説明

ワークの水平型自動溶接装置及びこれを用いたワークの溶接方法

【課題】 円筒状に曲げ加工した直径の大きいワークをマンドレルにセットする際に、一人の作業員でもってワークをマンドレルに簡単且つ容易にセットすることができると共に、ワークを突合せ溶接する際に穴開き等の溶接欠陥のない溶接を行えるようにする。
【解決手段】 フレーム本体1に水平姿勢で支持されたマンドレル2に円筒状に曲げ加工した金属板製のワークWを支持させ、ワークWの円周方向両端を突合せた状態でクランプ機構9によりマンドレル2の上面側に設けたバックバー3上へ押圧固定し、その突合せ部を溶接装置10により突合せ溶接するようにしたワークWの水平型自動溶接装置に於いて、前記マンドレル2の周囲に、マンドレル2にセットされる直径の大きなワークWを水平姿勢で支持して円筒状に保持するワーク保持装置5を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス板や鋼板等の金属板を円筒状に曲げ加工して成るワークを水平姿勢のマンドレルで支持し、ワークの円周方向両端をマンドレルの上面側に設けたバックバー上で溶接装置により突合せ溶接するワークの水平型自動溶接装置及びこれを用いたワークの溶接方法に係り、特に、直径の大きなワークから温水ボイラのタンクの胴体や各種液体等を保管、運搬するドラム缶の円筒状の胴体を作製するのに用いられるものであり、直径の大きいワークをマンドレルにセットする際に、一人の作業員でもってワークをマンドレルに簡単且つ容易にセットすることができると共に、ワークを突合せ溶接する際に穴開き等の溶接欠陥のない溶接を行えるようにしたワークの水平型自動溶接装置及びこれを用いたワークの溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒状に曲げ加工した金属板製のワークの円周方向両端を突合せ溶接する装置としては、例えば、本件出願人が先に開発した水平型自動溶接装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0003】
図12及び図13は従来の水平型自動溶接装置の一例を示すものであり、当該水平型自動溶接装置は、フレーム本体20に支持され、円筒状に曲げ加工したワークWを支持する水平姿勢の長尺状のマンドレル21と、マンドレル21の上面側に設けた長尺状のバックバー22と、マンドレル21に設けられ、ワークWの円周方向両端がバックバー22上で突合されるようにワークの端面の位置決めを行うセンター位置決め機構(図示省略)と、マンドレル21の上方位置に配設され、ワークWの円周方向両端を突合せた状態でバックバー22上へ押圧固定するクランプ機構23と、マンドレル21の上方位置に配設され、ワークの突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接装置24とから構成されており、マンドレル21にセットしたワークWの円周方向両端をセンター位置決め機構により位置決めすると共に、位置決めされたワークWの円周方向両端をクランプ機構23によりバックバー上で突合せ固定し、その突合せ部をTIG溶接装置24により突合せ溶接して接合するようにしたものである。
【0004】
ところで、前記水平型自動溶接装置に於いては、マンドレル21に円筒状に曲げ加工したワークWをセットする際に、ワークWの直径が比較的小さい場合には、ワークWが円筒状に保持されているため、一人の作業員でもってワークWをマンドレル21にセットすることができる。
【0005】
しかし、温水ボイラのタンクの胴体等に用いる直径の大きなワークWをマンドレル21にセットする際には、図12に示すようにワークWの円周方向両端が自重により外方へ大きく開くため、一人の作業員でもってワークWをマンドレル21にセットすることができなかった。
従って、直径の大きなワークWをセットする際には、二人の作業員がマンドレル21の両サイドに立ってワークWを円筒状に保持しながらマンドレル21にセットしなければならず、極めて作業性に劣ると云う問題があった。
【0006】
又、ワークWの突合せ溶接に於いては、ワークWの突合せ部の両側端にタブ材を隣接する状態で夫々配設し、一方のタブ材に溶接用トーチを臨ませてタブ材と溶接用トーチのタングステン棒との間にアークを発生させ、この初期アークが安定した状態になってから溶接用トーチをワークWの突合せ部に沿って移動させた後、他方のタブ材の上で通電を停止することが行われている。このようにすれば、ワークWの突合せ部を安定したアーク状態で突合せ溶接することができるからである。
【0007】
しかし、タブ材を用いてワークWの円周方向両端を突合せ溶接しても、溶接不良を完全に無くすことは困難であり、ワークWの接合部の終端部に穴開きや溶け落ち等の溶接欠陥が生じると云う問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2003−205369号公報
【特許文献2】特開2006−51531号公報
【特許文献3】特開2007−21566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、円筒状に曲げ加工した直径の大きいワークをマンドレルにセットする際に、一人の作業員でもってワークをマンドレルに簡単且つ容易にセットすることができると共に、ワークを突合せ溶接する際に穴開き等の溶接欠陥のない溶接を行えるようにしたワークの水平型自動溶接装置及びこれを用いたワークの溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、フレーム本体に水平姿勢で支持されたマンドレルに円筒状に曲げ加工した金属板製のワークを支持させ、ワークの円周方向両端を突合せた状態でクランプ機構によりマンドレルの上面側に設けたバックバー上へ押圧固定し、その突合せ部を溶接装置により突合せ溶接するようにしたワークの水平型自動溶接装置に於いて、前記マンドレルの周囲に、マンドレルにセットされる直径の大きなワークを水平姿勢で支持して円筒状に保持するワーク保持装置を配設したことに特徴がある。
