説明

一方向加圧注入式複合木材処理方法及びその設備

【課題】木材固有の水分と養分を輸送するための管路を利用した一方向加圧注入式複合木材処理方法及びその設備を提供すること。
【解決手段】木材固有の水分と養分の輸送管路を利用し、一方向加圧方式で、木材を複合木材にするものである。その処理方法は、木材を縦方向に加圧容器に入れ、木材の前端部を大気圧に連通させた後、木材と加圧容器の間を密封し、且つ溶液を加圧容器に加圧注入して、木材の水分と養分の輸送管路から溶液を木材に進入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向加圧注入式複合木材処理方法及びその設備に関し、主に建材に適した天然木材や竹等を防火、防腐機能を備えた複合木材とするものであり、特に建材市場への応用に適した、一方向加圧注入式複合木材処理方法及びその設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の木材の防腐、防火処理は、木材を池や容器内に入れ、防腐液、防火液等の溶液を注入した後、溶液を自然に木材内に進入させ、木材に溶液を飽和するまで吸着させて処理が完成する。このような従来の処理方法は木材を溶液中に非常に長時間浸漬させる必要があり、且つ大量生産できないため、経済的でない。
【0003】
これとは別の処理方法は、木材を耐高圧性の加圧タンク内に入れ、加圧タンク内に溶液を加えて加圧処理を行い、溶液の木材内への浸透を加速する方法である。このような処理方法は処理過程において、加圧タンク内に対して非常に大きな圧力(圧力値約10〜30kg/cm2)を加える必要があり、加圧タンク設備のコストが高いだけでなく、このような環境下での作業は極めて危険でもあるため、生産コストが非常に高く、処理後の木材の販売も高価になり、使用者に敬遠されやすい。
【0004】
実際に、木材の特性を深く研究すると、樹木は生長時にその幹の内部に多くの上下に配列された水分と養分の輸送に用いる管状細胞が集合して維管束組織(vascular tissues)と通道組織(conductive tissues)を成していることが分かる。木の幹の内部の維管束組織と通道組織は木材にした後も破壊されず、その上下に配列された特性は木材の横方向の耐圧力を強化している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、木材固有の水分と養分を輸送するための管路を利用して、一方向加圧方式で木材を複合木材に製作することができれば、前述の従来技術の欠点を克服し、処理後の複合木材に防火、防腐機能を持たせることができるだけでなく、木材の強度を高め、使用寿命を延長でき、且つ建材市場に幅広く応用するという目的を達することができ、同時に迅速、安定、工程削減、時間節約という多重の利点を備えている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、木材固有の水分と養分を輸送するための管路を利用した、一方向加圧注入式複合木材処理方法及びその設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る一方向加圧注入式複合木材処理設備は、加圧容器と溶液加圧装置とを含み、前記加圧容器は内部に少なくとも1本の木材を縦方向に入れることが可能であり、一側に木材の数量に対応する開口が設けられ、他側に前記溶液加圧装置が接続され、かつ前記溶液加圧装置により溶液を前記加圧容器内に注入することが可能とされ、前記加圧容器の各開口を封鎖するシール部材が設置され、前記シール部材は、内縁に通孔が設けられ、且つ前記通孔の内縁で前記木材の外縁が密封され、前記木材の前端部が前記シール部材の前記通孔を通して大気と連通されて負圧に形成され、前記木材の後端部から木材固有の水分と養分の輸送管路を介して前記加圧容器内の溶液を前記木材の前端部に向かって迅速に前記木材内部に浸透させることを特徴とする。
【0008】
上述の設備により、溶液加圧装置が溶液を加圧容器に加圧注入するとき、木材の前端部がシール部材の通孔を通過して大気と連通されているため、加圧容器内で加圧された溶液が木材の前端部で負圧を形成し、溶液の圧力を木材の後端部から前端部に向かって施圧させ、それにより木材の後端部から木材固有の水分と養分の輸送管路を介して溶液を木材の前端部に向かって迅速に木材内部に浸透させることができる。
【0009】
前述の溶液は細顆粒物質(粒径0.002mmより小さい)を添加した気体または液体の溶液であり、カオリナイト(kaolinite)、イライト(illite)、モンモリロナイト(montmorillonite)等の粘土、ナノ材料及び天然または化学防火剤、防腐剤等の材料を添加物として含む溶液で、木材の組織に浸透して吸着された後複合木材を形成し、木材に防火や防腐等の機能を持たせることができることを併せて述べておく。
【0010】
