説明

一体型非対称膜、その製造方法およびその使用

a)膜形成ポリマーおよび溶剤系を含有する紡糸液を製造する工程、b)紡糸液を成形工具により第1および第2の表面を有する成形体にする工程、c)第1および/または第2の表面を沈殿剤系と接触させて第1および/または第2の表面上に分離層を有する膜を形成する工程、d)膜を洗浄し、かつ場合により乾燥させる工程、を有する、少なくとも1の分離層および該分離層と境界を接する支持層とを有する一体型非対称膜の製造方法において、工程c)で沈殿剤系が負の固定電荷を有する高分子電解質を含有する。本発明による膜は、公知の方法により製造された膜と比較して、中程度の大きさの分子、たとえばシトクロムCと、高分子のタンパク質、たとえばアルブミンとの間の明らかにより高い分離精度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
詳細な説明:
本発明は一体型非対称膜、その製造方法およびその使用に関する。
【0002】
一体型非対称膜およびその製造方法は公知であり、かつたとえばEP0828553B1、EP0361085B1およびEP0168783B1に記載されている。一体型非対称膜とは、前記の文献および本発明において、分離層および支持層を有し、その際、分離層および支持層が同一の材料からなっており、かつ膜を製造する際に一緒に形成され、これにより両方の層は一体のユニットとして相互に結合している膜であると理解される。このような膜は特に医療分野で、たとえば血液透析において、および食料品分野で、たとえば飲料からアルコールを除去するための分離操作のために使用される。
【0003】
一体型非対称膜に対して複合膜とは、すでに完成している(ミクロ)多孔質の支持層または支持膜上に、後から、つまり別の方法工程により、たとえば膜形成ポリマーによる被覆により、またはこのポリマーを形成するモノマーによるグラフトにより緻密な分離層を施与することによって得られる多層の構造を示す。この別の方法工程は、その製造の際に分離層および支持層が、成形された膜形成ポリマー溶液を沈殿剤系と単に接触させることにより生じる一体型非対称膜の製造の際には省略される。
【0004】
膜を評価する際の重要な基準は、その分離特性、つまり分離限界および分離精度である。その際、分離限界とは、膜の分離層の細孔の直径により条件付けられる一定の大きさの分子または物質に関する排除限界であると理解される。分離精度は膜の選択性に関する情報を与えるものである。
【0005】
たとえば血液透析の場合は特に、透析患者の血液はできる限り高分子のタンパク質、たとえばアルブミン(分子量65000ダルトン)を失わないことが重要である。従って膜はアルブミンに関してできる限り0.000に近いふるい係数SKを有しているべきである。同時に膜は尿素に関して、および低分子量の尿毒症毒素に関して、たとえばクレアチニンまたはリン酸塩に関してのみでなく、いわゆる中程度の分子、つまり中程度の分子量を有するタンパク質に関して、たとえばβ2−ミクログロブリンに関してもできる限り完全に透過性であるべきである。つまり膜はβ2−ミクログロブリンに関して理想的な場合にはできる限り1000に近いSKを有しているべきである。
【0006】
しかし従来公知の膜はこれらの要求を不十分に満足するにすぎない。従来公知の膜はβ2−ミクログロブリンに関して、またはβ2−ミクログロブリンのための標識分子として使用されるシトクロムCに関して、さらに明らかに1を下回るSKを示す。同時にしばしばアルブミンに関して、たしかにゼロに近いが、しかしなお自然な腎臓の場合よりも明らかに大きいふるい係数が維持される。従ってたとえばEP828553の例13の記載により製造される膜は、シトクロムCに関して0.75のふるい係数ならびにアルブミンに関して0.05のふるい係数を有する。EP0168783B1に開示されている膜はたしかにアルブミンに関してより小さいふるい係数を有しているが、しかし、中程度の分子の範囲ではこれに対して達成される分離性能はなお満足のいくものではない。
【0007】
従って、改善された分離精度を有する一体型非対称膜に対する要求はいまだなお存在する。
【0008】
従って本発明の課題は、上記の欠点を少なくとも低減することである。
【0009】
前記課題は、以下の工程:
a)膜形成ポリマーおよび溶剤系を含有する紡糸液を製造する工程、
b)紡糸液を成形工具により第1および第2の表面を有する成形体にする工程、
c)第1および/または第2の表面を沈殿剤系と接触させて第1および/または第2の表面に分離層を有する膜を形成する工程
d)膜を洗浄し、かつ場合により乾燥させる工程
を有する、少なくとも1の分離層および該分離層と境界を接する支持層とを有する一体型非対称膜の製造方法において、工程c)で沈殿剤系が負の固定電荷を有する高分子電解質を含有することを特徴とする、一体型非対称膜の製造方法により解決される。
【0010】
意外なことに本発明による方法によれば、公知の方法により製造された膜と比較して、中程度の分子、たとえばシトクロムCと、高分子のタンパク質、たとえばアルブミンとの間の明らかに向上された分離精度を有する一体型非対称膜を製造することができる。本発明による方法の有利な実施態様では、シトクロムCに関して1000までの値を有するふるい係数SKCCを有し、かつ同時にウシ血清アルブミンに関して0.000まで低下した値を有するふるい係数SKAlbを有する膜を製造することができ、この方法について以下に詳細に説明する。
【0011】
精度の高い分離特性および優れたアルブミン阻止率に基づいて、本発明による膜の構造もしくは分離層は、ウシ血清アルブミンに関するふるい係数の不所望の上昇につながることなく、より開放性に実施することさえ可能である。このことにより同時にシトクロムCに関するふるい係数をさらに高めることができ、かつ低分子量のタンパク質、たとえばβ2−ミクログロブリンの除去をさらに改善することができる。従って意外にも本発明による方法の多数の実施態様により、実施例で示されるような上記の高い選択性のみならず、高い限外濾過速度の形で高い透過性も有している一体型非対称膜が提供される。さらに本発明による方法により製造される一体型非対称膜は通常、改善されたパイロジェン阻止率を示す。さらに、本発明による方法は、公知の膜製造法を方法技術的にわずかに変更することにより実施可能である、つまりそれまで使用されていた沈殿剤系を使用し、該沈殿剤系に負の固定電荷を有する高分子電解質を単に添加することにより実施可能であることを指摘すべきである。
【0012】
本発明の範囲で負の固定電荷を有する高分子電解質とは、負の電荷を有する官能基または負の電荷を有する官能基をほぼ塩基性の媒体中で形成することができるポリマーを意味し、その際、官能基はポリマーに共有結合している。このことにより強制的に負の電荷もまた共有結合により、つまり固定的にポリマーに結合されている。
【0013】
重要なことは、本発明により使用される負の固定電荷を有する高分子電解質が実際に前記で定義された特性を有するポリマーであり、つまりその中で多数の、有利には少なくとも数百および特に有利には少なくとも数千のモノマー単位が共有結合している分子であり、このことによって有利に>7000ダルトンの範囲および特に有利には>70000ダルトンの範囲の分子量が生じることである。沈殿剤系中での負の固定電荷を有する低分子の電解質、たとえばその3つの酸基が3つのマイナスイオンを形成することができるクエン酸の使用は、高い分離精度を有していない膜につながる。同様に、本発明により使用される高分子電解質は負の固定電荷を有していることが重要である。正の固定電荷を有する高分子電解質、たとえばビニルピロリドンおよびメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドからなるコポリマーを内部の充填材に使用する場合、同様に高い分離精度を有していない膜が生じる。
【0014】
沈殿剤系中での負の固定電荷を有する高分子電解質として、たとえばフェノール基を有するポリマーが適切である。本発明による方法の有利な実施態様では、工程c)において沈殿剤が、ポリリン酸、ポリスルホン酸またはポリカルボン酸の群から選択されている負の固定電荷を有する高分子電解質、ポリカルボン酸の中で特にアクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーを含有する。本発明による方法により製造される膜の分離挙動の改善に関して、特に
