説明

ワイヤーハーネス固定部材およびその固定部材を用いたワイヤーハーネスの固定方法。

【課題】 ワイヤーハーネスの車両の内装部材等への組み付け性、取り外し性の向上および部品取付精度の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】 フラットタイプのワイヤーハーネス10を内装部材10に固定可能とするワイヤーハーネス固定部材1を、中央部に形成されワイヤーハーネス10を装着可能な突起部2と、この突起部2の両端に連続する一対の固定部3と、固定部3の裏面に設けられ内装部材20に係止するフック部材6と、突起部3の裏面に設けられワイヤーハーネス10の複数の貫通孔10Dと係止するワイヤーハーネス係止部材5と、一対の固定部3と突起部2とにわたって設けられ、一対の固定部3を内装部材20に押し付ける際、一対の固定部3を互いに近づける方向に引張って固定させる引張り部材4とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に使用するワイヤーハーネス固定部材およびその固定部材を用いたワイヤーハーネスの固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスを確実に固定するため、従来、図8に示すタイプの構造と、図9に示すタイプの構造とが知られている(特許文献1)。
【0003】
図8に示すワイヤーハーネスの固定構造は、布材40Aの一面に粘着材40Bが塗布されているとともに、他面に雄型あるいは雌型のいずれか一方の植毛状係止片40Cが突設されたマジックテープ(商標登録)40を、図示しないが、車体側の固定部に予め固着してある雄型あるいは雌型のいずれか一方の植毛状係止片が突設されているマジックテープに対して、雌雄の植毛状係止片同士を係止させることで固定されている。
【0004】
図9に示すワイヤーハーネスの固定構造は、雄型あるいは雌型のいずれか一方の植毛状係止片40Cを巻き付けたワイヤーハーネスをインストルメントパネル・ハーネス50とし、インストルメントパネル・ハーネス50を、インストルメントパネル60の配索溝60Aに挿入させ、配索溝60Aに予め固定された雄型あるいは雌型のいずれか一方の植毛状係止片40Dと係止させて固定させている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−155226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような従来技術では、ワイヤーハーネスは確実に固定はされるものの、固定のたびにマジックテープをワイヤーハーネスに巻き付けなければならない、配索溝側にもマジックテープ配設しなければならない、固定のための溝を設ける必要がある、等の不便があった。
また、平坦な内装部材の上に取付けようとすると、ワイヤーハーネスの位置がずれたり、ワイヤーハーネス自体がマジックテープとともに内装部材から外れてしまうという欠点があった。
さらに、ワイヤーハーネスは、粘着材によりマジックテープに粘着されているため、マジックテープから外す必要が生じたとき、簡単に外せないという欠点もあった。
【0007】
本発明は上述した従来技術の欠点を除去し、ワイヤーハーネスの車両の内装部材等への組み付け性、取り外し性の向上および部品取付精度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1)本発明のワイヤーハーネス固定部材は、内部に導電部材が収容されるとともに互いに所定間隔で平行に配置された長尺の導体部と、これらの導体部の対向する側面同士を連続して連結しかつ当該導体部より厚さが薄いブリッジ部とで構成され、当該ブリッジ部にその長手方向に沿った複数の貫通孔が形成されたフラットタイプのワイヤーハーネスを、被固定部に固定可能とするワイヤーハーネス固定部材であって、前記ワイヤーハーネスの長手方向と直交する方向に長い平面矩形状の板状に形成されるとともに、前記直交する方向の中央部に形成され裏面に前記ワイヤーハーネスを装着可能な突起部と、この突起部の両端に連続し前記長手方向に延びた一対の固定部と、この一対の固定部における前記ワイヤーハーネス側の裏面に設けられ前記被固定部に係止するフック部材と、前記突起部の裏面に設けられ前記ワイヤーハーネスの前記複数の貫通孔と係合し合って係止可能な複数のワイヤーハーネス係止部材と、前記一対の固定部と突起部とにわたって設けられ前記一対の固定部を前記被固定部に押し付けて固定する際、前記一対の固定部を互いに近づける方向に引寄せて固定させる引張り部材と、を備えて構成され、前記引張り部材は、前記一対の固定部のそれぞれ一部から前記突起部に向かって延びる一対の連結部と、この連結部の先端に一体に設けられ回動させることで当該連結部を互いに反対方向に引張る回動部とを有して形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記構成のワイヤーハーネス固定部材によれば、ワイヤーハーネス固定部材の突起部の裏面にワイヤーハーネスを装着し、このワイヤーハーネスの貫通孔にワイヤーハーネス係止部材を係止させた状態で、一対の固定部裏面のフック部材を、被固定部に押し付けるととともに、引張り部材の回動部を回動させて連結部を引き寄せ、一対の固定部を互いに近づけた状態で固定することができる。