ワンピース分岐グラフト
本発明は、ワンピース・グラフト・スリーブ(32)を備えた、血管分岐部(10)で展開される管腔内プロテーゼ(27)に関する。このワンピース・グラフト・スリーブ(32)は、第1のプロテーゼ・ルーメン(30)を画定する分岐部分(28)であって、展開された状態では第1の直径(39)を有し、ステント要素(33)によって補強されている、分岐部分(28)と、前記第1のプロテーゼ・ルーメン(30)に流体連通した第2のプロテーゼ・ルーメン(31)を画定する胴体部分(29)であって、展開された状態では第2の直径(40)を有する、胴体部分(29)とを備えている。前記胴体部分(29)は、補強用ステント材料を実質的に含まない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワンピース・グラフト・スリーブ(one-piece graft sleeve)を備えた、血管分岐部で展開される管腔内プロテーゼ(endoluminal prosthesis)に関する。前記グラフト・スリーブは、第1のプロテーゼ・ルーメンを画定する分岐部分であって、展開された状態では第1の直径を有し、ステント要素によって補強されている、分岐部分と、前記第1のプロテーゼ・ルーメンに流体連通した第2のプロテーゼ・ルーメンを画定する胴体部分であって、展開された状態では第2の直径を有する、胴体部分とを備えている。
【0002】
さらに、本発明は、このような管腔内プロテーゼが装着され、前記管腔内プロテーゼを血管分岐部に配置するように構成されたカテーテルに関する。前記カテーテルは、ガイドワイヤを収容するためのガイドワイヤ・ルーメンおよびグラフト・アクチュエータ・ルーメンを有するカテーテル本体と、前記装着された管腔内プロテーゼを内部で径方向に圧縮して維持する拘束シース(constraining sheath)と、前記グラフト・アクチュエータ・ルーメン内に収容されたグラフト・アクチュエータ(graft actuator)とを備えている。
【0003】
なおさらに、本発明は、このようなカテーテルおよび前記カテーテルに装着されたこのような管腔内プロテーゼを備えた展開システムに関する。
【0004】
なおさらに、本発明は、このような展開システムを用いて、血管分岐部でこのような管腔内プロテーゼを展開する方法に関する。この方法は、
(a)第1の分岐血管から前記展開システムを血管分岐部内に導入するステップと、
(b)管腔内プロテーゼを解放するために第1の拘束シースを開くまたは引き戻すステップと、
(c)胴体部分を血管分岐部の血管内に前進させるステップとを含む。
【背景技術】
【0005】
このような管腔内プロテーゼ、カテーテル、展開システム、および方法は、例えば国際公開第00/053251A1号に開示されている。
【0006】
最初に述べた種類の管腔内プロテーゼ、カテーテル、および展開システムは、医学的に非常に好適で、商業的インパクトが強く、多くの場合、腹部大動脈瘤のような動脈瘤の主要な治療に使用される。
【0007】
動脈瘤は、血管壁の局所的な拡張であり、通常は、例えばアテローム性動脈硬化症によって生じる血管壁の変性によって引き起こされる。このような場合、血管壁の拡張は、最終的に血管の破裂をもたらし、激しい出血を引き起こすことがある。
【0008】
動脈瘤は、大動脈系で最も頻繁に発生し、例えば大動脈・腸骨動脈分岐部における腹部大動脈瘤が特に生命にかかわる。このような動脈瘤の破裂を患う患者のうち推定65%が、病院に到着する前に突然の心血管虚脱により死亡する。これは、大量の血液が腹部大動脈によって常に輸送されているため、破裂により瞬時に大量の血液が周囲の体腔および組織に流出してしまうためである。
【0009】
大動脈瘤の治療法は、数十年前から存在する。これらの方法では、通常は、完全に人工の代替物、例えばステントグラフトまたは異種移植片を使用して、動脈瘤のある血管の部分と入れ替わる、または該部分を血流から排除する。このような分岐グラフトは、大動脈・腸骨動脈分岐部の動脈瘤を治療するために使用することができ、例えば米国特許第2,845,959号に開示されている。しかしながら、このようなデバイスは、観血手術で配置しなければならないため、既に他の理由で健康が損なわれている場合が多い患者に相当な外傷を負わせることになる。
【0010】
過去数年間、外科治療の進歩により、内視鏡技術に徐々に焦点が当てられるようになり、例えば観血手術に関連した外傷の大部分を回避する血管系の治療が可能になった。これに関連して、自己拡張型またはバルーン拡張型ステントおよびステントグラフトが、次第に好適であるようになってきた。
【0011】
展開の際は、周方向に圧縮された管腔内プロテーゼ(すなわち、ステントまたはステントグラフト)を、カテーテルを用いて、例えば動脈瘤などの部位に向かって血管内を前進させ、次いで拡張させて、動脈瘤の部位の近位側および遠位側の健常な血管壁に固定する。この時点で、プロテーゼのルーメンが、血管の内腔と入れ替わり、動脈瘤の内腔が血流から遮断される。
【0012】
分岐血管に管腔内プロテーゼを配置する場合は、典型的には、いくつかのカテーテルが、異なる進入点から血管系に導入される。次いで、分岐血管が、摩擦力または他の機械的接続によって互いに接続された異なる管腔内プロテーゼによって支持される。
【0013】
ここでの問題は、異なる管腔内プロテーゼ間の接続は、動脈瘤拡張の再形成過程で生じる力を受けたときや、人体内で発生する自然の動きを受けたときに、場合によってはエンドリークを引き起こしたり、完全な分離さえも起こすことがある点にある。このような場合、管腔内プロテーゼの保護機能が著しく低下して、血栓の形成や血管の破裂が発生する可能性もある。
【0014】
このようなリークの問題を回避するために、最初に言及した国際公開第00/053251A1号には、大動脈・腸骨動脈分岐部に配置するように適合させられた、ワンピースグラフト(one-piece graft)を備えた管腔内プロテーゼが開示されている。さらに、国際公開第00/053251A1号には、この管腔内プロテーゼの配置用に適合させられた展開システムも開示されている。
【0015】
この展開システムは、1回のアクセスでの展開用に適合させられ、血管系への外科的進入点を僅かに1つしか必要としない。
【0016】
このため、展開システムは、カテーテル本体および拘束シースを備えたカテーテルを含み、管腔内プロテーゼが、拘束シースとカテーテル本体との間に配置される。管腔内プロテーゼは、大動脈内に支持される胴体部分および同側腸骨動脈内に支持される分岐部分を含む主管状本体、ならびに反対側腸骨動脈内に支持される側枝を備えることを特徴とし、この側枝は、展開されていない状態では主管状本体の側部に折り畳まれている。
【0017】
既知のプロテーゼが、同側腸骨動脈を介して大動脈・腸骨動脈分岐部に導入されたら、拘束シースを長手方向に移動させて管腔内プロテーゼを部分的に解放する。次いで、管腔内プロテーゼの側枝を、管腔内プロテーゼ全体を引き戻して反対側腸骨動脈に挿入し、管腔内プロテーゼを完全に展開する。国際公開第00/053251A1号によると、管腔内プロテーゼの主管状本体は、大動脈はもちろん同側腸骨動脈にも延在し、ステント要素によって補強される。同様に、側枝は、反対側腸骨動脈内に支持され、形状記憶ステント材料によって補強される。
【0018】
しかしながら、この原理には重大な欠点がある。
【0019】
国際公開第00/053251A1号による管腔内プロテーゼの一部の実施形態によると、同側腸骨動脈内に支持される主管状本体の分岐部分を補強するステント要素と反対側腸骨動脈内の側枝を補強するステント要素との間には、形状および構造に相当な差異が存在する。
【0020】
この差異は、管腔内プロテーゼの各部の周方向の剛性に差異をもたらす。しかしながら、このような周方向の剛性における差異は、主管状本体の分岐部分または側枝のいずれかの移動や機械的転位などの長期的な問題をもたらし得る。この場合、プロテーゼの遠位端部と血管壁との間にエンドリークが発生する可能性が増大する。
【0021】
国際公開第00/053251A1号による管腔内プロテーゼの残りの実施形態では、展開機構自体が機械的に高度に複雑であるため、欠陥や不適切・不完全な展開が起こりやすい。このような不適切・不完全な展開により、手術は完全に失敗し、観血手術が必要となるか、少なくともエンドリーク発生のリスクが増大し得る。
【0022】
さらに、血管分岐部の下流の血管分枝のうちの少なくとも1つが、展開の過程で一定時間にわたって完全に塞がれる。
【0023】
複雑な展開機構が機械的に故障すると、展開システム全体が観血手術で除去されるまで、この血管は塞がれたままである。
【0024】
特に太い血管の場合は、この閉塞は、患者の健康を危険にさらすことがある。
【0025】
さらに、国際公開第00/053251A1号によるシステムは、その機械的な複雑さのために製造コストが高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
上記のことから、本発明の目的は、エンドリークの発生をうまく防止することができ、プロテーゼ材料による血管の閉塞をうまく回避することができ、しかもコスト効率の良い機械的に簡単な解決手段が得られるように、従来技術の管腔内プロテーゼを改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明によると、この目的および他の目的は、前記胴体部分が補強用ステント材料を実質的に含まない最初に述べた種類の管腔内プロテーゼで達成される。
【0028】
本発明の範囲内で、グラフト・スリーブ(graft sleeve)は、編メッシュまたは成形材料から形成された管状構造であると理解され、グラフト・スリーブの材料には、例えば天然もしくは人工繊維、PTFE、EPTFE、および/または当該技術分野で公知の他の材料が含まれる。
【0029】
さらに、本発明によると、血管についての表現「上流」は、血流に対向する方向を表す一方、表現「下流」は、血流に従う方向を表す。
【0030】
カテーテルについての表現「近位」は、カテーテルを操作する外科医に向かう方向を表し、表現「遠位」は、外科医から離れて、カテーテル先端部に向かう方向を表す。
【0031】
新規な管腔内プロテーゼが血管分岐部で展開されると、分岐部分が、分岐部の下流の2つの血管分枝内に支持され、管腔内プロテーゼがこれらの血管に固定される。
【0032】
新規な管腔内プロテーゼの2つ分枝が本質的に同一のステントセグメントを有するため、分岐部分の両方の分枝の周方向の剛性は実質的に同一である。したがって、分岐部分の移動および機械的転位などの長期的な問題は、うまく回避される。
【0033】
このように、新規な管腔内プロテーゼは、エンドリークの発生を防止する。
【0034】
また、分岐部分が展開されると同時に、プロテーゼ材料が、血管分岐部の下流の両方の血管分枝への血流を妨げなくなる。
【0035】
したがって、血管分岐部の下流の血管分枝への血流は、非常に短時間しか中断されない。さらに、たとえ展開システムの故障の場合でも血流が保証されるため、患者のリスクが大幅に軽減される。
【0036】
さらに、新規な管腔内プロテーゼは、非常にコンパクトな折り畳みが可能であるという利点も有する。これは、展開された状態では血管分岐部の上流の主血管に支持される胴体部分にステント材料が実質的に存在しないことによるものである。
【0037】
胴体部分が実質的にステント材料を含まず、同時に胴体部分が容易に展開できるため、胴体部分を、その長手方向に沿って主血管内に簡単に伸長させることができる。
【0038】
このように、胴体部分の展開のために比較的簡単な機械的な解決策しか必要ない。
【0039】
したがって、新規なプロテーゼにより、機械的な複雑さが軽減された展開カテーテルの使用が可能となり、故障のリスク、したがって管腔内プロテーゼの不完全・不適切な展開のリスクが軽減される。
【0040】
分岐部分の第1の直径は、胴体部分の第2の直径と異なっても良く、第2の直径は、好ましくは第1の直径よりも大きい。
【0041】
さらに、このようにして、管腔内プロテーゼの生産コストが削減される。
【0042】
したがって、本発明の目的は完全に達成される。
【0043】
本発明の一実施形態によると、分岐部分は、自己拡張型ステント要素によって補強される。
【0044】
自己拡張型ステント要素を使用すると、分岐血管内での分岐部分の固定にバルーンの拡張が必要ない。
【0045】
これは、展開に必要なカテーテルの全体的な複雑さを軽減できるという利点を有する。
【0046】
さらに、分岐部分の配置および固定が、展開手順の最初に行われる。したがって、管腔内プロテーゼの位置は、手術の初期に固定される。したがって、さらなる展開過程での管腔内プロテーゼの移動のリスクが軽減される。
【0047】
また、胴体部分が複数のひだを有することが好ましい。
【0048】
したがって、グラフト・スリーブのこのようなひだによって、大量のグラフト・スリーブ材料が比較的狭い空間内に収容できるようになるという点で有利である。
【0049】
