説明

ワイヤハーネスの製造方法

【課題】ハウジングを溶融させることなく、超音波加振により溶融した溶融樹脂をハウジングと電線との間に供給することが可能なワイヤハーネスの製造方法を提供する。
【解決手段】電線31〜33と、電線31〜33を保持する雌側ハウジング20を有する雌側コネクタ2とを備えたワイヤハーネス1の製造方法において、挿通孔21aが形成された雌側ハウジング20の気密ブロック21に、電線31〜33を挿通孔21との間に空間21bを設けて配置する配置工程と、流路213aを介して空間21bに溶融樹脂6aを供給する供給工程と、溶融樹脂6aを空間21b内で固化させて気密ブロック21と電線31〜33との間を封止する固化工程とを有し、供給工程では、溶融治具5を気密ブロック21に連結し、樹脂部材6を溶融治具5に押し当てながら超音波加振して溶融させ、この溶融により生じた溶融樹脂6aを流路213aに流し込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線と、前記複数の電線の端部を保持するハウジングを有するコネクタとを備えたワイヤハーネスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電線、及び複数の電線の端部に設けられたコネクタを備えたワイヤハーネスには、コネクタの内部に水分等が侵入して不具合が発生することを防ぐため、コネクタのハウジングと電線との間を気密に封止したものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のコネクタでは、複数の電線のそれぞれを挿通させる複数の挿通孔をハウジングに形成し、各電線に嵌合したゴム栓を挿通孔に挿入し、このゴム栓によって電線と挿通孔との間を封止している。
【0004】
しかし、この構成のコネクタでは、隣り合う電線の間にゴム栓及び挿通孔同士を画定するハウジングの肉部が介在するため、隣り合う電線の間の間隔を狭くすることに制約があり、コネクタの小型・軽量化の妨げとなっていた。
【0005】
一方、特許文献2に記載のコネクタの防水構造では、コネクタに樹脂からなる電線導出部を設け、この電線導出部と電線の樹脂被覆とを超音波加振によって熱溶着することで、防水性を確保している。この防水構造によれば、ゴム栓等のシール部材を用いないので、特許文献1に記載のコネクタの構成に比較して、コネクタの小型・軽量化を図ることが容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−345143号公報
【特許文献2】特開2000−353566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載のコネクタの防水構造では、電線の樹脂被覆の材質をコネクタの樹脂と溶着し得るものに選定する必要があり、設計上の制約事項となっていた。また、電線の樹脂被覆を溶融させるため、この際の溶融量を考慮して、樹脂被覆の厚みを芯線の保護のために必要な厚みよりも厚く設定しなければならない場合があった。
【0008】
そこで、本出願人は、熱によって溶融する樹脂からなる溶融部材を用いてハウジングとケーブル(電線)との間を樹脂封止するワイヤハーネス及びその製造方法を先に提案した(特願2009−293345)。
【0009】
このワイヤハーネスは、上記の溶融部材をハウジングに形成した挿入部を介してケーブル挿入穴に挿入し、超音波振動するホーンによって溶融部材を加振しつつケーブル挿入穴の内面に形成された押圧受部に押圧することで、押圧受部に接触する溶融部材の先端部を溶融させ、その溶融した樹脂をケーブルとケーブル挿入穴との間の隙間に流し込んでケーブルの周囲を溶融樹脂で覆うことにより、ハウジングの気密性を確保している。
【0010】
しかし、溶融部材を加振しつつ押圧した際に、溶融部材のみならず、ハウジングの押圧受部もまた溶融してしまう場合があり、この場合には、ケーブルとケーブル挿入穴との間の隙間に十分に溶融樹脂を供給することができないという点で、なお改善の余地があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、ハウジングを超音波振動によって溶融させることなく、超音波加振により溶融した溶融樹脂をハウジングと電線との間の空間に供給することが可能なワイヤハーネスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の電線と、前記複数の電線の端部を保持するハウジングを有するコネクタとを備えたワイヤハーネスの製造方法において、前記複数の電線を挿通させる挿通孔が形成された前記ハウジングの気密ブロックに、前記複数の電線を前記挿通孔の内面との間に空間を設けて配置する配置工程と、前記空間に連通する流路を介して前記空間に流動性を有する溶融樹脂を供給する供給工程と、前記溶融樹脂を前記空間内で固化させて前記気密ブロックと前記複数の電線との間を樹脂封止する固化工程とを有し、前記供給工程は、固形の樹脂部材を溶融させる治具を前記気密ブロックに連結し、前記樹脂部材を前記治具に押し当てながら超音波加振して溶融させ、前記溶融により生じた前記溶融樹脂を前記流路に流し込む工程であるワイヤハーネスの製造方法を提供する。
【0013】
また、前記治具は、軸状に形成された前記樹脂部材をその軸方向に移動可能に保持する保持孔と、前記溶融樹脂を前記治具の外部に導く導出路と、前記保持孔と前記導出路との間に設けられ、前記樹脂部材を溶融させる溶融部とを有し、前記溶融部は、前記樹脂部材が押し当てられる受け面を含み、前記樹脂部材と前記受け面との摩擦による摩擦熱によって前記樹脂部材を溶融させるように構成してもよい。
【0014】
また、前記溶融部には、前記受け面の前記樹脂部材との摩擦が発生する領域の周囲に、前記保持孔の内面と前記樹脂部材との間の隙間よりも大きな隙間を有する空間が形成されていてもよい。
【0015】
また、前記導出路は、その一端が前記治具の外部に開口すると共に、他端が前記受け面に開口し、前記受け面側の開口が前記樹脂部材との摩擦が発生する領域に囲まれた箇所に形成されていてもよい。
