説明

ワーク分断装置およびそれを用いて製作した表示板

【課題】 スクライブ加工効率の高いワーク分断装置を得る。
【解決手段】
成膜層付き脆性材料よりなるワーク23表面に沿って往復動するユニット基板225上に、スクライブカッター114を有するスクライブブロック106と、往工程で加工可能な第1剥離カッター224aを有する第1剥離ブロック226aと、復工程で加工可能な第2剥離カッター224bを有する第2剥離ブロック226bとを備え、前記スクライブカッター、前記第1剥離カッター、前記第2剥離カッターは、加工状態と非加工状態を夫々独立して選択可能にした。ユニット基板の往復でスクライブ可能になり加工効率が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラスやプラスチック等の基板の切断に使用されるワーク分断装置およびそれを用いて製作した表示板に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器部品等の表示部に使用する表示板、例えば液晶板、EL板、タッチパネル板、あるいは顕微鏡標本の作製に使用するスライドガラス等を造る場合、大型の基板を分割することにより所定の大きさの小型の基板を得る。大型の基板の切断には、分断装置の載物面上に真空吸着等の手段で大型の基板を固定し、基板の片面側に、その外周部が超硬合金、ダイヤモンド等の硬質部材で形成されたホイール状のカッターにより、スクライブと呼ばれる線状の条痕を施した後、切断装置(ブレーカー)で反対面側よりプレス、またはローラー等の押圧手段によりスクライブ線に沿って加圧し、基板のスクライブ溝に発生し、基板面と垂直方向に向かうクラックを進展させて切断する方法が一般的に行われている。
【0003】
図5は背景技術におけるワーク分断装置の側面図であり、図5(a)は、成膜層無しのワークを加工するワーク分断装置を、図5(b)は、成膜層付きのワークを加工するワーク分断装置を、図6は、背景技術としての液晶パネルの素材となる基板の外観を示す斜視図を、図7は、背景技術として、ワーク分断装置の移動ユニットが液晶パネルの素材となる基板上でD方向へ動作中の状態を示す斜視図を、図8は、背景技術として、液晶パネル製造装置を動作させた後の基板の外観を示す斜視図で、図8(a)は、TFT側を、図8(b)は、カラーフィルター側を、図9は、背景技術として、液晶パネルの外観を示す斜視図であり、図9(a)は、表面側を、図9(b)は、裏面側を、図10は、背景技術のワーク分断装置で加工後の基板の断面図をもちいて、スクライブカッター及び剥離カッターの往復工程と加工箇所との関係を示す説明図を、図11は、背景技術としての揺動式スクライブカッターの断面図を示す。
【0004】
先ず、従来のワーク分断装置の一般的な構成と動作を図5(a)を用いながら説明する。
移動ブロック1は本体部9上をコの字状に跨ぐユニット全体であり、左右一対のボールネジ2及びガイド3により、図示しないモータ等の駆動手段及び制御手段により本体部に対し、図5(a)の上下方向に所定量移動可能な構成になっている。移動ブロック1上には、タイミングベルト4が設けられ、このタイミングベルト4にユニット基板5が固定され、該ユニット基板5並びに、その上に設けたスクライブブロック6は、図示しないモータ等の駆動手段によるプーリー7の回転に伴うタイミングベルト4の移動によってガイドレール8に沿って左右に必要量移動可能である。前記移動ブロック1が取り付いている本体部9は、ワークテーブル11、支持台12と一体に構成され、ワークテーブル11には、真空吸着等の固定手段によりワーク13をワークテーブル11上面に固定できる。ユニット基板5上のスクライブブロック6には、図示しない周知の油圧、空圧またはバネ力等の押圧手段で、ガラス基板等のワーク13に対し、スクライブブロック6の下方に設けたスクライブカッター14を所定の荷重で押圧しながら、周知のボールスライド等から成るガイドレール8に沿って移動(例えば右方向に)する時、ワーク13上にスクライブラインを形成する。スクライブブロック6の復工程では前記押圧手段を用いてスクライブカッター14を引込めた状態で当初のユニット基板5の位置に戻る。又、ワークテーブル11および支持台12は、本体部9内に格納されている回転駆動手段により、図5(a)の上方からみて90°回転可能である。この構成により、ワークテーブル11上のワーク13には格子状にスクライブを施すことが可能であり、この装置を用いて、ガラス板等の大型のワーク13から小片を切出すことができる。
