ワイヤハーネス
【課題】電装機器に接続されるワイヤハーネスにおいて、電磁シールド及びケーブルの保護を実現するための部材を装着する作業を簡素化できること。
【解決手段】ワイヤハーネス1におけるケーブル保護具30は、ケーブル10の周囲を覆う筒状のシールド部材60が、筒状に形成された可撓性を有する絶縁体からなる外皮部40及びその内側の内皮部50に対し、それらの間に挟み込まれることにより一体に保持されている。外皮部40の端部には、電装機器の筐体70におけるケーブル導入口の縁部に形成された筒状部71に被せられる接続部42が形成されている。
【解決手段】ワイヤハーネス1におけるケーブル保護具30は、ケーブル10の周囲を覆う筒状のシールド部材60が、筒状に形成された可撓性を有する絶縁体からなる外皮部40及びその内側の内皮部50に対し、それらの間に挟み込まれることにより一体に保持されている。外皮部40の端部には、電装機器の筐体70におけるケーブル導入口の縁部に形成された筒状部71に被せられる接続部42が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルとそのケーブルの周囲を覆う筒状のケーブル保護具とを備えるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、ケーブルと、ケーブルの周囲を覆うシールド部材とケーブルの末端に設けられた端子とを有することが多い。一般的なシールド部材は、編組線である。そのようなワイヤハーネスは、その端部が電装機器の筐体内へ開口を通じて挿入され、末端の端子が、電装機器の筐体内に収容された端子台に接続される。また、ケーブルの端部において、シールド部材は、電装機器における導電性の筐体と電気的に接続される。
【0003】
また、ワイヤハーネスは、ケーブル及びシールド部材を、電装機器の筐体との接続部を含む領域に渡って保護するためのケーブル保護具を備える場合がある。特許文献1には、そのようなケーブル保護具の典型例であるゴムブーツが示されている。特許文献1に示されるゴムブーツは、ケーブルの周囲を覆う筒状に形成されたゴムからなり、電装機器の筐体におけるケーブル導入口の縁部に被せられる接続部(嵌合部)が端部に形成された部材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−313698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のワイヤハーネスは、電磁シールド及びケーブルの保護を実現するために、シールド部材とゴムブーツとをケーブルに対して順次することを必要とし、その装着の作業が煩わしいという問題点を有している。
【0006】
本発明は、電装機器に接続されるワイヤハーネスにおいて、電磁シールド及びケーブルの保護を実現するための部材を装着する作業を簡素化できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るワイヤハーネスは、ケーブルと、そのケーブルの周囲を覆う筒状のケーブル保護具とを備え、さらに、ケーブル保護具は、以下に示す各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、筒状に形成された可撓性を有する絶縁体からなり、電装機器の筐体におけるケーブル導入口の縁部に被せられる接続部が端部に形成された外皮部である。
(2)第2の構成要素は、前記外皮部の内側面に沿った筒状に形成された可撓性を有する導体からなるシールド部材である。
(3)第3の構成要素は、前記シールド部材の内側面に沿って筒状に形成された可撓性を有する絶縁体からなり、前記外皮部との間に前記シールド部材を挟み込むことにより前記外皮部とともに前記シールド部材を一体に保持する内皮部である。
【0008】
また、前記外皮部及び前記内皮部は、それぞれゴムからなることが考えられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るワイヤハーネスにおいては、電磁シールド用のシールド部材が、ケーブルを保護する外皮部及び内皮部に一体に保持されている。そのため、ケーブルを筒状の電線保護具における内皮部の内側に通し、外皮部の接続部を電装機器の筐体におけるケーブル導入口の縁部に被せる作業が行われるだけで、ケーブルが、電装機器の筐体との接続部を含む領域に渡って保護される。従って、本発明によれば、電装機器に接続されるワイヤハーネスにおいて、電磁シールド及びケーブルの保護を実現するための部材を装着する作業を簡素化できる。
【0010】
また、接続部を含む外皮部及び内皮部がゴムからなれば、接続部が、その弾性によってケーブル導入口の縁部(筐体の一部)を締め付ける作用により、接続部がケーブル導入口の縁部に対してより確実に保持されるので好適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るワイヤハーネス1の斜視図である。