【0016】
また、前記樹脂部材は、その溶融に伴って前記受け面との接触面積が大きくなる形状に形成されていてもよい。
【0017】
また、前記樹脂部材は、前記治具に収容される側の一端部が先細り形状に形成されていてもよい。
【0018】
また、前記樹脂部材は、前記治具に収容される側の一端部における軸心部に空洞が形成されていてもよい。
【0019】
また、前記供給工程は、前記治具が加熱手段によって加熱された状態で前記樹脂部材を溶融させる工程であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るワイヤハーネスの製造方法によれば、ハウジングを超音波振動によって溶融させることなく、超音波加振により溶融した溶融樹脂をハウジングと電線との間の空間に供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】雌側コネクタと雄側コネクタとが結合した状態における両コネクタの内部構造を示し、(a)は図1のB−B線断面図、(b)は図1のC−C線断面図である。
【図4】雌側コネクタ側に設けられた接続端子の形状を示す外観図である。
【図5】雌側コネクタ側に設けられた他の接続端子の形状を示す外観図である。
【図6】接続端子及び第2絶縁部材の外観を示す側面図である。
【図7】図1のD−D線断面図である。
【図8】溶融治具の外観形状を示す斜視図である。
【図9】溶融治具の内部で溶融する樹脂部材の外観形状を示す斜視図である。
【図10】溶融治具5を図8のE−E線で切断した断面を示す斜視図である。
【図11】溶融治具5を図8のF−F線で切断した断面を示す斜視図である。
【図12】樹脂部材が溶融治具に保持された状態を示し、(a)は溶融治具及び樹脂部材の斜視図、(b)は(a)のG−G線断面図である。
【図13】溶融治具、及び溶融治具に保持された樹脂部材を、樹脂部材の中心軸方向から見た平面図である。
【図14】供給工程における溶融治具及び樹脂部材を気密ブロックの断面図と共に示す説明図であり、(a)は樹脂部材を超音波加振する前の状態を、(b)は樹脂部材を超音波加振している状態を、それぞれ示す。
【図15】第1の実施の形態の変形例に係る溶融治具及び樹脂部材を気密ブロックの断面図と共に示す説明図であり、(a)は樹脂部材を超音波加振する前の状態を、(b)は樹脂部材を超音波加振している状態を、それぞれ示す。
【図16】本実施の形態に係る溶融治具及び樹脂部材を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のH−H線断面図である。
【図17】第2の実施の形態の変形例に係る溶融治具及び樹脂部材を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のI−I線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
図1は本発明の第1の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す斜視図である。図2は、図1のA−A線断面図である。このワイヤハーネス1は、例えば車両の駆動源としての電気モータに駆動電流を供給するために用いられる。
【0023】
このワイヤハーネス1は、雌側コネクタ2と3つの電線31〜33とを有している。雌側コネクタ2は、電線31〜33の端部を保持する雌側ハウジング20を有している。3つの電線31〜33は、一方向に並列した状態で雌側ハウジング20に保持されている。雌側ハウジング20は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、又はPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂からなる。
【0024】
雌側ハウジング20は、電線31〜33が導出される一端部に、電線31〜33を挿通させる挿通孔21aが形成された樹脂からなる気密ブロック21を有している。また、気密ブロック21には、電線31〜33の配列方向の一端部に、後述する溶融治具5が嵌合する嵌合凹所213が形成されている。気密ブロック21は、後述するように、電線31〜33との間の隙間が気密に樹脂封止される。
【0025】
電線31〜33は、例えば銅やアルミニウム等の導電性の金属からなる中心導体3aと、中心導体3aの外周に形成された架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなるシース3bとから構成されている。
【0026】
図1では、雌側コネクタ2が雄側コネクタ8と結合した状態を示している。雄側コネクタ8は、雄側ハウジング80を有し、雄側ハウジング80は、その一部が雌側ハウジング20の内方に嵌合されている。雌側コネクタ2と雄側コネクタ8とは、ロック機構2aによって容易に外れないように結合している。
【0027】
雄側コネクタ8はまた、雄側ハウジング80に回転可能に保持された接続部材81(後述)を有している。接続部材81の頭部81aには、ドライバ等の工具によって接続部材81を回転させるための十字状の溝が形成されている。
【0028】
(雌側コネクタ2の構成)
図3は、雌側コネクタ2と雄側コネクタ8とが結合した状態における内部構造を示し、(a)は図1のB−B線断面図、(b)は図1のC−C線断面図である。
【0029】
図3(b)に示すように、雌側コネクタ2側における電線31〜33の先端部では、シース3bが除去されて中心導体3aが露出している。電線31の中心導体3aには接続端子41が、電線32の中心導体3aには接続端子42が、電線33の中心導体3aには接続端子43が、それぞれ接続されている。
【0030】
図4(a)は接続端子41,43の側面図、図4(b)は接続端子41,43の平面図である。また、図5(c)は接続端子42の側面図、図5(d)は接続端子42の平面図である。
【0031】
接続端子41,43は、電線31,33の中心導体3aがかしめ固定されるかしめ部41a,43aと、平板状の接触部41b,43bとが一体に形成されている。接触部41b,43bの先端は、二股に分かれて電線31,33の延伸方向に開口している。すなわち、接続端子41,43は、Y端子として形成されている。
