説明

ワイヤボンディング装置

【課題】本発明は、イニシャルボールの形成時に金属ワイヤの先端に確実に不活性ガスなどを供給することができるワイヤボンディング装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本願の発明にかかるワイヤボンディング装置は、先端から金属ワイヤを繰り出すキャピラリと、不活性又は還元性のガスを噴出するガスノズルと、該ガスノズルに固定され、光を反射する反射部と、該金属ワイヤの先端を経由して該反射部に至るビーム光を出射する光源と、該反射部からの反射ビーム光を、該金属ワイヤの先端と該ガスノズルの相対位置情報として用いて、該ガスが該金属ワイヤの先端に当たるように該ガスノズルの位置を調整する手段と、該金属ワイヤの先端を放電に伴う熱エネルギで溶融させ、該金属ワイヤの先端にイニシャルボールを形成するトーチロッドと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ワイヤの先端にイニシャルボールを形成してワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属ワイヤの先端を溶融してイニシャルボールを形成する技術が開示されている。この技術は、金属ワイヤの先端を溶融する際に金属ワイヤの先端に不活性ガスを供給する。不活性ガスは、イニシャルボールに酸化膜が形成されてボール径やボール形状がばらつくことを防ぎワイヤボンディングの強度を確保するために供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−133670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イニシャルボールに酸化膜が形成されることを防ぐには、金属ワイヤの先端に確実に不活性ガスを供給する必要がある。ところが、不活性ガスの供給源と金属ワイヤの先端との相対的な位置がずれて金属ワイヤの先端に不活性ガスを供給できないことがあった。その結果、イニシャルボールに酸化膜が形成されて十分なワイヤボンディング強度を得られないことがあった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、イニシャルボールの形成時に金属ワイヤの先端に確実に不活性ガスなどを供給することができるワイヤボンディング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明にかかるワイヤボンディング装置は、先端から金属ワイヤを繰り出すキャピラリと、不活性又は還元性のガスを噴出するガスノズルと、該ガスノズルに固定され、光を反射する反射部と、該金属ワイヤの先端を経由して該反射部に至るビーム光を出射する光源と、該反射部からの反射ビーム光を、該金属ワイヤの先端と該ガスノズルの相対位置情報として用いて、該ガスが該金属ワイヤの先端に当たるように該ガスノズルの位置を調整する手段と、該金属ワイヤの先端を放電に伴う熱エネルギで溶融させ、該金属ワイヤの先端にイニシャルボールを形成するトーチロッドと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガスが金属ワイヤの先端に当たるようにガス供給源(ガスノズル)の位置を調整し、その後にイニシャルボールを形成するので、金属ワイヤの先端に確実にガスを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係るワイヤボンディング装置を示す図である。
【図2】ガスノズルの断面図である。
【図3】ガスノズルを噴出口側から見た図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るワイヤボンディング装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2に係るワイヤボンディング装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係るワイヤボンディング装置を示す図である。ワイヤボンディング装置10はキャピラリ12を備えている。キャピラリ12の先端からは金属ワイヤ14が繰り出されている。金属ワイヤ14は銅で形成されたワイヤである。
【0010】
ワイヤボンディング装置10は光源16を備えている。光源16は可視光のレーザ光を発振するものである。光源16から出射するレーザ光のビーム径は2mmである。さらに、光源16からのレーザ光を通す位置に、開口を有する第1の板18と同様に開口を有する第2の板20を備えている。開口を有する第1の板18及び開口を有する第2の板20の開口は、レーザ光を2mm未満まで絞ることができるアパーチャである。そして、開口を有する第1の板18及び開口を有する第2の板20は、上述の2つの開口を通過したレーザ光が金属ワイヤ14の先端に当たるように位置が調整されている。
【0011】
ワイヤボンディング装置10は不活性ガス(窒素ガス)を噴出するガスノズル22を備えている。ガスノズル22は噴出口22aを有し、当該噴出口22aから金属ワイヤ14の先端に向けて不活性ガスを供給する。ガスノズル22には、ガスノズルの位置を調整する機構26が固定されている。ここで、図2と図3を参照してガスノズル22について説明する。図2はガスノズル22の断面図である。ガスノズル22の内壁には反射部24が固定されている。反射部24は光を反射する材料で形成され、一辺が2.5mmの四角形の形状を有している。図3はガスノズル22を噴出口22a側から見た図である。図3に示されるように、反射部24は噴出口22aから入射した光を反射できる位置に固定されている。
