説明

一体化光活性薬剤およびその使用

本発明は、セリンプロテアーゼに結合しかつ阻害するように設計された多くの光活性化合物を開示する。本明細書で開示される化合物は、多くの適切な医学的診断手順および/もしくは治療的手順(例えば、止血のモニタリング、脆弱なプラークの画像化および/もしくは処置、ならびに/または腫瘍の画像化および/もしくは処置)において利用され得る。本発明の1つの局面は、ピラジン環を含む化合物に関する。このピラジン環の炭素は、セリンプロテアーゼに結合しかつ阻害する基を含む上記ピラジン環に結合した置換基を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願)
本願は、2007年7月31日に出願された、「INTEGRATED PHOTOACTIVE AGENTS FOR REAL−TIME MONITORING OF HEMOSTASIS」と題する米国仮特許出願第60/952,915号に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、医学的診断手順および/もしくは治療的手順において使用するための光活性化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
刊行物は、括弧に入れて、本明細書全体を通して言及される。上記引用された参考文献に対応する完全な引用は、詳細な説明に従って列挙される。
【0004】
凝固関連および/もしくは出血関連の有害事象のリスクがある患者は、aPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)およびPT(プロトロンビン時間)血液試験(BajajらおよびKherら)を使用してモニターされる傾向にある。一般に、ヘパリンを常用している患者は、aPTTの頻繁な測定によって厳密にモニターされて、外因性凝固カスケードが活性化される程度が示される。クマジン(登録商標)を常用している患者は、PTの頻繁な測定によってモニターされて(Rileyら)、上記外部経路の寄与が評価される。両方の試験は、病院の分析実験室に送られる血液サンプルを要する。所要時間は、一般に、患者の止血が、分析期間の間に顕著に変化し得るに十分長い。このようにして、試験と結果との間の所要時間を短くする、止血をモニタリンすることにおいて使用するための化合物を開発することは有益である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
本発明の第1の局面は、ピラジン環を含む化合物に関する。このピラジン環の炭素は、セリンプロテアーゼに結合しかつ阻害する基を含む上記ピラジン環に結合した置換基を有する。
【0006】
本発明の第1の局面に関して、上記セリンプロテアーゼは、いくつかの実施形態において、組織因子/第VIIa因子であり得る。いくつかの実施形態において、上記セリンプロテアーゼは、第Xa因子であり得る。
【0007】
セリンプロテアーゼに結合しかつ阻害する上記基は、上記置換基が上記環に結合される場合に、必要とされる結合機能および阻害機能を提供する任意の適切な基であり得る。これらの結合機能および阻害機能を決定する試験は、当該分野で公知である。いくつかの実施形態において、上記基は、アミジンであり得る。例えば、いくつかの実施形態において、上記基は、モノ−ベンズアミジンであり得る。いくつかの実施形態において、上記基は、グアニジンであり得る。
【0008】
本発明の第1の局面にさらに言及すると、上記ピラジン環は、1種以上のセリンプロテアーゼに結合しかつ阻害する少なくとも1つの基を各々含む、上記ピラジン環に結合した多くの置換基を有し得る。例えば、いくつかの実施形態において、上記ピラジン環は、上記環の第1の炭素に結合した第1の置換基および上記ピラジン環の第2の炭素に結合した第2の置換基を有し得る。これらの第1の置換基および第2の置換基は、互いに対して任意の適切な配向(例えば、オルト、メタ、もしくはパラ)において存在し得る。さらに、上記第1の置換基および第2の置換基の各々は、セリンプロテアーゼに結合しかつ阻害する少なくとも1つの(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つなど)基を含む。所定の置換基が複数の基を有する場合において、上記基の各々は、同じであっても互いに異なっても良いさらに、上記第1の置換基と関連する基は、上記第2の置換基と関連する基と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記ピラジン環は、上記環の第1の炭素に結合した第1の置換基、上記ピラジン環の第2の炭素に結合した第2の置換基、上記ピラジン環の第3の炭素に結合した第3の置換基、および上記ピラジン環の第4の炭素に結合した第4の置換基を有し得る。いくつかの実施形態において、上記第1の置換基、第2の置換基、第3の置換基、および第4の置換基のうちの3つは、少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5など)のセリンプロテアーゼに結合しかつ阻害する基を含む。いくつかの実施形態において、上記第1の置換基、第2の置換基、第3の置換基、および第4の置換基のうちの全て4つは、少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つなど)の、セリンプロテアーゼに結合しかつ阻害する基を含む。所定の置換基が複数の基を含む場合に、上記基の各々は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。さらに、特定の置換基と関連する基は、任意の他の置換基と関連する基と同じであっても、異なっていてもよい。
【0010】
上記第1の局面のいくつかの実施形態において、上記化合物は、完全に対称的な二塩基構造を含むかもしくは示し得る。他の実施形態において、上記化合物は、リバースターン模倣構造を含むか、または示し得る。
【0011】
本発明の第2の局面は、以下の式1の化合物:
【0012】
【化1】

に関する。
【0013】
、R、R、R、X、およびXの各々は、独立して、水素、C1−C6アルキル、C1−C6アシル、C1−C6アルコキシカルボニル、C1−C6ヒドロキシアルキル、C1−C6ポリヒドロキシアルキル、C1−C6カルボキシアルキル、C1−C6アミノアルキル、C5−C10アリール、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−O−Y−C(=NH)NH、−O−Y−NHC(=NH)NH、−N(R)−Y−C(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−NHC(=NH)NHである。しかし、R、R、R、R、X、もしくはXのうちの少なくとも1つは、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−O−Y−C(=NH)NH、−O−Y−NHC(=NH)NH、−N(R)−Y−C(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−NHC(=NH)NHでなければならない。
【0014】
Yは、以下に列挙した置換基のうちのいずれかである:
【0015】
【化2】

