説明

一次純水製造プロセス水の処理方法及び装置

【課題】難分解性有機物を効率よく分解除去することができ、かつ後段における脱塩の負荷を抑制することができる一次純水製造プロセス水の処理方法を提供する。
【解決手段】ペルオキソ硫酸を生成させる生成工程と、一次純水製造プロセス水に対して該ペルオキソ硫酸を、ペルオキソ硫酸濃度が所定濃度となるように添加する添加工程と、該添加工程を経た該一次純水製造プロセス水に紫外線を照射し、該一次純水製造プロセス水に含まれる有機物を分解除去する分解工程とを含むことを特徴とする一次純水製造プロセス水の処理方法。ペルオキソ硫酸を用いているため、ペルオキソ硫酸塩を用いる場合のように後段でこの塩を脱塩する必要がなく、脱塩の負荷が抑制される。ペルオキソ硫酸の生成工程を有するため、自己分解の進んでいないペルオキソ硫酸を用いることができる。このため、難分解性有機物を効率よく分解除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次純水製造プロセス水に紫外線を照射し、該一次純水製造プロセス水中に含まれる有機物を分解除去する方法及びこの方法に用いられる装置に係り、特に、一次純水製造プロセス水にペルオキソ硫酸イオンを添加した後に紫外線を照射し、該一次純水製造プロセス水中の有機物を分解除去する方法及びこの方法に用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
I. 従来、有機物含有水を紫外線照射装置に導入して紫外線を照射し、該有機物含有水中に含まれる有機物を分解除去する方法が行われている。この紫外線照射装置は、電子産業の分野で用いられる超純水製造装置の一部として広く用いられている。有機物含有水中に含まれる有機物が化学的に不安定なものである場合、この紫外線照射装置を用い、有機物濃度を容易に1μg/L as C以下にすることができる。
【0003】
これに対し、有機物含有水中に含まれる有機物が化学的に安定な難分解性有機物である場合、この紫外線照射装置を用いて有機物濃度を1μg/L as C以下にすることは困難である。例えば、尿素は難分解性有機物の一種であるが、この紫外線照射装置のみでは尿素の分解率がほぼゼロに近い。このため、尿素が有機物含有水中に数μg/L as Cレベル以上含まれている場合、この紫外線照射装置のみで有機物濃度を1μg/L as C以下にすることは極めて困難である。
【0004】
また、有機物含有水に過酸化水素を添加してから紫外線を照射する方法も知られている。しかしながら、この方法によっても、尿素などの難分解性有機物を十分に除去することができない。
【0005】
国際半導体技術ロードマップ(ITRS)によると、45nmプロセスを導入した半導体製造においては、超純水中有機物濃度を極微量域まで安定して除去する必要がある。このため、水中に微量にしか存在しない尿素のような難分解性有機物をも分解除去できる技術が望まれている。
【0006】
II. 有機物含有水中の有機物をより強力に分解除去する方法として、有機物含有水に紫外線を照射する前に、該有機物含有水に対して、ペルオキソ硫酸イオン(ペルオキソ一硫酸イオン及び/又はペルオキソ二硫酸イオン)を添加したり、過酸化水素及び硫酸を添加したりする方法が知られている。
【0007】
例えば、特開平11―099395号には、有機物含有水に対してペルオキソ二硫酸ナトリウムを添加し、次いで、紫外線酸化処理する方法が提案されている。
【0008】
また、特開平8−080492号の実施例1には、紫外線分解槽に被処理排水を導入し、次いで、この被処理排水に過酸化水素及び硫酸をこの順に添加し、その後、紫外線を照射する方法が記載されている。
【0009】
III. 特開平11−293288号には、電子材料表面から有機物を除去する方法として、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ一硫酸又はこれらの塩を純水に添加したものを洗浄液として用い、この洗浄液を電子材料の表面に滴下して紫外線を照射する方法が記載されている。
【0010】
同号には、かかる洗浄液は、従来の硫酸と過酸化水素水とを混合してなる所謂硫酸過水(SPM)洗浄液よりも、洗浄効果が高いことが開示されている。
【特許文献1】特開平11―099395号公報
【特許文献2】特開平8−080492号公報
