ワイヤスクリーン、遠心分離装置、及びワイヤスクリーンの製造方法
【課題】スリットの目詰まりを防止することにより、脱水率等といった分離能力を格段に向上できるワイヤスクリーンを提供する。
【解決手段】1つの軸線X0に沿って互いに間隔をおいて配置されており互いに内径が異なる複数のリング部材2a,2b,2cと、それら複数のリング部材の内周面に固着されており1つの軸線X0の回りに円錐形状を成すように並べて設けられた複数のワイヤ3,4とを有するワイヤスクリーン1Aである。複数のワイヤ3,4の互いに隣接するものの間にスリットが形成されており、それらのスリットは円錐形状の小径端から大径端にわたって連続して真っ直ぐに延びている。リング部材2a,2b,2cの内周面上に複数の凹部を予め形成しておき、これらの凹部にワイヤ3,4をはめ込むことにすれば、複数のワイヤを正確に位置決めでき、ワイヤ間に形成されるスリットの幅を正確に規定できる。
【解決手段】1つの軸線X0に沿って互いに間隔をおいて配置されており互いに内径が異なる複数のリング部材2a,2b,2cと、それら複数のリング部材の内周面に固着されており1つの軸線X0の回りに円錐形状を成すように並べて設けられた複数のワイヤ3,4とを有するワイヤスクリーン1Aである。複数のワイヤ3,4の互いに隣接するものの間にスリットが形成されており、それらのスリットは円錐形状の小径端から大径端にわたって連続して真っ直ぐに延びている。リング部材2a,2b,2cの内周面上に複数の凹部を予め形成しておき、これらの凹部にワイヤ3,4をはめ込むことにすれば、複数のワイヤを正確に位置決めでき、ワイヤ間に形成されるスリットの幅を正確に規定できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離装置に好適に用いられるワイヤスクリーン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離装置は、少なくとも2つの物質を含む材料に関してそれら2つの物質を分離するために用いられている。例えば、固形物に水分が含まれて材料が構成されている場合に、その固形物から水分を分離、すなわち脱水するために遠心分離装置が用いられている。従来の遠心分離装置として、特許文献1に開示されているように、複数のウェッジワイヤを互いに所定の目開きに並列させて平面状のスクリーンを形成し、このスクリーンによって液体を固形物から分離する、という技術が知られている。
【0003】
また、従来、特許文献2に開示されているように、リング状に形成したウェッジワイヤを軸方向に所定寸法の間隙を設けて多数並列させることによってドラム型のスクリーンを形成し、このスクリーンによって、固体と液体とを分離する、という技術が知られている。また、従来、特許文献3に開示されているように、円錐形状(すなわちコーン形状)のスクリーンを用いてスラリーから水分を分離する、という技術が知られている。この文献で水を通過させるためにスクリーン中に形成される穴が円形、正方形等といった縦横同寸法の形状なのか、一方向に長いスリット状なのかが明確ではないが、添付図を参照すると、その穴は円形等であることが予測される。
【0004】
また、従来、特許文献4に開示されているように、円筒形状のスクリーンを縦型に配設し、このスクリーンを自身の中心を通る軸線を中心として高速で回転させながら、その内部に材料を投入して、その材料内の水分を遠心力によって分離する、という技術が開示されている。この文献ではスクリーンに形成される脱水用の穴がどのような形状であるかについては詳しい説明がないが、この文献は本件出願と同じ出願人に係るものであり、スクリーン中に設けられる穴が円形状の穴であることは周知のところである。
【0005】
また、従来、特許文献5に開示されているように、上方にロート状に開放する脱水用カゴを設け、その周側部に脱水用のスリット(細長い穴)を設け、その穴を通して脱水を行う、という技術が知られている。また、従来、特許文献6に開示されているように、ステンレス製で三角断面を有するウェッジワイヤを、渦巻き円錐状に巻形成して外筒を形成し、この外筒を通して懸濁物を濾液と脱水ケーキとに分離する、という技術が知られている。
【0006】
【特許文献1】実願昭57−078586号(実開昭58−183203号)のマイクロフィルム)(第1,4頁、第1図)
【特許文献2】特開昭58−006215号公報(第1〜2頁、第1図)
【特許文献3】実願昭56−131263号(実開昭58−035944号)のマイクロフィルム)(第3頁、第1図)
【特許文献4】特開平9−187678号公報(第2〜3頁、図1)
【特許文献5】特開平5−208146号公報(第2頁、図1)
【特許文献6】特開平11−169616号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、鉱物である石灰石が泥水に混在した状態の原材料に対して上記の従来技術を適用して遠心分離処理による脱水を行った。近年では、多くの産業分野において、非常に高い脱水率の石灰石が要望されている。実験の結果及び考察によれば、上記の各従来技術に基づいてスクリーンを形成した上で原材料から水を分離して脱水済み製品としての石灰石を生成したところ、従来のスクリーンでは目標とする脱水率が得られないことが分かった。
【0008】
本発明者は、種々の検討を行った結果、従来のスクリーンでは目詰まりが発生し易く、そのために脱水率を上げることに限度があること、及びスクリーンの形状とそれに設ける脱水用の穴の形状とを相関的に工夫することにより、脱水率を向上できることを知見した。
【0009】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、スクリーンの目詰まりを防止することにより、脱水率等といった分離能力を格段に向上できるワイヤスクリーン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るワイヤスクリーンは、1つの軸線に沿って互いに間隔をおいて配置されており互いに内径が異なる複数のリング部材と、該複数のリング部材の内周面に固着されており前記1つの軸線の回りに円錐形状を成すように並べて設けられた複数のワイヤとを有し、該複数のワイヤの互いに隣接するものの間にスリットが形成されており、該スリットは前記円錐形状の小径端から大径端にわたって連続して真っ直ぐに延びていることを特徴とする。
【0011】
上記構成において、ワイヤの断面形状は、ウェッジ形(楔形又は三角形)、正方形、長方形、円形、楕円形等とすることができる。ウェッジ形状は、例えば図2(a−1)、(a−2)に示す形状である。また、長方形状は、例えば図2(a−3)に示す形状である。また、円錐形状の内周面となる面であるワイヤの内面の形状は、例えば図2(a)に示すように、内面の幅(w)が長さ(L)方向で一定である形状であっても良いし(この形状のワイヤを本明細書で「第1ワイヤ」ということにする)、あるいは、図2(b)に示すように、内面の幅(wx)が円錐形状の小径端から大径端にかけて徐々に大きくなるように変化する形状であっても良い(この形状のワイヤを本明細書で「第2ワイヤ」ということにする)。
【0012】
上記第1ワイヤの内面形状は、両端が円弧状、楕円状、長円状等になるかもしれないが、概ね、細長い長方形状である。また、第2ワイヤの内面の幅が徐々に大きくなるとは、一定の割合で(すなわち一定の傾きで直線的に)徐々に変化するのが望ましいが、変化の割合が長さ方向で多少変化するものであっても良い。第2ワイヤの内面の幅が一定の割合で徐々に大きくなるものとすれば、その面形状は、細長い楔形状、細長い三角形状、又は細長い台形状等になる。
【0013】
上記構成において、「固着」とは、例えば、溶接による固定、接着剤による固定である。また、複数のワイヤ間に形成されたスリットが連続して真っ直ぐに延びているというときの「連続して」とは、スリットが中断することがないということであり、「真っ直ぐに」とは、スリットが曲がっていないということである。スリット自体の幅は、円錐形状の小径端から大径端にかけて一定であっても良いし、徐々に変化しても良い。リング部材は少なくとも2個用いられる。リング部材の数が多くなるとワイヤスクリーンの機械的な強度は大きくなるかもしれないが、リング部材へワイヤを固着する作業が煩雑になるかもしれない。実際的には、リング部材は3個程度であることが望ましい。
【0014】
本発明に係るワイヤスクリーンによれば、スリットが円錐形状の小径端から大径端にわたって連続して真っ直ぐに延びているので、脱水対象である固形物及びそれから出る粉がスリットに詰まることを効果的に防止できる。
また、スリットは、リング部材の内周面上に複数のワイヤを固着することによって円錐形状に形成されるので、連続して真っ直ぐに延びるスリットをそれらのワイヤ間に容易に形成できる。例えば、(i)スリットに相当するゲージを用意しておき、そのゲージを用いて複数のワイヤを順次にリング部材に固着するという方法を採用できる。また、(ii)リング部材の内周面上に目印、例えばケガキ線を所定間隔で形成しておき、これらのケガキ線の上に複数のワイヤを順々に固着して行くという方法を採用できる。さらに、(iii)ワイヤの位置決めのための凹部を予めリング部材の内周面上に所定間隔で形成しておき、複数のワイヤを個々にその凹部にはめ込みさらに固着するという方法を採用できる。
【0015】
本発明に係るワイヤスクリーンにおいては、前記リング部材の内周面上に複数の凹部が設けられ、これらの凹部に前記ワイヤがはめ込まれていることが望ましい。このワイヤスクリーンは、上記したように、ワイヤの位置決めのための凹部を予めリング部材の内周面上に所定間隔で形成しておき、複数のワイヤを個々にその凹部にはめ込みさらに固着することによって製造されたものである。このワイヤスクリーンによれば、スリットを備えたワイヤスクリーンを複数のワイヤによって非常に容易に作製できる。しかも、ワイヤの位置決めを正確に行うことができるのでスリットの幅を正確に規定することができる。本発明で使用するワイヤの数は非常に多いが、本実施態様を用いれば、ワイヤの数が多くてもワイヤスクリーンを短時間で正確に形成できる。
【0016】
本発明に係るワイヤスクリーンにおいて、前記スリットの大径端側は外部へ開放していることが望ましい。仮に、スリットの大径側が開放端ではなく塞がっていると、脱水対象である固形物及びそれから出る粉によってスリットに目詰まりが発生し易く、脱水率が低下するおそれがある。これに対し、スリットの大径端が開放端となっていれば、スリットに目詰まりが発生することを防止でき、高い脱水率を長期間にわたって維持できる。
【0017】
本発明に係るワイヤスクリーンにおいて、前記スリットは前記円錐形状の小径端から大径端へ向けて徐々に広がっていることが望ましい。本発明において遠心力に基づいて脱液処理を受ける原材料は、円錐形状を成すワイヤスクリーンの小径端側から大径端側へ向けて移動する。従って、スリットが円錐形状の小径端から大径端へ向けて徐々に広がっていれば、スリットの目詰まりを効果的に防止できる。
【0018】
本発明に係るワイヤスクリーンにおいて、前記複数のワイヤの一部又は全部は断面形状が楔形状であるウェッジワイヤであることが望ましい。この場合には、楔形状の頂点が前記円錐形状の外周面となり、該楔形状の前記頂点に対向した底辺が前記円錐形状の内周面となる。この構成によれば、互いに隣接する第1ワイヤの間に形成されるスリットに関して、円錐形状のワイヤスクリーンの外周面におけるそのスリットの幅が、当該ワイヤスクリーンの内周面における幅よりも広くなる。このことは、仮にワイヤスクリーンの内周面側からスリットに固形物が入ったとしても、その固形物は広くなっているスリットの外周方向へ容易に移動して外部へ放出されるということであり、このため、スリットに目詰まりが発生することを防止できる。
【0019】
本発明に係るワイヤスクリーンにおいて、前記複数のワイヤの一部は内面の幅が長さ方向で一定である第1ワイヤ(例えば図2(a)参照)であり、他のワイヤは内面の幅が前記円錐形状の小径端から大径端にかけて徐々に大きくなるように変化する第2ワイヤ(例えば図2(b)参照)であり、前記円錐形状の周方向に関して前記第1ワイヤの複数個おきに前記第2ワイヤが少なくとも1つ設けられていることが望ましい。
このワイヤスクリーンは、第1ワイヤと第2ワイヤの2種類のワイヤによってワイヤスクリーンが形成されるものである。この構成によれば、第2ワイヤの幅(例えば図2(b)のwx)を適宜に調整することにより、複数の第1ワイヤの間に形成されるスリットの小径端から大径端にかけての幅を自由に調節することができる。
【0020】
本発明に係るワイヤスクリーンにおいて、前記複数のワイヤは内面の幅が長さ方向で一定である第1ワイヤ(例えば図2(a)参照)であることが望ましい。このワイヤスクリーンは第1ワイヤの1種類のワイヤによってワイヤスクリーンが形成されるものである。本実施態様のワイヤスクリーンによれば、使用する第1ワイヤの本数を調節することにより、それらの第1ワイヤ間に形成されるスリットの幅を調節できる。このワイヤスクリーンによれば、使用するワイヤが1種類であるので、部品点数を低く抑えることができ、コスト的に有利である。また、リング部材にワイヤ位置決め用の凹部を形成する場合には、その凹部の種類も1種類で足りるので、有利である。
【0021】