【0005】
通常のワーク分断装置10では、スクライブブロック6の往復工程の内、1工程(例えば往工程)でスクライブする。しかし、スクライブ作業のスピードアップ化の要請から、往、復の両工程でスクライブする必要が生じ、それを実現する一つの技術として、例えば下記の特許文献1がある。
【0006】
【特許文献1】特許出願公開 特開平9−249427号公報
【0007】
特許文献1に開示された技術を図11を用いながら説明する。揺動部15は揺動可能にカッターホルダー16に支持されている。揺動部15の先端にはスクライブカッター14がついていて、スクライブ時にカッタースライド17(図5のスクライブブロックの下端部を構成する)が移動すると、揺動部15が軸18を中心にカッターホルダー16の軸心位置から一定距離ずれる様に移動し、この結果スクライブカッター14はカッタースライド17の移動に追従して直進する。
【0008】
ところで、大型のワーク基板から切出した小片は、その後、位相差板、偏光板等の成膜層を設け表示板としての完成品として仕上げることがある。この様な場合、近年は、製品完成迄の全工程を考え、製品トータルとしての生産コストを下げるために、表面に予めこれらの成膜層を設けた基板から個別の製品を直接切出すことも多くなった。この様な場合に用いるワーク分断装置は、図5(b)に示したように、ユニット基板25上に、既に説明したスクライブブロック6の他に、先端に成膜層を帯状に剥離するための剥離カッター24を有する剥離ブロック26を備えたワーク分断装置20を用いる。このワーク分断装置20は、ユニット基板25の往工程で、ワーク23表面の成膜層を剥離カッター24によって削り取り、基板を帯状に表出して、帯状剥離領域を形成する。これに後続して、その帯状剥離領域に沿ってスクライブカッター14が基板と接触しながら移動し、スクライブラインを形成する。そして、ユニット基板25の復工程においては、剥離カッター24及びスクライブカッター14は上昇し、ワーク23と非接触状態で復帰する。この後、ユニット基板25を左右一対のボールネジ2及びガイド3により、本体部9に対し、図5(b)の上下方向に所定量移動させ、順次スクライブしたい位置で上記の動作を繰り返す。次いでワーク23を水平面内で90°回転させ、同様に直交するスクライブラインを形成する。
【0009】
この成膜層付きワーク23の加工例として液晶パネルの製造を説明するが、そのための準備として、先ず液晶セルの構成を、次いで、その製造順を図6〜図9を用いて説明していく。
【0010】
図9に示す様に、液晶セル50は、外周を貼り合わされたガラス基板から成り、該ガラス基板の間に液晶が封入された液晶セル、即ち、TFT側ガラス基板31と、カラーフィルター側ガラス基板セル41より成り、TFT側ガラス基板31の一方向面側がカラーフィルター側ガラス基板41の側面よりも突出している。その突出部32の内面側には、液晶パネル駆動用の接続端子32Aが形成されている。接続端子32Aには液晶セル50が液晶表示装置に搭載された状態で電気的な信号を受け取って液晶セル50を点灯させるためのFPC(Flexible Printed Circuit)や、COG(Chip On Glass)が接続される。この液晶セル50はバックライト型の液晶表示装置に適用されるものであり、各液晶セル50の外面には略全域に亘って偏光板(TFT側偏光板33、カラーフィルター側偏光板43)が貼り付けられている。
【0011】
図6に示した様に、液晶セル50を製造する為の素材としての液晶パネル基板60は、液晶パネル用ガラス基板61を主構成要素とし、この液晶パネル用ガラス基板61は、相互に貼りあわされた一対のTFT側大版ガラス基板30、及びカラーフィルター側大版ガラス基板40からなる。この液晶パネル用ガラス基板61には、格子状に分割配置、即ち、隣接配置された複数のTFT側ガラス基板31およびカラーフィルター側ガラス基板41が形成されており、各一対のTFT側ガラス基板31およびカラーフィルター側ガラス基板41間には液晶が封入されている。またTFT側大版ガラス基板30、カラーフィルター側大版ガラス基板40の各外面には、全面を覆うように、夫々TFT側偏光板62、カラーフィルター側偏光板63が貼り付けられている。これらTFT側偏光板62、カラーフィルター側偏光板63の各外面には、保護用の成膜層が積層されている。(図示省略)