【図2】ワイヤハーネス1の縦断面図である。
【図3】かしめリングが取り付けられたワイヤハーネス1の縦断面図である。
【図4】かしめリングの斜視図である。
【図5】かしめリングの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0013】
まず、図1及び図2を参照しつつ、本発明の実施形態に係るワイヤハーネス1について説明する。図1に示されるように、ワイヤハーネス1は、心線の周囲に絶縁被覆が形成され、末端に端子20が設けられた複数のケーブル10と、それらケーブル10の周囲を覆う筒状のケーブル保護具30とを備えている。
【0014】
ワイヤハーネス1におけるケーブル10の末端の端子20は、電装機器における導電性の筐体70に形成されたケーブル導入口から挿入され、筐体70の中に配置された端子台80に接続される。筐体70は、例えばアルミニウム、ステンレス又は銅などの金属(導電体)からなり、端子台80は、ケーブル10と不図示の電子部品との電気的な接続を中継する。なお、図2において、電装機器の筐体70及びその筐体70の中に配置された端子台80が、仮想線(二点鎖線)により示されている。また、図2において、ケーブル10の端子20を端子台80に固定するネジは省略されている。
【0015】
ケーブル保護具30は、外側の面を形成する外皮部40と、内側の面を形成する内皮部50と、外皮部40と内皮部50との間に挟み込まれたシールド部材60とを有している。外皮部40及び内皮部50は、それぞれ筒状に形成され、可撓性を有する絶縁体で構成されている。外皮部40及び内皮部50は、弾性変形可能な絶縁性の部材、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム又はアクリルゴムなどのゴムからなる部材であることが好ましい。
【0016】
図2に示されるように、外皮部40は、相対的に外径の小さな蛇腹部41と、相対的に外径の大きな接続部42とを有している。蛇腹部41は、その表面が長手方向において山状の部分と谷状の部分とが交互に連続する波形状に形成された構造を有している。このように蛇腹部41は、湾曲した配線経路に従って曲げやすい構造を有している。また、接続部42は、電装機器の筐体70におけるケーブル導入口74の縁部に形成された筒状部71に被せられる部分である。
【0017】
なお、図2には記載されていないが、リング状のかしめ金具が、筐体70の筒状部71に被せられた接続部42をその外側から締め付ける状態で取り付けられる。これにより、ケーブル保護具30の接続部42と筐体70の筒状部71との接続状態が強固に保持される。また、図2には記載されていないが、外皮部40及び内皮部50各々の接続部42,52は、外皮部40及び内皮部50各々の両端のうちの一方に形成される場合と両方に形成される場合とがある。
【0018】
シールド部材60は、外皮部40の内側面に沿った筒状に形成された可撓性を有する導体からなる部材である。このシールド部材60の典型例は、銅線などの素線が筒状に編まれた編組線である。また、シールド部材60は、筒状に形成された銅又はアルミニウムなどの導体の膜であることも考えられる。
【0019】
また、内皮部50は、シールド部材60の内側面のうち、外皮部40の接続部42の内側に位置する末端側の一部を除く残りの部分に沿って筒状に形成されている。この内皮部50は、外皮部40と同様に、相対的に外径の小さな蛇腹部51と、相対的に外径の大きな接続部52とを有している。内皮部50の蛇腹部51は、外皮部40の蛇腹部41の内側に形成され、内皮部50の接続部52は、外皮部40の接続部42の内側に形成されている。内皮部50の接続部52も、外皮部40の接続部52とともに、電装機器の筐体70における筒状部71(ケーブル導入口74の縁部)に被せられる部分である。
【0020】
そして、内皮部50は、外皮部40との間にシールド部材60を挟み込むことにより外皮部40とともにシールド部材60を一体に保持する。即ち、筒状のシールド部材60は、筒状の外皮部40及び内皮部50の間に埋め込まれている。
【0021】
図2に示されるように、外皮部40の接続部42は、シールド部材60の端部における外側面から内側面へ渡って形成されている。即ち、シールド部材60の端部は、その外側面から内側面に渡る範囲において外皮部40によって覆われている。また、外皮部40の接続部42におけるシールド部材60の内側面に形成された部分である先端内側部42Aと、内皮部50の端部52Aとの間には、シールド部材60の内側面を露出させる窓43が形成されている。以下、シールド部材60の内側面における窓43から露出した部分をシールド露出部60Aと称する。