本発明に係るワイヤスクリーンにおいて、前記複数のワイヤは内面の幅が前記円錐形状の小径端から大径端にかけて徐々に大きくなるように変化する第2ワイヤ(例えば図2(b)参照)であることが望ましい。このワイヤスクリーンは第2ワイヤの1種類のワイヤによってワイヤスクリーンが形成されるものである。本実施態様のワイヤスクリーンによれば、使用する第2ワイヤの本数を調節することにより、それらの第2ワイヤ間に形成されるスリットの幅を調節できる。場合によっては、小径端から大径端にかけて幅が一定であるスリットを形成することができる。このワイヤスクリーンによれば、使用するワイヤが1種類であるので、部品点数を低く抑えることができ、コスト的に有利である。また、リング部材にワイヤ位置決め用の凹部を形成する場合には、その凹部の種類も1種類で足りるので、有利である。
【0022】
次に、本発明に係るワイヤスクリーンの製造方法は、互いに内径の大きさが異なる複数のリング部材を、それらの中心が1つの軸線上に互いに間隔をおいて位置するように配置する工程と、複数のワイヤを前記複数のリング部材の内周面上に円錐形状を成すように固着するワイヤ固着工程とを有し、前記ワイヤ固着工程では、互いに隣接する複数のワイヤの間にスリットが連続して真っ直ぐに形成されるように前記複数のワイヤが前記リング部材に固着されることを特徴とする。
【0023】
このワイヤスクリーンの製造方法によれば、本発明に係るワイヤスクリーンを製造することができる。製造されたそのワイヤスクリーンによれば、スリットが連続して真っ直ぐであるので、スリットに目詰まりが発生することを長期間にわたって防止でき、原材料の分離精度を長期間にわたって高く維持できる。製造作業は、複数のワイヤをリング部材の内周面上に順次に固着して行くだけであるので、非常に簡単である。
【0024】
本発明に係るワイヤスクリーンの製造方法において、前記リング部材の内周面上には前記ワイヤがはまり込む凹部が設けられていることが望ましい。この構成によれば、作業者はワイヤを凹部にはめ込むという画一的な作業を行うだけで済むので、作業が非常に簡単である。そして、それにも拘らず、ワイヤ間に形成されるスリットの幅を所望の値に正確に規定できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るワイヤスクリーンによれば、スリットが円錐形状の小径端から大径端にわたって連続して真っ直ぐに延びているので、脱液対象である固形物及びそれから出る粉がスリットに詰まることを効果的に防止できる。また、スリットは、リング部材の内周面上に複数のワイヤを固着することによって円錐形状に形成されるので、連続して真っ直ぐに延びるスリットをそれらのワイヤ間に容易に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係るワイヤスクリーン及びその製造方法を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がその実施形態に限定されるものでないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を参照するが、その図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0027】
(ワイヤスクリーン及びその製造方法の第1実施形態)
図1は本発明にかかるワイヤスクリーンの一実施形態を示している。このスクリーン1Aは、例えば、泥水の中に固形物が含まれている状態であるスラリーから遠心分離処理によって脱水を行って、水分含有率の低い製品として固形物を生成するために用いられる。スクリーン1Aは、小径端1Aaから大径端1Abにかけて広がる截頭円錐形状(すなわち頂部を切った状態の円錐形状)に形成されている。截頭円錐形状の小径端1Aa及び大径端1Abはいずれも開放端となっている。このワイヤスクリーンは断面がウェッジ状(すなわち楔状又は三角形状)のワイヤを用いて形成されるので、ウェッジワイヤスクリーンと呼ばれることがある。
【0028】
ワイヤスクリーン1Aは、複数(本実施形態得は3つ)のリング部材2a,2b,2cと、それらのリング部材によって支持されている第1ワイヤとしての複数のウェッジワイヤ3と、同じくそれらのリング部材によって支持されている第2ワイヤとしての複数の幅変化ワイヤ4とを有している。1本のウェッジワイヤ3は、図2(a)及びそのa−a断面である図2(a−1)に示すように、断面形状が楔(ウェッジ)形状で、その断面形状が長さ方向で一定である直線状の線状部材によって形成されている。楔断面の最大幅wは例えば1.5mmであり、厚さtは例えば3mmであり、ワイヤ3の全長Lは例えば310mmである。ウェッジワイヤ3における幅wの底面が図1の円錐形状のスクリーン1Aの内周面を形成している。
なお、リング部材2a,2b,2cの数は3個に限られず、使用するウェッジワイヤ3及び幅変化ワイヤ4の材質、それらの長さ、それらの数、スリット8の幅の寸法、並びに原材料の材質等に応じて、所望の分離性能を達成できるように、適宜に選定する。本実施形態の場合は、リング部材の数を7個とした場合にも良い結果が得られた。
【0029】
一方、1本の幅変化ワイヤ4は、図2(b)及びそのb−b断面である図2(b−1)に示すように、断面形状が矩形状で、その断面の幅wxが最小値w0から最大値w1まで連続的且つ均一な割合(すなわち傾斜)で変化する形状、すなわち平面的に見て細長い楔形状に形成されている。幅変化ワイヤ4の図2(b−1)で示す断面形状はb−b断面を長手方向のどの点にとるかによって、縦長の長方形であったり、正方形であったり、横長の長方形であったりする。幅変化ワイヤ4の全長Lはワイヤ3と同じで例えば310mmであり、断面幅の最小値w0は例えば2.22mmであり、断面幅の最大値w1は例えば11.3mmであり、断面の厚さtは4mmである。
【0030】
幅変化ワイヤ4における幅wxの面(表裏2面ある)のいずれか一方が図1の円錐形状のスクリーン1Aの内周面を形成している。図2(b)の場合は幅変化ワイヤ4の断面が矩形状であって幅wxの面が表裏両面に形成されるが、幅変化ワイヤ4の断面形状が三角形状(すなわち楔形状)であったり、台形状であったり、五角形状であったりすると、幅変化ワイヤ4における幅wxの面は1つだけ形成される。そして、この1つの面が図1の円錐形状の内周面を形成する。
【0031】
図1のリング部材2a,2b,2cは互いに内径が異なっているが、それらの構造自体は互いに同じであり、図3に示す通りである。図3は代表して中間のリング部材2bを示している。リング部材2bの外周面は均一な平面である。リング部材2bの内周面の全周には、部分拡大図に示すように、複数の矩形凹部6と複数の楔状凹部7とが交互に連続して形成されている。本実施形態の場合、隣接する矩形凹部6の間に7個の楔状凹部7が形成されている。隣接する矩形凹部6の間の楔状凹部7の数は、脱水処理の対象である原材料の状態に応じて7個以外の適宜の数を選定することができる。
【0032】
図1の小径端1Aa側のリング部材2a及び大径端1Ab側のリング部材2cに関しては、楔状凹部7の形状及び数は中間のリング部材2bと同じである。また、小径端側のリング部材2a及び大径端側のリング部材2cのそれぞれの矩形凹部6の数は、中間リング部材2bと同じである。しかしながら、平面形状が細長い楔形状である幅変化ワイヤ4を受けることができるようにするために、小径端側のリング部材2aの矩形凹部6の幅w2は、中間リング部材2bの矩形凹部6の幅w2よりも狭くなっており、さらに、大径端側のリング部材2cの矩形凹部6の幅w2は中間リング部材2bの矩形凹部6の幅w2よりも広くなっている。
【0033】
図1に示すスクリーン1Aを作製する際には、図1のリング部材2a,2b,2cを軸線X0を中心として互いに所定の間隔をおいて配置させ、それらのリング部材2a,2b,2cの楔状凹部7に、図2(a)のウェッジワイヤ3の先端鋭角部をはめ込み、さらに溶接、接着等によって固着する。そしてさらに、リング部材2a,2b,2cの矩形凹部6に、図2(b)の幅変化ワイヤ4の幅wx側をはめ込み、さらに溶接、接着等によって固着する。これらの作業をリング部材2a,2b,2cの楔状凹部7及び矩形凹部6の全てについて行うことにより、複数のワイヤ3,4が1つの軸線X0の回りに円錐形状を形成するように並べて設けられ、図1のスクリーン1Aが作製される。
【0034】
図4は図1のスクリーン1Aを矢印A方向から見た正面構造を示している。図4の部分拡大図に示すように、隣接する一対の幅変化ワイヤ4の間に7本のウェッジワイヤ3が設けられている。そして、互いに隣接するウェッジワイヤ3の間にスリット(すなわち線状の貫通隙間)8が形成されている。これらの多数のスリット8が原材料スラリーのうちの固形製品成分の通過を禁止し、原材料のうちの分離すべき成分、例えば水分の通過を許容する穴として機能する。これらのスリット8は大径端1Ab側において外部へ開放する状態となっている。
【0035】
図5は図1のスクリーン1Aを矢印B方向から見た側面構造を示している。図5に示すように、スクリーン1Aの截頭円錐形状の円錐傾斜角度αは約20°に設定される。但し、この傾斜角度αは原材料の状態及び目標とする脱水率に応じて適宜の値に選定される。この傾斜角度αは、リング部材2a,2b,2cの相互間隔及びそれらの内径を調節することによって所望の値に設定できる。なお、スクリーン1Aの周面の軸線X0方向の長さLはウェッジワイヤ3及び幅変化ワイヤ4の長さLそのものであり、本実施形態では310mmである。
【0036】
ウェッジワイヤ3の間に形成されるスリット8の幅は小径端1Aa側が狭く、大径端1Ab側が広くなるように幅変化ワイヤ4のテーパ形状(すなわち楔形状)が設定されている。具体的には、小径端側のスリット幅WS1が約0.2mmで、大径側のスリット幅WS2が約0.8mmとなるように設定されている。なお、幅変化ワイヤ4の楔形状の開き角度β(図2(b)参照)を調節することにより、ウェッジワイヤ3間のスリット8の開き角度を調節できる。具体的には、幅変化ワイヤ4の開き角度βを大きくすれば、スリット8の開き角度を小さくでき、逆に、幅変化ワイヤ4の開き角度βを小さくすれば、スリット8の開き角度を大きくできる。
【0037】
以上のように、本実施形態のワイヤスクリーン1Aにおいては、複数のワイヤ3,4が1つの軸線X0の回りに円錐形状を形成するように並べて設けられている。それらのワイヤ3,4の一部は内面の幅が長さ方向で一定であるウェッジワイヤ3であり、他のワイヤは内面の幅が長さ方向で変化する幅変形ワイヤ4である。幅変形ワイヤ4の内面の幅は円錐形状の小径端1Aaから大径端1Abにかけて徐々に、望ましくは一定の傾斜で、大きくなっている。円錐形状の周方向に関してウェッジワイヤ3の複数個おきに幅変形ワイヤ4が1本設けられている。幅変形ワイヤ4は複数本が隣接していても良い。複数のウェッジワイヤ3の互いに隣接するものの間にスリット8(図5参照)が設けられている。これらのスリット8は円錐形状の小径端1Aaから大径端1Abにわたって連続して真っ直ぐに延びると共に、それらのスリット8の大径端1Ab側は外部へ開放している。
【0038】
以下、本実施形態のウェッジワイヤスクリーン1Aの使用方法について説明する。図1において、截頭円錐形状の中心軸線X0を中心としてスクリーン1Aが矢印Cで示すように大径開口側から見て反時計方向に高速で回転される。もちろん、回転方向は逆方向であっても良い。そして、回転しているスクリーン1Aの内部(特に小径側1Aaに近い部分)に原材料スラリー(例えば固形物と水との混合物)が供給される。通常、原材料は大径側1Abの開口から投入されるが、これを小径側1Aaから投入しても差し支えはない。
【0039】
こうして投入された原材料は、回転するスクリーンから与えられる遠心力によってスクリーン1Aの内部表面、すなわちウェッジワイヤ3及び幅変化ワイヤ4のそれぞれの内周表面に付着しつつ、スクリーン1Aの円錐形状の傾きに従って大径端1Ab側へ向けて移動する。そして、その移動の間に遠心力の作用により、原材料中の水分がワイヤ3,4間のスリット8(図4及び図5の部分拡大図参照)を通ってスクリーン1Aの外部へ放出されて原材料が脱水され、脱水処理後の固形物がスクリーン1Aの大径端1Ab側の開口から外部へ放出されて、製品として回収される。
【0040】
本実施形態では、図5に示したように、スクリーン1Aのスリット8が截頭円錐形状の小径端1Aaから大径端1Abにわたって連続して(すなわち中断することなく)真っ直ぐに(すなわち曲がることなく)延びている。このため、脱水対象である固形物及びそれから出る粉がスリット8に詰まることを防止できる。
【0041】
また、本実施形態において、スリット8は大径端1Abにおいて外部へ向けて開放状態となっている。仮に、スリット8の大径側が開放端ではなく塞がっていると、脱水対象である固形物及びそれから出る粉によってスリット8に目詰まりが発生し易く、脱水率が低下するおそれがある。これに対し、スリット8の大径端が開放端となっていれば、スリット8に目詰まりが発生することを防止でき、高い脱水率を長期間にわたって維持できる。
【0042】
また、本実施形態では、スリット8の小径端1Aa側が狭く、大径端1Ab側に向けて一定の割合で徐々に広くなっている。このため、仮にスリット8の中に固形物又はその粉が入ったとしてもそれらは直ぐにスリット8の外部へ放出され、それ故、目詰まりの発生を防止できる。なお、本実施形態ではスリット8の幅を小径端1Aaから大径端1Abにかけて変化させたが、本発明はスリット8の幅が小径端1Aaから大径端1Abにかけて一定の場合も含むものである。
【0043】
また、本実施形態では、互いに隣接する一対の幅変化ワイヤ4の間に7本のウェッジワイヤ3を設けたが、一対の幅変化ワイヤ4の間に、より多くの数あるいはより少ない数のウェッジワイヤ3を設けても良い。それらの場合には、リング部材2a,2b,2cの内周面に設ける矩形凹部6及び楔状凹部7の数及び配設位置を適宜に変更する。また、本実施形態では図1において、3つのリング部材2a,2b,2cを用いたが、リング部材の数は2個でも良いし、4個以上でも良い。
