説明

一条化吊線

【課題】既設の光ファイバケーブルに追加する光ドロップケーブルの敷設を非常に簡単に行なうことができる一条化吊線を提供する。
【解決手段】外皮3を有する吊線1と外皮8を有する光ドロップケーブル4が所定間隔で平行に配設され、前記吊線1に前記光ドロップケーブル4を吊り下げるハンガー部材10が所定間隔に設けられる一条化吊線1において、前記ハンガー部材10は前記光ドロップケーブル4を貫通するケーブル貫通孔10aが独立して設けられ、前記光ドロップケーブル4は前記ハンガー部材10の前記ケーブル貫通孔10aに遊嵌する状態で配設される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の幹線用の光ファイバケーブルに追加の光ドロップケーブルを敷設する一条化吊線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自己支持型光ファイバケーブルは、支持線と幹線用の光ファイバケーブルの本体部が一体化されており、これを架空に懸架する場合には、支持線の両端を電柱に固定することで、光ファイバケーブルの本体部を保持することができる。この自己支持型光ファイバケーブルは、支持線と光ファイバケーブルの本体部が連結部材を使用して一体化しているので、支持線を単独で架設する必要がなく、架設が一回で済むものである。このような光ファイバケーブルを特開2000−338376号公報に示す。
【0003】
しかしながら、上述した従来の光ファイバケーブルにおいては、幹線用の光ファイバケーブルには複数本の光ファイバケーブルが収納されているが、昨今の光通信の普及、特に、インターネットにおける光ファイバケーブル利用の急激な増加に伴い、既設の光ファイバケーブルだけでは間に合わず、既設の光ファイバケーブルの箇所に追加の光ドロップケーブルを敷設する必要にせまられていた。ところが、通信ケーブルの敷設に関しては規制があり、電柱間では一条の吊線しか敷設できず、追加の光ドロップケーブルも既設の幹線用光ファイバケーブルと合わせ一条化する必要があった。
【0004】
そこで、この課題を解決するために特開2004−80999号公報に示すようなスパイラルハンガーを使用するケーブル架設工法があった。このケーブル架設工法は、スパイラルハンガーに架設された既設のケーブルハンガーに新たなケーブルを前記既設のケーブルとともに架線するケーブル架設工法であって、前記既設のケーブルを内部に保持できる誘導具を有する通線手段を当該既設のケーブルに沿わせて前記スパイラルハンガー内を挿通させながら移動させることにより牽引用ロープを延線し、この牽引用ロープの先端に新たなケーブルを連結した後、新たなケーブルを繰り出しながら牽引用ロープを巻き取ることで、当該新たなケーブルをハンガー内に架線することを特徴とするものである。
【特許文献1】特開2000−338376号公報
【特許文献2】特開2004−80999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のケーブル架設工法においては、既設のケーブルにスパイラル状のハンガー部材を取り付け、追加の光ドロップケーブルをこのハンガー部材に追加のケーブルを挿通する方法なので、このハンガー部材を所定間隔で取り付けることは非常に時間がかかり、ハンガー部材のコストも安価ではなく、結果的にこの架設工法は費用が高いものとなっていた。
【0006】
本発明は、上述した従来の問題に鑑みなされたもので、使用する部材も安価であり、既設の光ファイバケーブルに追加する光ドロップケーブルの敷設を非常に簡単に行なうことができる一条化吊線を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、外皮を有する吊線と外皮を有する光ドロップケーブルが所定間隔で平行に配設され、前記吊線に前記光ドロップケーブルを吊り下げるハンガー部材が所定間隔に設けられる一条化吊線において、前記ハンガー部材は前記光ドロップケーブルを貫通させるケーブル貫通孔が独立して設けられ、このケーブル貫通孔に前記光ドロップケーブルが遊嵌する状態で配設されることを特徴としている。
【0008】