したがって、折り畳まれた管腔内プロテーゼの直径が縮小される。
【0050】
さらに、胴体部分が、その遠位端部で、構造要素によって周方向に補強されることが好ましい。
【0051】
したがって、利点としては、管腔内プロテーゼが完全に展開されると、少なくとも固定ステントが胴体部分内で展開されるまで、構造要素が、静脈瘤の上流の位置で胴体部分を主血管に固定することができることが挙げられる。
【0052】
また、このような構造要素は、中心開口を開いた状態に維持し、胴体部分のルーメンを主血管の内腔に接続するという点で、胴体部分の展開を支援する。
【0053】
したがって、大動脈を流れる血流が、展開手順全体の間、さらに高いレベルで維持される。
【0054】
加えて、このように、主血管の血圧は、胴体部分の主血管への前進を全くまたは僅かな程度しか妨げない。
【0055】
これに関連して、構造要素が少なくとも部分的に自己拡張型ステントであるとさらに好ましい。
【0056】
したがって、胴体部分を展開の前に広げる必要がないという点で有利である。これによって、手術の間中、血液がさらに容易にプロテーゼ内を流れることになる。
【0057】
また、構造要素が、ガイドワイヤまたはカテーテルに取り外し可能に接続できる接続要素を有すると好ましい。
【0058】
このような接続要素は、例えばフックが取り外し可能に係合できる接続ポケットまたはループなどを含むことができる。
【0059】
このように、構造要素は、胴体部分をその長手方向軸に沿って伸長させるために胴体部分に加えられる力を、グラフト・スリーブ材料に対して径方向に分配する。このため、点状応力、したがって、グラフト・スリーブの損傷を回避することができる。
【0060】
本発明は、最初に述べた種類のカテーテルにさらに関する。このカテーテルは、管腔内プロテーゼが胴体部分を有する領域で捻るまたは曲げることができるように構成され、この領域またはその近位側の開口で、グラフト・アクチュエータ・ルーメンが終端している。
【0061】
このようなカテーテルの利点は、分岐部分の2つの分枝が、分岐部の下流側の2つの血管分枝内に支持されて、管腔内プロテーゼがこれらの血管に固定されるように、管腔内プロテーゼを配置できることである。さらなる利点は、分枝が本質的に同一のステントセグメントを有するため、本質的に同一の周方向の剛性を有することである。
【0062】
したがって、これらの血管内のプロテーゼ分枝の周方向の剛性の差異から生じる長期的な問題、例えば移動および機械的転位を回避することができる。このため、プロテーゼの遠位端部と血管壁との間に生じるエンドリークの可能性が大幅に軽減される。
【0063】
さらに、新規なカテーテルによって可能となった展開の方式は、展開手順の間中、ほぼ連続的な血流を保証する。
【0064】
さらに、新規なカテーテルは、公知の解決手段よりも機械的に単純である。このように、新規なカテーテルは、故障しにくく、管腔内プロテーゼの不完全・不適切な展開のリスクを軽減する。したがって、エンドリークの可能性がさらに低下する。
【0065】
加えて、機械的複雑さの軽減は、新規なカテーテルの製造コストが、最初に述べた種類の公知のカテーテルと比較して低いという利点を有する。
【0066】
グラフト・アクチュエータが、その遠位端部に、胴体部分の遠位端部に取り外し可能に係合するように適合させられた接続部分を有すると好ましい。
【0067】
このような接続部分は、例えば実質的に中心の部分、すなわちガイドワイヤの位置から、接続ストラット(strut)が管腔内プロテーゼの材料に取り外し可能に係合する横方向の位置まで延びた接続ストラットから成ってよい。
【0068】
したがって、利点としては、グラフト・アクチュエータ自体ではなく、接続部分が、径方向に分布したいくつかの点で管腔内プロテーゼの遠位端部の材料に係合できることが挙げられる。このように、胴体部分の遠位開口を、主血管の内腔に整合させることができる。
【0069】
したがって、胴体部分を主血管内に前進させるときに、さらに良好な血流を維持することができる。
【0070】
代替の実施形態では、カテーテル本体を、その遠位端部の近傍で、少なくとも一時的に逆向きの湾曲を形成するように適合させることができる。
【0071】
少なくとも一時的に逆向きの湾曲を形成するように適合させられたカテーテル、例えばピグテール(pigtail)またはSimmonsサイドワインダー型カテーテルが、当該技術分野で公知である。
【0072】
このようなカテーテルの機能性を新規なカテーテルに含めることは、最初にガイドワイヤを血管分岐部に通して配置する必要なく、管腔内プロテーゼの展開を行うことができるという点で有利である。
【0073】
本発明は、前記カテーテルの前記グラフト・アクチュエータが、前記装着された管腔内プロテーゼの前記胴体部分の遠位端部に取り外し可能に接続された、最初に述べた種類の展開システムにも関する。
【0074】
したがって、本発明による管腔内プロテーゼおよびカテーテルの特徴を組み合わせることにより、機械的に驚くほど簡単な解決手段が提供され、これを、1回のアクセスでの管腔内プロテーゼの血管分岐部での展開に使用することができる。
【0075】
このシステムの利点は、相対的な機械的簡単さにより、1回のアクセスで管腔内プロテーゼを血管分岐部で展開する公知の展開システムよりも機械的な欠陥や故障が発生しにくいことである。
【0076】
これに関連して、グラフト・アクチュエータが、管腔内プロテーゼの胴体部分の遠位端部に、より好ましくは接続部分によって胴体部分の遠位端部の構造要素に、取り外し可能に係合するとさらに好ましい。
【0077】
このような接続部分は、上記したように、接続ストラットから構成することができ、胴体部分を伸長させるために加えられる力を分配し、それによって材料にかかる応力を低減することができる。
【0078】
さらに、プロテーゼの遠位開口が主血管の内腔に整合するため、胴体部分が、大動脈血管を流れる血流を妨げず、胴体部分を主血管内に前進させるために打ち勝つべき抵抗も減少する。
【0079】
さらに、このように、構造要素は、胴体部分を主血管、例えば大動脈に固定するのに適した位置に維持される。
【0080】
装着された管腔内プロテーゼの胴体部分が、その長手方向軸に沿って圧縮されるとさらに好ましい。
【0081】
ここでの利点は、胴体部分が主血管の方向に前進する前でさえも、分岐部分の両方の分枝を流れる血流が、プロテーゼ材料によって妨げられないことである。
【0082】
さらに、このような長手方向に沿った圧縮により、大量のグラフト・スリーブ材料が比較的狭い空間内に収容できるようになる。
【0083】
さらに、展開システムが、好ましくは拘束シース内に径方向に圧縮された、胴体補強ステントが装着された第2のカテーテルをさらに有すると好ましい。
【0084】
このような胴体補強ステントは、好ましくは、標準的なカテーテルによって展開できる自己拡張型ステントである。もちろん、これに関連して、バルーン拡張型ステントおよび対応する標準的なバルーンカテーテルも使用することができる。
【0085】
胴体補強ステントは、胴体部分を機械的に補強する役割を果たす。したがって、完全に機械的に支持された管腔内プロテーゼの利点は、新規な管腔内プロテーゼでも達成することができる。さらに、胴体補強ステントは、胴体部分の遠位端部を大動脈内に固定するのにも役立ち得る。したがって、動脈瘤の上流で、大動脈の健常部分から胴体部分が機械的に転位するのをうまく回避することができる。
【0086】
これに関連して、第2のカテーテルを案内するために、ガイドワイヤを別の経路で主血管に送る必要がある。
【0087】
あるいは、グラフト・アクチュエータを使用して第2のカテーテルを主血管に挿入することができる。したがって、異なるガイドワイヤの別個の配置が必要ない。
【0088】
あるいは、第1のカテーテルが、同時に第2のカテーテルとしての機能を果たしてもよい。
【0089】
これに関連して、胴体補強ステントを備えたカテーテルの部分を、管腔内プロテーゼを備えたカテーテルの部分の近位側に設けることができる。この実施形態によると、管腔内プロテーゼの展開の後、第1のカテーテルを、分岐部を越えて引き戻し、次いで再び主血管内に前進させる。次いで、胴体補強ステントを展開する。
【0090】
管腔内プロテーゼの展開の機能性と新たなカテーテルでのステントの展開の機能性を組み合わせる利点は、管腔内プロテーゼの展開と胴体補強ステントの展開との間にカテーテルを交換する必要ないことである。これは、手術時間の全体的な短縮となる。
【0091】
これに関連して、第1の拘束シースが、同時に第2の拘束シースとしての機能を果たすことも可能である。
【0092】
この改良は、カテーテルの全体的な機械的配置を簡単にするのに役立つ。唯一つの拘束シースを使用して、この拘束シースを、管腔内プロテーゼを解放するために第1の位置に引き戻し、次いでカテーテルの主血管内への再前進時にステントの展開のために第2の位置に引き戻すことにより、カテーテルの可動部品数を削減することができる。
【0093】
さらに、このように、展開システムの取り扱いが簡単になる。
【0094】
本発明によると、胴体補強ステントが、該ステントが完全に拡張すると、首部分の遠位端部および近位端部の直径よりも小さい、したがって主血管の直径よりも小さい直径を有する首部分を有することも好ましい。
【0095】
これに関連して、胴体補強ステントは、予備成形された形状記憶材料、例えばニチノールなどから形成することができる。あるいは、首部分は、首部分を備えたバルーンを利用してステントのバルーン拡張時に形成することができる。さらに、ステントは、首部分がこのステント部分の材料および/または機械的構造によってより小さい直径に収縮されている自己拡張型とすることができる。
【0096】
首部分を備えたこのような胴体補強ステントの利点は、狭い開口を有する側血管の閉塞を回避できることである。
【0097】
標準的なステントが、側血管の狭い開口に対して配置されると、最終的に、この開口は、ステント材料によって閉塞される。
【0098】
対照的に、開口に配置される首部分を備えたステントは、このような遮断を防止する。首部分の領域では、血液は、ステントのストラットおよび分岐部を介してステント材料と血管壁との間の空間を自由に流れることができる。
【0099】
したがって、側血管に対する血液の流入または流出が妨げられない。
【0100】
「括れた(necked)」ステント部分は、胴体補強ステントの一体部分としてその遠位端部に形成してもよいし、または別個の「固定」ステントとしてもよい。
【0101】
このことから、このような固定ステントの概念は、本願のワンピース分岐グラフト以外のグラフトにも使用できるため、それ自体が新規で独創性がある。
【0102】
本発明は、さらに、最初に述べた種類の方法に関し、この方法では、ステップ(a)の際に、展開システムが、第1の分岐血管および第2の分岐血管に支持されて、主血管に近接した胴体部分の位置で捻れまたは湾曲を形成するように展開システムを導入し、ステップ(c)の際に、胴体部分を主血管内に前進させる。
【0103】
この新規な方法の利点は、上記の種類の管腔内プロテーゼを、血管分岐部の内腔修復に利用できることである。したがって、エンドリークの発生をうまく防止することができる。
【0104】
さらに、新規な方法の使用により、治療すべき血管分岐部を流れる血流が、手術のすべてのステップの間、本質的に維持される。
【0105】
新規な方法の一実施形態によると、ステップ(a)の際に、展開システムを、ガイドワイヤを使用して血管分岐部内に導入する。
【0106】
これに関連して、まず、ガイドワイヤを、血管分岐部の下流の両方の血管分枝の血管分岐部にわたって配置する。この交差操作(crossover maneuver)は、湾曲端部を備えたカテーテル、例えばピグテールまたはSimmonsサイドワインダー型カテーテルなどを利用して行うことができる。このようなカテーテルは、当該技術分野で広く公知である。
【0107】
ガイドワイヤが配置されたら、展開システムを、セルジンガー(Seldinger)技術を用いて血管分岐部内に前進させる。
【0108】
このように、展開システムの交差操作は、簡単かつ直接的に行うことができる。
【0109】
あるいは、交差操作は、ガイドワイヤを用いずに、遠位端部の領域に交差機能性を有する展開システムを使用して行うこともできる。
【0110】
さらに、新規な方法に関連して、ステップ(c)の際に、グラフト・アクチュエータを前方に押すことによって胴体部分を前進させると好ましい。
【0111】
ここでの利点は、外科医が前進過程を厳密に制御可能な要領で、胴体部分を伸長させて主血管内に前進させることができることである。
【0112】
さらに、ステップ(c)の後のさらなるステップ(d)で、胴体補強ステントが、管腔内プロテーゼを主血管に固定し、管腔内プロテーゼを胴体部分に沿って補強するように、胴体部分および主血管の領域に胴体補強ステントを配置して拡張させると好ましい。
【0113】
ここでの利点は、別個のステントを管腔内プロテーゼの固定および補強に使用することによって、患者の個別の要求に適応した様々なステントの使用が可能になることである。