【0044】
以上の実施形態では、図2(a−1)に示したように、断面が三角形である楔状の線状部材、いわゆるウェッジワイヤ3を用いて図1のスクリーン1Aを構成したが、このようなウェッジワイヤに代えて、図2(a−2)に示すような断面が五角形である楔状の線状部材であるウェッジワイヤや、図2(a−3)に示すような断面が長方形状の線状部材を用いてスクリーンを構成することもできる。また、断面が正方形状やその他の断面形状の線状部材を用いることも可能である。
【0045】
(ワイヤスクリーン及びその製造方法の第2実施形態)
図6は、本発明に係るワイヤスクリーン及びその製造方法の他の実施形態を示している。図1に示した第1実施形態のスクリーン1Aは、断面が楔形状である第1ワイヤとしての複数のウェッジワイヤ3と、平面が細長い楔形状である第2ワイヤとしての複数の幅変化ワイヤ4とを用いて形成した。これに対し、本実施形態のスクリーン1Bは、図2(b)の幅変化ワイヤ4を用いることなく、図2(a)に示すウェッジワイヤ3だけを複数本、リング部材2a,2b,2cに組み付けることによって形成されている。
【0046】
図7(a)は図6の矢印Dで示す大径端1Bbの一部分を正面方向から見た状態を拡大して示しており、リング部材2cが円弧状に現れている。また、図7(b)は矢印Eで示す大径端1Bbの一部分を側面方向から見た状態を拡大して示しており、リング部材2cが直線状に現れている。本実施形態においては、円錐形状の内周面となるウェッジワイヤ3の面の幅が小径端1Baから大径端1Bbにわたって均一であるので、ウェッジワイヤ3間に形成される個々のスリット8の小径端から大径端にわたっての開き角度が、図1に示す実施形態の場合におけるスリットの開き角度に比べて大きくなっている。
【0047】
以上のように、本実施形態のワイヤスクリーン1Bにおいては、複数のワイヤ3が1つの軸線X0の回りに円錐形状を形成するように並べて設けられており、それらのワイヤの全部は内面の幅が長さ方向で一定であるウェッジワイヤ3である。複数のウェッジワイヤ3の互いに隣接するものの間にスリット8(図7参照)が設けられている。これらのスリット8は円錐形状の小径端1Baから大径端1Bbにわたって連続して真っ直ぐに延びており、且つスリット8の大径端1Bb側は外部へ開放している。
【0048】
本実施形態のスクリーン1Bの製造方法は、基本的には、図1に示したスクリーン1Aの製造方法と同じである。異なるのは、使用するワイヤが図2(a)のウェッジワイヤ3の1種類であり、図3のリング部材2bの内周面に設けるはめ込み用の凹部もウェッジワイヤ3用の1種類である。このように、本実施形態のスクリーン1Bによれば、使用するワイヤが1種類であるので、部品コストを低減でき、しかもリング部材2a,2b,2cの作製も簡単になる。
【0049】
(ワイヤスクリーン及びその製造方法の第3実施形態)
図8は、本発明に係るワイヤスクリーン及びその製造方法のさらに他の実施形態を示している。図1に示した第1実施形態のスクリーン1Aでは、断面楔形状である複数のウェッジワイヤ3と平面形状が細長い楔形状である複数の幅変化ワイヤ4とを用いて形成した。また、図6に示した第2実施形態のスクリーン1Bでは、ウェッジワイヤ3だけによってスクリーンを形成した。これに対し、本実施形態のスクリーン1Cは、図2(a)のウェッジワイヤ3を用いることなく、図2(b)に示す幅変化ワイヤ4だけを複数本、リング部材2a,2b,2cに組み付けることによって形成されている。
【0050】
図9(a)は図8の矢印Fで示す大径端1Cbの一部分を正面方向から見た状態を拡大して示しており、リング部材2cが円弧状に現れている。また、図9(b)は矢印Gで示す大径端1Cbの一部分を側面方向から見た状態を拡大して示しており、リング部材2cが直線状に現れている。このスクリーン1Cは、図2(a)のウェッジワイヤ3を用いることなく、図2(b)に示す幅変化ワイヤ4だけを複数本、リング部材2a,2b,2cに組み付けることによって形成されている。幅変化ワイヤ4の断面形状は楔形状ではなく、長方形状又は正方形状の矩形状である。幅変化ワイヤ4の広がり角度βを適宜に調節すれば、隣接する幅変化ワイヤ4によって形成されるスリットの幅を小径端から大径端にかけて一定にすることができる。
【0051】
以上のように、本実施形態のワイヤスクリーン1Cにおいては、複数のワイヤ4が1つの軸線X0の回りに円錐形状を形成するように並べて設けられている。それらのワイヤ4の全部は内面の幅が長さ方向で変化する幅変化ワイヤ4であり。幅変化ワイヤ4の内面の幅は円錐形状の小径端1Caから大径端1Cbにかけて徐々に大きくなっている。これらの幅変化ワイヤ4の互いに隣接するものの間にスリット8が形成されており、これらのスリット8は円錐形状の小径端1Caから大径端1Cbにわたって連続して真っ直ぐに延びており、且つこれらのスリット8の大径端1Cb側は外部へ開放している。
【0052】
本実施形態のスクリーン1Cの製造方法も、基本的には、図1に示したスクリーン1Aの製造方法と同じである。異なるのは、使用するワイヤが図2(b)の幅変化ワイヤ4の1種類であり、図3のリング部材2bの内周面に設けるはめ込み用の凹部も幅変化ワイヤ4用の1種類である。このように、本実施形態のスクリーン1Cによれば、使用するワイヤが1種類であるので、部品コストを低減でき、しかもリング部材2a,2b,2cの作製も簡単になる。
【0053】
(その他の実施形態)
以上の実施形態においては、リング部材として3個のリング部材2a,2b,2cを用いて複数のワイヤ3,4を截頭円錐形状に支持した。これに限られず、リング部材の数は2個でも良く、あるいは4個以上でも良い。リング部材の数が多くなればワイヤスクリーンの機械的強度を上げることができるが、リング部材へワイヤを固着する作業が煩雑になる。リング部材の数は、実際的には、作業性を考慮すれば3個程度が望ましい。また、作業性及び機械的強度の両方を考慮すれば、7個程度が望ましい。
【0054】
(ワイヤスクリーンの使用例)
以下、本発明のワイヤスクリーンの構造及び機能をより理解し易くするために、その使用例について説明する。この使用例では、図1に示した実施形態に係るワイヤスクリーン1Aを用いるものとする。
【0055】
図10は、ワイヤスクリーンを使用した遠心分離装置の一例の外観構造を示している。図11はその遠心分離装置の正面断面構造を示している。図10において、遠心分離装置11は、遠心分離処理を行う遠心分離部12と、処理のための駆動力を発生する動力部13とを有している。なお、以下で説明される構造要素は、特に指摘がない場合には、ステンレス、構造用鋼、等といった金属によって形成される。
【0056】
遠心分離部12の頂部には原材料を投入するための原材料供給口14が設けられている。本実施形態では、鉱山から採石された鉱石の一種である石灰石が泥水に含まれた状態であるスラリ−が原材料として投入されるものとする。なお、本実施形態では、直径20mm以下の石灰石がスラリー状態で投入され、この石灰石が脱水された状態で製品として取り出されるものとする。原材料供給口14に図11に示すホッパ16が装備される。遠心分離部12の下部に排液管としての排水管17が設けられている。この排水管17は、遠心分離処理によってスラリーから分離された水を外部へ排出するものである。遠心分離部12の底部に製品排出口18が設けられている。この製品排出口18は、遠心分離処理によって水分が脱離(すなわち脱水)された状態の製品としての石灰石を外部へ排出するものである。
【0057】
図11において、動力部13の内部に減速機19が設けられている。減速機19は、アウタロータ21及びその内部に設けられたインナロータ22を有している。それらのロータの回転軸線は一致している。つまり、アウタロータ21とインナロータ22は同軸回転構造となっている。アウタロータ21は2つの軸受23,23によって機枠24に回転自在に支持されている。インナロータ22はその一方が軸受26によってアウタロータ21に回転自在に支持され、他方が軸受27によって機枠24に回転自在に支持されている。以上の構成により、アウタロータ21とインナロータ22とは、互いに独立して回転自在となっている。
【0058】
アウタロータ21の左端部にプーリ28が設けられている。機枠24の外部に電動モータ29が設けられ、そのモータの出力軸にプーリ31が設けられている。プーリ28とプーリ31との間にベルト32が掛け渡されている。モータ29が作動してその出力軸が回転すると、その回転がベルト32によって伝動されてアウタロータ21が回転する。例えば、500〜1800rpmの高速で回転する。
【0059】
アウタロータ21とインナロータ22との間には任意の減速機構が設けられており、このため、インナロータ22はアウタロータ21よりも高速度で同じ方向へ回転する。例えば、アウタロータ21の回転速度の1/59の数値だけ高い速度、すなわち508〜1831rpmの高速で回転する。このように、アウタロータ21とインナロータ22との間で回転速度に差を持たせているのは、遠心分離部12内で行われる遠心分離処理の際の原材料の動きを安定且つ滑らかにするためであるが、詳しくは後述する。
【0060】
インナロータ22をアウタロータ21よりも所定の速度だけ速く回転させるための減速機構としては、従来から知られている各種の減速機構を採用できる。例えば、遊星歯車減速機構、ハーモニックドライブ減速機構、サイクロ減速機構、RV減速機構、ボール減速機構、その他任意の減速機構を採用できる。本実施形態では、サイクロ減速機構を用いるものとする。このサイクロ減速機構は、例えば、遊星歯車機構と円弧系歯車との組合せによって構成できる。
【0061】
アウタロータ21の先端は遠心分離部12の内部に突出し、その突出部分にフランジ33が固着されている。そしてこのフランジ33にバスケット34が固着されている。インナロータ22の先端は遠心分離部12の内部においてアウタロータ21の外部へ突出している。そして、その突出部にスクリュー体35のボス36が袋ナット37によって締め付けられて固着されている。アウタロータ21の先端に固着されたフランジ33の外周面と、インナロータ22の先端に固着されたボス36の内周面との間にはわずかの隙間が形成されており、このため、フランジ33とボス36は互いに他の回転を拘束することなく独自に回転できる。
【0062】
バスケット34の下部には半円筒形状の排水路38が設けられており、その排水路38の先端に排水管17が連続して設けられている。バスケット34の右側の空間はバスケット34から放出される脱水処理後の石灰石が飛び出る空間であり、この空間の下部に製品排出口18が開口として開けられている。
【0063】
遠心分離部12の上部に設けられた原材料供給口14の下部に材料搬送管39が設けられている。材料搬送管39の下側先端の開口39aはスクリュー体35の内部まで延びている。また、スクリュー体35の右側に水平方向に延びる空気搬送管41が設けられている。空気搬送管41の外部側の開口41aは遠心分離部12の外部へ開口している。材料搬送管39は空気搬送管41の側壁を貫通してスクリュー体35の内部まで延びている。
【0064】
図12(a)はスクリュー体35の側面断面構造を示している。図12(b)は図12(a)の矢印Hに従ったスクリュー体35の正面構造を示している。図12(a)において、スクリュー体35は、インナロータ22の先端に固着される既述のボス36と、このボス36の外周面に固着された円錐形状の側壁42と、その側壁42の外周面に設けられた複数個(実施形態では6個)の羽根部材43とを有する。ボス36はスクリュー体35の内壁として機能する。側壁42がボス36に固着される部分には半径方向へ突出する遮蔽用フランジ44が設けられている。側壁42の小径端は内壁であるボス36に固着され、大径端が開放端となっている。ボス36は円錐形状すなわち山形形状となっている。
【0065】
側壁42のボス36に取り付けられている部分の近傍には、原材料を内部から外部へ通過させるための材料用開口46が側壁42の円周方向に沿って適宜の大きさで複数、設けられている。また、材料用開口46よりもボス36から遠い側の側壁42の内周面上に仕切り部材47が固定されている。この仕切り部材47は円錐形状の傾斜方向が側壁42の円錐傾斜方向と逆向きである円錐形状に形成されている。図11の材料搬送管39の開口39aの近傍は仕切り部材47の先端開口にはまり込んでおり、開口39aは仕切り部材47の内部領域に臨み出ている。
【0066】
ボス36から見て仕切り部材47よりも遠い側の側壁42の内周面上に複数、本実施形態では2つの気流仕切り部材48a及び48bが互いに間隔をおいて固定されている。これらの仕切り部材48a,48bは、いずれも、仕切り部材47と同じ円錐傾斜方向の円錐形状に形成されている。空気搬送管41の先端開口近傍は外から見て奥側の気流仕切り部材48aの内部に入り込んでいる。仕切り部材47と気流仕切り部材48aとの間の側壁42、及び気流仕切り部材48a,48b同士の間の側壁42に複数の空気用開口49が設けられている。外部側の気流仕切り部材48bの開放端は、空気搬送管41に設けられていて半径方向へ突出するフランジ51によって塞がれている。
【0067】