【0012】
この大型の液晶パネル基板60をTFT側が上になる様にガラス分断装置(この場合は、液晶パネル製造装置)のベット上にセットする。図7中の移動ユニット70は、図5(b)におけるガラス分断装置20の剥離ブロック26とスクライブブロック6の機能を抽出してモデル化したものであるが、この移動ユニット70が隣接するTFT側ガラス基板セル同士の境界上を液晶パネル基板60の端から端まで一方向に移動すると、TFT側偏光板62が剥離カッター24によって、切屑71を出しながら削り取られ、TFT側大版ガラス基板30が帯状に表出して、帯状剥離領域72が形成される。これに後続して、その帯状剥離領域72に沿ってスクライブカッター14が移動し、スクライブライン73が形成されていく。その後、液晶パネル基板60を水平面内で平行移動させ、順次境界に対して上記の動作を繰り返し、次いで液晶パネル基板60を水平面内で90°回転させ、今度は直交するスクライブライン73を形成する。図8(a)参照。
【0013】
次いで、液晶パネル基板60を裏返し、カラーフィルター側に対し、上記の動作を繰返す訳だが、今度は、TFT側に対する動作と若干異なる。つまり、TFT側ガラス基板31の境界に対向するカラーフィルター側ガラス基板41の境界とともに、TFT側ガラス基板31に突出部32(図8(b)、図9参照)を形成すべく、各々所定距離を隔てて突出境界を設定する。そしてカラーフィルター側ガラス基板41の境界74、突出形成境界75と交互に順に液晶パネル基板60の端から端まで一方向に移動していく。これにより、カラーフィルター側偏光板63が剥離カッター24によって削り取られ、カラーフィルター側ガラス基板40が帯状に表出して帯状剥離領域72が交互に形成され、これに後続して帯状剥離領域72に沿ってスクライブカッター14が移動し、スクライブラインが形成されていく。その後、液晶パネル基板60を水平面内で90°回転させ、TFT側ガラス基板31の境界に対向するカラーフィルター側ガラス基板41の境界に対して上記の動作を繰り返しスクライブを形成する。
【0014】
その後、必要に応じて液晶パネル基板60に負荷を与え、一対のTFT側ガラス基板31、カラーフィルター側ガラス基板41毎に分断する。その際、カラーフィルター側ガラス基板40におけるカラーフィルター側ガラス基板境界74と突出形成境界75間に存在する部分は不要部分76として除去される。これにより、TFT側ガラス基板31に突出部32が形成される。最後にこの突出部32に設けられた接続端子にCOGやFPCを接続し、表示板としての液晶セル50が完成する。
【0015】
以上、表示板としての生産性をあげるため、成膜層付きの大型ガラス基板を加工する場合の代表例として、大型のガラス基板から小型のガラス基板へワーク分断装置を用いて液晶パネルの製造を例にあげてその製造方法を説明してきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
背景技術の中で説明したように、成膜層の無い基板を加工する場合は、生産性をあげるために往復で加工することが行われた。しかし、従来のワーク分断装置を用いた場合、液晶パネル基板60の様な成膜層を有する大型基板を、復工程でもスクライブすることは不可能であった。このため、従来のワーク分断装置で成膜層付き大型基板を加工する場合、生産性向上という点で限界があった。この様子を、図8(b)のB−B断面図である図10を用いて改めて説明すると、往工程でのみ加工し、復工程は空(ワーク加工無し)で戻らざるを得ないので、例えば、図示のスクライブ箇所(計6箇所で、図8(b)のB−B断面方向で見た場合に限ると、液晶セル2個を切出す回数に相当する)に帯状剥離領域72を形成し、スクライブライン73を加工する為のトータルのユニット基板25の往復回数は6回にも達し、生産性向上の障害となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記課題を解決するために成されたものである。