【0032】
接続端子42は、電線32の中心導体3aがかしめ固定されるかしめ部42aと、平板状の接触部42bと、かしめ部42aと接触部42bとの間に介在し、電線32の延伸方向に対して傾斜した傾斜部42cとが一体に形成されている。接触部42bは、電線32の中心導体3aの中心軸の延長線上に位置している。この接続端子42もまた、接続端子41,43と同様に、Y端子として形成されている。
【0033】
図3(b)に示すように、接続端子41と接続端子43とは、互いの接触部41b,43b同士が接近するように雌側ハウジング20内に保持されている。また、接続端子42は、接続端子41と接続端子43との間に保持されている。接続端子41の接触部41b、接続端子42の接触部42b、及び接続端子43の接触部43bは、互いに平行かつ等間隔に並列している。
【0034】
また、雌側ハウジング20には、雄側コネクタ8の接続部材81の頭部81aに対応する部位に円形の開口20aが形成されている。
【0035】
(雄側コネクタ8の構成)
雄側コネクタ8の雄側ハウジング80は、アウタハウジング82と、アウタハウジング82の内面に保持されたインナハウジング83とからなる。アウタハウジング82は、例えばアルミニウム等の金属からなる。インナハウジング83は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、又はPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂からなる。なお、アウタハウジング82をインナハウジング83と同様の樹脂から形成してもよい。
【0036】
アウタハウジング82には、接続部材81の頭部81aを収容し、接続部材81を回転可能に保持する環状の凹部82aが形成されている。頭部81aの外周面には、凹部82aとの間をシールする環状のシール部材812が保持されている。
【0037】
アウタハウジング82は、その先端部82bが雌側ハウジング20に形成された収容凹部20bに収容されている。アウタハウジング82と雌側ハウジング20との間は、アウタハウジング82の先端部82bの外面に保持されたシール部材821、及び収容凹部20b内に保持されてアウタハウジング82の先端部82bの内面に接触するシール部材822により気密に封止されている。
【0038】
また、アウタハウジング82には、凹部82aに対向する内面に、凹部82a側に向かって突出する凸部82cが形成されている。この凸部82cには、ねじ孔82dが形成されている。
【0039】
接続部材81は、円板状の頭部81a、頭部81aよりも小径に形成された円柱状の軸部81b、及びねじ部81cが一体に形成された本体部810と、軸部81bの外周に形成された絶縁層811とを有している。軸部81bは、頭部81aとねじ部81cとの間に介在して形成されている。ねじ部81cは、凸部82cのねじ孔82dに螺合している。本体部810は、鉄やステンレス等の金属からなる。また、絶縁層811は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、又はPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂からなる。
【0040】
インナハウジング83は、接続端子41〜43にそれぞれ接続される接続端子91〜93を支持している。接続端子91〜93は、それぞれが平板状であり、接続部材81の軸部81bを挿通させる貫通孔が形成されている。接続端子91〜93は、互いに平行かつ等間隔に並列している。
【0041】
雌側コネクタ2と雄側コネクタ8との結合状態において、接続端子41の接触部41bは接続端子91と、接続端子42の接触部42bは接続端子92と、接続端子43の接触部43bは接続端子93と、それぞれ対面する。
【0042】
接続端子91の接触部41bに対面する面の反対側の面には、第1絶縁部材94が固定されている。同様に、接続端子92の接触部42bに対面する面の反対側の面には、第2絶縁部材95が固定されている。また、接続端子93の接触部43bに対面する面の反対側の面には、第3絶縁部材96が固定されている。またさらに、接触部43bと凸部82cとの間には、第4絶縁部材97が配置されている。第1〜第4絶縁部材94〜97は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、又はPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂からなる。
【0043】
図6は、接続端子92及び第2絶縁部材95の外観を示す側面図である。接続端子92及び第2絶縁部材95には、接続部材81の軸部81bを挿通させる貫通孔92a及び貫通孔95aが形成されている。また、第2絶縁部材95には、その厚み方向に窪んだ凹部95bが形成され、この凹部95bに接続端子92の一端が収容されている。なお、接続端子91及び第1絶縁部材94、並びに接続端子93及び第3絶縁部材96も同様に構成されている。
【0044】
また、第1絶縁部材94には、接続部材81の頭部81aとの対向面に環状の凹部94aが形成されている。この凹部94aは、接続部材81の軸部81bを囲むように形成されている。また、凹部94aの底部には、鉄やステンレス等の金属からなるリング状の座金941が配置されている。
【0045】
座金941と接続部材81の頭部81aとの間には、コイルばね84が配置されている。コイルばね84の一端は凹部94aに収容され、コイルばね84の他端は頭部81aに当接している。そして、コイルばね84は、その復元力によって第1絶縁部材94を凸部82c側に向かって押圧している。
【0046】
なお、雌側コネクタ2と雄側コネクタ8とを結合する前の状態では、接続部材81のねじ部81cの先端部のみが凸部82cのねじ孔82dに螺合しており、これにより頭部81aが図3(b)に示す状態よりも第1絶縁部材94から離間し、コイルばね84は第1絶縁部材94を押圧しない。つまり、雌側コネクタ2と雄側コネクタ8との結合は、第1絶縁部材94が凸部82c側への押圧力を受けない状態で行われる。