その結果、ワイヤーハーネスとワイヤーハーネス係止部材との係止により、ワイヤーハーネスの位置ずれを防止することができ、取付精度が向上する。
また、フック部材と被固定部とがより強固に引っ掛かりあうので、ワイヤーハーネスを確実に、かつ強固に固定することができる。
さらに、ワイヤーハーネスを取り外す際は、ワイヤーハーネスからワイヤーハーネス係止部材を外すだけでよいので、取外しが用意となり、組み付け性、取り外し性の向上を図れる。
【0010】
2)本発明では、請求項1に記載のワイヤーハーネス固定部材において、前記ワイヤーハーネス係止部材が、前記突起部の裏面に、前記ワイヤーハーネスの長手方向に沿った前後、かつ長手方向と直交する方向に所定間隔をおいて設けられるとともに、突起部裏面に立設された立設部と、この立設部の上端に互いに向き合う方向に突出して形成され前記ワイヤーハーネスを押さえる係止爪とで形成されていることを特徴とする。
【0011】
前記構成のワイヤーハーネス固定部材によれば、ワイヤーハーネスをその長手方向の前後位置、およびその幅方向の離れた位置を、ワイヤーハーネス係止部材の係止爪で押さえて固定することができる。したがって、ワイヤーハーネスの位置ずれを防止することができ、確実に、かつ強固に固定することができる。
【0012】
3)本発明のワイヤーハーネス固定部材は、請求項1または請求項2に記載のワイヤーハーネス固定部材において、前記突起部には、前記回動部を、その回動部が回動した状態の位置にロックするロック部が形成され、前記連結部の先端には、前記回動部の反対側に突出した引掛け爪が形成され、この引掛け爪を前記ロック部に係合させ前記回動部が所定の回動位置に固定されることを特徴とする。
【0013】
前記構成のワイヤーハーネス固定部材によれば、回動部には引掛け爪が連続しており、この引掛け爪を、突起部のロック部に係合させることができる。したがって、回動部を回動させ、連結部を互いに反対向きに引っ張り、一対の固定部を近づけた状態を維持して固定することができる。その結果、固定部のフック部材と被固定部との引っ掛かりが強固になり、より確実に固定することができる。
【0014】
4)本発明のワイヤーハーネス固定部材は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のワイヤーハーネス固定部材において、前記引張り部材の連結部が、前記一対の固定部の一部および突起部を切り抜いて形成され、前記回動部および連結部は、前記突起部を切り抜いて形成されていることを特徴とする。
【0015】
前記構成のワイヤーハーネス固定部材によれば、引張り部材の連結部、回動部および連結部が、一対の固定部、突起部と同一部材で形成されるので、連結部等を形成するために別個の材料を揃えなくてもよくなる。
【0016】
5)本発明のワイヤーハーネス固定部材は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のワイヤーハーネス固定部材において、前記突起部の表面において前記回動部の上面には、当該回動部を回動させるつまみが取付けられていることを特徴とする。
【0017】
前記構成のワイヤーハーネス固定部材によれば、つまみを回すことで回動部を回動させることができるので、回動作業が容易となる。
【0018】
6)本発明のワイヤーハーネスの固定方法は、前記請求項5に記載のワイヤーハーネス固定部材を用いて前記ワイヤーハーネスを前記被固定部に固定するワイヤーハーネスの固定方法であって、前記ワイヤーハーネスを前記ワイヤーハーネス固定部材1の突起部裏面に装着し、前記ワイヤーハーネス固定部材のワイヤーハーネス係止部材を前記ワイヤーハーネスの貫通孔に係合させるとともに、ワイヤーハーネス係止部材の係止爪でワイヤーハーネスを押さえて固定した後、前記ワイヤーハーネス固定部材を前記被固定部に押付け、前記つまみを回して前記引張り部材の回動部を回動させて前記一対の連結部を引っ張るとともに、前記引張り部材の引掛け爪を前記突起部のロック部に引っ掛けて回動部をその位置に固定するとともに、前記一対の固定部を互いに近づけた状態で固定することを特徴とする。