解決する手段として、本発明の請求項1記載に係わる発明は、成膜層が形成されたガラスあるいはプラスチック等の脆性材料よりなるワークを、ワークテーブルに固定し、複数に分断するワーク分断装置において、該ワークの表面に沿って相対的に往復動作をするユニット基板を備え、該ユニット基板上には、垂直移動可能であると同時にユニット基板の移動方向に揺動可能であるスクライブカッターを先端に有するスクライブブロックと、垂直移動可能である剥離カッターを先端に有する剥離ブロックとを備え、且つ、該スクライブカッター及び該剥離カッターが、ワークに押し当てたワーク加工状態と、ワークから離したワーク非加工状態のいずれかを夫々独立して選択可能とする制御部を備えたことを特徴とするワーク分断装置である。
【0018】
また、本発明の請求項2記載に係わる発明は、前記ワークに対して前記剥離ブロックが先行し、前記スクライブブロックが後追いする方向に前記ユニット基板が動作する時に、該剥離ブロックに備えた剥離カッターにて前記成膜層に作製した帯状剥離領域内に、スクライブブロックに備えたスクライブカッターを用いて第1のスクライブラインを作製し、前記スクライブブロックが先行し、前記剥離ブロックが後追いする方向に、前記ワークに対して前記ユニット基板が動作する時に、前記成膜層に作製した該帯状剥離領域内に、スクライブブロックに備えたスクライブカッターを用いて第2のスクライブラインを作製することを特徴とするワーク分断装置である。
【0019】
また、本発明の請求項3記載に係わる発明は、成膜付きワークを、ワークテーブルに固定し、複数に分断するガラス分断装置において、該ワークの表面に沿って相対的に往復動作をするユニット基板を備え、該ユニット基板上には、垂直移動可能であると同時にユニット基板の移動方向に揺動可能であるスクライブカッターを先端に有するスクライブブロックと、該スクライブブロックの一方端に位置し、垂直移動可能なる第1剥離カッターを、刃先が該スクライブブロックより離れる方向に向けて取付けた第1剥離ブロックと、該スクライブブロックの他方端に位置し、垂直移動可能なる第2剥離カッターを、刃先が該スクライブブロックより離れる方向に向けて取付けた第2剥離ブロックを備え、且つ、該スクライブカッター及び該第1剥離カッター及び該第2剥離カッターが、ワークに押し当てたワーク加工状態と、ワークから離したワーク非加工状態のいずれかを夫々独立して選択可能とする制御部を備えたことを特徴とするワーク分断装置である。
【0020】
また、本発明の請求項4記載に係わる発明は、前記第1剥離ブロックが先行し、前記スクライブブロックが後追いする方向に、前記ワークに対して前記ユニット基板が動作する時に、該第1剥離ブロックに備えた第1剥離カッターにて前記成膜層に作製した帯状剥離領域内にスクライブブロックに備えたスクライブカッターを用いて第1のスクライブラインを作製し、前記第2剥離ブロックが先行し、前記スクライブブロックが後追いする方向に、前記ワークに対して前記ユニット基板が動作する時に、該第2剥離ブロックに備えた第2剥離カッターにて、前記成膜層に作製した帯状剥離領域内に、スクライブブロックに備えたスクライブカッターを用いて第2のスクライブラインを作製することを特徴とする請求項3に記載のワーク分断装置である。
【0021】
また、本発明の請求項5記載に係わる発明は、前記ワークはガラス又はプラスチックよりなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載のワーク分断装置である。
【0022】
また、本発明の請求項6記載に係わる発明は、請求項5に記載のワーク分断装置によって製作したことを特徴とする表示板である。
【発明の効果】
【0023】
発明の効果として、請求項1記載に係わる本発明のワーク分断装置は、スクライブカッター及び剥離カッターをワークに押し当てたワーク加工状態か、ワークから離したワーク非加工状態を夫々独立して選択可能となり、この結果、ユニット基板の1往復工程中に加工可能な様式の自由度が高くなり、ワークに応じた加工方式を選択することでワークのスクライブ加工効率をあげることができる。
【0024】
また、請求項2記載に係わる本発明のワーク分断装置は、成膜付きワークに対し、ユニット基板の1往復工程でスクライブラインを2本加工することができるので、簡単な装置構造にもかかわらず成膜付きワークのスクライブ加工効率をあげることができる。