例えば、Yは、いくつかの実施形態においてはアルキル置換基であってもよいし、他の実施形態においてはベンゼン(もしくは他の同素環式もしくは複素環式)置換基であってもよい。
【0016】
「m」、「n」、および「p」の各々は、独立して、0、1、2、3、4、5、もしくは6である。
【0017】
は、ヒドロキシル、C1−C6ヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C6カルボキシアルキル、アミノ、もしくはC1−C6アミノアルキルである。例えば、いくつかの実施形態において、Rは、カルボキシルである。
【0018】
およびRの各々は、独立して、水素、C1−C6アルキル、C1−C6アシル、C1−C6アルコキシカルボニル、C1−C6ヒドロキシアルキル、C1−C6ポリヒドロキシアルキル、C1−C6カルボキシアルキル、C1−C6アミノアルキル、もしくはC5−C10アリールである。
【0019】
第2の局面のいくつかの実施形態において、R、R、R、R、およびXの各々は、水素であり得る一方で、Xは、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、−N(R)−Y−C(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−NHC(=NH)NHである。例えば、R、R、R、R、およびXの各々は、水素であり得る一方で、Xは単一であってもよいし、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−C(=NH)NHであってもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、R、R、R、およびRの各々は水素であり得る一方で、XおよびXの各々は、独立して、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH
−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、−N(R)−Y−C(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−NHC(=NH)NHであり得る。例えば、R、R、R、およびRの各々は水素であり得る一方で、XおよびXの各々は、独立して、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−C(=NH)NH.であり得る。
【0021】
上記で言及した第2の局面の実施形態のいずれかにおいて、Rは、任意の適切な置換基(例えば、水素)であり得る。
【0022】
式1の化合物の種々の考えられる改良にさらに言及すると、いくつかの実施形態において、R、R、R、X、およびXの各々は水素であり得る一方で、Rは、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、もしくは−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NHであり得る。例えば、R、R、R、X、およびXの各々は水素であり得る一方で、Rは、−(CH−Y−C(=NH)NHもしくは−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NHであり得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、R、R、X、およびXの各々は水素であり得る一方で、RおよびRの各々は、独立して、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、もしくは−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NHであり得る。例えば、R、R、X、およびXの各々は水素であり得る一方で、RおよびRの各々は、独立して、−(CH−Y−C(=NH)NHもしくは−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NHであり得る。
【0024】
「m」は、任意の適切な整数であり得る。例えば、種々の実施形態において、「m」は、以下の包括的な範囲のうちのいずれかのものであり得る:0〜5、0〜4、0〜3、0〜2、0〜1、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、2〜6、2〜5、2〜4、2〜3、3〜6、3〜5、3〜4。1つの特定の例示的実施形態において、「m」は、0、1、2、もしくは3であり得る。
【0025】
同様に、「n」は、任意の適切な整数であり得る。例えば、種々の実施形態において、「n」は、以下の包括的な範囲のうちのいずれかのものであり得る:0〜5、0〜4、0〜3、0〜2、0〜1、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、2〜6、2〜5、2〜4、2〜3、3〜6、3〜5、3〜4。1つの特定の例示的実施形態において、「n」は、0、1、2、もしくは3であり得る。
【0026】
さらに、「p」は、任意の適切な整数であり得る。例えば、種々の実施形態において、「p」は、以下の包括的な範囲のうちのいずれかのものであり得る:0〜5、0〜4、0〜3、0〜2、0〜1、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、2〜6、2〜5、2〜4、2〜3、3〜6、3〜5、3〜4。1つの特定の例示的実施形態において、「p」は、単純に1であり得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、医学的手順における式1の化合物の有用性は、それらのセリンプロテアーゼ(例えば、組織因子/第VIIa因子および/もしくは第Xa因子)に結合しかつ阻害する能力に起因する。このような化合物は、セリンプロテアーゼを阻害するので、これら化合物はまた、治療的影響を提供するために利用され得る(すなわち、医学的薬物療法において利用され得る)。
【0028】
本発明の第1の局面および第2の局面の化合物は、多くの適切な医学的手順のうちのいずれかにおいて使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、このような化合物は、医学的診断手順(例えば、患者における止血をモニタリングすること、脆弱な(例えば、不安定な)プラークを画像化すること、および/もしくは腫瘍画像化)において利用され得る。いくつかの実施形態において、このような化合物は、医学的診断手順、ならびに医学的薬物療法(例えば、凝固のモニタリングおよび予防、望ましくない凝固/血管閉塞の可能性を減少させながら、脆弱な(例えば、不安定な)プラークを画像化すること、ならびに/もしくは腫瘍画像化および治療)における二重の役割において利用され得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、第1の局面および/もしくは第2の局面の化合物は、ミセル、リポソーム、ナノ粒子(例えば、シェル架橋ナノ粒子)、デンドリマー、樹状突起、ミクロカプセル、もしくは他の組織化された微粒子へと包まれ得る。いくつかの実施形態において、第1の局面および/もしくは第2の局面の化合物は、ナノ粒子(例えば、シェル架橋ナノ粒子)、デンドリマー、もしくは樹状突起へと化学的に結合体化され得る。
【0030】
本発明の第3の局面は、以下を含む医学的処方物に関する:1)第1の局面および/もしくは第2の局面の化合物のうちのいずれか;ならびに2)薬学的に受容可能な緩衝化剤、界面活性剤、賦形剤、たれ防止剤、矯味矯臭剤、安定化剤、皮膚浸透増強剤、もしくはこれらの任意の組み合わせ。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、凝固カスケードの図示である。
【図2】図2は、本発明の一体化光活性セリンプロテアーゼインヒビターの一般的合成の例である。
【図3】図3は、一体化光活性セリンプロテアーゼインヒビターの構造例を提供する。
【図4】図4は、トロンビン生成に対する式Iの化合物の効果を示すインビトロアッセイの結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(詳細な説明)
本発明は、セリンプロテアーゼに結合しかつ阻害する一体化光活性薬剤(本明細書において「光活性薬剤」ともいわれる)、ならびにこのような薬剤の製造および使用を含む。これら一体化光活性薬剤のうちのいくつかは、約1000ダルトン未満の分子量を有する低分子として特徴づけられ得る。本発明の光活性薬剤は、光活性足場セリンプロテアーゼに結合させ得ることによって製造され得る。一旦合成されると、上記一体化光活性薬剤は、患者に投与され得、光学的診断薬剤および/もしくは治療薬物として利用され得る。例えば、 一実施形態において、本発明の一体化光活性薬剤は、止血をモニターするために利用され得る。別の実施形態において、本発明の一体化光活性薬剤は、脆弱なプラークの画像化において使用され得る。なお別の実施形態において、本発明の一体化光活性薬剤は、腫瘍画像化において利用され得る。
【0033】
セリンプロテアーゼ(いくらかは「セリンエンドペプチダーゼ」といわれる)は、特に、凝固プロセスにおいて重大な役割を果たす酵素のクラスをいう。特に、いくつかのセリンプロテアーゼは、外因性凝固カスケードにおいて重大な役割を果たす。セリンプロテアーゼの例としては、トロンビン(活性化第II[IIa]因子)、およびトロンボキナーゼ(活性化第X[Xa]因子)、第VII因子(活性化組織因子/第VIIa因子)が挙げられる。多くのセリンプロテアーゼにおいて、アスパラギン酸−189は、上記酵素のS1ポケットに結合するための主要な認識部位残基であるが、高い有効性の結合にとって望ましい上記酵素のS1’部位、S2部位、およびS3部位内には、多くの他の重要な相互作用が存在する(ナノモル濃度親和性 Neumannら J.Med.Chem 2003,46,4050)。本発明の多くの化合物は、上記足場が光活性であるとともに、セリンプロテアーゼのアスパラギン酸−189残基に結合するのに適切なP1置換基を示す設計を含む。さらに、上記光活性足場は、上記触媒作用装置を取り囲む他の残基とのさらなる相互作用を提供し得る官能性を有し得る。この点に関して、上記光活性足場が、リガンド結合特性と一体化されていることが言われ得る。1つの機械論的特徴付けにおいて、本発明の化合物が、組織因子/第VIIa因子および/もしくは第Xa因子に結合しかつ阻害し、従って、トロンビンの生成を阻害する(例えば、外因性カスケードを介して)と言われ得る。
【0034】
本発明の一体化光活性薬剤は、吸収波長、励起波長、および発光波長(これらは全て、約350nm以上の近赤外線(NIR)もしくは可視光スペクトル内に全てある)を有する傾向にある。このことは、診断手順において有益である。なぜなら、可視光およびNIR光は、組織に損傷を及ぼす可能性が低いからである。対称的に、約350nm未満の波長を有する紫外線(UV)光は、組織損傷を引き起こし得る。約350nm以上の波長を有する光は、組織へ透過する傾向にあり、それによって、診断手順が、約350nm未満のUV波長を使用して達成可能ではないかもしれない目的の組織において行われることを可能にする。一実施形態において、本発明の化合物は、吸収波長、励起波長、および発光波長(これらは全て、約350nm〜約1200nmの間にある)を有する。別の実施形態において、本発明の化合物は、吸収波長、励起波長、および発光波長(これらは全て、約400nm〜約900nmの間にある)を有し得る。
【0035】
本明細書で開示される化合物の合成および使用は、種々の方法において行われ得る。一実施形態において、既知のセリンプロテアーゼ結合部分(リード設計に基づくフラグメント)は、光活性基もしくは光活性分子(例えば、ピラジン基)に結合される。ピラジンが、それらの望ましい光物理学的特性、およびいくつかが芳香族部分に対する等配電子置換として作用する能力に起因して、この目的に特に適していると、現在では考えられている。多くの場合において、このことは、公知の薬物もしくは薬物リード候補物における非光活性アリールもしくはヘテロアリールコアの代わりに光活性化ピラジンコアを使用することを可能にする。その得られる化合物は、上記薬物の生物学的活性および上記ピラジンの光活性を有する。よって、上記ピラジン系の光子特性は、上記薬物自体の中に一体化される。
【0036】
本発明の化合物について、その標的は、図1に図示される凝固カスケードに関与するセリンプロテアーゼである傾向にある。セリンプロテアーゼに結合するファーマコフォア(pharmacophore)の例としては、アミジンおよびグアニジンが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上のファーマコフォアは、光活性および生体活性の両方が、上記還元剤が、その光活性も結合特性も完全に失う程度にまでは妨害されないように、適切な場所で上記光活性分子に結合される。その得られる一体化光活性薬剤は、例えば、患者内での上記光活性薬剤の検出を可能にするような診断上有効な量で、上記患者に投与され得る。上記薬剤がセリンプロテアーゼに結合するために一定時間経過した後、患者の全身もしくは標的組織は、約350nm〜約1200nmの間の波長の光に曝され得る。一例において、上記患者の全身もしくは標的組織は、約400nm〜約900nmの間の波長の光に曝され得る。光は、上記化合物の吸収特性および励起特性の結果として、上記患者内で上記化合物から発せられる。この発光は、上記患者内で上記化合物から発せられる光の特定の波長を検出するその能力に基づいて設計され得るか、そして/またはその能力に基づいて選択され得る適切な検出器を利用することによって、検出され得る。上記患者内で上記化合物から発せられる光の位置および強度(strength)(例えば、強度(intensity))を決定することによって、診断が行われ得る。
【0037】
本発明の一体化光活性薬剤の合成は、公知の科学原理とともに、本開示を使用して達成され得る。本発明の化合物を製造するための1つの例示的方法は、図2に概説される。
【0038】
一実施形態において、本発明の一体化光活性薬剤は、式1の光活性基を含み、
【0039】
【化3】