− 部分的に架橋したアクリル酸、
− メタクリル酸およびメチルメタクリレートからなるコポリマー、
− アクリル酸およびビニルピロリドンからなるコポリマーおよび
− アクリル酸、ビニルピロリドンおよびラウリルメタクリレートからなるコポリマー
が効果的であることが判明した。
【0015】
中程度の分子、たとえばシトクロムCと、高分子のタンパク質、たとえばアルブミンとの間の分離精度の特に顕著な向上は、負の固定電荷を有する高分子電解質が、分離層の形成のために使用される沈殿剤系が完全に可溶性であるが、しかし沈殿剤系の個々の成分中には溶解しないように選択する場合に観察される。
【0016】
さらに中程度の分子と高分子のタンパク質との間の分離精度の特に顕著な向上は、本発明により使用される負の固定電荷を有する高分子電解質が、紡糸液と接触する場合に有利に完全に沈殿するように選択される場合に観察される。
【0017】
分離層を形成するために使用される沈殿剤系の質量に対する、負の固定電荷を有する高分子電解質の質量割合は、有利には0.01〜10質量%および特に0.05〜1質量%である。0.01質量%を下回る質量割合の場合、上記の分離精度の顕著な向上は観察されない。10質量%を上回る質量割合の場合、高分子電解質の溶解性はしばしば不十分であり、かつ得られる膜の限外濾過速度は低下する。
【0018】
本発明による方法の工程a)において、公知の膜形成ポリマーを含有する紡糸液を製造する。その際、膜形成ポリマーの選択は特に、その中にこれにより製造される膜が使用されるべき媒体にあわせて調整される。たとえば疎水性の分離媒体に関しては疎水性の、および親水性の分離媒体に関しては親水性の膜形成ポリマーを使用して、そのつどの分離媒体により必要とされる濡れを保証する。同時に膜形成ポリマーは分離媒体中で不溶性でなくてはならない。
【0019】
たとえば血液透析において使用される媒体に属する、疎水性の分離媒体のための膜を製造するために、本発明による方法の工程a)において膜形成ポリマーとして有利にはセルロースポリマー、つまりセルロースまたはセルロース誘導体、たとえばベンジルセルロース、二酢酸セルロースもしくは三酢酸セルロースもしくはジエチルアミノエチルセルロースもしくはこれらのポリマーの混合物を使用する。
【0020】
本発明による方法のもう1つの有利な実施態様では、工程a)において膜形成ポリマーとして、特に有利にはポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンおよびポリフェニレンスルフィドの群から、または前記のポリマーの変態の群から、または前記のポリマーの混合物の群から、または前記のポリマーのモノマーからなるコポリマーの群から選択されている合成ポリマーを使用する。
【0021】
紡糸液中の膜形成合成ポリマーの濃度は有利には12〜30質量%の範囲、好ましくは15〜25質量%の範囲である。12質量%より低いと、紡糸工程を実施する際に、ひいては得られる膜の機械的安定性において欠点が生じる。30質量%を上回ると、得られる膜は構造が緻密になりすぎ、従って透過性が低下する。
【0022】
前記の膜形成合成ポリマーは程度の差はあるものの、顕著に疎水性であるので、これらのポリマーは、膜を溶解しない疎水性分離媒体中で使用するための膜の製造のために適切である。
【0023】
親水性の分離媒体中で使用すべき膜を製造するために、本発明による方法の工程a)では、そのままで分離媒体により十分に濡れるが、しかしその中で溶解することのない(コ)ポリマー、たとえばポリアミド、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、ポリエーテル−ポリアミドブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリカーボネートブロックコポリマーの群からの親水性のポリマーまたは変性された本来親水性のポリマー、たとえばスルホン酸基により変性されたポリスルホンまたはポリエーテルスルホンを使用するか、あるいは紡糸液を製造するための本発明による方法のもう1つの有利な実施態様ではさらに、一方では膜形成ポリマーと相容性であり、かつ他方では得られる膜が親水性分離媒体中で十分に濡れることができることが保証される親水性のポリマーを使用する。このような親水性ポリマーは有利にはポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリグリコールモノエステル、ポリソルビテート、たとえばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートまたはカルボキシメチルセルロースの群から選択される。前記の親水性ポリマーの成分からなるコポリマーもまた使用することができる。さらに前記の親水性ポリマーからなる混合物を使用することもでき、その際、ポリマーは、たとえば5倍もしくはそれ以上異なった、異なる分子量を有していてよい。特に有利には、紡糸液を製造するための付加的な親水性ポリマーとしてポリビニルピロリドンを使用する。
【0024】
紡糸液を製造する際に使用される付加的な親水性ポリマーは、親水性分離媒体中でのその湿潤性を保証する機能と並んで、紡糸液の粘度を高める作用も有する。さらに該ポリマーは膜構造を形成する際の成核剤および/または気孔形成剤としても機能することができる。付加的に使用される親水性のポリマーは、そのつど本発明による方法の工程a)の紡糸液の質量に対して、0.1〜30質量%、有利には1〜25質量%および特に有利には5〜17質量%の濃度で使用する。付加的な親水性ポリマーの実質的な割合は膜の本発明による製造の際に工程d)において抽出の間に洗浄される。しかし親水性分離媒体中で必要とされる得られる膜の湿潤性に基づいて、付加的な親水性ポリマーの一定の割合が得られる膜中に残留することが必要である。この割合は、そのつど完成した膜の質量に対して1〜15質量%および特に有利には3〜10質量%の間である。
【0025】
紡糸液を製造するために使用される溶剤系は膜形成ポリマーに適合させることができる。本発明による方法の工程a)において疎水性の合成ポリマーを膜形成ポリマーとして使用し、かつ付加的な親水性ポリマーを使用する場合、溶剤系は本発明によればたとえば極性の非プロトン性溶剤、たとえばε−カプロラクタム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドまたはN−メチルピロリドンまたはこれらの混合物を含む。さらに溶剤系は、たとえばε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネートまたはポリアルキレングリコールの場合、補助溶剤を含有していてもよい。さらに、溶剤系は膜形成ポリマーにとっての非溶剤、たとえば水、グリセリンまたは低分子アルコール、たとえばエタノールもしくはイソプロパノールを含有していてもよい。
【0026】
本発明による方法により平膜を製造すべき場合、工程b)において、紡糸液を脱気および濾過した後で、溶解しなかった粒子を除去するために平膜の製造のために公知の成形工具、たとえばドクターナイフを用いて、第1の表面、つまり上面と、第2の表面、つまり下面とを有する成形体にすることができる。引き続き本発明による方法の工程c)において、その上面および/または下面を有する成形体を、負の固定電荷を有する高分子電解質を含有する沈殿剤系と接触させ、このことによりその上面および/または下面に分離層を有する一体型非対称平膜が生じる。最後に本発明による方法の工程d)において一体型非対称膜を洗浄し、溶剤系の残分を除去し、かつさらに溶解した有機成分を抽出し、かつ場合により乾燥させる。
【0027】
本発明による方法により有利には中空繊維膜を製造する。従って以下の詳細な説明は、中空繊維膜の製造に関する。しかし当業者は、以下に記載される製造手順を平膜の製造の際に必要とされる手順に容易に適用することができる。
【0028】
