2キャップ室35a内に負圧が発生する。これにより、第2のノズル列群(各ノズル列25Y,25M,25C)の各ノズル開口24aからインクが排出される吸引クリーニングが実行される。このように、クリーニング装置27では、第1キャップ34に対応する第1のノズル列群と第2キャップ35に対応する第2のノズル列群のうち何れか一方におけるノズル開口24aからインクが排出される選択クリーニングが実行されるようになっている。
【0036】
また、キャップ部材31の上面が記録ヘッド22のノズル形成面22aに当接するとともに流路切換弁38を第3状態に切り換えた状態で吸引ポンプ33のポンプモーター33aが正方向に駆動されると、第1排出チューブ37及び第2排出チューブ40を介して第1キャップ室34a内及び第2キャップ室35a内に負圧が発生する。これにより、全てのノズル列25B,25Y,25M,25Cの各ノズル開口24aからインクが排出される吸引クリーニング(一斉クリーニング)が実行される。なお、吸引ポンプ33のポンプモーター33aが逆方向に駆動されると、第1キャップ室34a内及び第2キャップ室35a内の負圧が解消される。その後、第1昇降機構32のモーター32aが逆方向に駆動されると、キャップ部材31は、記録ヘッド22のノズル形成面22aから離間した離間位置に下降するようになっている。
【0037】
次に、ワイピング装置28について説明する。
図4に示すように、ワイピング装置28は、弾性部材(例えば、天然ゴムや合成ゴムなど)により短冊状に形成された払拭部材の一例であるワイパー51と、このワイパー51を昇降可能な第2昇降機構52とを備えている。ワイパー51は、クリーニング装置27のキャップ部材31に対してキャリッジ17の主走査方向Xにおいて近接する位置(図4において左側)に配置されるとともに、ワイパーホルダー53の上面に対して垂直に立設されている。ワイパー51は、キャリッジ17の主走査方向Xと直交する方向(図4における前後方向)の幅寸法が、同方向における記録ヘッド22のノズル形成面22aの幅寸法よりも大きく設計されている。また、ワイパー51は、記録ヘッド22と個別対応するものであって、記録ヘッド22の設置数と同数(本実施形態では1つ)設けられている。
【0038】
また、ワイパー51は、第2昇降機構52におけるモーター52a(図3参照)の駆動に基づいて、ワイパーホルダー53が上下方向に昇降することにより、ワイパーホルダー53と一体となって記録ヘッド22のノズル形成面22aに対して接離する方向に変位可能となっている。そして、第2昇降機構52のモーター52aが正方向に駆動されると、ワイパーホルダー53は、ワイパー51の先端部51aが記録ヘッド22のノズル形成面22aよりも上方に位置する払拭位置に上昇するようになっている。そして、ワイパー51が払拭位置に位置する状態でCRモーター20が駆動されると、キャリッジ17が主走査方向X(図4において左右方向)に沿って往復移動する過程で、ワイパー51の先端部51aがノズル形成面22aに摺接する。これにより、記録ヘッド22のノズル形成面22aをワイパー51によって払拭して清掃するワイピングが実行される。その後、第2昇降機構52のモーター52aが逆方向に駆動されると、ワイパー51はワイパーホルダー53と一体となって記録ヘッド22のノズル形成面から離間した待機位置に下降するようになっている。
【0039】
次に、プリンター11の電気的構成について説明する。
図3に示すように、制御装置29は、CPU61、ROM62、RAM63及び不揮発性メモリー64を備えている。ROM62には、CPU61により実行される制御プログラム等が記憶されている。また、RAM63には、CPU61の演算結果や制御プログラムを実行して処理する各種データなどが一時的に記憶されるようになっている。また、書き換え可能な不揮発性メモリー64には、プリンターの動作履歴などが記憶されるようになっている。
【0040】
また、制御装置29はモーター駆動回路65〜68をさらに備え、これらはバス71を介してCPU61、ROM62、RAM63及び不揮発性メモリー64と互いに接続されている。
【0041】
具体的には、CPU61は、モーター駆動回路65を介してキャリッジ17を主走査方向に往復移動させるためのCRモーター20を駆動制御する。また、CPU61は、モーター駆動回路66を介してクリーニング装置27の吸引ポンプ33を駆動するためのポンプモーター33aを駆動制御するとともに、モーター駆動回路67を介してキャップ部材31を昇降させるための第1昇降機構32のモーター32aを駆動制御する。また、CPU61は、モーター駆動回路68を介してワイピング装置28のワイパー51を昇降させるための第2昇降機構52のモーター52aを駆動制御する。
【0042】