側壁42の外周面上に設けられた個々の羽根部材43は螺旋状に形成されている。羽根部材43の螺旋形状は、側壁42のボス36への付け根部分(すなわち遮蔽用フランジ44が設けられた部分)の近傍から始まって、側壁42の大径端(すなわち開放端)で終わっている。1つの羽根部材43の螺旋形状は、小径端側の始点から大径端側の終点まででちょうど1周期となるような形状であっても良いし、始点から終点までの間に1周期が収まらないような形状であっても良いし、あるいは、始点から終点までの間に1周期以上が収まるような形状であっても良い。この螺旋形状は、スクリュー体35が予め決められた正反いずれかの時計方向へ回転したときに側壁42の外周面上に存在する原材料をボス36が在る小径端から大径端へ向けて搬送するような螺旋形状となっている。
【0068】
図11においてスクリュー体35を覆うように設けられたバスケット34は、図13に示すように、円錐形状で骨組み構造であるフレーム52の内部にスクリーン1Aを組み付けて固定することによって形成されている。
【0069】
図14は、フレーム52にスクリーン1Aを装着してバスケット34を作製する過程を模式的に示している。図15は、フレーム52に対するスクリーン1Aの装着が完了してバスケット34が完成した状態を示している。図14において、フレーム52を構成する複数のリブ53のうち、小径側のもの、中央のもの、大径側のものの3つの大径側の面には座ぐり面である凹部54が設けられており、スクリーン1Aの各リング部材2a,2b,2cがそれぞれの凹部54にはめ込まれ、さらにボルト止めされることにより、スクリーン1Aがフレーム52に固着されて両者が一体になっている。リング部材2a〜2cの数が増えた場合には、それに応じて凹部54を設けるリブ53の数も増える。
【0070】
以下、上記構成の遠心分離装置の動作を説明する。
まず、図11において、遠心分離処理(すなわち遠心脱水処理)の対象である原材料がホッパ16内へ投入される。この原材料は鉱山で採掘された石灰石が泥水の中に含まれている状態である。この原材料の水分量は、通常、3〜11重量%である。採掘された石灰石の大きさは区々であるが、ホッパ16へ供給される石灰石は、予め、その大きさが直径20mm以下のものに選別されている。この選別は、主に、遠心分離装置11の内部構造を損傷から保護するためのものである。
【0071】
なお、原材料をホッパ16内へ供給するのと同時に、図示しない水供給装置によってホッパ16内へ水を供給しても良い。この水の供給により、原材料内の石灰石を洗浄することができ、それ故、ホッパ16内へ原材料を供する前に原材料を前洗浄処理する必要がなくなる。本実施形態の遠心分離装置11は非常に高効率で水を分離(すなわち脱水)できるので、このように原材料に水を加えたとしても、最終的に得られる製品としての石灰石の水分量を所望の値以下に抑えることができる。
【0072】
また、加水することなく原材料をそのままバスケット34内へ投入すると、その原材料はバスケット34の内部の片寄った位置で塊状となって回転移動する傾向にあり、回転するバスケット34のバランスが崩れて振動が発生するおそれがあり、その結果、部品の破損や分離精度の低下が生じるおそれがある。これに対し、脱液処理前の原材料に水を加えることにすれば、バスケット34の内部での原材料の流動を促すことができ、原材料をバスケット34の内部で片寄ることを防止して満遍なく行き渡すことができ、回転するバスケット34のバランスが崩れること及び振動が発生することを防止でき、その結果、部品の破損や分離精度の低下を防止できる。
【0073】
遠心分離装置11において電動モータ29が作動すると、その出力軸が回転し、ベルト32によってその回転が減速機19へ伝えられてアウタロータ21が回転する。この回転の方向は矢印I方向から見て正時計方向及び反時計方向のいずれであっても良い。また、この回転の回転数は、例えば500〜1800rpmの範囲内の適宜の値である。アウタロータ21の回転は減速機19内の減速機構(本実施形態ではサイクロ減速機構)の働きによってインナロータ22へ伝えられてインナロータ22が回転する。この回転の方向はアウタロータ21と同じであり、回転数はアウタロータ22の回転数の1/59だけ増速した値、すなわち508〜1851rpmの範囲内の値である。なお、アウタロータ21に対するインナロータ22の増速比は実際の脱水状況を調べた上で適宜に設定する。
【0074】
アウタロータ21の先端に固着されたバスケット34はアウタロータ21と一体に中心軸線を中心として回転する。一方、インナロータ22の先端に固着されたスクリュー体35はインナロータ22と一体に中心軸線を中心として、バスケット34よりも高速度で回転する。つまり、バスケット34とスクリュー体35は異なる速度で相対回転する。材料搬送管39の内部を流れた原材料(石灰石及び水)は、開口39aからスクリュー体35の内部、特に仕切り部材47の内部に放出される。放出された原材料は内壁であるボス36に衝突し、さらに遠心力の作用により半径方向へ移動し、側壁42の根元部分に設けられた材料用開口46を通って、バスケット34の内周面(すなわちスクリーン1A)とスクリュー体35の外周面との間の円錐状の環状空間(すなわち脱水領域)内へ供給される。
【0075】
脱水領域に入った原材料は、バスケット34の高速回転の作用により遠心力を受けてスクリーン1Aの内周面に付着する。さらに、原材料は、バスケット34に対して相対回転するスクリュー体35の外周に設けられた羽根部材43によって掻き出されて、スクリーン1Aに付着しながら大径の開放端方向へ螺旋状に移動する。原材料がこのようにしてスクリーン1A上を移動する間、図5において複数のウェッジワイヤ3の間に形成された複数のスリット8を通して原材料内の水が外部へ放出されて、原材料が脱水される。一般的には、この脱水により、直径10〜3mmの石灰石は0.7重量%程度の含水率まで脱水され、直径3mm以下の石灰石は1.1重量%程度の含水率まで脱水される。なお、内壁であるボス36は中心部が高い円錐形状、すなわち山形形状に形成されているので、材料搬送管39の開口39aから放出された原材料はボス36の頂部から裾部へ向けて均一に分散される。これにより、材料用開口46付近での原材料の詰まりを防止でき、原材料の安定した流れを実現できる。
【0076】
上記のような遠心力に基づいた脱水処理が行われている間、図11において、図示しない熱風供給装置から空気搬送管41へ熱風、すなわち高温空気流が供給される。供給された熱風は、空気搬送管41によってスクリュー体35の内部、特に仕切り部材47の外側領域へ供給される。熱風の温度は、例えば110℃〜130℃の範囲内の適宜の値を目標として設定されている。この熱風は、スクリュー体35の内部に設けた気流仕切り部材48a,48bに沿って側壁42へ向けて流れ、されに側壁42に設けた複数の空気用開口49を通ってスクリーン1Aの広い面積へ均等に吹き付けられ、スリット8を通して外部へ流れる。スクリーン1Aの内周面に沿って移動する原材料はその高温空気流によって乾燥され、この結果、原材料が脱水される。
【0077】
このように、本実施形態では、遠心力による脱水と高温空気流を用いた乾燥による脱水との協働により、きわめて高効率の脱水を行うことができ、石灰石を0.3重量%程度の含水率まで脱水できる。本実施形態におけるスクリーン1Aのスリット8(図5参照)はスクリーン1Aの回転軸線を中心とする周回方向に設けられるのではなく、回転軸線に沿った方向に連続して(すなわち中断することなく)真っ直ぐに(すなわち曲がることなく
)設けられるので、石灰石等がスリット8に詰まることが無くなった。しかも、スリット8の大径端部は外部へ向けて開放されているので、仮にスリット8内に石灰石等が入ったとしても、その石灰石は開放端において容易に外部へ放出される。スリット8に関するこのような構成は、遠心力による脱水に加えて熱風乾燥による脱水を併せて行うようにした本実施形態に関して非常に効果的であることが分かった。
【0078】
脱水処理によって石灰石から分離した水は、排水路38によって排水管17へ集められて外部の所定箇所へ排出される。一方、脱水処理によって高効率で脱水された製品としての石灰石は製品排出口18を通して外部へ回収される。
【0079】
以上の説明では、本発明に係るワイヤスクリーンを遠心分離装置に適用して脱水処理を行うものとした。しかしながら、本発明のワイヤスクリーンは他の任意の装置にも適用できる。例えば、第1の固形物と第2の固形物とを分離する分離装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係るワイヤスクリーンの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】ワイヤスクリーンの構成要素であるワイヤの一実施形態を示す図である。
【図3】ワイヤスクリーンの構成要素であるリング部材の一実施形態を示す図である。
【図4】図1のワイヤスクリーンの正面図である。
【図5】図1のワイヤスクリーンの側面図である。
【図6】本発明に係るワイヤスクリーンの他の実施形態を示す斜視図である。
【図7】図6のワイヤスクリーンの部分拡大図である。
【図8】本発明に係るワイヤスクリーンのさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】図8のワイヤスクリーンの部分拡大図である。
【図10】本発明に係るワイヤスクリーンの使用例である遠心分離装置の一例を示す斜視図である。
【図11】図10の遠心分離装置の正面断面図である。
【図12】図11の遠心分離装置の構成要素であるスクリュー体を示す図である。
【図13】図11の遠心分離装置の構成要素であるバスケットを示す斜視図である。
【図14】図13のバスケットの分解図である。
【図15】図13のバスケットの側面断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1A,1B,1C.ワイヤスクリーン、 2a,2b,2c.リング部材、
3.ウェッジワイヤ、 4.幅変化ワイヤ、 6.矩形凹部、 7.楔状凹部、 8.スリット、 11.遠心分離装置、 12.遠心分離部、 13.動力部、 14.原材料供給口、 16.ホッパ、 17.排水管、 18.製品排出口、 19.減速機、
21.アウタロータ、 22.インナロータ、 23,26,27.軸受、
24.機枠、 28,31.プーリ、 29.電動モータ 、32.ベルト、
33.フランジ、 34.バスケット、 35.スクリュー体、 36.ボス部、
37.袋ナット、 38.排水路、 39.材料搬送管、 39a.開口、
41.空気搬送管、 41a.管の開口、 42.側壁、 43.羽根部材、
44.遮蔽用フランジ、 46.開口、 47.仕切り部材、
48a,48b.気流仕切り部材、 49.空気用開口、 51.フランジ、
52.フレーム、 53.リブ、 54.凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離装置に好適に用いられるワイヤスクリーン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離装置は、少なくとも2つの物質を含む材料に関してそれら2つの物質を分離するために用いられている。例えば、固形物に水分が含まれて材料が構成されている場合に、その固形物から水分を分離、すなわち脱水するために遠心分離装置が用いられている。従来の遠心分離装置として、特許文献1に開示されているように、複数のウェッジワイヤを互いに所定の目開きに並列させて平面状のスクリーンを形成し、このスクリーンによって液体を固形物から分離する、という技術が知られている。
【0003】
また、従来、特許文献2に開示されているように、リング状に形成したウェッジワイヤを軸方向に所定寸法の間隙を設けて多数並列させることによってドラム型のスクリーンを形成し、このスクリーンによって、固体と液体とを分離する、という技術が知られている。また、従来、特許文献3に開示されているように、円錐形状(すなわちコーン形状)のスクリーンを用いてスラリーから水分を分離する、という技術が知られている。この文献で水を通過させるためにスクリーン中に形成される穴が円形、正方形等といった縦横同寸法の形状なのか、一方向に長いスリット状なのかが明確ではないが、添付図を参照すると、その穴は円形等であることが予測される。
【0004】
また、従来、特許文献4に開示されているように、円筒形状のスクリーンを縦型に配設し、このスクリーンを自身の中心を通る軸線を中心として高速で回転させながら、その内部に材料を投入して、その材料内の水分を遠心力によって分離する、という技術が開示されている。この文献ではスクリーンに形成される脱水用の穴がどのような形状であるかについては詳しい説明がないが、この文献は本件出願と同じ出願人に係るものであり、スクリーン中に設けられる穴が円形状の穴であることは周知のところである。
【0005】
また、従来、特許文献5に開示されているように、上方にロート状に開放する脱水用カゴを設け、その周側部に脱水用のスリット(細長い穴)を設け、その穴を通して脱水を行う、という技術が知られている。また、従来、特許文献6に開示されているように、ステンレス製で三角断面を有するウェッジワイヤを、渦巻き円錐状に巻形成して外筒を形成し、この外筒を通して懸濁物を濾液と脱水ケーキとに分離する、という技術が知られている。
【0006】
【特許文献1】実願昭57−078586号(実開昭58−183203号)のマイクロフィルム)(第1,4頁、第1図)
【特許文献2】特開昭58−006215号公報(第1〜2頁、第1図)
【特許文献3】実願昭56−131263号(実開昭58−035944号)のマイクロフィルム)(第3頁、第1図)
【特許文献4】特開平9−187678号公報(第2〜3頁、図1)
【特許文献5】特開平5−208146号公報(第2頁、図1)