【0019】
前記構成のワイヤーハーネスの固定方法によれば、ワイヤーハーネスの貫通孔にワイヤーハーネス係止部材を係止させた状態で固定されるので、位置ずれがなくなり、取付精度が向上する。また、取り外す際は、ワイヤーハーネスからワイヤーハーネス係止部材を外すだけでよいので、組み付け性、取り外し性の向上を図れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のワイヤーハーネス固定部材およびワイヤーハーネスの固定方法によれば、ワイヤーハーネスの車両等への組み付け性、取り外し性の向上および部品取付位置精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1〜図3には、本発明のワイヤーハーネス固定部材(以下、単に固定部材という)1と、その固定部材1を用いてワイヤーハーネス10を、被固定部であるルーフライナー等の内装部材20に取り付け、固定するワイヤーハーネスの固定方法が示されている。
【0022】
図1は、ワイヤーハーネス10と、固定部材1と、内装部材20との相互関係の斜視図、図2は、固定部材1の裏面とワイヤーハーネス10との関係を示す斜視図、図3は、ワイヤーハーネス10を固定部材1に装着した状態を示す斜視図である。
【0023】
図1〜図3に示すように、固定部材1は、可撓性を有するプラスチック等の合成樹脂製とされ、平面矩形状の板状に形成されている。そして、この固定部材1は、その長手方向がワイヤーハーネス10の長手方向と直交して配置されるようになっている。なお、図2、図3において、固定部材1のワイヤーハーネスを装着する面を裏面とする。
【0024】
まず、固定部材1を用いて固定されるワイヤーハーネス10について説明する。
図2、図3に詳細を示すように、ワイヤーハーネス10は、フラットタイプのワイヤーハーネス10である。すなわち、ワイヤーハーネス10は、内部に導電部材が収容されるとともに互いに所定間隔で平行に配置された長尺の導体部10Aと、これらの導体部10Aの対向する側面同士を連続して連結しかつ当該導体部10Aより厚さが薄いブリッジ部10Bとで構成されている。
【0025】
そして、実施形態のフラットワイヤーハーネス10は、4本の導体部10Aと、3箇所のブリッジ部10Bとを備えて形成されている。3箇所のブリッジ部10Bのうち、中央のブリッジ部10Bには、第1の貫通孔10Cが打ち抜き形成され、その中央のブリッジ部10Bを挟んだ両側のブリッジ部10Bには、フラットワイヤーハーネス10の長手方向に沿い、かつ所定間隔をおいて第2の貫通孔10Dが打ち抜き形成されている。
【0026】
固定部材1の長手方向の中央部裏面には、ワイヤーハーネス10を装着可能とする寸法で表面側に突起した(図2、図3では凹んでいる)突起部2が形成されている。この突起部2は、固定部材1の長手方向と直交する方向に連続している。
【0027】
突起部2において固定部材1の長手方向両端には、図2に示すように、突起部2と連続しかつ長手方向に延びた一対の固定部3が形成されている。この一対の固定部3における裏面には、前記被固定部3としてのルーフライナー等の内装部材20(図1参照)に係止されるフック部材6が多数本植え込まれている。このフック部材6は、可撓性を有する例えばポリエステル系の樹脂材料で、釣り針形状等に形成され、上記内装部材20に係止しやすいようになっている。
【0028】
突起部2の裏面には、ワイヤーハーネス10の第2の貫通孔10Dと係合し合って係止可能な複数のワイヤーハーネス係止部材(以下、単に係止部材という)5が設けられている。この係止部材5は、突起部2の裏面に、ワイヤーハーネス10の長手方向に沿った前後、具体的には、固定部材1の幅方向において突起部2の最前端、および最後端に、固定部材1の幅方向に沿って設けられている。また、係止部材5は、固定部材1の長手方向と直交する方向に所定間隔をおいて設けられている。以上の前後の係止部材5は、前記ワイヤーハーネス10の第2の貫通孔10Dと係合するようになっている。
【0029】
係止部材5は、突起部2裏面に立設された立設部5Aと、この立設部5Aの上端に互いに向き合う方向に突出して形成された係止爪5Bとで形成され、これらの係止爪5Bは、図3に示すように、ワイヤーハーネス10の導体部10Aを押さえることができるようになっている。
【0030】