【0114】
また、標準的なステントをこの目的で使用することができ、展開システムの製造コストがさらに削減されるという点で有利である。
【0115】
これに関連して、異なる機能を果たす2つの別個のステントを利用することも可能である。胴体部分内で展開される第1の胴体補強ステントは、胴体部分を構造的に補強する機能を果たす一方、補強ステントの上流で展開される第2の別個の固定ステントは、胴体部分を大動脈壁に固定する機能を果たす他、胴体材料を大動脈壁に押圧することによって動脈瘤の内腔を血流から遮断する。
【0116】
胴体補強ステントおよび固定ステントは、胴体補強ステントの遠位端部と固定ステントの密封部分が重なるように配置することもできる。
【0117】
このことから、既に上述した別個の発明は、遠位固定部分、近位密封部分、およびこれらの間の首部分を有する、管状グラフトを血管内に固定するためのステントに関する。この首部分は、ステントの展開された状態では、ステントの遠位固定部分および近位密封部分の直径よりも小さい直径を有する。
【0118】
好ましい実施形態によると、このステントは、前記管状グラフトを補強するための、密封部分の近位側の補強部分を備えることができる。
【0119】
さらに、本発明は、上記の種類の管腔内プロテーゼおよび固定ステントを含むキットに関する。
【0120】
なおさらに、別個の発明は、管状グラフトを適切な位置に配置するステップと、このような固定ステントを使用して管状グラフトを固定するステップとを含む、側血管の開口の下の血管に管状グラフトを固定する各方法に関する。
【0121】
首部分は、ステントが展開された状態では、該ステントが完全に拡張したときに、ステントの遠位固定部分および近位密封部分の直径よりも小さい直径、したがって主血管の直径よりも小さい直径を有する。
【0122】
したがって、このようなステントは、大動脈から分枝した腎動脈などの少なくとも1つの側血管が分枝している主血管の部分を跨ぐのに適している。このステントを使用して、一般的なステントでは側血管の開口を塞いでしまうほどに側血管の開口に非常に近接している動脈瘤に管状グラフトを固定することができる。
【0123】
さらなる利点は、以下の説明および添付の図面から明らかになる。
【0124】
上述の特徴および以下に説明する特徴は、それぞれ指定する組み合わせで使用できるだけではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせまたはそのままでも使用できることは言うまでもない。
【0125】
本発明の実施形態を、添付の図面に例示し、以下の説明で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、ガイドワイヤが挿入されている大動脈・腸骨動脈分岐部の略側面図である。
【図2】図2は、図1の大動脈・腸骨動脈分岐部内へのカテーテルの前進を示している。
【図3】未展開管腔内プロテーゼを有する図2のカテーテルの一部の略断面図である。
【図4】構造要素にグラフト・アクチュエータを取り外し可能に接続する要素を備えた、図3のカテーテルの胴体部分の構造要素の略正面図である。
【図5】管腔内プロテーゼが図1の大動脈・腸骨動脈分岐部内で部分的に展開されたカテーテルの側面図である。
【図6】胴体部分が部分的に展開された時点での図5の管腔内プロテーゼを示している。
【図7】胴体部分が完全に展開され、第1のガイドワイヤが大動脈に再配向させられた、図6の管腔内プロテーゼを示している。
【図8】胴体部分がステントによって補強されている図7の管腔内プロテーゼを示している。
【図9】代替の実施形態によるステントによって補強されている図8の管腔内プロテーゼを示している。
【図10】図9のステントの拡大図である。
【図11】補強ステントの括れた部分の代わりに別個の固定ステントが使用されている図10の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0127】
図1では、大動脈11、同側腸骨動脈12、および反対側腸骨動脈13を含む大動脈・腸骨動脈分岐部10の略図が示されている。大動脈・腸骨動脈分岐部10の近位側の、大動脈11から分岐している2つの腎動脈14が示されている。腎動脈14の遠位側の、大動脈・腸骨動脈分岐部10に向かって下方に延びた大動脈11が動脈瘤15を示している。
【0128】
さらに、同側腸骨動脈12から挿入されて反対側腸骨動脈13に送られ、大動脈・腸骨動脈分岐部10を横断しているガイドワイヤ16が示されている。
【0129】
同側腸骨動脈12から反対側腸骨動脈13への移行は、いわゆる交差操作によって達成される。標準的なガイドワイヤまたはカテーテルを使用する場合、このような交差操作を行うのは困難である。したがって、このような操作は、通常は、曲がった先端部を備えたガイドワイヤまたはカテーテル、例えばピグテールまたはSimmonsサイドワインダー型カテーテルを用いて行われる。
【0130】
このため、大動脈・腸骨動脈分岐部10で管腔内プロテーゼを展開する方法は、第1のステップとして、前記ガイドワイヤ16の血管分岐部への配置、すなわち同側腸骨動脈12から反対側腸骨動脈13への移送を含む。このため、例えば曲がった先端部を備えたカテーテルを使用することができる。
【0131】
後に、ガイドワイヤ16は、セルジンガー技術を用いてカテーテルを血管分岐部10内に前進させる役割を果たす。
【0132】
図2には、大動脈・腸骨動脈分岐部10の略側面図が示され、カテーテル18がガイドワイヤ16を介して大動脈・腸骨動脈分岐部10に挿入され、カテーテル18が、同側腸骨動脈12から反対側腸骨動脈13まで延びている。
【0133】
カテーテル18は、ノーズコーン(nose cone)19および可撓性領域20を備えている。ノーズコーン19は、カテーテル18をより簡単かつ穏やかに血管系を通過させるのに役立つ。カテーテル18の可撓性領域20は、カテーテル18が大動脈・腸骨動脈分岐部10に完全に挿入されると、十分に撓んで捻れまたは湾曲を形成する。
【0134】
図3は、カテーテル18の可撓性領域20の付近の部分の側断面図である。右上の角の矢印は、ノーズコーン19を前進させる方向を示している。
【0135】
カテーテル18は、ガイドワイヤ・ルーメン22およびグラフト・アクチュエータ・ルーメン23を備えたカテーテル本体21を有する。ガイドワイヤ・ルーメン22は、ガイドワイヤ16を収容し、グラフト・アクチュエータ・ルーメン23は、グラフト・アクチュエータ24を収容している。グラフト・アクチュエータ・ルーメン23は、カテーテル18の領域20の開口25で終端している。
【0136】
管腔内プロテーゼ27は、カテーテル本体21と拘束シース26との間に保持されている。
【0137】
管腔内プロテーゼ27は、分岐部分28および胴体部分29を有する。分岐部分28は、第1のプロテーゼ・ルーメン30を画定し、胴体部分29は、第2のプロテーゼ・ルーメン31を画定する。分岐部分28および胴体部分29は、分岐部分28の領域でステント要素33によって補強されたワンピース・グラフト・スリーブ32から形成されている。
【0138】
胴体部分29の領域では、グラフト・スリーブ32は、複数のひだ34を有し、胴体部分29は、その長手方向軸35に沿って圧縮されている。さらに、胴体部分29は、その遠位端部で、構造要素36によって補強されている。構造要素36は、接続ストラット37によって前記グラフト・アクチュエータ24に接続されている。
【0139】
図4は、図3の軸35に沿って見た正面図を示す。構造要素36は、その中心に第2のプロテーゼ・ルーメン31を画定し、接続ポケット38も備えている。接続ストラット37は、接続ポケット38に取り外し可能に係合し、これにより構造要素36を図3のグラフト・アクチュエータ24に取り外し可能に接続する。
【0140】
図5は、図2の説明図を示しているが、ここでは、カテーテル18の拘束シース26が完全に引き戻されている。
【0141】
拘束シース26の引き戻しの後、分岐部分28が、ステント要素33の自己拡張によって、同側腸骨動脈12および反対側腸骨動脈13内部で完全に展開され、大動脈・腸骨動脈分岐部10にも及んでいる。ここでは、分岐部分28は、第1の直径39を有する。
【0142】
胴体部分29は、折り畳まれたままであり、分岐部分28に支持され、大動脈11内の動脈瘤15に向いている。
【0143】
図6は、図5の説明図を示し、ここでは、胴体部分29が大動脈11内を進められている。
【0144】
分岐部分28を展開すると、胴体部分29が、その長手方向軸35に沿って伸長して、大動脈11内を前進する。
【0145】
この動きは、接続ストラット37によって構造要素36に接続されたグラフト・アクチュエータ24を大動脈11の方向に押すことによってもたらされる。
【0146】
図7は、図6の説明図を示しているが、ここでは、胴体部分29が、大動脈11内を十分に前進して動脈瘤15を通過している。
【0147】
胴体部分29は、構造要素36によって大動脈11に固定されている。第2のプロテーゼ・ルーメン31が、ここでは、完全に膨張して、胴体部分28が第2の直径40を有する。第2の直径40は、この実施形態では、分岐部分28の第1の直径39よりも大きい。
【0148】
この時点で既に、管腔内プロテーゼ27により、動脈瘤15の内腔に血圧がかからない。第1のルーメン30および第2のルーメン31は、大動脈11の損傷部分、同側腸骨動脈12、および反対側腸骨動脈13と機能的に入れ替わる。
【0149】
しかしながら、ステント材料によって本質的に支持されていない胴体部分28は、なお非常に柔軟であり、長期の物理的変形に耐えることができない。
【0150】
したがって、ここで、ステントを胴体部分28に挿入する。このために、ガイドワイヤ16を、反対側腸骨動脈13から部分的に引き戻し、次いで再び前方に押して胴体部分29、したがって大動脈11内に再配向させる。ノーズコーン42および第2の拘束シース43を備えた第2のカテーテル41を、ガイドワイヤ16を介して同側腸骨動脈12に挿入する。
【0151】
カテーテル41を使用して、大動脈ステントを大動脈11の内側の胴体部分29の第2のルーメン31内で展開する。
【0152】
図8は、図7の説明図を示しているが、胴体補強ステント44が、胴体部分29および大動脈11の内側で展開されている。
【0153】
胴体部分29の上流の、胴体補強ステント44の遠位固定部分45が、大動脈11と腎動脈14との間の開口を越えて延びている。下流方向では、胴体補強ステント44の近位補強部分46が、胴体部分29と分岐部分28との間の移行部まで延びている。遠位固定部分45と近位補強部分46との間には、密封部分47が設けられており、この密封部分47は、胴体補強ステント44が配置されると、腎動脈14の下流かつ動脈瘤15の上流に位置する。
【0154】
したがって、固定部分45が、大動脈11の壁に摩擦係合することによって管腔内プロテーゼ27の胴体部分29を大動脈11の健常な部分に固定する。さらに、補強部分46が、長期の物理的変形に耐えられるようにするために胴体部分29を構造的に補強する。さらに、密封部分47が、大動脈11の壁および胴体部分29に摩擦係合することによって、動脈瘤15の内腔を血流から遮断し、加えて、管腔内プロテーゼ27を大動脈11に固定する。
【0155】
図9は、図8の説明図を示し、代替の実施形態による胴体補強ステント44’を備えている。
【0156】
この代替の実施形態による胴体補強ステント44’は、遠位固定部分45、近位補強部分46、および密封部分47に加えて、首部分48を有する。この首部分48は、胴体補強ステント44’の遠位固定部分45、近位補強部分46、および密封部分47の直径よりも小さい直径を有する。
【0157】
胴体補強ステント44’は、首部分48が大動脈11から腎動脈14への開口の領域に位置するように配置される。したがって、遠位固定部分45、近位補強部分46、および密封部分47が、胴体補強ステント44の場合と同様に機能を果たし、大動脈11と腎動脈14との間の開口が、ステント材料によって塞がれずに維持される。
【0158】
図10は、胴体補強ステント44’の拡大図を示し、図10の動脈瘤15は、腎動脈14のすぐ近くまで延びている。
【0159】
胴体補強ステント44’は、胴体補強ステント44’の遠位端部に設けられた固定部分45、この固定部分45の近位側に設けられた首部分48、この首部分48の近位側に位置する密封部分47、およびこの密封部分47の近位側に位置する補強部分46を有する。
【0160】
密封部分47の長手方向の伸展は、図9のステント44’の場合よりも短い。これは、ここでは、動脈瘤15が腎動脈14に非常に近いためである。これによって、ステント44’が、腎動脈14の孔または開口のすぐ下側の大動脈11の壁に十分な強さで固定できないという問題が引き起こされる可能性がある。しかしながら、上側固定部分45により、ステント44’、したがってグラフト・スリーブ32がなお、動きに対して固定される。首部分48のため、この固定には、腎動脈14の開口は含まれない。