これは、セリンプロテアーゼに結合する少なくとも1つのファーマコフォアが、一体化光活性セリンプロテアーゼ結合薬剤(これはまた、セリンプロテアーゼインヒビターである)を作り出すために、R位、R位、R位、R位、X位、および/もしくはX位において結合される分子足場として機能する。一例において、式1の分子足場は、2,5−ジアミノ−3,6−ピラジンジカルボン酸である。別の例において、上記ファーマコフォアは、アミジン部分および/もしくはグアニジン部分であり、これらの各々は、R、R、R、R、X、もしくはXによって示される位置のうちのいずれか1つ以上において、式1のピラジン構造に結合され得る。
【0040】
図3は、化合物2〜8によって示される本発明の一体化光活性薬剤の非限定的例を提供する。化合物2および化合物3は、完全に対称の二塩基構造の例であり、化合物4および化合物5は、リバースターン模倣構造の例であり、化合物6および化合物7は、モノ−ベンズアミジン含有化合物の例であり、化合物8は、グアニジン部分をその結合部分として含む一体化光活性薬剤の例である。
【0041】
ベンズアミジン部分は、アルギニン模倣物として働く。なぜなら、これら加水分解酵素は、特定のアルギニン残基を認識して、凝固カスケードにおいて対応するプロ酵素の切断および活性化をもたらす。従って、ベンズアミジンの周りに構築される分子は、セリンプロテアーゼインヒビターの望ましい結合特性である。
【0042】
一実施形態において、上記光活性化合物は式1によって表され、ここでR、R、R、R、X、およびXは、独立して、水素、C1−C6アルキル、C1−C6アシル、C1−C6アルコキシカルボニル、C1−C6ヒドロキシアルキル、C1−C6ポリヒドロキシアルキル、C1−C6カルボキシアルキル、C1−C6アミノアルキル、C5−C10アリール、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−O−Y−C(=NH)NH、−O−Y−NHC(=NH)NH、−N(R)−Y−C(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−NHC(=NH)NHである。いくつかの実施形態において、R、R、R、R、X、もしくはXのうちの少なくとも1つは、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−O−Y−C(=NH)NH、−O−Y−NHC(=NH)NH、−N(R)−Y−C(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−NHC(=NH)NHでなければならない。Yは、以下に列挙される置換基のうちのいずれかである:
【0043】
【化4】