【0047】
(接続端子41〜43及び接続端子91〜93の積層構造)
雌側コネクタ2と雄側コネクタ8とが結合されると、接続端子41〜43の接触部41b〜43bにおける二股の部分が接続部材81の軸部81bを挟むように、接続端子91〜93に対面する部位に進入する。そして、図3(b)に示すように、第1絶縁部材94、接続端子91、接続端子41の接触部41b、第2絶縁部材95、接続端子92、接続端子42の接触部42b、第3絶縁部材96、接続端子93、接続端子43の接触部43b、及び第4絶縁部材97がこの順序で積み重なった積層構造となる。
【0048】
このように接続端子91〜93、接続端子41〜43の接触部41b〜43b、及び第1〜第4絶縁部材94〜97が積層された状態で接続部材81をねじ部91cが凸部82cのねじ孔82dに螺合する方向に回転させると、接続部材81の頭部81aが第1絶縁部材94に接近する方向に移動し、コイルばね84を圧縮する。圧縮されたコイルばね84の復元力は、第1〜第4絶縁部材94〜97を介して接続端子91〜93と接続端子41〜43の接触部41b〜43bとをそれぞれの対向面で接触するように作用する。これにより、接続端子91と接続端子41、接続端子92と接続端子42、及び接続端子93と接続端子43を確実に接触させることができる。
【0049】
(気密ブロック21の構成)
気密ブロック21は、雌側ハウジング20の電線31〜33の引き出し側の端部に、雌側ハウジング20の一部として形成されている。この気密ブロック21は、電線31〜33の周囲から雌側ハウジング20内に水分等が侵入しないよう、電線31〜33の周辺部を気密に封止する気密封止部である。
【0050】
図1に示すように、雌側ハウジング20は、本体部200に別体部201を接合して一体に形成されている。本体部200と別体部201との接合は、例えば別体部201を超音波振動させ、本体部200との接触部における摩擦熱によって本体部200と別体部201とを溶着することにより行うことができる。気密ブロック21は、本体部200の一部と別体部201とを含んで構成される。本体部200と別体部201とは、同種の材料により形成することが望ましいが、異なる材料によって形成してもよい。
【0051】
図3(a)及び(b)に示すように、気密ブロック21には、電線31〜33を挿通させる挿通孔21aが形成されている。電線31〜33の延伸方向における挿通孔21aの両端部には、電線31〜33のシース3bに接触して電線31〜33を挟持する第1挟持部211及び第2挟持部212が形成されている。第1挟持部211は、第2挟持部212よりも雌側ハウジング20の外側に形成されている。第1挟持部211及び第2挟持部212は、本体部200側と別体部201側に分かれてそれぞれ半円状に形成され、本体部200と別体部201との接合により環状となって電線31〜33を挟持するように形成されている。
【0052】
第1挟持部211と第2挟持部212との間には、電線31〜33の外周面に沿うように形成された凹部210が形成されている。凹部210の底面210aは、電線31〜33の外周面との間に所定の間隔(例えば、1〜5mm)を保って形成されている。これにより、電線31〜33と挿通孔21aの間には、空間21bが形成されている。
【0053】
また、気密ブロック21には、空間21bに連通する流路213aが形成されている。流路213aは一端が空間21bに開口し、他端が嵌合凹所213に開口している。本実施の形態では、流路213aが電線31〜33の配列方向に沿って延びる直線状に形成されている。
【0054】
挿通孔21aは、図2に示すように、第1挟持部211に対応する領域では、電線31の全周を囲むようにして電線31を保持する円形の保持孔21a1と、電線32の全周を囲むようにして電線32を保持する円形の保持孔21a2と、電線33の全周を囲むようにして電線33を保持する円形の保持孔23a3とが互いに連通しないように分離して形成されている。また、第2挟持部212に対応する領域でも、第1挟持部211と同様の形状に形成されている。
【0055】
図7は、図1のD−D線断面図である。この図に示すように、挿通孔21aは、凹部210に対応する領域では、電線31の外周側の空間部21b1と、電線32の外周側の空間部21b2と、電線33の外周側の空間部21b3とが相互に連通している。より詳細には、空間部21b1と空間部21b2との間が連通部21b4によって連通し、空間部21b2と空間部21b3との間が連通部21b5によって連通している。連通部21b4は、電線31と電線32との間に形成された空間であり、連通部21b5は、電線32と電線33との間に形成された空間である。そして、これらの空間部21b1,連通部21b4,空間部21b2,連通部21b5,及び空間部21b3が一体となって空間21bが形成されている。
【0056】
電線31〜33は、空間部21b1,空間部21b2,及び空間部21b3のそれぞれの中心部を通過するように、第1挟持部211及び第2挟持部212に挟持されている。
【0057】
(溶融治具5の構成)
次に、気密ブロック21の空間21bに溶融した樹脂を供給する溶融治具5の構成について説明する。
【0058】
図8は、溶融治具5の外観形状を示す斜視図である。
図9は、溶融治具5の内部で溶融する樹脂部材6の外観形状を示す斜視図である。
【0059】
樹脂部材6は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、又はPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の固形の樹脂からなる。
【0060】
樹脂部材6は、断面円形の軸状に形成されている。より具体的には、樹脂部材6は、円柱状の軸部60と、軸部60の軸方向の一端に連続して形成された先細り形状の先端部61とを一体に有している。本実施の形態では、先端部61が円錐状に形成されている。先端部61の最大径(円錐底面の径)は軸部60と同径である。軸部60の他端には、軸部60の中心軸Cに直交する平坦な端面60aが形成されている。
