説明

一塩基変異を検出する方法および検出用プローブ

【課題】 被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を高い特異性および高い感度をもって検出する方法を提供すること。
【解決手段】
被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出する方法であって、
a) 前記被検試料の存在下で、アレル特異的プライマー、アレル共通プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてPCRを行い、前記アレル特異的プライマーは、標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列およびタグ配列を有しており、前記アレル共通プライマーは、前記アレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有しており;
b) 工程aから得られたPCR増幅産物およびタグ配列認識プローブの存在下で、二本鎖特異的5’→3’エキソヌクレアーゼを用いてDNA分解反応を行い;そして
c) 工程bにおいてタグ配列認識プローブが分解されたか否かを検出することにより、標的塩基配列中の一塩基変異を検出する
の各工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的塩基配列中の標的塩基における一塩基変異を検出する方法、ならびにこれらの方法に用いるプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
被検試料中に存在する一塩基変異を検出する方法としては、標的塩基配列に特異的なプローブを用いてハイブリダイゼーションにより検出する方法、標的塩基配列に特異的なプライマーを用いてPCR等による増幅反応を行い、増幅産物を検出する方法、特定の配列の二本鎖DNAを特異的に認識しうる蛋白質を用いる方法など、多くの方法が知られている。また、核酸アプタマーを用いて標的塩基配列を検出する方法も開示されている(WO01/44509)。この方法においては、標的塩基配列とプローブとをハイブリダイゼーションさせて核酸アプタマーを生成させ、標的塩基配列の有無によってアプタマーとリガンドとの結合親和性が相違することに基づいて標的塩基配列を検出する。
【0003】
しかし、被検試料中に少量で存在する特定の標的塩基配列を高い感度で特異的に検出することは依然として困難である。したがって、当該技術分野においては、標的塩基配列の検出に用いることができるさらに別の方法が求められている。
【特許文献1】WO01/44509
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、標的塩基配列中の標的塩基における一塩基変異を検出する簡便な方法、およびこの方法に用いられるプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出する方法であって、
a) 上記被検試料の存在下で、第1および第2のアレル特異的プライマー、アレル共通プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてPCRを行い、ここで、上記第1および第2のアレル特異的プライマーは、標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異に対応する塩基を有し、第1および第2のアレル特異的プライマーの3’末端の塩基は互いに異なっており、かつその相補的な配列の5’側にそれぞれ第1および第2のタグ配列を有しており、上記アレル共通プライマーは、上記第1および第2のアレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有しており;そして
b) 工程aから得られたPCR増幅産物を検出することにより、標的塩基配列中の一塩基変異を検出する
の各工程を含む方法を提供する。
【0006】
別の態様においては、本発明は、被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出する方法であって、
a) 上記被検試料の存在下で、第1および第2のアレル特異的プライマー、アレル共通プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてPCRを行い、ここで、上記第1および第2のアレル特異的プライマーは、標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異に対応する塩基を有し、第1および第2のアレル特異的プライマーの3’末端の塩基は互いに異なっており、かつその相補的な配列の5’側にそれぞれ第1および第2のタグ配列を有しており、上記アレル共通プライマーは、上記第1および第2のアレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有しており;
b) 工程aから得られたPCR増幅産物および第1および第2のタグ配列認識プローブの存在下で、二本鎖特異的5’→3’エキソヌクレアーゼを用いてDNA分解反応を行い、ここで、上記第1および第2のタグ配列認識プローブはれぞれ上記第1および第2のアレル特異的プライマー中の第1および第2のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有しており;そして
c) 工程bにおいて第1および第2のタグ配列認識プローブが分解されたか否かを検出することにより、標的塩基配列中の一塩基変異を検出する
の各工程を含む方法を提供する。
【0007】
この方法において、好ましくは、工程cにおける第1および第2のタグ配列認識プローブの分解の検出は、分解産物のゲル電気泳動により行われる。また好ましくは、工程bにおける第1および第2のタグ配列認識プローブはそれぞれ蛍光分子および消光分子を有しており、工程cにおける第1および第2のタグ配列認識プローブの分解の検出は、蛍光強度の変化の測定により行われる。