【特許文献6】特開平11−169616号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、鉱物である石灰石が泥水に混在した状態の原材料に対して上記の従来技術を適用して遠心分離処理による脱水を行った。近年では、多くの産業分野において、非常に高い脱水率の石灰石が要望されている。実験の結果及び考察によれば、上記の各従来技術に基づいてスクリーンを形成した上で原材料から水を分離して脱水済み製品としての石灰石を生成したところ、従来のスクリーンでは目標とする脱水率が得られないことが分かった。
【0008】
本発明者は、種々の検討を行った結果、従来のスクリーンでは目詰まりが発生し易く、そのために脱水率を上げることに限度があること、及びスクリーンの形状とそれに設ける脱水用の穴の形状とを相関的に工夫することにより、脱水率を向上できることを知見した。
【0009】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、スクリーンの目詰まりを防止することにより、脱水率等といった分離能力を格段に向上できるワイヤスクリーン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るワイヤスクリーンは、1つの軸線に沿って互いに間隔をおいて配置されており互いに内径が異なる複数のリング部材と、該複数のリング部材の内周面に固着されており前記1つの軸線の回りに円錐形状を成すように並べて設けられた複数のワイヤとを有し、該複数のワイヤの互いに隣接するものの間にスリットが形成されており、該スリットは前記円錐形状の小径端から大径端にわたって連続して真っ直ぐに延びていることを特徴とする。
【0011】
上記構成において、ワイヤの断面形状は、ウェッジ形(楔形又は三角形)、正方形、長方形、円形、楕円形等とすることができる。ウェッジ形状は、例えば図2(a−1)、(a−2)に示す形状である。また、長方形状は、例えば図2(a−3)に示す形状である。また、円錐形状の内周面となる面であるワイヤの内面の形状は、例えば図2(a)に示すように、内面の幅(w)が長さ(L)方向で一定である形状であっても良いし(この形状のワイヤを本明細書で「第1ワイヤ」ということにする)、あるいは、図2(b)に示すように、内面の幅(wx)が円錐形状の小径端から大径端にかけて徐々に大きくなるように変化する形状であっても良い(この形状のワイヤを本明細書で「第2ワイヤ」ということにする)。
【0012】
上記第1ワイヤの内面形状は、両端が円弧状、楕円状、長円状等になるかもしれないが、概ね、細長い長方形状である。また、第2ワイヤの内面の幅が徐々に大きくなるとは、一定の割合で(すなわち一定の傾きで直線的に)徐々に変化するのが望ましいが、変化の割合が長さ方向で多少変化するものであっても良い。第2ワイヤの内面の幅が一定の割合で徐々に大きくなるものとすれば、その面形状は、細長い楔形状、細長い三角形状、又は細長い台形状等になる。
【0013】
上記構成において、「固着」とは、例えば、溶接による固定、接着剤による固定である。また、複数のワイヤ間に形成されたスリットが連続して真っ直ぐに延びているというときの「連続して」とは、スリットが中断することがないということであり、「真っ直ぐに」とは、スリットが曲がっていないということである。スリット自体の幅は、円錐形状の小径端から大径端にかけて一定であっても良いし、徐々に変化しても良い。リング部材は少なくとも2個用いられる。リング部材の数が多くなるとワイヤスクリーンの機械的な強度は大きくなるかもしれないが、リング部材へワイヤを固着する作業が煩雑になるかもしれない。実際的には、リング部材は3個程度であることが望ましい。
【0014】
本発明に係るワイヤスクリーンによれば、スリットが円錐形状の小径端から大径端にわたって連続して真っ直ぐに延びているので、脱水対象である固形物及びそれから出る粉がスリットに詰まることを効果的に防止できる。
また、スリットは、リング部材の内周面上に複数のワイヤを固着することによって円錐形状に形成されるので、連続して真っ直ぐに延びるスリットをそれらのワイヤ間に容易に形成できる。例えば、(i)スリットに相当するゲージを用意しておき、そのゲージを用いて複数のワイヤを順次にリング部材に固着するという方法を採用できる。また、(ii)リング部材の内周面上に目印、例えばケガキ線を所定間隔で形成しておき、これらのケガキ線の上に複数のワイヤを順々に固着して行くという方法を採用できる。さらに、(iii)ワイヤの位置決めのための凹部を予めリング部材の内周面上に所定間隔で形成しておき、複数のワイヤを個々にその凹部にはめ込みさらに固着するという方法を採用できる。
【0015】
本発明に係るワイヤスクリーンにおいては、前記リング部材の内周面上に複数の凹部が設けられ、これらの凹部に前記ワイヤがはめ込まれていることが望ましい。このワイヤスクリーンは、上記したように、ワイヤの位置決めのための凹部を予めリング部材の内周面上に所定間隔で形成しておき、複数のワイヤを個々にその凹部にはめ込みさらに固着することによって製造されたものである。このワイヤスクリーンによれば、スリットを備えたワイヤスクリーンを複数のワイヤによって非常に容易に作製できる。しかも、ワイヤの位置決めを正確に行うことができるのでスリットの幅を正確に規定することができる。本発明で使用するワイヤの数は非常に多いが、本実施態様を用いれば、ワイヤの数が多くてもワイヤスクリーンを短時間で正確に形成できる。
【0016】
本発明に係るワイヤスクリーンにおいて、前記スリットの大径端側は外部へ開放していることが望ましい。仮に、スリットの大径側が開放端ではなく塞がっていると、脱水対象である固形物及びそれから出る粉によってスリットに目詰まりが発生し易く、脱水率が低下するおそれがある。これに対し、スリットの大径端が開放端となっていれば、スリットに目詰まりが発生することを防止でき、高い脱水率を長期間にわたって維持できる。
【0017】
本発明に係るワイヤスクリーンにおいて、前記スリットは前記円錐形状の小径端から大径端へ向けて徐々に広がっていることが望ましい。本発明において遠心力に基づいて脱液処理を受ける原材料は、円錐形状を成すワイヤスクリーンの小径端側から大径端側へ向けて移動する。従って、スリットが円錐形状の小径端から大径端へ向けて徐々に広がっていれば、スリットの目詰まりを効果的に防止できる。
【0018】
本発明に係るワイヤスクリーンにおいて、前記複数のワイヤの一部又は全部は断面形状が楔形状であるウェッジワイヤであることが望ましい。この場合には、楔形状の頂点が前記円錐形状の外周面となり、該楔形状の前記頂点に対向した底辺が前記円錐形状の内周面となる。この構成によれば、互いに隣接する第1ワイヤの間に形成されるスリットに関して、円錐形状のワイヤスクリーンの外周面におけるそのスリットの幅が、当該ワイヤスクリーンの内周面における幅よりも広くなる。このことは、仮にワイヤスクリーンの内周面側からスリットに固形物が入ったとしても、その固形物は広くなっているスリットの外周方向へ容易に移動して外部へ放出されるということであり、このため、スリットに目詰まりが発生することを防止できる。
【0019】
本発明に係るワイヤスクリーンにおいて、前記複数のワイヤの一部は内面の幅が長さ方向で一定である第1ワイヤ(例えば図2(a)参照)であり、他のワイヤは内面の幅が前記円錐形状の小径端から大径端にかけて徐々に大きくなるように変化する第2ワイヤ(例えば図2(b)参照)であり、前記円錐形状の周方向に関して前記第1ワイヤの複数個おきに前記第2ワイヤが少なくとも1つ設けられていることが望ましい。
このワイヤスクリーンは、第1ワイヤと第2ワイヤの2種類のワイヤによってワイヤスクリーンが形成されるものである。この構成によれば、第2ワイヤの幅(例えば図2(b)のwx)を適宜に調整することにより、複数の第1ワイヤの間に形成されるスリットの小径端から大径端にかけての幅を自由に調節することができる。
【0020】
本発明に係るワイヤスクリーンにおいて、前記複数のワイヤは内面の幅が長さ方向で一定である第1ワイヤ(例えば図2(a)参照)であることが望ましい。このワイヤスクリーンは第1ワイヤの1種類のワイヤによってワイヤスクリーンが形成されるものである。本実施態様のワイヤスクリーンによれば、使用する第1ワイヤの本数を調節することにより、それらの第1ワイヤ間に形成されるスリットの幅を調節できる。このワイヤスクリーンによれば、使用するワイヤが1種類であるので、部品点数を低く抑えることができ、コスト的に有利である。また、リング部材にワイヤ位置決め用の凹部を形成する場合には、その凹部の種類も1種類で足りるので、有利である。
【0021】
本発明に係るワイヤスクリーンにおいて、前記複数のワイヤは内面の幅が前記円錐形状の小径端から大径端にかけて徐々に大きくなるように変化する第2ワイヤ(例えば図2(b)参照)であることが望ましい。このワイヤスクリーンは第2ワイヤの1種類のワイヤによってワイヤスクリーンが形成されるものである。本実施態様のワイヤスクリーンによれば、使用する第2ワイヤの本数を調節することにより、それらの第2ワイヤ間に形成されるスリットの幅を調節できる。場合によっては、小径端から大径端にかけて幅が一定であるスリットを形成することができる。このワイヤスクリーンによれば、使用するワイヤが1種類であるので、部品点数を低く抑えることができ、コスト的に有利である。また、リング部材にワイヤ位置決め用の凹部を形成する場合には、その凹部の種類も1種類で足りるので、有利である。
【0022】
次に、本発明に係るワイヤスクリーンの製造方法は、互いに内径の大きさが異なる複数のリング部材を、それらの中心が1つの軸線上に互いに間隔をおいて位置するように配置する工程と、複数のワイヤを前記複数のリング部材の内周面上に円錐形状を成すように固着するワイヤ固着工程とを有し、前記ワイヤ固着工程では、互いに隣接する複数のワイヤの間にスリットが連続して真っ直ぐに形成されるように前記複数のワイヤが前記リング部材に固着されることを特徴とする。
【0023】
このワイヤスクリーンの製造方法によれば、本発明に係るワイヤスクリーンを製造することができる。製造されたそのワイヤスクリーンによれば、スリットが連続して真っ直ぐであるので、スリットに目詰まりが発生することを長期間にわたって防止でき、原材料の分離精度を長期間にわたって高く維持できる。製造作業は、複数のワイヤをリング部材の内周面上に順次に固着して行くだけであるので、非常に簡単である。
【0024】
本発明に係るワイヤスクリーンの製造方法において、前記リング部材の内周面上には前記ワイヤがはまり込む凹部が設けられていることが望ましい。この構成によれば、作業者はワイヤを凹部にはめ込むという画一的な作業を行うだけで済むので、作業が非常に簡単である。そして、それにも拘らず、ワイヤ間に形成されるスリットの幅を所望の値に正確に規定できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るワイヤスクリーンによれば、スリットが円錐形状の小径端から大径端にわたって連続して真っ直ぐに延びているので、脱液対象である固形物及びそれから出る粉がスリットに詰まることを効果的に防止できる。また、スリットは、リング部材の内周面上に複数のワイヤを固着することによって円錐形状に形成されるので、連続して真っ直ぐに延びるスリットをそれらのワイヤ間に容易に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係るワイヤスクリーン及びその製造方法を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がその実施形態に限定されるものでないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を参照するが、その図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0027】
(ワイヤスクリーン及びその製造方法の第1実施形態)
図1は本発明にかかるワイヤスクリーンの一実施形態を示している。このスクリーン1Aは、例えば、泥水の中に固形物が含まれている状態であるスラリーから遠心分離処理によって脱水を行って、水分含有率の低い製品として固形物を生成するために用いられる。スクリーン1Aは、小径端1Aaから大径端1Abにかけて広がる截頭円錐形状(すなわち頂部を切った状態の円錐形状)に形成されている。截頭円錐形状の小径端1Aa及び大径端1Abはいずれも開放端となっている。このワイヤスクリーンは断面がウェッジ状(すなわち楔状又は三角形状)のワイヤを用いて形成されるので、ウェッジワイヤスクリーンと呼ばれることがある。
【0028】
ワイヤスクリーン1Aは、複数(本実施形態得は3つ)のリング部材2a,2b,2cと、それらのリング部材によって支持されている第1ワイヤとしての複数のウェッジワイヤ3と、同じくそれらのリング部材によって支持されている第2ワイヤとしての複数の幅変化ワイヤ4とを有している。1本のウェッジワイヤ3は、図2(a)及びそのa−a断面である図2(a−1)に示すように、断面形状が楔(ウェッジ)形状で、その断面形状が長さ方向で一定である直線状の線状部材によって形成されている。楔断面の最大幅wは例えば1.5mmであり、厚さtは例えば3mmであり、ワイヤ3の全長Lは例えば310mmである。ウェッジワイヤ3における幅wの底面が図1の円錐形状のスクリーン1Aの内周面を形成している。
なお、リング部材2a,2b,2cの数は3個に限られず、使用するウェッジワイヤ3及び幅変化ワイヤ4の材質、それらの長さ、それらの数、スリット8の幅の寸法、並びに原材料の材質等に応じて、所望の分離性能を達成できるように、適宜に選定する。本実施形態の場合は、リング部材の数を7個とした場合にも良い結果が得られた。