中空繊維膜を有利に製造する際に、本発明による方法の工程b)における成形工具としてたとえば通例の中空繊維ノズルを使用し、そのリングギャップによりあらかじめ脱気し、かつ濾過した紡糸液を、内腔に面した第1の表面としての内側表面と、第2の表面としての外側表面とを有する中空繊維の成形体にする。さらに工程b)において、紡糸液を複数の内側の面を有する中空繊維の成形体にすることができる。
【0029】
本発明による方法の有利な実施態様では、中空糸ノズル中でリングギャップに対して同軸に配置された中心のノズル開口部により膜形成ポリマーのための沈殿剤系を押し出し、その際、該沈殿剤系は同時に、中空糸の内腔を安定化する内部充填材である。中空糸ノズルを離れた後に、工程c)においてこの沈殿剤系を中空繊維の成形体の内側表面と接触させ、これにより内腔側の分離層を有する一体型非対称中空繊維膜が形成される。
【0030】
内部充填材は、前記の溶剤、有利には、紡糸液の製造のためにも使用された溶剤を含む。あるいは内部充填材は紡糸液を製造するために使用される溶剤系を含有していてもよい。いずれの場合でも、内部充填材は付加的に、膜形成ポリマーの凝固ひいては内腔側の分離層の形成を開始し、かつ紡糸液中に場合により存在する別の親水性ポリマーを溶解する非溶剤を含有する。紡糸液の製造のために使用される溶剤系中に、非溶剤が含有されている場合、内部充填材は同一の非溶剤を含有しており、その際、当然のことながら、十分な沈殿作用を達成するために、内部充填材中の非溶剤の濃度は溶剤系中におけるよりも大きい。しかし内部充填材のために、紡糸液を製造するために使用した溶剤系中で使用された溶剤とは異なった別の非溶剤を使用することもできる。最終的に沈殿剤系中で種々の非溶剤の混合物もまた使用することができる。本発明によれば工程c)において使用され、かつ沈殿剤系として作用する内部充填材は、負の固定電荷を有する高分子電解質を含有する。
【0031】
内腔側の分離層に境界を接している支持層のため、もしくは中空繊維膜の外側表面のために所望される構造に依存して、中空繊維は本発明による方法の有利な実施態様では中空糸ノズルから排出された後にまず、中空糸が外部凝固浴中に浸漬され、かつ該浴を通過する前にエアーギャップを通過する。その際、該エアーギャップは特に有利には水蒸気により湿度および温度を調整され、このことにより、たとえば温度および湿度が調整された雰囲気から非溶剤を計量的に吸収することによって、中空繊維の外側での凝固が開始する前に、定義された条件を調整し、これにより凝固が遅延されて行われる。拡散的に誘導される凝固はこの場合、有利に温度調整され、かつ有利には水浴である外部凝固浴中で完了し、かつ膜構造が固定される。中空繊維を外部凝固浴に浸漬する前に、内部の液体の沈殿作用に基づいて内側から外側へと沈殿している場合、外部凝固浴は、膜構造を固定し、かつすでに中空繊維の抽出を担うという課題のみを有する。中空繊維の外側の凝固を遅延させる調温調湿されたエアーギャップを使用する代わりに、内部充填材より小さい沈殿作用を有する外部凝固浴中へと直接押し出すこともできる。
【0032】
本発明による方法の前記の実施態様では、負の固定電荷を有する高分子電解質を内部充填材に添加して、内腔側の分離層を有する一体型非対称中空繊維膜が得られ、該膜は負の固定電荷を有する高分子電解質を物理的に結合して含有している。
【0033】
しかし本発明による方法によれば同様に、中空糸の成形体にされた紡糸液を外部凝固浴を用いて外側から内側へと沈殿させることも可能であり、その際、外部凝固浴は負の固定電荷を有する高分子電解質を溶解して含有している。この場合、外側に負の固定電荷を有する高分子電解質が物理的に結合して含有されている分離層を有する一体型非対称中空繊維膜が得られる。
【0034】
さらに本発明による方法によれば、中空繊維の成形体にされた紡糸液は同時に、内部充填材を用いても、外部充填材を用いても接触させ、かつ凝固させることができ、その際、内部充填材においても、外部凝固浴においても負の固定電荷を有する高分子電解質が溶解している。その際、外部凝固浴中で内部充填材と同様の負の固定電荷を有する高分子電解質であり、その際、高分子電解質の濃度は外部凝固浴において、および内部充填材において、すでに記載した境界値の中にあり、かつその際、外部凝固浴中および内部充填材中の高分子電解質の濃度は同じであるか、または異なっていてもよい。同様に外部凝固浴中に、内部の液体中に溶解している負の固定電荷を有する高分子電解質とは異なった負の固定電荷を有する高分子電解質が溶解していてもよく、その際、高分子電解質の濃度は外部凝固浴中および内部の液体中で前記の範囲であり、かつ同じであるか、または異なっていてもよい。内腔側の分離層および外側の分離層を有する一体型非対称中空繊維膜が得られ、その際、前記の分離層は、同一もしくは異なった負の固定電荷を有する高分子電解質を物理的に結合して含有している。
【0035】
いずれの場合でも、本発明による方法の工程b)およびc)の教示によれば、中空糸の成形体にされた紡糸液は、凝固作用のある内部充填材および/または外部凝固浴と接触され、その際、内部充填材および/または外部凝固浴は負の固定電荷を有する高分子電解質を含有することに留意すべきである。
【0036】
一体型非対称構造の凝固および固定に引き続き、本発明による方法の工程d)で膜を抽出し、場合により乾燥させ、かつ場合により束になった中空繊維膜の交換特性を改善するために構造化する。最後に中空繊維膜を通例の方法、たとえばリールに巻き取るか、または適切な糸数および長さを有する束へと加工する。束を製造する前に、中空繊維膜に、中空繊維膜相互の間隔をもたらし、かつ個々の中空繊維膜におけるより良好な流れをもたらすために、混紡糸(Beilegfaden)もまた、たとえばマルチフィラメント糸の形で添加することもできる。
【0037】
本発明の根底の課題はさらに、少なくとも1の分離層および支持層を有する一体型非対称膜において、分離層中で負の固定電荷を有する高分子電解質が物理的に結合していることを特徴とする膜により解決される。
【0038】
このような膜は意外にも、従来公知の膜と比較して中程度の分子、たとえばシトクロムCと、高分子のタンパク質、たとえばアルブミンとの間の明らかにより高い分離精度を示す。実施例において詳細に記載する、有利な実施態様では、本発明による膜はシトクロムCに関して、0.9を上回る値を有するふるい係数SKCCを有し、かつ同時にウシ血清アルブミンに関して0.003を下回る値を有するふるい係数SKAlbを有する。さらに、上記の高い選択率のみならず、高い限外濾過速度の形での高い透過性もまたしばしば観察される。さらに本発明による一体型非対称膜は改善されたパイロジェン阻止率を有する。
【0039】
本発明による膜は、平膜として存在していても、または中空繊維膜として存在していてもよく、その際、膜を形成するポリマーに関して、場合により存在する付加的な親水性ポリマーに関して、および負の固定電荷を有する高分子電解質に関して、本発明による方法を記載する際にすでに記載したことが同様に該当する。
【0040】
従って本発明による一体型非対称膜は、片面および/または両面に分離層を有し、その中に含有されている、負の固定電荷を有する高分子電解質を含有する平膜および内腔側および/または外側の分離層を有し、かつその中に含有されている負の固定電荷を有する高分子電解質を含有する中空繊維膜を包含する。
【0041】
本発明による膜は、負の固定電荷を有する高分子電解質が膜の1もしくは複数の分離層中に物理的に結合していることを特徴とする。このことは、前記の高分子電解質が本発明による膜の分離層中で化学的に結合しているのはないことを意味している。分離層中での高分子電解質の物理的な結合は非常に安定しているので、膜を湿式化学的に製造する際に回避することのできない洗浄、抽出および殺菌も、分離媒体中、たとえば血液透析のために一般的な分離媒体中での本発明による膜の使用も、膜の高分子電解質の顕著な損失につながらないか、または高分子電解質を含有していない膜につながることがない。以下の説明に拘束されることを望むことなく、たとえば前記の本発明による方法において、工程b)で形成される溶剤で濡れた成形体を工程c)において高分子電解質を含有する沈殿剤と接触させることにより実現されるような高分子電解質のポリマー鎖と膜形成ポリマーのポリマー鎖との結合および絡み合いは、高分子電解質を本発明による膜の分離層中に安定的に結合することが推測される。