【0011】
本発明の請求項2の発明は、ワーク保持装置が、マンドレルの下方に位置してマンドレルにセットされるワークを下面側から支持する下部受けローラと、マンドレルの斜め下方に位置して下部受けローラに支持されたワークの少なくとも一方の側面を側方から保持する側面受けローラと、マンドレルの斜め上方に位置して下部受けローラに支持されたワークの少なくとも円周方向一端部を上方から保持する上部受けローラとを備えており、円筒状に曲げ加工したワークを下部受けローラにより水平姿勢で支持して側面受けローラ及び上部受けローラにより円筒状に保持するようにしたことに特徴がある。
【0012】
本発明の請求項3の発明は、ワーク保持装置が、マンドレルの下方位置に配設されて下部受けローラ及び側面受けローラを昇降自在に支持する受けローラ昇降支持機構を備えており、当該受けローラ昇降支持機構により下部受けローラ及び側面受けローラの高さを調整できる構成としたことに特徴がある。
【0013】
本発明の請求項4の発明は、下部受けローラが、360°回転自在なボールを備えた複数のボールローラをマンドレルに沿って二列に配列して成り、又、側面受けローラ及び上部受けローラが、360°回転自在なボールを備えたボールローラをマンドレルに沿って一列に配列して成り、マンドレルにセットされるワークの外周面を4個所で支持並びに保持するようにしたことに特徴がある。
【0014】
本発明の請求項5の発明は、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載のワークの水平型自動溶接装置を用いて円筒状に曲げ加工した金属板製のワークの突合せ部を突合せ溶接するワークの溶接方法に於いて、直径の大きなワークをワーク保持装置により水平姿勢で支持して円筒状に保持した状態でマンドレルにセットし、マンドレルにセットしたワークの突合せ部終端部分を溶接装置により突合せ溶接する際に、ワークの終端に近づくに従って電流値を徐々に下げてワークの穴開きや溶け落ちを防止するようにしたことに特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載のワークの水平型自動溶接装置は、マンドレルの周囲に直径の大きなワークを水平姿勢で支持して円筒状に保持するワーク保持装置を配設しているため、直径の大きなワークをマンドレルにセットする際に、従来の水平型自動溶接装置のように二人の作業員でワークをマンドレルにセットする必要もなく、一人の作業員でもって直径の大きなワークをマンドレルに簡単且つ容易にセットすることができ、極めて作業性に優れたものとなる。
【0016】
本発明の請求項2に記載のワークの水平型自動溶接装置は、ワーク保持装置が、マンドレルにセットされるワークを下面側から支持する下部受けローラと、下部受けローラに支持されたワークの少なくとも一方の側面を側方から保持する側面受けローラと、下部受けローラに支持されたワークの少なくとも円周方向の一端部を上方から保持する上部受けローラとを備えており、円筒状に曲げ加工したワークを下部受けローラにより水平姿勢で支持して側面受けローラ及び上部受けローラにより円筒状に保持するようにしているため、直径の大きなワークをマンドレルにセットする際に、一人の作業員がマンドレルの片側に立ってワークの他方の側面を保持しながらマンドレルにセットするだけで良く、ワークのマンドレルへのセットを簡単且つ容易に行える。
【0017】
本発明の請求項3に記載のワークの水平型自動溶接装置は、ワーク保持装置が、マンドレルの下方位置に配設されて下部受けローラ及び側面受けローラを昇降自在に支持する受けローラ昇降支持機構を備えており、当該受けローラ昇降支持機構により下部受けローラ及び側面受けローラの高さを調整できる構成としているため、受けローラ昇降支持機構により下部受けローラ及び側面受けローラの高さを調整することによって、ワークの直径が変わってもワークをマンドレルに簡単且つ容易にセットすることができる。
【0018】
本発明の請求項4に記載のワークの水平型自動溶接装置は、下部受けローラが、360°回転自在なボールを備えた複数のボールローラをマンドレルに沿って二列に配列して成り、又、側面受けローラ及び上部受けローラが、360°回転自在なボールを備えたボールローラをマンドレルに沿って一列に配列して成り、マンドレルにセットされるワークの外周面を4個所で支持並びに保持するようにしているため、各受けローラに支持並びに保持されたワークを大きな抵抗を生ずることなしにマンドレルの長手方向へ移動させたり、或いは回転させたりすることができ、マンドレルへのワークのセットをより一層簡単且つ容易に行うことができる。
【0019】
本発明の請求項5に記載のワークの溶接方法は、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載のワークの水平型自動溶接装置を用いて円筒状に曲げ加工した金属板製のワークの突合せ部を溶接装置により突合せ溶接するワークの溶接方法に於いて、直径の大きなワークをワーク保持装置により水平姿勢で支持して円筒状に保持した状態でマンドレルにセットするようにしているため、一人の作業員でもって直径の大きなワークをマンドレルに簡単且つ容易にセットすることができる。
又、本発明の請求項5に記載のワークの溶接方法は、マンドレルにセットしたワークの突合せ部終端部分を溶接装置により突合せ溶接する際に、ワークの終端に近づくに従って電流値を徐々に下げて溶接を出来る限り小さい熱エネルギーで行うようにしているため、ワークの溶接終端部に発生し易い穴開きや溶け落ちを防止することができ、溶接欠陥のない溶接を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図5は本発明の実施の形態に係るワークWの水平型自動溶接装置の全体を示し、当該ワークWの水平型自動溶接装置は、ステンレス板や鋼板等の金属板を円筒状に曲げ加工して成るワークWの円周方向両端を突合せ溶接して円筒状の製品を作製するものであり、特に、直径の大きいワークWから温水ボイラのタンクの胴体やドラム缶の胴体を作製する際に、直径の大きいワークWであっても、一人の作業員でもってワークWを簡単且つ容易にセットすることができると共に、ワークWを突合せ溶接する際に穴開き等の溶接欠陥のない溶接を行えるようにしたものである。