【0025】
また、請求項3記載に係わる本発明のワーク分断装置は、剥離ブロックが2個になるので装置構成は請求項1の装置より多少複雑になるが、請求項1の装置よりユニット基板の1往復工程の中に、より多くの加工様式を盛り込むことが可能になり、またスクライブ加工効率もより高まる。
【0026】
また、請求項4記載に係わる本発明のワーク分断装置は、ユニット基板の1往復工程で、ワーク表面に2本の帯状剥離領域と2本のスクライブラインを加工できるので、スクライブ加工効率が高くなると同時に、請求項2に記載のワーク分断装置の場合に存在したスクライブ加工位置の制限が無くなる。
【0027】
また、請求項5記載に係わる本発明は、ワークを構成する脆性材料が、ガラスまたはプラスチックよりなる、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のワーク分断装置でスクライブ加工する場合、特に加工効果を発揮する。
【0028】
また、請求項6記載に係わる表示板は、スクライブ加工効率が高い本発明のワーク分断装置を使用することで、製造コストを安価に製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に本発明を実施するための最良の形態(以下「実施形態」と略す)を図1〜4を用いて説明する。図1は本発明の第1実施形態のワーク分断装置の側面図を、図2は本発明の第1実施形態のワーク分断装置で加工後の液晶パネル基板の断面図を用いて、スクライブカッター及び剥離カッターの往復工程と加工箇所との関係を示す説明図を、図3は本発明の第2実施形態のワーク分断装置の側面図を、図4は本発明の第2実施形態のワーク分断装置で加工後の液晶パネル基板の断面図をもちいて、スクライブカッター及び剥離カッターの往復工程と加工箇所との関係を示す説明図を示す。ところで、図1、図3に示したに本発明の実施形態のワーク分断装置は、剥離ブロック及び図示しない制御部を除いて背景技術で既に図5を用いて説明したワーク分断装置と同じである。従って、背景技術で説明した構成部品と同一部品は同一符号を付し、説明は省略するか簡単にとどめる。
【0030】
本発明の第1実施形態のワーク分断装置は、図1に示した様に、ユニット基板125上にスクライブブロック106及び剥離ブロック126を備えている。タイミングベルト4に固定されたユニット基板125は、タイミングベルト4の移動によってガイドレール8に沿って移動可能にする。ワークテーブル11および支持台12は図1の上方からみて90°回転可能である。本体部9上をコの字状に跨ぐ移動ブロック1は、左右一対のボールネジ2及びガイド3により本体部9に対し、図1の前後方向所定量移動可能な構成になっている。尚、この第1実施形態では、本体部9、即ちワークテーブル11に対して門型の移動ブロック1が移動する形態を示したが、逆に門型の移動ブロック1に対してワークテーブル11が移動してもよく、相互が相対的に移動可能な構造であれば良いことは勿論である。また、前記スクライブブロック106は、先端にワークをスクライブする為のスクライブカッター114(揺動方式)を有し、スクライブカッター114は、図示しない手段を用いて上下方向に移動可能である。また、前記剥離ブロック126は、先端に、成膜層を帯状に剥離するための幅広剥離カッター124を有し、幅広剥離カッター124は、図示しない手段を用いて上下方向に移動可能である。一般に剥離カッターを用いた成膜層カット幅は、その中に1本のスクライブラインを刻むのに支障無い程度の最小幅であるが、本実施形態の幅広剥離カッター124を用いて、その中にスクライブライン2本を設けるに必要な幅を加工する。
【0031】
このワーク分断装置は、図示しない制御部からのコントロールで以下の様な動作を行うことができる。即ち、油圧等の周知の押圧手段で、幅広剥離カッター124及びスクライブカッター114を、ワーク23に対し、所定の荷重で押圧しながら、周知のガイドレール8に沿って図の左から右方向に往動する。これにより、ワーク23には、幅広の帯状剥離領域及び第1のスクライブラインを刻む。この加工工程が終了したら、移動ブロック1を前方向(又は後方向)に一定量送った後、前記押圧手段を用いて、幅広剥離カッター124をワーク23から離し、スクライブカッター114のみをワーク23に所定の荷重で押圧しながら、前記ガイドレール8に沿って図の右から左方向に復動する。これにより、幅広の帯状剥離領域内に第2のスクライブラインが刻まれる。次に、移動ブロック1を本体部9に対し、図1の前後方向に所定量移動させ、順次、上記の動作を繰り返す。次いでワーク23を水平面内で90°回転させ、同様に直交するスクライブラインを形成する。