【特許文献3】特開平11−293288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1のように、有機物含有水に対してペルオキソ硫酸塩を添加する場合、後段において塩を除去する必要があるため好ましくない。また、ペルオキソ硫酸塩水溶液中のペルオキソ硫酸イオンが自己分解し、ペルオキソ硫酸イオン濃度が経時的に低下する。このため、有機物含有水中のペルオキソ硫酸イオン濃度が所定濃度となるようにペルオキソ硫酸塩水溶液の添加量を調整することが困難である上に、自己分解の分だけペルオキソ硫酸塩を余分に生成させる必要があり、薬剤コストが高くつく。
【0012】
また、上記特許文献2のように、紫外線分解槽に被処理排水を導入し、次いで、この被処理排水に過酸化水素及び硫酸をこの順に添加する場合にあっては、予め過酸化水素と硫酸を混合する場合と比べて、過酸化水素と硫酸との接触効率が極めて低くなる。このため、被処理水中のペルオキソ硫酸を所定濃度に調整することが困難である。また、このような低い接触効率において所定濃度のペルオキソ硫酸を生成させるためには、多量の過酸化水素と硫酸を添加する必要が生じ、薬品コストが高くつくと共に、残留した過酸化水素や硫酸の除去に手間やコストがかかる。
【0013】
本発明は、一次純水製造プロセス水に含有する尿素や尿素様有機化合物等の難分解性有機物を、効率よく分解除去することができ、かつ後段における脱塩の負荷を抑制することができる一次純水製造プロセス水の処理方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明(請求項1)の一次純水製造プロセス水の処理方法は、ペルオキソ硫酸を生成させる生成工程と、一次純水製造プロセス水に対して該ペルオキソ硫酸を、ペルオキソ硫酸濃度が所定濃度となるように添加する添加工程と、該添加工程を経た該一次純水製造プロセス水に紫外線を照射し、該一次純水製造プロセス水に含まれる有機物を分解除去する分解工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
請求項2の一次純水製造プロセス水の処理方法は、請求項1において、前記添加工程において、該一次純水製造プロセス水に対して前記ペルオキソ硫酸を、ペルオキソ硫酸濃度が5〜30mg/Lとなるように添加することを特徴とする。
【0016】
請求項3の一次純水製造プロセス水の処理方法は、請求項1又は2において、前記ペルオキソ硫酸がペルオキソ一硫酸であり、前記生成工程において、硫酸水溶液と過酸化水素水とをライン混合することによりペルオキソ一硫酸を生成させることを特徴とする。
【0017】
請求項4の一次純水製造プロセス水の処理方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記添加工程の前段において、前記一次純水製造プロセス水に含まれる易分解性有機物を除去する工程を有することを特徴とする。
【0018】
請求項5の一次純水製造プロセス水の処理方法は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記一次純水製造プロセス水は、逆浸透膜処理を直列に2段以上有する超純水製造プロセスにおいて1段目の逆浸透膜処理を行った後の処理水であることを特徴とする。
【0019】
本発明(請求項6)の一次純水製造プロセス水の処理装置は、ペルオキソ硫酸を生成させる生成手段と、一次純水製造プロセス水に対して該ペルオキソ硫酸を、ペルオキソ硫酸濃度が所定濃度となるように添加する添加手段と、該添加工程を経た該一次純水製造プロセス水に紫外線を照射し、該一次純水製造プロセス水に含まれる有機物を分解除去する紫外線照射装置とを含むことを特徴とする。
【0020】
請求項7の一次純水製造プロセス水の処理装置は、請求項6において、前記生成手段は、硫酸水溶液と過酸化水素水とをライン混合することによりペルオキソ一硫酸を生成させるライン混合手段であることを特徴とする。
【0021】
請求項8の一次純水製造プロセス水の処理装置は、請求項6又は7において、前記添加手段の前段において、前記一次純水製造プロセス水に含まれる易分解性有機物を除去する易分解性有機物除去手段を有することを特徴とする。
【0022】