【0008】
さらに別の態様においては、本発明は、被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出する方法であって、
a) 上記被検試料の存在下で、第1および第2のアレル特異的プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてDNA鎖伸長反応を行い、ここで、上記第1および第2のアレル特異的プライマーは、標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異に対応する塩基を有し、第1および第2のアレル特異的プライマーの3’末端の塩基は互いに異なっており、かつその相補的な配列の5’側にそれぞれ第1および第2のタグ配列を有しており、さらにタグ配列の5’側に第1のユニバーサル配列を有しており;
b) 工程aから得られた伸長産物の存在下で、アレル共通プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてDNA鎖伸長反応を行い、ここで、上記アレル共通プライマーは、上記第1および第2のアレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有し、かつその配列の5’側に第2のユニバーサル配列を有しており;
c) 工程bから得られた伸長産物の存在下で、第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてPCRを行い、ここで、第1のユニバーサルプライマーは前記第1のユニバーサル配列を含んでおり、第2のユニバーサルプライマーは前記第2のユニバーサル配列を含んでおり;
d) 工程cから得られたPCR増幅産物を検出することにより、標的塩基配列中の一塩基変異を検出する
の各工程を含む方法を提供する。
【0009】
さらに別の態様においては、本発明は、被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出する方法であって、
a) 上記被検試料の存在下で、第1および第2のアレル特異的プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてDNA鎖伸長反応を行い、ここで、上記第1および第2のアレル特異的プライマーは、標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異に対応する塩基を有し、第1および第2のアレル特異的プライマーの3’末端の塩基は互いに異なっており、かつその相補的な配列の5’側にそれぞれ第1および第2のタグ配列を有しており、さらにタグ配列の5’側に第1のユニバーサル配列を有しており;
b) 工程aから得られた伸長産物の存在下で、アレル共通プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてDNA鎖伸長反応を行い、ここで、上記アレル共通プライマーは、上記第1および第2のアレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有し、かつその配列の5’側に第2のユニバーサル配列を有しており;
c) 工程bから得られた伸長産物の存在下で、第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてPCRを行い、ここで、第1のユニバーサルプライマーは前記第1のユニバーサル配列を含んでおり、第2のユニバーサルプライマーは前記第2のユニバーサル配列を含んでおり;
d) 工程cから得られたPCR増幅産物および第1および第2のタグ配列認識プローブの存在下で、二本鎖特異的5’→3’エキソヌクレアーゼを用いてDNA分解反応を行い、ここで、上記第1および第2のタグ配列認識プローブはそれぞれ上記第1および第2のアレル特異的プライマー中の第1および第2のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有しており;そして
e) 工程dにおいて第1および第2のタグ配列認識プローブが分解されたか否かを検出することにより、標的塩基配列中の一塩基変異を検出する
の各工程を含む方法を提供する。
【0010】
さらに別の態様においては、本発明は、上述の本発明の方法により被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出するためのキットであって、
a) 標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異に対応する塩基を有し、かつその相補的な配列の5’側にそれぞれ第1および第2のタグ配列を有する第1および第2のアレル特異的プライマー、ただし、前記第1および第2のアレル特異的プライマーの3’末端の塩基は互いに異なっており;
b) 前記第1および第2のアレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有するアレル共通プライマー;
c) 前記第1のアレル特異的プライマー中の前記第1のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有する第1のタグ配列認識プローブ;および
d) 前記第2のアレル特異的プライマー中の前記第2のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有する第2のタグ配列認識プローブ
を含むキットを提供する。
【0011】
さらに別の態様においては、本発明は、上述の本発明の方法により被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出するためのキットであって、