【0021】
即ち、前記ワークWの水平型自動溶接装置は、ボックス状のフレーム本体1と、フレーム本体1に片持ち状態で支持され、ワークWを支持する水平姿勢のマンドレル2と、マンドレル2の上面側に設けたバックバー3と、マンドレル2に設けられ、ワークWの円周方向両端がバックバー3上で突合されるようにワークWの円周方向端面の位置決めを行うセンター位置決め機構4と、マンドレル2の周囲に配設され、マンドレル2にセットされる直径の大きなワークWを水平姿勢で支持して円筒状に保持するワーク保持装置5と、マンドレル2の上面側に配設され、マンドレル2に挿着されたワークWの軸線方向両端に当接する固定側のタブ材6及び可動側のタブ材7と、マンドレル2の上方位置に配設され、可動側のタブ材7をワークW側へ押圧移動させて可動側のタブ材7をワークWの軸線方向端面へ密着させるタブ押し機構8と、マンドレル2の上方位置に配設され、ワークWの円周方向両端部をバックバー3上へ押圧固定するクランプ機構9と、マンドレル2の上方位置に配設され、ワークWの突合せ部を突合せ溶接する溶接装置10(この例では、TIG溶接装置)とから構成されており、円筒状に曲げ加工しワークWをワーク保持装置5により水平姿勢で支持して円筒状に保持しながらマンドレル2にセットし、マンドレル2にセットされてバックバー3上で突合せ固定されたワークWの円周方向両端を溶接装置10により突合せ溶接して接合するようにしたものである。
【0022】
具体的には、前記フレーム本体1は、図1〜図3に示す如く、上部に前方へ水平姿勢で突出する長尺状の上部フレーム1aを有すると共に、下部に上部フレーム1aと同じ方向へ水平姿勢で突出して床面へ設置されるベース1bを備えており、フレーム本体1の内部には、溶接用電源装置、アルゴンガス等の溶接用ガスボンベ、コンプレッサ(何れも図示省略)等が夫々収容されている。
又、上部フレーム1aの上面には、先端部に溶接装置10の溶接条件や電極位置等を設定するタッチパネル式の操作盤11を取り付けた旋回アーム12が旋回自在に配設されている。
【0023】
前記マンドレル2は、図2、図6及び図7に示す如く、下面が開放されたボックス状に形成された長尺状の金属材製の本体部2Aと、本体部2Aの上面に本体部2Aに沿って固定された長尺状のバックバー保持金具2Bと、本体部2Aの基端に設けたフランジ部2Cと、本体部2Aの先端に設けられ、上部フレーム1aの先端部に配設したマンドレル受け13に抜き差し自在に挿入される受け軸2Dとから成り、フランジ部2Cをフレーム本体1の前面に固定することによって、フレーム本体1に片持ち状態で且つ水平姿勢で支持されている。このマンドレル2は、本体部2Aを下面が開放されたボックス状に形成しているため、マンドレル2自体の軽量化を図れると共に、シールドガスの配管(図示省略)等を邪魔にならないように内部に収納することができる。
又、マンドレル2のバックバー保持金具2Bの上面には、長尺状のバックバー3が着脱自在に嵌め込まれる取付け溝2aがマンドレル2の長手方向に沿って形成されている。この取付け溝2aの底面には、アルゴンガス等のシールドガスが流れる細幅のガス溝2bがマンドレル2の長手方向に沿って形成されている。
更に、マンドレル2は、ワークWの突合せ作業時や溶接作業時等に先端側の受け軸2Dがマンドレル受け13により支持されており、フレーム本体1及びマンドレル受け13により両持ち状態となっている。
【0024】
尚、マンドレル受け13は、ロータリーアクチュエータ14により水平位置から鉛直位置に亘って回動するように構成されており、マンドレル受け13を水平位置から鉛直位置へ回動させ、マンドレル受け13に形成した支持穴13aにマンドレル2の受け軸2Dを挿入することによって、マンドレル2の先端部を支持することができるようになっている。
【0025】
前記バックバー3は、図7に示す如く、銅材により断面形状が略長方形の長尺な各柱状に形成した左右のバックバー3′,3′から成り、左右のバックバー3′,3′を対向させた状態で且つ左右のバックバー3′,3′の間にスリット状の溝3aが形成されるようにマンドレル2のバックバー保持金具2Bに形成した取付け溝2a内に着脱自在に嵌め込まれている。このバックバー3は、複数本のボルト(図示省略)によりバックバー保持金具2Bに固定されており、ワークWの円周方向の両端を突合せ溶接する際に余分な熱を吸収してビードの溶け落ちや穴あき、ワークWの熱ひずみ等を防止すると共に、ワークWの突合せ部の裏面側にシールドガスを流して溶接部の酸化を防止するものである。
又、左右のバックバー3′,3′間に形成されたスリット状の溝3aは、センター位置決め機構4のセンタープレート4Aを遊嵌状態で挿入すると共に、アルゴンガス等のシールドガスを流すためのものである。
【0026】
前記センター位置決め機構4は、ワークWの円周方向両端がバックバー3のスリット状の溝3a上で突合されるようにワークWの円周方向端面の位置決めを行うものであり、図6及び図7に示す如く、バックバー3のスリット状の溝3a内に上下動自在に挿入された薄鋼板製の長尺状のセンタープレート4Aと、マンドレル2に設けられ、センタープレート4Aを上下動させるシリンダ構造の駆動部4Bとから構成されている。
【0027】
即ち、センタープレート4Aは、図6、図7及び図9に示す如く、バックバー3のスリット状の溝3a内に遊嵌状態で上下動自在に挿入されており、その上端部がバックバー3の上面から上方へ突出可能になっていると共に、バックバー3の上面から突出した上端部の側面にワークWの円周方向端面が当接するようになっている。このセンタープレート4Aの厚みは、バックバー3のスリット状の溝3aの幅よりも薄くなるように設定されている。その結果、センタープレート4Aをバックバー3のスリット状の溝3aに挿入したときには、センタープレート4Aの側面とバックバー3との間にアルゴンガス等のシールドガスが流れるスリット状の間隙が形成されることになる。