【0032】
この実施形態1のワーク分断装置120を用いて液晶セル50を加工する場合を図1、図2を用いて説明する。ワーク23としては、背景技術で説明したと同様に、液晶パネル基板60を用いる。そして、カラーフィルター基板側を加工する場合、往工程では、幅広剥離カッター124で作製した幅広帯状剥離領域172内に、スクライブカッター114で第1スクライブライン173aを形成する。この加工工程終了後、移動ブロック1を前後方向に一定量送った後、復工程に入り、今度は、幅広剥離カッター124は、液晶パネル基板60から離し、スクライブカッター114のみを動作させて、往工程で剥離した幅広帯状剥離領域172内に第2スクライブライン173bを形成する。次に、移動ブロック1を本体部9に対し、図1の前後方向に所定量移動させ、順次、上記の動作を繰り返す。次いで液晶パネル基板60を水平面内で90°回転させ、同様に直交するスクライブラインを形成する。
【0033】
次に、第1実施形態のワーク分断装置120で、液晶パネルの素材となる液晶パネル基板60のTFT基板側をスクライブする場合は、液晶パネル基板60のTFT基板側を表にしてワークテーブル11上面に固定するが、その場合の加工方法は、図2に示した様に、カラーフィルター基板側加工時の往工程の加工のみを用いる。(復工程は、空で帰る)
【0034】
従来のワーク分断装置で液晶パネルを加工する場合、図10を用いて説明した通り、例えば図10図示のスクライブ箇所(計6箇所で、液晶セル2個を切出す回数に相当する)をスクライブする為のユニット基板25のトータルの往復回数は6回に達した。しかし、第1実施形態のワーク分断装置120を用いて液晶セル50を加工する場合は、同一の箇所を加工する時、図2に示した通り4回で済み、第1実施形態のワーク分断装置120は液晶セル50の生産性向上に効果がある。尚、第1実施形態の加工では、図2から明らかの様に、TFT側の偏光板62の幅広帯状剥離領域172の幅が背景技術の場合より少し広くなる。しかし、光学上は偏光板は表示領域を覆う程度の大きさ、つまり、カラーフィルター側と同じであれば十分である。尚、TFT側ガラス基板31の突出部32は成膜で被覆されない為強度が多少弱くなるが、これは、搬送時や組み込み時に欠損等の発生に注意を払えば問題無い。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態のワーク分断装置を、図3、図4を用いながら説明する。
第2実施形態のワーク分断装置220では、第1実施形態と異なって、スクライブブロック106を挟んで、先端に第1剥離カッター224aを有する第1剥離ブロック226aと、先端に第2剥離カッター224bを有する第2剥離ブロック226bとを設けてある。第1剥離カッター224aと第2剥離カッター224bの切刃の向きは180度異なり、第1剥離カッター224aは往工程で剥離カット可能、第2剥離カッター224bは復工程で剥離カット可能である。又、両カッターは、夫々独立して上下動可能である。また、第1剥離カッター224a及び第2剥離カッター224bを用いた成膜層カット幅は、その中に1本のスクライブラインを刻むのに支障無い程度で最小幅である。
【0036】
その他の構成は、図示しない制御部でコントロールする下記の動作順序を除いて第1実施形態と同一である。即ち、第1剥離カッター224a及びスクライブカッター114を、ワーク23に対し、所定の荷重で押圧しながら、図3の左から右方向に往動する。これにより、ワーク23には、第1の帯状剥離領域及び第1のスクライブラインを刻む。この加工工程が終了したら、移動ブロック1を前方向(又は後方向)に一定量送った後、第1剥離カッター224aをワーク23から離し、第2剥離カッター224bとスクライブカッター114をワーク23に対し、所定の荷重で押圧しながら、前記ガイドレール8に沿って図の右から左方向に復動する。これにより、第2の帯状剥離領域内に第2のスクライブラインが刻まれる。次に、移動ブロック1を本体部9に対し、図3の前後方向に所定量移動させ、順次、上記の動作を繰り返す。次いでワーク23を水平面内で90°回転させ、同様に直交するスクライブラインを形成する。
