説明

ワクチン接種用スフィンゴイドポリアルキルアミン抱合体

本発明は、抗原などの生物学的に活性な分子の捕捉剤としての、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の使用に関する。特定の実施形態において、前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミンは、被検体の免疫応答の調節用薬学的組成物を調製するために使用される。本発明の別の側面は、被検体の免疫応答を調節することができる生物学的に活性な分子と組み合わせて、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を含む抱合体、複合体の使用によって、被検体の免疫応答を調節する方法、抱合体を含む組成物、並びに前記抱合体を使用するキットに関する。本発明に係る好ましい抱合体は、N パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル 1 カルバモイル スペルミンである。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、生物学的に活性な物質、特に抗原性分子の効果的な送達のための、スフィンゴ脂質のポリアルキルアミン抱合体(conjugate)を使用するワクチン接種に関する。
【従来技術のリスト】
【0002】
以下は、本発明の分野に属する技術水準を記述するのに適すると考えられる従来技術のリストである。
米国特許第5,334,761号:“Cationic lipids”;
US2001/048939:“Cationic reagents of transfection”;
米国特許第5,659,011号:“Agents having high nitrogen content and high cationic charge based on dicyanimide dicyandiamide or guanidine and inorganic ammonium salts”;
米国特許第5,674,908号:“Highly packed polycationic ammonium, sulfonium and phosphonium lipids”;
米国特許第6,281,371号:“Lipopolyamines, and the preparation and use thereof”;
米国特許第6,075,012号:“Reagents for intracellular delivery of macromolecules”;
米国特許第5,783,565号:“Cationic amphiphiles containing spermine or spermidine cationic group for intracellular delivery of therapeutic molecules”;
Marc Antoniu Ilies & Alexandru T. Balaban, Expert Opin. Ther. Patents. 11(11):1729-1752(2001);
Miller AD. Chem. Int. Ed. Eng. 37: 1768-1785(1998);
Nakanichi T. et al. J. Control Release 61:233-240(1999);
Brunel F. et al. Vaccine 17: 2192-2193 (1999);
Guy B. et al. Vaccine 19:1794-1805(2001);
Lima KM et al. Vaccine 19:3518-3525(2001)。
【発明の背景】
【0003】
細胞以下又は分子レベルで細胞機能に影響を与えることができる、タンパク質及びポリヌクレオチド、外来物質並びに薬物など、多くの天然の生物分子及びそれらの類縁体は、それらの効果を発揮するために、好ましくは細胞内に取り込まれる。これらの物質に対して、細胞膜は、これらの物質に非透過性である選択的な障壁となる。細胞膜の複雑な組成には、リン脂質、糖脂質及びコレステロール、並びに内在性及び外在性タンパク質が含まれ、その機能は、Ca++及びその他の金属イオン、陰イオン、ATP、微小繊維、微小管、酵素並びにCa++結合タンパク質などの細胞質成分によって影響を受け、細胞外グリコカリックス(プロテオグリカン、グリコースアミノグリカン及び糖タンパク質)によっても影響を受ける。構造的細胞要素と細胞質内細胞要素の間の相互作用及び外部シグナルに対するそれらの応答は、細胞タイプ内及び細胞タイプ間に見られる膜選択性を担う輸送プロセスを構成する。
【0004】
自然の状態では細胞によって取り込まれない物質を細胞内へ上手く送達することも、研究されている。天然の細胞膜の脂質組成に極めてよく似た脂質調合物に、複合体状の物質を会合させることによって、膜障壁を克服することができる。これらの調合物は、接触すると、細胞膜と融合することができ、あるいは、より一般的には、ピノサイトーシス、エンドサイトーシス及び/又はファゴサイトーシスによって取り込まれる。これらの全てのプロセスでは、会合された物質が細胞内へ送達される。
【0005】
脂質複合体は、細胞表面間の電荷的反発(多くの場合、負に帯電している。)を克服することによっても、細胞内輸送を促進することができる。当該調合物の脂質は、細胞膜のリン脂質など両親媒性の脂質を含んでおり、水系中で、様々な層または凝集物、たとえばミセルまたは中空の脂質小胞(リポソーム)を形成する。リポソームは、リポソーム内に送達すべき物質を捕捉するために使用することができ;他の用法では、目的の薬物分子は、中空の水性内部に捕捉されるというよりむしろ、内在性膜成分として脂質小胞中に取り込まれるか、又は凝集物表面に静電的に付着させることができる。しかしながら、使用される多くのリン脂質は、両性イオン(中性)であるか、負に帯電しているかのいずれかである。
【0006】
細胞内送達の分野における進歩は、リポソーム又は小胞の形態の、正に帯電した合成陽イオン性脂質、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム・クロリド(DOTMA)が、DNAと自発的に相互作用し、脂質−DNA複合体を形成できるという発見であり、この複合体は、細胞膜に吸着して、融合によって、又はおそらくは吸着性エンドサイトーシスによって、細胞に取り込まれ、導入遺伝子の発現をもたらすことができる[Felgner, P. L. et al. Proc. Natl. Acad. Sci., USA 84: 7413-7417 (1987) and U. S. Pat. No. 4,897,355 to Eppstein, D. et al.]。その他、DNA複合体化小胞を形成するために、リン脂質と組み合わせて、DOTMA類縁体である1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)を使用して成功した者もある。LipofectinTM試薬(Bethesda Research Laboratories, Gaithersburg, MD.)は、高度に陰イオン性のポリヌクレオチドを生きた組織培養細胞中に送達するのに有効な物質であり、正に帯電した脂質DOTMAと、ヘルパー脂質と称される中性脂質ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)とから構成される、正に帯電したリポソームを含む。これらのリポソームは、負に帯電した核酸と自発的に相互作用して、リポプレックスと称される複合体を形成する。DNA負電荷に比して正に帯電したリポソームを過剰に使用すると、得られた複合体上の正味電荷も正になる。このようにして調製された正に帯電した複合体は、負に帯電した細胞表面に自発的に付着するか、又は、吸着的エンドサイトーシス若しくは形質膜との融合のうち何れかによって(両プロセスは、機能的ポリヌクレオチドを、例えば、組織培養細胞中に送達する。)、細胞中に導入される。DOTMAとDOTAPは、モノ陽イオン性脂質のよい例である[Illis et al. 2001, ibid.]。
【0007】
多価陽イオン単独(ポリアミン、無機塩及び複合体及び脱水溶媒を含む。)も、巨大分子の細胞内への送達を促進することが示されている。特に、多価の陽イオンは、オリゴ及びポリ陰イオン(核酸分子、アミノ酸分子など)のコンパクトな構造形態への崩壊を誘発し、これらのポリ陰イオンのウイルス中へのパッケージング、リポソーム中へのそれらの取り込み、細胞中への輸送などを促進する[Thomas T. J. et al. Biochemistry 38:3821-3830(1999)]。DNAをコンパクトにすることができる最も小さなポリ陽イオンは、ポリアミンであるスペルミジン及びスペルミンである。リンカーを介して、疎水性アンカーをこれらの分子に付着させることによって、新しいクラスのトランスフェクションベクターであるポリ陽イオン性リポポリマーが開発された。
【0008】
陽イオン性脂質及び陽イオン性ポリマーは、DNA(又は他の任意のポリ陰イオン性巨大分子)の陰イオン基と静電的に相互作用して、DNA−脂質複合体(リポプレックス)又はDNA−ポリ陽イオン複合体(ポリプレックス)を形成する。複合体の形成には、脂質又はポリマーの対イオンの放出を伴い、この放出が、リポプレックス及びポリプレックスの自発的形成のための熱力学的駆動力である。陽イオン性脂質は、4つのクラスに分けられる。(i)四級アンモニウム塩脂質(例えば、DOTMA(LipofectinTM)及びDOTAP)及びホスホニウム/アルソニウム同属体;(ii)リポポリアミン;(iii)四級アンモニウムとポリアミン部分を両方有する陽イオン性脂質;および(iv)アミジニウム、グアニジニウム及び複素環塩脂質。
【発明の概要】
【0009】
その側面の一つによれば、本発明は、被検体の免疫応答を調節するための薬学的組成物を調製するための、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の使用、に関する。
好ましい実施形態によれば、前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、カルバモイル結合を介して、少なくとも一つのポリアルキルアミン鎖を有するスフィンゴイド骨格を含む。
【0010】
本明細書において使用される「スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体」という用語は、スフィンゴイドベース(本明細書においては、「スフィンゴイド骨格」という用語によっても表される。)と少なくとも一つのポリアルキルアミン鎖間の、化学的抱合(連結)を表す。スフィンゴイドベースと少なくとも一つのポリアルキルアミン鎖間の抱合は、以下にさらに詳述されているように、カルバモイル結合を介して行われる。
【0011】
本明細書において使用される「スフィンゴイドベース/骨格」には、2又は3個のヒドロキシル基を含有する長鎖脂肪族アミンが含まれ、当該脂肪族鎖は、飽和であっても不飽和であってもよい。不飽和スフィンゴイドベースの一例は、4位に特徴的なトランス−二重結合を含有するものである。
【0012】
本明細書において使用される「調節する(modulating)」という用語は、抱合体によって送達される生物学的に活性な物質によって引き起こされる、対象の免疫応答(細胞性応答及び/又は液性応答を含む。)に対する任意の測定可能な調節的又は生化学的効果を表す。調節には、生物学的に活性な物質とともにスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を前記対象に投与したときの、一方又は両方の種類の応答を阻害すること、又は、逆に、刺激若しくは増強することが含まれる。調節とは、好ましくは、抱合体なしに投与された生物活性分子によって引き起こされるものと比較して、2桁以上刺激又は増強することを表す。本発明は、このような応答を生じる上で、抱合体なしに投与された生物学的に活性な物質が実質的に無効である場合に、免疫応答を調節することにも関する。
【0013】
さらに、調節は、例えば、自己免疫疾患の治療及びアレルギーの治療のために、被検体の免疫応答を阻害又は抑圧することにも関する。
このように、本明細書において使用される「生物学的に活性な分子」とは、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体と組み合わせて投与したときに、被検体の免疫系に対して影響を及ぼす任意の物質を表す。生物学的に活性な分子は、好ましくは、抗原性タンパク質、抗原性ペプチド、抗原性ポリペプチド又は抗原性炭水化物である。
【0014】
別の側面によれば、本発明は、生物学的に活性な分子とともに、被検体にスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を与えることを含み、前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、カルバモイル結合を介して、少なくとも一つのポリアルキルアミン鎖を有するスフィンゴイド骨格を含む、被検体の免疫応答を調節する方法に関する。
【0015】
さらに別の側面において、本発明は、(1)少なくとも一つのスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体と、(2)前記抱合体に会合した少なくとも一つの生物学的に活性な分子と、を含む、被検体の免疫応答を調節するための薬学的組成物に関する。
さらに別の実施形態によれば、本発明は、(1)スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体と、(2)被検体の免疫応答を調節することができる、生物学的に活性な分子と、を含む複合体を提供する。
【0016】
最後に、本発明は、の使用に関する。
最後に、本発明は、生物学的に活性な分子(例えば、抗原性分子)の捕捉剤としての、上記定義のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の使用に関する。この文脈において、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、生物学的に活性な分子(好ましくは、抗原性分子及び/又は免疫賦活剤及び/又は免疫抑制剤)を捕捉するためのキットの一部を形成することができ、前記キットは、前記抱合体に加え、前記生物学的に活性な分子を捕捉するための前記抱合体の使用説明書を備える。前記キット中の前記抱合体は、乾燥形態をとることができ、この場合には、前記キットは、懸濁液若しくはエマルジョン若しくは溶液を形成するために、使用前に前記抱合体と混合される適切な液体を含むことができ、あるいは、すでに液体(懸濁液、エマルジョン、溶液など)の形態をとることもできる。前記キットは、数多くの用法を有し得る。例えば、前記キットは、免疫応答を調節する様々な免疫調節分子の機能を調べるために、活性な生物分子の単離のため、及びそれらの同定のために使用することができる。当業者であれば、研究目的のために、このような捕捉剤を使用する方法を知っているであろう。
【0017】
本明細書において使用される「捕捉剤」という用語は、生物学的に活性な分子と会合することができる抱合体を表し、後者は、抱合体のポリ陽イオン構造によって、負の電荷、負の双極子又は局所的な負電荷(正味負の電荷を有する分子内の領域)を有する。捕捉それ自体は、前記負電荷、負の双極子又は局所的な負電荷を有する、捕捉すべき分子と本発明の正電荷抱合体との間の静電的相互作用を含む。
【0018】
本発明の抱合体は、生物学的に活性な分子をこれに捕捉することによって、該分子を標的部位及び標的細胞中に運搬する、デリバリー媒体として使用することもできる。
【発明の詳細な説明】
【0019】
本発明を理解し、本発明が実際にどのように実施され得るかを把握するために、ここで、添付の図面を参照しながら、非限定的な例によって、幾つかの実施形態について説明する。
本発明は、被検体の免疫応答を調節するのに有効である、生物学的に活性な分子を運搬するための捕捉剤としての、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の使用に関する。
【0020】
スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、以下の方式で合成され得る、脂質様陽イオン性(LLC)化合物である。N−置換された長鎖ベース、特に、N−置換されたスフィンゴイド又はスフィンゴイドベースを、様々なポリアルキルアミン又はそれらの誘導体と連結して、ポリアルキルアミン−スフィンゴイド体を形成し、これはそのまま使用されるか、又はさらにアルキル化される。
【0021】
形成されたポリアルキルアミン−スフィンゴイド体の適切なpHでのプトロン化又はアルキル化は、標的細胞中に送達すべき生物学的に活性な生物分子との相互作用及び標的とされる細胞との相互作用のために望ましい陽性電荷を前記脂質様化合物に与える。スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、生物学的に活性な分子の陰イオン特性と抱合体のポリアルキルアミン部分との静電的相互作用によって、生物学的に活性な分子と効率的に会合して、複合体(リポプレックス)を形成することができる。
【0022】
あるいは、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、生物学的に活性な分子とともに負荷された集合物を形成することができる。
スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、個別の脂質様分子の形態とし、又は集合物の形態とすることができる。適切な集合物の一例には、ミセル又は小胞、特に、リポソームの形成が含まれる。集合物の他の例には、逆相、立法相などのミセルの形成が含まれる。明らかに、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、組み合わされた小胞/ミセルの形態とすることができ、又は集合物の他の任意の組み合わせとすることができる。
【0023】
本明細書において使用される「脂質集合物」とは、特にミセル及びリポソームを形成する、脂質分子の組織化された集合物を表す。脂質集合物は、好ましくは、安定な脂質集合物である。本明細書において使用される安定な脂質集合物とは、保存条件下(4℃、生理的溶媒中)で、少なくとも一ヶ月間、化学的及び物理的に安定である集合物を表す。
【0024】
集合物が小胞の形態(例えば、リポソーム)であるときには、生物学的に活性な分子は、小胞、小胞の脂質二重層の一部中にカプセル化することができ、又は小胞の表面に吸着させることができる(又は、これら3つの選択肢を任意に組み合わせることができる)。集合物がミセルであるときには、生物学的に活性な分子は、安定な様式で、ミセルを形成する両親媒性物質中に挿入することができ、及び/又は静電的にそれと会合することができる。
【0025】
このように、本明細書において使用される「中にカプセル化される」、「中に含有される」、「上に負荷される」、「と会合される」という用語は、抱合体と生物学的に活性な分子との物理的な付着を表す。物理的付着は、前記抱合体から形成された集合物(例えば、小胞、ミセル又はその他の集合物)中への分子の封じ込め又は封入;かかる集合物の表面への生物分子の非共有結合;又は、このような集合物を形成するスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体間への生物分子の埋め込みの何れとすることもできる。生理的条件下でのスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の正電荷又は正の双極子のために、抱合体と生物学的に活性な物質との間の好ましい会合は、静電的、双極子又は酸−塩基相互作用によるものであることに留意すべきである。
【0026】
上記にかかわらず、本発明は、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体と生物学的に活性な分子との間で形成された会合の具体的種類によっては、限定されない。このため、会合とは、抱合体又は該抱合体から形成される集合物と、所望の治療効果を達成することができる生物学的に活性な物質との間の、任意の相互作用を意味する。
【0027】
生物学的に活性な分子と抱合体は、本分野において公知の任意の方法によって会合させることができる。これには、生物学的に活性な分子とともに、前記抱合体を後凍結乾燥又は同時凍結乾燥すること、予め形成されたスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を生物分子と単に混合することが含まれるが、これらに限定されるものではない。同時凍結乾燥の方法は、特に、米国特許第6,156,337号及び6,066,331号に記載されており、ポストカプセル化方法は、特にWO 03/000227に記載されている。全て、本明細書に参考文献として援用される。
【0028】
このように、その第一の側面によれば、本発明は、被検体の免疫応答を調節するための薬学的組成物を調製するための、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の使用であって、前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、カルバモイル結合を介して、少なくとも一つ、好ましくは一又は二のポリアルキルアミン鎖を有するスフィンゴイド骨格を含む、使用に関する。
【0029】
上述したように、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、スフィンゴイド骨格と少なくとも一つのポリアルキルアミン鎖との間の連結を含み、該連結は、対応するカルバモイル結合を介する。より好ましくは、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、一般式(I):
【化1】