固定部材1には、一対の固定部3と突起部2とにわたって設けられた引張り部材4が設けられている。この引張り部材4は、一対の固定部3を内装部材20に押し付けて固定する際、一対の固定部3を互いに近づける方向に引張って、固定部3のフック部材6と内装部材20との引っ掛かりを強め、より確実、かつ強固に固定させるものである。なお、内装部材の表面には、図示しないが、不織布層が形成されている。ただし、必ずしも不織布層でなくてもよい。
【0031】
引張り部材4は、一対の固定部3のそれぞれ一部から突起部2に向かって延びる一対の連結部4Aと、この連結部4Aの先端に一体に設けられ、回動させることで当該連結部4Aを互いに反対方向に引張って固定部3を引寄せる回動部4Bと、連結部4Aの先端で回動部4Bの反対側に連結部4Aと一体に形成され、外側に突出した矢じり形状の引掛け爪4Cとを有して形成されている。
【0032】
引張り部材4の連結部4Aは、一対の固定部3の一部および突起部2を所定幅残して周囲を切り抜いて形成され、回動部4Bおよび引掛け爪4Cに連続している。回動部4Bは円板状に、また引掛け爪4Cは、回動部4Bとは反対側に突出した矢じり形状を、それぞれ残して周囲を切り抜いて形成されている。したがって、回動部4B、引掛け爪4C、および連結部4Aは、固定部3と一体となった連結部4Aの一端によって突起部2とは別個に設けられた状態となっている。
【0033】
また、回動部4Bの中心部には裏面側に突出した係合ピン4Dが固着されている。この係合ピン4Dは、回動部4Bの裏面側でワイヤーハーネス10の前記第1の貫通孔10Cに係合され、回動部4Bの表面側で、図4(B)に示すように、次に述べるつまみ7と直結されている。
【0034】
一対の連結部4Aは、固定部3と同一面となった一端部から、図4(A)にも示すように、突起部2の上面より高くなっている。また、回動部4Bの上面も突起部2の上面より高くなっており、その結果、引張り部材4は突起部2の上面から上方に突出した形状となっている。そして、このような回動部4Bの上面につまみ7が設けられているため、つまみ7を回しやすく、操作性がよいものとなっている。
【0035】
回動部4Bの上面には、その回動部4Bを回すためのつまみが固着されている。つまみ7は、角棒状に形成され、回動部4Bの直径上に配置されており、対向する連結部4A先端の引掛け爪4C同士を結ぶような位置に設けられている。
【0036】
図2に示すように、固定部材1の突起部2には、連結部4A先端の引掛け爪4Cと係合し、かつ係止するロック部2Aが形成されている。ロック部2Aは、それぞれの連結部4Aおよび引掛け爪4Cの延長線上に設けられ、引掛け爪4Cの形状に対応する形状とされている。
【0037】
このロック部2Aには、回動部4Bが所定角度回動したとき引掛け爪4Cが係合され、その結果、回動部4Bがその位置にロックされるようになっている。また、突起部2においてロック部2Aの連結部4A側には、回動部4Bが回動していない状態のとき、引掛け爪4Cを収容する係合切欠き2Bが、ロック部2Aと並んで形成されている。
【0038】
次に、図4〜図7に基づいて、固定部材1を用いてフラットワイヤーハーネス10を固定するワイヤーハーネスの固定方法を説明する。
まず、ワイヤーハーネス10を固定部材1の突起部2の裏面に装着する。次いで、固定部材1の2つの係止部材5を、ワイヤーハーネス10の第2の貫通孔20Dに係合させるとともに、係止部材5の係止爪5Bでワイヤーハーネス10の導体部10Aを押さえて固定する。
【0039】
その後、図4(A)、(B)に示すように、固定部材1を内装部材20に押付けた後、つまみ7を図5の状態から図7に示す矢印M方向に回して、図6(A)、(B)に示すように、引張り部材4の回動部4Bを回動させ、一対の連結部4Aを互いに反対側、矢印S1、S2方向に引っ張る。その結果、図6(B)に示すように、一対の固定部3が矢印S3、S4方向に戻る。この動きの変化が、図6、図7に示されている。
【0040】
そして、引張り部材4の引掛け爪を突起部2のロック部2Aに引っ掛けて回動部4Bをその位置に固定するとともに、一対の固定部3を互いに近づけた状態で固定する。この際、一対の固定部3の裏面に植え込まれたフック部材6が、内装部材20に引っ掛かりやすくなり、これにより固定部材1等が確実に固定される。
【0041】
実施形態では、内装部材20の表面に不織布層が形成されているので、不織布層に固定部3のフック部材6を係合させやすく、容易に係止することができるとともに、フック部材6と係合させる相手方の、例えばループ形状を新たに設定する必要がなくなる。
【0042】