【0022】
ワイヤハーネス1において、電磁シールド用のシールド部材60は、ケーブル10を保護する外皮部40に一体に保持されている。さらに、シールド露出部60Aが、窓43を通じて、外皮部40の端部における接続部42の内側の方向へ露出している。そして、電装機器の筐体70における筒状部71の外周面には、ワイヤハーネス1の窓43に嵌り込んでシールド露出部60Aと接触する突出部72が形成されている。
【0023】
ワイヤハーネス1が電装機器に接続される際、ケーブル10を筒状の外皮部40及び内皮部50の内側に通し、外皮部40及び内皮部50の接続部42,52を電装機器の筐体70における筒状部71(ケーブル導入口74の縁部)に被せる作業が行われる。そして、その作業が行われるだけで、ケーブル10が、筐体70と外皮部40とが接続される部分を含む領域に渡って保護され、さらに、接続部42の内側のシールド露出部60Aが、筐体70の突出部72に接触し、シールド部材60と筐体70とが電気的に接続された状態となる。従って、ワイヤハーネス1が採用されれば、電磁シールド及びケーブル10の保護を実現するための部材を装着する作業を簡素化できる。
【0024】
さらに、筐体70の突出部72とワイヤハーネス1の窓43との嵌め合い機構は、ワイヤハーネス1の接続部42,52が筐体70から外れることを防止する機構としても機能する。また、図2に示されるように、筐体70の筒状部71(ケーブル導入口74の縁部)における突出部72の横に、外皮部40の接続部42における先端内側部42Aが嵌り込む溝73が形成されていれば好適である。これにより、外皮部40の先端内側部42Aと溝73との嵌め合い機構が、ケーブル保護具30内への粉塵及び液体の浸入を防ぐ防塵及び防水の機構として機能する。
【0025】
また、ワイヤハーネス1は、シールド部材60を間に挟み込む外皮部40及び内皮部50を備えるため、編組線などのシールド部材60が、ケーブル10の端子20などに引っ掛かることを防止できる。そのため、ケーブル10を筒状の外皮部40及び内皮部50に通す作業がさらに容易となるとともに、シールド部材60の内側面も保護される。
【0026】
また、外皮部40の接続部42が、シールド部材60の端部の外側面から内側面に渡って形成され、その接続部42と内皮部50との間にシールド露出部60Aを露出させる窓43が形成された構造により、シールド部材60の末端が、電装機器の筐体70などに引っ掛かることが防止され、シールド部材60がより確実に保護される。
【0027】
ところで、シールド部材60が、外皮部40と内皮部50との間に挟み込まれた場合、シールド部材60を電装機器の筐体70に接続するための構造として、シールド部材60に接続されたドレイン線が、外皮部40と内皮部50との間から引き出された構造が考えられる。この場合、ドレイン線が、ネジ止め又はコネクタ接続などにより、筐体70の一部に固定される。
【0028】
しかしながら、ワイヤハーネス1においては、外皮部40の接続部42の内側の位置において、シールド部材60の一部(シールド露出部60A)が、窓43を通じて内側方向に露出している。そのため、ワイヤハーネス1においては、ケーブル保護具30の接続部42,52が筐体70の筒状部71に被せられるだけで、シールド部60の筐体接地が実現される。即ち、ワイヤハーネス1においては、ドレイン線などを筐体70に接続する作業が必要とされず、シールド部60の筐体接地のための作業が容易である。
【0029】
また、外皮部40が、弾性変形可能なゴムの部材であることにより、外皮部40の接続部42が、その弾性によって筐体70の筒状部71を締め付ける作用が得られる。その結果、外皮部40の接続部42が、筐体70の筒状部71(ケーブル導入口74の縁部)に対してより確実に保持され、さらに、シールド露出部60Aと筐体70の突出部72とがより確実に接触する。
【0030】
以上に示した実施形態では、外皮部40及び内皮部50が、ゴムからなる部材である例が示されたが、外皮部40及び内皮部50は、例えばポリプロピレン(PP)又はポリエチレンテレフタレート(PET)などの他の可撓性を有する合成樹脂の部材であることも考えられる。
【0031】
また、外皮部40及び内皮部50において、接続部42,52に対して相対的に外径の小さな部分は、必ずしもその表面が波形状である必要はない。
【0032】
図3は、かしめリング90が取り付けられたワイヤハーネス1の縦断面図である。また、図4及び図5は、それぞれかしめリング90の斜視図及び側面図である。なお、図4に示される斜視図は、取り付けられる前のかしめリング90の初期状態を示し、図5に示される側面図は、取り付けられたときのかしめリング90を示す。
【0033】