上述をまとめると、本発明の方法は、木材を縦方向に加圧容器に入れ、木材の前端部を大気圧に連通させた後、木材と加圧容器の間を密封し、且つ溶液を加圧容器に加圧注入して、木材の後端部から木材の水分と養分の輸送管路を介して溶液を木材に進入させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、木材固有の水分と養分の輸送管路を利用しているため、比較的低圧且つ省エネの方法で、一方向加圧方式で木材を複合木材に製作することができる。また、処理後の複合木材は防火、防腐機能を備え、木材の強度を高め、使用寿命を延長でき、建材市場で幅広く応用するという目的を達することができ、且つ迅速、安定、工程削減、時間節約の多重の利点を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例を示す複合木材処理設備の構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例を示す複合木材処理設備及び方法の第1実施例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例を示す複合木材処理設備及び方法の第2実施例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例に係る本発明の複合木材処理設備及び方法の第3実施例を示す部分断面図である。
【図5】本発明の複合木材処理設備に同時に複数の木材を設置した実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の実施例を示す複合木材処理設備の構造を示す斜視図である。また、図2は本発明の実施例を示す複合木材処理設備及び方法の第1実施例を示す断面図である。
【0014】
図1、図2に示すように、本発明の一方向加圧注入式複合木材処理設備は、加圧容器10と溶液加圧装置20とを含み、加圧容器10は、内部に少なくとも1本の木材30を縦方向に入れることが可能であり、一側に木材30の数量に対応する開口11を備え、他側に溶液加圧装置20が接続され、溶液加圧装置20により溶液を加圧容器10内に注入することができる。
【0015】
加圧容器10の開口11にはそれぞれシール部材40が設置され、シール部材40は輪郭が加圧容器10の開口11の形状に合致し、開口11を封鎖することができ、その内縁に通孔41を備え、且つ通孔41の内縁と木材30の外縁を密封し、木材30の前端部31をシール部材40の通孔41に通過させ、大気と連通させることができる。シール部材40の材質はゴムや軟質プラスチックとしてもよく、通孔41の内縁と木材30の外縁の密封の方式は、木材30の形状に合わせ、さらに防水接着剤を利用するか、ガスケットを設置して隙間を封塞する等の方法で達成してもよい。
【0016】
上述の設備において、溶液加圧装置20が溶液を加圧容器10に加圧注入するとき、木材30の前端部31がシール部材40の通孔41を通過して大気と連通されているため、加圧容器10内で加圧された溶液が木材30の前端部31で負圧を形成し、加圧容器10内の溶液の圧力を木材30の後端部32から前端部31に向かって施圧させ、それにより木材30の後端部32から木材固有の水分と養分を輸送する管路を介して溶液を木材30の前端部31に向かって迅速に木材30内部に浸透させることができる。
【0017】
前述の溶液は天然または化学防火剤、防腐剤等の材料を添加した溶液で、例えば、カオリナイト(kaolinite)、イライト(illite)、モンモリロナイト(montmorillonite)等の粘土、ナノ材料等の材料を添加し、木材30の組織に浸透して吸着された後に複合木材を形成し、木材に防火や防腐等の機能を持たせることができる。
【0018】
図2においては、木材30の前端部31はシール部材40の通孔41の外に突出して露出されている。実施時は、木材30の前端部31を外部に開放状態にして大気と連通させるだけでよい。例えば、図3に示すように、木材30の前端部31とシール部材40の通孔41の前端が平らに揃っていても、または、図4に示すように、木材30の前端部31がシール部材40の通孔41の前端から凹陥していても、いずれも実施可能な実施例とすることができる。
【0019】
図5に示すように、本発明の一方向加圧注入式複合木材処理設備は、実施時、加圧容器10の開口11を複数個設け、開口の数と同じ数量の木材30を加圧容器10内に入れ、同じ数量のシール部材40を利用して、加圧容器10の各開口11を封鎖し、同時に複数の木材30に対して一方向の加圧注入を行ってもよい。
【0020】
以上の説明をまとめると、本発明の一方向加圧注入式複合木材処理方法は、図1から図5に示すように、以下のステップを含む。
【0021】
第1ステップ:木材30を加圧容器10に縦方向に入れ、木材30の前端部31を大気圧に連通させる。
第2ステップ:木材30と加圧容器10の間を密封する。
第3ステップ:溶液加圧装置により溶液を加圧容器10内に加圧注入する。加圧された溶液が木材30の後端部32から木材30の水分と養分を輸送する管路を介して木材30内に進入し、木材の一方向加圧注入を完了する。
【0022】