(式中、
は、水素、分枝又は直鎖のアルキル、アリール、アルキルアミン、又は−C(O)R基を表し;
及びRは、独立に、分枝又は直鎖のC10−C24アルキル、アルケニル又はポリエニル基を表し;
及びRは、独立に、−C(O)−NR基を表し、R及びRは、R及びRについて同一であるか又は異なっており、独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和の分枝若しくは直鎖ポリアルキルアミンを表し、前記ポリアルキルアミン中の一以上のアミン単位は第四級アンモニウムであり得る;又は
は、水素であり;又は
及びRは、それらが結合している酸素原子とともに、−C(O)−NR−[R−NR−C(O)−を含む複素環を形成し、Rは、飽和又は不飽和のC−Cアルキルを表し、Rは、水素又は式−[R−NR−のポリアルキルアミンを表し、前記R又は各アルキルアミン単位RNRは、前記ポリアルキルアミン中において同一であっても異なっていてもよく;
n及びmは、独立に、1から10まで、好ましくは3から6までの整数であり;
Wは、−CH=CH−、−CH−CH(OH)−又は−CH−CH−から選択される基を表す。)を有する。
【0030】
本発明のさらに具体的な態様に従って使用され得るスフィンゴイド又はスフィンゴイドベースの非限定的な例には、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン及びそれらの誘導体が含まれる。このような誘導体の非限定的な例は、それぞれ、セラミド(N−アシルスフィンゴシン)、ジヒドロセラミド、フィトセラミド及びジヒドロフィトセラミドのような、アシル誘導体、並びにセラミン(N−アルキルスフィンゴシン)及び対応する誘導体(例えば、ジヒドロセラミン、フィトセラミンなど)である。適切にN−置換されたスフィンゴイド又はスフィンゴイドベースは、遊離のヒドロキシル基を有し、これは活性化された後、ポリアルキルアミンと反応して、ポリアルキルアミン−スフィンゴイド体を形成する。活性化剤の非限定的な例は、N,N’−ジスクシニミジルカーボネート、ジ−若しくはトリ−ホスゲン又はイミダゾール誘導体である。これらの活性化剤をスフィンゴイド又はスフィンゴイドベースと反応させると、それぞれ、一方又は両方のヒドロキシル部分に、スクシニミジルオキシカルボニル、クロロギ酸又はカルバミン酸イミダゾールを生じる。活性化されたスフィンゴイドとポリアルキルアミンとの反応は、図1に示されているように、分枝、直鎖(非分枝)又は環状抱合体を得ることができる。
【0031】
一つの好ましい実施形態によれば、スフィンゴイド骨格は、1個(図1A)又は2個(図1B又は1C)のポリアルキルアミン鎖に連結されたセラミド、又は2個のヒドロキシル部分を介して連結されて、環状ポリアルキルアミン部分を形成する(図1D)セラミドである。
【0032】
形成されたスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、四級アミンを形成させるために、さらに、メチル化剤と反応させることができる。生じた化合物は、形成された抱合体内の四級、一級及び/又は二級アミン間の比に応じて、異なる程度で、正に帯電される。このように、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、四級塩化アンモニウム、四級ヨウ化アンモニウム、四級フッ化アンモニウム、四級臭化アンモニウム、四級アンモニウムオキシアニオン及びそれらの組み合わせ(これらに限定されない。)などの四級化(quaternized)窒素塩として存在する。
【0033】
スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、好ましくは、生物学的に活性な分子とともに使用される。生物学的に活性な物質は、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体とともに投与されたときに、被検体の免疫系に対する効果(一実施形態によれば、刺激又は増強効果)を有する任意の分子である。この効果は、前記抱合体なしに被検体に与えた場合における、前記生物学的に活性な分子の効果(効果が存在する場合)に比べて、二桁以上であることが好ましい。
【0034】
一実施形態によれば、前記生物学的に活性な物質は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド又は炭水化物である。具体的には、生物学的に活性な分子は、抗原性タンパク質又は抗原性ペプチド、免疫賦活薬及び/又は免疫抑制薬などの、免疫調節物質であり得る。抗原性タンパク質及びペプチド、免疫賦活薬並びに免疫抑制薬は全て、本分野において周知である。好ましくは、前記生物学的に活性なタンパク質又はペプチド又は炭水化物は、生理的pHにおいて、正味負の双極子モーメントもしくは正味負の電荷を有するか、又は正味負の電荷を有する少なくとも一つの負に帯電した領域を含有する。
【0035】
別の実施形態によれば、前記生物学的に活性な物質は、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)などの核酸分子である。
スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体と生物学的に活性な物質の好ましい重量比は、1000:1から1:1の重量比である。
【0036】
スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、抗原性分子と併用されることが知られている他の活性物質と組み合わせることもできる。このような物質には、例えば、免疫賦活剤(「免疫刺激剤」又は「アジュバント」という用語でも知られている。)が含まれる。これには、ワクチンに添加したときに、より大きな応答を生じるために必要とされるワクチンが少なくなるように、免疫応答を向上させる任意の物質が含まれる。免疫賦活剤は、抱合体/生物学的に活性な物質とともに与えることができ、又は特定の時間間隔内に(抱合体/生物学的に活性な分子の投与前又は投与後、数時間又は数日)与えることができる。
【0037】
好ましい免疫賦活剤には、インターロイキン(IL−2、IL−10、IL−12、IL−15、IL−18)、インターフェロン(IFNα、β、γ)などのサイトカイン、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、トキシン(例えば、コレラトキシン(CT)、ブドウ球菌のエンテロトキシンB(SEB))、易熱性E.コリ エンテロトキシン(HLT)、並びに、抗原性分子に対する免疫応答を増強又は刺激するために、本分野で使用されることが知られている他の任意のアジュバントが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記集合物には、唯一の脂質様成分として、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体(非メチル化又はメチル化)を含んでいてもよいし、又は他のヘルパー脂質物質と組み合わせてもよい。このようなヘルパー脂質物質は、DOPE、DOPC、DMPC、コレステロール、オレイン酸その他などの、非陽イオン性脂質を、脂質様化合物に対して種々のモル比で含んでいてもよい。コレステロールは、インビボ用の好ましい添加物質の一つであるが、インビトロ用には、DOPEが好ましいヘルパー脂質であり得る。この特定の実施形態において、陽イオン性脂質に対するコレステロールのモル比は、0.01から1.0、好ましくは0.1から0.4の範囲にある。
【0039】
前記集合物は、増強物質(CaCl及び可溶性ポリアルキルアミンなどの、本分野で公知のもの)を含むこともできる。
脂質集合物中に含まれることができ、同様の構造物中に使用されることが知られている他の成分は、立体安定化物質(steric stabilizer)である。一般的に使用される立体安定化物質の一例は、リポポリマーのファミリー、例えば、ポリエチレングリコール誘導体化脂質(PEG−脂質抱合体)である。化合物のこのファミリーは、とりわけ、脂質の循環時間を増加(延長する)ことが知られている。
【0040】
一実施形態によれば、前記形成されたリポソームは、約50から5000nmの直径を有する、サイズの異なる異種及び異層小胞(UHV;unsized heterogeneous and heterolamellar vesicles)として形づくられてもよい。形成されたUHVは、さらなるプロセシングによって、サイズを小さくして、約50から100nmの直径を有する巨大な(より均一な)単層小胞(LUV;large unilamellar vesicle)に変換されてもよい。小胞の構造及び大きさ(例えば、それらの形状及びサイズ)は、活性な生物学的な物を標的に送達するための媒体としてその効率性に対して重大な影響を及ぼすことができ、すなわち、これらは小胞の送達特性を決定する。
【0041】
スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の一部を形成するポリアルキルアミン鎖の好ましい基は、式(I)に関連して、構造的に上に定義されている。本実施形態によれば、前記ポリアルキルアミン鎖(式(I)の抱合体中において同一であっても異なっていてもよい。)は、スペルミン、スペルミジン、ポリアルキルアミン類縁体又はそれらの組み合わせから選択される。ポリアルキルアミン類縁体という用語は、任意のポリアルキル鎖を表すために使用され、一実施形態では、1から10個のアミン基、好ましくは3から6個のアミン基、より好ましくは3又は4個のアミン基を含むポリアルキルアミンを表す。ポリアルキルアミン鎖内の各アルキルアミンは、同一であっても異なっていてもよく、一級、二級、三級又は四級アミンとすることができる。
【0042】
ポリアルキルアミン鎖内で同一であっても異なっていてもよい前記アルキル部分は、好ましくはC−C脂肪族反復ユニットである。ポリアルキルアミンの幾つかの非限定的な例には、スペルミジン、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパン−ジアミン、3,3’−イミノビスプロピルアミン、スペルミン及びスペルミンのビス(エチル)誘導体、ポリエチレンイミンが含まれる。
【0043】
最も好ましい本発明のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシルカルバモイル−スペルミン(CCS)である。この抱合体には、カルバモイル結合を介してスペルミンに連結されたセラミドが含まれる。
本発明のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、好ましくは、ワクチンの調製のために使用される。
【0044】
一実施形態によれば、前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体、及び好ましくはCCSは、インフルエンザワクチンの調製のために使用される。 本実施形態において、前記生物学的に活性な物質は、インフルエンザウイルスに由来し、又はインフルエンザウイルスに由来する分子の生物学的に活性な類縁体である。このような類縁体には、インフルエンザに由来する、免疫応答を誘発する抗原性断片などの、任意の物質が含まれる。
【0045】
具体的なインフルエンザ由来の抗原性物質は、ヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)分子であり、この組み合わせは、HNと称される。
本発明は、生物学的に活性な物質とともに、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体で被検体を処置することを含む、被検体の免疫応答を調節する方法にも関する。
【0046】
併用治療には、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体と生物学的に活性な物質は、(必要に応じて、免疫賦活剤と組み合わせて)一緒に、又は予め定義された時間間隔内に(数時間又は数日など)投与することが含まれる。しかしながら、好ましい実施形態によれば、前記抱合体及び生物学的に活性な物質は、被検体に投与する前に、一緒に混合される。
【0047】
生物学的に活性な物質とともに、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を投与することは、本発明の別の側面に関する。従って、生理的に許容される担体と、生物学的に活性な物質とともに有効量のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体とを含む、薬学的組成物が提供される。薬学的組成物は、必要に応じて、免疫賦活薬を含む。
【0048】
生物学的に活性な物質と組み合わせて抱合されるスフィンゴイド−ポリアルキルアミンは、適切な医療基準に従って、各患者の臨床症状、投与の部位及び方法、投与のスケジュール、患者の年齢、性別、体重及び医療従事者に公知の他の因子を考慮に入れて、投与及び投薬され得る。
【0049】
本明細書において、「有効量」とは、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体なしに、生物学的に活性な物質を被検体に与えた場合に得られる効果と比べて、被検体の免疫応答を調節する(上記定義のように、増強又は刺激する)のに有効な量を表す。好ましくは、前記量は、特定の疾病又は疾患に対して、被験者の有効な免疫化を達成するのに有効である。
【0050】
上記にかかわらず、前記量は、例えば、アレルギー又は自己免疫応答を治療する目的で、免疫応答の抑圧又は阻害を達成するのに有効であり得る。
生物学的に活性な物質と会合されたスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を含む本発明の組成物は、様々な方法で投与することができる。投与経路の非限定的な例には、経口、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、動脈内(i.a.)、筋肉内(i.m.)、腹腔内(i.p.)、直腸内(i.r.)及び鼻内(i.n.)投与を含む非経口、並びに、目への注入技術、眼内が含まれる。好ましくは、投与の様式は、鼻内又は筋肉内投与である。
【0051】
本発明において、生理的に許容される担体とは、好ましくは生物学的に活性な前記物質又は前記抱合体と反応せず、生物学的に活性な分子との前記抱合体の効果的な送達に必要とされる、不活性な無毒の固体又は液体物質を一般に表す。
生理的に許容される担体の非限定的な例には、単独の、又は、微量な(最大10%)アルコール(エタノールなど)を加えた、水、生理的食塩水、5%デキストロース(グルコース)、10%スクロースなどが含まれる。
【0052】
好ましくは、本発明の組成物は、懸濁液、水溶液などの液体調合物、又はエアロゾルの形態であり、これらは全て当業者に公知である。エアロゾル調合物は、プロパン、窒素などの、加圧された許容される噴射剤中に収容することができる。それらは、噴霧器又は霧吹きに適した担体中などに、加圧されていない調製物用の医薬として調合することもできる。
【実施例】
【0053】
インフルエンザ
HN抗原が搭載された陽イオン性リポソームの性質決定
コレステロール(Chol)を加えて、又は加えずに、様々な脂質/タンパク質 w/w比(3/1−300/1)で、様々な陽イオン性リポソーム調合物上に搭載されたHN(インフルエンザウイルス由来のヘマグルチニンとノイラミニダーゼの市販の調製物)のカプセル化効率を調べた。表1は、陽イオン性脂質DOTAPとCCSを用いた、このような実験の結果を示している。
【0054】
【表1】

