説明

ワイヤハーネス固定構造

【課題】ワイヤハーネスとフラット回路体を簡単な構成で一体化して取付相手部材に固定することができるとともに、コスト面で有利なワイヤハーネス固定構造を提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス固定構造10は、電線12を備えたワイヤハーネス24と、可撓性のフラット回路体11と、クランプ13と、を備え、電線12がフラット回路体11の第1延在方向に沿って延長するようにクランプ13でワイヤハーネス24をフラット回路体11とともに取付相手部材80に固定する。電線12に巻き付き電線12を保持するための電線保持部17が第1延在方向と交差する第2延在方向にフラット回路体11から一体に延設されており、クランプ13により、電線12に巻き付けられた電線保持部17の端部がフラット回路体11に固定されるとともに電線12を保持したフラット回路体11が車体パネル80に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両用のワイヤハーネス固定構造に関し、特に可撓性を有するフラット回路体(FPC(Flexible Printed Circuit),FFC(Flexible Flat Cable)、リボン電線等の可撓性を有するフラット回路体)にワイヤハーネスの線状体(例えば、電線、光ファイバー、ウォッシャーホース、等)を併設して取付相手部材に固定するワイヤハーネス固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネス固定構造の一例として、図7に示すように、フラット回路体101の幅方向に延出部102を形成し、この延出部102で光ファイバケーブル103を巻き込み、延出部102の端部をフラット回路体101のスリット104に差し込んだものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この構成によれば、フラット回路体101と光ファイバケーブルとを一体にして固定することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−182041号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に開示されたワイヤハーネス固定構造では、取付相手部材に固定するに際し、固定手段を持たないために、別構成の固定装置を用いなければならず、構造が複雑になるおそれがあるとともに部品点数が増大してコスト面で不利になりうる。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で電線とフラット回路体とを一体化でき、これらを取付相手部材に簡単に固定することができるとともに、コスト面で有利なワイヤハーネス固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 電線を含む線状体を備えたワイヤハーネスと、可撓性のフラット回路体と、クランプと、を備え、前記線状体が前記フラット回路体の第1延在方向に沿って延長するように前記クランプで前記ワイヤハーネスを前記フラット回路体とともに取付相手部材に固定するワイヤハーネス固定構造であって、
前記線状体に巻き付き該線状体を保持するための線状体保持部が前記第1延在方向と交差する第2延在方向に前記フラット回路体から一体に延設されており、
前記クランプにより、前記線状体に巻き付けられた前記線状体保持部の端部が前記フラット回路体に固定されるとともに前記線状体を保持した当該フラット回路体が前記取付相手部材に固定されることを特徴とするワイヤハーネス固定構造。
【0007】
(2) 前記フラット回路体には、前記線状体保持部の近傍に、前記線状体を前記取付相手部材に向けて押圧する線状体押さえ部が更に設けられていることを特徴とする前記(1)記載のワイヤハーネス固定構造。
【0008】
(3) 前記線状体押さえ部は、前記線状体保持部の両側における前記フラット回路体の前記第2延在方向の端縁部であって、該端縁部が前記第1延在方向に延設されていることを特徴とする前記(2)記載のワイヤハーネス固定構造。
【0009】
前記(1)の構成によれば、フラット回路体の一部を線状体保持部として線状体に巻き付けているために、別構成の固定手段を設けることなく部品点数の増大を回避することができる。また、線状体保持部は、通常、フラット回路体が製造される際の幅方向の側縁部において切除される耳部分を切除せずに、所定形状に打ち抜くことで形成することができるので、フラット回路体を製造する装置等に大幅な変更をすることなく、生産性の向上を図ることができる。そして、線状体保持部が形成されているフラット回路体は、その外被が樹脂製であって可撓性を有するために、金属製部材で押さえ付ける場合と比べて、線状体を損傷させることなく安定的に保持することができる。これらにより、ワイヤハーネスとフラット回路体を簡単な構造で一体化して取付相手部材へ固定することができるとともに、コスト面で有利なワイヤハーネス固定構造を提供することができる。
【0010】
また、線状体を保持した線状体保持部の端部がクランプによりフラット回路体に固定されるとともに、更に線状体及びフラット回路体が同じクランプで取付相手部材に固定されるので、取付相手部材への固定を簡単に行うことができる。
【0011】
前記(2)の構成によれば、線状体保持部の近傍に設けられる線状体押さえ部により線状体を取付相手部材に押圧することで、線状体保持部による線状体の保持に加えて、線状体のばらけやばたつきを防止して安定的に束ねることができる。
【0012】