【0061】
溶融治具5は、例えば樹脂部材6よりも高い融点を有する耐熱性の樹脂からなる。この溶融治具5は、図8に示すように、直方体状の本体部50と、本体部50の一側面に形成された突起部51とを一体に有している。本体部50には、樹脂部材6が挿入される保持孔501が形成されている。この保持孔501は、樹脂部材6をその軸方向に移動可能に保持する。また、突起部51には、樹脂部材6が溶融した樹脂を吐出する吐出口510aが形成されている。
【0062】
図10は、溶融治具5を図8のE−E線で切断した断面を示す斜視図である。保持孔501の内面501aは円筒状に形成されている。溶融治具5の本体部50には、保持孔501に連通して、樹脂部材6を溶融させる溶融部502が形成されている。溶融部502は、樹脂部材6の一端が押し当てられる受け面502a、及び受け面502aの周囲に形成された側面502bを含んで溶融治具5の内部に形成された領域である。受け面502aは、保持孔501の延伸方向に対して直交するように形成された平坦な面である。そして、溶融部502は、超音波加振された樹脂部材6と受け面502aとの摩擦による摩擦熱によって、樹脂部材6を溶融させるように構成されている。
【0063】
また、溶融治具5の突起部51には、樹脂部材6が溶融した液状の樹脂を溶融治具5の外部に導く導出路510が形成されている。保持孔501と溶融部502、ならびに溶融部502と導出路510は、それぞれ相互に連通し、溶融部502は、保持孔501と導出路510との間に設けられている。
【0064】
図11は、溶融治具5を図8のF−F線で切断した断面を示す斜視図である。受け面502aは、樹脂部材6との摩擦が発生する摩擦領域502a1と、樹脂部材6との摩擦が発生しない非摩擦領域502a2とからなる。非摩擦領域502a2は、摩擦領域502a1の周囲を囲むように形成されている。
【0065】
側面502bは、受け面502aに直交するように形成され、半円状の円弧面502b1と、円弧面502b1の周方向の両端部に連続し、互いに向かい合う一対の平面502b2と、一対の平面502b2に連続し、テーパ状に形成された一対のテーパ面502b3とからなる。一対のテーパ面502b3の間には、導出路510が連通している。一対のテーパ面502b3は、溶融した樹脂を集中させて導出路510に流し込む漏斗状に形成されている。
【0066】
図12は、樹脂部材6が溶融治具5に保持された状態を示し、(a)は溶融治具5及び樹脂部材6の斜視図、(b)は(a)のG−G線断面図である。樹脂部材6は、先端部61側の一端が溶融治具5の保持孔501に挿入されて保持されている。軸部60は、その一部が保持孔501に保持され、端面60aは溶融治具5から露出している。
【0067】
図12(b)に示すように、樹脂部材6の先端部61は、溶融治具5の溶融部502内で受け面502aに当接している。樹脂部材6は、軸部60が保持孔501の内面501aとの間に僅かな隙間を有して保持されている。
【0068】
樹脂部材6が超音波加振されると、まず樹脂部材6の先端部61の受け面502aとの接触部が溶融し、先端部61の全体が溶融すると、次に軸部60が受け面502aに接触して溶融する。このように、樹脂部材6は、その溶融に伴って受け面502aとの接触面積が徐々に大きくなる形状に形成されている。
【0069】
図13は、溶融治具5、及び溶融治具5に保持された樹脂部材6を、樹脂部材6の中心軸C方向から見た平面図である。この図では、溶融治具5の内部に形成された溶融部502及び導出路510を破線で示している。また、樹脂部材6が溶融した樹脂の流動方向を複数の矢印で示している。
【0070】
樹脂部材6は、受け面502aに向かって押し当てられながら超音波加振されると、受け面502aの摩擦領域502a1との間に摩擦が生じ、この摩擦による摩擦熱によって溶融する。この溶融によって発生した液状の溶融樹脂は、受け面502aの非摩擦領域502a2を側面502bに沿って流動し、導出路510を介して溶融治具5の外部に吐出される。
【0071】
このように、溶融部502には、受け面502aの摩擦領域502a1の周囲に、非摩擦領域502a2の保持孔501側にあたる環状の空間Sが形成されている。この空間Sは、側面502bと樹脂部材6の外面との間に、保持孔501の内面501aと樹脂部材6の外面との間の隙間g1よりも大きな隙間g2を有している。
【0072】
(ワイヤハーネス1の製造方法)
ワイヤハーネス1の製造工程は、電線31〜33を挿通させる挿通孔21aが形成された気密ブロック21に、電線31〜33を挿通孔21aの内面との間に空間21bを設けて配置する配置工程と、空間21bに連通する流路213aを介して空間21bに樹脂部材6が溶融した流動性を有する樹脂を供給する供給工程と、空間21bに流動した樹脂を空間21b内で固化させて気密ブロック21と電線31〜33との間を樹脂封止する固化工程とを有する。
【0073】
配置工程は、雌側ハウジング20の本体部200及び別体部201をそれぞれ射出成型等により形成し、本体部200と別体部201との接合前に、接続端子41〜43がかしめ固定された電線31〜33の先端部を雌側ハウジング20内に挿入し、電線31〜33を第1挟持部211と第2挟持部212によって挟持するように別体部201を本体部200に接合することにより行われる。
【0074】
供給工程は、溶融治具5の突起部51を気密ブロック21に連結し、溶融治具5に保持された樹脂部材6を溶融治具5に押し当てながら超音波加振して溶融させ、この溶融した樹脂を突起部51の吐出口510aから流路213aに流し込む工程である。
【0075】
図14は、供給工程における溶融治具5及び樹脂部材6を気密ブロック21の断面図と共に示す説明図であり、(a)は樹脂部材6を超音波加振する前の状態を、(b)は樹脂部材6を超音波加振している状態を、それぞれ示す。
【0076】