【0161】
首部分48の機能は、矢印49によって示されている、大動脈11から腎動脈14への血流の維持である。
【0162】
従来のステントを使用すると、腎動脈14は、ステント材料によって塞がれるであろう。
【0163】
対照的に、ステント44’を使用すると、首部分48のステント材料が、大動脈壁から離れている、したがって大動脈11から腎動脈14への開口から離れている。
【0164】
血流は、大動脈ステント44’のすべてのメッシュを通過することができる。したがって、血液は、首部分48のメッシュと大動脈壁との間の空間に進入する。
【0165】
したがって、血液は、腎動脈14の上およびステント44’の外側から、すなわちステント44’と大動脈壁との間から腎動脈14に流れるか、またはステント44’から横方向に直接腎動脈14に流れることができる。
【0166】
したがって、腎動脈14への血流は、ステント材料によって妨げられ得ない。
【0167】
さらに、首部分45のメッシュは、密封部分46および固定部分47と同等かそれ以上の大きさにすることができる。
【0168】
図11は、図10の説明図を示しているが、胴体部分29は、ここでは、2つの別個のステント、すなわち固定ステント50と補強ステント51によって固定され、補強されている。
【0169】
補強ステント51の主な機能は管腔内プロテーゼ27の胴体部分29を構造的に補強することであり、補強ステント51は、自己拡張型またはバルーン拡張型のいずれかの標準的なステントとすることができる。
【0170】
しかしながら、固定ステント50は、3つの部分、すなわち遠位固定部分52、近位密封部分53、および遠位固定部分52と近位密封部分53との間に設けられた首部分54を有する。
【0171】
固定部分52は、上記した胴体補強ステント44および44’の場合の固定部分45と同じ機能を有する。
【0172】
固定部分52の機能は、ステント50および結果として管腔内プロテーゼ27を大動脈11に固定することである。
【0173】
このため、展開された固定部分52は、大動脈11の直径に一致する直径を有し、当該技術分野で公知の様式で大動脈11の壁に摩擦係合する。
【0174】
密封部分53は、上記した胴体補強ステント44および44’の場合の密封部分47と同じ機能を有する。
【0175】
したがって、密封部分53は、2つの機能を果たす。密封部分53は、大動脈11の壁に摩擦係合して、固定ステント50および結果として管腔内プロテーゼ27を大動脈壁に固定する。さらに、密封部分53は、グラフト・スリーブ32を大動脈壁に押圧してしっかりと密封する。
【0176】
したがって、管腔内プロテーゼ27は、機械的転位から保護され、動脈瘤15の内腔が、血流から遮断される。
【0177】
首部分54は、上記した胴体補強ステント44’の場合の首部分48と同じ機能を有する。
【0178】
首部分54は、大動脈11から腎動脈14への開口とステント材料との間を一定の距離に維持する。したがって、血液が、腎動脈14に自由に流れることができる。
【0179】
この場合も、首部分54のメッシュは、密封部分46および固定部分47と同等かそれ以上の大きさにすることができる。
【0180】
固定ステント50は、プロテーゼ27だけではなく、側血管の開口を跨ぐ固定ステントを必要とする他の管状グラフトに使用することもできる。
【0181】
図11に示されているように、固定ステント50は、これに関連して別のステントと共に利用することができる。
【0182】
このような組み合わせは、固定ステント50と他のステントとすることができ、他のステントは、この例では、固定ステント50の密封部分53の領域で重なっている胴体補強ステント51である。また、重ならないようにステントを展開することも可能である。
【0183】
固定ステント50と別のステントの組み合わせにより、例えば首部分48も有する胴体補強ステント44’と比較して、固定ステント50をより柔軟に使用することができる。これは、この例では、補強ステント51を異なる長さで利用可能であるためであり、これによりステント(50,51)の全長を、患者によって異なる大動脈・腸骨動脈分岐部10と腎動脈14との間の距離に調節できるためである。
【0184】
したがって、固定ステント50を使用すると、管状グラフトを、血管が分岐している部分の近傍にさえも効率的に固定することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワンピース・グラフト・スリーブ(one-piece graft sleeve)を備えた、血管分岐部で展開される管腔内プロテーゼ(endoluminal prosthesis)に関する。前記グラフト・スリーブは、第1のプロテーゼ・ルーメンを画定する分岐部分であって、展開された状態では第1の直径を有し、ステント要素によって補強されている、分岐部分と、前記第1のプロテーゼ・ルーメンに流体連通した第2のプロテーゼ・ルーメンを画定する胴体部分であって、展開された状態では第2の直径を有する、胴体部分とを備えている。
【0002】
さらに、本発明は、このような管腔内プロテーゼが装着され、前記管腔内プロテーゼを血管分岐部に配置するように構成されたカテーテルに関する。前記カテーテルは、ガイドワイヤを収容するためのガイドワイヤ・ルーメンおよびグラフト・アクチュエータ・ルーメンを有するカテーテル本体と、前記装着された管腔内プロテーゼを内部で径方向に圧縮して維持する拘束シース(constraining sheath)と、前記グラフト・アクチュエータ・ルーメン内に収容されたグラフト・アクチュエータ(graft actuator)とを備えている。
【0003】
なおさらに、本発明は、このようなカテーテルおよび前記カテーテルに装着されたこのような管腔内プロテーゼを備えた展開システムに関する。
【0004】
なおさらに、本発明は、このような展開システムを用いて、血管分岐部でこのような管腔内プロテーゼを展開する方法に関する。この方法は、
(a)第1の分岐血管から前記展開システムを血管分岐部内に導入するステップと、
(b)管腔内プロテーゼを解放するために第1の拘束シースを開くまたは引き戻すステップと、
(c)胴体部分を血管分岐部の血管内に前進させるステップとを含む。
【背景技術】
【0005】
このような管腔内プロテーゼ、カテーテル、展開システム、および方法は、例えば国際公開第00/053251A1号に開示されている。
【0006】
最初に述べた種類の管腔内プロテーゼ、カテーテル、および展開システムは、医学的に非常に好適で、商業的インパクトが強く、多くの場合、腹部大動脈瘤のような動脈瘤の主要な治療に使用される。
【0007】
動脈瘤は、血管壁の局所的な拡張であり、通常は、例えばアテローム性動脈硬化症によって生じる血管壁の変性によって引き起こされる。このような場合、血管壁の拡張は、最終的に血管の破裂をもたらし、激しい出血を引き起こすことがある。
【0008】
動脈瘤は、大動脈系で最も頻繁に発生し、例えば大動脈・腸骨動脈分岐部における腹部大動脈瘤が特に生命にかかわる。このような動脈瘤の破裂を患う患者のうち推定65%が、病院に到着する前に突然の心血管虚脱により死亡する。これは、大量の血液が腹部大動脈によって常に輸送されているため、破裂により瞬時に大量の血液が周囲の体腔および組織に流出してしまうためである。
【0009】
大動脈瘤の治療法は、数十年前から存在する。これらの方法では、通常は、完全に人工の代替物、例えばステントグラフトまたは異種移植片を使用して、動脈瘤のある血管の部分と入れ替わる、または該部分を血流から排除する。このような分岐グラフトは、大動脈・腸骨動脈分岐部の動脈瘤を治療するために使用することができ、例えば米国特許第2,845,959号に開示されている。しかしながら、このようなデバイスは、観血手術で配置しなければならないため、既に他の理由で健康が損なわれている場合が多い患者に相当な外傷を負わせることになる。
【0010】
過去数年間、外科治療の進歩により、内視鏡技術に徐々に焦点が当てられるようになり、例えば観血手術に関連した外傷の大部分を回避する血管系の治療が可能になった。これに関連して、自己拡張型またはバルーン拡張型ステントおよびステントグラフトが、次第に好適であるようになってきた。
【0011】
展開の際は、周方向に圧縮された管腔内プロテーゼ(すなわち、ステントまたはステントグラフト)を、カテーテルを用いて、例えば動脈瘤などの部位に向かって血管内を前進させ、次いで拡張させて、動脈瘤の部位の近位側および遠位側の健常な血管壁に固定する。この時点で、プロテーゼのルーメンが、血管の内腔と入れ替わり、動脈瘤の内腔が血流から遮断される。
【0012】
分岐血管に管腔内プロテーゼを配置する場合は、典型的には、いくつかのカテーテルが、異なる進入点から血管系に導入される。次いで、分岐血管が、摩擦力または他の機械的接続によって互いに接続された異なる管腔内プロテーゼによって支持される。
【0013】
ここでの問題は、異なる管腔内プロテーゼ間の接続は、動脈瘤拡張の再形成過程で生じる力を受けたときや、人体内で発生する自然の動きを受けたときに、場合によってはエンドリークを引き起こしたり、完全な分離さえも起こすことがある点にある。このような場合、管腔内プロテーゼの保護機能が著しく低下して、血栓の形成や血管の破裂が発生する可能性もある。
【0014】
このようなリークの問題を回避するために、最初に言及した国際公開第00/053251A1号には、大動脈・腸骨動脈分岐部に配置するように適合させられた、ワンピースグラフト(one-piece graft)を備えた管腔内プロテーゼが開示されている。さらに、国際公開第00/053251A1号には、この管腔内プロテーゼの配置用に適合させられた展開システムも開示されている。
【0015】
この展開システムは、1回のアクセスでの展開用に適合させられ、血管系への外科的進入点を僅かに1つしか必要としない。
【0016】
このため、展開システムは、カテーテル本体および拘束シースを備えたカテーテルを含み、管腔内プロテーゼが、拘束シースとカテーテル本体との間に配置される。管腔内プロテーゼは、大動脈内に支持される胴体部分および同側腸骨動脈内に支持される分岐部分を含む主管状本体、ならびに反対側腸骨動脈内に支持される側枝を備えることを特徴とし、この側枝は、展開されていない状態では主管状本体の側部に折り畳まれている。
【0017】
既知のプロテーゼが、同側腸骨動脈を介して大動脈・腸骨動脈分岐部に導入されたら、拘束シースを長手方向に移動させて管腔内プロテーゼを部分的に解放する。次いで、管腔内プロテーゼの側枝を、管腔内プロテーゼ全体を引き戻して反対側腸骨動脈に挿入し、管腔内プロテーゼを完全に展開する。国際公開第00/053251A1号によると、管腔内プロテーゼの主管状本体は、大動脈はもちろん同側腸骨動脈にも延在し、ステント要素によって補強される。同様に、側枝は、反対側腸骨動脈内に支持され、形状記憶ステント材料によって補強される。
【0018】
しかしながら、この原理には重大な欠点がある。
【0019】
国際公開第00/053251A1号による管腔内プロテーゼの一部の実施形態によると、同側腸骨動脈内に支持される主管状本体の分岐部分を補強するステント要素と反対側腸骨動脈内の側枝を補強するステント要素との間には、形状および構造に相当な差異が存在する。
【0020】
この差異は、管腔内プロテーゼの各部の周方向の剛性に差異をもたらす。しかしながら、このような周方向の剛性における差異は、主管状本体の分岐部分または側枝のいずれかの移動や機械的転位などの長期的な問題をもたらし得る。この場合、プロテーゼの遠位端部と血管壁との間にエンドリークが発生する可能性が増大する。
【0021】
国際公開第00/053251A1号による管腔内プロテーゼの残りの実施形態では、展開機構自体が機械的に高度に複雑であるため、欠陥や不適切・不完全な展開が起こりやすい。このような不適切・不完全な展開により、手術は完全に失敗し、観血手術が必要となるか、少なくともエンドリーク発生のリスクが増大し得る。
【0022】
さらに、血管分岐部の下流の血管分枝のうちの少なくとも1つが、展開の過程で一定時間にわたって完全に塞がれる。
【0023】
複雑な展開機構が機械的に故障すると、展開システム全体が観血手術で除去されるまで、この血管は塞がれたままである。
【0024】
特に太い血管の場合は、この閉塞は、患者の健康を危険にさらすことがある。
【0025】
さらに、国際公開第00/053251A1号によるシステムは、その機械的な複雑さのために製造コストが高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
上記のことから、本発明の目的は、エンドリークの発生をうまく防止することができ、プロテーゼ材料による血管の閉塞をうまく回避することができ、しかもコスト効率の良い機械的に簡単な解決手段が得られるように、従来技術の管腔内プロテーゼを改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明によると、この目的および他の目的は、前記胴体部分が補強用ステント材料を実質的に含まない最初に述べた種類の管腔内プロテーゼで達成される。