【0055】
Cholあり又はなしで、50/1から300/1の脂質/タンパク質 w/w比を使用すると、DOTAPについては、負荷のパーセントは75−90%であった。30/1から300/1の脂質/タンパク質 w/w比では、約90%の抗原負荷が達成され、10/1及び3/1のw/w比では、それぞれ、79%及び35%に減少した。調合物へのCholの添加は、DOTAP/Cholのモル比が1/1及び2/1では、ローディングに影響を与えず、4/1の比率では、カプセル化が若干低下した(80%)。CCSの場合、Cholあり又はなしで、ローディング効率は、これより低かった(100/1から300/1のw/w比で、64−73%)。
【0056】
可溶性抗原を、予め形成された空のリポソームと単に混合した際の、HNのリポソームとの会合も測定した。このような場合、100/1から300/1の脂質/タンパク質 w/w比を使用すると、調合物とは無関係に、抗原の40から60%がリポソームと会合した。
これらの知見を総合すると、全ての調合物で、簡易且つ迅速な(5分)手順を用いて、極めて高いローディング効率(>60%)が得られることが示唆される。さらに、水性懸濁液中に予め形成されたリポソームでさえ、インフルエンザウイルスの表面抗原と効果的に会合できた。
【0057】
様々な脂質/抗原 w/w比(コレステロールの添加あり、又は添加なし)の免疫原性も評価した。
第一の実験では、若い(2ヶ月齢)BALB/cマウスに、HNが負荷された中性、陰イオン性又は陽イオン性リポソームを鼻内ワクチン接種した後の、HI、IgG1及びIgG2a抗体の血清レベルを測定した(表2A)。HN抗原は、A/New Caledonia(H1N1)株に由来する一価サブユニットワクチンであった。同じ実験において、HI、IgG1、IgG2a及びIgA抗体の肺及び鼻のレベル、脾臓細胞によって産生されたINFγレベルも調べた(表2B及び2C)。
【0058】
【表2A】