a) 標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異に対応する塩基を有し、かつその相補的な配列の5’側にそれぞれ第1および第2のタグ配列を有し、さらにタグ配列の5’側に第1のユニバーサル配列を有する第1および第2のアレル特異的プライマー、ただし、前記第1および第2のアレル特異的プライマーの3’末端の塩基は互いに異なっており;
b) 前記第1および第2のアレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有し、かつその配列の5’側に第2のユニバーサル配列を有するアレル共通プライマー;
c) 前記第1のユニバーサル配列を含む第1のユニバーサルプライマー;
d) 前記第2のユニバーサル配列を含む第2のユニバーサルプライマー;
e) 前記第1のアレル特異的プライマー中の前記第1のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有する第1のタグ配列認識プローブ;および
f) 前記第第2のアレル特異的プライマー中の前記第第2のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有する第2のタグ配列認識プローブ
を含むキットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の構成および効果を詳細に説明する。
【0013】
本発明の方法は、タグ配列を含むプライマーによるアレル特異的伸長反応とPCRの組合せにより被検試料に存在する標的塩基配列中の一塩基変異を検出することを特徴とする。「一塩基変異」とは、所定のDNAのある領域中で、塩基配列中の1つの塩基が置換、挿入、または欠失されていることをいう。特に、ゲノムDNA上の一塩基変異であって一般集団中において1%以上の頻度で検出されるものは一塩基多型(SNP)と称される。
【0014】
「標的塩基配列」とは、検出が望まれる特定の配列を含む塩基配列を指し、そのような検出が望まれる特定の配列としては、例えばウイルス、細菌、真菌、動物、植物などのゲノムDNA中の特定の配列、ヒトのゲノムDNA中の多型配列などが挙げられる。
【0015】
「被検試料」とは、標的塩基配列が存在するか否かを判定することが望まれる試料を指し、代表的には、生体試料(例えば全血、血漿、血清、尿、体液、唾液など)や、動物又は植物の細胞又は組織の培養物など、核酸を含有するものであれば特に限定されない。被検試料は、当技術分野で周知の方法を適宜使用して調製することができる。一般的には、被検試料はDNAを抽出して調製する。例えば、フェノール抽出及びエタノール沈殿を行う方法、ガラスビーズを用いる方法などによりDNAを抽出することができる。あるいは、グアニジン−塩化セシウム超遠心法、ホットフェノール法、又はAGPC法などを利用してRNAを抽出した後に、これをテンプレートとして逆転写酵素によりcDNAを合成してもよい。
【0016】
図1−6は本発明の第1の態様を示す。この方法においては、まず、被検試料の存在下で、アレル特異的プライマー、アレル共通プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてPCRを行う。「アレル特異的プライマー」とは、検出すべき一塩基変異部位に対応して設計されるプライマーである。図1および2においては、一塩基変異部位がCである遺伝子を検出するためのアレル特異的プライマーをプライマー1(G)、一塩基変異部位がTである遺伝子を検出するためのアレル特異的プライマーをプライマー1(A)として示す。アレル特異的プライマーは、標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異部位の塩基と塩基対形成しうる塩基を有する。すなわち、プライマー1(G)はその3’末端にGを、プライマー1(A)はその3’末端にAを有する。アレル特異的プライマーはさらに、標的塩基配列と相補的な配列の5’側にタグ配列を有する。「タグ配列」は標的塩基配列と相補的ではないように選択する。
【0017】
標的塩基配列およびアレル特異的プライマーの存在下でDNAポリメラーゼを作用させると、一塩基変異部位において標的塩基配列とマッチするプライマーからはDNA伸長反応が進行するが、標的塩基配列とミスマッチのプライマーからはDNA伸長反応がほとんど進行しないか、進行したとしてもその速度が遅い(図1および2)。
【0018】
次に、DNA伸長反応が生じた場合には、伸長産物にアレル共通プライマー(プライマー2)がプライミングして、DNAポリメラーゼにより第2鎖のDNA伸長反応が進行する(図3および4)。「アレル共通プライマー」とは、上記アレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列、すなわち、標的塩基配列の一塩基変異部位より5’側の配列の一部と同一の配列を有するプライマーである。アレル共通プライマーを設計する位置は、アレル特異的プライマーとアレル共通プライマーとの間のPCRが効率的に進行し、適切な大きさのPCR増幅産物が生成するように、適宜選択することができる。
【0019】
被検試料の存在下で、アレル特異的プライマー、アレル共通プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてPCRを行うと、標的塩基配列とマッチするアレル特異的プライマーからはPCR増幅産物が生成し、標的塩基配列とミスマッチのプライマーからはPCR増幅産物がほとんどまたは全く生成しない(図5および6)。すなわち、PCR増幅反応はアレル特異的に進行する。したがって、2種類のアレル特異的プライマーのいずれかを加えたときにPCR増幅産物が生成したかを検出することにより、一塩基変異部位の塩基を同定することができる。アレル特異的PCR増幅産物は、分光光学的手法、電気泳動、蛍光標識、ハイブリダイゼーションなどの、当該技術分野においてよく知られる手法により容易に検出することができる。
【0020】