【0028】
本発明の範囲内で、グラフト・スリーブ(graft sleeve)は、編メッシュまたは成形材料から形成された管状構造であると理解され、グラフト・スリーブの材料には、例えば天然もしくは人工繊維、PTFE、EPTFE、および/または当該技術分野で公知の他の材料が含まれる。
【0029】
さらに、本発明によると、血管についての表現「上流」は、血流に対向する方向を表す一方、表現「下流」は、血流に従う方向を表す。
【0030】
カテーテルについての表現「近位」は、カテーテルを操作する外科医に向かう方向を表し、表現「遠位」は、外科医から離れて、カテーテル先端部に向かう方向を表す。
【0031】
新規な管腔内プロテーゼが血管分岐部で展開されると、分岐部分が、分岐部の下流の2つの血管分枝内に支持され、管腔内プロテーゼがこれらの血管に固定される。
【0032】
新規な管腔内プロテーゼの2つ分枝が本質的に同一のステントセグメントを有するため、分岐部分の両方の分枝の周方向の剛性は実質的に同一である。したがって、分岐部分の移動および機械的転位などの長期的な問題は、うまく回避される。
【0033】
このように、新規な管腔内プロテーゼは、エンドリークの発生を防止する。
【0034】
また、分岐部分が展開されると同時に、プロテーゼ材料が、血管分岐部の下流の両方の血管分枝への血流を妨げなくなる。
【0035】
したがって、血管分岐部の下流の血管分枝への血流は、非常に短時間しか中断されない。さらに、たとえ展開システムの故障の場合でも血流が保証されるため、患者のリスクが大幅に軽減される。
【0036】
さらに、新規な管腔内プロテーゼは、非常にコンパクトな折り畳みが可能であるという利点も有する。これは、展開された状態では血管分岐部の上流の主血管に支持される胴体部分にステント材料が実質的に存在しないことによるものである。
【0037】
胴体部分が実質的にステント材料を含まず、同時に胴体部分が容易に展開できるため、胴体部分を、その長手方向に沿って主血管内に簡単に伸長させることができる。
【0038】
このように、胴体部分の展開のために比較的簡単な機械的な解決策しか必要ない。
【0039】
したがって、新規なプロテーゼにより、機械的な複雑さが軽減された展開カテーテルの使用が可能となり、故障のリスク、したがって管腔内プロテーゼの不完全・不適切な展開のリスクが軽減される。
【0040】
分岐部分の第1の直径は、胴体部分の第2の直径と異なっても良く、第2の直径は、好ましくは第1の直径よりも大きい。
【0041】
さらに、このようにして、管腔内プロテーゼの生産コストが削減される。
【0042】
したがって、本発明の目的は完全に達成される。
【0043】
本発明の一実施形態によると、分岐部分は、自己拡張型ステント要素によって補強される。
【0044】
自己拡張型ステント要素を使用すると、分岐血管内での分岐部分の固定にバルーンの拡張が必要ない。
【0045】
これは、展開に必要なカテーテルの全体的な複雑さを軽減できるという利点を有する。
【0046】
さらに、分岐部分の配置および固定が、展開手順の最初に行われる。したがって、管腔内プロテーゼの位置は、手術の初期に固定される。したがって、さらなる展開過程での管腔内プロテーゼの移動のリスクが軽減される。
【0047】
また、胴体部分が複数のひだを有することが好ましい。
【0048】
したがって、グラフト・スリーブのこのようなひだによって、大量のグラフト・スリーブ材料が比較的狭い空間内に収容できるようになるという点で有利である。
【0049】
したがって、折り畳まれた管腔内プロテーゼの直径が縮小される。
【0050】
さらに、胴体部分が、その遠位端部で、構造要素によって周方向に補強されることが好ましい。
【0051】
したがって、利点としては、管腔内プロテーゼが完全に展開されると、少なくとも固定ステントが胴体部分内で展開されるまで、構造要素が、静脈瘤の上流の位置で胴体部分を主血管に固定することができることが挙げられる。
【0052】
また、このような構造要素は、中心開口を開いた状態に維持し、胴体部分のルーメンを主血管の内腔に接続するという点で、胴体部分の展開を支援する。
【0053】
したがって、大動脈を流れる血流が、展開手順全体の間、さらに高いレベルで維持される。
【0054】
加えて、このように、主血管の血圧は、胴体部分の主血管への前進を全くまたは僅かな程度しか妨げない。
【0055】
これに関連して、構造要素が少なくとも部分的に自己拡張型ステントであるとさらに好ましい。
【0056】
したがって、胴体部分を展開の前に広げる必要がないという点で有利である。これによって、手術の間中、血液がさらに容易にプロテーゼ内を流れることになる。
【0057】
また、構造要素が、ガイドワイヤまたはカテーテルに取り外し可能に接続できる接続要素を有すると好ましい。
【0058】
このような接続要素は、例えばフックが取り外し可能に係合できる接続ポケットまたはループなどを含むことができる。
【0059】
このように、構造要素は、胴体部分をその長手方向軸に沿って伸長させるために胴体部分に加えられる力を、グラフト・スリーブ材料に対して径方向に分配する。このため、点状応力、したがって、グラフト・スリーブの損傷を回避することができる。
【0060】
本発明は、最初に述べた種類のカテーテルにさらに関する。このカテーテルは、管腔内プロテーゼが胴体部分を有する領域で捻るまたは曲げることができるように構成され、この領域またはその近位側の開口で、グラフト・アクチュエータ・ルーメンが終端している。
【0061】
このようなカテーテルの利点は、分岐部分の2つの分枝が、分岐部の下流側の2つの血管分枝内に支持されて、管腔内プロテーゼがこれらの血管に固定されるように、管腔内プロテーゼを配置できることである。さらなる利点は、分枝が本質的に同一のステントセグメントを有するため、本質的に同一の周方向の剛性を有することである。
【0062】
したがって、これらの血管内のプロテーゼ分枝の周方向の剛性の差異から生じる長期的な問題、例えば移動および機械的転位を回避することができる。このため、プロテーゼの遠位端部と血管壁との間に生じるエンドリークの可能性が大幅に軽減される。
【0063】
さらに、新規なカテーテルによって可能となった展開の方式は、展開手順の間中、ほぼ連続的な血流を保証する。
【0064】
さらに、新規なカテーテルは、公知の解決手段よりも機械的に単純である。このように、新規なカテーテルは、故障しにくく、管腔内プロテーゼの不完全・不適切な展開のリスクを軽減する。したがって、エンドリークの可能性がさらに低下する。
【0065】
加えて、機械的複雑さの軽減は、新規なカテーテルの製造コストが、最初に述べた種類の公知のカテーテルと比較して低いという利点を有する。
【0066】
グラフト・アクチュエータが、その遠位端部に、胴体部分の遠位端部に取り外し可能に係合するように適合させられた接続部分を有すると好ましい。
【0067】
このような接続部分は、例えば実質的に中心の部分、すなわちガイドワイヤの位置から、接続ストラット(strut)が管腔内プロテーゼの材料に取り外し可能に係合する横方向の位置まで延びた接続ストラットから成ってよい。
【0068】
したがって、利点としては、グラフト・アクチュエータ自体ではなく、接続部分が、径方向に分布したいくつかの点で管腔内プロテーゼの遠位端部の材料に係合できることが挙げられる。このように、胴体部分の遠位開口を、主血管の内腔に整合させることができる。
【0069】
したがって、胴体部分を主血管内に前進させるときに、さらに良好な血流を維持することができる。
【0070】
代替の実施形態では、カテーテル本体を、その遠位端部の近傍で、少なくとも一時的に逆向きの湾曲を形成するように適合させることができる。
【0071】
少なくとも一時的に逆向きの湾曲を形成するように適合させられたカテーテル、例えばピグテール(pigtail)またはSimmonsサイドワインダー型カテーテルが、当該技術分野で公知である。
【0072】
このようなカテーテルの機能性を新規なカテーテルに含めることは、最初にガイドワイヤを血管分岐部に通して配置する必要なく、管腔内プロテーゼの展開を行うことができるという点で有利である。
【0073】
本発明は、前記カテーテルの前記グラフト・アクチュエータが、前記装着された管腔内プロテーゼの前記胴体部分の遠位端部に取り外し可能に接続された、最初に述べた種類の展開システムにも関する。
【0074】
したがって、本発明による管腔内プロテーゼおよびカテーテルの特徴を組み合わせることにより、機械的に驚くほど簡単な解決手段が提供され、これを、1回のアクセスでの管腔内プロテーゼの血管分岐部での展開に使用することができる。
【0075】
このシステムの利点は、相対的な機械的簡単さにより、1回のアクセスで管腔内プロテーゼを血管分岐部で展開する公知の展開システムよりも機械的な欠陥や故障が発生しにくいことである。
【0076】
これに関連して、グラフト・アクチュエータが、管腔内プロテーゼの胴体部分の遠位端部に、より好ましくは接続部分によって胴体部分の遠位端部の構造要素に、取り外し可能に係合するとさらに好ましい。
【0077】
このような接続部分は、上記したように、接続ストラットから構成することができ、胴体部分を伸長させるために加えられる力を分配し、それによって材料にかかる応力を低減することができる。
【0078】
さらに、プロテーゼの遠位開口が主血管の内腔に整合するため、胴体部分が、大動脈血管を流れる血流を妨げず、胴体部分を主血管内に前進させるために打ち勝つべき抵抗も減少する。
【0079】
さらに、このように、構造要素は、胴体部分を主血管、例えば大動脈に固定するのに適した位置に維持される。
【0080】
装着された管腔内プロテーゼの胴体部分が、その長手方向軸に沿って圧縮されるとさらに好ましい。
【0081】
ここでの利点は、胴体部分が主血管の方向に前進する前でさえも、分岐部分の両方の分枝を流れる血流が、プロテーゼ材料によって妨げられないことである。
【0082】
さらに、このような長手方向に沿った圧縮により、大量のグラフト・スリーブ材料が比較的狭い空間内に収容できるようになる。
【0083】
さらに、展開システムが、好ましくは拘束シース内に径方向に圧縮された、胴体補強ステントが装着された第2のカテーテルをさらに有すると好ましい。
【0084】
このような胴体補強ステントは、好ましくは、標準的なカテーテルによって展開できる自己拡張型ステントである。もちろん、これに関連して、バルーン拡張型ステントおよび対応する標準的なバルーンカテーテルも使用することができる。
【0085】
胴体補強ステントは、胴体部分を機械的に補強する役割を果たす。したがって、完全に機械的に支持された管腔内プロテーゼの利点は、新規な管腔内プロテーゼでも達成することができる。さらに、胴体補強ステントは、胴体部分の遠位端部を大動脈内に固定するのにも役立ち得る。したがって、動脈瘤の上流で、大動脈の健常部分から胴体部分が機械的に転位するのをうまく回避することができる。
【0086】
これに関連して、第2のカテーテルを案内するために、ガイドワイヤを別の経路で主血管に送る必要がある。
【0087】
あるいは、グラフト・アクチュエータを使用して第2のカテーテルを主血管に挿入することができる。したがって、異なるガイドワイヤの別個の配置が必要ない。
【0088】
あるいは、第1のカテーテルが、同時に第2のカテーテルとしての機能を果たしてもよい。
【0089】
これに関連して、胴体補強ステントを備えたカテーテルの部分を、管腔内プロテーゼを備えたカテーテルの部分の近位側に設けることができる。この実施形態によると、管腔内プロテーゼの展開の後、第1のカテーテルを、分岐部を越えて引き戻し、次いで再び主血管内に前進させる。次いで、胴体補強ステントを展開する。
【0090】
管腔内プロテーゼの展開の機能性と新たなカテーテルでのステントの展開の機能性を組み合わせる利点は、管腔内プロテーゼの展開と胴体補強ステントの展開との間にカテーテルを交換する必要ないことである。これは、手術時間の全体的な短縮となる。
【0091】
これに関連して、第1の拘束シースが、同時に第2の拘束シースとしての機能を果たすことも可能である。
【0092】
この改良は、カテーテルの全体的な機械的配置を簡単にするのに役立つ。唯一つの拘束シースを使用して、この拘束シースを、管腔内プロテーゼを解放するために第1の位置に引き戻し、次いでカテーテルの主血管内への再前進時にステントの展開のために第2の位置に引き戻すことにより、カテーテルの可動部品数を削減することができる。
【0093】
さらに、このように、展開システムの取り扱いが簡単になる。
【0094】
本発明によると、胴体補強ステントが、該ステントが完全に拡張すると、首部分の遠位端部および近位端部の直径よりも小さい、したがって主血管の直径よりも小さい直径を有する首部分を有することも好ましい。
【0095】