次に、上記のように構成されたプリンター11に作用について、特に、制御装置29が記録ヘッド22に対するメンテナンス動作を統括的に制御する際の作用に着目して説明する。なお、図4に示すように、メンテナンス動作が行われる前は、メンテナンスユニット26におけるクリーニング装置27のキャップ部材31は離間位置に位置しているとともに、ワイピング装置28のワイパー51は待機位置に位置している。
【0043】
さて、プリンター11においては、インクカートリッジ23の交換時にノズル24内に気泡が混入したり、ノズル開口24aからノズル24内に気泡が混入したりすることによりドット抜けが生じたりする。こうしたドット抜けに起因する記録品質の低下を抑制するため、プリンター11ではメンテナンスユニット26を用いたメンテナンス動作が実行される。そして、こうしたメンテナンス動作時における消費インク量を抑制するために、プリンター11では、メンテナンスが必要なノズル列のみからインクを排出させる選択クリーニングが実行される。
【0044】
まず、第1のノズル列群(ノズル列25B)において選択クリーニングが実行される場合について説明する。
さて、プリンター11は、ユーザーによって記録ヘッド22における第1のノズル列群(ノズル列25B)の選択クリーニングが図示しない操作部において選択されると、制御装置29には操作部から選択結果に関する情報が入力される。すると、まず図4に示すように、クリーニング工程として、制御装置29は、CRモーターを駆動させて記録領域に位置しているキャリッジ17をホームポジション領域HPに向けて主走査方向Xに移動させる。そして、制御装置29は、キャリッジ17に搭載された記録ヘッド22がクリーニング装置27のキャップ部材31に対して上下方向で対向する第1位置に至ったときに、キャリッジ17の移動を停止させる。
【0045】
次に、図5に示すように、制御装置29は、第1昇降機構32を駆動させてキャップ部材31を当接位置に上昇させることにより、キャップ部材31の開口縁を記録ヘッド22のノズル形成面22aに密着させて、第1キャップ室34aを密閉する。続いて、制御装置29は、流路切換弁38を第1状態となるように切換動作させるとともに、吸引ポンプ33を駆動させることにより、第1キャップ室34a内から空気を排出させてこの第1キャップ室34a内を減圧させる。そして、第1キャップ室34a内が減圧されると、ノズル列25B(第1のノズル列群)からインクと共に気泡や増粘したインク等が排出される。このとき、第1キャップ室34a内には、ノズル列25B(第1のノズル列群)から排出されたインクが充満されるため、ノズル形成面22aにおけるノズル列25Bのノズル開口24a付近に、インクが付着する(図6参照)。その後、図6に示すように、制御装置29は、第1昇降機構32を駆動させることにより、キャップ部材31を離間位置に下降させる。このとき、第1キャップ室34a内に残留しているインクは空吸引される。
【0046】
次に、判断工程として、制御装置29は、ノズル列25B(第1のノズル列群)において吸引クリーニングが行われたことを判断する。すなわち、制御装置29におけるCPU61は、第1のノズル列群及び第2のノズル列群のうち何れか一方のノズル列群のノズル開口(この場合、ノズル列25Bのノズル開口)24aからインクを排出させる選択クリーニングが実行されたのは何れの側のノズル列群であるかを判断する。この点で、制御装置29のCPU61は、選択クリーニングが実行されたノズル列群を判断する判断手段として機能する。
【0047】
すると次に、図6に示すように、移動工程として、制御装置29は、記録ヘッド22を第1位置に維持させる。続いて、制御装置29は、第2昇降機構52を駆動させてワイピング装置28のワイパーホルダー53を鉛直方向上方に上昇させることにより、ワイパー51の先端部51aが記録ヘッドのノズル形成面22aに摺接するように、ワイパー51を摺接位置に位置させる。そして、図7に示すように、制御装置29は、CRモーター20を駆動させてホームポジション領域HPに位置しているキャリッジ17を記録領域に向けて主走査方向Xに移動させることにより、記録ヘッド22を第1位置から実線矢印Aで示す方向に移動させる。すると、ワイパー51は、その先端部51aが弾性変形を伴いながら記録ヘッド22のノズル形成面22aに対して摺接することにより、記録ヘッド22のノズル形成面22aに対してワイピングを実行する。
【0048】