【0028】
一方、駆動部4Bは、図6、図7及び図9に示す如く、マンドレル2のバックバー保持金具2Bの下面にマンドレル2の長手方向に沿って一定間隔ごとに取り付けた複数の縦向き姿勢のシリンダ4aと、各シリンダ4a内にOリング4b介して上下方向へ摺動自在に挿入され、センタープレート4Aを起立姿勢で支持する複数のピストン4cと、バックバー3と各ピストン4cとの間に介設され、各ピストン4cを下方へ附勢してセンタープレート4Aの上端部をバックバー3のスリット状の溝3a内へ位置させる復帰用の圧縮コイルスプリング4dとから構成されており、コンプレッサ(図示省略)からの圧縮空気をシリンダ4a内へ供給すると、ピストン4c及びセンタープレート4Aが圧縮コイルスプリング4dの弾性力に抗して上昇し、センタープレート4Aの上端部がバックバー3の上面から上方へ突出し、又、圧縮空気の供給を停止すると、圧縮コイルスプリング4dの弾性力によりピストン4c及びセンタープレート4Aが下降し、センタープレート4Aの上端部がバックバー3のスリット状の溝3a内へ収納されるようになっている。
【0029】
前記ワーク保持装置5は、マンドレル2にセットされる直径の大きなワークWを水平姿勢で支持して円筒状に保持するものであり、図1〜図3に示す如く、マンドレル2の下方に位置してマンドレル2にセットされるワークWを下面側から支持する下部受けローラ5Aと、下部受けローラ5Aの前方に位置して突合せ溶接するワークWを下部受けローラ5Aへ水平姿勢で送り込む前方受けローラ5Bと、マンドレル2の斜め下方に位置して下部受けローラ5Aに支持されたワークWの一方の側面を側方から保持する側面受けローラ5Cと、マンドレル2の斜め上方に位置して下部受けローラ5Aに支持されたワークWの円周方向一端部を上方から保持する上部受けローラ5Dと、マンドレル2の下方位置に配設されて下部受けローラ5A、前方受けローラ5B及び側面受けローラ5Cを昇降自在に支持する受けローラ昇降支持機構5Eとを備えている。
【0030】
即ち、下部受けローラ5Aは、図2、図3及び図8に示す如く、マンドレル2の下方位置にマンドレル2に沿って並列状に配置された二つの長尺状のボールローラ台5aと、各ボールローラ台5aの上面にマンドレル2に沿って一定間隔ごとに取り付けられ、360°回転自在なボールを備えた複数のボールローラ5bとから成り、マンドレル2に沿って二列に配列されたボールローラ5bがワークWの外周面下面側へ当接してワークWを下面側から支持するものである。この下部受けローラ5Aは、後述する受けローラ昇降支持機構5Eのローラ架台5pの上面に設置固定されており、マンドレル2の下方位置にマンドレル2に沿って配置されている。
【0031】
前方受けローラ5Bは、図1〜図3に示す如く、下部受けローラ5Aの前方位置に並列状に配置された二つの長尺状の前方ボールローラ台5cと、各前方ボールローラ台5cの上面に一定間隔ごとに取り付けられ、360°回転自在なボールを備えた複数のボールローラ5dとから成り、二列に配列されたボールローラ5dによって、ワークWを水平姿勢で支持し、この状態でワークWを下部受けローラ5Aへ送り込めるようになっている。この前方受けローラ5Bは、受けローラ昇降支持機構5Eのローラ架台5pのベース5p′先端部に設けた前方ローラ架台5qの上面に設置固定されており、下部受けローラ5Aと直列状になるように配置されている。
【0032】
側面受けローラ5Cは、図1〜図3に示す如く、マンドレル2の斜め下方位置にマンドレル2に沿って配置された長尺状の支持板5eと、支持板5eにマンドレル2に沿って一定間隔ごとに取り付けられ、360°回転自在なボールを備えた複数のボールローラ5fとから成り、マンドレル2に沿って一列に配列したボールローラ5fが下部受けローラ5Aに支持されたワークWの一方の側面に当接してワークWの一方の側面を側方から保持するものである。この側面受けローラ5Cは、受けローラ昇降支持機構5Eのローラ架台5pの一方の側面に固定したブラケット5gに立設した支柱5hの上端部に取り付けられており、マンドレル2の斜め下方位置にマンドレル2に沿って配置されている。
【0033】
上部受けローラ5Dは、図1に示す如く、マンドレル2の斜め上方位置にマンドレル2に沿って配置され、上部フレーム1aの下面にマンドレル2に沿って取り付けた支持台5iと、支持台5iの下面にマンドレル2に沿って一定間隔ごとに取り付けられ、360°回転自在なボールを備えた複数のボールローラ5jとから成り、マンドレル2に沿って一列に配列したボールローラ5jが下部受けローラ5Aに支持されたワークWの円周方向一端部上面に当接してワークWの円周方向一端部を上方から保持するようにしたものである。
【0034】
受けローラ昇降支持機構5Eは、図1、図2、図4、図5及び図8に示す如く、下部受けローラ5A、前方受けローラ5B及び側面受けローラ5Cを昇降自在に支持し、下部受けローラ5A、前方受けローラ5B及び側面受けローラ5Cの高さをワークWの直径に応じて調整するものであり、フレーム本体1のベース1b前方の床面に設置したリフターベース5kと、リフターベース5kの四隅にシャフトサポート5lを介して立設した四本のガイド軸5mと、四本のガイド軸5mの上端に水平姿勢で固定され、リフターベース5kに対向するテーブル上部板5nと、四本のガイド軸5mにフランジ付リニアブッシュ5oを介して昇降自在に支持され、下部受けローラ5A及び側面受けローラ5Cが取り付けられるローラ架台5pと、ローラ架台5pのベース5p′の先端部に設けられ、前方受けローラ5Bが取り付けられる前方ローラ架台5qと、リフターベース5kとテーブル上部板5nとの間に軸受5rを介して鉛直姿勢で正逆回転自在に支持された二本のボールネジ軸5sと、ローラ架台5pのベース5p′に取り付けられ、ボールネジ軸5sが夫々挿通されるナット5tと、リフターベース5kの上面にモータブラケット5uを介して取り付けた駆動モータ5vと、二本のボールネジ軸5sと駆動モータ5vの駆動軸との間に介設され、駆動モータ5vの回転力を二本のボールネジ軸5sに伝達して二本のボールネジ軸5sを同期的に同じ方向へ正逆回転させるベルト伝動機構5wとから構成されており、駆動モータ5v及びベルト伝動機構5wにより二本のボールネジ軸5sを同期的に同じ方向へ正逆回転させると、廻り止めされたナット5tが各ボールネジ軸5sに沿って上下方向へ往復移動し、ローラ架台5p及び前方ローラ架台5qが昇降するようになっている。これによって、ローラ架台5p及び前方ローラ架台5qに取り付けた下部受けローラ5A、前方受けローラ5B及び側面受けローラ5Cが高さ調整されることになる。