本実施の形態では、気密ブロック21に形成された嵌合凹所213に溶融治具5の突起部51を嵌合させて、溶融治具5と気密ブロック21とを連結する。突起部51と嵌合凹所213との嵌合により、溶融治具5の導出路510(図13等に示す)と流路213aとが連通する。
【0077】
樹脂部材6の超音波加振は、超音波振動するホーン7を樹脂部材6の端面60aに結合し、ホーン7の振動を樹脂部材6に伝導することにより行う。ホーン7と樹脂部材6との結合は、例えばホーン7の先端面7aと樹脂部材6の端面60aとを接着剤に接着することにより行うことができる。ホーン7は、電気エネルギーを振動に変換する図略の超音波発振器に連結され、超音波の周波数帯域で振動しながらその中心軸方向に進退移動する。ホーン7の振動の周波数は、例えば15〜70kHzである。
【0078】
ホーン7は、樹脂部材6を溶融治具5(受け面502a)に押し当てながら加振する。樹脂部材6は、受け面502aとの接触部が振動による摩擦熱で溶融し、流動性を有する溶融樹脂6aとなる。この溶融樹脂6aは、受け面502aの摩擦領域502a1との摩擦によって生じ、摩擦領域502a1の周辺の空間Sを流動して導出路510に導かれ、吐出口510aから気密ブロック21の流路213aを経て空間21bに供給される。空間21bに溶融樹脂6aが充填されると、ホーン7による樹脂部材6の加振を停止し、供給工程を終了する。溶融治具5は、供給工程の終了後に気密ブロック21から取り外される。
【0079】
固化工程では、空間21b内に充填された溶融樹脂6aの温度を冷却又は自然放熱により低下させる。溶融樹脂6aの温度が融点以下となると、溶融樹脂6aが固化して挿通孔21aの内面と電線31〜33との間を封止する封止樹脂となる。これにより、気密ブロック21と電線31〜33との間が樹脂封止される。
【0080】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0081】
(1)樹脂部材6の溶融は、気密ブロック21の外部で行われ、樹脂部材6が溶融した溶融樹脂6aが流路213aを介して空間21bに供給される。これにより、例えば樹脂を気密ブロック21内で加振して溶融させる場合のように、気密ブロック21が加振による熱を直接的に受けることがないので、気密ブロック21の変形が抑制される。
【0082】
(2)溶融治具5の溶融部502における空間Sは、側面502bと樹脂部材6の外面との間に、保持孔501の内面501aと樹脂部材6の外面との間の隙間g1よりも大きな隙間g2を有しているので、受け面502aの摩擦領域502a1との摩擦により発生した溶融樹脂6aの圧力を逃がす圧力逃がし部として作用し、溶融治具5内で樹脂部材6が傾くことを抑制できる。つまり、仮に溶融部502の側面502bにおける円弧面502b1が保持孔501の内面501aの延長上に形成され、隙間g1と隙間g2とが同一であった場合には、摩擦領域502a1から円弧面502b1側に流れ出た溶融樹脂6aの圧力によって樹脂部材6の先端部が円弧面502b1から離間するように傾く場合がある。しかし、本実施の形態では、空間Sが形成されていることによってこの圧力を低減することができ、ひいては溶融樹脂6aの傾きを抑制することができる。
【0083】
(3)樹脂部材6は、先端部61が円錐状に形成され、樹脂部材6の溶融開始時には、まず先端部61の頂点が受け面502aに接触して溶融し、樹脂部材6の溶融に伴って受け面502aとの接触面積が徐々に大きくなる。これにより、樹脂部材6の溶融が円滑に開始される。
【0084】
(4)気密ブロック21内に樹脂部材6を溶融させる部位を設ける必要がないので、雌側ハウジング20を小型化及び軽量化することが可能となる。また、気密ブロック21内に樹脂部材6を溶融させる部位を設ける場合に比較して雌側ハウジング20の形状を簡略化することができるので、雌側ハウジング20の成型が容易となり、雌側ハウジング20の成型のための金型の費用も削減できる。
【0085】
(5)溶融治具5は、保持孔501により樹脂部材6を保持し、保持孔501の延伸方向に対して直交する受け面502aにて樹脂部材6を溶融させるので、樹脂部材6を受け面502aに対して直交する姿勢を保つための支持部材を別途設ける必要がなく、製造装置の構成を簡素化できる。
【0086】
(6)溶融治具5を樹脂部材6よりも高い融点を有する耐熱性の樹脂から形成したので、受け面502aが樹脂部材6の超音波振動により溶融することが抑制される。また、例えば溶融治具5を鉄等の金属により形成した場合に比較して熱伝導性が低くなるので、溶融樹脂6aの温度の溶融治具5内における低下を抑制することができる。
【0087】
(7)樹脂部材6の直径や長さは、気密ブロック21の空間21bの容積に関わりなく設定することができるので、複数の雌側ハウジング20の樹脂封止を行うことが可能な体積の樹脂部材6を溶融治具5にセットしておけば、樹脂部材6の交換及びホーン7との結合を個々の雌側ハウジング20に対して行う必要がなく、ワイヤハーネス1の製造を効率的に行うことが可能となる。
【0088】
(8)電線31の外周側の空間部21b1と、電線32の外周側の空間部21b2と、電線33の外周側の空間部21b3とが相互に連通しているため、流路213aから空間21bに供給される溶融樹脂6aが各電線31〜33の周囲に順次充填される。このため、3つの電線がそれぞれ独立した(連通しない)挿通孔に挿通される場合に比較して、電線31〜33の間隔を狭くすることが可能となり、雌側ハウジング20を小型化及び軽量化することができる。
【0089】
[第1の実施の形態の変形例]
図15は、第1の実施の形態の変形例に係る溶融治具5及び樹脂部材6を気密ブロック21の断面図と共に示す説明図であり、(a)は樹脂部材6を超音波加振する前の状態を、(b)は樹脂部材6を超音波加振している状態を、それぞれ示す。図15において、第1の実施の形態について説明したものと共通する構成要素については、共通する符号を付してその重複した説明を省略する。
【0090】