【0037】
第2実施形態のワーク分断装置220で液晶セル50を加工する場合を図4を用いて説明する。カラーフィルター基板側にスクライブラインを加工する時は、往工程では、第1剥離カッター224aで作製した第1帯状剥離領域272a内に、スクライブカッター114を用いて第1スクライブライン273aを形成する。この加工工程が終了したら、移動ブロック1を前後方向に一定量送った後、復工程に入り、今度は、液晶パネル基板60から第1剥離カッター224aを離し、第2剥離カッター224bを接触させて、第2剥離カッター224bで作製した第2帯状剥離領域272b内に、スクライブカッター114を用いて第2スクライブライン273bを形成する。次に、移動ブロック1を本体部9に対し、図3の前後方向に所定量移動させ、順次、上記の動作を繰り返す。次いで液晶パネル基板60を水平面内で90°回転させ、同様に直交するスクライブラインを形成する。
【0038】
第2実施形態のワーク分断装置220で、液晶セル50の素材となる液晶パネル基板60のTFT基板側をスクライブする場合の加工方法は、液晶パネル基板60のTFT基板側を表にしてワークテーブル11上面に固定しておいてから、図4で示した様に、カラーフィルター基板側加工時の往工程と復工程の加工を用いるとよい。
【0039】
第2実施形態のワーク分断装置220を用いて液晶セル50を加工する時、背景技術で図10を用いて説明した液晶セル50と同一の箇所を加工するとしたら、図4に示した通り3回の往復回数で済む。第2実施形態のワーク分断装置220は剥離ブロックを2個必要とするが、液晶セル50の生産性に一層優れる。
【0040】
以上、本発明のワーク分断装置が効果を発揮するケースとして、液晶パネルの製造を用いて説明してきたが、本発明のワーク分断装置は、液晶パネル製造の利用に限るものではない。本発明のワーク分断装置は、成膜層付きの大型脆性材料板をユニット基板の往復両工程でスクライブ加工する事に特徴があり、例えばEL板、タッチパネル板などのように、保護膜層、位相差層、偏光層等の成膜層を有するガラスやプラスチック等ワークを備えた表示板の加工においても全く同様にその効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態のワーク分断装置の側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態のワーク分断装置で加工後の液晶パネル基板の断面図をもちいた、スクライブカッター及び剥離カッターの往復工程と加工箇所との関係を示す説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態のワーク分断装置の側面図である。
【図4】本発明の第2実施形態のワーク分断装置で加工後の液晶パネル基板の断面図をもちいた、スクライブカッター及び剥離カッターの往復工程と加工箇所との関係を示す説明図である。
【図5】背景技術におけるワーク分断装置の側面図であり、図5(a)は、成膜層無しのワークを加工するワーク分断装置を、図5(b)は、成膜層付きのワークを加工するワーク分断装置である。
【図6】背景技術における液晶パネルの素材となる基板の外観を示す斜視図である。
【図7】背景技術におけるワーク分断装置の移動ユニットが液晶パネルの素材となる基板上でD方向へ動作中の状態を示す斜視図である。
【図8】背景技術における液晶パネル製造装置を動作させた後の基板の外観を示す斜視図で、図8(a)は、TFT側を、図8(b)は、カラーフィルター側を示す。
【図9】背景技術における液晶パネルの外観を示す斜視図であり、図9(a)は、表面側を、図9(b)は、裏面側を示す。
【図10】背景技術におけるワーク分断装置で加工後の基板の断面図をもちいて、スクライブカッター及び剥離カッターの往復工程と加工箇所との関係を示す説明図である。
【図11】背景技術としての揺動式スクライブカッターの断面図である。
【符号の説明】
【0042】
11 ワークテーブル
23 ワーク
106 スクライブブロック
114 スクライブカッター
120、220 ワーク分断装置