これに関連して、胴体補強ステントは、予備成形された形状記憶材料、例えばニチノールなどから形成することができる。あるいは、首部分は、首部分を備えたバルーンを利用してステントのバルーン拡張時に形成することができる。さらに、ステントは、首部分がこのステント部分の材料および/または機械的構造によってより小さい直径に収縮されている自己拡張型とすることができる。
【0096】
首部分を備えたこのような胴体補強ステントの利点は、狭い開口を有する側血管の閉塞を回避できることである。
【0097】
標準的なステントが、側血管の狭い開口に対して配置されると、最終的に、この開口は、ステント材料によって閉塞される。
【0098】
対照的に、開口に配置される首部分を備えたステントは、このような遮断を防止する。首部分の領域では、血液は、ステントのストラットおよび分岐部を介してステント材料と血管壁との間の空間を自由に流れることができる。
【0099】
したがって、側血管に対する血液の流入または流出が妨げられない。
【0100】
「括れた(necked)」ステント部分は、胴体補強ステントの一体部分としてその遠位端部に形成してもよいし、または別個の「固定」ステントとしてもよい。
【0101】
このことから、このような固定ステントの概念は、本願のワンピース分岐グラフト以外のグラフトにも使用できるため、それ自体が新規で独創性がある。
【0102】
本発明は、さらに、最初に述べた種類の方法に関し、この方法では、ステップ(a)の際に、展開システムが、第1の分岐血管および第2の分岐血管に支持されて、主血管に近接した胴体部分の位置で捻れまたは湾曲を形成するように展開システムを導入し、ステップ(c)の際に、胴体部分を主血管内に前進させる。
【0103】
この新規な方法の利点は、上記の種類の管腔内プロテーゼを、血管分岐部の内腔修復に利用できることである。したがって、エンドリークの発生をうまく防止することができる。
【0104】
さらに、新規な方法の使用により、治療すべき血管分岐部を流れる血流が、手術のすべてのステップの間、本質的に維持される。
【0105】
新規な方法の一実施形態によると、ステップ(a)の際に、展開システムを、ガイドワイヤを使用して血管分岐部内に導入する。
【0106】
これに関連して、まず、ガイドワイヤを、血管分岐部の下流の両方の血管分枝の血管分岐部にわたって配置する。この交差操作(crossover maneuver)は、湾曲端部を備えたカテーテル、例えばピグテールまたはSimmonsサイドワインダー型カテーテルなどを利用して行うことができる。このようなカテーテルは、当該技術分野で広く公知である。
【0107】
ガイドワイヤが配置されたら、展開システムを、セルジンガー(Seldinger)技術を用いて血管分岐部内に前進させる。
【0108】
このように、展開システムの交差操作は、簡単かつ直接的に行うことができる。
【0109】
あるいは、交差操作は、ガイドワイヤを用いずに、遠位端部の領域に交差機能性を有する展開システムを使用して行うこともできる。
【0110】
さらに、新規な方法に関連して、ステップ(c)の際に、グラフト・アクチュエータを前方に押すことによって胴体部分を前進させると好ましい。
【0111】
ここでの利点は、外科医が前進過程を厳密に制御可能な要領で、胴体部分を伸長させて主血管内に前進させることができることである。
【0112】
さらに、ステップ(c)の後のさらなるステップ(d)で、胴体補強ステントが、管腔内プロテーゼを主血管に固定し、管腔内プロテーゼを胴体部分に沿って補強するように、胴体部分および主血管の領域に胴体補強ステントを配置して拡張させると好ましい。
【0113】
ここでの利点は、別個のステントを管腔内プロテーゼの固定および補強に使用することによって、患者の個別の要求に適応した様々なステントの使用が可能になることである。
【0114】
また、標準的なステントをこの目的で使用することができ、展開システムの製造コストがさらに削減されるという点で有利である。
【0115】
これに関連して、異なる機能を果たす2つの別個のステントを利用することも可能である。胴体部分内で展開される第1の胴体補強ステントは、胴体部分を構造的に補強する機能を果たす一方、補強ステントの上流で展開される第2の別個の固定ステントは、胴体部分を大動脈壁に固定する機能を果たす他、胴体材料を大動脈壁に押圧することによって動脈瘤の内腔を血流から遮断する。
【0116】
胴体補強ステントおよび固定ステントは、胴体補強ステントの遠位端部と固定ステントの密封部分が重なるように配置することもできる。
【0117】
このことから、既に上述した別個の発明は、遠位固定部分、近位密封部分、およびこれらの間の首部分を有する、管状グラフトを血管内に固定するためのステントに関する。この首部分は、ステントの展開された状態では、ステントの遠位固定部分および近位密封部分の直径よりも小さい直径を有する。
【0118】
好ましい実施形態によると、このステントは、前記管状グラフトを補強するための、密封部分の近位側の補強部分を備えることができる。
【0119】
さらに、本発明は、上記の種類の管腔内プロテーゼおよび固定ステントを含むキットに関する。
【0120】
なおさらに、別個の発明は、管状グラフトを適切な位置に配置するステップと、このような固定ステントを使用して管状グラフトを固定するステップとを含む、側血管の開口の下の血管に管状グラフトを固定する各方法に関する。
【0121】
首部分は、ステントが展開された状態では、該ステントが完全に拡張したときに、ステントの遠位固定部分および近位密封部分の直径よりも小さい直径、したがって主血管の直径よりも小さい直径を有する。
【0122】
したがって、このようなステントは、大動脈から分枝した腎動脈などの少なくとも1つの側血管が分枝している主血管の部分を跨ぐのに適している。このステントを使用して、一般的なステントでは側血管の開口を塞いでしまうほどに側血管の開口に非常に近接している動脈瘤に管状グラフトを固定することができる。
【0123】
さらなる利点は、以下の説明および添付の図面から明らかになる。
【0124】
上述の特徴および以下に説明する特徴は、それぞれ指定する組み合わせで使用できるだけではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせまたはそのままでも使用できることは言うまでもない。
【0125】
本発明の実施形態を、添付の図面に例示し、以下の説明で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、ガイドワイヤが挿入されている大動脈・腸骨動脈分岐部の略側面図である。
【図2】図2は、図1の大動脈・腸骨動脈分岐部内へのカテーテルの前進を示している。
【図3】未展開管腔内プロテーゼを有する図2のカテーテルの一部の略断面図である。
【図4】構造要素にグラフト・アクチュエータを取り外し可能に接続する要素を備えた、図3のカテーテルの胴体部分の構造要素の略正面図である。
【図5】管腔内プロテーゼが図1の大動脈・腸骨動脈分岐部内で部分的に展開されたカテーテルの側面図である。
【図6】胴体部分が部分的に展開された時点での図5の管腔内プロテーゼを示している。
【図7】胴体部分が完全に展開され、第1のガイドワイヤが大動脈に再配向させられた、図6の管腔内プロテーゼを示している。
【図8】胴体部分がステントによって補強されている図7の管腔内プロテーゼを示している。
【図9】代替の実施形態によるステントによって補強されている図8の管腔内プロテーゼを示している。
【図10】図9のステントの拡大図である。
【図11】補強ステントの括れた部分の代わりに別個の固定ステントが使用されている図10の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0127】
図1では、大動脈11、同側腸骨動脈12、および反対側腸骨動脈13を含む大動脈・腸骨動脈分岐部10の略図が示されている。大動脈・腸骨動脈分岐部10の近位側の、大動脈11から分岐している2つの腎動脈14が示されている。腎動脈14の遠位側の、大動脈・腸骨動脈分岐部10に向かって下方に延びた大動脈11が動脈瘤15を示している。
【0128】
さらに、同側腸骨動脈12から挿入されて反対側腸骨動脈13に送られ、大動脈・腸骨動脈分岐部10を横断しているガイドワイヤ16が示されている。
【0129】
同側腸骨動脈12から反対側腸骨動脈13への移行は、いわゆる交差操作によって達成される。標準的なガイドワイヤまたはカテーテルを使用する場合、このような交差操作を行うのは困難である。したがって、このような操作は、通常は、曲がった先端部を備えたガイドワイヤまたはカテーテル、例えばピグテールまたはSimmonsサイドワインダー型カテーテルを用いて行われる。
【0130】
このため、大動脈・腸骨動脈分岐部10で管腔内プロテーゼを展開する方法は、第1のステップとして、前記ガイドワイヤ16の血管分岐部への配置、すなわち同側腸骨動脈12から反対側腸骨動脈13への移送を含む。このため、例えば曲がった先端部を備えたカテーテルを使用することができる。
【0131】
後に、ガイドワイヤ16は、セルジンガー技術を用いてカテーテルを血管分岐部10内に前進させる役割を果たす。
【0132】
図2には、大動脈・腸骨動脈分岐部10の略側面図が示され、カテーテル18がガイドワイヤ16を介して大動脈・腸骨動脈分岐部10に挿入され、カテーテル18が、同側腸骨動脈12から反対側腸骨動脈13まで延びている。
【0133】
カテーテル18は、ノーズコーン(nose cone)19および可撓性領域20を備えている。ノーズコーン19は、カテーテル18をより簡単かつ穏やかに血管系を通過させるのに役立つ。カテーテル18の可撓性領域20は、カテーテル18が大動脈・腸骨動脈分岐部10に完全に挿入されると、十分に撓んで捻れまたは湾曲を形成する。
【0134】
図3は、カテーテル18の可撓性領域20の付近の部分の側断面図である。右上の角の矢印は、ノーズコーン19を前進させる方向を示している。
【0135】
カテーテル18は、ガイドワイヤ・ルーメン22およびグラフト・アクチュエータ・ルーメン23を備えたカテーテル本体21を有する。ガイドワイヤ・ルーメン22は、ガイドワイヤ16を収容し、グラフト・アクチュエータ・ルーメン23は、グラフト・アクチュエータ24を収容している。グラフト・アクチュエータ・ルーメン23は、カテーテル18の領域20の開口25で終端している。
【0136】
管腔内プロテーゼ27は、カテーテル本体21と拘束シース26との間に保持されている。
【0137】
管腔内プロテーゼ27は、分岐部分28および胴体部分29を有する。分岐部分28は、第1のプロテーゼ・ルーメン30を画定し、胴体部分29は、第2のプロテーゼ・ルーメン31を画定する。分岐部分28および胴体部分29は、分岐部分28の領域でステント要素33によって補強されたワンピース・グラフト・スリーブ32から形成されている。
【0138】
胴体部分29の領域では、グラフト・スリーブ32は、複数のひだ34を有し、胴体部分29は、その長手方向軸35に沿って圧縮されている。さらに、胴体部分29は、その遠位端部で、構造要素36によって補強されている。構造要素36は、接続ストラット37によって前記グラフト・アクチュエータ24に接続されている。
【0139】
図4は、図3の軸35に沿って見た正面図を示す。構造要素36は、その中心に第2のプロテーゼ・ルーメン31を画定し、接続ポケット38も備えている。接続ストラット37は、接続ポケット38に取り外し可能に係合し、これにより構造要素36を図3のグラフト・アクチュエータ24に取り外し可能に接続する。
【0140】
図5は、図2の説明図を示しているが、ここでは、カテーテル18の拘束シース26が完全に引き戻されている。
【0141】
拘束シース26の引き戻しの後、分岐部分28が、ステント要素33の自己拡張によって、同側腸骨動脈12および反対側腸骨動脈13内部で完全に展開され、大動脈・腸骨動脈分岐部10にも及んでいる。ここでは、分岐部分28は、第1の直径39を有する。
【0142】
胴体部分29は、折り畳まれたままであり、分岐部分28に支持され、大動脈11内の動脈瘤15に向いている。
【0143】
図6は、図5の説明図を示し、ここでは、胴体部分29が大動脈11内を進められている。
【0144】
分岐部分28を展開すると、胴体部分29が、その長手方向軸35に沿って伸長して、大動脈11内を前進する。
【0145】
この動きは、接続ストラット37によって構造要素36に接続されたグラフト・アクチュエータ24を大動脈11の方向に押すことによってもたらされる。
【0146】
図7は、図6の説明図を示しているが、ここでは、胴体部分29が、大動脈11内を十分に前進して動脈瘤15を通過している。
【0147】
胴体部分29は、構造要素36によって大動脈11に固定されている。第2のプロテーゼ・ルーメン31が、ここでは、完全に膨張して、胴体部分28が第2の直径40を有する。第2の直径40は、この実施形態では、分岐部分28の第1の直径39よりも大きい。
【0148】