前記(3)の構成によれば、線状体押さえ部もフラット回路体の耳部を利用して形成することができるので、フラット回路体を打ち抜く形状を変えることにより線状体保持部とともに線状体押さえ部を形成することができる。したがって、フラット回路体を製造する装置等に大幅な変更をすることなく、簡単に線状体押さえ部を形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電線を含む線状体を備えたワイヤハーネスと、可撓性のフラット回路体と、クランプと、を備え、前記線状体が前記フラット回路体の第1延在方向に沿って延長するように前記クランプで前記ワイヤハーネスを前記フラット回路体とともに取付相手部材に固定するワイヤハーネス固定構造において、ワイヤハーネスとフラット回路体を簡単な構造で一体化して取付相手部材に固定することができるとともに、コスト面で有利なワイヤハーネス固定構造を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1〜図3は本発明に係るワイヤハーネス固定構造の第1実施形態を示すもので、図1は本発明に係る第1実施形態のワイヤハーネス固定構造の分解斜視図、図2は図1のワイヤハーネス固定構造における組立て後の外観斜視図、図3は図2のワイヤハーネス固定構造の縦断面図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の第1実施形態であるワイヤハーネス固定構造10は、フラット回路体11と、線状体としての複数の電線12を備えたワイヤハーネス24と、クランプ13と、を有し、取付相手部材としての車体パネル80にワイヤハーネス24及びフラット回路体12を固定するものである。
【0017】
フラット回路体11は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等の絶縁フィルムからなる外被14に、銅箔である回路導体15を貼り合わせてエッチング加工することで所定の回路を形成されている。形成された回路は絶縁フィルムからなる別の外皮14により被覆される。
【0018】
フラット回路体11は、回路導体15を内包している幹部16の側部に、電線保持部17が、フラット回路体11の長手方向(第1延在方向)と直交する幅方向(第2延在方向)に一体に延設されている。
【0019】
電線保持部17は、回路導体15が内包されていない側縁部18から略T字形状に延設されており、先端の中央部にクランプ13が装着されるクランプ孔19が形成されている。また、側縁部18にも、電線保持部17と同様にクランプ孔20が形成されている。
【0020】
電線保持部17は、フラット回路体11が製造される際の幅方向の側縁部18において、通常切除される耳部分を切除せずに、略T字形状に切断することで形成される。ここで、電線保持部17は、フラット回路体11の長手方向に沿って、適当な間隔で複数設けられてもよい。
【0021】
電線12は、例えば9本の複数であって、導体21の外側を被覆部22によりそれぞれ被覆されている。
【0022】
車体パネル80は、電線保持部17及び側縁部18と同様に、クランプ孔81が形成されている。
【0023】
図2、図3に示すように、電線保持部17は、その上面に電線12が載置されてから、電線12にU字形状に巻き付けられて、先端部が側縁部18上に配置される。
【0024】
そして、電線12に電線保持部17が巻き付けられた組体23が車体パネル80上に配置され、クランプ13が、電線保持部17のクランプ孔19と、側縁部18のクランプ孔20と、車体パネル80のクランプ孔81と、に嵌め込まれる。
【0025】
これにより、電線保持部17によって電線12がフラット回路体11に一体的に組付けられるとともに、電線12がフラット回路体11に並列に一体的に組付けられて車体パネル80に固定されることとなる。
【0026】
このようなワイヤハーネス24は、自動車内において、不図示の制御回路と、同じく不図示の端末電装部品との間に不図示のコネクタ等を介して電気的に接続され、フラット回路体11の回路導体15内に小電流の電気信号が流され、電線12内に小電流及び大電流の電気信号が流される。
【0027】
以上説明したように、第1実施形態のワイヤハーネス固定構造によれば、フラット回路体11の一部を電線保持部17として電線12に巻き付けているために、別構成の固定手段を設けることなく部品点数の増大を回避することができる。また、電線保持部17は、通常、フラット回路体11が製造される際の幅方向の側縁部において切除される耳部分を切除せずに、所定形状に切断することで形成されるので、フラット回路体11を製造する装置等に大幅な変更をすることなく、生産性の向上を図ることができる。そして、電線保持部17が形成されているフラット回路体11は、その外被14が樹脂製であって可撓性を有するために、金属製部材で押さえ付ける場合と比べて、電線12を損傷させることなく安定的に保持することができる。これらにより、ワイヤハーネスとフラット回路体を簡単な構造で一体化して車体パネル80に固定することができるとともにコスト面で有利なワイヤハーネス固定構造を提供することができる。
【0028】
また、第1実施形態のワイヤハーネス固定構造によれば、電線保持部17のクランプ孔19と、側縁部18のクランプ孔20と、車体パネル80のクランプ孔81と、にクランプ13が嵌め込まれることで、ワイヤハーネス10が車体パネル80に固定されるために、フラット回路体11に電線12を固定する作業と、電線12を固定したフラット回路体11を車体パネル80へ固定する作業を同時に行うことができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、図4〜図6を参照して、本発明に係る第2実施形態のワイヤハーネス固定構造について説明する。図4〜図6は本発明に係るワイヤハーネス固定構造の第2実施形態を示すもので、図4は本発明に係る第2実施形態であるワイヤハーネス固定構造の分解斜視図、図5は図4のワイヤハーネス固定構造における組立て後の外観斜視図、図6は図5のワイヤハーネス固定構造の縦断面図である。なお、以下の第2実施形態において、上述した第1実施形態と共通する構成部分の説明は同一符号又は相当符号を付すことで簡略化あるいは省略する。