【0012】
図1の説明に戻る。ワイヤボンディング装置10はトーチロッド28を備えている。トーチロッド28は、金属ワイヤ14の先端を放電に伴う熱エネルギで溶融させ、金属ワイヤ14の先端にイニシャルボールを形成するものである。
【0013】
図4は本発明の実施の形態1に係るワイヤボンディング装置10の動作を示すフローチャートである。以後、このフローチャートに従って本発明の実施の形態1に係るワイヤボンディング装置10の動作について説明する。まず、光源16からレーザ光を出射させる(ステップ30)。そうすると、レーザ光は第1の板18の開口と第2の板20の開口を通り、金属ワイヤ14の先端を経由して反射部24に至る。反射部24に至ったレーザ光は反射部24で反射する。
【0014】
次いで、反射部24で反射されたレーザ光(以後、反射レーザ光という)がレーザ光(光源16から反射部24に至るレーザ光を指す、以後同じ)と同軸にのるようにガスノズル22の位置を調整する(ステップ32)。ガスノズル22の位置の調整は、ガスノズルの位置を調整する機構26が行う。ガスノズルの位置を調整する機構26は、反射レーザ光が第1の板18及び第2の板20の開口を通過するようにガスノズル22の位置を調整する。この調整が終わると、不活性ガスの噴出方向が金属ワイヤ14の先端の方向を向くようになる。
【0015】
次いで、ガスノズル22の噴出口22aから不活性ガスを噴出した状態でイニシャルボールを形成する(ステップ34)。イニシャルボールは、トーチロッド28と金属ワイヤ14との間に高電圧を印加して空中放電を起こし、当該放電に伴う熱エネルギで金属ワイヤ14の先端を溶融させて形成する。イニシャルボールは球状となる。
【0016】
次いで、ボールボンディング及びステッチボンディングを行う(ステップ36)。金属ワイヤ14の先端に形成されたイニシャルボールを電極パッドなどの所望の場所にボンディングし、その後、金属ワイヤ14の先端と反対側の部分を他の電極パッドなどにステッチボンディングする。なお、ボールボンディング及びステッチボンディングには、超音波併用熱圧着を用いる。
【0017】
本発明の実施の形態1に係るワイヤボンディング装置10によれば、ガスノズルの位置を調整する機構26が、不活性ガスを金属ワイヤ14の先端にあてるようにガスノズル22の位置を調整する。よって、金属ワイヤ14の先端に確実に不活性ガスを当てることによりイニシャルボールに酸化膜が形成されることを抑制し、十分なワイヤボンディング強度を得ることができる。なお、イニシャルボールに酸化膜が形成された場合でもボールボンディングの超音波出力を増大させて、ワイヤボンディング強度を確保することが考えられる。しかしながら、超音波強度を増大させると、電極パッドなどが損傷するおそれがある。
【0018】
本発明の実施の形態1に係るワイヤボンディング装置10はキャピラリ12の横方向から不活性ガスを供給する。よって、キャピラリ12の上下方向の移動の際にキャピラリ12とガスノズル22が干渉することを防止できる。
【0019】
ところで、ワイヤボンディング装置10では、ガスノズルの位置を調整する機構26を設けたが本発明はこれに限定されない。本発明は、反射部からの反射ビーム光を金属ワイヤの先端とガスノズルの相対位置情報として用い、不活性ガスが金属ワイヤの先端に当たるようにガスノズルの位置を調整する手段を有することを特徴とするものである。従って、ガスノズルの位置を調整する機構26は他の構成でもよい。
【0020】
本発明の実施の形態1に係るワイヤボンディング装置10では、レーザ光と反射レーザ光がともに、第1の板18及び第2の板20の開口を通るようにガスノズル22の位置を調整したが本発明はこれに限定されない。たとえば、反射レーザ光が所定位置に当たることをもって、不活性ガスが金属ワイヤの先端に当たることを確保できるようにしておき、ガスノズルの位置を調整する手段で反射レーザ光が当該所定位置にあたるようにしてもよい。よって、第1の板18及び第2の板20を有しなくても本発明の効果を得ることはできる。
【0021】
本発明の実施の形態1に係る光源16ではレーザ光を用いたが、たとえば、ハロゲンランプやLEDなどの点光源をアパーチャで絞ったビーム光を用いてもよい。またビーム径は、ビーム光の全体を反射部24にあてることができる限りにおいて、特に限定されない。
【0022】
本発明の実施の形態1に係るワイヤボンディング装置10では反射部24をガスノズル22の内壁に固定したが、反射部24はガスノズル22に固定されている限り、金属ワイヤの先端とガスノズルの相対位置情報を提供できる。よって、反射部24はガスノズルの内壁以外に固定されてもよい。また、反射部24はガスノズル22の内壁に形成された鏡面であってもよい。反射部24を鏡面とするとガスノズル22内部の不活性ガスの流れを妨げずに反射部24を形成できる。
【0023】
本発明の実施の形態1に係る金属ワイヤ14は銅で形成したが、ワイヤボンディングが可能な他の金属であってもよい。
【0024】
本発明の実施の形態1に係るワイヤボンディング装置10では不活性ガスとして窒素ガスを用いたが窒素と水素の混合ガス、アルゴンガスその他の、不活性または還元性ガスを用いてもよい。
【0025】
実施の形態2.