上記下付文字「m」、「n」、および「p」は、独立して、0〜6(両端含む)の範囲である。Rは、ヒドロキシル、C1−C6ヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C6カルボキシアルキル、アミノ、もしくはC1−C6アミノアルキルである。RおよびRは、独立して、水素、C1−C6アルキル、C1−C6アシル、C1−C6アルコキシカルボニル、C1−C6ヒドロキシアルキル、C1−C6ポリヒドロキシアルキル、C1−C6カルボキシアルキル、C1−C6アミノアルキル、もしくはC5−C10アリールである。
【0044】
別の実施形態において、上記光活性化合物は式1によって示され、ここで:R〜R、R、およびXは、水素であり;Rはカルボキシルであり;Xは、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、−N(R)−Y−C(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−NHC(=NH)NHであり;「m」および「n」は、独立して、0〜3の範囲であり;「p」は1であり;そしてYは、
【0045】
【化5】

である。
【0046】
別の実施形態において、上記光活性化合物は式1によって表され、ここで:R〜RおよびRは水素であり;Rはカルボキシルであり;XおよびXは、独立して、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、−N(R)−Y−C(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−NHC(=NH)NHであり;「m」および「n」は、独立して、0〜3の範囲であり;「p」は1であり;そしてYは、
【0047】
【化6】

である。
【0048】
別の実施形態において、上記光活性化合物は式1によって示され、ここで:R〜R、X、およびXは水素であり;Rは、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、もしくは−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NHであり;「m」および「n」は、独立して、0〜3の範囲であり;「p」は1であり;そしてYは、
【0049】
【化7】

である。
【0050】
別の実施形態において、上記光活性化合物は式1によって示され、ここで:R、R〜R、X、およびXは、水素であり;RおよびRは、独立して、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、もしくは−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NHであり;「m」および「n」は、独立して、0〜3の範囲であり;「p」は1であり;そしてYは、
【0051】
【化8】