この時点で既に、管腔内プロテーゼ27により、動脈瘤15の内腔に血圧がかからない。第1のルーメン30および第2のルーメン31は、大動脈11の損傷部分、同側腸骨動脈12、および反対側腸骨動脈13と機能的に入れ替わる。
【0149】
しかしながら、ステント材料によって本質的に支持されていない胴体部分28は、なお非常に柔軟であり、長期の物理的変形に耐えることができない。
【0150】
したがって、ここで、ステントを胴体部分28に挿入する。このために、ガイドワイヤ16を、反対側腸骨動脈13から部分的に引き戻し、次いで再び前方に押して胴体部分29、したがって大動脈11内に再配向させる。ノーズコーン42および第2の拘束シース43を備えた第2のカテーテル41を、ガイドワイヤ16を介して同側腸骨動脈12に挿入する。
【0151】
カテーテル41を使用して、大動脈ステントを大動脈11の内側の胴体部分29の第2のルーメン31内で展開する。
【0152】
図8は、図7の説明図を示しているが、胴体補強ステント44が、胴体部分29および大動脈11の内側で展開されている。
【0153】
胴体部分29の上流の、胴体補強ステント44の遠位固定部分45が、大動脈11と腎動脈14との間の開口を越えて延びている。下流方向では、胴体補強ステント44の近位補強部分46が、胴体部分29と分岐部分28との間の移行部まで延びている。遠位固定部分45と近位補強部分46との間には、密封部分47が設けられており、この密封部分47は、胴体補強ステント44が配置されると、腎動脈14の下流かつ動脈瘤15の上流に位置する。
【0154】
したがって、固定部分45が、大動脈11の壁に摩擦係合することによって管腔内プロテーゼ27の胴体部分29を大動脈11の健常な部分に固定する。さらに、補強部分46が、長期の物理的変形に耐えられるようにするために胴体部分29を構造的に補強する。さらに、密封部分47が、大動脈11の壁および胴体部分29に摩擦係合することによって、動脈瘤15の内腔を血流から遮断し、加えて、管腔内プロテーゼ27を大動脈11に固定する。
【0155】
図9は、図8の説明図を示し、代替の実施形態による胴体補強ステント44’を備えている。
【0156】
この代替の実施形態による胴体補強ステント44’は、遠位固定部分45、近位補強部分46、および密封部分47に加えて、首部分48を有する。この首部分48は、胴体補強ステント44’の遠位固定部分45、近位補強部分46、および密封部分47の直径よりも小さい直径を有する。
【0157】
胴体補強ステント44’は、首部分48が大動脈11から腎動脈14への開口の領域に位置するように配置される。したがって、遠位固定部分45、近位補強部分46、および密封部分47が、胴体補強ステント44の場合と同様に機能を果たし、大動脈11と腎動脈14との間の開口が、ステント材料によって塞がれずに維持される。
【0158】
図10は、胴体補強ステント44’の拡大図を示し、図10の動脈瘤15は、腎動脈14のすぐ近くまで延びている。
【0159】
胴体補強ステント44’は、胴体補強ステント44’の遠位端部に設けられた固定部分45、この固定部分45の近位側に設けられた首部分48、この首部分48の近位側に位置する密封部分47、およびこの密封部分47の近位側に位置する補強部分46を有する。
【0160】
密封部分47の長手方向の伸展は、図9のステント44’の場合よりも短い。これは、ここでは、動脈瘤15が腎動脈14に非常に近いためである。これによって、ステント44’が、腎動脈14の孔または開口のすぐ下側の大動脈11の壁に十分な強さで固定できないという問題が引き起こされる可能性がある。しかしながら、上側固定部分45により、ステント44’、したがってグラフト・スリーブ32がなお、動きに対して固定される。首部分48のため、この固定には、腎動脈14の開口は含まれない。
【0161】
首部分48の機能は、矢印49によって示されている、大動脈11から腎動脈14への血流の維持である。
【0162】
従来のステントを使用すると、腎動脈14は、ステント材料によって塞がれるであろう。
【0163】
対照的に、ステント44’を使用すると、首部分48のステント材料が、大動脈壁から離れている、したがって大動脈11から腎動脈14への開口から離れている。
【0164】
血流は、大動脈ステント44’のすべてのメッシュを通過することができる。したがって、血液は、首部分48のメッシュと大動脈壁との間の空間に進入する。
【0165】
したがって、血液は、腎動脈14の上およびステント44’の外側から、すなわちステント44’と大動脈壁との間から腎動脈14に流れるか、またはステント44’から横方向に直接腎動脈14に流れることができる。
【0166】
したがって、腎動脈14への血流は、ステント材料によって妨げられ得ない。
【0167】
さらに、首部分45のメッシュは、密封部分46および固定部分47と同等かそれ以上の大きさにすることができる。
【0168】
図11は、図10の説明図を示しているが、胴体部分29は、ここでは、2つの別個のステント、すなわち固定ステント50と補強ステント51によって固定され、補強されている。
【0169】
補強ステント51の主な機能は管腔内プロテーゼ27の胴体部分29を構造的に補強することであり、補強ステント51は、自己拡張型またはバルーン拡張型のいずれかの標準的なステントとすることができる。
【0170】
しかしながら、固定ステント50は、3つの部分、すなわち遠位固定部分52、近位密封部分53、および遠位固定部分52と近位密封部分53との間に設けられた首部分54を有する。
【0171】
固定部分52は、上記した胴体補強ステント44および44’の場合の固定部分45と同じ機能を有する。
【0172】
固定部分52の機能は、ステント50および結果として管腔内プロテーゼ27を大動脈11に固定することである。
【0173】
このため、展開された固定部分52は、大動脈11の直径に一致する直径を有し、当該技術分野で公知の様式で大動脈11の壁に摩擦係合する。
【0174】
密封部分53は、上記した胴体補強ステント44および44’の場合の密封部分47と同じ機能を有する。
【0175】
したがって、密封部分53は、2つの機能を果たす。密封部分53は、大動脈11の壁に摩擦係合して、固定ステント50および結果として管腔内プロテーゼ27を大動脈壁に固定する。さらに、密封部分53は、グラフト・スリーブ32を大動脈壁に押圧してしっかりと密封する。
【0176】
したがって、管腔内プロテーゼ27は、機械的転位から保護され、動脈瘤15の内腔が、血流から遮断される。
【0177】
首部分54は、上記した胴体補強ステント44’の場合の首部分48と同じ機能を有する。
【0178】
首部分54は、大動脈11から腎動脈14への開口とステント材料との間を一定の距離に維持する。したがって、血液が、腎動脈14に自由に流れることができる。
【0179】
この場合も、首部分54のメッシュは、密封部分46および固定部分47と同等かそれ以上の大きさにすることができる。
【0180】
固定ステント50は、プロテーゼ27だけではなく、側血管の開口を跨ぐ固定ステントを必要とする他の管状グラフトに使用することもできる。
【0181】
図11に示されているように、固定ステント50は、これに関連して別のステントと共に利用することができる。
【0182】
このような組み合わせは、固定ステント50と他のステントとすることができ、他のステントは、この例では、固定ステント50の密封部分53の領域で重なっている胴体補強ステント51である。また、重ならないようにステントを展開することも可能である。
【0183】
固定ステント50と別のステントの組み合わせにより、例えば首部分48も有する胴体補強ステント44’と比較して、固定ステント50をより柔軟に使用することができる。これは、この例では、補強ステント51を異なる長さで利用可能であるためであり、これによりステント(50,51)の全長を、患者によって異なる大動脈・腸骨動脈分岐部10と腎動脈14との間の距離に調節できるためである。
【0184】
したがって、固定ステント50を使用すると、管状グラフトを、血管が分岐している部分の近傍にさえも効率的に固定することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワンピース・グラフト・スリーブ(32)を備えた、血管分岐部(10)で展開される管腔内プロテーゼであって、前記グラフト・スリーブ(32)が、
第1のプロテーゼ・ルーメン(30)を画定する分岐部分(28)であって、展開された状態では第1の直径(39)を有し、ステント要素(33)によって補強されている、分岐部分(28)と、
前記第1のプロテーゼ・ルーメン(30)に流体連通した第2のプロテーゼ・ルーメン(31)を画定する胴体部分(29)であって、展開された状態では第2の直径(40)を有する、胴体部分(29)とを備え、
前記胴体部分(29)が、補強用ステント材料を実質的に含まないことを特徴とする、管腔内プロテーゼ。
【請求項2】
前記分岐部分(28)が、自己拡張型ステント要素(33)によって補強されていることを特徴とする、請求項1に記載の管腔内プロテーゼ。
【請求項3】
前記胴体部分(29)が、複数のひだ(34)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の管腔内プロテーゼ。
【請求項4】
前記胴体部分(29)が、その遠位端部で、構造要素(36)によって周方向に補強されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の管腔内プロテーゼ。
【請求項5】
前記構造要素(36)が、少なくとも部分的に自己拡張型ステントであることを特徴とする、請求項4に記載の管腔内プロテーゼ。
【請求項6】
前記構造要素(36)が、ガイドワイヤまたはカテーテルに取り外し可能に接続することができる接続要素(38)を有することを特徴とする、請求項4または5に記載の管腔内プロテーゼ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の管腔内プロテーゼ(27)が装着され、前記管腔内プロテーゼ(27)を血管分岐部(10)に配置するように構成されたカテーテルであって、前記カテーテル(18)が、
ガイドワイヤ(16)を収容するためのガイドワイヤ・ルーメン(22)およびグラフト・アクチュエータ・ルーメン(23)を有するカテーテル本体(21)と、
前記装着された管腔内プロテーゼ(27)を内部で径方向に圧縮して維持する拘束シース(26)と、
前記グラフト・アクチュエータ・ルーメン(23)内に収容されたグラフト・アクチュエータ(24)とを備え、
前記カテーテル(18)が、前記装着された管腔内プロテーゼ(27)が胴体部分(29)を有する領域(20)で捻るまたは曲げることができるように構成され、かつ
前記グラフト・アクチュエータ・ルーメン(23)が、前記領域(20)またはその近位側の開口(24)で終端していることを特徴とする、カテーテル。
【請求項8】
前記グラフト・アクチュエータ(24)が、その遠位端部に、前記胴体部分(29)の遠位端部に取り外し可能に係合するように調節された接続部分(37)を有することを特徴とする、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
展開システムであって、
請求項7または8に記載のカテーテル(18)と、
前記カテーテル(18)に装着された、請求項1〜6のいずれか1項に記載の管腔内プロテーゼ(27)とを備え、
前記カテーテル(18)の前記グラフト・アクチュエータ(24)が、前記装着された管腔内プロテーゼ(27)の前記胴体部分(29)の遠位端部に取り外し可能に接続されていることを特徴とする、展開システム。
【請求項10】
前記グラフト・アクチュエータ(24)が、接続部分(37)を介して前記管腔内プロテーゼ(27)の前記胴体部分(29)の遠位端部に取り外し可能に係合していることを特徴とする、請求項9に記載の展開システム。
【請求項11】
前記グラフト・アクチュエータ(24)が、前記胴体部分(29)の遠位端部の構造要素(36)に取り外し可能に係合していることを特徴とする、請求項9または10に記載の展開システム。
【請求項12】
前記装着された管腔内プロテーゼ(27)の前記胴体部分(29)が、その長手方向軸(35)に沿って圧縮されていることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の展開システム。
【請求項13】
胴体補強ステント(44)が装着された第2のカテーテル(41)をさらに備えることを特徴とする、請求項9〜12のいずれか1項に記載の展開システム。
【請求項14】
前記胴体補強ステント(44)が、首部分(45)を有し、前記首部分(45)が、前記ステント(44)が完全に拡張すると、前記首部分(45)の遠位端部および近位端部の直径よりも小さい直径を有することを特徴とする、請求項13に記載の展開システム。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか1項に記載の展開システム(17)を用いて、血管分岐部(10)で請求項1〜6のいずれか1項に記載の管腔内プロテーゼ(27)を展開する方法であって、