このとき、記録ヘッド22のノズル形成面22aにおいて吸引クリーニングが行われなかったノズル列25Y、ノズル列25M,ノズル列25Cの各ノズル開口付近は、インクが付着していないため乾燥している。しかし、この場合、ワイパー51はインクが付着したノズル列25B側からワイピングを開始する。すなわち、ワイパー51は、まずノズル列25Bをワイピングした後、次にノズル列25Y、その次にノズル列25M、そして最後にノズル列25Cという順番で全てのノズル列のノズル開口を次々に横切るようにワイピングする。そのため、ワイパー51は、その先端部51aにノズル列25Bのノズル開口24aから排出されたインクが付着するとともに、インクの付着によって濡れた状態で乾燥しているノズル列25Y、ノズル列25M及びノズル列25Cの各ノズル開口をワイピングする。この点で、制御装置29のCPU61は、選択クリーニングが実行されたノズル列群(この場合、ノズル列25Bを含む第1ノズル列群)側からワイパー51がノズル形成面22aの払拭を開始するようにワイパー51と記録ヘッド22との相対移動を制御する移動制御手段として機能する。そして、このようなCPU61を備えた制御装置29はワイピング制御装置として機能する。
【0049】
その後、制御装置29は、第2昇降機構52を駆動させてワイパーホルダー53を鉛直方向下方に下降させることにより、ワイパー51を待機位置に移動させる。そして、記録ヘッド22の第1のノズル列群(ノズル列25B)の選択クリーニングを終了する。
【0050】
次に、第2のノズル列群(ノズル列25Y,25M及び25C)において選択クリーニングが実行される場合について説明する。
さて、プリンター11は、ユーザーによって記録ヘッド22における第2のノズル列群(ノズル列25Y,25B及び25C)の選択クリーニングが図示しない操作部において選択されると、制御装置29には操作部から選択結果に関する情報が入力される。すると、第1のノズル列(ノズル列25B)において選択クリーニングが実行される場合と同様に、図4に示すように、クリーニング工程として、制御装置29は、CRモーター20を駆動させて記録領域に位置しているキャリッジ17をホームポジション領域HPに向けて主走査方向Xに移動させる。そして、制御装置29は、キャリッジ17に搭載された記録ヘッド22がクリーニング装置27のキャップ部材31に対して上下方向で対向する第1位置に至ったときに、キャリッジ17の移動を停止させる。
【0051】
すると次に、図8に示すように、クリーニング工程として、制御装置29は、第1昇降機構32を駆動させてキャップ部材31を当接位置に上昇させることにより、キャップ部材31の開口縁を記録ヘッド22のノズル形成面22aに密着させて、第2キャップ室35aを密閉する。続いて、制御装置29は、流路切換弁38を第2状態となるように切換動作させるとともに、吸引ポンプを駆動させることにより、第2キャップ室35a内から空気を排出させてこの第2キャップ室35a内を減圧させる。そして、第2キャップ室35a内が減圧されると、ノズル列25Y、ノズル列25M及びノズル列25Cからインクと共に気泡が排出される。このとき、第2キャップ室35a内には、ノズル列25Y、ノズル列25M及びノズル列25Cから排出されたインクが充満されるため、ノズル形成面22aにおけるノズル列25Y、ノズル列25M,ノズル列25Cの各ノズル開口付近に、インクが付着する(図9参照)。その後、図9に示すように、制御装置29は、第1昇降機構32を駆動させることにより、キャップ部材31を離間位置に下降させる。このとき、第2キャップ室35a内に残留しているインクは空吸引される。
【0052】
次に、判断工程として、制御装置29は、ノズル列25Y、ノズル列25M及びノズル列25Cにおいて吸引クリーニングが行われたことを判断する。すると次に、移動工程として、図9に示すように、制御装置29は、CRモーター20を駆動させてホームポジション領域HPに位置しているキャリッジ17を記録領域に向けて主走査方向Xに移動させることにより、記録ヘッド22を第1位置から実線矢印Bで示す方向に移動させる。そして、制御装置29は、キャリッジ17に搭載された記録ヘッド22がワイピング装置28のワイパー51に近接し且つワイパー51よりも記録領域側(図9では左側)となる第2位置に至ったときに、キャリッジ17の移動を停止させる。
【0053】
続いて、図10に示すように、制御装置29は、第2昇降機構52を駆動させてワイピング装置28のワイパーホルダー53を鉛直方向上方に上昇させることにより、ワイパー51の先端部51aが記録ヘッドのノズル形成面22aに摺接するように、ワイパー51を摺接位置に位置させる。そして、図11に示すように、制御装置29は、CRモーター20を駆動させて記録領域側に位置しているキャリッジ17をホームポジション領域HPに向けて主走査方向Xに移動させることにより、記録ヘッド22を第2位置から実線矢印Cで示す方向に移動させる。すなわち、移動工程において記録ヘッド22は、ワイパー51に対して往方向及び復方向の両方向に移動する。すると、ワイパー51は、その先端部51aが弾性変形を伴いながら記録ヘッド22のノズル形成面22aに対して摺接することにより、記録ヘッド22のノズル形成面22aに対してワイピングを実行する。