【0059】
特に、2回の鼻内投与後に局所及び全身応答を誘発するために、HN抗原をカプセル化している、中性(DMPC)、陰イオン性(DMPC/DMIG、9/1モル比)及び陽イオン性(6つの調合物)集合物(Lip)の間で比較を行った。全ての調合物で、脂質/HN w/w比は300/1であり、陽イオン性脂質/Chol又は陽イオン性脂質/DOPEモル比は1/1であった。遊離抗原(F−HN)、及びアジュバントとしてコレラ毒素(CT、1μg)と同時投与されたF−HNを平行して調べた。第0日及び第7日に、3μg/投薬(10μL/鼻腔)のワクチンを与え、二度目のワクチン投薬から4ないし6週後に応答を測定した。
【0060】
【表2B】

【0061】
【表2C】

【0062】
表2A−2Cに示されているように、遊離の抗原、並びに中性及び陰イオン性Lip−HNは、実質的に無効な粘膜ワクチンであった。これに対して、陽イオン性Lip−HN、特にDOTAP−HN、DMTAP−HN及びCCS−HNと表記されるものは、高レベルのIgG1、IgG2a及びIgA抗体とともに、強固な全身及び粘膜性の液性応答を誘発した(すなわち、混合Th1+Th2応答)。IgE抗体は、検出されなかった。DOTAP−HN、DMTAP−HN及びCCS−HNを含む、陽イオン性リポソームワクチンは、抗原刺激された脾臓細胞中で、高レベルのIFNγも誘導した(但し、IL−4は誘導しなかった。)。CCS−HNによって生じた応答は、CTをアジュバントとして加えたF−HNによって誘導された応答より、ずっと強かった。これらの知見に基づき、陽イオン性リポソーム調合物:DOTAP−HN、DMTAP−HN及びCCS−HNのみをさらに使用した。
【0063】
第二の実験では、HNが負荷された陽イオン性リポソームの免疫原性及び可溶性抗原と単に混合されただけの、予め形成されたリポソームの免疫原性に対する脂質/HN w/w比の影響を調べた。表3A−3Cに示されたデータは、3つの調合物が全て、強力な全身性(血清)及び局所性(肺)応答を誘導すること、並びに、脂質/HN w/w比が100/1未満に低下すると、この応答が顕著に弱まることを示している。
【0064】
【表3A】

【0065】
【表3B】

【0066】
【表3C】

【0067】
高レベルの血清及び肺のIgG2a及びIgA抗体によって反映されているように、ここでも、他のワクチン調合物に対するLip CCS−HNワクチン(グループ12−16)の優越性が見られる。興味深いことに、可溶性抗原を、予め形成されたリポソームと単に混合するだけで、抗原をカプセル化しているリポソームに匹敵する極めて強力なワクチン(グループ18−20)が生成された。このことは、陽イオン性集合物/リポソームのアジュバント活性には、抗原を実際にカプセル化する必要がない場合があることを示唆している。
【0068】
さらなる実験では、HNを負荷したリポソームの免疫原性に対するコレステロールの影響を調べた。表4A−4Cは、この実験の結果を示しており、Cholの添加は、2/1及び4/1のモル比で(グループ4、5)、DOTAP−HNに対する全身性HI応答を僅かに低減させたが、1/1モル比では低減させず(グループ3)、全ての比で(グループ7−9)、DMTAP−HNに対する総合的な応答を、1/1の比で(グループ11)、CCS−HNの比で、CCS−HNに対する局所(肺)応答を穏やかに増強することを示唆している。
【0069】
【表4A】

【0070】
【表4B】

【0071】
【表4C】

【0072】
それぞれ、1μg及び2μgのサブユニット(HN)ワクチン(A/パナマ[H3N2]ウイルスに由来)を筋肉内(第0日に、一度)又は鼻内(第0日及び第7日に、二度)投与した後、CCS−HNワクチンの免疫原性を高齢(18月齢)のC57BL/6マウスでも調べた。脂質集合物は、CCS/コレステロール(3:2モル比)から構成され、脂質/HN w/w比は200:1であった。市販のワクチンの活性がゼロであったのに対して、CCS−HNワクチンは、表5A及び5Bから明らかなように(データは、平均力価を示している。)高レベルの血清HI及びIgG2a抗体(ワクチン接種から4週後に検査)並びに肺(ワクチン接種から6週後に検査)IgG2a及びIgA抗体を誘発した。
【0073】
【表5A】

【0074】
【表5B】

【0075】
さらに、様々なワクチン調合物による細胞応答の誘導を調べた。特に、様々な陽イオン性リポソーム調製物を鼻内に与えて、若いマウスを免疫し、ワクチン接種から6週後に、脾臓細胞の細胞応答(細胞毒性、増殖及びIFNγ産生)を測定した。本実験では(結果は表6に示されている。)、HNをロードされたリポソーム(グループ3−10)及び単独で与えた遊離抗原(F−HN)(グループ2)又は予め形成された空のリポソームと混合された(グループ11−13)遊離抗原(F−HN)の間で、比較を行った。様々な脂質/HN w/w比(30/1−300/1)で調製されたLip(DMTAP)−HN及びLip(CCS)−HNの免疫原性も測定した。
【0076】
【表6】

【0077】
特異的な標的細胞(インフルエンザペプチドでパルスされたP815)に対する選択的細胞毒性は、100/1の脂質/HN w/w比でCCS−HNを用いた場合と(グループ8)、遊離抗原を同時投与した、予め形成された3つの全てのリポソーム(DOTAP、DMTAP及びCCS)を用いた場合にのみ得られた。最大の増殖応答は、50/1及び30/1の脂質/HN w/w比でDMTAP−HNを用いた場合と、300/1、100/1及び50/1の比でCCS−HNを用いた場合に観察された。最も有効なリポソーム調合物によって惹起される増殖応答及び細胞毒性応答は、遊離抗原によって誘発されるものより2から3倍大きかった。
【0078】
これらの知見は、測定されたあらゆるタイプの抗体の最高レベルが100/1から300/1の脂質/HN w/w比で得られた液性反応の場合と比べて(表3)、細胞性応答については、これより低いw/w比(例えば、30/1から100/1)が最適であり得ることを示唆している。さらに、DMTAP−HNは、強力な液性応答を惹起するのに対して、この調合物は、CCS−HNと比べて、細胞毒性活性を誘導する能力が弱い。興味深いことに、予め形成された陽イオン性リポソーム(3つの調合物全て)と遊離抗原の懸濁液中混合物を用いてワクチンを接種すると、カプセル化された抗原によって引き起こされるものと同規模の、優れた細胞性応答が惹起される。このように、遊離抗原を予め形成された陽イオン性リポソームと単に混合するだけで、強力な液性(表3A−3C)及び細胞性(表6)応答をともに誘導するのに十分であり得る。
【0079】
さらなる実験では(その結果は、表7A−7Cに示されている。)、免疫原性と生ウイルスによる攻撃誘発に対する防御免疫の誘導について、DOTAP、DMTAP又はCCSを含み、HNが負荷された一価陽イオン性リポソームを1回筋肉内投薬、1又は2回鼻内投薬及び2回経口投薬した場合の比較を行った。この実験では、脂質/HN w/w比は300/1であり、陽イオン脂質/Chol比は、DOTAPとDMTAP系では1/1であり、CCS系では3/2であった。3つの経路のうち、2回の鼻内投与が、最も強い液性及び細胞性応答と防御免疫を生じさせる。3つの調合物のうち、特に、IgG2aとIgA抗体に関して、CCSが最も高い応答を誘導する。
【0080】
【表7A】

【0081】
【表7B】

【0082】
【表7C】

【0083】
表8から10に記載されている実験では、市販の三価ワクチンを検査し、CCSをベースとしたワクチンの単回投薬(各ウイルス株の抗原[HN]を2又は4μg使用)、及び3、7又は14日の投与間隔で与えた、ワクチンの2回投薬(2μg/株/投薬)の間で、比較を行った。脂質集合物は、3/2モル比でCCS/Chol(コレステロール)から構成され、脂質/HN w/w比は全ての調合物につき100/1であった。対照として、標準的な三価の市販ワクチン(HN)を、単独で、又は粘膜アジュバントとして使用される1μgのコレラ毒素(CT)と組み合わせて投与した。血清、肺ホモジネート及び鼻洗浄液のHI抗体(表8)並びに抗原特異的なIgG1、IgG2a、IGA及びIgE抗体(表9)を、最初のワクチン投薬から5ないし6週後に調べた。さらに、選択したグループから得た5匹のマウスの鼻内を生ウイルスで攻撃し(再集合体X−127ウイルスに適応されたマウスを使用)、4日後に、肺のウイルス力価を定量することによって、防御を評価した(表10)。
【0084】
市販のインフルエンザワクチン(HN)の免疫原性が乏しく、又は存在しなかったのと比べて(グループ2−6)、CCS/Chol−インフルエンザワクチンは、検査した全ての種類の抗体(検出されなかった、IgEを除く。)、特に2つのA型ウイルス株(グループ8−11;表8、9)に対する抗体を高い力価で誘導した。2回投薬計画の場合、1週間の間隔が最適なようである(グループ10)。単回投薬計画の場合、2μgでなく、4μgの抗原が(グループ8対グループ7)が、高い力価の血清HI、IgG1及びIgG2a抗体及び肺IgG1抗体を誘導した。しかしながら、2回投薬計画と比べて、単回投薬計画は、肺IgG2a及びIgA抗体並びに鼻の抗体を誘導しなかった(表9)。
【0085】
防御アッセイでは(表10)、鼻内に、単回(4μg)又は2回(2μg/投薬)の何れかを投与したCCS−インフルエンザワクチンは、ウイルス感染に対して完全な防御を与えたのに対して(肺のウイルス力価が6対数減少)、標準的なワクチンは、ウイルス力価を0.5から1対数しか減少させなかった。このように、CCS−インフルエンザワクチンによる単回投薬計画は、幾つかの抗体のイソタイプについて、2回投薬計画より劣っているが、2つの投薬計画は同程度の防御を与える。
【0086】
本実験において、本発明者らは、ワクチン担体として、CCS/Cholに対してCCS単独も比較したが、2つの調合物の間には、免疫原性に全く差は認められなかった(データは図示せず。)。調合物の別の改変は、押し出しによるCCS/Chol脂質集合物(直径0.05−5μm)のサイズの縮小(直径0.02μm)であった。押し出しが施されたワクチンによって誘導される抗体力価は、押し出しが施されていないワクチンによって生じた抗体力価より50から80%低かった(データは図示せず。)。このように、標準的なサイズでないCCS脂質集合物は、コレステロールの有無に関わらず、三価のインフルエンザワクチンに対するワクチン担体として極めて効率的である。
【0087】
【表8】