【0029】
一方、1本の幅変化ワイヤ4は、図2(b)及びそのb−b断面である図2(b−1)に示すように、断面形状が矩形状で、その断面の幅wxが最小値w0から最大値w1まで連続的且つ均一な割合(すなわち傾斜)で変化する形状、すなわち平面的に見て細長い楔形状に形成されている。幅変化ワイヤ4の図2(b−1)で示す断面形状はb−b断面を長手方向のどの点にとるかによって、縦長の長方形であったり、正方形であったり、横長の長方形であったりする。幅変化ワイヤ4の全長Lはワイヤ3と同じで例えば310mmであり、断面幅の最小値w0は例えば2.22mmであり、断面幅の最大値w1は例えば11.3mmであり、断面の厚さtは4mmである。
【0030】
幅変化ワイヤ4における幅wxの面(表裏2面ある)のいずれか一方が図1の円錐形状のスクリーン1Aの内周面を形成している。図2(b)の場合は幅変化ワイヤ4の断面が矩形状であって幅wxの面が表裏両面に形成されるが、幅変化ワイヤ4の断面形状が三角形状(すなわち楔形状)であったり、台形状であったり、五角形状であったりすると、幅変化ワイヤ4における幅wxの面は1つだけ形成される。そして、この1つの面が図1の円錐形状の内周面を形成する。
【0031】
図1のリング部材2a,2b,2cは互いに内径が異なっているが、それらの構造自体は互いに同じであり、図3に示す通りである。図3は代表して中間のリング部材2bを示している。リング部材2bの外周面は均一な平面である。リング部材2bの内周面の全周には、部分拡大図に示すように、複数の矩形凹部6と複数の楔状凹部7とが交互に連続して形成されている。本実施形態の場合、隣接する矩形凹部6の間に7個の楔状凹部7が形成されている。隣接する矩形凹部6の間の楔状凹部7の数は、脱水処理の対象である原材料の状態に応じて7個以外の適宜の数を選定することができる。
【0032】
図1の小径端1Aa側のリング部材2a及び大径端1Ab側のリング部材2cに関しては、楔状凹部7の形状及び数は中間のリング部材2bと同じである。また、小径端側のリング部材2a及び大径端側のリング部材2cのそれぞれの矩形凹部6の数は、中間リング部材2bと同じである。しかしながら、平面形状が細長い楔形状である幅変化ワイヤ4を受けることができるようにするために、小径端側のリング部材2aの矩形凹部6の幅w2は、中間リング部材2bの矩形凹部6の幅w2よりも狭くなっており、さらに、大径端側のリング部材2cの矩形凹部6の幅w2は中間リング部材2bの矩形凹部6の幅w2よりも広くなっている。
【0033】
図1に示すスクリーン1Aを作製する際には、図1のリング部材2a,2b,2cを軸線X0を中心として互いに所定の間隔をおいて配置させ、それらのリング部材2a,2b,2cの楔状凹部7に、図2(a)のウェッジワイヤ3の先端鋭角部をはめ込み、さらに溶接、接着等によって固着する。そしてさらに、リング部材2a,2b,2cの矩形凹部6に、図2(b)の幅変化ワイヤ4の幅wx側をはめ込み、さらに溶接、接着等によって固着する。これらの作業をリング部材2a,2b,2cの楔状凹部7及び矩形凹部6の全てについて行うことにより、複数のワイヤ3,4が1つの軸線X0の回りに円錐形状を形成するように並べて設けられ、図1のスクリーン1Aが作製される。
【0034】
図4は図1のスクリーン1Aを矢印A方向から見た正面構造を示している。図4の部分拡大図に示すように、隣接する一対の幅変化ワイヤ4の間に7本のウェッジワイヤ3が設けられている。そして、互いに隣接するウェッジワイヤ3の間にスリット(すなわち線状の貫通隙間)8が形成されている。これらの多数のスリット8が原材料スラリーのうちの固形製品成分の通過を禁止し、原材料のうちの分離すべき成分、例えば水分の通過を許容する穴として機能する。これらのスリット8は大径端1Ab側において外部へ開放する状態となっている。
【0035】
図5は図1のスクリーン1Aを矢印B方向から見た側面構造を示している。図5に示すように、スクリーン1Aの截頭円錐形状の円錐傾斜角度αは約20°に設定される。但し、この傾斜角度αは原材料の状態及び目標とする脱水率に応じて適宜の値に選定される。この傾斜角度αは、リング部材2a,2b,2cの相互間隔及びそれらの内径を調節することによって所望の値に設定できる。なお、スクリーン1Aの周面の軸線X0方向の長さLはウェッジワイヤ3及び幅変化ワイヤ4の長さLそのものであり、本実施形態では310mmである。
【0036】
ウェッジワイヤ3の間に形成されるスリット8の幅は小径端1Aa側が狭く、大径端1Ab側が広くなるように幅変化ワイヤ4のテーパ形状(すなわち楔形状)が設定されている。具体的には、小径端側のスリット幅WS1が約0.2mmで、大径側のスリット幅WS2が約0.8mmとなるように設定されている。なお、幅変化ワイヤ4の楔形状の開き角度β(図2(b)参照)を調節することにより、ウェッジワイヤ3間のスリット8の開き角度を調節できる。具体的には、幅変化ワイヤ4の開き角度βを大きくすれば、スリット8の開き角度を小さくでき、逆に、幅変化ワイヤ4の開き角度βを小さくすれば、スリット8の開き角度を大きくできる。
【0037】
以上のように、本実施形態のワイヤスクリーン1Aにおいては、複数のワイヤ3,4が1つの軸線X0の回りに円錐形状を形成するように並べて設けられている。それらのワイヤ3,4の一部は内面の幅が長さ方向で一定であるウェッジワイヤ3であり、他のワイヤは内面の幅が長さ方向で変化する幅変形ワイヤ4である。幅変形ワイヤ4の内面の幅は円錐形状の小径端1Aaから大径端1Abにかけて徐々に、望ましくは一定の傾斜で、大きくなっている。円錐形状の周方向に関してウェッジワイヤ3の複数個おきに幅変形ワイヤ4が1本設けられている。幅変形ワイヤ4は複数本が隣接していても良い。複数のウェッジワイヤ3の互いに隣接するものの間にスリット8(図5参照)が設けられている。これらのスリット8は円錐形状の小径端1Aaから大径端1Abにわたって連続して真っ直ぐに延びると共に、それらのスリット8の大径端1Ab側は外部へ開放している。
【0038】
以下、本実施形態のウェッジワイヤスクリーン1Aの使用方法について説明する。図1において、截頭円錐形状の中心軸線X0を中心としてスクリーン1Aが矢印Cで示すように大径開口側から見て反時計方向に高速で回転される。もちろん、回転方向は逆方向であっても良い。そして、回転しているスクリーン1Aの内部(特に小径側1Aaに近い部分)に原材料スラリー(例えば固形物と水との混合物)が供給される。通常、原材料は大径側1Abの開口から投入されるが、これを小径側1Aaから投入しても差し支えはない。
【0039】
こうして投入された原材料は、回転するスクリーンから与えられる遠心力によってスクリーン1Aの内部表面、すなわちウェッジワイヤ3及び幅変化ワイヤ4のそれぞれの内周表面に付着しつつ、スクリーン1Aの円錐形状の傾きに従って大径端1Ab側へ向けて移動する。そして、その移動の間に遠心力の作用により、原材料中の水分がワイヤ3,4間のスリット8(図4及び図5の部分拡大図参照)を通ってスクリーン1Aの外部へ放出されて原材料が脱水され、脱水処理後の固形物がスクリーン1Aの大径端1Ab側の開口から外部へ放出されて、製品として回収される。
【0040】
本実施形態では、図5に示したように、スクリーン1Aのスリット8が截頭円錐形状の小径端1Aaから大径端1Abにわたって連続して(すなわち中断することなく)真っ直ぐに(すなわち曲がることなく)延びている。このため、脱水対象である固形物及びそれから出る粉がスリット8に詰まることを防止できる。
【0041】
また、本実施形態において、スリット8は大径端1Abにおいて外部へ向けて開放状態となっている。仮に、スリット8の大径側が開放端ではなく塞がっていると、脱水対象である固形物及びそれから出る粉によってスリット8に目詰まりが発生し易く、脱水率が低下するおそれがある。これに対し、スリット8の大径端が開放端となっていれば、スリット8に目詰まりが発生することを防止でき、高い脱水率を長期間にわたって維持できる。
【0042】
また、本実施形態では、スリット8の小径端1Aa側が狭く、大径端1Ab側に向けて一定の割合で徐々に広くなっている。このため、仮にスリット8の中に固形物又はその粉が入ったとしてもそれらは直ぐにスリット8の外部へ放出され、それ故、目詰まりの発生を防止できる。なお、本実施形態ではスリット8の幅を小径端1Aaから大径端1Abにかけて変化させたが、本発明はスリット8の幅が小径端1Aaから大径端1Abにかけて一定の場合も含むものである。
【0043】
また、本実施形態では、互いに隣接する一対の幅変化ワイヤ4の間に7本のウェッジワイヤ3を設けたが、一対の幅変化ワイヤ4の間に、より多くの数あるいはより少ない数のウェッジワイヤ3を設けても良い。それらの場合には、リング部材2a,2b,2cの内周面に設ける矩形凹部6及び楔状凹部7の数及び配設位置を適宜に変更する。また、本実施形態では図1において、3つのリング部材2a,2b,2cを用いたが、リング部材の数は2個でも良いし、4個以上でも良い。
【0044】
以上の実施形態では、図2(a−1)に示したように、断面が三角形である楔状の線状部材、いわゆるウェッジワイヤ3を用いて図1のスクリーン1Aを構成したが、このようなウェッジワイヤに代えて、図2(a−2)に示すような断面が五角形である楔状の線状部材であるウェッジワイヤや、図2(a−3)に示すような断面が長方形状の線状部材を用いてスクリーンを構成することもできる。また、断面が正方形状やその他の断面形状の線状部材を用いることも可能である。
【0045】
(ワイヤスクリーン及びその製造方法の第2実施形態)
図6は、本発明に係るワイヤスクリーン及びその製造方法の他の実施形態を示している。図1に示した第1実施形態のスクリーン1Aは、断面が楔形状である第1ワイヤとしての複数のウェッジワイヤ3と、平面が細長い楔形状である第2ワイヤとしての複数の幅変化ワイヤ4とを用いて形成した。これに対し、本実施形態のスクリーン1Bは、図2(b)の幅変化ワイヤ4を用いることなく、図2(a)に示すウェッジワイヤ3だけを複数本、リング部材2a,2b,2cに組み付けることによって形成されている。
【0046】
図7(a)は図6の矢印Dで示す大径端1Bbの一部分を正面方向から見た状態を拡大して示しており、リング部材2cが円弧状に現れている。また、図7(b)は矢印Eで示す大径端1Bbの一部分を側面方向から見た状態を拡大して示しており、リング部材2cが直線状に現れている。本実施形態においては、円錐形状の内周面となるウェッジワイヤ3の面の幅が小径端1Baから大径端1Bbにわたって均一であるので、ウェッジワイヤ3間に形成される個々のスリット8の小径端から大径端にわたっての開き角度が、図1に示す実施形態の場合におけるスリットの開き角度に比べて大きくなっている。
【0047】
以上のように、本実施形態のワイヤスクリーン1Bにおいては、複数のワイヤ3が1つの軸線X0の回りに円錐形状を形成するように並べて設けられており、それらのワイヤの全部は内面の幅が長さ方向で一定であるウェッジワイヤ3である。複数のウェッジワイヤ3の互いに隣接するものの間にスリット8(図7参照)が設けられている。これらのスリット8は円錐形状の小径端1Baから大径端1Bbにわたって連続して真っ直ぐに延びており、且つスリット8の大径端1Bb側は外部へ開放している。
【0048】
本実施形態のスクリーン1Bの製造方法は、基本的には、図1に示したスクリーン1Aの製造方法と同じである。異なるのは、使用するワイヤが図2(a)のウェッジワイヤ3の1種類であり、図3のリング部材2bの内周面に設けるはめ込み用の凹部もウェッジワイヤ3用の1種類である。このように、本実施形態のスクリーン1Bによれば、使用するワイヤが1種類であるので、部品コストを低減でき、しかもリング部材2a,2b,2cの作製も簡単になる。
【0049】
(ワイヤスクリーン及びその製造方法の第3実施形態)
図8は、本発明に係るワイヤスクリーン及びその製造方法のさらに他の実施形態を示している。図1に示した第1実施形態のスクリーン1Aでは、断面楔形状である複数のウェッジワイヤ3と平面形状が細長い楔形状である複数の幅変化ワイヤ4とを用いて形成した。また、図6に示した第2実施形態のスクリーン1Bでは、ウェッジワイヤ3だけによってスクリーンを形成した。これに対し、本実施形態のスクリーン1Cは、図2(a)のウェッジワイヤ3を用いることなく、図2(b)に示す幅変化ワイヤ4だけを複数本、リング部材2a,2b,2cに組み付けることによって形成されている。
【0050】
図9(a)は図8の矢印Fで示す大径端1Cbの一部分を正面方向から見た状態を拡大して示しており、リング部材2cが円弧状に現れている。また、図9(b)は矢印Gで示す大径端1Cbの一部分を側面方向から見た状態を拡大して示しており、リング部材2cが直線状に現れている。このスクリーン1Cは、図2(a)のウェッジワイヤ3を用いることなく、図2(b)に示す幅変化ワイヤ4だけを複数本、リング部材2a,2b,2cに組み付けることによって形成されている。幅変化ワイヤ4の断面形状は楔形状ではなく、長方形状又は正方形状の矩形状である。幅変化ワイヤ4の広がり角度βを適宜に調節すれば、隣接する幅変化ワイヤ4によって形成されるスリットの幅を小径端から大径端にかけて一定にすることができる。
【0051】
以上のように、本実施形態のワイヤスクリーン1Cにおいては、複数のワイヤ4が1つの軸線X0の回りに円錐形状を形成するように並べて設けられている。それらのワイヤ4の全部は内面の幅が長さ方向で変化する幅変化ワイヤ4であり。幅変化ワイヤ4の内面の幅は円錐形状の小径端1Caから大径端1Cbにかけて徐々に大きくなっている。これらの幅変化ワイヤ4の互いに隣接するものの間にスリット8が形成されており、これらのスリット8は円錐形状の小径端1Caから大径端1Cbにわたって連続して真っ直ぐに延びており、且つこれらのスリット8の大径端1Cb側は外部へ開放している。