【0042】
いずれの場合でも、本発明による膜中、もしくは本発明による方法により製造される膜中の負の固定電荷を有する高分子電解質はその抽出の後でも検出することができる。膜分離層中の高分子電解質のこの検出はたとえばESCA、IR分光分析、たとえばFTIR−ATRにより、または酸性の高分子電解質と塩基性の着色剤との反応により行われる。おそらく、本発明による膜の分離層中で物理的に固定された、負の固定電荷を有する高分子電解質は、本発明による一体型非対称膜をその抽出前および抽出後に変化させることなく、たとえばシトクロムC/アルブミンの分離のための選択率の変化のない高い値を示すことをもたらしているのであろう。同じことが本発明による方法により製造した膜に関しても該当する。
【0043】
これに対して負の固定電荷を有する高分子電解質の、高分子電解質のポリマー鎖と膜形成ポリマーのポリマー鎖との固定および絡み合いがほぼ不可能である、すでに完全に沈殿された膜上での本発明によらない使用は、分離精度の向上を全く生じない。
【0044】
有利な実施態様では本発明による一体型非対称膜は分離層に境界を接し、高分子電解質を含有していない支持層を有している。
【0045】
もう1つの有利な実施態様では、本発明による一体型非対称膜は内腔側の分離層を有する中空繊維膜であり、該膜の厚さは特に有利には0.1〜2μmである。本発明による方法により、ナノ濾過または限外濾過から精密濾過の下方の範囲までにおいて適用するための分離層を有する一体型非対称膜を製造することができる。従って本発明による膜はナノ濾過膜、限外濾過膜または精密濾過膜である。
【0046】
本発明による膜もしくは本発明による方法により製造される膜は有利にはタンパク質の分離のために、たとえばすでに記載したように、β2−ミクログロブリンのための標識物質として役立つシトクロムCおよびアルブミンの分離のために使用することができる。従って本発明による膜もしくは本発明による方法により製造される膜は有利には血液透析、血液透析濾過または血液濾過の分野で使用することができ、とりわけ本発明による膜はその高い選択率がしばしば、高い限外濾過速度と組み合わされる。
【0047】
本発明による膜もしくは本発明による方法により製造される膜は、さらに有利には、負の固定電荷を有する高分子電解質と反応する薬剤による化学的変性のために使用することができる。これにより化学的に不活性の膜、たとえばポリエーテルスルホン膜を同様に、容易かつ特定の方法で親和性膜とすることができる。
【0048】
本発明を以下に記載される実施例に基づいて詳細に説明する。ここでは得られる膜を特性決定するために以下の方法を適用した:
アルブミン溶液中での限外濾過速度UFRALB、シトクロムCに関するふるい係数SKCCおよびアルブミンに関するふるい係数SKALB
上記の膜特性の測定は、DIN58353、第2部に準拠して行う。試験溶液として、ウシ血清アルブミン(BSA)50g/lおよびシトクロムC100mg/lを含有する、リン酸塩により緩衝された食塩溶液(PBS)を使用する。PBS溶液の処方はドイツ薬局方(DAB 10、補足1、1992、VII.I.3、「リン酸塩緩衝液pH7.4、塩化ナトリウム含有R」)に由来する。測定は37±1℃で、約250cm2の有効膜面積および180mmの有効中空繊維膜長さを有する中空繊維膜モジュールを用いて行う。膜モジュールの入口側に存在する第1のポンプを介して、中空繊維膜を通過する体積流QB=200ml/(分・m2)を調整する。第2のより緩慢に搬送する、膜モジュールの出口側のポンプにより膜透過性に応じて、つまりUFRALBに応じてQF=30ml/(分・m2)またはQF=10ml/(分・m2)の濾液流量を調整し、その際、約25[ml/(h・m2・mmHg)]のUFRALBまではQF=10ml/(分・m2)の濾液流量が調整される。QFの結果として調整される膜間圧力TMPを測定の間に把握する。
【0049】
UFRALBは式
UFRALB=(QF・60)/(TMP・0.75)[ml/(h・m2・mmHg)]
により算出され、その際、QFは有効膜面積1m2に対する濾液流量を[ml/(分・m2)]で表し、かつTMPは膜間圧力を[hPa]で表す。
【0050】
ふるい係数SKの測定は、式
SK=2・CF/(CST+CR
により行い、上記式中で、CFは濾液中のアルブミンもしくはシトクロムCの濃度を表し、CSTはアルブミンもしくはシトクロムCの当初の濃度、つまり50g/lもしくは100mg/lを表し、かつCRは残留液中のアルブミンもしくはシトクロムCの濃度を表す。
【0051】
アルブミン濃度の測定はベーリンガー・マンハイムの方法により、たとえばHitachi 704自動分析装置中で吸光度の測定により行う。試験原理として、シトクロムCが分析的な測定に影響を与えないことを保証するブロムクレゾールグリーン法を使用する。
【0052】
シトクロムC濃度の測定は、λ=415nmで吸光度E415の測定により行い、これも同様に自動分析装置、たとえばHitachi704中で実施することができる。アルブミンは同様にλ=415nmで吸収されるので、アルブミンの吸光度はλ=415nmで0〜約80g/lの濃度範囲CALBで測定され、かつ濃度に対して吸光度をプロットする際に得られる直線の上昇mALB415を測定する。
【0053】
シトクロムCに相応する補正された吸光度E415korrは式
415korr=E415−CALB・mAL415
により測定される。
【0054】
比較例1
紡糸液を製造するために、
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.50質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.65質量%、
ε−カプロラクタム 31.75質量%、
γ−ブチロラクトン 31.75質量%および
グリセリン 3.35質量%
を約100℃の温度で強力に混合する。得られる溶液を約60℃に冷却し、脱気し、濾過し、かつ67℃に調温された中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、質量比61:4:35のε−カプロラクタム/グリセリン/水からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜は調温調湿流路(Klimakanal)(雰囲気:約55℃、相対空気湿度80%)に案内し、約75℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させ、かつ固定し、約90℃の温水で洗浄し、かつ乾燥させる。約0.2mmの内腔直径および約0.03mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0055】
例1a
比較例1と同様に中空糸膜を製造するが、しかし、内部充填材中にその質量に対してさらに高分子電解質のAcrylidone ACP 1005(ISP社)0.25質量%が溶解している点が異なる。Acrylidone ACP 1005はアクリル酸75%とビニルピロリドン25%とからなるコポリマーである。内部充填材を製造するために、まずε−カプロラクタムと水とからなる混合物を装入し、該混合物中にAcrylidone ACP 1005を溶解し、かつ最後にグリセリンを添加する。
【0056】
例1b
比較例1と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Rohagit S hv(Degussa/Roehm社)が0.25質量%溶解している点が異なる。Rohagit S hvはメタクリル酸およびメチルメタクリレートからなるコポリマーである。内部充填材を製造するために、まずε−カプロラクタム/水からなる混合物を装入し、この混合物にRohagit S hvを溶解し、かつ最後にグリセリンを添加する。
【0057】
第1表には比較例1から、および例1aおよびbからの中空糸膜のUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0058】
【表1】