【0054】
このとき、記録ヘッド22のノズル形成面22aにおいて吸引クリーニングが行われなかったノズル列25Bのノズル開口24a付近は、インクが付着していないため乾燥している。しかし、この場合、ワイパー51はインクが付着したノズル列25Cからワイピングを開始する。すなわち、ワイパー51は、まずノズル列25Cをワイピングした後、次にノズル列25M、その次にノズル列25Y、そして最後にノズル列25Bという順番で全てのノズル列のノズル開口を次々に横切るようにワイピングする。そのため、ワイパー51は、その先端部51aにノズル列25C、ノズル列25M及びノズル列25Yの各ノズル開口から排出されたインクが付着するとともに、インクの付着によって濡れた状態で乾燥しているノズル列25Bのノズル開口24aをワイピングする。
【0055】
その後、制御装置29は、第2昇降機構52を駆動させてワイパーホルダー53を鉛直方向下方に下降させることにより、ワイパー51を待機位置に移動させる。そして、記録ヘッド22の第2のノズル列群(ノズル列25Y,25M及び25C)の選択クリーニングを終了する。
【0056】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)選択クリーニングが実行されたノズル列(25b,25Y,25M,25c)を含む側のノズル列群のノズル開口24a付近にはインクが付着するため、そのような選択クリーニングが実行されたノズル列群側からワイパー51を記録ヘッド22に対してノズル列と交差する方向において相対移動させることにより、ワイパー51をワイピング開始段階で濡らすことができる。そのため、複数のノズル列(25b,25Y,25M,25c)が形成されたノズル形成面22aについては、選択クリーニングが実行されておらずノズル開口24a付近が乾燥している側のノズル列群の領域も、ワイパー51が濡れた状態で払拭することができる。したがって、ワイパー51による記録ヘッド22のノズル形成面22aのワイピングミス及びワイパー51の劣化を抑制することができる。
【0057】
(2)クリーニング工程において吸引クリーニングを実行することにより、吸引クリーニングが実行されたノズル列群のノズル開口付近に確実にインクを付着させることができるため、ワイパー51をワイピング開始段階で確実に濡らすことができる。
【0058】
(3)移動工程において記録ヘッド22は、記録ヘッド22の設置数と同数(本実施形態では1つ)だけ設けられたワイパー51と相対移動するように往復移動する。そのため、プリンター11の部品点数を増やすことなく選択クリーニングが実行されたノズル列群側からワイパー51を記録ヘッド22に対して相対移動させることができる。したがって、プリンター11の大型化を抑制しつつ、ワイパー51による記録ヘッド22のノズル形成面22aのワイピングミス及びワイパー51の劣化を抑制することができる。
【0059】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ワイパー51は、板状の両面をワイピングに使用できるものに限らず、ワイピングには片面のみを使用するものであってもよい。ただし、その場合には、例えばワイパー51自身が180度回転するなど、記録ヘッド22の往復移動に対応してワイピングを行えるものが望ましい。
【0060】
・記録ヘッド22が移動することによりノズル形成面22aのワイピングが行われるものに限らず、例えばワイパー51が主走査方向Xに沿って移動することにより、ノズル形成面22aのワイピングを行うものであってもよい。
【0061】
・ワイピングを実行する前に、記録ヘッド22を移動させることにより選択クリーニングが実行されたノズル列側にワイパー51を位置させるものに限らず、例えばワイパー51が主走査方向Xに沿って移動するなどワイパー51自身が移動することにより選択クリーニングが実行されたノズル側に位置するものであってもよい。
【0062】
・ワイパー51は、記録ヘッド22と同数でなく、記録ヘッド22よりも多くても少なくてもよい。
・クリーニング工程において実行される選択クリーニングは吸引クリーニングに限らず、例えば加圧クリーニングなどであってもよい。
【0063】
・実施形態において、液体噴射装置を記録用紙Pの搬送方向と交差する方向において記録ヘッド22が記録用紙Pの幅方向の長さに対応した全体形状をなす、いわゆるフルラインタイプのプリンターに具体化してもよい。ただし、その場合には、ワイパー51が記録ヘッド22のノズル形成面22aに対して摺動することが望ましい。
【0064】
・実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