(a)第1の分岐血管(12)から前記展開システムを前記血管分岐部(10)内に導入するステップと、
(b)前記管腔内プロテーゼ(27)を解放するために第1の拘束シース(26)を開くまたは引き戻すステップと、
(c)胴体部分(29)を前記血管分岐部(10)の血管内に前進させるステップとを含み、
ステップ(a)の際に、前記展開システムが、前記第1の分岐血管(12)および第2の分岐血管(13)に支持されて、主血管(11)に近接した前記胴体部分(29)の位置で捻れまたは湾曲を形成するように前記展開システムを導入し、
ステップ(c)の際に、前記胴体部分(29)を主血管(11)内に前進させることを特徴とする、方法。
【請求項16】
ステップ(a)の際に、前記展開システム(17)を、ガイドワイヤ(16)を使用して前記血管分岐部(10)内に導入することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(c)の際に、前記胴体部分(29)を、グラフト・アクチュエータ(24)を前方に押すことによって前進させることを特徴とする、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(c)の後、さらなるステップ(d)で、胴体補強ステント(44)が、前記管腔内プロテーゼ(27)を前記主血管(11)に固定し、前記管腔内プロテーゼ(27)を前記胴体部分(29)に沿って補強するように、前記胴体補強ステント(44)を前記胴体部分(29)および前記主血管(11)の領域に配置して拡張させることを特徴とする、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
遠位固定部分(52)、近位密封部分(53)、およびこれらの間に位置する首部分(54)を有する、管状グラフトを血管内に固定するためのステントであって、前記首部分(54)が、前記ステントの展開された状態では、前記ステント(50)の前記遠位固定部分(52)および前記近位密封部分(53)の直径よりも小さい直径を有する、ステント。
【請求項20】
前記管状グラフトを補強するための、前記近位密封部分(53)の近位側の補強部分を備えることを特徴とする、請求項19に記載のステント。
【請求項21】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の管腔内プロテーゼ(27)および請求項19または20に記載のステント(50)を含むキット。
【請求項22】
側血管の開口の下の血管に管状グラフトを固定する方法であって、前記グラフトを適切な位置に配置するステップと、前記グラフトを請求項19または20に記載のステントを使用して固定するステップとを含む、方法。
【請求項23】
前記管状グラフトが、請求項1〜6のいずれか1項に記載の管腔内プロテーゼ(27)であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記グラフトを適切な位置に配置するステップと前記グラフトを固定するステップとを、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法の後に行うことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項1】
ワンピース・グラフト・スリーブ(32)を備えた、血管分岐部(10)で展開される管腔内プロテーゼであって、前記グラフト・スリーブ(32)が、
第1のプロテーゼ・ルーメン(30)を画定する分岐部分(28)であって、展開された状態では第1の直径(39)を有し、ステント要素(33)によって補強されている、分岐部分(28)と、
前記第1のプロテーゼ・ルーメン(30)に流体連通した第2のプロテーゼ・ルーメン(31)を画定する胴体部分(29)であって、展開された状態では第2の直径(40)を有する、胴体部分(29)とを備え、
前記胴体部分(29)が、補強用ステント材料を実質的に含まないことを特徴とする、管腔内プロテーゼ。
【請求項2】
前記分岐部分(28)が、自己拡張型ステント要素(33)によって補強されていることを特徴とする、請求項1に記載の管腔内プロテーゼ。
【請求項3】
前記胴体部分(29)が、複数のひだ(34)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の管腔内プロテーゼ。
【請求項4】
前記胴体部分(29)が、その遠位端部で、構造要素(36)によって周方向に補強されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の管腔内プロテーゼ。
【請求項5】
前記構造要素(36)が、少なくとも部分的に自己拡張型ステントであることを特徴とする、請求項4に記載の管腔内プロテーゼ。
【請求項6】
前記構造要素(36)が、ガイドワイヤまたはカテーテルに取り外し可能に接続することができる接続要素(38)を有することを特徴とする、請求項4または5に記載の管腔内プロテーゼ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の管腔内プロテーゼ(27)が装着され、前記管腔内プロテーゼ(27)を血管分岐部(10)に配置するように構成されたカテーテルであって、前記カテーテル(18)が、
ガイドワイヤ(16)を収容するためのガイドワイヤ・ルーメン(22)およびグラフト・アクチュエータ・ルーメン(23)を有するカテーテル本体(21)と、
前記装着された管腔内プロテーゼ(27)を内部で径方向に圧縮して維持する拘束シース(26)と、
前記グラフト・アクチュエータ・ルーメン(23)内に収容されたグラフト・アクチュエータ(24)とを備え、
前記カテーテル(18)が、前記装着された管腔内プロテーゼ(27)が胴体部分(29)を有する領域(20)で捻るまたは曲げることができるように構成され、かつ
前記グラフト・アクチュエータ・ルーメン(23)が、前記領域(20)またはその近位側の開口(24)で終端していることを特徴とする、カテーテル。
【請求項8】
前記グラフト・アクチュエータ(24)が、その遠位端部に、前記胴体部分(29)の遠位端部に取り外し可能に係合するように調節された接続部分(37)を有することを特徴とする、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
展開システムであって、
請求項7または8に記載のカテーテル(18)と、
前記カテーテル(18)に装着された、請求項1〜6のいずれか1項に記載の管腔内プロテーゼ(27)とを備え、
前記カテーテル(18)の前記グラフト・アクチュエータ(24)が、前記装着された管腔内プロテーゼ(27)の前記胴体部分(29)の遠位端部に取り外し可能に接続されていることを特徴とする、展開システム。
【請求項10】
前記グラフト・アクチュエータ(24)が、接続部分(37)を介して前記管腔内プロテーゼ(27)の前記胴体部分(29)の遠位端部に取り外し可能に係合していることを特徴とする、請求項9に記載の展開システム。
【請求項11】
前記グラフト・アクチュエータ(24)が、前記胴体部分(29)の遠位端部の構造要素(36)に取り外し可能に係合していることを特徴とする、請求項9または10に記載の展開システム。
【請求項12】
前記装着された管腔内プロテーゼ(27)の前記胴体部分(29)が、その長手方向軸(35)に沿って圧縮されていることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の展開システム。
【請求項13】
胴体補強ステント(44)が装着された第2のカテーテル(41)をさらに備えることを特徴とする、請求項9〜12のいずれか1項に記載の展開システム。
【請求項14】
前記胴体補強ステント(44)が、首部分(45)を有し、前記首部分(45)が、前記ステント(44)が完全に拡張すると、前記首部分(45)の遠位端部および近位端部の直径よりも小さい直径を有することを特徴とする、請求項13に記載の展開システム。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか1項に記載の展開システム(17)を用いて、血管分岐部(10)で請求項1〜6のいずれか1項に記載の管腔内プロテーゼ(27)を展開する方法であって、
(a)第1の分岐血管(12)から前記展開システムを前記血管分岐部(10)内に導入するステップと、
(b)前記管腔内プロテーゼ(27)を解放するために第1の拘束シース(26)を開くまたは引き戻すステップと、
(c)胴体部分(29)を前記血管分岐部(10)の血管内に前進させるステップとを含み、
ステップ(a)の際に、前記展開システムが、前記第1の分岐血管(12)および第2の分岐血管(13)に支持されて、主血管(11)に近接した前記胴体部分(29)の位置で捻れまたは湾曲を形成するように前記展開システムを導入し、
ステップ(c)の際に、前記胴体部分(29)を主血管(11)内に前進させることを特徴とする、方法。
【請求項16】
ステップ(a)の際に、前記展開システム(17)を、ガイドワイヤ(16)を使用して前記血管分岐部(10)内に導入することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(c)の際に、前記胴体部分(29)を、グラフト・アクチュエータ(24)を前方に押すことによって前進させることを特徴とする、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(c)の後、さらなるステップ(d)で、胴体補強ステント(44)が、前記管腔内プロテーゼ(27)を前記主血管(11)に固定し、前記管腔内プロテーゼ(27)を前記胴体部分(29)に沿って補強するように、前記胴体補強ステント(44)を前記胴体部分(29)および前記主血管(11)の領域に配置して拡張させることを特徴とする、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
遠位固定部分(52)、近位密封部分(53)、およびこれらの間に位置する首部分(54)を有する、管状グラフトを血管内に固定するためのステントであって、前記首部分(54)が、前記ステントの展開された状態では、前記ステント(50)の前記遠位固定部分(52)および前記近位密封部分(53)の直径よりも小さい直径を有する、ステント。
【請求項20】
前記管状グラフトを補強するための、前記近位密封部分(53)の近位側の補強部分を備えることを特徴とする、請求項19に記載のステント。
【請求項21】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の管腔内プロテーゼ(27)および請求項19または20に記載のステント(50)を含むキット。
【請求項22】
側血管の開口の下の血管に管状グラフトを固定する方法であって、前記グラフトを適切な位置に配置するステップと、前記グラフトを請求項19または20に記載のステントを使用して固定するステップとを含む、方法。
【請求項23】
前記管状グラフトが、請求項1〜6のいずれか1項に記載の管腔内プロテーゼ(27)であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記グラフトを適切な位置に配置するステップと前記グラフトを固定するステップとを、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法の後に行うことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−500748(P2013−500748A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521969(P2012−521969)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005552
【国際公開番号】WO2011/012147
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(508053212)ヨーテック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】JOTEC GmbH
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005552
【国際公開番号】WO2011/012147
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(508053212)ヨーテック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】JOTEC GmbH
【Fターム(参考)】
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