【0059】
第1表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、ほぼ同一の限外濾過速度で、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じる。
【0060】
比較例2
紡糸液を製造するために、
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP) 13.68質量%、
ε−カプロラクタム 31.98質量%、
γ−ブチロラクトン 31.98質量%および
グリセリン 3.36質量%、
を約100℃の温度で強力に混合する。得られる溶液を約60℃に冷却し、脱気し、濾過し、かつ62℃に調温された中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、質量比55:45のε−カプロラクタム/水からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜は約70℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させ、かつ固定し、約90℃の温水で洗浄し、かつ乾燥させる。約0.2mmの内腔直径および約0.035mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0061】
例2
比較例2と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Acrylidone ACP 1005(ISP社)が0.5質量%溶解している点が異なる。内部充填材を製造するために、まずε−カプロラクタム/水からなる混合物を装入し、この混合物にAcrylidone ACP 1005を溶解する。
【0062】
第2表には比較例2から、および例2からの中空糸膜のUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0063】
【表2】

【0064】
第2表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じる。
【0065】
比較例3
紡糸液を製造するために、
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.68質量%、
ε−カプロラクタム 31.98質量%、
γ−ブチロラクトン 31.98質量%および
グリセリン 3.36質量%
を約100℃の温度で強力に混合する。得られる溶液を約60℃に冷却し、脱気し、濾過し、かつ62℃に調温された中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、質量比55:45のε−カプロラクタム/水からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜は調温調湿流路(雰囲気:約55℃、相対空気湿度80%)に案内し、約55℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させ、かつ固定し、約90℃の温水で洗浄し、かつ乾燥させる。約0.2mmの内腔直径および約0.035mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0066】
例3
比較例3と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Acrylidone ACP 1005(ISP社)が0.5質量%溶解している点が異なる。内部充填材を製造するために、まずε−カプロラクタム/水からなる混合物を装入し、この混合物にAcrylidone ACP 1005を溶解する。
【0067】
第3表には比較例3から、および例3からの中空糸膜のUFRALB(QF=10ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0068】
【表3】

【0069】
第3表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じる。
【0070】
比較例4
紡糸液を製造するために、
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%、
ジメチルアセトアミド(DMAC) 63.64質量%および
水 4.06質量%
を約70℃の温度で強力に混合する。得られる溶液を約50℃に冷却し、脱気し、濾過し、かつ40℃に調温された中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、DMAC 62質量部および水38質量部からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜は調温調湿流路(雰囲気:50℃、相対空気湿度90%)に案内し、約50℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させ、かつ固定し、90℃の温水で洗浄し、かつ90℃で乾燥させる。約0.2mmの内腔直径および約0.035mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0071】
例4
比較例4と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Acrylidone ACP 1005(ISP社)が0.5質量%溶解している点が異なる。内部充填材を製造するために、まずAcrylidone ACP 1005を溶剤中に分散させ、引き続き水を添加し、かつ約70℃で均質な溶液を製造する。該溶液を最終的に30℃に冷却する。
【0072】
第4表には比較例4から、および例4からの中空糸膜のUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0073】
【表4】

【0074】
第4表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じる。
【0075】
比較例5
紡糸液を製造するために、
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%、
N−メチルピロリドン(NMP) 62.96質量%および
水 4.74質量%
を約70℃の温度で強力に混合し、かつ溶解させる。得られる溶液を約60℃に冷却し、脱気し、濾過し、かつ60℃に調温された中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、NMP 50質量部および水50質量部からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜は調温調湿流路(雰囲気:50℃、相対空気湿度90%)に案内し、約70℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させ、かつ固定し、ならびに引き続き洗浄し、かつ乾燥させる。0.2mmの内腔直径および0.035mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0076】
例5
比較例5と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Acrylidone ACP 1005(ISP社)が0.5質量%溶解している点が異なる。内部充填材を製造するために、まずAcrylidone ACP 1005を溶剤中に分散させ、引き続き水を添加し、かつ約70℃で均質な溶液を製造する。該溶液を最終的に30℃に冷却する。
【0077】
第5表には比較例5から、および例5からの中空糸膜のUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0078】
【表5】