11…液体噴射装置の一例であるプリンター、22…液体噴射ヘッドの一例である記録ヘッド、22a…ノズル形成面、24a…ノズル開口、25B,25Y,25M,25C…ノズル列、27…クリーニング手段の一例であるクリーニング装置、29…ワイピング制御装置の一例である制御装置、33…吸引手段の一例である吸引ポンプ、51…払拭部材の一例であるワイパー、61…判断手段及び移動制御手段の一例であるCPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する複数のノズル開口からなるノズル列が複数列設けられたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、複数の前記ノズル列における当該ノズル列と交差する方向の一方側及び他方側に分割された第1のノズル列群及び第2のノズル列群のうち何れか一方のノズル列群における前記ノズル開口から前記液体を排出させる選択クリーニングを行うクリーニング手段と、前記液体噴射ヘッドにおける前記ノズル形成面を前記ノズル列と交差する方向に摺接しながら払拭する払拭部材とを有する液体噴射装置におけるワイピング方法であって、
前記選択クリーニングを実行するクリーニング工程と、
当該クリーニング工程において前記選択クリーニングが前記第1のノズル列群及び前記第2のノズル列群のうち何れのノズル列群において実行されたかを判断する判断工程と、
当該判断工程において前記選択クリーニングが実行されたと判断されたノズル列群が位置する側から前記ノズル形成面の払拭を開始するように払拭部材と前記液体噴射ヘッドとを前記ノズル列と交差する方向において相対移動させる移動工程と、を備える
ことを特徴とするワイピング方法。
【請求項2】
前記クリーニング手段は、前記液体噴射ヘッドにおける前記第1のノズル列群に含まれるノズル列の前記ノズル開口と前記第2のノズル列群に含まれるノズル列の前記ノズル開口とを別々に囲うように前記液体噴射ヘッドに当接することにより前記ノズル形成面との間に密閉空間を区画形成可能なキャップと、前記密閉空間に負圧を発生させる吸引手段とを有し、
前記クリーニング工程においては、前記吸引手段が前記密閉空間を吸引することにより前記ノズル開口から前記液体を吸引して排出させる吸引クリーニングが実行される
ことを特徴とする請求項1に記載のワイピング方法。
【請求項3】
前記払拭部材は、前記液体噴射ヘッドに個別対応させて当該液体噴射ヘッドの設置数と同数設けられているとともに、前記移動工程においては、前記払拭部材が個別対応する前記液体噴射ヘッドに対して前記ノズル列と交差する方向において往方向及び復方向の両方向に相対移動可能である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイピング方法。
【請求項4】
液体を噴射する複数のノズル開口からなるノズル列が複数列設けられたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドにおいて複数の前記ノズル列における当該ノズル列と交差する方向の一方側及び他方側に分割された第1のノズル列群及び第2のノズル列群のうち何れの側のノズル列群における前記ノズル開口から前記液体を排出する選択クリーニングが実行されたかを判断する判断手段と、
当該判断手段の判断結果に基づいて前記選択クリーニングが実行されたノズル列を含むノズル列群が位置する側から前記液体噴射ヘッドにおける前記ノズル形成面の払拭を払拭部材が開始するように、前記ノズル列と交差する方向における当該払拭部材と前記液体噴射ヘッドとの相対移動を制御する移動制御手段と、を備える
ことを特徴とするワイピング制御装置。
【請求項5】
液体を噴射する複数のノズル開口からなるノズル列が複数列設けられたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
複数の前記ノズル列における当該ノズル列と交差する方向の一方側及び他方側に分割された第1のノズル列群及び第2のノズル列群のうち何れか一方のノズル列群における前記ノズル開口から前記液体を排出させる選択クリーニングを行うクリーニング手段と、
前記液体噴射ヘッドの前記ノズル形成面に対して前記ノズル列と交差する方向に相対移動しながら摺接することにより前記ノズル形成面を払拭する払拭部材と、
請求項4に記載のワイピング制御装置と、を備える
ことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−86368(P2012−86368A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232241(P2010−232241)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】