図5は本発明の実施の形態2に係るワイヤボンディング装置を示す図である。ワイヤボンディング装置50については、実施の形態1に係るワイヤボンディング装置10との相違点のみ説明する。ワイヤボンディング装置50は、ハーフミラー52を有している。ハーフミラー52はレーザ光を透過するが、反射レーザ光は所定方向へ折り返す。当該所定方向にはフォトディテクタ54が配置されている。ハーフミラー52とフォトディテクタ54は、ガスノズル22が不活性ガスを金属ワイヤ14の先端に当てることができる位置であるときに、フォトディテクタ54の受光強度が最大となるように配置されている。
【0026】
フォトディテクタ54と、ガスノズルの位置を調整する機構26は配線56で接続され、フォトディテクタ54の受光強度をガスノズルの位置を調整する機構26へ伝送できるようになっている。
【0027】
ガスノズルの位置を調整する機構26は、フォトディテクタ54の受光強度が最大となるようにガスノズル22の位置を調整する。この調整は図4のステップ34に対応するものである。よって、イニシャルボールの形成時にワイヤの先端に確実に不活性ガスを供給することができる。また、ガスノズル22の位置を受光強度の数値で管理できるので、正確且つ容易にガスノズル22の位置を制御できる。
【0028】
ところで、ワイヤボンディング装置50内部の照明やワイヤボンディング装置50外部からの光が反射部24に当たって、反射レーザ光の一部となることが考えられる。その場合、フォトディテクタ54の受光強度がそれらの光の影響を受ける。これを回避するために、フォトディテクタ54は、反射レーザ光のうち光源16から出射したレーザ光と同一周波数の光のみ検出することが好ましい。
【0029】
本発明の実施の形態2に係るフォトディテクタ54は、フォトダイオード、フォトトランジスタ、又はフォトマルチプライヤーチューブなどの受光量に比例した電流を出力できるものであれば特に限定されない。また、ハーフミラー52は、プリズムやビームスプリッタのようにレーザ光を透過し反射レーザ光を所定方向へ折り返すことができるものであれば特に限定されない。また、本発明の実施の形態2に係るワイヤボンディング装置50についても、本発明の実施の形態1相当の変形はなしえる。
【符号の説明】
【0030】
10 ワイヤボンディング装置、 12 キャピラリ、 14 金属ワイヤ、 16 光源、 18 開口を有する第1の板、 20 開口を有する第2の板、 22 ガスノズル、 24 反射部、 26 ガスノズルの位置を調整する機構、 28 トーチロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端から金属ワイヤを繰り出すキャピラリと、
不活性又は還元性のガスを噴出するガスノズルと、
前記ガスノズルに固定され、光を反射する反射部と、
前記金属ワイヤの先端を経由して前記反射部に至るビーム光を出射する光源と、
前記反射部からの反射ビーム光を、前記金属ワイヤの先端と前記ガスノズルの相対位置情報として用いて、前記ガスが前記金属ワイヤの先端に当たるように前記ガスノズルの位置を調整する手段と、
前記金属ワイヤの先端を放電に伴う熱エネルギで溶融させ、前記金属ワイヤの先端にイニシャルボールを形成するトーチロッドと、
を備えたことを特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項2】
前記調整する手段は、前記反射ビーム光が所定位置に当たるように前記ガスノズルの位置を調整することを特徴とする請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項3】
開口を有する第1の板と開口を有する第2の板とを有し、
前記ビーム光は前記第1の板の開口及び前記第2の板の開口を通り、
前記調整する手段は、前記反射ビーム光が前記第1の板の開口及び前記第2の板の開口を通るように前記ガスノズルの位置を調整することを特徴とする請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項4】
前記反射ビーム光を検出するフォトディテクタを有し、
前記フォトディテクタの受光強度は、前記ガスノズルが前記ガスを前記金属ワイヤの先端に当てることができる位置であるときに最大となり、
前記調整する手段は、前記フォトディテクタの受光強度が最大となるように前記ガスノズルの位置を調整することを特徴とする請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項5】
前記フォトディテクタは、前記反射ビーム光のうち前記光源から出射した前記ビーム光と同一周波数の光のみを検出することを特徴とする請求項4に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項6】
前記反射部は前記ガスノズルの内壁に形成された鏡面であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のワイヤボンディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−151290(P2012−151290A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9045(P2011−9045)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】