図4に示されるように、かしめリング90は、概ね環状に形成された金属又は樹脂などの可撓性を有する帯状の部材であり、その両端部に連結機構91,92が設けられている。図4に示される連結機構91,92は、かしめリング90の一方の端部に設けられて貫通孔を形成する受け部92と、かしめリング90の他方の端部が受け部92の貫通孔に挿入されることにより受け部92に引っ掛かる爪部91とを備えている。図5に示されるように、爪部91が受け部92に引っ掛かることにより、かしめリング90は環状に保持される。
【0034】
図3に示されるように、ワイヤハーネス1において、筐体70の筒状部71に被せられた外皮部40の接続部42の外周部分が、かしめリング90によって締め付けられることも考えられる。これにより、シールド露出部60Aが、筐体70の筒状部71に対して確実に接触し、シールド性が確実に確保される。
【0035】
また、外皮部40の接続部42が、その外周部分において、かしめリング90が嵌り込む溝を形成する突起部42Bを備えることも考えられる。これにより、かしめリング90が外皮部40の接続部42から外れにくくなるとともに、突起部42Bが、かしめリング90の取り付け位置の目印となり好適である。
【符号の説明】
【0036】
1 ワイヤハーネス
10 ケーブル
20 端子
30 ケーブル保護具
40 外皮部
41 蛇腹部
42 外皮部の接続部
42A 先端内側部
43 窓
50 内皮部
51 内皮部の蛇腹部
52 内皮部の接続部
52A 内皮部の端部
60 シールド部材
60A シールド露出部
70 電装機器の筐体
71 筐体の筒状部
72 筐体の突出部
73 筐体の溝
74 ケーブル導入口
80 端子台
90 かしめリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルとそのケーブルの周囲を覆う筒状のケーブル保護具とを備えるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、ケーブルと、ケーブルの周囲を覆うシールド部材とケーブルの末端に設けられた端子とを有することが多い。一般的なシールド部材は、編組線である。そのようなワイヤハーネスは、その端部が電装機器の筐体内へ開口を通じて挿入され、末端の端子が、電装機器の筐体内に収容された端子台に接続される。また、ケーブルの端部において、シールド部材は、電装機器における導電性の筐体と電気的に接続される。
【0003】
また、ワイヤハーネスは、ケーブル及びシールド部材を、電装機器の筐体との接続部を含む領域に渡って保護するためのケーブル保護具を備える場合がある。特許文献1には、そのようなケーブル保護具の典型例であるゴムブーツが示されている。特許文献1に示されるゴムブーツは、ケーブルの周囲を覆う筒状に形成されたゴムからなり、電装機器の筐体におけるケーブル導入口の縁部に被せられる接続部(嵌合部)が端部に形成された部材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−313698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のワイヤハーネスは、電磁シールド及びケーブルの保護を実現するために、シールド部材とゴムブーツとをケーブルに対して順次することを必要とし、その装着の作業が煩わしいという問題点を有している。
【0006】
本発明は、電装機器に接続されるワイヤハーネスにおいて、電磁シールド及びケーブルの保護を実現するための部材を装着する作業を簡素化できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るワイヤハーネスは、ケーブルと、そのケーブルの周囲を覆う筒状のケーブル保護具とを備え、さらに、ケーブル保護具は、以下に示す各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、筒状に形成された可撓性を有する絶縁体からなり、電装機器の筐体におけるケーブル導入口の縁部に被せられる接続部が端部に形成された外皮部である。
(2)第2の構成要素は、前記外皮部の内側面に沿った筒状に形成された可撓性を有する導体からなるシールド部材である。
(3)第3の構成要素は、前記シールド部材の内側面に沿って筒状に形成された可撓性を有する絶縁体からなり、前記外皮部との間に前記シールド部材を挟み込むことにより前記外皮部とともに前記シールド部材を一体に保持する内皮部である。
【0008】