この変形例では、溶融治具5に加熱手段としての電熱線52が設けられている構成が第1の実施の形態とは異なり、その他の構成及び製造工程における手順は第1の実施の形態と共通である。また、この場合、溶融治具5は熱伝導性の高い材料により形成することが望ましい。このような材料としては、例えば鉄やステンレス等の金属が挙げられる。
【0091】
電熱線52は、通電により発熱し、その熱によって溶融治具5を加熱する。供給工程における樹脂部材6の溶融は、溶融治具5が電熱線52によって加熱された状態で行われる。溶融治具5の溶融部502及び導出路510の温度は、少なくとも樹脂部材6の加振中は、溶融樹脂6aを円滑に流動させることが可能な所定の温度(例えば50℃)以上に保たれているとよい。この所定の温度を保つため、電熱線52によって溶融治具5を加熱しながら樹脂部材6を加振してもよく、予め溶融治具5を加熱した状態で、樹脂部材6の加振を開始してもよい。
【0092】
この変形例によれば、第1の実施の形態の作用及び効果に加え、溶融治具5が加熱された状態で樹脂部材6を加振することにより、溶融治具5の内部における溶融樹脂6aの流動を円滑化できる。また、溶融樹脂6aが溶融治具5の内部を流動している間に、溶融樹脂6aの温度が低下してしまうことが抑制され、気密ブロック21の内部での溶融樹脂6aの流動もまた円滑化することができる。
【0093】
なお、上記変形例では、加熱手段として電熱線52を用いた場合について説明したが、赤外線を照射する赤外線照射装置や、電磁波を照射する電磁波照射装置によって溶融治具5を加熱しても、同様の作用及び効果が得られる。
【0094】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図16を参照して説明する。
【0095】
図16は、本実施の形態に係る溶融治具5A及び樹脂部材6Aを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のH−H線断面図である。図16(a)では、溶融治具5Aに挿入された円柱状の樹脂部材6Aの輪郭を二点鎖線で示し、図16(b)では、樹脂部材6Aの中心軸Cに沿った断面を示している。この溶融治具5Aは、第1の実施の形態に係る溶融治具5と同様、雌側ハウジング20の気密ブロック21に連結され、気密ブロック21の空間21bに溶融樹脂を供給する。
【0096】
溶融治具5Aは、例えば鉄やステンレス、あるいはアルミニウム等の金属からなり、本体部53と突出部54とを一体に有している。溶融治具5Aには、樹脂部材6Aが挿入される挿入孔531と、挿入孔531に連通し、樹脂部材6Aの超音波加振によって樹脂部材6Aが溶融した液状の樹脂を溶融治具5Aの外部に導く導出路532とを有している。
【0097】
挿入孔531は、その内面531aとの間に僅かな隙間を有して樹脂部材6Aを保持するように形成されている。挿入孔531の底部には、樹脂部材6Aの一端部が押し当てられる受け面531bが形成されている。この受け面531bは、中心部に開口532aが形成された環状である。挿入孔531は、この開口532aによって導出路532と連通している。開口532aの内径は、挿入孔531の内径よりも小さく形成されている。
【0098】
受け面531bは、その外縁部を除いて樹脂部材6Aとの摩擦が発生する。開口532aは、受け面531bの樹脂部材6Aとの摩擦が発生する領域に囲まれた箇所に形成されている。
【0099】
導出路532は、一端が突出部54に形成された吐出口54aにて溶融治具5Aの外部に開口し、他端が開口532aにて受け面531bに開口している。
【0100】
樹脂部材6Aが超音波加振され、樹脂部材6Aの一端部と受け面531bとの間に摩擦が発生すると、この摩擦によって発生した摩擦熱により樹脂部材6Aが溶融する。溶融した樹脂は、図16(a)に示す矢印のように開口532aから導出路532に流入し、吐出口54aから溶融治具5Aの外部に吐出される。
【0101】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態について述べた(1)及び(4)〜(6)の効果に加え、溶融した樹脂の圧力が樹脂部材6Aの中心軸Cに対する径方向の各方面から対称に作用し、樹脂部材6Aの傾きが抑制される。
【0102】
[第2の実施の形態の変形例]
図17は、第2の実施の形態の変形例に係る溶融治具5A及び樹脂部材6Bを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のI−I線断面図である。図17(a)では、溶融治具5Aに挿入された円柱状の樹脂部材6Bの輪郭を二点鎖線で示し、図17(b)では、樹脂部材6Bの中心軸Cに沿った断面を示している。図17において、第2の実施の形態について説明したものと共通する構成要素については、共通する符号を付してその重複した説明を省略する。
【0103】
第2の実施の形態では、円柱状の樹脂部材6Aを溶融させる場合について説明したが、本変形例に係る樹脂部材6Bは、溶融治具5Aに収容される先端部63が内部に空洞63aを有する円筒状であり、この先端部63が円柱状の軸部62と一体に形成された構成が、第2の実施の形態に係る樹脂部材6Aと異なる。
【0104】
樹脂部材6Bを超音波振動させると、先端部63が受け面531bとの摩擦により溶融し、溶融した樹脂は空洞63aの内部に一時貯留され、開口532aから導出路532に流入する。これにより、円柱状の樹脂部材6Aを用いた場合に比較して、樹脂部材6Bの溶融が円滑に開始されると共に、溶融した樹脂の圧力によって、溶融した樹脂が挿入孔531内を軸部62側に向かって逆流することが抑制される。
【0105】
以上、本発明の各実施の形態を説明したが、上記に記載した各実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、各実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0106】
例えば、ワイヤハーネス1の用途としては、車両の駆動源としての電気モータに電流を供給するものに限らず、他の用途にも適用可能である。また、上記各実施の形態では、ワイヤハーネス1の電線31〜33の数が3である場合について説明したが、電線の数に制限はなく、2本でも良いし、4本以上でもよい。各部材の材質等も、上記したものに限らない。