【0052】
本実施形態のスクリーン1Cの製造方法も、基本的には、図1に示したスクリーン1Aの製造方法と同じである。異なるのは、使用するワイヤが図2(b)の幅変化ワイヤ4の1種類であり、図3のリング部材2bの内周面に設けるはめ込み用の凹部も幅変化ワイヤ4用の1種類である。このように、本実施形態のスクリーン1Cによれば、使用するワイヤが1種類であるので、部品コストを低減でき、しかもリング部材2a,2b,2cの作製も簡単になる。
【0053】
(その他の実施形態)
以上の実施形態においては、リング部材として3個のリング部材2a,2b,2cを用いて複数のワイヤ3,4を截頭円錐形状に支持した。これに限られず、リング部材の数は2個でも良く、あるいは4個以上でも良い。リング部材の数が多くなればワイヤスクリーンの機械的強度を上げることができるが、リング部材へワイヤを固着する作業が煩雑になる。リング部材の数は、実際的には、作業性を考慮すれば3個程度が望ましい。また、作業性及び機械的強度の両方を考慮すれば、7個程度が望ましい。
【0054】
(ワイヤスクリーンの使用例)
以下、本発明のワイヤスクリーンの構造及び機能をより理解し易くするために、その使用例について説明する。この使用例では、図1に示した実施形態に係るワイヤスクリーン1Aを用いるものとする。
【0055】
図10は、ワイヤスクリーンを使用した遠心分離装置の一例の外観構造を示している。図11はその遠心分離装置の正面断面構造を示している。図10において、遠心分離装置11は、遠心分離処理を行う遠心分離部12と、処理のための駆動力を発生する動力部13とを有している。なお、以下で説明される構造要素は、特に指摘がない場合には、ステンレス、構造用鋼、等といった金属によって形成される。
【0056】
遠心分離部12の頂部には原材料を投入するための原材料供給口14が設けられている。本実施形態では、鉱山から採石された鉱石の一種である石灰石が泥水に含まれた状態であるスラリ−が原材料として投入されるものとする。なお、本実施形態では、直径20mm以下の石灰石がスラリー状態で投入され、この石灰石が脱水された状態で製品として取り出されるものとする。原材料供給口14に図11に示すホッパ16が装備される。遠心分離部12の下部に排液管としての排水管17が設けられている。この排水管17は、遠心分離処理によってスラリーから分離された水を外部へ排出するものである。遠心分離部12の底部に製品排出口18が設けられている。この製品排出口18は、遠心分離処理によって水分が脱離(すなわち脱水)された状態の製品としての石灰石を外部へ排出するものである。
【0057】
図11において、動力部13の内部に減速機19が設けられている。減速機19は、アウタロータ21及びその内部に設けられたインナロータ22を有している。それらのロータの回転軸線は一致している。つまり、アウタロータ21とインナロータ22は同軸回転構造となっている。アウタロータ21は2つの軸受23,23によって機枠24に回転自在に支持されている。インナロータ22はその一方が軸受26によってアウタロータ21に回転自在に支持され、他方が軸受27によって機枠24に回転自在に支持されている。以上の構成により、アウタロータ21とインナロータ22とは、互いに独立して回転自在となっている。
【0058】
アウタロータ21の左端部にプーリ28が設けられている。機枠24の外部に電動モータ29が設けられ、そのモータの出力軸にプーリ31が設けられている。プーリ28とプーリ31との間にベルト32が掛け渡されている。モータ29が作動してその出力軸が回転すると、その回転がベルト32によって伝動されてアウタロータ21が回転する。例えば、500〜1800rpmの高速で回転する。
【0059】
アウタロータ21とインナロータ22との間には任意の減速機構が設けられており、このため、インナロータ22はアウタロータ21よりも高速度で同じ方向へ回転する。例えば、アウタロータ21の回転速度の1/59の数値だけ高い速度、すなわち508〜1831rpmの高速で回転する。このように、アウタロータ21とインナロータ22との間で回転速度に差を持たせているのは、遠心分離部12内で行われる遠心分離処理の際の原材料の動きを安定且つ滑らかにするためであるが、詳しくは後述する。
【0060】
インナロータ22をアウタロータ21よりも所定の速度だけ速く回転させるための減速機構としては、従来から知られている各種の減速機構を採用できる。例えば、遊星歯車減速機構、ハーモニックドライブ減速機構、サイクロ減速機構、RV減速機構、ボール減速機構、その他任意の減速機構を採用できる。本実施形態では、サイクロ減速機構を用いるものとする。このサイクロ減速機構は、例えば、遊星歯車機構と円弧系歯車との組合せによって構成できる。
【0061】
アウタロータ21の先端は遠心分離部12の内部に突出し、その突出部分にフランジ33が固着されている。そしてこのフランジ33にバスケット34が固着されている。インナロータ22の先端は遠心分離部12の内部においてアウタロータ21の外部へ突出している。そして、その突出部にスクリュー体35のボス36が袋ナット37によって締め付けられて固着されている。アウタロータ21の先端に固着されたフランジ33の外周面と、インナロータ22の先端に固着されたボス36の内周面との間にはわずかの隙間が形成されており、このため、フランジ33とボス36は互いに他の回転を拘束することなく独自に回転できる。
【0062】
バスケット34の下部には半円筒形状の排水路38が設けられており、その排水路38の先端に排水管17が連続して設けられている。バスケット34の右側の空間はバスケット34から放出される脱水処理後の石灰石が飛び出る空間であり、この空間の下部に製品排出口18が開口として開けられている。
【0063】
遠心分離部12の上部に設けられた原材料供給口14の下部に材料搬送管39が設けられている。材料搬送管39の下側先端の開口39aはスクリュー体35の内部まで延びている。また、スクリュー体35の右側に水平方向に延びる空気搬送管41が設けられている。空気搬送管41の外部側の開口41aは遠心分離部12の外部へ開口している。材料搬送管39は空気搬送管41の側壁を貫通してスクリュー体35の内部まで延びている。
【0064】
図12(a)はスクリュー体35の側面断面構造を示している。図12(b)は図12(a)の矢印Hに従ったスクリュー体35の正面構造を示している。図12(a)において、スクリュー体35は、インナロータ22の先端に固着される既述のボス36と、このボス36の外周面に固着された円錐形状の側壁42と、その側壁42の外周面に設けられた複数個(実施形態では6個)の羽根部材43とを有する。ボス36はスクリュー体35の内壁として機能する。側壁42がボス36に固着される部分には半径方向へ突出する遮蔽用フランジ44が設けられている。側壁42の小径端は内壁であるボス36に固着され、大径端が開放端となっている。ボス36は円錐形状すなわち山形形状となっている。
【0065】
側壁42のボス36に取り付けられている部分の近傍には、原材料を内部から外部へ通過させるための材料用開口46が側壁42の円周方向に沿って適宜の大きさで複数、設けられている。また、材料用開口46よりもボス36から遠い側の側壁42の内周面上に仕切り部材47が固定されている。この仕切り部材47は円錐形状の傾斜方向が側壁42の円錐傾斜方向と逆向きである円錐形状に形成されている。図11の材料搬送管39の開口39aの近傍は仕切り部材47の先端開口にはまり込んでおり、開口39aは仕切り部材47の内部領域に臨み出ている。
【0066】
ボス36から見て仕切り部材47よりも遠い側の側壁42の内周面上に複数、本実施形態では2つの気流仕切り部材48a及び48bが互いに間隔をおいて固定されている。これらの仕切り部材48a,48bは、いずれも、仕切り部材47と同じ円錐傾斜方向の円錐形状に形成されている。空気搬送管41の先端開口近傍は外から見て奥側の気流仕切り部材48aの内部に入り込んでいる。仕切り部材47と気流仕切り部材48aとの間の側壁42、及び気流仕切り部材48a,48b同士の間の側壁42に複数の空気用開口49が設けられている。外部側の気流仕切り部材48bの開放端は、空気搬送管41に設けられていて半径方向へ突出するフランジ51によって塞がれている。
【0067】
側壁42の外周面上に設けられた個々の羽根部材43は螺旋状に形成されている。羽根部材43の螺旋形状は、側壁42のボス36への付け根部分(すなわち遮蔽用フランジ44が設けられた部分)の近傍から始まって、側壁42の大径端(すなわち開放端)で終わっている。1つの羽根部材43の螺旋形状は、小径端側の始点から大径端側の終点まででちょうど1周期となるような形状であっても良いし、始点から終点までの間に1周期が収まらないような形状であっても良いし、あるいは、始点から終点までの間に1周期以上が収まるような形状であっても良い。この螺旋形状は、スクリュー体35が予め決められた正反いずれかの時計方向へ回転したときに側壁42の外周面上に存在する原材料をボス36が在る小径端から大径端へ向けて搬送するような螺旋形状となっている。
【0068】
図11においてスクリュー体35を覆うように設けられたバスケット34は、図13に示すように、円錐形状で骨組み構造であるフレーム52の内部にスクリーン1Aを組み付けて固定することによって形成されている。
【0069】
図14は、フレーム52にスクリーン1Aを装着してバスケット34を作製する過程を模式的に示している。図15は、フレーム52に対するスクリーン1Aの装着が完了してバスケット34が完成した状態を示している。図14において、フレーム52を構成する複数のリブ53のうち、小径側のもの、中央のもの、大径側のものの3つの大径側の面には座ぐり面である凹部54が設けられており、スクリーン1Aの各リング部材2a,2b,2cがそれぞれの凹部54にはめ込まれ、さらにボルト止めされることにより、スクリーン1Aがフレーム52に固着されて両者が一体になっている。リング部材2a〜2cの数が増えた場合には、それに応じて凹部54を設けるリブ53の数も増える。
【0070】
以下、上記構成の遠心分離装置の動作を説明する。
まず、図11において、遠心分離処理(すなわち遠心脱水処理)の対象である原材料がホッパ16内へ投入される。この原材料は鉱山で採掘された石灰石が泥水の中に含まれている状態である。この原材料の水分量は、通常、3〜11重量%である。採掘された石灰石の大きさは区々であるが、ホッパ16へ供給される石灰石は、予め、その大きさが直径20mm以下のものに選別されている。この選別は、主に、遠心分離装置11の内部構造を損傷から保護するためのものである。
【0071】
なお、原材料をホッパ16内へ供給するのと同時に、図示しない水供給装置によってホッパ16内へ水を供給しても良い。この水の供給により、原材料内の石灰石を洗浄することができ、それ故、ホッパ16内へ原材料を供する前に原材料を前洗浄処理する必要がなくなる。本実施形態の遠心分離装置11は非常に高効率で水を分離(すなわち脱水)できるので、このように原材料に水を加えたとしても、最終的に得られる製品としての石灰石の水分量を所望の値以下に抑えることができる。
【0072】
また、加水することなく原材料をそのままバスケット34内へ投入すると、その原材料はバスケット34の内部の片寄った位置で塊状となって回転移動する傾向にあり、回転するバスケット34のバランスが崩れて振動が発生するおそれがあり、その結果、部品の破損や分離精度の低下が生じるおそれがある。これに対し、脱液処理前の原材料に水を加えることにすれば、バスケット34の内部での原材料の流動を促すことができ、原材料をバスケット34の内部で片寄ることを防止して満遍なく行き渡すことができ、回転するバスケット34のバランスが崩れること及び振動が発生することを防止でき、その結果、部品の破損や分離精度の低下を防止できる。
【0073】
遠心分離装置11において電動モータ29が作動すると、その出力軸が回転し、ベルト32によってその回転が減速機19へ伝えられてアウタロータ21が回転する。この回転の方向は矢印I方向から見て正時計方向及び反時計方向のいずれであっても良い。また、この回転の回転数は、例えば500〜1800rpmの範囲内の適宜の値である。アウタロータ21の回転は減速機19内の減速機構(本実施形態ではサイクロ減速機構)の働きによってインナロータ22へ伝えられてインナロータ22が回転する。この回転の方向はアウタロータ21と同じであり、回転数はアウタロータ22の回転数の1/59だけ増速した値、すなわち508〜1851rpmの範囲内の値である。なお、アウタロータ21に対するインナロータ22の増速比は実際の脱水状況を調べた上で適宜に設定する。
【0074】
アウタロータ21の先端に固着されたバスケット34はアウタロータ21と一体に中心軸線を中心として回転する。一方、インナロータ22の先端に固着されたスクリュー体35はインナロータ22と一体に中心軸線を中心として、バスケット34よりも高速度で回転する。つまり、バスケット34とスクリュー体35は異なる速度で相対回転する。材料搬送管39の内部を流れた原材料(石灰石及び水)は、開口39aからスクリュー体35の内部、特に仕切り部材47の内部に放出される。放出された原材料は内壁であるボス36に衝突し、さらに遠心力の作用により半径方向へ移動し、側壁42の根元部分に設けられた材料用開口46を通って、バスケット34の内周面(すなわちスクリーン1A)とスクリュー体35の外周面との間の円錐状の環状空間(すなわち脱水領域)内へ供給される。