また、前記外皮部及び前記内皮部は、それぞれゴムからなることが考えられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るワイヤハーネスにおいては、電磁シールド用のシールド部材が、ケーブルを保護する外皮部及び内皮部に一体に保持されている。そのため、ケーブルを筒状の電線保護具における内皮部の内側に通し、外皮部の接続部を電装機器の筐体におけるケーブル導入口の縁部に被せる作業が行われるだけで、ケーブルが、電装機器の筐体との接続部を含む領域に渡って保護される。従って、本発明によれば、電装機器に接続されるワイヤハーネスにおいて、電磁シールド及びケーブルの保護を実現するための部材を装着する作業を簡素化できる。
【0010】
また、接続部を含む外皮部及び内皮部がゴムからなれば、接続部が、その弾性によってケーブル導入口の縁部(筐体の一部)を締め付ける作用により、接続部がケーブル導入口の縁部に対してより確実に保持されるので好適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るワイヤハーネス1の斜視図である。
【図2】ワイヤハーネス1の縦断面図である。
【図3】かしめリングが取り付けられたワイヤハーネス1の縦断面図である。
【図4】かしめリングの斜視図である。
【図5】かしめリングの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0013】
まず、図1及び図2を参照しつつ、本発明の実施形態に係るワイヤハーネス1について説明する。図1に示されるように、ワイヤハーネス1は、心線の周囲に絶縁被覆が形成され、末端に端子20が設けられた複数のケーブル10と、それらケーブル10の周囲を覆う筒状のケーブル保護具30とを備えている。
【0014】
ワイヤハーネス1におけるケーブル10の末端の端子20は、電装機器における導電性の筐体70に形成されたケーブル導入口から挿入され、筐体70の中に配置された端子台80に接続される。筐体70は、例えばアルミニウム、ステンレス又は銅などの金属(導電体)からなり、端子台80は、ケーブル10と不図示の電子部品との電気的な接続を中継する。なお、図2において、電装機器の筐体70及びその筐体70の中に配置された端子台80が、仮想線(二点鎖線)により示されている。また、図2において、ケーブル10の端子20を端子台80に固定するネジは省略されている。
【0015】
ケーブル保護具30は、外側の面を形成する外皮部40と、内側の面を形成する内皮部50と、外皮部40と内皮部50との間に挟み込まれたシールド部材60とを有している。外皮部40及び内皮部50は、それぞれ筒状に形成され、可撓性を有する絶縁体で構成されている。外皮部40及び内皮部50は、弾性変形可能な絶縁性の部材、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム又はアクリルゴムなどのゴムからなる部材であることが好ましい。
【0016】
図2に示されるように、外皮部40は、相対的に外径の小さな蛇腹部41と、相対的に外径の大きな接続部42とを有している。蛇腹部41は、その表面が長手方向において山状の部分と谷状の部分とが交互に連続する波形状に形成された構造を有している。このように蛇腹部41は、湾曲した配線経路に従って曲げやすい構造を有している。また、接続部42は、電装機器の筐体70におけるケーブル導入口74の縁部に形成された筒状部71に被せられる部分である。
【0017】
なお、図2には記載されていないが、リング状のかしめ金具が、筐体70の筒状部71に被せられた接続部42をその外側から締め付ける状態で取り付けられる。これにより、ケーブル保護具30の接続部42と筐体70の筒状部71との接続状態が強固に保持される。また、図2には記載されていないが、外皮部40及び内皮部50各々の接続部42,52は、外皮部40及び内皮部50各々の両端のうちの一方に形成される場合と両方に形成される場合とがある。
【0018】
シールド部材60は、外皮部40の内側面に沿った筒状に形成された可撓性を有する導体からなる部材である。このシールド部材60の典型例は、銅線などの素線が筒状に編まれた編組線である。また、シールド部材60は、筒状に形成された銅又はアルミニウムなどの導体の膜であることも考えられる。
【0019】
また、内皮部50は、シールド部材60の内側面のうち、外皮部40の接続部42の内側に位置する末端側の一部を除く残りの部分に沿って筒状に形成されている。この内皮部50は、外皮部40と同様に、相対的に外径の小さな蛇腹部51と、相対的に外径の大きな接続部52とを有している。内皮部50の蛇腹部51は、外皮部40の蛇腹部41の内側に形成され、内皮部50の接続部52は、外皮部40の接続部42の内側に形成されている。内皮部50の接続部52も、外皮部40の接続部52とともに、電装機器の筐体70における筒状部71(ケーブル導入口74の縁部)に被せられる部分である。
【0020】
