説明

一体型空気調和機

【課題】シロッコファンによる送風性能を高めるとともに、シロッコファンを交換する時の作業性を良好にした一体型空気調和機を提供する。
【解決手段】室内側熱交換室5に室内熱交換器7と、シロッコファン8と、ファンケーシング10と、室内側ファンリング9とを備えた一体型空気調和機において、前記ファンケーシング10は、前記シロッコファン8よりも大径のファンリング用開口部10xを有して、前記シロッコファン8の回転中心を境に上下に分割した下部ファンケーシング10aと上部ファンケーシング10bとからなり、ファンリング用開口部の周縁10a1および10b1からなる保持部を備え、前記室内側ファンリング9は、前記シロッコファン8に近接させた先端9fが同シロッコファン8よりも小径で形成され、前記室内熱交換器7側の外周縁に、前記保持部に係合する複数の係合爪9dを有するファンリング係合部9bを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型空気調和機のファンケーシングに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一体型空気調和機は、筒状に形成された外胴と、この外胴内に引出し可能に収納された内部ユニットとによって構成され、図6に示すように、内部ユニット101を構成するベース102に、このベース102上を室内側熱交換室103と室外側熱交換室104に仕切る仕切板105が固定され、室内側熱交換室103のベース102には、水受皿部106、ファンリング部107およびファンケーシング108が、発泡体109により一体的に形成されて設置された構成になっていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものにおいて、水受皿部106、ファンリング部107およびファンケーシング108が発泡体109により一体成形されていることから、とくにファンリング部107やファンケーシング108などの形状または寸法の精度がよくないため、ファンリング部107を臨ませたシロッコファン(図示せず)による充分な送風性能が得られないという問題点があった。
【0004】
また、図7(A)に示す要部斜視図または図7(B)に示す図7(A)のa−a断面図のように、樹脂成形した導風板110に樹脂成形した室内側ファンリング111を組み付ける構成の場合、これら導風板110および室内側ファンリング111の形状または寸法は精度がよくなるが、この室内側ファンリング111の内径よりも大きい外径のシロッコファン112をその回転軸の方向に移動させながら交換するには、導風板110と室内側ファンリング111とを本体から取り外してから交換作業をする必要があるが、交換作業の作業性が悪いという問題点があった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−92133号公報
【特許文献2】実開昭60−130329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、シロッコファンによる送風性能を高めるとともに、シロッコファンを交換する時の作業性を良好にした一体型空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示す特徴を備えている。
【0008】
ベース上に立設した仕切板により内部ユニットを室内側熱交換室と室外側熱交換室とに区画し、室内側熱交換室に室内熱交換器と、シロッコファンと、同シロッコファンを囲むファンケーシングと、同ファンケーシングに付設した室内側ファンリングとを備え、室外側熱交換室に室外熱交換器と、圧縮機と、プロペラファンと、同プロペラファンと前記シロッコファンとを駆動するファンモータとを備えた一体型空気調和機において、
前記ファンケーシングは、前記シロッコファンよりも大径のファンリング用開口部を有して、前記シロッコファンの回転中心を境に上下に分割した下部ファンケーシングと上部ファンケーシングとからなり、前記下部ファンケーシングのファンリング用開口部の周縁と、前記上部ファンケーシングのファンリング用開口部の周縁とからなる保持部を備え、
前記室内側ファンリングは、前記シロッコファンに近接させた先端が少なくとも同シロッコファンの外径よりも小径で形成されるとともに、前記室内熱交換器側および前記シロッコファン側の外周縁に、前記保持部に係合する複数の係合爪を有するファンリング係合部を備えたことを特徴としている。
【0009】
前記ファンケーシングの保持部は、前記係合爪の側端を位置決めして受ける凹状の係合爪受部を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シロッコファンによる送風性能を高めるとともに、シロッコファンを交換する時の作業性を良好にした一体型空気調和機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による一体型空気調和機の外観斜視図である。
【図2】本発明による一体型空気調和機の内部ユニットの斜視図である。
【図3】本発明による一体型空気調和機の内部ユニットの要部斜視図である。
【図4】本発明による一体型空気調和機の内部ユニットの要部分解斜視図である。
【図5】図3に示すA−A断面図である。
【図6】従来例による一体型空気調和機の要部斜視図である。
【図7】他の従来例による一体型空気調和機の要部説明図で、(A)は斜視図であり、(B)は図7(A)に示すa−a断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明による一体型空気調和機の外観斜視図であり、図2は外胴2内に収納される内部ユニット1の斜視図であり、図3は内部ユニット1の要部斜視図であり、図4は内部ユニット1の要部分解斜視図であり、図5は図3に示すA−A断面図である。