以上のような実施例によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、固定部材1の突起部2の裏面にワイヤーハーネス10を装着し、ワイヤーハーネス10の第2の貫通孔10Dに係止部材5を差込み、互いに向き合った2本の係止爪5Bでワイヤーハーネス10の導体部10Aを押えた状態で、固定部3のフック部材6を、内装部材20に押し付けて固定することができるので、ワイヤーハーネス10の位置ずれがなくなり、確実に、かつ強固に固定することができ、取付精度が向上する。
【0043】
また、ワイヤーハーネス10の固定部材1からの取り外しは、ワイヤーハーネス10の貫通孔10Dに差込んだ係止部材5を外すだけで行なえるので、組み付け性、取り外し性の向上を図れる。
【0044】
さらに、固定部材1へのワイヤーハーネス10の装着は、係止部材5の互いに向き合った2本の係止爪5Bでワイヤーハーネス10を押えて行なう他、ワイヤーハーネス10の第1の貫通孔10Cに、回動部4Bに突設された係合ピン4Dを差込んでも行なわれ、固定部材1とワイヤーハーネス10とが3箇所で係合しているので、ワイヤーハーネス10の位置ずれをより防止することができる。
【0045】
また、回動部4Bには引掛け爪4Cが連続しており、この引掛け爪4Cを、突起部2のロック部2Aに係合させることができるので、回動部4Bを回動させ、連結部4Aを互いに反対向きに引っ張り、一対の固定部3を近づけて固定することができる。その結果、固定部3のフック部材6と内装部材10との引っ掛かりが強固になり、より確実に固定することができる。
【0046】
また、引張り部材4の連結部4Aの一部が一対の固定部3の一部および突起部2を切り抜いて形成され、連結部4Aの残りの部分および回動部4Bが突起部2を切り抜いて形成されているので、連結部4Aおよび回動部4Bを形成するための別部材を揃えなくてもよくなり、材料の節約が可能となる。
【0047】
さらに、回動部4Bの上面は、突起部2の上面より上方に突出しており、その回動部4Bの上面につまみ7が取付けられているので、つまみ7により回動部4Bを容易に回動させることができるうえ、回動時に邪魔となるものがないので、操作性がよくなる。
で、回動作業が容易となる。
【0048】
また、内装部材20の表面に不織布層が形成されているので、不織布層に固定部3のフック部材6を係合させやすく、容易に係止することができるとともに、フック部材6と係合させる相手方の、例えばループ形状を新たに設定する必要がなくなる。
【0049】
以上、好ましい実施形態ついて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜の変更が可能なものである。
【0050】
例えば、前記実施形態の係止部材5は、突起部2の裏面に長手方向および幅方向に所定間隔をおいて設けられた2個で構成されているが、これに限らない。フラットワイヤーハーネス10の長手方向の前後に、それぞれ2個づつ配置し、それぞれの係止爪5Bが互いに向き合った形状で設けてもよい。このような実施形態によれば、フラットワイヤーハーネス10をより確実に固定することができる。
【0051】
また、前記実施形態では、フラットワイヤーハーネス10が、4本の導体部10Aと3箇所のブリッジ部10Bからなる構成とされているが、フラットワイヤーハーネス10は、どのような構成、大きさのものであってもよい。この場合、それぞれのフラットワイヤーハーネス10に対応させて、固定部材1の突起部2の幅、および高さ寸法を設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のワイヤーハーネス固定部材の一実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】前記実施形態のワイヤーハーネス固定部材とワイヤーハーネスとの関係を示す分解斜視図である。
【図3】前記実施形態のワイヤーハーネス固定部材にワイヤーハーネスを装着した状態を示す斜視図である。
【図4】前記実施形態のワイヤーハーネス固定部材にワイヤーハーネスを装着した状態を上方から示す斜視図である。
【図5】図4の上方からワイヤーハーネス固定部材を見た平面図である。
【図6】前記実施形態のワイヤーハーネス固定部材にワイヤーハーネスを装着しつまみを回した状態を示す斜視図である。
【図7】図6の上方からワイヤーハーネス固定部材を見た平面図である。
【図8】従来技術で用いられるマジックテープを示す斜視図である。
【図9】従来技術において、インストルメントパネルへの取付状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ワイヤーハーネス固定部材
2 突起部
2A ロック部
3 固定部
4 引張り部材
4A 連結部
4B 回動部
5 ワイヤーハーネス係止部材
5A 立設部
5B 係止爪
6 フック部材