【0088】
【表9】

【0089】
【表10】

【0090】
表11及び12に記載されている実験では、様々な量のHN抗原及び脂質を用いて、三価のインフルエンザワクチンを、CCS/Chol脂質集合物とともに調合した。本実験では、(a)脂質/HN w/w比を100/1で一定に保ちながら、様々な量の抗原(0.25から2μg/ウイルス株)と脂質(0.075から0.6mg);(b)漸増量の抗原(0.25から2μg)と一定量の脂質(0.6mg)によって、脂質/HN w/w比を100/1から800/1まで変化させて、ワクチンを調製した。表11(HI力価)及び表12(アイソタイプ力価)から明らかなように、それぞれ、2又は1μgの各株の抗原と0.6又は0.3mgの脂質とを用いて、100/1 脂質/HN w/w比で調製されたワクチンは、3つのウイルス株に対して、同じような高レベルの抗体を産生した(グループ2、3)。これより少ない抗原(0.5、0.25μg/株)と脂質(0.15、0.075mg)用量では、応答、特に粘膜応答(肺、鼻)は、顕著に減少した(グループ4、5)(表12)。一定用量の脂質(0.6mg)を使用したときには、さらに低い2つの用量の抗原(0.25、0.5μg/株)を用いた場合でさえ、高レベルの抗体が得られた(グループ6−8)。このように、CCS脂質の量は極めて重要であり、適切な脂質用量を用いると、抗原用量を1/4から1/8に(1−2μgから0.25−0.5μgまで)減らすことができる。
【0091】
【表11】

【0092】
【表12】

【0093】
さらなる実験では、遊離(HN)の、又はCCS/Chol脂質集合物(Lip HN)が会合したサブユニットインフルエンザワクチンが、ワクチンに含まれていない様々なインフルエンザA及びB亜株と交叉反応するHI抗体を誘導する能力について調べた。表13に示されているデータは、CCSをベースとした一価又は三価のインフルエンザワクチンの何れかを、一度又は二度投与された、鼻内(i.n.)及び筋肉内(i.m.)ワクチン接種によって、免疫を与える株に対して誘導された高血清力価のHI抗体のほか、1986から1999年にかけて流行し、前記ワクチンには含まれていない数個のA/H1N1、A/H3N2及びB株と交叉反応するHI抗体が誘導されることを示している。単回の鼻内ワクチン投与後に、僅かに低いHI力価が見出された(グループ6対グループ7)。肺ホモジネートHI力価(グループ4、8)は、対応する血清力価より低かった。このように、CCSをベースとスルワクチンの非経口又は鼻内ワクチン接種によって、広いスペクトルのA及びBウイルス株に対する防御が与えられる可能性がある。このような抗原変異株は、抗原連続変異の結果として、インフルエンザの蔓延/流行中に、発生し得る。これに対して、鼻内投与された標準的な市販のワクチン(グループ1、5)は、相同及び異種株の両方に対する抗体を誘導する効果は全くなかった。
【0094】
【表13】

【0095】
HNが負荷され、鼻内投与された陰イオン及び陽イオン性リポソームの生体分布
生体分布実験では、インフルエンザHN抗原が負荷されていない、又は負荷されている、脂質集合物の三つの調合物:DMPC/DMPG(陰イオン性), DOTAP/Chol(陽イオン性)及びCCS/Chol(陽イオン性)を、BALB/cマウスに鼻内投与した(マウス当たり200μg脂質、2μg抗原)。次いで、24時間にわたって(投与から1時間後、5時間後及び24時間後の時点で)、様々な組織のホモジネート中で、蛍光標識された脂質を追跡した。
【0096】
下表14及び図2A−2Fから明らかなように、1及び5時間後に、検査した3つの調合物全ての投与された脂質が75−100%回収された。しかしながら、この回収は、CCS調合物を除く全ての調合物中において、24時間の時点で有意に低下した。HN抗原を含有するCCS調合物は、3つの標的臓器(鼻、肺、消化管)中で、最も長い保持(>24時間)を示したのに対して、脳には脂質の蓄積が存在せず、検査した他の臓器(肝臓、腎臓、心臓、脾臓)には、有意な蓄積が存在しなかった。
【0097】
【表14】

【0098】
125I標識されたHNを使用すると、その生体分布は、蛍光脂質の生体分布と類似していた(データは示さず。)。気道及び消化管へのCCSワクチン成分の、このような長期の保持は、他のリポソーム調合物に比べて免疫原性が優れていることを部分的に説明し得るかもしれない。これは、ワクチンの抗原成分を追跡した以下の研究において示された。HNタンパク質に125Iを標識し、遊離の状態で、又は蛍光生体分布実験で使用した脂質調合物の一つと会合した状態で、鼻内に投与した。様々な組織の放射能を、滴下注入から1、5及び24時間の時点で測定した。
【0099】
表15は、抗原の回収が本実験でも高かったことを教示している。図3A−3Dから明らかなように、125I標識されたHNの生体分布パターンは、脂質の生体分布パターンと類似しており(図2A−2F)、(a)HNタンパク質と脂質集合物がインビボでも実際に会合していること、(b)可溶性形態のタンパク質を単独で投与すると、HNの保持が全く存在しないので、陽イオン性脂質集合物と会合した場合に、抗原が鼻内に長期間保持されのは、陽イオン性脂質集合物によるものであり、HNタンパク質の固有の特性によるものではないことが、さらに確定される。
【0100】
本実験は、単独で、又は脂質集合物と会合させて投与したときに、HNタンパク質の脳内への蓄積(鼻内ワクチン接種に伴う、安全上の主要な懸念)が存在しないことを教示するものであり得る。放射能追跡法は、蛍光法よりずっと感度が高いので、この結果には、より高い信頼を置くことができる。
【0101】
【表15】

【0102】
様々な組織中で、類似の動態又は異なる動態によって、タンパク質及び脂質が保持及び/又は除去されるかどうかを調べる試みで、様々な時点における、様々な組織中の(投与された総用量の)%抗原保持と%脂質保持との比を求める、前記データの別の解析を行った。比が一定であり、1に等しいか、1に近い場合には、両成分が同一臓器中に同様に保持されていることを意味し、この比が1より大きいか、又は1より小さい場合には、各成分のクリアランス速度が異なり、一方の成分が他方の成分より早く除去されることを示唆する。
【0103】
下表16から明らかなように、時とともに一定を保った唯一の比は、鼻内のCCS/Chol−HNの比であった(比=約0.45)。このことは、(a)DMPC/DMPGとは異なり、CCS及びDOTAPを用いた場合の、鼻内への抗原の高い保持は、会合のレベルに相関しており、鼻粘膜へのこれらの調合物の結合によるものであること、(b)CCS以外の調合物の成分は体内で解離し、異なる速度で除去されるのに対して、CCS−HNをベースとした調合物は、特に鼻内において安定であり、これは、CCSをベースとしたワクチンを用いた際に見られる免疫原性の増強に寄与し得ることが示唆される。
【0104】
【表16】

【0105】
鼻内インフルエンザワクチンの予備的安全性試験
毒性(局所、全身)は、筋肉内及び鼻内ワクチンに伴う主要な懸念であるため、予備的な毒性研究を行った。インフルエンザ抗原ヘマグルチニン+ノイラミニダーゼ(HN)が負荷された陽イオン性脂質調合物(DMTAP、DOTAP、CCSベース)を、マウス(n=4/グループ)に鼻内(1週間の間隔を置いて、2回)投与し、血球数(総数、差)、血液の化学検査および組織学的検査(鼻、肺切片)を72時間後に実施した。マウスは、明瞭な毒性の徴候を一切示さなかった。血球数及び血液化学は、正常な範囲内にあり、予想通り、陽イオン性調合物で処置されたマウスの鼻及び肺には、最小限ないし弱い炎症応答が見られた。程度はさらに低いが、同様の炎症応答が、生理的食塩水のみ又は非カプセル化抗原で処置されたマウスの一部にもみられた。
【0106】
CCS−インフルエンザワクチンのマウス中での免疫調節活性
これらの実験では、様々なリポソーム調合物(DMPC、DMPC/DMPG、DOTAP/Chol、CCS/Cholから構成される。)、0.5から1mgの脂質を、HN抗原あり又はなしで、マウスに腹腔内注射した。マウスには、処置を施さないか、又はリポソーム調合物の注射から2日前に、チオグリコレート(TG)、マクロファージ産生を増加させるため)とともに腹腔内注射した。リポソームの投与から24ないし48時間後に、腹腔細胞を採集し、そのまま使用するか、又はプラスチック皿に、37℃で、4時間吸着させ、非付着性細胞を除去した後に使用した。別の実験では、TG処置されたマウスから腹腔細胞を採集し、リポソーム調合物とともに、24から48時間インキュベートした。MHC II並びに同時刺激分子CD40及びB7の発現について、細胞をフローサイトメトリーによって調べた。サイトカイン:インターフェロンγ(IFNγ)、腫瘍壊死因子α(TNFα)及びインターロイキン12(IL−12)並びに一酸化窒素(NO)について、上清を検査した。
【0107】
全ての陽イオン性調合物(CCS/Chol、DOTAP/Chol、DMTAP/Chol)は、他の調合物(DMPC[中性]、DMPC/DMPG[陰イオン性]より、B7及びC40の発現を上方制御し、より高いレベルのIFNγとIL−12を誘導した。幾つかの事例では、CCS/Chol調合物が、他の陽イオン性調合物より有効であった。何れの調合物によっても、有意なレベルのTNFα及びNOは誘導されなかった。抗原提示細胞上への同時刺激分子の発現の増加並びに陽イオン性調合物によるIL−12及びIFNγの誘導は、これらの調合物のアジュバント活性がより大きいことを一部説明することができる。鼻内投与後、気道内にCCS−インフルエンザワクチンが長く保持される(図2C及び2F及び図3A−3D)ことと合わせると、これらの知見は、CCSがこれほど効率的な粘膜ワクチン担体/アジュバントである理由を説明できるかもしれない。
【0108】
A型肝炎ウイルス(HAV)
インフルエンザに加えて、鼻内(i.n.)及び直腸内(i.r.)投与されたHAVワクチンについても、CCS脂質集合物の免疫増強能を調べた。
2週間隔で、HAVワクチン(Aventis Pasteur)、10EU(約1.5μgタンパク質)を2回投与し、2度目のワクチン投薬から3週後に、ELISPOT技術によって、応答を調べた。粘膜アジュバントとして使用されるCpG−ODNを、1回の投薬当たり10μg与えた。HAV−CCS脂質集合物は、インフルエンザワクチンについて上述したように調製した(表1)。
【0109】
表17に記されているデータは、市販のHAVワクチンが、両投与経路(鼻内、直腸内)ともに、両被検組織(固有層、パイエル板)中にIgA反応を誘導できなかったのに対して、CCS又はCpG−ODNとともに調合されたワクチンは、多くの事例で有意な反応を生成したことを示している。HAV−CCS脂質集合物とCpG−ODNの組み合わせは、全ての事例で、相乗的な反応をもたらした。このように、CCS脂質集合物単独、及び特にCpG−ODNと組み合わせたCCS脂質集合物は、HAVに対する粘膜ワクチン接種に対する担体/アジュバントとしても有効である。
【0110】
【表17】