【0079】
第5表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じる。
【0080】
比較例6
紡糸液を製造するために、
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K90、ISP社) 4.75質量%、
ジメチルアセトアミド(DMAC) 68.62質量%および
グリセリン 7.63質量%
を約70℃の温度で強力に攪拌する。得られる溶液を約50℃に冷却し、脱気し、濾過し、かつ45℃に調温された中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、DMAC 47.5質量部、水47.5質量部およびグリセリン5質量部からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜は調温調湿流路(雰囲気:50℃、相対空気湿度90%)に案内し、70℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させ、かつ固定する。こうして得られた中空糸膜を引き続き約90℃の温水で洗浄し、かつ約90℃で乾燥させる。0.2mmの内腔直径および0.035mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0081】
例6
比較例6と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Acrylidone ACP 1005(ISP社)が0.5質量%溶解している点が異なる。内部充填材を製造するために、まずAcrylidone ACP 1005を溶剤中に分散させ、引き続き水を添加し、かつ約70℃で均質な溶液を製造する。該溶液を最終的に30℃に冷却する。
【0082】
第6表には比較例6から、および例6からの中空糸膜のUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0083】
【表6】

【0084】
第6表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じる。
【0085】
比較例7
紡糸液を製造するために、
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K90、ISP社) 4.75質量%、
ジメチルアセトアミド(DMAC) 68.62質量%および
グリセリン 7.63質量%
を約70℃の温度で強力に攪拌する。得られる溶液を約50℃に冷却し、脱気し、濾過し、かつ45℃に調温された中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、DMAC 30質量部、水65質量部およびグリセリン5質量部からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜は調温調湿流路(雰囲気:50℃、相対空気湿度90%)に案内し、70℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させ、かつ固定する。こうして得られた中空糸膜を引き続き約90℃の温水で洗浄し、かつ約90℃で乾燥させる。約0.2mmの内腔直径および約0.035mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0086】
例7
比較例7と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Acrylidone ACP 1005(ISP社)が0.5質量%溶解している点が異なる。内部充填材を製造するために、まずAcrylidone ACP 1005を溶剤中に分散させ、引き続き水を添加し、かつ約70℃で均質な溶液を製造する。該溶液を最終的に30℃に冷却する。
【0087】
第7表には比較例7から、および例7からの中空糸膜のUFRALB(QF=10ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0088】
【表7】

【0089】
第7表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じる。
【0090】
比較例8
ポリスルホン(Ultrason S 6010、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%、
N−メチルピロリドン(NMP) 65.87質量%および
水 1.83質量%
から、均質な紡糸液を製造する。このためにポリスルホンをまずNMPの主要部分中に70℃の温度で攪拌導入し、引き続き、90℃で溶解し、かつその後にPVP K30を撹拌下に添加し、かつ同様に溶解する。得られる溶液を50℃に冷却する。引き続き水および残りの量のNMPを添加する。得られる溶液を脱気し、濾過し、かつ40℃に温度調整されている中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、NMP60質量部および水40質量部からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜を調温調湿流路(雰囲気:50℃、相対空気湿度90%)に案内し、70℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させ、かつ固定する。引き続き膜を洗浄し、かつ乾燥させる。0.2mmの内腔直径および約0.035mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0091】
例8
比較例8と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Acrylidone ACP 1005(ISP社)が0.5質量%溶解している点が異なる。内部充填材を製造するために、まずAcrylidone ACP 1005を溶剤中に分散させ、引き続き水を添加し、かつ約70℃で均質な溶液を製造する。該溶液を最終的に30℃に冷却する。
【0092】
第8表には比較例8から、および例8からの中空糸膜のUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0093】
【表8】

【0094】
第8表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じ、その際、限外濾過速度は明らかに増大しさえする。
【0095】
比較例9
ポリエーテルイミド(Ultem 1010/1000、GE社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%および
N−メチルピロリドン(NMP) 67.7質量%
から、均質な紡糸液を製造する。このためにポリエーテルイミドをまず70℃の温度で攪拌導入し、引き続き、90℃で溶解し、かつその後にPVP K30を撹拌下に添加し、かつ同様に溶解する。こうして得られる溶液を50℃に冷却する。得られる溶液を濾過し、かつ40℃に温度調整されている中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、NMP75質量部および水25質量部からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜を調温調湿流路(雰囲気:50℃、相対空気湿度90%)に案内し、70℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させ、かつ固定する。洗浄および乾燥後に、0.2mmの内腔直径および0.035mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0096】
例9
比較例9と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Acrylidone ACP 1005(ISP社)が0.5質量%溶解している点が異なる。内部充填材を製造するために、まずAcrylidone ACP 1005を溶剤中に分散させ、引き続き水を添加し、かつ約70℃で均質な溶液を製造する。
【0097】
第9表には比較例9から、および例9からの中空糸膜のUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0098】
【表9】

【0099】
第9表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じる。
【0100】
比較例10
ポリフェニレンスルホン(Radel R 5000NT、Solvay社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%、
N−メチルピロリドン(NMP) 64.32質量%および
水 3.38質量%
から、均質な紡糸液を製造する。このためにポリフェニレンスルホンをまずNMPの主要部分中に70℃の温度で攪拌導入し、引き続き、90℃で溶解し、かつその後にPVP K30を撹拌下に添加し、かつ同様に溶解する。得られる溶液を50℃に冷却する。引き続き水および残りの量のNMPを添加し、かつ得られる溶液を強力に攪拌する。均質な溶液を脱気し、濾過し、かつ45℃に温度調整されている中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、NMP63質量部および水37質量部からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜を調温調湿流路(雰囲気:50℃、相対空気湿度90%)に案内し、70℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させ、かつ固定する。引き続き膜を洗浄し、かつ乾燥させる。0.2mmの内腔直径および0.035mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0101】
例10
比較例10と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Acrylidone ACP 1005(ISP社)が0.5質量%溶解している点が異なる。内部充填材を製造するために、まずAcrylidone ACP 1005をNMP中に分散させ、引き続き水を添加し、かつ約70℃で均質な溶液を製造する。該溶液を最終的に30℃に冷却する。
【0102】
第10表には比較例10から、および例10からの中空糸膜のUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0103】
【表10】

【0104】
第10表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じ、その際、限外濾過速度は明らかに増大しさえする。
【0105】
比較例11
紡糸液を製造するために、攪拌容器中で
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%、
N−メチルピロリドン(NMP) 62.96質量%および
水 4.74質量%
を約70℃の温度で強力に攪拌する。得られる溶液を約55℃に冷却し、脱気し、55℃で濾過し、かつ45℃に温度調整されている中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、NMP54質量部および水46質量部からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜を調温調湿流路(雰囲気:50℃、相対空気湿度90%)に案内し、約70℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させる。約85℃の温水を用いて洗浄し、かつ熱風で乾燥した後に0.2mmの内腔直径および0.035mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0106】
例11a〜e
比較例11と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Rohagit S hv(Degussa/Roehm社)がそのつど0.01〜0.25質量%溶解している点が異なる。内部充填材を製造するために、そのつどまずRohagit S hvをNMP中に分散させ、水を添加した後に約70℃で溶解し、かつ引き続き約30℃に冷却する。
【0107】
第11表には比較例11から、および例11a〜eからの中空糸膜のUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0108】
【表11】