【0014】
本発明による一体型空気調和機は、図2に示す内部ユニット1が、図1に示す室外側吸込口2aと、室外側吹出口2bとを備えた外胴2内に収納され、室内側吸込口2cと、室内側吹出用の開口2dとを備えた前面パネル2eで前面が覆われた構成になっている。
【0015】
内部ユニット1は、図2に示すように、ベース3上に立設した仕切板4により室内側熱交換室5と室外側熱交換室6とに区画され、室内側熱交換室5の一側寄りに、室内熱交換器7と後述するシロッコファン8とが設けられ、室内側熱交換室5の他側寄りに、室内熱交換器7の冷媒との間で熱交換された空気を室内に吹き出す室内側吹出口1aと、本発明による一体型空気調和機の運転操作をする操作部1bとが設けられている。
【0016】
室外側熱交換室6には、ベース3上に下端を固定した側板16,16を両端部に備えてU字形状に折り曲げられた室外熱交換器11と、図4に示すモータ取付台20に取り付けたファンモータ19と、ファンモータ19で駆動されるプロペラファン12と、プロペラファン12を囲む室外側ファンリング13を備えたエアガイダ14と、圧縮機15とが設けられている。
【0017】
ファンモータ19は、このファンモータ19の両側に備えた駆動軸19a,19aに、図4に示すシロッコファン8と、図2に示すプロペラファン12とがそれぞれ連結されることで、これらシロッコファン8とプロペラファン12とが同時に駆動される構成になっている。
【0018】
ベース3上に固定された仕切板4は、ベース3上に固定された室外熱交換器11の側板16,16に対向させた構成になっており、仕切板4および側板16,16が、ともに板金で形成されている。
【0019】
板金製の仕切板4の上端部と、側板16,16の上端部とは、枠形状に形成された板金製の支持板からなる支持部材17によって連結されている。
【0020】
また、室内側熱交換室5に設けられた室内熱交換器7およびシロッコファン8等の上部であって、折曲形成されている仕切板4の上端部には、図2に示すように、板金で形成された天板18がねじ締めにより固定されている。
【0021】
シロッコファン8は、図3乃至図5に示すように、室内側ファンリング9を備えたファンケーシング10内に収納され、図2に示す室内熱交換器7で冷媒と熱交換された空気を、室内側ファンリング9のベルマウス部9eからファンケーシング10内に導入したのち、室内側吹出用の開口2dから室内に吹き出すようにしている。
【0022】
ファンケーシング10は、シロッコファン8よりも大径のファンリング用開口部10xを有した発泡体(発泡スチロール)からなり、シロッコファン8の回転中心を境界に上下に分割した下部ファンケーシング10aと、上部ファンケーシング10bとで構成されている。
【0023】
上下に分割された境界位置において、下部ファンケーシング10aは、室内側ファンリング9の下半分に対応する半円状のファンリング用開口部の周縁10a1と、下部接合部10a2とを備える一方、上部ファンケーシング10bは、室内側ファンリング9の上半分に対応する半円状のファンリング用開口部の周縁10b1と、上部接合部10b2とを備えている。
【0024】
ファンケーシング10は、下部ファンケーシング10aに備えたファンリング用開口部の周縁10a1と、上部ファンケーシング10bに備えたファンリング用開口部の周縁10b1とで室内側ファンリング9を保持する保持部を構成し、保持部に隣接する内面側に、円環状に凹設された係合片受部10a3,10b3を備え、保持部に隣接する外面側に、矩形状に凹設された複数の係合爪受部10a4,10b4を備えている。
【0025】
また、下部ファンケーシング10aに備えた下部接合部10a2と、上部ファンケーシング10bに備えた上部接合部10b2とは、図示はしないが、接合するのと同時に嵌合する凹凸状の嵌合部を備えることで、接合した部位の気密性を確保できるようにしている。
【0026】
室内側ファンリング9は、図4および図5に示すように、シロッコファン8に隣接させた先端9fの内径9aがシロッコファン8の外径8aよりも小径で形成されることで、シロッコファン8に効率よく導風するベルマウス部9eと、ファンケーシング10に備えた保持部に係合するファンリング係合部9bとを備えている。
【0027】
ファンリング係合部9bは、ファンリング用開口部10xの全周縁の内面側に備えた係合片受部10a3,10b3に対応する円板状の係合片9cと、下部ファンケーシング10aのファンリング用開口部の周縁10a1の外面側に備えた複数の係合爪受部10a4,10a4に対応する複数の係合爪9dと、上部ファンケーシング10bのファンリング用開口部の周縁10b1の外面側に備えた複数の係合爪受部10b4,10b4に対応する複数の係合爪9dとを備えている。
【0028】
これにより、室内側ファンリング9は、ファンケーシング10に形成されたファンリング用開口部の周縁10a1および10b1からなる保持部によりファンリング係合部9bが密着して係合されることになって、ファンケーシング10に対し気密性を有して組み付けられるようになる。
【0029】
また、室内側ファンリング9が気密性を有して組み付けられた際、ファンケーシング10の保持部に備えた係合片受部10a3,10b3に室内側ファンリング9の係合片9cが係合し、複数の係合爪受部10a4,10a4と複数の係合爪受部10b4,10b4とに、複数の係合爪9dがそれぞれ係合する。
【0030】