【0111】
ボツリヌス菌(C. Botulinum)
さらなる実験では、0.4μg用量の市販のC.botulinumトキソイド(バイオテロ剤のモデル、ウルグアイ、アルミナなし)を用いて、マウスの鼻内に免疫し、2回目のワクチン投薬から4週後に、ELISAによって、抗体力価を調べた。
C.botulinumトキソイドを用いた実験の結果は表18に要約されており、鼻内への滴下注入後に、特に小腸及び糞便中のIgAレベルに関して、CCS−トキソイド調合物が標準的なワクチンより優れていることを示している。このような抗体は、経口曝露時に、毒素を中和することが予想される。ワクチンを単独で鼻内に免疫化したマウスは、IgAを産生しなかった。
【0112】
【表18】

【0113】
材料
化学
N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミン(CCS)の合成
(i)N−パルミトイルスフィンゴシン(1.61g、3mmol)を、加熱しながら、無水THF(100mL)中に溶解した。透明な溶液を室温とし、N,N’−ジスクシニミジルカーボネート(1.92g、7.5mmol)を添加した。攪拌しながら、DMAP(0.81g、7.5mmol)を添加し、この反応をさらに16時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、n−ヘプタンから再結晶された残留物から、融点73−76℃の白色粉末として、ジスクシニミジルセラミジルカーボネート1.3g(68%)を得た。
【0114】
(ii)スペルミン(0.5g、2.5mmol)及びジスクシニミジルセラミジルカーボネート(0.39g、0.5mmol)を、攪拌しながら、無水ジクロロメタン中に溶解した後、触媒量の4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)で処理した。室温で16時間、この溶液を攪拌し、溶媒を蒸発させ、残留物を水で処理し、濾過し、真空中で乾燥させると、0.4g(82%)の未精製物質が得られ、60:20:20のブタノール:AcOH:HO溶出液を用いた、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによって、これをさらに精製した。
【0115】
(iii)前記化合物内の第四級アミンを得るために、DMS又はCHIで工程(ii)の生成物をメチル化することができる。
CCSの構造は、H及び13C−NMR分光法によって確認した(データは示さず。)。分析の詳細な説明は、同時係属の国際特許出願第 号に記載されている。
【0116】
他の合成手順
上記手順と同様に、以下の手順を適用することができる。
図1Aに図示されている直鎖一置換セラミド−スペルミン抱合体の合成
対応する1,3−ジ−O−スクシニミジル誘導体を得るために、DMAPの存在下で、1当量のセラミドを、2.5当量のジスクシニミジルカーボネートと反応させる。
このようにして得られたジスクシニミジル誘導体を、触媒量のDMAPを用いて、室温で、当量のスペルミンと反応させて、図1Bの3−一置換−セラミド−スペルミン抱合体を得る。
【0117】
図1Bに図示されている直鎖二置換セラミド−スペルミン抱合体の合成
上述したように調製された一当量の1,3−ジ−O−スクシニミジルスフィノギド誘導体を、触媒量のDMAPの存在下において、80°で、2.5当量のスペルミンと反応させる。1,3−二置換CCSが、このようにして得られる。
【0118】
図1Cに図示されている直鎖二置換セラミド−分枝スペルミン抱合体の合成
上述のように調製された一当量の1,3−ジ−O−スクシニミジルセラミド誘導体を、触媒量のDMAPの存在下において、80°で、2.5当量のα−ω−ジプロテクトスペルミンと反応させる。
プロテクションを除去し、1,3−「分枝」二置換セラミド−スペルミン抱合体を得る。
【0119】
図1Dに図示されている直鎖二置換セラミド−環状スペルミン抱合体の合成
上述のように調製した一当量の1,3−ジ−O−スクシニミジルセラミド誘導体を、触媒量のDMAPの存在下において、80℃で、0.75当量のスペルミンと反応させる。
【0120】
インフルエンザ抗原
インフルエンザA/ニューカレドニア/20/99類似(H1N1)株由来の一価サブユニット抗原調製物は、Drs. Gluck及びZurbriggen, Berna Biotech, Bern、Switzerlandから頂いた。この調製物(本明細書ではHNと表記する。)は、80から90%のヘマグルチニン、5から10重量%のノイラミニダーゼ並びに微量のNP及びMIタンパク質から構成された。A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)株、A/パナマ/2007/99(H3N2)及びB/山東/7/97由来のHNを含有する、2003/2004シーズン向けの市販の三価サブユニットワクチン(Fluvirin(R))は、Evans Vaccines Ltd.,Liverppol.UKから購入した。このワクチンは、カプセル化の前に、約8倍に濃縮した(Eppendorf Concentrator 5301, Eppendorf AG, Hamburg, Germany)。インビトロ刺激のために、幾つかの実験では、完全な不活化ウイルスを用いた。
【0121】
脂質
リン脂質(PL) ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)は、Lipoid GmbH, Ludwigshafen, Germanyから購入する。DMPC(中性)およびDMPC/DMPG(9/1モル比、陰イオン性)リポソームに加え、陽イオン性リポソーム/脂質集合物の6つの調合物を調製した。モノ陽イオン性脂質ジメチルアミノエタンカルバモイルコレステロール(DC−Chol)、1,2−ジステアロイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(塩化物塩)(DSTAP)、ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(塩化物塩)(DOTAP)およびジミリストイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(塩化物塩)(DMTAP)は、Avanti Polar Lipids(Alabaster, AL, USA)から購入する。一陽イオン性脂質ジメチルジオクタデシルアンモニウム・ブロミド(DDAB)およびコレステロール(Chol)は、Sigmaから購入する。新しい、独自のポリ陽イオン性スフィンゴ脂質N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシルカルバモイル−スペルミン(酢酸塩)(セラミドカルバモイル−スペルミン、CCS)は、Biolab Ltd., Jerusalem, Israelから購入する。表記されている場合には、1/1から4/1のモル比の脂質/ヘルパー比で、ヘルパー脂質(DOPE、Chol)を使用した。
【0122】
マウス
特定病原体除去(SPF)のメスのBALB/cマウス、6から8週齢、及びC57BL/6マウス、18月齢を使用した(5から10匹/グループ)。動物は、SPF条件下で飼育した。
【0123】
方法
インフルエンザ抗原のリポソーム/脂質集合物中へのカプセル化
巨大な(平均直径0.1から5μm)異種(標準的なサイズでない)小胞中に、HN抗原(上記参照)をカプセル化した。全てのワクチン調合物の調製のために、以下の手順を一般に使用した。1mLの第3ブタノール中に脂質(10から30mg)を溶かした後、ろ過(GF92, Glasforser, Vorfilter no. 421051, Schleicher & Schuell, Dassel, Germany)によって滅菌した。無菌脂質溶液を−70℃で凍結した後、24時間凍結乾燥して、乾燥を完了した。乾燥された脂質は、有意な(<5%)脂質分解又は「カプセル化」能を失わずに、2年超、4℃で保存することができた。必要となった時点で、3/1から800/1の脂質:抗原(タンパク質)w/w比で、脂質粉末を抗原溶液(PBS pH7.2中)で水和した。20から50μLずつ増量しながら、抗原溶液を段階的に添加し、0.5から1mLの最終容量になるまで、各添加後に激しくボルテックス攪拌を行った。一部の実験では、乾燥された脂質をPBSで水和し、あらかじめ形成された「空の」脂質集合物を、抗原溶液と混合した。この混合物を1から2分間ボルテックス攪拌し、30から60分以内に使用した。
【0124】
「カプセル化」効率を決定するために、調合に応じて、二つの手順を使用し、遊離抗原と脂質会合抗原の間で、80%以上の分離を得た。CCSを除く、全てのワクチン調合物で、以下の分離技術を使用した。HN抗原(50から100μgのタンパク質)を含有する脂質集合物(1から30mgの脂質)を0.5mLのPBS中に懸濁し、0.5mLのDO(99.9%, Aldrich Chemical Co., Milwaukee, WI, USA)上に慎重に負荷した。次いで、この試料を、1時間、30℃、45,000rpmで遠心した。遊離の、カプセル化されていないHNは沈殿するのに対して、集合した(リポソーム)HNと無タンパク質集合物/リポソームは上清中に残存する。上清全体を集め、上清とペレット画分の両方に、温かい10%Triton X−100を0.2mL添加することによって、集合物/リポソームを溶かした。改変されたLowry技法によって、両画分中のタンパク質濃度を求めた。CCS調合物の場合、CCS−HNを、0.5mLのPBS−DO(1容量のPBS X10+9容量のDO)に懸濁した後、0.5mLのPBSと混合した。次いで、この混合物を、10分間、20℃、10,000rpmで遠心した。CCS+/−抗原は沈殿するのに対して、遊離のHNは上清中に残存する。両画分中の脂質溶解とタンパク質の測定は、上述したとおりに実施した。両分離技術で、HN抗原の総合回収率は95%を上回っていた。
【0125】
免疫化
遊離(F−HN)および集合された/リポソームの(Lip−HN)ワクチン(0.25−4μg抗原/株/投薬および0.075−1.2mg脂質/投薬)を、筋肉内に一回(i.m.、30μL中)、3、7若しくは14日の間隔を置いて鼻内に一回若しくは二回(i.n.、5−50μL/鼻孔)、又は1週間の間隔を置いて経口に二回(50μL中)投与した。全ての事例において、PBS中の4%抱水クロラール0.15mLを腹腔内に与え、マウスに軽い麻酔をかけた。経口ワクチン接種の場合、ワクチン接種の30分前に、0.5mLの酸中和剤溶液(8部のHanks平衡塩類溶液+2部の7.5%炭酸水素ナトリウム)をマウスに経口的に処置した。比較のために、標準的な粘膜アジュバントとして、全ての実験で、1μgの/投薬のコレラ毒素(CT, Sigma, USA)を使用した。2つの実験では、遊離およびリポソームのCpG−ODN(ODN 1018,Dr. E. Raz, University of California, San Diego, CA, USAから頂いた。)、10μg/投薬を、 アジュバントとして使用した。
【0126】
液性応答の評価
1/10又は1/20試料希釈から開始し、ワクチン接種から4ないし6週後に、個別に又はプールして、血清、肺ホモジネートおよび鼻洗浄液を検査した。血球凝集反応阻害抗体は、1/10の試料希釈から始めて、標準的な血球凝集阻害(HI)アッセイによって測定した。40以上のHI力価(ヒトにおいて防御力価と考えられる。)を有するマウスを、血清変換されたものと定義した。抗原特異的なIgG1、IgG2a、IgA及びIgEレベルは、ELISAによって測定した。対照(抗原+正常なマウス血清、OD<0.1)を0.2 OD上回る吸光度を与える最高の試料希釈を、ELISA抗体力価と考えた。
【0127】
細胞応答の評価