【0109】
第11表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じる。
【0110】
比較例12
紡糸液を製造するために、攪拌容器中で
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%、
N−メチルピロリドン(NMP) 62.96質量%および
水 4.74質量%
を約70℃の温度で強力に攪拌する。得られる溶液を約50℃に冷却し、脱気し、濾過し、かつ45℃に温度調整されている中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、NMP54質量部および水46質量部からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜を調温調湿流路(雰囲気:50℃、相対空気湿度90%)に案内し、約63℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させる。85℃の温水を用いて洗浄し、かつ熱風で乾燥した後に0.2mmの内腔直径および0.03mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0111】
例12a〜e
比較例12と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Rohagit S ENV(Degussa/Roehm社)がそのつど0.01〜0.25質量%溶解している点が異なる。Rohagit S ENVはメタクリル酸とメチルメタクリレートとからなるコポリマーである。内部充填材を製造するために、そのつどまずRohagit S ENVをNMP中に分散させ、水を添加した後に約70℃で溶解し、かつ引き続き約30℃に冷却する。
【0112】
第12表には比較例12から、および例12a〜eからの中空糸膜のUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0113】
【表12】

【0114】
第12表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じ、その際、限外濾過速度は若干低下している。
【0115】
比較例13
紡糸液を製造するために、攪拌容器中で
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%、
N−メチルピロリドン(NMP) 62.96質量%および
水 4.74質量%
を約70℃の温度で強力に攪拌する。得られる溶液を約50℃に冷却し、脱気し、濾過し、かつ45℃に温度調整されている中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、NMP54質量部および水46質量部からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜を調温調湿流路(雰囲気:50℃、相対空気湿度90%)に案内し、約67℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させる。85℃の温水を用いて洗浄し、かつ熱風で乾燥した後に0.2mmの内腔直径および0.035mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0116】
例13a〜e
比較例13と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Acrylidone ACP 1005(ISP社)がそのつど0.01〜0.25質量%溶解している点が異なる。内部充填材を製造するために、そのつどまずAcrylidone ACP 1005を溶剤中に分散させ、引き続き水を添加し、かつ約70℃で均質な溶液を製造する。該溶液を最終的に約30℃に冷却する。
【0117】
第13表には比較例13から、および例13a〜eからの中空糸膜のUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0118】
【表13】

【0119】
第13表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じ、その際、限外濾過速度は、Acrylidone ACP 1005の割合が0.25質量%のものを例外として、高分子電解質を含有していないものよりも高くさえある。
【0120】
比較例14a〜f
紡糸液を製造するために、攪拌容器中で
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%、
N−メチルピロリドン(NMP) 62.96質量%および
水 4.74質量%
を約70℃の温度で強力に攪拌する。得られる溶液を約50℃に冷却し、濾過し、脱気し、かつ45℃に温度調整されている中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、NMPおよび水からなる内部充填材を搬送する。6つの異なった膜が製造され、その際、内部充填材の組成は段階的に48:52〜58:42のNMP:水の範囲で変化し、これはそのつど、質量部で考えられている。そのつど形成された中空糸膜を調温調湿流路(雰囲気:50℃、相対空気湿度90%)に案内し、約70℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させる。80℃の温水を用いて洗浄し、かつ熱風で乾燥した後に0.2mmの内腔直径および0.035mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0121】
例14a〜f
比較例14a〜fと同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Rohagit S hv(Degussa/Roehm社)がそのつど0.1質量%溶解している点が異なる。内部充填材を製造するために、そのつどまずRohagit S hvをNMP中に分散させ、水を添加した後に約70℃で溶解し、かつ引き続き約30℃に冷却する。
【0122】
第14表には比較例14a〜fから、および例14a〜fからの中空糸膜のUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0123】
【表14】

【0124】
第14表が示しているように、膜の製造の際に、内部充填材に高分子電解質Rohagit S hvを単に0.1質量%添加する場合に、膜は、同一のNMP:水の比率で、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する。
【0125】
比較例15
紡糸液を製造するために、攪拌容器中で
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%、
N−メチルピロリドン(NMP) 62.96質量%および
水 4.74質量%
を約70℃の温度で強力に攪拌する。得られる溶液を約50℃に冷却し、脱気し、濾過し、かつ45℃に温度調整されている中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、NMP52質量部および水48質量部からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜を調温調湿流路(雰囲気:50℃、相対空気湿度90%)に案内し、約75℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させる。80℃の温水を用いて洗浄し、かつ熱風で乾燥した後に0.2mmの内腔直径および0.035mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0126】
例15
比較例15と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはその質量に対してさらに高分子電解質Rohagit ENV(Degussa/Roehm社)が0.25質量%溶解している点が異なる。内部充填材を製造するために、まずRohagit S ENVをNMP中に分散させ、水を添加した後に約70℃で溶解し、かつ引き続き30℃に冷却する。
【0127】
第15表には比較例15から、および例15からの中空糸膜のUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0128】
【表15】

【0129】
第15表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して可能な範囲で最良の選択率を有する中空糸膜が生じる。
【0130】
比較例16
紡糸液を製造するために、攪拌容器中で
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%、
N−メチルピロリドン(NMP) 62.96質量%および
水 4.74質量%
を約70℃の温度で強力に攪拌する。得られる溶液を約50℃に冷却し、脱気し、濾過し、かつ45℃に温度調整されている中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、NMP56質量部および水44質量部からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜を調温調湿流路(雰囲気:50℃、相対空気湿度90%)に案内し、約75℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させる。80℃の温水を用いて洗浄し、かつ熱風で乾燥した後に0.2mmの内腔直径および0.035mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0131】
例16
比較例16と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはさらに高分子電解質Carbopol 980(Noveon社)が0.1質量%溶解している点が異なる。Carbopol 980は部分的に架橋したアクリル酸である。内部充填材を製造するために、そのつどまずCarbopol 908をNMP中に分散させ、引き続き水を添加し、かつ約70℃で均質な溶液が製造される。該溶液を最後に30℃に冷却する。
【0132】
第16表には比較例16から、および例16からの中空糸膜のUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0133】
【表16】

【0134】
第16表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じ、その際、限外濾過速度は低下する。
【0135】
比較例17
紡糸液を製造するために、攪拌容器中で
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%、
N−メチルピロリドン(NMP) 62.96質量%および
水 4.74質量%
を約70℃の温度で強力に攪拌する。得られる溶液を約50℃に冷却し、脱気し、濾過し、かつ45℃に温度調整されている中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、NMP52質量部および水48質量部からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜を調温調湿流路(雰囲気:50℃、相対空気湿度90%)に案内し、約70℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させる。80℃の温水を用いて洗浄し、かつ熱風で乾燥した後に0.2mmの内腔直径および0.036mmの壁厚を有する中空糸膜が得られる。
【0136】
例17
比較例17と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材にはさらに高分子電解質Carbopol 1382(Noveon社)が0.075質量%溶解している点が異なる。Carbopol 1382は部分的に架橋したアクリル酸である。内部充填材を製造するために、まずCarbopol 1382をNMP中に分散させ、引き続き水を添加し、かつ約70℃で均質な溶液が製造される。該溶液を最後に約30℃に冷却する。
【0137】
第17表には比較例17から、および例17からの中空糸膜のUFRALB(QF=10ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBがまとめられている。
【0138】
【表17】