【0035】
尚、下部受けローラ5A、前方受けローラ5B、側面受けローラ5C及び上部受けローラ5Dの各ボールローラ5b,5d,5f,5jの取付けピッチは、各ボールローラ5b,5d,5f,5jに支持並びに保持されたワークWを大きな抵抗を生ずることなしにマンドレル2の長手方向へ円滑且つスムースに移動させたり、或いは回転させたりすることができる程度に設定されている。この実施の形態に於いては、各ボールローラ5b,5d,5f,5jの取付けピッチは、100mmに設定されている。
又、下部受けローラ5A、前方受けローラ5B、側面受けローラ5C及び上部受けローラ5Dの各ボールローラ5b,5d,5f,5jは、何れもボール受けに鋼球製のボールを360°回転自在に保持させたものであり、同一の形状及び同一の構造に構成されている。
【0036】
前記固定側のタブ材6及び可動側のタブ材7は、ワークWの円周方向両端を突合せ溶接する際に、ワークWの突合せ部を安定したアーク状態で突合せ溶接してワークWの溶接始端部及び溶接終端部に穴開きや溶け落ち等の欠陥のない突合せ溶接を行えるようにするものである。
【0037】
即ち、固定側のタブ材6は、銅材によりブロック状に形成されており、図2、図5及び図6に示す如く、マンドレル2の基端部上面にタブ固定台15を介して固定され、マンドレル2に挿着されたワークWの軸線方向一端へ当接するようになっている。
又、可動側のタブ材7は、ワークWと同じ材質の金属板又は他の材質の金属板により幅が狭くて長さの短い長方形状に形成されており、図6、図9及び図10に示す如く、マンドレル2の先端部上面側のバックバー3上にマンドレル2の軸線方向へ移動自在に且つ交換可能に載置され、後述するタブ押し機構8によりマンドレル2に挿着されたワークW側へ押圧されてワークWの軸線方向他端へ当接するようになっている。
【0038】
前記タブ押し機構8は、マンドレル2の先端部上方位置で且つフレーム本体1の上部フレーム1a先端部側に配設され、バックバー3上に載置された可動側のタブ材7をマンドレル2に挿着されたワークW側へ押圧移動させてワークWの軸線方向端面へ密着させるものであり、図6、図9及び図10に示す如く、上部フレーム1aの上面に配設した溶接装置10のガイドレール10aにマンドレル2の長手方向へ移動自在に支持され、所定の位置で固定される移動台8aと、移動台8aの下面に固定台用取付け台8bを介して垂設され、下端部にマンドレル2に沿う支持金具8c′を突設した固定台8cと、固定台8cにガイドレール8dを介して昇降自在に支持され、自重により下降するスライド本体8eと、スライド本体8eの下端にマンドレル2に沿って固定されたスライド板用固定板8fと、スライド板用固定板8fの下面側にガイドレール8gを介してマンドレル2の長手方向へ移動自在に支持されたスライド板8hと、スライド板8hの下面側に固定され、バックバー3上を摺動してバックバー3上に載置した可動側のタブ材7をマンドレル2に挿着されたワークW側へ押圧するタブ押し金具8iと、一端部がスライド板8hに連結され、他端部がスライド板用固定板8fに摺動自在に挿通された連結シャフト8jと、連結シャフト8jの他端部に連結ピン8kを介して揺動自在に連結され、下端部側が固定台8cの支持金具8c′に当接する動作軸8lと、スライド板用固定板8fとスライド板8hとの間に介設され、スライド板8h及びタブ押し金具8iをマンドレル2に挿着されたワークW側へ押圧附勢すると共に、動作軸8lの下端部側を固定台8cの支持金具8c′に当接させる圧縮コイルスプリング8mとから構成されている。
【0039】
而して、このタブ押し機構8によれば、先ず、圧縮コイルスプリング8mによりワークW側へ押圧附勢されたタブ押し金具8iの先端とマンドレル2に挿着したワークWの軸線方向端面との距離が可動側のタブ材7の長さよりも若干短くなるように移動台8aの位置を移動調整し、次に、この位置で動作軸8lを図9に示すように固定台8cの支持金具8c′を支点にして揺動させ、スライド板8h及びタブ押し金具8iを圧縮コイルスプリング8mの弾性力に抗してワークWから離間する方向へ後退させ、その後、可動側のタブ材7をワークWの端面とタブ押し金具8iとの間のバックバー3上に載せて動作軸8lから手を離す。そうすると、スライド板8h及びタブ押し金具8iが圧縮コイルスプリング8mの弾性力によりワークW側へ移動し、図10に示すように可動側のタブ材7がタブ押し金具8i及び圧縮コイルスプリング8mによりワークW側へ押圧附勢されてワークWの軸線方向端面に密着状態で当接することになる。
更に、このタブ押し機構8は、動作軸8lを固定台8cの支持金具8c′を支点にして揺動させると、スライド板8h及びタブ押し金具8iが圧縮コイルスプリング8mの弾性力に抗してワークWから離間する方向へ後退して可動側のタブ材7の押圧附勢状態が解除され、又、動作軸8lを持って上方へ引き上げると、スライド本体8e、スライド板用固定板8f、スライド板8h及びタブ押し金具8i等が固定台8cに沿って上方へ移動し、これらをバックバー3から離間する方向へ持ち上げることができる。
【0040】