である。
【0052】
別の実施形態において、上記光活性化合物は式1によって示され、ここで:R〜R、R、およびXは水素であり;Rはカルボキシルであり;Xは、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−C(=NH)NHであり;「m」および「n」は、独立して、0〜3の範囲であり;「p」は1であり;そしてYは、
【0053】
【化9】

である。
【0054】
別の実施形態において、上記光活性化合物は、式1によって示され、ここで:R〜RおよびRは、水素であり;Rは、カルボキシルであり;XおよびXは、独立して、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−C(=NH)NHであり;「m」および「n」は、独立して、0〜3の範囲であり;「p」は1であり;そしてYは、
【0055】
【化10】

である。
【0056】
別の実施形態において、上記光活性化合物は式1によって示され、ここで:R〜R、XおよびXは水素であり;Rは、−(CH−Y−C(=NH)NH、もしくは−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NHであり;「m」および「n」は、独立して、0〜3の範囲であり;「p」は1であり;そしてYは、
【0057】
【化11】

である。
【0058】
別の実施形態において、上記光活性化合物は式1によって示され、ここで:R、R〜R、X、およびXは水素であり;RおよびRは、独立して、−(CH−Y−C(=NH)NHもしくは−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NHであり;「m」は、0〜3の範囲であり;「p」は1であり;そしてYは、
【0059】
【化12】

である。
【0060】
別の実施形態において、上記光活性化合物は、完全に対称の二塩基性セリンプロテアーゼインヒビター(例えば、以下の化合物2もしくは化合物3)である:
【0061】
【化13】