【0139】
第17表が示しているように、高分子電解質を内部充填材に添加することにより、アルブミンとシトクロムCの分離に関して著しく高められた選択率を有する中空糸膜が生じ、その際、限外濾過速度は上昇する。
【0140】
例18
紡糸液を製造するために、
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%、
N−メチルピロリドン(NMP) 62.96質量%および
水 4.74質量%
を約60℃の温度で強力に攪拌する。得られる溶液を約50℃に冷却し、脱気し、濾過し、かつ45℃に温度調整されている中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、NMP52質量部および水48質量部からなり、かつ高分子電解質Carbopol 1382(Noveon社)を内部充填材の質量に対して0.1質量%が添加された内部充填材を搬送する。内部充填材を製造するためにCarbopol 1382をまずNMP中に分散させ、かつ水の添加後に約70℃で溶解する。形成された中空糸膜を調温調湿流路(雰囲気:55℃、相対空気湿度80%)に案内し、約71℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させる。90℃の温水を用いて洗浄し、かつ熱風で乾燥した後に0.2mmの内腔直径および0.03mmの壁厚を有する中空糸膜が得られ、そのUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBは第18表に記載されている。
【0141】
【表18】

例19a〜b
紡糸液を製造するために、攪拌容器中で
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%、
N−メチルピロリドン(NMP) 62.96質量%および
水 4.74質量%
を約60℃の温度で強力に攪拌する。得られる溶液を約60℃で脱気し、濾過し、かつ45℃に温度調整されている中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、NMP55.95質量部および水43.95質量部からなり、かつ高分子電解質Styleze 2000(ISP社)を0.1質量%が添加された(例19a)か、もしくはNMP55.88質量部および水43.88質量部からなり、かつStyleze 2000が0.25質量%添加された(例19b)内部充填材を搬送する。内部充填材を製造するためにStyleze 2000をまずNMP中に分散させ、かつ水の添加後に70℃で溶解する。Styleze 2000はアクリル酸、ビニルピロリドンおよびラウリルメタクリレートからなるコポリマーである。形成された中空糸膜を調温調湿流路(雰囲気:55℃、相対空気湿度70%)に案内し、約69℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させる。90℃の温水を用いて洗浄し、かつ熱風で乾燥した後に0.2mmの内腔直径および0.03mmの壁厚を有する中空糸膜が得られ、そのUFRALB(QF=30ml/(分・m2)、SKCCおよびSKALBは第19表に記載されている。
【0142】
【表19】

【0143】
比較例20
紡糸液を製造するために、
ポリエーテルスルホン(Ultrason E 6020、BASF社) 19.0質量%、
ポリビニルピロリドン(PVP K30、ISP社) 13.3質量%、
N−メチルピロリドン(NMP) 62.96質量%および
水 4.74質量%
を約60℃の温度で強力に攪拌する。得られる溶液を約60℃に冷却し、脱気し、濾過し、かつ45℃に温度調整されている中空糸ノズルのリングギャップに供給する。内腔および内部に存在する分離層を形成するために、中空糸ノズルのノズルニードルにより、NMP44質量部および水56質量部からなる内部充填材を搬送する。形成された中空糸膜を調温調湿流路(雰囲気:55℃、相対空気湿度70%)に案内し、58℃に温度調整した水を含有する沈殿浴中で沈殿させる。90℃の温水を用いて洗浄し、かつ熱風で乾燥した後に0.2mmの内腔直径および0.03mmの壁厚を有する中空糸膜が得らる。
【0144】
例20
比較例20と同様に中空糸膜を製造したが、しかし内部充填材はNMP43.88質量部および水55.88質量部およびStyleze 2000が0.25質量%からなる点が異なる。
【0145】
第20表には、比較例20および例20の膜のUFRALB(QF=10ml/(分・m2)、SKALBおよびSKCCがまとめられている。
【0146】
【表20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a)膜形成ポリマーおよび溶剤系を含有する紡糸液を製造する工程、
b)紡糸液を成形工具により第1および第2の表面を有する成形体にする工程、
c)第1および/または第2の表面を沈殿剤系と接触させて第1および/または第2の表面上に分離層を有する膜を形成する工程
d)膜を洗浄し、かつ場合により乾燥させる工程
を有する、少なくとも1の分離層および該分離層と境界を接する支持層とを有する一体型非対称膜の製造方法において、工程c)で沈殿剤系が負の固定電荷を有する高分子電解質を含有することを特徴とする、一体型非対称膜の製造方法。
【請求項2】
負の固定電荷を有する高分子電解質が、ポリリン酸、ポリスルホン酸またはポリカルボン酸の群から選択されていることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリカルボン酸がアクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーであることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
沈殿剤系に溶解している高分子電解質が紡糸液と接触して沈殿することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
負の固定電荷を有する高分子電解質の質量割合が、沈殿剤系の質量に対して、0.01〜10質量%であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
負の固定電荷を有する高分子電解質の質量割合が、沈殿剤系の質量に対して、0.05〜1質量%であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程a)で膜形成ポリマーとしてセルロースポリマーを使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程a)で膜形成ポリマーとして合成ポリマーを使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンおよびポリフェニレンスルフィドの群から、または前記のポリマーの変態の群から、または前記のポリマーの混合物の群から、または前記のポリマーのモノマーからなるコポリマーの群から選択されていることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
工程b)で成形工具として、紡糸液を第1の表面としての内部表面と、第2の表面としての外部表面とを有する中空繊維成形体にする中空繊維ノズルを使用することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
工程c)で沈殿剤系が、内部表面と接触し、これにより内腔側の分離層を有する膜が形成される内部充填材であることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1の分離層および1の支持層を有する一体型非対称膜において、分離層中で負の固定電荷を有する高分子電解質が物理的に結合されていることを特徴とする、一体型非対称膜。
【請求項13】
支持層が高分子電解質を含有していないことを特徴とする、請求項12記載の膜。
【請求項14】
膜が内腔側の分離層を有する中空繊維膜であることを特徴とする、請求項12または13記載の膜。
【請求項15】
タンパク質を分離するための、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法により製造される膜または請求項12から14までのいずれか1項記載の膜の使用。
【請求項16】
負の固定電荷を有する高分子電解質と反応する薬剤により化学的に変性するための、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法により製造される膜または請求項12から14までのいずれか1項記載の膜の使用。

【公表番号】特表2007−522930(P2007−522930A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553513(P2006−553513)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001507
【国際公開番号】WO2005/082501
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(300083158)メムブラーナ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (14)
【氏名又は名称原語表記】Membrana GmbH
【Fターム(参考)】