前記クランプ機構9は、マンドレル2に支持されたワークWの円周方向両端を突合せた状態でバックバー3上へ押圧固定するものであり、図11に示す如く、マンドレル2の上方位置に対向状に配置され、上部フレーム1aの下面側にヒンジ9aを介して上下方向へ揺動自在に支持された左右の熱吸収板用取付板9bと、左右の熱吸収用取付板9bの先端部に固定され、マンドレル2に支持されたワークWの円周方向両端部上面に当接して溶接時の余分な熱を吸収する左右の熱吸収板9cと、マンドレル2の上方位置に対向状に配置され、上部フレーム1aの下面側にヒンジ9aを介して上下方向へ揺動自在に支持された左右のクランプ板用取付板9dと、左右のクランプ板用取付板9dの先端部に固定され、マンドレル2に支持されたワークWの円周方向両端部上面に熱吸収板9cを介して当接する左右のクランプ板9eと、上部フレーム1aと左右のクランプ板用取付板9dとの間に介設され、圧縮空気の供給により膨張して左右のクランプ板用取付板9dを下方へ押圧して左右のクランプ板9eを下方へ押し下げると共に、左右の熱吸収板9cを間接的に下方へ押し下げる左右のエアーチューブ9fと、左右の熱吸収板用取付板9b及び熱吸収板9cと左右のクランプ板用取付板9d及びクランプ板9eを上方へ附勢する引張りスプリング(図示省略)等から構成されている。
【0041】
而して、このクランプ機構9によれば、コンプレッサからエアーチューブ9fに圧縮空気を供給してエアーチューブ9fを膨張させると、左右のクランプ板用取付板9d、左右のクランプ板9e、左右の熱吸収用取付け板9b及び左右の熱吸収板9cが引張りスプリングの弾性力に抗して下方へ揺動し、左右のクランプ板9eがマンドレル2に支持されたワークWの円周方向両端部上面に左右の熱吸収板9cを介して間接的に当接してワークWの円周方向両端部をバックバー3上へ押圧固定し、又、圧縮空気の供給を停止すると、左右のクランプ板用取付板9d、左右のクランプ板9e、左右の熱吸収用取付け板9b及び左右の熱吸収板9cが引張りスプリングの弾性力により上方へ揺動し、ワークWの押圧状態が解除されるようになっている。
【0042】
前記溶接装置10(TIG溶接装置)は、図2、図6及び図11に示す如く、上部フレーム1aの上面にガイドレール10aを介してマンドレル2の長手方向へ往復移動自在に配設した走行台10bと、走行台10bにアーム部材10cを介して昇降自在に支持され、先端部からアルゴンガス等のシールドガスを流すと共に、タングステン電極棒10d′を挿着した溶接用トーチ10dと、溶接用トーチ10dを昇降動させるサーボモータ等から成るトーチ上下駆動装置(図示省略)と、溶接状況(タングステン電極棒の消耗やアークの状態等)やワークWの端部の突合せ状況を確認する監視カメラ(図示省略)と、溶接開始前に於けるタングステン電極棒10d′とワークWの間隙設定を容易にし、溶接中に於けるタングステン電極棒10d′とワークWの接触事故を直ちに検知する電極接触検知装置(図示省略)と、走行台10bをマンドレル2の長手方向へ往復走行させるモータ10e′及びボールネジ機構10e″から成る駆動装置10e等から構成されており、ワークWの突合せ部を突合せ溶接する際に溶接用トーチ10dの先端が自動的に高さ調整され且つ走行台10b及びこれに支持された溶接用トーチ10dが所定の速度でワークWの突合せ部に沿って直線移動するようになっている。
又、溶接装置10は、マンドレル2にセットしたワークWの突合せ部終端部分を突合せ溶接する際に、ワークWの突合せ部終端に近づくに従って電流値を徐々に下げる、いわゆるダウンスロープ制御を行うように駆動制御されている。この実施の形態では、溶接装置10は、溶接用トーチ10cがワークWの突合せ部終端から約20mmの位置に来たときに溶接の電流値を徐々に下げるように駆動制御されている。
【0043】
次に、上述したワークWの水平型自動溶接装置を用いて円筒状に曲げ加工したワークWの円周方向両端を突合せ溶接する場合について説明する。
【0044】
尚、ワークWには、厚みが0.8mm〜1.0mmのステンレス鋼板を直径600mm、長さ1600mmの円筒状に曲げ加工したワークWが使用されている。このワークWは、温水ボイラのタンクの胴体を形成するものである。又、溶接電流、アーク長、シールドガスの供給量、溶接用トーチ10dの走行速度、タングステン電極棒10d′の先端形状等の溶接条件は、ワークWの材質、板厚、幅等に応じて最適の条件下に設定されていることは勿論である。
【0045】
先ず、作業員は、マンドレル2の先端部をマンドレル受け13により支持して長尺状のマンドレル2の撓みを防止すると共に、マンドレル2に設けたセンター位置決め機構4のセンタープレート4Aを駆動部4Bにより上昇させてセンタープレート4Aの上端部をバックバー3の上面から上方へ突出させる。
【0046】
次に、作業員は、ワークWをその円周方向両端が上を向く状態で前方受けローラ5B上に水平姿勢で載せ、ワーク保持装置5からマンドレル2にワークWを挿着できるようにワークWの直径に応じて受けローラ昇降支持機構5Eにより下部受けローラ5A、前方受けローラ5B及び側面受けローラ5Cの高さを調整し、この状態でワークWを前方受けローラ5B上で滑らせてマンドレル2側へ移動させ、下部受けローラ5A上へ送り込んでマンドレル2へ挿着する。
【0047】
即ち、作業員は、マンドレル2の側面受けローラ5Cを配置した側と反対側の位置に立ち、ワークWの円周方向両端が開かないようにワークWを円筒状に保持しながら前方受けローラ5B上でマンドレル2側へ滑らせ、ワークWの一方の側面が側面受けローラ5Cに、又、ワークWの円周方向一端部が上部受けローラ5Dに夫々保持されるようにワークWを前方受けローラ5Bから下部受けローラ5Aへ送り込んでマンドレル2へ挿着する。
このとき、下部受けローラ5Aへ送り込まれたワークWは、下面側が下部受けローラ5Aに支持されていると共に、一方の側面が側面受けローラ5Cに、又、円周方向一端部が上部受けローラ5Dに夫々保持されているため、作業員はワークWの他方の側面を保持するだけでワークWを円筒状に保つことができる。その結果、一人の作業員でもってワークWをマンドレル2に挿着することができる。