【0062】
別の実施形態において、上記光活性化合物は、リバースターン模倣構造(例えば、以下の化合物4もしくは化合物5である:
【0063】
【化14】

別の実施形態において、上記光活性化合物は、モノベンズアミジン含有化合物(例えば、以下の化合物6もしくは化合物7)である:
【0064】
【化15】

別の実施形態において、上記光活性化合物は、クアニジン(quanidine)誘導体(例えば、以下の化合物8)である。
【0065】
【化16】

本発明の化合物は、トロンビン阻害活性(例えば、組織因子/第VIIa因子および/もしくは第Xa因子の阻害を介して)および蛍光足場の両方を有する。図1の凝固カスケードが活性化された場合(例えば、病原的事象(例えば、外傷、深部静脈血栓症、プラーク破裂、心不整脈などに起因して)、血中トロンビン濃度が増大する。患者に投与された(例えば、患者の血流に静脈内におよび/もしくは動脈内に注射された)後に、本発明の化合物は、第Xa因子および/もしくは組織因子/第VIIa因子に結合し、上記化合物の非結合画分のものに対する蛍光発光におけるずれを介して検出できる。
【0066】
この点において、溶媒中に自由に拡散していることに対して、上記タンパク質の内部に埋め込まれている場合、発色団三つ組みが、顕著に異なる光物理的特性を示すことは、緑色蛍光タンパク質および赤色蛍光タンパク質、ならびにモデル化合物の蛍光研究およびラマン分光法研究から公知である。上記光活性セリンプロテアーゼインヒビターの励起状態を達成するために環境を改めるエネルギーは、上記分子が、上記血中において自由に循環していることに対して、上記エネルギーの活性部位において結合される場合、極めて異なる。従って、自由 対 結合したインヒビターは、異なる吸収波長および発光波長を示す。この現象は、組織因子/第VIIa因子阻害および/もしくは第Xa因子阻害の正確なリアルタイム測定、従って、最終的には、比率計量的(ratiometric)パラダイムによって血中のトロンビン生成(例えば、濃度)の可能性を可能にする。組織因子/第VIIa因子もしくは第Xa因子阻害の濃度および/もしくは蛍光測定比は、(望ましい場合)、動物もしくは患者における実際のPT(プロトロンビン時間)測定値と相互相関して、正確性のための数学的モデルを開発し得る。上記濃度および/もしくは蛍光測定値比は、従って、患者が、血栓事象の増強した傾向を経験しているか否か、そしてヘルスケア職員が矯正行動を取らせることができるか否かを決定するために使用され得る。
【0067】
光ファイバーレーザー装置(fiber optic laser apparatus)は、手術室のベッドサイドで使用され得るか、またはリアルタイムで患者の凝固止血をモニターするために広い救急輸送車で使用され得る。この方法論は、潜在的に、凝固関連事象の危険性のある患者の正確なモニタリングを可能にする。代表的には、このような患者には、強力な抗凝固剤(例えば、ワルファリンもしくはヘパリン)を常用させるので、潜在的に突然の出血事象の危険性がある。
【0068】
脆弱なプラークの破壊は、急性冠動脈症候群の主要な原因であることが十分に確立されている。これらプラークの血栓形成性は、彼らの中にある組織因子レベルと直接相関する傾向にある。従って、動脈血栓症は、しばしば、プラーク破壊の結果である傾向があり、このことは、その組織因子を循環血液に曝して、上記組織因子が第VII因子と組み合わさって、凝固を誘発することを生じる(Moreno,P.R.ら Circulation 1996,94.3090およびTanner,F.C.ら Circulation 2006,113,722)。It is believed that 微小破壊(micro−rupture)は、脆弱なプラークの表面上の組織因子を曝して、不安定な血栓形成前の状況を誘発し得ると考えられる。従って、一体化フォトニック(photonic)組織因子/第VIIa因子インヒビター(例えば、本明細書において記載されるもの)の投与は、破局的破壊事象の前に、これら不安定なプラークをモニターし画像化する方法を提供する。上記一体化フォトニック組織因子/第VIIa因子インヒビターは、表面に接着した組織因子/第VIIa因子に結合することによって、上記マイクロ破壊部位において蓄積し、そしてカテーテルもしくは他の適切な検出デバイス(例えば、光ファイバーレーザー装置)の使用によって可視化され得る。これら光活性薬剤はまた、薬学的に活性であるので、この方法論は、診断ツールだけでなく、診断的治療ペアを構成する。
【0069】
腫瘍画像化に関して、腫瘍転移は、代表的には、組織因子の過剰発現に依存する。実際に、転移性細胞は、非悪性の対応物より、(例えば、結腸直腸癌および肺癌において)1000倍より高い組織因子を発現し得る。さらに、腫瘍組織は、血管内皮増殖因子(VEGF)の過剰発現と関連し、上記増殖因子は、腫瘍の増殖および転移を支援する脈管形成のプロセスにおいて重要な因子である。VEGFの発現は、従って、循環する第VII因子への組織因子曝露を潜在的に可能にする内皮透過性と関連する。従って、一体化フォトニック組織因子/第VIIa因子インヒビターの投与は、血液に曝される腫瘍組織の表面および表面下の腫瘍の境界をモニターし画像化する方法を提供する。上記一体化フォトニック組織因子/第VIIa因子インヒビターは、曝された組織因子/第VIIa因子に結合することによって、VEGFにより誘導される増強された内皮透過性を介して、腫瘍中に蓄積し、そしてカテーテルもしくは他の適切な検出デバイス(例えば、光ファイバーレーザー装置)の使用によって可視化可能である。これら光活性薬剤はまた、薬学的に活性であるので、この方法論は、診断ツールのみならず、診断治療ペアを構成する。
【0070】
(処方物)
本発明の一体化光活性薬剤は、腸の(経口のもしくは直腸の)、非経口の(例えば、筋肉内注射、静脈内注射、動脈内注射)、局所、経皮、もしくは皮下の投与のために処方され得る。局所、経皮、および皮膚への送達は、エアロゾル、クリーム、ゲル、エマルジョン、液剤もしくは懸濁物を含み得る。上記皮膚へのおよび皮膚を介する送達は、公知の方法および薬剤(例えば、経皮浸透増強剤(例えば、「アゾン」、N−アルキル環式アミド、ジメチルスルホキシド、長鎖脂肪酸(C10)など(Gennaro))に従って増強され得る。現在では、本発明の光活性薬剤のための好ましい処方物は、注射(例えば、筋肉内注射、静脈内注射、動脈内注射)を介して投与され得るものである。
【0071】
薬学的に受容可能な処方物の調製は、当該分野で公知の方法(Gennaro)に従って達成され得る。例えば、処方物は、薬学的に受容可能な緩衝化剤、界面活性剤、賦形剤、たれ防止剤、矯味矯臭剤、安定化剤、もしくは皮膚浸透増強剤とともに、上記一体化光活性薬剤のうちのいずれかを使用して調製され得る。本発明の化合物が水溶性である場合、生理食塩水中の液剤が、投与され得る。上記化合物が非水溶性である場合、上記化合物は、生体適合性の油(例えば、大豆油、魚油、ビタミンE、亜麻仁油、植物性油、グリセリドエステル、長鎖脂肪エステルなど)中に溶解され得、水含有界面活性化合物(例えば、植物性もしくは動物性のリン脂質;レシチン;長鎖脂肪塩およびアルコール;ポリエチレングリコールエステルおよびエーテルなど)中に乳化され得、局所クリーム剤、懸濁物、水/油エマルジョン、もしくは水/油ミクロエマルジョンとして投与され得る。
【0072】
本発明の一体化光活性薬剤は、ミセル、リポソーム、ナノ粒子(例えば、シェル架橋ナノ粒子)、デンドリマー、樹状突起、ミクロカプセル、もしくは他の組織化微粒子へと包まれ得、そして先に記載される経路のうちのいずれかによって投与され得る。本発明の一体化光活性薬剤は、一体化フォトニック効果および多面的な生物学的効果を同時にもたらす目的で、ナノ粒子(例えば、シェル架橋ナノ粒子)、デンドリマーもしくは樹状突起に化学的に結合体化され得る。処方物のこれらのタイプは、上記薬物のインビボでの安定性を増強し得る。例示的な封じ込め方法としては、界面活性剤透析、凍結乾燥、フィルム形成、および注入(Janoffら)が挙げられるが、これらに限定されない。リポソームを作製し、種々の分子をこれらの中に封じ込めるための方法は、当該分野で周知である(Braun−FalcoらおよびLasicら)。
【0073】
(投与量)
本発明の一体化光活性薬剤は、有効な診断物体および/もしくは治療物体を達成するために、単一用量で、または複数用量で投与され得る。投与後に、上記一体化光活性薬剤は、セリンプロテアーゼに結合する時間を許容し、そして上記選択された標的部位を十分な出力および強度を有する光に曝して、上記患者内で上記化合物から発せられる光を検出し、(例えば、診断を行うにあたって)ヘルスケア供給者によって利用され得る情報を提供する。用量は、例えば、使用される特定の一体化光活性薬剤、試験されるべき領域(例えば、器官もしくは組織)、臨床手順において使用される設備、達成される処置の効力、および/もしくは類似のものに依存して、広く変動し得る。例えば、上記化合物の投与量は、いくつかの実施形態において約0.1mg/kg体重〜約500mg/kg体重で変動し得る。他の実施形態において、上記化合物の投与量は、約0.5〜約2mg/kg体重で変動し得る。非経口的投与についてのいくつかの実施形態において、滅菌溶液もしくは懸濁物は、約1nM〜約0.5Mの濃度範囲において上記一体化光活性薬剤を含む。いくつかの実施形態において、滅菌溶液もしくは懸濁物は、約1μM〜約10mMの濃度範囲の上記一体化光活性薬剤を含む。
【0074】
(投与)
一旦一体化光活性薬剤が作り出されると、上記薬剤は、(例えば、注射を介して)固体に投与される。適切な時間量は、上記患者において望ましいセリンプロテアーゼに結合する薬剤について示され得る。本発明の化合物および組成物の投与は、妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得ることが理解される。任意の特定の患者の特定の有効用量レベルは、種々の要因(例えば、処置/診断される障害, 障害の重篤度、使用される特定の化合物の活性、使用される特定の化合物、上記患者の年齢、体重、全身的な健康状態、性別および/もしくは食事)に依存し得る。上記一体化光活性薬剤の検出は、侵襲性および/もしくは非侵襲性のプローブ(例えば、内視鏡、カテーテル、イヤークリップ、ハンドバンド、ヘッドバンド、表面コイル、指用プローブ、および/もしくは類似のもの(Mullerら))を使用する光学的蛍光、吸光度、および/もしくは光散乱法によって達成され得る。画像化は、二次元画像化、光断層撮影法、光干渉断層撮影法、内視鏡、光エネルギー技術、音響蛍光(sonofluorescence)技術、光散乱技術、レーザー支援誘導手術(laser assisted guided surgery)(LAGS)、共焦点顕微鏡、動的器官機能モニタリング(dynamic organ function monitoring)、および/もしくは光散乱デバイスを使用して達成され得る。
【0075】
(略語および定義)
本発明の理解を容易にするために、多くの用語が以下で定義される。
【0076】
「低分子」とは、分子量が一般に、約1000ダルトン未満である分子をいう。
【0077】
「診断上有効な量」とは、患者の大部分において、問題の物質が投与される患者において、その特定の細胞および/もしくは酵素(存在する場合)を検出することができるのに適した物質の量である、問題の物質の量である。用語「有効な量」とはまた、上記物質が、上記物質が投与された被験体において軽度の有害効果を引き起こすかもしくは有害な効果を全く引き起こさない量で与えられること、またはその有害な効果が、上記物質が与えられた疾患の重篤度に鑑みて、医学的見地および薬学的見地から許容され得ることを意味する。
【0078】
「光活性基」もしくは「光活性部分」とは、約350〜1200nmの波長範囲において吸収最大、励起最大および発光最大を示す任意の官能基もしくは部分をいう。このような官能基もしくは部分としては、蛍光団、発色団、増感物質、および光反応性部分が挙げられるが、これらに限定されず、ここで「蛍光団」、「発色団」、「増感物質」、および「光反応性」部分は、当該分野で一般に理解されている意味を有する。
【0079】
「治療上有効な量」とは、有害な副作用(代表的には、代替治療と関連する)を回避しながら、各薬剤単独の処置に対する病的状態の重篤度および発生率の頻度における改善という目的を達成する、各薬剤の量をいう。
【0080】
「処置」とは、任意のプロセス、作用、適用、治療などであって、被験体(ヒトを含む)に、上記被験体の状態を、直接的もしくは間接的に改善する、または上記被験体における病的状態の進行を遅らせるという目的を医療補助者が提供するものをいう。
【0081】
本発明の要素、もしくはその実施形態を導入する場合、冠詞「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」および「上記、その、この(the)」は、上記要素のうちの1つ以上が存在することを意味すると意図される。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」は、包括的でありかつ列挙された要素意外にさらなる要素が存在し得ることを意味することが意図される。
【0082】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示する。当業者に明らかなように、種々の変化および改変が可能であり、そしてこれは、記載される発明の範囲内で企図される。
【実施例】
【0083】
(実施例1:3,6−ジアミノ−N2,N5−ビス(4−carbamimidoylbenzyl)ピラジン−2,5−ジカルボキサミド(MP3117)の調製)
【0084】
【化17】