なお、係合片受部10a3,10b3は、図示はしないが、ファンリング用開口部10xの全周縁の内面側に凹設するのではなく、ファンリング用開口部の周縁10a1の外面側に備えた複数の係合爪受部10a4,10a4と同様に形成されてもよい。
【0031】
その場合には、上述した係合片9cは、円板状ではなく複数の係合爪受部10a4,10a4にそれぞれ係合する複数の係合爪9dと同様の形状に形成されることで、ファンケーシング10の内面側と外面側とで複数の係合爪受部10a4,10a4に係合する。
【0032】
複数の係合爪9dの側部が、ファンリング用開口部の周縁10a1に備えた複数の係合爪受部10a4,10a4の側部で規制され、また、ファンリング用開口部の周縁10b1に備えた複数の係合爪受部10b4,10b4の側部で規制されることで、室内側ファンリング9は、回動しないよう位置決めされた状態で保持部に係合することになる。
【0033】
回動しないように保持された室内側ファンリング9は、ベルマウス部9eの先端9fの内径9aがシロッコファン8の外径8aよりも小径に形成されている。これにより、ファンケーシング10内への導風性を良好にして、シロッコファン8による送風性能を高めることができるようになる。
【0034】
また、ファンリング用開口部の周縁10a1および10b1からなる保持部(ファンリング用開口部10x)は、シロッコファン8の外径8aよりも大径に形成されている。これにより、シロッコファン8を交換する際、シロッコファン8をファンモータ19の駆動軸19aに沿って保持部の側に移動できるようになる。
【0035】
そのため、上部ファンケーシング10bが、下部ファンケーシング10aから取り外され、室内側ファンリング9が、下部ファンケーシング10aのファンリング用開口部の周縁10a1から取り外されることで、シロッコファン8を保持部の側に移動させて容易に交換できるようになる。
【0036】
以上説明したように、本発明の構成によれば、室内側ファンリング9が合成樹脂により形状および寸法が精度よく形成され、気密性を有してファンケーシング10に保持されることで、室内側ファンリング9からファンケーシング10内に導風して、シロッコファン8により室内側吹出口1aから吹き出す送風性能を高めることができる。
【0037】
また、ファンケーシング10が、下部ファンケーシング10aと上部ファンケーシング10bとに分割形成され、室内側ファンリング9が着脱可能に保持されるので、上部ファンケーシング10bおよび室内側ファンリング9を取り外すことで、シロッコファン8を、駆動軸19aの方向に移動可能にして容易に交換できるようにした一体型空気調和機となる。
【符号の説明】
【0038】
1 内部ユニット
1a 室内側吹出口
1b 操作部
2 外胴
2a 室外側吸込口
2b 室外側吹出口
2c 室内側吸込口
2d 室内側吹出用の開口
2e 前面パネル
3 ベース
4 仕切板
4a ねじ孔
5 室内側熱交換室
6 室外側熱交換室
7 室内熱交換器
8 シロッコファン
8a 外径部
8b 吸込側
9 室内側ファンリング
9a 内径部
9b ファンリング係合部
9c 係合片
9d 係合爪
9e ベルマウス部
9f 先端
10 ファンケーシング
10a 下部ファンケーシング
10a1 ファンリング用開口部の周縁
10a2 下部接合部
10a3 係合片受部
10a4 係合爪受部
10b 上部ファンケーシング
10b1 ファンリング用開口部の周縁
10b2 上部接合部
10b3 係合片受部
10b4 係合爪受部
10x ファンリング用開口部
11 室外熱交換器
12 プロペラファン
13 室外側ファンリング
14 エアガイダ
15 圧縮機
16 側板
17 支持部材
18 天板
19 ファンモータ
19a 駆動軸
20 モータ取付台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース上に立設した仕切板により内部ユニットを室内側熱交換室と室外側熱交換室とに区画し、室内側熱交換室に室内熱交換器と、シロッコファンと、同シロッコファンを囲むファンケーシングと、同ファンケーシングに付設した室内側ファンリングとを備え、室外側熱交換室に室外熱交換器と、圧縮機と、プロペラファンと、同プロペラファンと前記シロッコファンとを駆動するファンモータとを備えた一体型空気調和機において、
前記ファンケーシングは、前記シロッコファンよりも大径のファンリング用開口部を有して、前記シロッコファンの回転中心を境に上下に分割した下部ファンケーシングと上部ファンケーシングとからなり、前記下部ファンケーシングのファンリング用開口部の周縁と、前記上部ファンケーシングのファンリング用開口部の周縁とからなる保持部を備え、
前記室内側ファンリングは、前記シロッコファンに近接させた先端が少なくとも同シロッコファンの外径よりも小径で形成されるとともに、前記室内熱交換器側および前記シロッコファン側の外周縁に、前記保持部に係合する複数の係合爪を有するファンリング係合部を備えたことを特徴とする一体型空気調和機。
【請求項2】
前記ファンケーシングの保持部は、前記係合爪の側端を位置決めして受ける凹状の係合爪受部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の一体型空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−68339(P2013−68339A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205799(P2011−205799)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】