10 フラットワイヤーハーネス
10A 導体部
10B ブリッジ部
20 被固定部としての内装部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に導電部材が収容されるとともに互いに所定間隔で平行に配置された長尺の導体部と、これらの導体部の対向する側面同士を連続して連結しかつ当該導体部より厚さが薄いブリッジ部とで構成され、当該ブリッジ部にその長手方向に沿った複数の貫通孔が形成されたフラットタイプのワイヤーハーネスを、被固定部に固定可能とするワイヤーハーネス固定部材であって、
前記ワイヤーハーネスの長手方向と直交する方向に長い平面矩形状の板状に形成されるとともに、前記直交する方向の中央部に形成され裏面に前記ワイヤーハーネスを装着可能な突起部と、
この突起部の両端に連続し前記長手方向に延びた一対の固定部と、
この一対の固定部における前記ワイヤーハーネス側の裏面に設けられ前記被固定部に係止するフック部材と、
前記突起部の裏面に設けられ前記ワイヤーハーネスの前記複数の貫通孔と係合し合って係止可能な複数のワイヤーハーネス係止部材と、
前記一対の固定部と突起部とにわたって設けられ前記一対の固定部を前記被固定部に押し付けて固定する際、前記一対の固定部を互いに近づける方向に引寄せて固定させる引張り部材と、を備えて構成され、
前記引張り部材は、前記一対の固定部のそれぞれ一部から前記突起部に向かって延びる一対の連結部と、この連結部の先端に一体に設けられ回動させることで当該連結部を互いに反対方向に引張る回動部とを有して形成されていることを特徴とするワイヤーハーネス固定部材。
【請求項2】
前記複数のワイヤーハーネス係止部材が、前記突起部の裏面に、前記ワイヤーハーネスの長手方向に沿った前後、かつ長手方向と直交する方向に所定間隔をおいて設けられるとともに、突起部裏面に立設された立設部と、この立設部の上端に互いに向き合う方向に突出して形成され前記ワイヤーハーネスを押さえる係止爪とで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーハーネス固定部材。
【請求項3】
前記突起部には、前記回動部を、その回動部が回動した状態の位置にロックするロック部が形成され、前記連結部の先端には、前記回動部の反対側に突出した引掛け爪が形成され、この引掛け爪を前記ロック部に係合させ前記回動部が所定の回動位置に固定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤーハーネス固定部材。
【請求項4】
前記引張り部材の連結部は、前記一対の固定部の一部および突起部を切り抜いて形成され、前記回動部および連結部は、前記突起部を切り抜いて形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のワイヤーハーネス固定部材。
【請求項5】
前記突起部の表面において前記回動部の上面には、当該回動部を回動させるつまみが取付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のワイヤーハーネス固定部材。
【請求項6】
前記請求項5に記載のワイヤーハーネス固定部材を用いて前記ワイヤーハーネスを前記被固定部に固定するワイヤーハーネスの固定方法であって、
前記ワイヤーハーネスを前記ワイヤーハーネス固定部材の突起部裏面に装着し、前記ワイヤーハーネス固定部材のワイヤーハーネス係止部材を前記ワイヤーハーネスの貫通孔に係合させるとともに、ワイヤーハーネス係止部材の係止爪でワイヤーハーネスを押さえて固定した後、前記ワイヤーハーネス固定部材を前記被固定部に押付け、前記つまみを回して前記引張り部材の回動部を回動させて前記一対の連結部を引っ張るとともに、前記引張り部材の引掛け爪を前記突起部のロック部に引っ掛けて回動部をその位置に固定するとともに、前記一対の固定部を互いに近づけた状態で固定することを特徴とするワイヤーハーネスの固定方法。
【請求項7】
前記被固定部が車両等の内装部材であり、この内装部材の表面には、不織布の層が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のワイヤーハーネスの固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−320114(P2006−320114A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140298(P2005−140298)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】