好ましくは、本発明の方法においては、2種類のアレル特異的プライマーを被検試料に同時に加えてPCRを行う。この場合、2種類のアレル特異的プライマーは、タグ配列の塩基配列が互いに異なるように設計する。このことにより、2種類のアレルに対応したPCR産物を区別することができる。
【0021】
さらに、2種類のアレル特異的プライマーは、タグ配列の長さが異なるように、または適当なスペーサー配列をさらに含むように設計することができる。このことにより、これらのプライマーを1つの反応チューブで同時に用いてPCRを行って、生成したPCR増幅産物の長さを測定することにより、一塩基変異の同定を行うことが可能となる。PCR増幅産物の長さは電気泳動などの当該技術分野においてよく知られる手法により容易に測定することができる。後述の実施例1および2に示されるように、PCR増幅産物を電気泳動で分析することにより、ホモおよびヘテロの一塩基変異を簡単に同定することができる。
【0022】
図7は本発明の方法の第2の態様を示す。この方法は、上述の第1の態様の方法において生成したPCR増幅産物を、タグ配列認識プローブ(蛍光プローブ)および二本鎖特異的5’→3’エキソヌクレアーゼを用いて検出することを特徴とする。「タグ配列認識プローブ」とは、上記アレル特異的プライマー中のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有するプローブである。「二本鎖特異的5’→3’エキソヌクレアーゼ」とは、二本鎖DNAを認識して、その5’末端から3’方向にDNAを分解する酵素であり、例えば、T7エキソヌクレアーゼ、ラムダエキソヌクレアーゼ等を用いることができる。PCR増幅産物に二本鎖特異的5’→3’エキソヌクレアーゼを作用させると、二本鎖の両方の5’末端からDNAの分解が進行して、タグ配列と相補的な配列を含む一本鎖核酸が生ずる。タグ配列認識プローブは、ここで生じた一本鎖DNA中のタグ配列と塩基対形成するため、二本鎖DNAが形成される。次に、この二本鎖DNAは二本鎖特異的5’→3’エキソヌクレアーゼにより認識されるため、タグ配列認識プローブはその5’末端から3’方向に分解される。タグ配列は検出すべきそれぞれの一塩基変異に対応する異なる配列を持っているため、一塩基変異を含む標的塩基配列に相補的な配列が伸長しない場合には、PCR増幅産物が得られず、タグ配列認識プローブが塩基対形成しないため、タグ配列認識プローブの分解が起こらない。したがって、タグ配列認識プローブが分解されるか否かを検出することにより、標的塩基配列中の一塩基変異を検出することができる。
【0023】
タグ配列認識プローブの分解の検出は、分解産物をゲル電気泳動で分析することにより容易に行うことができる。例えば、タグ配列認識プローブの5’末端の塩基を蛍光標識しておけば、PCR増幅産物が存在する場合には1塩基の長さに対応する位置に蛍光が検出され、存在しない場合には元のタグ配列認識プローブの長さに対応する位置に蛍光が検出される。かかる検出方法の具体例は、下記の実施例3に示される。
【0024】
あるいは、タグ配列認識プローブを蛍光分子および消光分子で標識することにより、FRET(fluorescence resonance energy transfer、蛍光共鳴エネルギー移動)の原理を利用して、分解反応の有無を蛍光強度の大きさで比較することが可能である。すなわち、PCR増幅産物が存在しない場合には蛍光分子と消光分子が隣接して存在するため蛍光が検出されず、PCR増幅産物が存在する場合にはタグ配列認識プローブが分解されるため、蛍光分子と消光分子との距離が大きくなり、蛍光信号が発生する。したがって、蛍光強度の変化を測定することにより、PCR増幅産物が存在したか否かを判定することができ、このことにより標的塩基配列中の一塩基変異を検出することができる。この方法は特にマイクロタイタープレート等のフォーマットを用いる一塩基変異の同定に適している。
【0025】
蛍光強度の変化は、例えば、蛍光分光光度計やプレートリーダー等を用いて慣用の方法により測定することができる。蛍光分子としては、例えば、フルオレセイン、ダンシル、カスケードイエロー、フルオレスカミン、オレゴングリーン、ピレン、テキサスレッド、パシフィックブルー、マリンブルー、アレクサ、ルシファーイエロー、ボディパイ(BODIPY)、クーマリン、ピンポ(PyMPO)、TET、JOE、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7、ROX、FAM、VIC、HEX、TAMRA、SYBR Green、NBD等を用いることができる。消光分子としては、例えば、ダブシル、QSY-7、QSY-21、QSY-35、BHQ-0、BHQ-1、BHQ-2、BHQ-3、Eclipse等の蛍光を発しない物質(ダーククエンチャーと言われる)を用いてもよいし、上記蛍光分子が発する波長領域に吸収帯を持つ蛍光物質を消光分子として利用してもよい。蛍光分子および消光分子をDNAに結合させる方法、ならびに蛍光強度の変化を検出する方法は当該技術分野においてよく知られている。
【0026】
図8および9は、本発明の方法の第3の態様を示す。この方法は、ユニバーサルプライマーを用いてPCRを行うことを特徴とする。この態様においては、アレル特異的プライマー(プライマー1(G))は、標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列およびタグ配列に加えて、さらにタグ配列の5’側に第1のユニバーサル配列を有しており、アレル共通プライマー(プライマー2)は、ポリメラーゼ伸長産物に相補的な配列に加えて、さらにその配列の5’側に第2のユニバーサル配列を有する。
【0027】