3,6−ジアミノピラジン−2,5−ジカルボン酸(250mg,1.40mmol)、4−(アミノメチル)−ベンズアミジンジヒドロクロリド(619mg,2.80mmol)、HOBt−HO(628mg,4.10mmol)、EDC−HCl(790mg,4.10mmol)およびトリエチルアミン(2mL)の混合物を、DMF(20mL)中で、室温で16時間にわたって一緒に攪拌した。上記混合物を乾燥するまで濃縮させ、中圧逆相クロマトグラフィー(LiChroprep RP−18 Lobar (B) 25×310mm−EMD chemicals 40−63μm,約70g,90/10〜80/20 0.1% TFA−ACN)によって精製して、橙色発泡体として実施例1のものを171mg(27% 収率)得た:LCMS(0.1% TFA中のアセトニトリルにおいて10分間5〜95%勾配)、250 C18mmカラム上で、単一ピーク保持時間=4.69分、(M+H)=461。
【0085】
実施例1の化合物(MP3117)を、外因性カスケードの活性化を介してトロンビンの生成を阻害するその能力について試験した。特に、全血活性スクリーンを含めたアッセイを行った。この点に関して、9種の水溶液(種々の濃度の実施例1の化合物を含む)を、凝固が組織因子経路を介して達成された場合に、トロンビン生成を阻害するそれらの能力について(三連で)試験した。上記データの平均を、図4に示す。上記アッセイのデータを、上記化合物のIC50を抽出するためにも利用した。付随的に、「IC50」とは、上記化合物が結合する上記活性酵素の50%を阻害するために必要な化合物の量をいう。図4に示されるように、実施例1の化合物は、IC50=12.38±0.79nMを有すると示された。
【0086】