そして、内皮部50は、外皮部40との間にシールド部材60を挟み込むことにより外皮部40とともにシールド部材60を一体に保持する。即ち、筒状のシールド部材60は、筒状の外皮部40及び内皮部50の間に埋め込まれている。
【0021】
図2に示されるように、外皮部40の接続部42は、シールド部材60の端部における外側面から内側面へ渡って形成されている。即ち、シールド部材60の端部は、その外側面から内側面に渡る範囲において外皮部40によって覆われている。また、外皮部40の接続部42におけるシールド部材60の内側面に形成された部分である先端内側部42Aと、内皮部50の端部52Aとの間には、シールド部材60の内側面を露出させる窓43が形成されている。以下、シールド部材60の内側面における窓43から露出した部分をシールド露出部60Aと称する。
【0022】
ワイヤハーネス1において、電磁シールド用のシールド部材60は、ケーブル10を保護する外皮部40に一体に保持されている。さらに、シールド露出部60Aが、窓43を通じて、外皮部40の端部における接続部42の内側の方向へ露出している。そして、電装機器の筐体70における筒状部71の外周面には、ワイヤハーネス1の窓43に嵌り込んでシールド露出部60Aと接触する突出部72が形成されている。
【0023】
ワイヤハーネス1が電装機器に接続される際、ケーブル10を筒状の外皮部40及び内皮部50の内側に通し、外皮部40及び内皮部50の接続部42,52を電装機器の筐体70における筒状部71(ケーブル導入口74の縁部)に被せる作業が行われる。そして、その作業が行われるだけで、ケーブル10が、筐体70と外皮部40とが接続される部分を含む領域に渡って保護され、さらに、接続部42の内側のシールド露出部60Aが、筐体70の突出部72に接触し、シールド部材60と筐体70とが電気的に接続された状態となる。従って、ワイヤハーネス1が採用されれば、電磁シールド及びケーブル10の保護を実現するための部材を装着する作業を簡素化できる。
【0024】
さらに、筐体70の突出部72とワイヤハーネス1の窓43との嵌め合い機構は、ワイヤハーネス1の接続部42,52が筐体70から外れることを防止する機構としても機能する。また、図2に示されるように、筐体70の筒状部71(ケーブル導入口74の縁部)における突出部72の横に、外皮部40の接続部42における先端内側部42Aが嵌り込む溝73が形成されていれば好適である。これにより、外皮部40の先端内側部42Aと溝73との嵌め合い機構が、ケーブル保護具30内への粉塵及び液体の浸入を防ぐ防塵及び防水の機構として機能する。
【0025】
また、ワイヤハーネス1は、シールド部材60を間に挟み込む外皮部40及び内皮部50を備えるため、編組線などのシールド部材60が、ケーブル10の端子20などに引っ掛かることを防止できる。そのため、ケーブル10を筒状の外皮部40及び内皮部50に通す作業がさらに容易となるとともに、シールド部材60の内側面も保護される。
【0026】
また、外皮部40の接続部42が、シールド部材60の端部の外側面から内側面に渡って形成され、その接続部42と内皮部50との間にシールド露出部60Aを露出させる窓43が形成された構造により、シールド部材60の末端が、電装機器の筐体70などに引っ掛かることが防止され、シールド部材60がより確実に保護される。
【0027】
ところで、シールド部材60が、外皮部40と内皮部50との間に挟み込まれた場合、シールド部材60を電装機器の筐体70に接続するための構造として、シールド部材60に接続されたドレイン線が、外皮部40と内皮部50との間から引き出された構造が考えられる。この場合、ドレイン線が、ネジ止め又はコネクタ接続などにより、筐体70の一部に固定される。
【0028】
しかしながら、ワイヤハーネス1においては、外皮部40の接続部42の内側の位置において、シールド部材60の一部(シールド露出部60A)が、窓43を通じて内側方向に露出している。そのため、ワイヤハーネス1においては、ケーブル保護具30の接続部42,52が筐体70の筒状部71に被せられるだけで、シールド部60の筐体接地が実現される。即ち、ワイヤハーネス1においては、ドレイン線などを筐体70に接続する作業が必要とされず、シールド部60の筐体接地のための作業が容易である。
【0029】
また、外皮部40が、弾性変形可能なゴムの部材であることにより、外皮部40の接続部42が、その弾性によって筐体70の筒状部71を締め付ける作用が得られる。その結果、外皮部40の接続部42が、筐体70の筒状部71(ケーブル導入口74の縁部)に対してより確実に保持され、さらに、シールド露出部60Aと筐体70の突出部72とがより確実に接触する。
【0030】
以上に示した実施形態では、外皮部40及び内皮部50が、ゴムからなる部材である例が示されたが、外皮部40及び内皮部50は、例えばポリプロピレン(PP)又はポリエチレンテレフタレート(PET)などの他の可撓性を有する合成樹脂の部材であることも考えられる。