この方法においては、まず、アレル特異的プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてDNA鎖伸長反応を行う。標的塩基配列の一塩基部位とアレル特異的プライマーの3’末端の塩基がマッチして塩基対形成されるときのみ伸長反応が起こる。次にアレル共通プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いて第2鎖の伸長反応を行う。この二本鎖伸長産物をテンプレートして、第1のユニバーサルプライマー(プライマー3)、第2のユニバーサルプライマー(プライマー4)およびDNAポリメラーゼを用いてPCRを行う。第1のユニバーサルプライマーは上記第1のユニバーサル配列を含んでおり、第2のユニバーサルプライマーは上記第2のユニバーサル配列を含んでいる。上記第1および第2のユニバーサルプライマーは、好ましくは被検試料に含まれるゲノムDNAとの相同性が極めて低い配列を有している。生成したPCR増幅産物は、上述の第1の態様と同様に電気泳動により検出してもよく、第2の態様と同様にタグ配列認識プローブおよび二本鎖特異的5’→3’エキソヌクレアーゼを用いて検出してもよい。
【0028】
この方法では、第1のユニバーサルプライマーはタグ配列を含まないため、複数箇所の一塩基変異についてマルチプレックスPCRを行う際に、第1のユニバーサルプライマーとして1種類だけのプライマーを用いることができるため、検出のコストが低くなるという利点を有する。好ましくは、ユニバーサルプライマーがユニバーサル配列と塩基対形成するときのTm値が、アレル特異的プライマーまたはアレル共通プライマーが標的塩基配列と塩基対形成するときのTm値よりも高くなるように設計する。このことにより、1サイクル目と2サイクル目は低いアニーリング温度で反応を行い、3サイクル目以降は高いアニーリング温度でPCRを行うことができ、マルチプレックスPCRにおいて均一な増幅が期待できる。
【0029】
さらに別の観点においては、本発明は、上述の本発明の方法により被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出するためのキットを提供する。該キットは、
a) 標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異に対応する塩基を有し、かつその相補的な配列の5’側にそれぞれ第1および第2のタグ配列を有する第1および第2のアレル特異的プライマー、ただし、前記第1および第2のアレル特異的プライマーの3’末端の塩基は互いに異なっており;
b) 前記第1および第2のアレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有するアレル共通プライマー;
c) 前記第1のアレル特異的プライマー中の前記第1のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有する第1のタグ配列認識プローブ;および
d) 前記第2のアレル特異的プライマー中の前記第2のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有する第2のタグ配列認識プローブ
を含む。
【0030】
さらに別の観点においては、本発明は、上述の本発明の方法により被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出するためのキットを提供する。該キットは、
a) 標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異に対応する塩基を有し、かつその相補的な配列の5’側にそれぞれ第1および第2のタグ配列を有し、さらにタグ配列の5’側に第1のユニバーサル配列を有する第1および第2のアレル特異的プライマー、ただし、前記第1および第2のアレル特異的プライマーの3’末端の塩基は互いに異なっており;
b) 前記第1および第2のアレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有し、かつその配列の5’側に第2のユニバーサル配列を有するアレル共通プライマー;
c) 前記第1のユニバーサル配列を含む第1のユニバーサルプライマー;
d) 前記第2のユニバーサル配列を含む第2のユニバーサルプライマー;
e) 前記第1のアレル特異的プライマー中の前記第1のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有する第1のタグ配列認識プローブ;および
f) 前記第第2のアレル特異的プライマー中の前記第第2のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有する第2のタグ配列認識プローブ
を含む。
【0031】
本発明の方法を用いることにより、標的塩基配列中の一塩基変異を高い特性および高い感度をもって検出することができる。このような一塩基変異の検出は、癌や遺伝病、薬剤応答性の診断に利用することができる。
【0032】
なお、2種類の一塩基変異を区別して検出する方法を例として、本発明の特徴および利点を詳細に説明してきたが、同様にして3種類または4種類の一塩基変異を検出しうることが明らかであろう。
【0033】
以下の実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
プライマー1(G)、プライマー1(A)、プライマー2、テンプレート1、テンプレート2(配列を図10に示す)を表1に示す最終濃度(1チューブ/100μL)となるように調製し、95℃×5分で変性後、94℃×30秒→64℃×5秒→72℃×30秒の反応を30回繰り返した。この反応液の組成は、dNTPが0.2mM、10 mM Tris-HCl(pH8.3)、50mM KCl、1.5mM MgCl2となるように調製した。反応液を4%アガロースゲルにアプライし、電気泳動を行った。電気泳動後、ゲルを染色し、PCR産物のバンドを確認した(図11)。プライマー1(G)が伸長した場合のみ得られるPCR産物は74塩基、プライマー1(A)が伸長したPCR産物は88塩基に相当する。図11の試料2、3、4、5の結果から、テンプレートとプライマー1の3’末端が相補鎖を形成する場合に、特異的にプライマー伸長反応が進み、一塩基変異部位の塩基に対応したPCR産物が得られることが示された。