【0107】
また、上記各実施の形態では、気密ブロック21の一箇所に嵌合凹所213を設け、この嵌合凹所213に溶融治具5,5Aを連結したが、嵌合凹所213を複数箇所に設け、そのそれぞれに溶融治具5,5Aを連結して溶融樹脂6aを供給してもよい。
また、上記各実施の形態では、溶融治具5内の受け面502aに対し、棒状の樹脂部材6を鉛直方向に挿入する場合について説明したが、棒状の樹脂部材6の挿入方向は、その他の態様であっても良い。例えば、溶融治具5内の受け面502aに対し、所定の傾き方向(例えば45°方向)で挿入する場合や水平方向で挿入する場合であってもよい。つまり、棒状の樹脂部材6の挿入方向は、導出路510へ溶融樹脂6aを円滑に流動できるよう、適宜設定するのがよい。
【符号の説明】
【0108】
1…ワイヤハーネス、2…雌側コネクタ、2a…ロック機構、3a…中心導体、3b…シース、5,5A…溶融治具、6,6A,6B…樹脂部材、6a…溶融樹脂、7…ホーン、7a…先端面、8…雄側コネクタ、20…雌側ハウジング、20a…開口、20b…収容凹部、21…気密ブロック、21a…挿通孔、21a1,21a2,23a3…保持孔、21b…空間、21b1,21b2,21b3…空間部、21b4,21b5…連通部、31〜33…電線、41〜43…接続端子、41a,42a,43a…かしめ部、41b,42b,43b…接触部、42c…傾斜部、50…本体部、51…突起部、52…電熱線、53…本体部、54…突出部、54a…吐出口、60…軸部、60a…端面、61…先端部、62…軸部、63…先端部、63a…空洞、80…雄側ハウジング、81…接続部材、81a…頭部、81b…軸部、81c…ねじ部、82…アウタハウジング、82a…凹部、82b…先端部、82c…凸部、82d…ねじ孔、83…インナハウジング、91〜93…接続端子、91c…ねじ部、92a…貫通孔、94〜97…第1〜第4絶縁部材、94a…凹部、95a…貫通孔、95b…凹部、200…本体部、201…別体部、210…凹部、210a…底面、211,212…挟持部、213…嵌合凹所、213a…流路、501…保持孔、501a…内面、502…溶融部、502a…受け面、502a1…摩擦領域、502a2…非摩擦領域、502b…側面、502b1…円弧面、502b2…平面、502b3…テーパ面、510…導出路、510a…吐出口、531…挿入孔、531a…内面、531b…受け面、532…導出路、532a…開口、810…本体部、811…絶縁層、812,821,822…シール部材、941…座金、C…中心軸、S…空間、g1,g2…隙間、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線と、前記複数の電線の端部を保持するハウジングを有するコネクタとを備えたワイヤハーネスの製造方法において、
前記複数の電線を挿通させる挿通孔が形成された前記ハウジングの気密ブロックに、前記複数の電線を前記挿通孔の内面との間に空間を設けて配置する配置工程と、
前記空間に連通する流路を介して前記空間に流動性を有する溶融樹脂を供給する供給工程と、
前記溶融樹脂を前記空間内で固化させて前記気密ブロックと前記複数の電線との間を樹脂封止する固化工程とを有し、
前記供給工程は、固形の樹脂部材を溶融させる治具を前記気密ブロックに連結し、前記樹脂部材を前記治具に押し当てながら超音波加振して溶融させ、前記溶融により生じた前記溶融樹脂を前記流路に流し込む工程であるワイヤハーネスの製造方法。
【請求項2】
前記治具は、軸状に形成された前記樹脂部材をその軸方向に移動可能に保持する保持孔と、前記溶融樹脂を前記治具の外部に導く導出路と、前記保持孔と前記導出路との間に設けられ、前記樹脂部材を溶融させる溶融部とを有し、
前記溶融部は、前記樹脂部材が押し当てられる受け面を含み、前記樹脂部材と前記受け面との摩擦による摩擦熱によって前記樹脂部材を溶融させる、
請求項1に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項3】
前記溶融部には、前記受け面の前記樹脂部材との摩擦が発生する領域の周囲に、前記保持孔の内面と前記樹脂部材との間の隙間よりも大きな隙間を有する空間が形成されている、
請求項2に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項4】
前記導出路は、その一端が前記治具の外部に開口すると共に、他端が前記受け面に開口し、前記受け面側の開口が前記樹脂部材との摩擦が発生する領域に囲まれた箇所に形成されている、
請求項2に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂部材は、その溶融に伴って前記受け面との接触面積が大きくなる形状に形成されている、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂部材は、前記治具に収容される側の一端部が先細り形状に形成されている、
請求項5に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項7】
前記樹脂部材は、前記治具に収容される側の一端部における軸心部に空洞が形成されている、
請求項5に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項8】
前記供給工程は、前記治具が加熱手段によって加熱された状態で前記樹脂部材を溶融させる、
請求項1乃至6の何れか1項に記載のワイヤハーネスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−30455(P2013−30455A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21761(P2012−21761)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】