【0048】
尚、この実施の形態に於いては、マンドレル2の先端部をマンドレル受け13で支持してからマンドレル2にワークWを挿着するようにしたが、他の実施の形態に於いては、マンドレル2にワークWを挿着してからマンドレル2の先端部をマンドレル受け13で支持するようにしても良い。
【0049】
ワークWをマンドレル2に挿着したら、マンドレル2に挿着したワークWの円周方向一端(ワークWの側面受けローラ5C及び上部受けローラ5Dに保持されている方の一端)をセンタープレート4Aの上端部側面に当接させると共に、センタープレート4Aに当接させた方のワークWの円周方向一端部の側端(ワークWの軸線方向一端)を固定側のタブ材6に当接させ、この状態でクランプ機構9の一方のクランプ板9e(センタープレート4Aに当接しているワークWの一端部上方に位置するクランプ板9e)を下降させ、当該クランプ板9eによりワークWの円周方向一端部をバックバー3上へ押圧固定する。
【0050】
尚、この実施の形態に於いては、センタープレート4Aを予めバックバー3の上方へ突出させていたが、他の実施の形態に於いては、ワークWをマンドレル2に挿着してからセンタープレート4Aをバックバー3の上方へ突出させるようにしても良い。
【0051】
ワークWの円周方向一端部を一方のクランプ板9eによりバックバー3上へ押圧固定したら、センター位置決め機構4の駆動部4Bに供給されている圧縮空気の供給を停止する。そうすると、復帰用の圧縮コイルスプリング4dの弾性力によりセンタープレート4Aが下降し、センタープレート4Aの上端部がバックバー3のスリット状の溝3a内に収納される。
【0052】
センタープレート4Aが下降したら、ワークWの円周方向他端を目視によって先にバックバー3上に押圧固定されたワークWの円周方向一端に突合せると共に、ワークWの円周方向他端部の側端(ワークWの軸線方向一端)を固定側のタブ材6に当接させ、この状態でクランプ機構9の他方のクランプ板9eを下降させ、当該クランプ板9eによりワークWの円周方向他端部をバックバー3上に押圧固定する。
【0053】
ワークWの円周方向両端部がクランプ機構9の左右のクランプ板9eによりバックバー3上へ押圧固定されたら、タブ押し機構8をマンドレル2に沿って移動調整し、マンドレル2の先端部上面側のバックバー3上に可動側のタブ材7を載せ、この可動側のタブ材7をタブ押し機構8によりワークWの軸線方向端面へ密着状態で当接させる。
【0054】
そして、ワークWの円周方向両端がバックバー3のスリット状の溝3a上で突合せ固定されたら、バックバー3のスリット状の溝3a内にアルゴンガス等のシールドガスを供給しつつ、溶接装置10によりワークWの突合せ部を突合せ溶接する。
【0055】
即ち、溶接用トーチが下降してタングステン電極棒10d′の先端を固定側のタブ材6の表面に臨ませ、この状態でタングステン電極棒10d′と固定側のタブ材6との間にアークを発させ、このアークが安定した状態になってから走行台10bが駆動装置10eにより前進して溶接用トーチ10dをワークWの突合せ部に沿って所定の速度で走行させ、ワークWの突合せ部を順次突合せ溶接して行き、溶接用トーチ10dが可動側のタブ材7の上へ来た時点で通電を停止してアークをストップする。
【0056】
尚、溶接装置10は、ワークWの突合せ部終端部分を突合せ溶接する際に、ワークWの突合せ部終端に近づくに従って電流値を徐々下げて溶接を出来る限り小さい熱エネルギーで行うようにしているため、ワークWの溶接終端部の穴開きや溶け落ちを防止することができる。又、固定側のタブ材6を溶接の開始点、可動側のタブ材7を溶接の終了点としているため、ワークWの突合せ部を安定したアーク状態で突合せ溶接することができ、溶け落ち等の溶接欠陥の無い突合せ溶接を行えることになる。
【0057】
ワークWの突合せ溶接が終了すると、バックバー3へのシールドガスの供給を停止すると共に、溶接装置10の溶接用トーチ10cが元の位置に復帰する。又、クランプ機構9によるワークWの押圧状態が解除されると共に、マンドレル受け13が鉛直位置から水平位置へ回動してマンドレル2の先端を開放する。
【0058】
最後に、タブ押し機構8を操作して可動側のタブ材7の押圧状態を解除すると共に、タブ押し機構8の動作軸8lによりスライド本体8e、スライド板用固定板8f、スライド板8h及びタブ押し金具8iを固定台8cに沿って持ち上げ、この状態で突合せ溶接されたワークW(温水ボイラのタンクの胴体)をマンドレル2から引き抜く。
このとき、突合せ溶接されたワークWは、下部受けローラ5Aに支持されているため、直径のおきなワークWであってもマンドレル2から簡単且つ容易に引き抜くことができる。
【0059】
このようにして、円筒状に曲げ加工したワークWから温水ボイラのタンクに用いられる胴体が作製される。
【0060】
上述したワークWの水平型自動溶接装置を用いて円筒状に曲げ加工したワークWを突合せ溶接すると、直径の大きなワークWであってもこれをマンドレル2に一人で簡単且つ容易にセットすることができると共に、穴開き等の溶接欠陥のない製品を作製することができる。
【0061】
尚、上記の実施の形態に於いては、ワーク保持装置5の下部受けローラ5AによりワークWを下面側から支持し、ワーク保持装置5の側面受けローラ5C及び上部受けローラ5DによりワークWの一方の側面及びワークWの円周方向一端部を夫々保持するようにしたが、他の実施の形態に於いては、図示していないが、側面受けローラ5C及び上部受けローラ5Dを夫々左右対称状に配設し、下部受けローラ5AによりワークWを下面側から支持し、左右の側面受けローラ5C及び左右の上部受けローラ5DによりワークWの両方の側面及びワークWの円周方向両端部を夫々保持するようにしても良い。
【0062】
又、上記の実施の形態に於いては、下部受けローラ5Aの前方位置に前方受けローラ5Bを配設し、前方受けローラ5Bから下部受けローラ5AへワークWを送り込むようにしたが、他の実施の形態に於いては、前方受けローラ5Bを省略し、下部受けローラ5Aを前方へ延長させて下部受けローラ5Aの前端部側を前方受けローラ5Bの替わりとしても良い。