【0035】
【表1】

【実施例2】
【0036】
本実施例では、テンプレートとしてヒトゲノムDNAを用いて実施例1と同様の実験を行った。プライマー1(G)、プライマー1(A)、プライマー2、ヒトゲノムDNAを表2に示す最終濃度(1チューブ/100μL)となるように調製し、95℃×5分で変性後、94℃×30秒→64℃×5秒→72℃×30秒の反応を40回繰り返した。この反応液の組成は、dNTPが0.2mM、10 mM Tris-HCl(pH8.3)、50mM KCl、1.5mM MgCl2となるように調製した。プライマーと相補鎖を形成する部分のヒトゲノムの配列は、図10に示す。反応物を4%アガロースゲルにアプライし、電気泳動を行った。電気泳動後、ゲルを染色し、PCR産物のバンドを確認した(図12)。図12の左端のレーンは20bpラダーのマーカーである。図12の試料2の74塩基に相当するバンドが得られることから、プライマー1(G)がヒトゲノムと特異的に相補鎖を形成し伸長反応が進んだことが示された。
【0037】
【表2】

【実施例3】
【0038】
実験1の試料3で得られたPCR産物と実験2の試料2で得られたPCR産物、蛍光プローブ1、T7エキソヌクレアーゼを表3に示す最終濃度(1チューブ/40μL)となるように調製した。すなわち、ここで表3に記載されている「実施例2の試料2の反応液」とは、実施例2の試料2で得られた100μLの反応液から20μL取り出した溶液であり、一方、表3の「実施例1の試料3の反応液」とは、実施例1の試料3で得られた100μLの反応液から20μLを取り出した溶液である。この20μLに、蛍光プローブ1、T7エキソヌクレアーゼを表3に示す組成(1チューブ/40μL)になるように加え、試料全体を調製した。
【0039】
「実施例2の試料2の反応液」とは、具体的には、プライマー1(G)を0.5μMとプライマー1(A) を0.5μM、プライマー2を0.5μM、ヒトゲノムを10ng、Taqポリメラーゼを2.5U含む100μLの溶液である。試料にはその他の成分としてdNTPが0.2mM、10 mM Tris-HCl(pH=8.3)、50mM KCl、0.15 mM MgCl2が含まれる。この試料を95℃×5分で変性後、94℃×30秒→64℃×5秒→72℃×30秒のPCRを40回行い、表3に示す実施例2の試料2の反応液として用いた。
【0040】
一方、「実施例1の試料3の反応液」とは、プライマー1(G)を0.5μMとプライマー1(A) を0.5μM、プライマー2を0.5μM、テンプレート1を1pM、Taqポリメラーゼを2.5U含む100μLの溶液である。試料にはその他の成分としてdNTPが0.2mM、10 mM Tris-HCl(pH=8.3)、50mM KCl、0.15 mM MgCl2が含まれる。この試料を95℃×5分で変性後、94℃×30秒→64℃×5秒→72℃×30秒のPCRを30回行い、表3に示す実施例1の試料3の反応液として用いた。
【0041】
表3に示す試料のバッファー組成は、25 mM
Tris-HCl、25mM KCl、25mM NaCl、10 mM MgCl2となるように調製した。それぞれの試料を40℃でインキュベーション後、T7エキソヌクレアーゼを失活させるため95℃で10分間加熱し、反応を停止させた。
【0042】
反応停止後、各試料を20%変性ポリアクリルアミドゲルにアプライして電気泳動を行った。電気泳動後、ゲルを蛍光光度計にて解析した。電気泳動のパターンを図13に示す。図13の左側のレーンは59塩基と25塩基のマーカーである。PCR産物が溶液中に共存する場合にのみ、5’にFAMで修飾された蛍光プローブが分解することが確認された。
【0043】
また、電気泳動のバンドの強度を数値化したところ表4に示す結果となった。図13の試料2、3、4より、溶液中にPCR産物が存在する場合には、5’端にFAMの標識された塩基が分解されるが、PCR産物が存在しない場合には、FAMで標識された塩基が分解されないことがわかる。このことから、本発明にしたがって、一塩基変異をポリメラーゼとT7エキソヌクレアーゼを用いて区別できることが示された。
【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【実施例4】
【0046】
本実施例はヒトのトロンビン遺伝子における一塩基多型G20210Aを対象にした一塩基多型タイピングのモデル実験である。ヒトゲノムDNAの代わりに、G20210AのアレルGおよびアレルAのそれぞれについて、標的塩基の前後51bpのアンチセンス側配列に対して、上流と下流に4塩基のTをつなげた一本鎖DNAを合成してテンプレートとした(図14)。この標的塩基配列を一塩基多型タイピングするためのプローブとしてプライマー1〜4の配列を設計し合成した(図14)。これらを用いて表5に示す組成で20μlずつ反応液を調製し試料とした。ただし、反応液にはその他の成分として10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、1.5mM塩化マグネシウム、50mM塩化カリウム、0.2mM
dNTPが含まれる。また使用したポリメラーゼはTaq
DNAポリメラーゼである。次にサーマルサイクラーを使用して、試料に次のような4段階からなる熱サイクルを加えて反応させた。1段階目は94℃5分間。2段階目は94℃30秒間、50℃30秒間、72℃30秒間を2サイクル。3段階目は94℃30秒間、66℃5秒間、72℃30秒間を33サイクル。4段階目は72℃5分間。反応終了後、試料を5μlずつ4%アガロースゲル(緩衝液はTBE)に電気泳動した。ゲルを染色した結果が図15である。アレルGに対応するPCR産物の長さは100bp、アレルAに対応するPCR産物の長さは81bpである。図15に示されるように、アレルGのホモ(試料3)、アレルGとアレルAのヘテロ(試料4)、アレルAのホモ(試料5)が明瞭に識別されており、本方法にて一塩基多型のタイピングが可能であることが示された。