また、本発明は、外皮を有する吊線と外皮を有する光ドロップケーブルが所定間隔で平行に配設され、前記吊線に前記光ドロップケーブルを吊り下げるハンガー部材が所定間隔に設けられる一条化吊線において、前記ハンガー部材は前記光ドロップケーブルを貫通させるケーブル貫通孔が独立して設けられ、このケーブル貫通孔に前記光ドロップケーブルが遊嵌する状態で配設され、前記光ドロップケーブルを索引する導入線が前記ハンガー部材の前記ケーブル貫通孔に挿通されていることを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明は、外皮を有する吊線と外皮を有する光ドロップケーブルが所定間隔で平行に配設され、前記吊線に前記光ドロップケーブルを吊り下げるハンガー部材が所定間隔に設けられる一条化吊線において、前記吊線敷設前に、前記ハンガー部材は予め吊線に吊線貫通孔を貫通して所定間隔で固定され、前記ハンガー部材の貫通孔に導入線を貫通させ、追加の光ドロップケーブルを敷設する場合は、吊線敷設後に前記導入線の一端に前記光ドロップケーブルを接続し、前記導入線の他端を引き出すことにより、前記ハンガー部材のケーブル貫通孔に前記光ドロップケーブルを挿通することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の一条化吊線に使用する吊線の外皮は一般的に使用されている合成樹脂で製造されている。例えば、ポリエチレン樹脂による被覆押出成型によりハンガー部と一体に形成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成されたことにより、既設のケーブルに追加の光ドロップケーブルを敷設する場合には、追加の光ドロップケーブルを導入線によりハンガー部材のケーブル貫通孔に挿通するだけでよく、新たなハンガー部材などを設置する必要がなく、作業が極めて簡単に短時間にでき、敷設作業にかかる費用を大幅に削減できるものである。
【0012】
また、本発明に使用するハンガー部材は、ポリエチレンなどの安価な材料でしかも比較的簡単な構造の部材であるため、一条化部材の費用削減ができ、上記敷設作業の費用削減とともに、大幅なコストダウンが可能となる。
【0013】
さらに、本発明は、一度一条化吊線を既設のケーブルに取り付けておけば、次に光ドロップケーブルを敷設する場合にもそのまま使用することができ、新たな一条化部材の取り付け作業を省くことができるので、一条化部材の費用削減と共に敷設作業の費用削減もできるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る一条化吊線およびその敷設方法の最良の形態について図を参照して説明する。
図1は本発明の一条化吊線を示す斜視図、図1のX−X断面図、図3は図1の一条化吊線に使用する光ドロップケーブルを示す拡大断面図、図4は図1の一条化吊線の敷設状態を示す模式図、図5は図1の一条化吊線の敷設方法を説明する工程図である。
【0015】
本発明に係る一条化吊線は、図1または図2に示すように、支持芯線2と外皮3を有する吊線1と、ドロップケーブル4が所定間隔で平行に配設され、前記吊線1にドロップケーブル4を吊り下げるハンガー部材10が所定間隔に設けられている。このハンガー部材10は、前記吊線1に所定間隔で一体化されて配置され、前記ドロップケーブル4は前記ケーブル貫通孔10bに遊嵌する状態で配設されている。
【0016】
この一条化吊線の吊線1は、芯線2に複数本の鋼線などを撚り合わせたものを使用しており、この芯線2に外皮3となるポリエチレンなどの合成樹脂を被覆する被覆押出成型により成形されたものであり、架空された場合に十分な強度を備えたものである。そして、ハンガー部材10もポリエチレンなどの合成樹脂材料より成形され、この吊線1にモールド成形により一体化されるものである。
【0017】
また、ドロップケーブル4は、図3に示すように、鋼線などから形成された支持線5と、抗張力線6,6と光ファイバ芯線7から形成された光ファイバ部とがポリエチレンやポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂により外皮8に一体化され押出成形されたものである。そして、この外皮8には切り込みが形成されており、光ファイバ芯線7と抗張力線6と容易に切り離せるようになっている。
【0018】
このように構成された光ドロップケーブル4は、図4に示すように、幹線ケーブル11より分枝用クロージャ12により分枝され、吊線1に吊り下げられ一般加入者の住宅13に引き込まれるものである。そして、住宅13内において、光ドロップケーブル4は、支持線5が切り離されて光ファイバ部分のみが屋内配線され、パソコンなどの光接続機器14に接続されるものである。
【0019】
このように構成された一条化吊線の敷設方法を説明する。
まず、図1に示すように、製造工場などで押出成形などで製造された吊線1に、ハンガー部材10を所定の位置にモールド成形で一体化する。そして、図3(a)に示すように、吊線1に一体化したハンガー部材10のケーブル貫通孔10aに、光ドロップケーブル4を通すための導入線9を挿通させておく。
【0020】
次いで、敷設現場などで、図3(b)に示すように、吊線1の敷設前に導入線9を使用して、当初の光ドロップケーブル4をハンガー部材10のケーブル貫通孔10bに挿通させておく。また、図3(c)に示すように、導入線9は、追加の光ドロップケーブル4の敷設のために、再度ハンガー部材10のケーブル貫通孔10aに挿通させておくものである。