【0030】
図4に示すように、本発明の第2実施形態であるワイヤハーネス固定構造30は、電線保持部17の両側近傍に、側縁部18から幅方向(第2延在方向)に延出する電線押さえ部31,32が設けられている。
【0031】
電線押さえ部31,32は、フラット回路体11が製造される際の幅方向の側縁部18において、通常切除される耳部分を切除せずに、電線保持部17の両側に切欠部33,34を介して矩形状にそれぞれ切断することで形成される。ここで、電線保持部17と電線押さえ部31,32との組み合わせは、フラット回路体11の長さ方向に適当な間隔で複数設けられてもよい。
【0032】
図5、図6に示すように、電線12が電線保持部17の上面に載置した後、電線押さえ部31,32が電線12の上に被せられる。この状態で、電線保持部17が電線12にU字形状に巻き付けられて、先端部が側縁部18上に配置される。
【0033】
そして、電線12に電線保持部17が巻き付けられた組体23が車体パネル80上に配置され、クランプ13が、電線保持部17のクランプ孔19と、側縁部18のクランプ孔20と、車体パネル80のクランプ孔81と、に嵌め込まれる。
【0034】
これにより、電線保持部17によって保持されている電線12が、電線押さえ部31,32により車体パネル80側に押圧され、フラット回路体11に電線12が沿わされて一体的に組付けられて車体パネル80に固定される。
【0035】
第2実施形態に係るワイヤハーネス固定構造は、第1実施形態のワイヤハーネス固定構造と同様の作用効果を奏するために、それらの説明は省略されるが、特に本実施形態によれば、電線保持部17の両側近傍に設けられた電線押さえ部31,32でもって電線12を車体パネル80側に押圧することで、電線保持部17に加えて、電線12のばらけやばたつきを防止して安定的に束ねることができる。
【0036】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0037】
例えば、電線保持部17のクランプ孔19は、電線保持部17の長手方向に沿って複数設けられることにより、電線保持部17による電線12の固定位置を調整することができ、保持される電線12の太さや数の変更があっても、緩みなく電線12を束ねて保持することができる。
また、電線の数は、図示した9本に限らず、通電回路の数に応じて、適当数が選ばれればよい。
【0038】
また、フラット回路体は、図示した単一層に代えて、複数の回路導体が階層状に積層されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る第1実施形態であるワイヤハーネス固定構造を適用したワイヤハーネスの分解斜視図である。
【図2】図1のワイヤハーネスにおける組立て後の外観斜視図である。
【図3】図2のワイヤハーネスの縦断面図である。
【図4】本発明に係る第2実施形態であるワイヤハーネス固定構造を適用したワイヤハーネスの分解斜視図である。
【図5】図4のワイヤハーネスにおける組立て後の外観斜視図である。
【図6】図5のワイヤハーネスの縦断面図である。
【図7】従来のワイヤハーネス固定構造の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 ワイヤハーネス固定構造
11 フラット回路体
12 電線(線状体)
13 クランプ
24 ワイヤハーネス
17 電線保持部(線状体保持部)
30 ワイヤハーネス固定構造
31 電線押さえ部
32 電線押さえ部
80 車体パネル(取付相手部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を含む線状体を備えたワイヤハーネスと、可撓性のフラット回路体と、クランプと、を備え、前記線状体が前記フラット回路体の第1延在方向に沿って延長するように前記クランプで前記ワイヤハーネスを前記フラット回路体とともに取付相手部材に固定するワイヤハーネス固定構造であって、
前記線状体に巻き付き該線状体を保持するための線状体保持部が前記第1延在方向と交差する第2延在方向に前記フラット回路体から一体に延設されており、
前記クランプにより、前記線状体に巻き付けられた前記線状体保持部の端部が前記フラット回路体に固定されるとともに前記線状体を保持した当該フラット回路体が前記取付相手部材に固定されることを特徴とするワイヤハーネス固定構造。
【請求項2】
前記フラット回路体には、前記線状体保持部の近傍に、前記線状体を前記取付相手部材に向けて押圧する線状体押さえ部が更に設けられていることを特徴とする請求項1記載のワイヤハーネス固定構造。
【請求項3】
前記線状体押さえ部は、前記線状体保持部の両側における前記フラット回路体の前記第2延在方向の端縁部であって、該端縁部が前記第1延在方向に延設されていることを特徴とする請求項2記載のワイヤハーネス固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−232562(P2009−232562A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74014(P2008−74014)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】