(参考文献)
【0087】
【化18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物であって、該化合物は、
ピラジン環であって、該ピラジン環の炭素は、セリンプロテアーゼに結合しかつ阻害する基を含む、該炭素に結合した置換基を有する、ピラジン環
を含む、化合物。
【請求項2】
前記セリンプロテアーゼは、組織因子/第VIIa因子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記セリンプロテアーゼは、第Xa因子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記基は、アミジンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記基は、モノ−ベンズアミジンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記基は、グアニジンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物は、完全に対称の二塩基構造を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物は、リバースターン模倣構造を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
式Iに記載の化合物
【化19】

であって、ここでR、R、R、R、X、およびXの各々は、独立して、水素、C1−C6アルキル、C1−C6アシル、C1−C6アルコキシカルボニル、C1−C6ヒドロキシアルキル、C1−C6ポリヒドロキシアルキル、C1−C6カルボキシアルキル、C1−C6アミノアルキル、C5−C10アリール、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−O−Y−C(=NH)NH、−O−Y−NHC(=NH)NH、−N(R)−Y−C(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−NHC(=NH)NHであり;
Yは、以下:
【化20】

であり、ただし、R、R、R、R、X、もしくはXのちの少なくとも1つは、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−O−Y−C(=NH)NH、−O−Y−NHC(=NH)NH、−N(R)−Y−C(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−NHC(=NH)NHであり;
「m」、「n」、および「p」の各々は、独立して、0、1、2、3、4、5、もしくは6であり;
は、ヒドロキシル、C1−C6ヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C6カルボキシアルキル、アミノ、もしくはC1−C6アミノアルキルであり;そして
およびRの各々は、独立して、水素、C1−C6アルキル、C1−C6アシル、C1−C6アルコキシカルボニル、C1−C6ヒドロキシアルキル、C1−C6ポリヒドロキシアルキル、C1−C6カルボキシアルキル、C1−C6アミノアルキル、もしくはC5−C10アリールである、
化合物。
【請求項10】
、R、R、R、およびXの各々は、水素であり;そして
は、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、−N(R)−Y−C(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−NHC(=NH)NHである、
請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
は、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−C(=NH)NHである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
、R、R、およびRの各々は、水素であり;そして
およびXの各々は、独立して、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、−N(R)−Y−C(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−NHC(=NH)NHである、
請求項9に記載の化合物。
【請求項13】
およびXの各々は、独立して、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NH、もしくは−N(R)−Y−C(=NH)NHである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
は水素である、請求項9〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
、R、R、X、およびXの各々は、水素であり;そして
は、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、もしくは−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NHである、
請求項9に記載の化合物。
【請求項16】
は、−(CH−Y−C(=NH)NHもしくは−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NHである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
、R、X、およびXの各々は、水素であり;そして
およびRの各々は、独立して、−(CH−Y−C(=NH)NH、−(CH−Y−NHC(=NH)NH、−(CH(CHR−Y−C(=NH)NH、もしくは−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NHである、
請求項9に記載の化合物。
【請求項18】
およびRの各々は、独立して、−(CH−Y−C(=NH)NHもしくは−(CH(CHR−Y−NHC(=NH)NHである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
「m」は、0、1、2、もしくは3である、請求項9〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
「n」は、0、1、2、もしくは3である、請求項9〜19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
「p」は1である、請求項9〜20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
Yは、−(CHもしくは
【化21】

である、請求項9〜21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
は、カルボキシルである、請求項9〜22のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
前記化合物は、以下の化合物2〜8のうちのいずれか:
【化22】

である、請求項9に記載の化合物。
【請求項25】
前記化合物は、セリンプロテアーゼに結合しかつ阻害する、請求項9〜24のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
患者における止血をモニターすることにおいて使用するための、請求項1〜25のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項27】
脆弱なプラークを画像化することにおいて使用するための、請求項1〜25のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項28】
腫瘍画像化において使用するための請求項1〜25のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項29】
医学的診断手順において使用するための請求項1〜25のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項30】
医学的薬物治療において使用するための請求項1〜25のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項31】
ミセル、リポソーム、ナノ粒子、デンドリマー、樹状突起、ミクロカプセル、もしくは他の組織化微粒子に包まれる、請求項1〜30のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項32】
ナノ粒子、デンドリマー、もしくは樹状突起に化学的に結合体化されている、請求項1〜30のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項33】
請求項1〜32のいずれか1項に記載の化合物;および
薬学的に受容可能な緩衝化剤、界面活性剤、賦形剤、たれ防止剤、矯味矯臭剤、安定化剤、皮膚浸透増強剤、もしくはこれらの任意の組み合わせ
を含む、処方物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−535240(P2010−535240A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520176(P2010−520176)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/071700
【国際公開番号】WO2009/018405
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(595181003)マリンクロッド・インコーポレイテッド (203)
【氏名又は名称原語表記】Mallinckrodt INC.
【Fターム(参考)】