【0021】
次いで、図4に示すように、光ドロップケーブル4を装着した吊線1を電柱15,15に架線し、ハンガー部材10に光ドロップケーブル4を挿通させ、引き込み位置に引落用ドロップクロージャ16を取り付け、当初の一般加入者の住宅13に引き込み工事を行なうものである。
【0022】
さらに、当初の一般加入者の住宅13の敷設工事終了後に、追加の住宅13′,13′に光ドロップケーブル4′,4′の敷設工事が発生した場合には、図3に示す手順で追加の敷設工事を行うものである。
【0023】
上述したように、本発明の一条化吊線1は、既設の光ドロップケーブル4にハンガー部材10の挿通部11に追加の光ケーブルを挿通させることで、極めて簡単に追加の光ドロップケーブルを敷設できるものである。そして、このハンガー部材10は、比較的簡単な構造の合成樹脂材料の成形品のため、その部品コストも安価であり、工事費用と合わせても、安価にできるものである。
【0024】
また、本発明の一条化吊線は、一度、取り付けてしまえば、追加する光ドロップケーブルは1本に限らず、2本でも3本でも追加することができるものである。そして、その場合でも新たなハンガー部材10を追加する必要がないので、コストと手間が大幅に削減できるものである。
【0025】
尚、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で様々の態様が可能なことは勿論である。例えば、形状、材料などは適宜選択できることは勿論である。例えば、ハンガー部材の貫通孔の形状は吊線と光ドロップケーブルの形状に合わせて、様々な形状することができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明に係る一条化吊線を示す斜視図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】図1の一条化吊線に使用する光ドロップケーブルを示す断面図である。
【図4】図1の一条化吊線の敷設状態を示す模式図である。
【図5】図1の一条化吊線の敷設方法を説明する工程図である。
【符号の説明】
【0027】
1 吊線
2 芯線
3 外皮
4 光ドロップケーブル
5 支持線
6 抗張力線
7 光ファイバ芯線
8 外皮
9 導入線
10 ハンガー部材
10a 貫通孔
11 幹線ケーブル
12 分岐用ドロップクロージャ
13 住宅
14 光接続機器
15 電柱
16 引落用ドロップクロージャ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外皮を有する吊線と外皮を有する光ドロップケーブルが所定間隔で平行に配設され、前記吊線に前記光ドロップケーブルを吊り下げるハンガー部材が所定間隔に設けられる一条化吊線において、
前記ハンガー部材は前記光ドロップケーブルを貫通させるケーブル貫通孔が独立して設けられ、このケーブル貫通孔に前記光ドロップケーブルが遊嵌する状態で配設されることを特徴とする一条化吊線。
【請求項2】
外皮を有する吊線と外皮を有する光ドロップケーブルが所定間隔で平行に配設され、前記吊線に前記光ドロップケーブルを吊り下げるハンガー部材が所定間隔に設けられる一条化吊線において、
前記ハンガー部材は前記光ドロップケーブルを貫通させるケーブル貫通孔が独立して設けられ、このケーブル貫通孔に前記光ドロップケーブルが遊嵌する状態で配設され、前記光ドロップケーブルを索引する導入線が前記ハンガー部材の前記ケーブル貫通孔に挿通されていることを特徴とする一条化吊線。
【請求項3】
外皮を有する吊線と外皮を有する光ドロップケーブルが所定間隔で平行に配設され、前記吊線に前記光ドロップケーブルを吊り下げるハンガー部材が所定間隔に設けられる一条化吊線において、
前記吊線敷設前に、前記ハンガー部材は予め吊線に吊線貫通孔を貫通して所定間隔で固定され、前記ハンガー部材の貫通孔に導入線を貫通させ、追加の光ドロップケーブルを敷設する場合は、吊線敷設後に前記導入線の一端に前記光ドロップケーブルを接続し、前記導入線の他端を引き出すことにより、前記ハンガー部材のケーブル貫通孔に前記光ドロップケーブルを挿通することを特徴とする一条化吊線。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−178563(P2007−178563A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374833(P2005−374833)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(591160268)北日本電線株式会社 (41)
【Fターム(参考)】