【0047】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】アレル特異的プライマーによる伸長反応の説明。
【図2】アレル特異的プライマーによる伸長反応の説明。
【図3】アレル共通プライマーによる伸長反応の説明。
【図4】アレル共通プライマーによる伸長反応の説明。
【図5】PCRの説明。
【図6】PCRの説明。
【図7】タグ配列認識プローブを用いたアレル特異的PCR産物を検出する方法の説明。
【図8】2本のユニバーサルプライマーを用いた反応の説明。
【図9】2本のユニバーサルプライマーを用いた反応の説明。
【図10】実施例1〜3において用いられたDNAの塩基配列。
【図11】実施例1において得られた電気泳動の結果。
【図12】実施例2において得られた電気泳動の結果。
【図13】実施例3において得られた電気泳動の結果。
【図14】実施例4において用いられたDNAの塩基配列。
【図15】実施例4において得られた電気泳動の結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出する方法であって、
a) 前記被検試料の存在下で、第1および第2のアレル特異的プライマー、アレル共通プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてPCRを行い、ここで、前記第1および第2のアレル特異的プライマーは、標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異に対応する塩基を有し、第1および第2のアレル特異的プライマーの3’末端の塩基は互いに異なっており、かつその相補的な配列の5’側にそれぞれ第1および第2のタグ配列を有しており、前記アレル共通プライマーは、前記第1および第2のアレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有しており;そして
b) 工程aから得られたPCR増幅産物を検出することにより、標的塩基配列中の一塩基変異を検出する
の各工程を含む方法。
【請求項2】
被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出する方法であって、
a) 前記被検試料の存在下で、第1および第2のアレル特異的プライマー、アレル共通プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてPCRを行い、ここで、前記第1および第2のアレル特異的プライマーは、標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異に対応する塩基を有し、第1および第2のアレル特異的プライマーの3’末端の塩基は互いに異なっており、かつその相補的な配列の5’側にそれぞれ第1および第2のタグ配列を有しており、前記アレル共通プライマーは、前記第1および第2のアレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有しており;
b) 工程aから得られたPCR増幅産物および第1および第2のタグ配列認識プローブの存在下で、二本鎖特異的5’→3’エキソヌクレアーゼを用いてDNA分解反応を行い、ここで、前記第1および第2のタグ配列認識プローブはそれぞれ前記第1および第2のアレル特異的プライマー中の第1および第2のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有しており;そして
c) 工程bにおいて第1および第2のタグ配列認識プローブが分解されたか否かを検出することにより、標的塩基配列中の一塩基変異を検出する
の各工程を含む方法。
【請求項3】
工程cにおける第1および第2のタグ配列認識プローブの分解の検出が、分解産物のゲル電気泳動により行われる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程bにおける第1および第2のタグ配列認識プローブがそれぞれ蛍光分子および消光分子を有しており、工程cにおける第1および第2のタグ配列認識プローブの分解の検出が、蛍光強度の変化の測定により行われる、請求項2記載の方法。
【請求項5】
被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出する方法であって、
a) 前記被検試料の存在下で、第1および第2のアレル特異的プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてDNA鎖伸長反応を行い、ここで、前記第1および第2のアレル特異的プライマーは、標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異に対応する塩基を有し、第1および第2のアレル特異的プライマーの3’末端の塩基は互いに異なっており、かつその相補的な配列の5’側にそれぞれ第1および第2のタグ配列を有しており、さらにタグ配列の5’側に第1のユニバーサル配列を有しており;
b) 工程aから得られた伸長産物の存在下で、アレル共通プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてDNA鎖伸長反応を行い、ここで、前記アレル共通プライマーは、前記第1および第2のアレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有し、かつその配列の5’側に第2のユニバーサル配列を有しており;
c) 工程bから得られた伸長産物の存在下で、第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてPCRを行い、ここで、第1のユニバーサルプライマーは前記第1のユニバーサル配列を含んでおり、第2のユニバーサルプライマーは前記第2のユニバーサル配列を含んでおり;