【0031】
また、外皮部40及び内皮部50において、接続部42,52に対して相対的に外径の小さな部分は、必ずしもその表面が波形状である必要はない。
【0032】
図3は、かしめリング90が取り付けられたワイヤハーネス1の縦断面図である。また、図4及び図5は、それぞれかしめリング90の斜視図及び側面図である。なお、図4に示される斜視図は、取り付けられる前のかしめリング90の初期状態を示し、図5に示される側面図は、取り付けられたときのかしめリング90を示す。
【0033】
図4に示されるように、かしめリング90は、概ね環状に形成された金属又は樹脂などの可撓性を有する帯状の部材であり、その両端部に連結機構91,92が設けられている。図4に示される連結機構91,92は、かしめリング90の一方の端部に設けられて貫通孔を形成する受け部92と、かしめリング90の他方の端部が受け部92の貫通孔に挿入されることにより受け部92に引っ掛かる爪部91とを備えている。図5に示されるように、爪部91が受け部92に引っ掛かることにより、かしめリング90は環状に保持される。
【0034】
図3に示されるように、ワイヤハーネス1において、筐体70の筒状部71に被せられた外皮部40の接続部42の外周部分が、かしめリング90によって締め付けられることも考えられる。これにより、シールド露出部60Aが、筐体70の筒状部71に対して確実に接触し、シールド性が確実に確保される。
【0035】
また、外皮部40の接続部42が、その外周部分において、かしめリング90が嵌り込む溝を形成する突起部42Bを備えることも考えられる。これにより、かしめリング90が外皮部40の接続部42から外れにくくなるとともに、突起部42Bが、かしめリング90の取り付け位置の目印となり好適である。
【符号の説明】
【0036】
1 ワイヤハーネス
10 ケーブル
20 端子
30 ケーブル保護具
40 外皮部
41 蛇腹部
42 外皮部の接続部
42A 先端内側部
43 窓
50 内皮部
51 内皮部の蛇腹部
52 内皮部の接続部
52A 内皮部の端部
60 シールド部材
60A シールド露出部
70 電装機器の筐体
71 筐体の筒状部
72 筐体の突出部
73 筐体の溝
74 ケーブル導入口
80 端子台
90 かしめリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルと、前記ケーブルの周囲を覆う筒状のケーブル保護具と、を備えるワイヤハーネスであって、
前記ケーブル保護具は、
筒状に形成された可撓性を有する絶縁体からなり、電装機器の筐体におけるケーブル導入口の縁部に被せられる接続部が端部に形成された外皮部と、
前記外皮部の内側面に沿った筒状に形成された可撓性を有する導体からなるシールド部材と、
前記シールド部材の内側面に沿って筒状に形成された可撓性を有する絶縁体からなり、前記外皮部との間に前記シールド部材を挟み込むことにより前記外皮部とともに前記シールド部材を一体に保持する内皮部と、を備えることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記外皮部及び前記内皮部はゴムからなる請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項1】
ケーブルと、前記ケーブルの周囲を覆う筒状のケーブル保護具と、を備えるワイヤハーネスであって、
前記ケーブル保護具は、
筒状に形成された可撓性を有する絶縁体からなり、電装機器の筐体におけるケーブル導入口の縁部に被せられる接続部が端部に形成された外皮部と、
前記外皮部の内側面に沿った筒状に形成された可撓性を有する導体からなるシールド部材と、
前記シールド部材の内側面に沿って筒状に形成された可撓性を有する絶縁体からなり、前記外皮部との間に前記シールド部材を挟み込むことにより前記外皮部とともに前記シールド部材を一体に保持する内皮部と、を備えることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記外皮部及び前記内皮部はゴムからなる請求項1に記載のワイヤハーネス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−39777(P2012−39777A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178356(P2010−178356)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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