【0063】
更に、上記の実施の形態に於いては、側面受けローラ5Cをブラケット5gに立設した支柱5hの上端部に取り付けたが、他の実施の形態に於いては、支柱5hをブラケット5gの上面側にマンドレル2側へ移動調整可能に取り付け、側面受けローラ5Cをマンドレル2側へ移動調整可能とし、側面受けローラ5Cとマンドレル2との間隔をワークWの直径に応じて調整できるようにしても良い。即ち、突合せ溶接するワークWの直径が変わった場合には、側面受けローラ5Cが下部受けローラ5Aに支持されるワークWの一方の側面に当接してワークWを円筒状に保持するように支柱5h及び側面受けローラ5Cをマンドレル2側へ移動調整する。これにより、ワークWを円筒状に確実且つ良好に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態にワークの水平型自動溶接装置の正面図である。
【図2】同じくワークの水平型自動溶接装置の側面図である。
【図3】同じくワークの水平型自動溶接装置の平面図である。
【図4】ワークを突合せ溶接する状態を示すワークの水平型自動溶接装置の正面図である。
【図5】図4に示すワークの水平型自動溶接装置の側面図である。
【図6】マンドレル及びセンター位置決め機構の縦断側面図である。
【図7】マンドレル及びセンター位置決め機構の拡大縦断正面図である。
【図8】ワーク保持装置の受けローラ昇降支持機構の縦断側面図である。
【図9】タブ押し機構の拡大縦断側面図である。
【図10】同じくタブ押し機構の拡大縦断側面図である。
【図11】クランプ機構の拡大縦断側面図である。
【図12】従来の水平型自動溶接装置の正面図である。
【図13】従来の水平型自動溶接装置の側面図である。
【符号の説明】
【0065】
1はフレーム本体、2はマンドレル、3はバックバー、5はワーク保持装置、5Aは下部受けローラ、5Cは側面受けローラ、5Dは上部受けローラ、5Eは受けローラ昇降支持機構、5b,5f,5jはボールローラ、9はクランプ機構、10は溶接装置、Wはワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム本体(1)に水平姿勢で支持されたマンドレル(2)に円筒状に曲げ加工した金属板製のワーク(W)を支持させ、ワーク(W)の円周方向両端を突合せた状態でクランプ機構(9)によりマンドレル(2)の上面側に設けたバックバー(3)上へ押圧固定し、その突合せ部を溶接装置(10)により突合せ溶接するようにしたワーク(W)の水平型自動溶接装置に於いて、前記マンドレル(2)の周囲に、マンドレル(2)にセットされる直径の大きなワーク(W)を水平姿勢で支持して円筒状に保持するワーク保持装置(5)を配設したことを特徴とするワークの水平型自動溶接装置。
【請求項2】
ワーク保持装置(5)は、マンドレル(2)の下方に位置してマンドレル(2)にセットされるワーク(W)を下面側から支持する下部受けローラ(5A)と、マンドレル(2)の斜め下方に位置して下部受けローラ(5A)に支持されたワーク(W)の少なくとも一方の側面を側方から保持する側面受けローラ(5C)と、マンドレル(2)の斜め上方に位置して下部受けローラ(5A)に支持されたワーク(W)の少なくとも円周方向一端部を上方から保持する上部受けローラ(5D)とを備えており、円筒状に曲げ加工したワーク(W)を下部受けローラ(5A)により水平姿勢で支持して側面受けローラ(5C)及び上部受けローラ(5D)により円筒状に保持するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のワンプの水平型自動溶接装置。
【請求項3】
ワーク保持装置(5)は、マンドレル(2)の下方位置に配設されて下部受けローラ(5A)及び側面受けローラ(5C)を昇降自在に支持する受けローラ昇降支持機構(5E)を備えており、当該受けローラ昇降支持機構(5E)により下部受けローラ(5A)及び側面受けローラ(5C)の高さを調整できる構成としたことを特徴とする請求項2に記載のワークの水平型自動溶接装置。
【請求項4】
下部受けローラ(5A)は、360°回転自在なボールを備えた複数のボールローラ(5b)をマンドレル(2)に沿って二列に配列して成り、又、側面受けローラ(5C)及び上部受けローラ(5D)は、360°回転自在なボールを備えたボールローラ(5f),(5j)をマンドレル(2)に沿って一列に配列して成り、マンドレル(2)にセットされるワーク(W)の外周面を4個所で支持並びに保持するようにしたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のワークの水平型自動溶接装置。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載のワークの水平型自動溶接装置を用いて円筒状に曲げ加工した金属板製のワーク(W)の突合せ部を突合せ溶接するワーク(W)の溶接方法に於いて、直径の大きなワーク(W)をワーク保持装置(5)により水平姿勢で支持して円筒状に保持した状態でマンドレル(2)にセットし、マンドレル(2)にセットしたワーク(W)の突合せ部終端部分を溶接装置(10)により突合せ溶接する際に、ワーク(W)の終端に近づくに従って電流値を徐々に下げてワーク(W)の穴開きや溶け落ちを防止するようにしたことを特徴とするワークの溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−137267(P2010−137267A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317785(P2008−317785)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(591286823)
【Fターム(参考)】