上述の方法の実施ステップにおいて、加圧容器10の構造、木材30と加圧容器10の間の密封、溶液の加圧容器10内への加圧注入等の過程は前掲の説明と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0023】
上述の複合木材処理方法は、木材固有の水分と養分の輸送管路を利用して溶液を木材に進入させて浸透させるため、比較的低圧且つ省エネの方法で達成することができる。設備コストを低く抑えることができ、処理後の複合木材に防火、防腐機能を持たせることができるだけでなく、木材の強度を高め、使用寿命を延長でき、建材市場に幅広く応用するという目的を達することができ、従来技術と比較して、迅速、安定、工程削減、時間節約の多重の利点を備えている。
【符号の説明】
【0024】
10 加圧容器
11 開口
20 溶液加圧装置
30 木材
31 前端部
32 後端部
40 シール部材
41 通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧容器と溶液加圧装置とを含み、前記加圧容器が内部に少なくとも1本の木材を縦方向に入れることが可能であり、一側に前記木材の数量に対応する開口が設けられ、他側に前記溶液加圧装置が接続され、かつ前記溶液加圧装置により溶液を前記加圧容器内に加圧注入することが可能とされ、
前記加圧容器の各開口を封鎖するシール部材が設置され、
前記シール部材は、内縁に通孔が設けられ、且つ前記通孔の内縁で前記木材の外縁が密封され、前記木材の前端部が前記シール部材の前記通孔を通して大気と連通されて負圧に形成され、前記木材の後端部から木材固有の水分と養分の輸送管路を介して前記加圧容器内の溶液を前記木材の前端部に向かって迅速に前記木材内部に浸透させる、
ことを特徴とする一方向加圧注入式複合木材処理設備。
【請求項2】
前記木材が竹を含むことを特徴とする、請求項1に記載の一方向加圧注入式複合木材処理設備。
【請求項3】
前記通孔の内縁と前記木材の外縁が防水接着剤またはガスケットで密封されたことを特徴とする、請求項1に記載の一方向加圧注入式複合木材処理設備。
【請求項4】
前記木材の前端部が前記シール部材の通孔の外部に露出されたことを特徴とする、請求項1に記載の一方向加圧注入式複合木材処理設備。
【請求項5】
前記木材の前端部と前記シール部材の通孔の前端が面一であることを特徴とする、請求項1に記載の一方向加圧注入式複合木材処理設備。
【請求項6】
前記木材の前端部が前記シール部材の通孔の前端より凹陥していることを特徴とする、請求項1に記載の一方向加圧注入式複合木材処理設備。
【請求項7】
前記溶液が、細顆粒物質を添加した気体または液体の溶液であり、添加物が、カオリナイト(kaolinite)、イライト(illite)、モンモリロナイト(montmorillonite)等の粘土、ナノ材料及び天然または化学防火剤、防腐剤のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の一方向加圧注入式複合木材処理設備。
【請求項8】
一方向加圧注入式複合木材処理方法であって、
木材を縦方向に加圧容器に入れ、前記木材の前端部を大気圧に連通させる第1ステップと、
前記木材と前記加圧容器との間を密封する第2ステップと、
溶液を前記加圧容器内に加圧注入することにより、加圧された溶液を木材の後端部から木材の水分と養分の輸送管路を介して前記木材内に進入させる第3ステップと、
を含むことを特徴とする、一方向加圧注入式複合木材処理方法。
【請求項9】
前記加圧容器が一側に前記木材の数量に対応する開口を備え、前記木材の前端部を大気と連通させることを特徴とする、請求項8に記載の一方向加圧注入式複合木材処理方法。
【請求項10】
前記加圧容器の各開口にそれぞれシール部材が設置され、前記シール部材はその外縁が前記加圧容器の開口を封鎖し、内縁に通孔を備え、且つ前記通孔の内縁と前記木材の外縁とが密封され、前記木材の前端部が前記シール部材の通孔を通過して大気と連通されることを特徴とする、請求項8に記載の一方向加圧注入式複合木材処理方法。
【請求項11】
前記溶液が溶液加圧装置により前記加圧容器内に加圧注入されることを特徴とする、請求項8に記載の一方向加圧注入式複合木材処理方法。
【請求項12】
前記溶液が、細顆粒物質を添加した気体または液体の溶液であり、添加物が、カオリナイト(kaolinite)、イライト(illite)、モンモリロナイト(montmorillonite)等の粘土、ナノ材料及び天然または化学防火剤、防腐剤のいずれかであることを特徴とする、請求項8に記載の一方向加圧注入式複合木材処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−136494(P2011−136494A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298323(P2009−298323)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(510003508)
【Fターム(参考)】