ワクチン接種から5ないし6週後に取得した脾細胞を、抗原でインビトロ刺激した後の、増殖性応答、IFNγ及びIL−4産生、並びに細胞毒性活性について、検査した。5×10−5Mの2−メルカプトエタノールを加えて(細胞毒性の場合)、又は加えずに、5%(増殖、サイトカインの場合)又は10%(細胞毒性の場合)のウシ胎児血清(FCS)を補充した濃縮RPMI 1640又はDMEM培地中において、37℃で培養を行った。細胞培養は、以下のように行った。(i)増殖:0.2mLの最終容量中、抗原を加え又は加えずに(0.5から5μg/ウェル)、三つ組みで、0.5×10細胞/ウェルをU字型96ウェルプレート中においてインキュベートした。72から96時間後、1μCiのHチミジンで、培養物を16時間標識した。結果は、Δcpm=(抗原を加えて培養された細胞の平均カウント/分)−(抗原を加えずに培養された細胞の平均カウント/分)で表す。(ii)サイトカイン:1mLの最終容量中、抗原を加え又は加えずに(5から10μg/ウェル)、二つ組みで、2.5×10から5×10個の細胞/ウェルを24ウェルプレート中においてインキュベートした。48から72時間後に上清を集め、Opt EIA Set(Pharmingen, USA)を用いて、マウスのIFNγとIL−4についてELISAによって調べた。(iii)細胞毒性:応答している脾細胞(2.5×10)を、(ii)と同様に、X/127(H1N1)インフルエンザウイルスを感染された同数の刺激性BALB/c脾細胞とともに、7日間インキュベートした(下記参照)。感染のために、150血球凝集ユニット/1×10脾細胞のウイルスを加えたRPMI 1640培地(FCSなし)中にて、3時間37℃で、時折攪拌しながら、脾細胞をインキュベートした後、洗浄した。続いて、10IU/mLのrhIL−2の存在下、1/4のエフェクター/刺激細胞比で、感染された放射線照射(3,000rad)脾細胞を用いて、初回刺激を受けたエフェクター細胞を、5日間、再度刺激した。標準的な4時間の51Cr放出アッセイを用いて、100/1のエフェクター/標的細胞比で、細胞毒性を測定した。使用した被標識標的細胞は、非修飾P815及びHA2 189−199ペプチド(IYSTVASSLVL、20μg/1x10細胞)で、90分間37℃でパルスされたP815であった。
【0128】
防御免疫の測定
マウスを麻酔し、マウスに対して感染性であり、A/ニューカレドニアと交叉反応する、再集合体ウイルスX−127(A/北京/262/95(H1N1)×X−31(A/香港/1/68×A/PR/8/34)を用いて、25μLの生ウイルス懸濁液/鼻孔(約10 EID 50(egg−infectious dose 50%))を投与した。第4日目に肺を取り出し、冷PBS中で三回洗浄し、PBS(1.5mL/肺/マウス、1/10希釈と称する。)中でホモジナイズした。各グループのホモジネートをプールし、2000rpmで、30分間、4℃にて遠心し、上清を集めた。段階的な10倍希釈を行い、11日齢の孵化したニワトリの卵の尿嚢中に、二つ組みで、各希釈0.2mLを注射した。37℃で48時間後及び4℃で16時間後、0.1mLの尿膜腔液を取り出し、ニワトリ赤血球(0.5重量%、0.1mL)を用いた血球凝集(室温で30分)によって、ウイルスの存在をチェックした。肺のウイルス力価は、尿膜腔液中にウイルスを産生する(陽性の血球凝集)肺ホモジネートの最高希釈として求める。
【0129】
さまざまな蛍光標識脂質調合物及び放射性標識HN抗原の生体分布及び薬物動態
空の、又は三価のサブユニットインフルエンザワクチン(HN)と会合したリスサミン−ローダミン標識脂質集合調合物を、20μLの容量でマウスに接種した。1、5又は24時間後にマウスを屠殺し、様々な臓器を取り出した。−20℃で、臓器を一晩保存し、翌朝、溶解緩衝液中でホモジナイズした。得られたホモジネート0.2mLを、エッペンドルフチューブに移し、0.8mLのイソプロパノールを添加し、蛍光プローブを上清中に放出させるために、15分間回転させた。50μLの上清を、384ブラックプレート上に載せ、蛍光を読み取った(Em:545、Ex:596)。
【0130】
さらなるアッセイでは、450μgの三価HNワクチン(5mL中)を、(塩を除去するために)DDWに対して透析した後、5μLまで、1000倍に濃縮した。次いで、このタンパク質を、0.1M ホウ酸緩衝液(pH8.5)中で希釈し、15μL中、450μgの原液とした。次いで、Bolton Hunter試薬を用い、製造業者の指示に従って、125Iでタンパク質を標識した。125I標識HN(2μg)を、1、5及び24時間の時点でマウスに与え、マウスを屠殺し、様々な臓器(図3参照)をバイアル中に取り出し、125Iに対して較正されたγカウンターを読み取った。
【0131】
ここで、添付の特許請求の範囲によって、本発明を定義する。特許請求の範囲の内容は、本明細書の開示の中に含まれるものとして読まなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1A−1Dは、式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の一般的な定義に包含される、複数の可能な化学構造、「直鎖」、「分枝」又は「環状」の脂質様陽イオン性(LLP, lipid like cationic)化合物を示している。図1Aは、単一のポリアルキルアミン鎖に連結されたスフィンゴイド骨格(セラミド)を示し、図1B及び図1Cは、2つのポリアルキルアミン鎖に連結された同一のスフィンゴイド骨格を示し、図1Dは、同一の骨格を示すが、2つのヒドロキシル部分を介して、単一のポリアルキルアミン鎖が連結されて、環状ポリアルキルアミン抱合体を形成している。
【図2−1】図2A−2Fは、GI−黒四角−、肺−黒菱形−又は脾臓−−−、非回収−白菱形−の、様々な蛍光標識脂質調合物の生体分布及び薬物動態を示す。図2Aは、空のDMPC:DMPG(モル比9:1)の分布を示し;図2Bは、DMPC:DMPG:HNの分布を示し、図2Cは、空のDOTAP:コレステロールの分布を示し、図2Dは、DOTAP:コレステロール:HNの分布を示し、図2Eは、空のCCS:コレステロールの分布を示し、最後に、図2Fは、CCS−コレステロール:HNの分布を示す。
【図2−2】図2A−2Fは、GI−黒四角−、肺−黒菱形−又は脾臓−−−、非回収−白菱形−の、様々な蛍光標識脂質調合物の生体分布及び薬物動態を示す。図2Aは、空のDMPC:DMPG(モル比9:1)の分布を示し;図2Bは、DMPC:DMPG:HNの分布を示し、図2Cは、空のDOTAP:コレステロールの分布を示し、図2Dは、DOTAP:コレステロール:HNの分布を示し、図2Eは、空のCCS:コレステロールの分布を示し、最後に、図2Fは、CCS−コレステロール:HNの分布を示す。
【図2−3】図2A−2Fは、GI−黒四角−、肺−黒菱形−又は脾臓−−−、非回収−白菱形−の、様々な蛍光標識脂質調合物の生体分布及び薬物動態を示す。図2Aは、空のDMPC:DMPG(モル比9:1)の分布を示し;図2Bは、DMPC:DMPG:HNの分布を示し、図2Cは、空のDOTAP:コレステロールの分布を示し、図2Dは、DOTAP:コレステロール:HNの分布を示し、図2Eは、空のCCS:コレステロールの分布を示し、最後に、図2Fは、CCS−コレステロール:HNの分布を示す。
【図3−1】図3A−3Dは、GI−黒四角−、肺−黒菱形−又は脾臓−白菱形−、非回収−×−の、125I−HNが負荷された様々な脂質集合調合物の生体分布を示す。具体的には、図3Aは、遊離の125I−HNの生体分布を示し;図3Bは、DOTAP:コレステロールから構成される、125I−HNが負荷された脂質集合物を示し;図3Cは、DMPC:DMPGから構成される、125I−HNが負荷された脂質集合物を示し;図3Dは、CCS:コレステロールから構成される、125I−HNが負荷された脂質集合物を示す。
【図3−2】図3A−3Dは、GI−黒四角−、肺−黒菱形−又は脾臓−白菱形−、非回収−×−の、125I−HNが負荷された様々な脂質集合調合物の生体分布を示す。具体的には、図3Aは、遊離の125I−HNの生体分布を示し;図3Bは、DOTAP:コレステロールから構成される、125I−HNが負荷された脂質集合物を示し;図3Cは、DMPC:DMPGから構成される、125I−HNが負荷された脂質集合物を示し;図3Dは、CCS:コレステロールから構成される、125I−HNが負荷された脂質集合物を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の免疫応答を調節するための薬学的組成物を調製するための、スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の使用。
【請求項2】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、カルバモイル結合を介して、少なくとも一つのポリアルキルアミン鎖を有するスフィンゴイド骨格を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記調節が、免疫応答の刺激又は増強を含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
生物学的に活性な分子と組み合わせた、請求項1から3の何れか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記生物学的に活性な分子が、生理的pHにおいて、正味負の双極子モーメント若しくは正味負の電荷を有するか、又は正味負の電荷を有する少なくとも一つの領域を含有する、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記生物学的に活性な分子が、免疫調節アミノ酸分子、核酸分子又は低分子量化合物である、請求項4又は5に記載の使用。
【請求項7】
前記生物学的に活性な分子が、抗原性タンパク質、抗原性ペプチド、抗原性ポリペプチド、炭水化物又は免疫賦活薬である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記核酸分子が、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
免疫賦活薬と組み合わせた、請求項1から8の何れか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が脂質集合物を形成する、請求項1から9の何れか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、小胞、ミセル又はそれらの混合物を形成する、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記スフィンゴイドが、セラミド、ジヒドロセラミド、フィトセラミド、ジヒドロフィトセラミド、セラミン、ジヒドロセラミン、フィトセラミン、ジヒドロフィトセラミンから選択される、請求項1から11の何れか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記スフィンゴイドがセラミドである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記ポリアルキルアミンが、スペルミン、スペルミジン、ポリアルキルアミン類縁体又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1から13の何れか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、生物学的に活性な分子とともに凍結乾燥されるか、又は前記生物学的に活性な物質が、予め形成されたスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体集合物と混合される、請求項4から14の何れか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシルカルバモイル−スペルミン(CCS)である、請求項1から15の何れか1項に記載の使用。
【請求項17】
ワクチンを調製するための、請求項1から16の何れか1項に記載の使用。
【請求項18】
インフルエンザワクチンを調製するための、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記生物学的に活性な物質が、インフルエンザウイルスに由来するか、又はインフルエンザウイルスに由来する分子の類縁体である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記生物学的に活性な物質が、ヘマグルチニンとノイラミニダーゼ(HN)の組み合わせである、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
鼻内又は筋肉内ワクチン接種を調製するための、請求項1から20の何れか1項に記載の使用。
【請求項22】
被検体のインフルエンザウイルスに対する免疫応答を増強又は刺激するための薬学的組成物を調製するための、N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシルカルバモイル−スペルミン(CCS)の使用。
【請求項23】
生物学的に活性な分子とともに、治療的有効量のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を被検体に与えることを含む、被検体の免疫応答を調節する方法。