【0075】
脱水領域に入った原材料は、バスケット34の高速回転の作用により遠心力を受けてスクリーン1Aの内周面に付着する。さらに、原材料は、バスケット34に対して相対回転するスクリュー体35の外周に設けられた羽根部材43によって掻き出されて、スクリーン1Aに付着しながら大径の開放端方向へ螺旋状に移動する。原材料がこのようにしてスクリーン1A上を移動する間、図5において複数のウェッジワイヤ3の間に形成された複数のスリット8を通して原材料内の水が外部へ放出されて、原材料が脱水される。一般的には、この脱水により、直径10〜3mmの石灰石は0.7重量%程度の含水率まで脱水され、直径3mm以下の石灰石は1.1重量%程度の含水率まで脱水される。なお、内壁であるボス36は中心部が高い円錐形状、すなわち山形形状に形成されているので、材料搬送管39の開口39aから放出された原材料はボス36の頂部から裾部へ向けて均一に分散される。これにより、材料用開口46付近での原材料の詰まりを防止でき、原材料の安定した流れを実現できる。
【0076】
上記のような遠心力に基づいた脱水処理が行われている間、図11において、図示しない熱風供給装置から空気搬送管41へ熱風、すなわち高温空気流が供給される。供給された熱風は、空気搬送管41によってスクリュー体35の内部、特に仕切り部材47の外側領域へ供給される。熱風の温度は、例えば110℃〜130℃の範囲内の適宜の値を目標として設定されている。この熱風は、スクリュー体35の内部に設けた気流仕切り部材48a,48bに沿って側壁42へ向けて流れ、されに側壁42に設けた複数の空気用開口49を通ってスクリーン1Aの広い面積へ均等に吹き付けられ、スリット8を通して外部へ流れる。スクリーン1Aの内周面に沿って移動する原材料はその高温空気流によって乾燥され、この結果、原材料が脱水される。
【0077】
このように、本実施形態では、遠心力による脱水と高温空気流を用いた乾燥による脱水との協働により、きわめて高効率の脱水を行うことができ、石灰石を0.3重量%程度の含水率まで脱水できる。本実施形態におけるスクリーン1Aのスリット8(図5参照)はスクリーン1Aの回転軸線を中心とする周回方向に設けられるのではなく、回転軸線に沿った方向に連続して(すなわち中断することなく)真っ直ぐに(すなわち曲がることなく
)設けられるので、石灰石等がスリット8に詰まることが無くなった。しかも、スリット8の大径端部は外部へ向けて開放されているので、仮にスリット8内に石灰石等が入ったとしても、その石灰石は開放端において容易に外部へ放出される。スリット8に関するこのような構成は、遠心力による脱水に加えて熱風乾燥による脱水を併せて行うようにした本実施形態に関して非常に効果的であることが分かった。
【0078】
脱水処理によって石灰石から分離した水は、排水路38によって排水管17へ集められて外部の所定箇所へ排出される。一方、脱水処理によって高効率で脱水された製品としての石灰石は製品排出口18を通して外部へ回収される。
【0079】
以上の説明では、本発明に係るワイヤスクリーンを遠心分離装置に適用して脱水処理を行うものとした。しかしながら、本発明のワイヤスクリーンは他の任意の装置にも適用できる。例えば、第1の固形物と第2の固形物とを分離する分離装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係るワイヤスクリーンの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】ワイヤスクリーンの構成要素であるワイヤの一実施形態を示す図である。
【図3】ワイヤスクリーンの構成要素であるリング部材の一実施形態を示す図である。
【図4】図1のワイヤスクリーンの正面図である。
【図5】図1のワイヤスクリーンの側面図である。
【図6】本発明に係るワイヤスクリーンの他の実施形態を示す斜視図である。
【図7】図6のワイヤスクリーンの部分拡大図である。
【図8】本発明に係るワイヤスクリーンのさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】図8のワイヤスクリーンの部分拡大図である。
【図10】本発明に係るワイヤスクリーンの使用例である遠心分離装置の一例を示す斜視図である。
【図11】図10の遠心分離装置の正面断面図である。
【図12】図11の遠心分離装置の構成要素であるスクリュー体を示す図である。
【図13】図11の遠心分離装置の構成要素であるバスケットを示す斜視図である。
【図14】図13のバスケットの分解図である。
【図15】図13のバスケットの側面断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1A,1B,1C.ワイヤスクリーン、 2a,2b,2c.リング部材、
3.ウェッジワイヤ、 4.幅変化ワイヤ、 6.矩形凹部、 7.楔状凹部、 8.スリット、 11.遠心分離装置、 12.遠心分離部、 13.動力部、 14.原材料供給口、 16.ホッパ、 17.排水管、 18.製品排出口、 19.減速機、
21.アウタロータ、 22.インナロータ、 23,26,27.軸受、
24.機枠、 28,31.プーリ、 29.電動モータ 、32.ベルト、
33.フランジ、 34.バスケット、 35.スクリュー体、 36.ボス部、
37.袋ナット、 38.排水路、 39.材料搬送管、 39a.開口、
41.空気搬送管、 41a.管の開口、 42.側壁、 43.羽根部材、
44.遮蔽用フランジ、 46.開口、 47.仕切り部材、
48a,48b.気流仕切り部材、 49.空気用開口、 51.フランジ、
52.フレーム、 53.リブ、 54.凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの軸線に沿って互いに間隔をおいて配置されており互いに内径が異なる複数のリング部材と、
該複数のリング部材の内周面に固着されており前記1つの軸線の回りに円錐形状を成すように並べて設けられた複数のワイヤと、を有し、
該複数のワイヤの互いに隣接するものの間にスリットが形成されており、
該スリットは前記円錐形状の小径端から大径端にわたって連続して真っ直ぐに延びている
ことを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤスクリーンにおいて、前記リング部材の内周面上に複数の凹部が設けられ、これらの凹部に前記ワイヤがはめ込まれていることを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のワイヤスクリーンにおいて、前記スリットの大径端側は外部へ開放していることを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項4】
請求項1から請求項3の少なくとも1つに記載のワイヤスクリーンにおいて、前記スリットは前記円錐形状の小径端から大径端へ向けて徐々に広がっていることを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のワイヤスクリーンにおいて、
前記複数のワイヤの一部又は全部は断面形状が楔形状であるウェッジワイヤであり、該楔形状の頂点が前記円錐形状の外周面となり、該楔形状の前記頂点に対向した底辺が前記円錐形状の内周面となる
ことを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のワイヤスクリーンにおいて、
前記複数のワイヤの一部は内面の幅が長さ方向で一定である第1ワイヤであり、
他のワイヤは内面の幅が前記円錐形状の小径端から大径端にかけて徐々に大きくなるように変化する第2ワイヤであり、
前記円錐形状の周方向に関して前記第1ワイヤの複数個おきに前記第2ワイヤが少なくとも1つ設けられている
ことを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のワイヤスクリーンにおいて、前記複数のワイヤは内面の幅が長さ方向で一定である第1ワイヤであることを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のワイヤスクリーンにおいて、前記複数のワイヤは内面の幅が前記円錐形状の小径端から大径端にかけて徐々に大きくなるように変化する第2ワイヤであることを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項9】
互いに内径の大きさが異なる複数のリング部材を、それらの中心が1つの軸線上に互いに間隔をおいて位置するように配置する工程と、
複数のワイヤを前記複数のリング部材の内周面上に円錐形状を成すように固着するワイヤ固着工程と、を有し、
前記ワイヤ固着工程では、互いに隣接する複数のワイヤの間に連続して真っ直ぐなスリットが形成されるように前記複数のワイヤが前記リング部材に固着される
ことを特徴とするワイヤスクリーンの製造方法。
【請求項10】
請求項9記載のワイヤスクリーンの製造方法において、前記リング部材の内周面上には前記ワイヤがはまり込む凹部が設けられていることを特徴とするワイヤスクリーンの製造方法。
【請求項1】
1つの軸線に沿って互いに間隔をおいて配置されており互いに内径が異なる複数のリング部材と、
該複数のリング部材の内周面に固着されており前記1つの軸線の回りに円錐形状を成すように並べて設けられた複数のワイヤと、を有し、
該複数のワイヤの互いに隣接するものの間にスリットが形成されており、
該スリットは前記円錐形状の小径端から大径端にわたって連続して真っ直ぐに延びている
ことを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤスクリーンにおいて、前記リング部材の内周面上に複数の凹部が設けられ、これらの凹部に前記ワイヤがはめ込まれていることを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のワイヤスクリーンにおいて、前記スリットの大径端側は外部へ開放していることを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項4】
請求項1から請求項3の少なくとも1つに記載のワイヤスクリーンにおいて、前記スリットは前記円錐形状の小径端から大径端へ向けて徐々に広がっていることを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のワイヤスクリーンにおいて、
前記複数のワイヤの一部又は全部は断面形状が楔形状であるウェッジワイヤであり、該楔形状の頂点が前記円錐形状の外周面となり、該楔形状の前記頂点に対向した底辺が前記円錐形状の内周面となる
ことを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のワイヤスクリーンにおいて、
前記複数のワイヤの一部は内面の幅が長さ方向で一定である第1ワイヤであり、
他のワイヤは内面の幅が前記円錐形状の小径端から大径端にかけて徐々に大きくなるように変化する第2ワイヤであり、
前記円錐形状の周方向に関して前記第1ワイヤの複数個おきに前記第2ワイヤが少なくとも1つ設けられている
ことを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のワイヤスクリーンにおいて、前記複数のワイヤは内面の幅が長さ方向で一定である第1ワイヤであることを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のワイヤスクリーンにおいて、前記複数のワイヤは内面の幅が前記円錐形状の小径端から大径端にかけて徐々に大きくなるように変化する第2ワイヤであることを特徴とするワイヤスクリーン。
【請求項9】
互いに内径の大きさが異なる複数のリング部材を、それらの中心が1つの軸線上に互いに間隔をおいて位置するように配置する工程と、
複数のワイヤを前記複数のリング部材の内周面上に円錐形状を成すように固着するワイヤ固着工程と、を有し、
前記ワイヤ固着工程では、互いに隣接する複数のワイヤの間に連続して真っ直ぐなスリットが形成されるように前記複数のワイヤが前記リング部材に固着される
ことを特徴とするワイヤスクリーンの製造方法。
【請求項10】
請求項9記載のワイヤスクリーンの製造方法において、前記リング部材の内周面上には前記ワイヤがはまり込む凹部が設けられていることを特徴とするワイヤスクリーンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−148726(P2009−148726A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330554(P2007−330554)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ハーモニックドライブ
2.サイクロ
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【出願人】(000105626)コトブキ技研工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ハーモニックドライブ
2.サイクロ
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【出願人】(000105626)コトブキ技研工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]