d) 工程cから得られたPCR増幅産物を検出することにより、標的塩基配列中の一塩基変異を検出する
の各工程を含む方法。
【請求項6】
被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出する方法であって、
a) 前記被検試料の存在下で、第1および第2のアレル特異的プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてDNA鎖伸長反応を行い、ここで、前記第1および第2のアレル特異的プライマーは、標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異に対応する塩基を有し、第1および第2のアレル特異的プライマーの3’末端の塩基は互いに異なっており、かつその相補的な配列の5’側にそれぞれ第1および第2のタグ配列を有しており、さらにタグ配列の5’側に第1のユニバーサル配列を有しており;
b) 工程aから得られた伸長産物の存在下で、アレル共通プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてDNA鎖伸長反応を行い、ここで、前記アレル共通プライマーは、前記第1および第2のアレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有し、かつその配列の5’側に第2のユニバーサル配列を有しており;
c) 工程bから得られた伸長産物の存在下で、第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてPCRを行い、ここで、第1のユニバーサルプライマーは前記第1のユニバーサル配列を含んでおり、第2のユニバーサルプライマーは前記第2のユニバーサル配列を含んでおり;
d) 工程cから得られたPCR増幅産物および第1および第2のタグ配列認識プローブの存在下で、二本鎖特異的5’→3’エキソヌクレアーゼを用いてDNA分解反応を行い、ここで、前記第1および第2のタグ配列認識プローブはそれぞれ前記第1および第2のアレル特異的プライマー中の第1および第2のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有しており;そして
e) 工程dにおいて第1および第2のタグ配列認識プローブが分解されたか否かを検出することにより、標的塩基配列中の一塩基変異を検出する
の各工程を含む方法。
【請求項7】
工程eにおける第1および第2のタグ配列認識プローブの分解の検出が、分解産物のゲル電気泳動により行われる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程dにおける第1および第2のタグ配列認識プローブがそれぞれ蛍光分子および消光分子を有しており、工程eにおける第1および第2のタグ配列認識プローブの分解の検出が、蛍光強度の変化の測定により行われる、請求項6記載の方法。
【請求項9】
請求項2記載の方法により被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出するためのキットであって、
a) 標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異に対応する塩基を有し、かつその相補的な配列の5’側にそれぞれ第1および第2のタグ配列を有する第1および第2のアレル特異的プライマー、ただし、前記第1および第2のアレル特異的プライマーの3’末端の塩基は互いに異なっており;
b) 前記第1および第2のアレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有するアレル共通プライマー;
c) 前記第1のアレル特異的プライマー中の前記第1のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有する第1のタグ配列認識プローブ;および
d) 前記第2のアレル特異的プライマー中の前記第2のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有する第2のタグ配列認識プローブ
を含むキット。
【請求項10】
請求項6記載の方法により被検試料中の標的塩基配列中の一塩基変異を検出するためのキットであって、
a) 標的塩基配列中の一塩基変異部位から3’側の配列に相補的な配列を有し、その3’末端は一塩基変異に対応する塩基を有し、かつその相補的な配列の5’側にそれぞれ第1および第2のタグ配列を有し、さらにタグ配列の5’側に第1のユニバーサル配列を有する第1および第2のアレル特異的プライマー、ただし、前記第1および第2のアレル特異的プライマーの3’末端の塩基は互いに異なっており;
b) 前記第1および第2のアレル特異的プライマーからポリメラーゼにより伸長される配列に相補的な配列を有し、かつその配列の5’側に第2のユニバーサル配列を有するアレル共通プライマー;
c) 前記第1のユニバーサル配列を含む第1のユニバーサルプライマー;
d) 前記第2のユニバーサル配列を含む第2のユニバーサルプライマー;
e) 前記第1のアレル特異的プライマー中の前記第1のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有する第1のタグ配列認識プローブ;および
f) 前記第第2のアレル特異的プライマー中の前記第第2のタグ配列の全部または一部の配列と同一の配列を有する第2のタグ配列認識プローブ
を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−75126(P2006−75126A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265433(P2004−265433)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】