【請求項24】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、カルバモイル結合を介して、少なくとも一つのポリアルキルアミン鎖を有するスフィンゴイド骨格を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記調節が、免疫応答の刺激又は増強を含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記生物学的に活性な分子が、前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体と会合している、請求項23から25の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記生物学的に活性な分子が、生理的pHにおいて、正味負の双極子モーメントもしくは正味負の電荷を有するか、又は正味負の電荷を有する少なくとも一つの領域を含有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記生物学的に活性な分子が、核酸分子、アミノ酸分子又は低分子量化合物から選択される免疫調節物質である、請求項23から27の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記生物学的に活性な分子が、抗原性タンパク質、抗原性ペプチド、抗原性ポリペプチド又は炭水化物から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記核酸分子が、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
生物学的に活性な分子と会合した前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を、免疫賦活薬とともに投与することを含む、請求項23から30の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記免疫賦活薬が、前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の投与と同時に、又は前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の投与前後の時間間隔内に投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が脂質集合物を形成する、請求項23から32の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記脂質集合物が、小胞又はミセル又はそれらの組合せを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記スフィンゴイドが、セラミド、ジヒドロセラミド、フィトセラミド、ジヒドロフィトセラミド、セラミン、ジヒドロセラミン、フィトセラミン、ジヒドロフィトセラミンから選択される、請求項23から34の何れか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記スフィンゴイドがセラミドである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリアルキルアミンが、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン類縁体又はそれらの組み合わせから選択される、請求項23から36の何れか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシルカルバモイル−スペルミン(CCS)である、請求項23から37の何れか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記生物学的に活性な物質が、インフルエンザウイルスに由来するか、又はインフルエンザウイルスに由来する分子の類縁体である、請求項23から38の何れか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記生物学的に活性な物質が、ヘマグルチニンとノイラミニダーゼ(HN)の組み合わせである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記抱合体の鼻内又は筋肉内投与を含む、請求項23から40の何れか1項に記載の方法。
【請求項42】
インフルエンザ抗原とともに、N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシルカルバモイル−スペルミン(CCS)を被検体に与えることを含む、前記被検体のインフルエンザウイルスに対する免疫応答を調節する方法。
【請求項43】
(1)少なくとも一つのスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体と、
(2)少なくとも一つの生物学的に活性な分子と、を含む、
被検体の免疫応答を調節するための薬学的組成物。
【請求項44】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、カルバモイル結合を介して、少なくとも一つのポリアルキルアミン鎖を有するスフィンゴイド骨格を含む、請求項43に記載の薬学的組成物。
【請求項45】
少なくとも一つの生理的に許容される担体を含む、請求項43又は44に記載の組成物。
【請求項46】
前記調節が、免疫応答の刺激又は増強を含む、請求項43から45の何れか1項に記載の組成物。
【請求項47】
前記生物学的に活性な分子が、生理的pHにおいて、正味負の双極子モーメント若しくは正味負の電荷を有するか、又は正味負の電荷を有する少なくとも一つの領域を含有する、請求項43から46の何れか1項に記載の組成物。
【請求項48】
前記生物学的に活性な分子が、アミノ酸分子、核酸分子又は低分子量の分子から選択される免疫調節物質である、請求項43から47の何れか1項に記載の組成物。
【請求項49】
前記生物学的に活性な分子が、抗原性タンパク質、抗原性ペプチド、抗原性ポリペプチド又は炭水化物から選択される、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記核酸分子が、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である、請求項48に記載の組成物。
【請求項51】
免疫賦活薬を含む、請求項43から50の何れか1項に記載の組成物。
【請求項52】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が脂質集合物を形成する、請求項43から51の何れか1項に記載の組成物。
【請求項53】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、小胞又はミセル又はそれらの組合せである、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記スフィンゴイド骨格が、セラミド、ジヒドロセラミド、フィトセラミド、ジヒドロフィトセラミド、セラミン、ジヒドロセラミン、フィトセラミン、ジヒドロフィトセラミンから選択される、請求項43から53の何れか1項に記載の組成物。
【請求項55】
前記スフィンゴイドがセラミドである、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記ポリアルキルアミンが、スペルミン、スペルミジン又はスペルミン若しくはスペルミジンのポリアルキルアミン類縁体から選択される、請求項43から55の何れか1項に記載の組成物。
【請求項57】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシルカルバモイル−スペルミン(CCS)である、請求項43から56の何れか1項に記載の組成物。
【請求項58】
インフルエンザウイルスに対して被検体にワクチン接種するための、請求項43から57の何れか1項に記載の組成物。
【請求項59】
前記生物学的に活性な分子が、インフルエンザウイルスに由来するか、又はインフルエンザウイルスに由来する分子の類縁体である、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記生物学的に活性な物質が、ヘマグルチニンとノイラミニダーゼ(NH)の組み合わせである、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
鼻内又は筋肉内投与に適した剤形の、請求項43から60の何れか1項に記載の組成物。
【請求項62】
ヘマグルチニンノイラミニダーゼとともに、N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシルカルバモイル−スペルミン(CCS)を含むワクチン。
【請求項63】
(1)スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体と、(2)被検体の免疫応答を調節することができる生物学的に活性な分子と、を含む複合体。
【請求項64】
前記スフィンゴイドが、カルバモイル結合を介して、少なくとも一つのポリアルキルアミン鎖と連結されている、請求項63に記載の複合体。
【請求項65】
前記生物学的に活性な分子が、生理的pHにおいて、正味負の双極子モーメント若しくは正味負の電荷を有するか、又は正味負の電荷を有する少なくとも一つの領域を含有する、請求項63又は64に記載の複合体。
【請求項66】
前記生物学的に活性な分子が、アミノ酸分子、核酸分子又は低分子量の分子から選択される免疫調節物質である、請求項63から65の何れか1項に記載の複合体。
【請求項67】
前記生物学的に活性な分子が、抗原性タンパク質、抗原性ペプチド、抗原性ポリペプチド又は炭水化物から選択される、請求項66に記載の複合体。
【請求項68】
前記核酸分子が、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である、請求項66に記載の複合体。
【請求項69】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が脂質集合物を形成する、請求項63から68の何れか1項に記載の複合体。
【請求項70】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、小胞若しくはミセル又はそれらの組合せを形成する、請求項69に記載の複合体。
【請求項71】
前記スフィンゴイドが、セラミド、ジヒドロセラミド、フィトセラミド、ジヒドロフィトセラミド、セラミン、ジヒドロセラミン、フィトセラミン、ジヒドロフィトセラミンから選択される、請求項63から70の何れか1項に記載の複合体。
【請求項72】
前記スフィンゴイドがセラミドである、請求項71に記載の複合体。
【請求項73】
前記ポリアルキルアミンが、スペルミン、スペルミジン又はスペルミン若しくはスペルミジンのポリアミン類縁体から選択される、請求項63から71の何れか1項に記載の複合体。
【請求項74】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシルカルバモイル−スペルミン(CCS)である、請求項63から73の何れか1項に記載の複合体。
【請求項75】
請求項1から22の何れか1項に記載のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体と、捕捉剤としての前記抱合体の使用説明書とを備えた、生物学的に活性な分子を捕捉するためのキット。

【図1】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図2−3】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate


【公表番号】特表2006−527762(P2006−527762A)
【公表日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516807(P2006−516807)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000534
【国際公開番号】WO2004/110496
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(399042546)イッスム・リサーチ・ディベロップメント・カンパニー・オブ・ザ・ヘブルー・ユニバーシティ・オブ・エルサレム (10)
【出願人】(505467904)バイオラブ・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】