124 剥離カッター
125、225 ユニット基板
126 剥離ブロック
172 幅広帯状剥離領域
173a、173b スクライブライン
224a 第1剥離カッター
224b 第2剥離カッター
226a 第1剥離ブロック
226b 第2剥離ブロック
272a 第1帯状剥離領域
272b 第2帯状剥離領域
273a 第1スクライブライン
273b 第2スクライブライン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜層が形成された脆性材料よりなるワークを、ワークテーブルに固定し、複数に分断するワーク分断装置において、該ワークの表面に沿って相対的に往復動作をするユニット基板を備え、
該ユニット基板上には、垂直移動可能であると同時にユニット基板の移動方向に揺動可能であるスクライブカッターを先端に有するスクライブブロックと、垂直移動可能である剥離カッターを先端に有する剥離ブロックとを備え、且つ、該スクライブカッター及び該剥離カッターが、ワークに押し当てたワーク加工状態と、ワークから離したワーク非加工状態のいずれかを夫々独立して選択可能とする制御部を備えたことを特徴とするワーク分断装置。
【請求項2】
前記ワークに対して前記剥離ブロックが先行し、前記スクライブブロックが後追いする方向に前記ユニット基板が動作する時に、該剥離ブロックに備えた剥離カッターにて前記成膜層に作製した帯状剥離領域内に、スクライブブロックに備えたスクライブカッターを用いて第1のスクライブラインを作製し、前記スクライブブロックが先行し、前記剥離ブロックが後追いする方向に、前記ワークに対して前記ユニット基板が動作する時に、前記成膜層に作製した該帯状剥離領域内に、スクライブブロックに備えたスクライブカッターを用いて第2のスクライブラインを作製することを特徴とする請求の範囲1に記載のワーク分断装置。
【請求項3】
成膜付きワークを、ワークテーブルに固定し、複数に分断するガラス分断装置において、該ワークの表面に沿って相対的に往復動作をするユニット基板を備え、
該ユニット基板上には、垂直移動可能であると同時にユニット基板の移動方向に揺動可能であるスクライブカッターを先端に有するスクライブブロックと、該スクライブブロックの一方端に位置し、垂直移動可能なる第1剥離カッターを、刃先が該スクライブブロックより離れる方向に向けて取付けた第1剥離ブロックと、該スクライブブロックの他方端に位置し、垂直移動可能なる第2剥離カッターを、刃先が該スクライブブロックより離れる方向に向けて取付けた第2剥離ブロックを備え、且つ、該スクライブカッター及び該第1剥離カッター及び該第2剥離カッターが、ワークに押し当てたワーク加工状態と、ワークから離したワーク非加工状態のいずれかを夫々独立して選択可能とする制御部を備えたことを特徴とするワーク分断装置。
【請求項4】
前記第1剥離ブロックが先行し、前記スクライブブロックが後追いする方向に、前記ワークに対して前記ユニット基板が動作する時に、該第1剥離ブロックに備えた第1剥離カッターにて前記成膜層に作製した帯状剥離領域内にスクライブブロックに備えたスクライブカッターを用いて第1のスクライブラインを作製し、前記第2剥離ブロックが先行し、前記スクライブブロックが後追いする方向に、前記ワークに対して前記ユニット基板が動作する時に、該第2剥離ブロックに備えた第2剥離カッターにて、前記成膜層に作製した帯状剥離領域内に、スクライブブロックに備えたスクライブカッターを用いて第2のスクライブラインを作製することを特徴とする請求項3に記載のワーク分断装置。
【請求項5】
前記ワークは、ガラス又はプラスチックよりなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載のワーク分断装置。
【請求項6】
請求項5に記載のワーク分断装置によって製作したことを特徴とする表示板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−45656(P2007−45656A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230830(P2005−230830)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】