請求項9の一次純水製造プロセス水の処理装置は、請求項6ないし8のいずれか1項において、易分解性有機物除去手段が逆浸透膜装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一次純水製造プロセス水の処理方法及び装置(請求項1及び請求項6)によると、ペルオキソ硫酸を用いているため、ペルオキソ硫酸塩を用いる場合のように後段でこの塩を脱塩する必要がなく、脱塩の負荷が抑制される。
【0024】
また、本発明では、ペルオキソ硫酸を生成させる生成工程ないし生成手段を有するため、一次純水製造プロセス水に添加するときに必要十分量のペルオキソ硫酸を生成させることができる。この生成されて間もないペルオキソ硫酸は、自己分解が進んでおらず、ペルオキソ硫酸濃度が高濃度であるため、難分解性有機物を効率よく分解除去することができる。また、ペルオキソ硫酸濃度が自己分解により大きく変化するよりも前に、該ペルオキソ硫酸を使用することができるため、一次純水製造プロセス水中のペルオキソ硫酸イオン濃度が所定濃度となるようにペルオキソ硫酸塩水溶液の添加量を調整することが容易である。
【0025】
請求項2のように、ペルオキソ硫酸濃度が5〜30mg/Lとなるように添加することにより、一次純水製造プロセス水中の有機物を効率よく分解除去することができる。
【0026】
請求項3及び請求項7によると、硫酸水溶液と過酸化水素水とをライン混合することにより、ペルオキソ一硫酸を容易に生成させることができる。また、過酸化水素水と硫酸を、予め混合せずに直接に一次純水製造プロセス水に添加する場合と比べ、過酸化水素水と硫酸の接触効率が極めて高いため、ペルオキソ一硫酸が効率よく生成され、有機物除去効率が高くなる。さらに、過酸化水素水を過酸化水素水の状態で保存しておき、必要時に必要量だけライン混合して使用することができる。このため、例えば過酸化水素水の分解を抑制するために該過酸化水素水を低温保存する場合にあっては、過酸化水素水を硫酸との混合溶液として低温保存する場合と比べて、冷却する液体の容量を小さくすることができるため、冷却コストを抑えることができる。
【0027】
なお、このライン混合においては、高濃度の過酸化水素水と硫酸とを混合した後に超純水で希釈して所定濃度にするようにしてもよい。この場合、過酸化水素水と硫酸との接触効率がより高いものとなる。
【0028】
請求項4及び請求項8によると、一次純水製造プロセス水にペルオキソ硫酸を添加するよりも前に、該一次純水製造プロセス水中の易分解性有機物が除去されているため、ペルオキソ硫酸を尿素等の難分解性有機物の分解除去に効率よく用いることができる。
【0029】
請求項5及び請求項9によると、1段目の逆浸透膜処理によって一次純水製造プロセス水中の易分解性有機物がある程度除去されているため、ペルオキソ硫酸を尿素等の難分解性有機物の分解除去に効率よく用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の一次純水製造プロセス水の処理方法は、ペルオキソ硫酸を生成させる生成工程と、一次純水製造プロセス水に対して該ペルオキソ硫酸を、ペルオキソ硫酸濃度が所定濃度となるように添加する添加工程と、該添加工程を経た該一次純水製造プロセス水に紫外線を照射し、該一次純水製造プロセス水に含まれる有機物を分解除去する分解工程とを含むことを特徴とするものである。
【0031】
本発明で生成させるペルオキソ硫酸は、ペルオキソ一硫酸(カロ酸)(HSO)、ペルオキソ二硫酸(過硫酸)(H)又はこれらの双方である。これらペルオキソ一硫酸とペルオキソ二硫酸は、いずれも高い酸化力を有する。
【0032】
ペルオキソ一硫酸は、硫酸とやや過剰量の過酸化水素との反応により、以下の反応式に従って生成させることができる。
【0033】
SO+H→HSO+H
【0034】
ペルオキソ二硫酸は、硫酸と計算量の過酸化水素との反応や、硫酸溶液の電解酸化などにより生成させることができる。硫酸溶液の電解酸化によりペルオキソ二硫酸を生成させる場合、電極からの不純物の溶出を防止するため、電極の素材としては、ダイヤモンドなどの不純物の溶出がないものが好適に用いられる。また、硫酸としては、電解効率が高く、かつ生成されたペルオキソ二硫酸イオンの寿命が長くなるように、温度20〜40℃、硫酸濃度3〜5Mであるものが好適に用いられる。
【0035】
本発明の一次純水製造プロセス水の処理方法は、尿素などの難分解性有機物を含有する一次純水製造プロセス水の処理に好適に使用される。
【0036】
このようにして生成させたペルオキソ一硫酸及び/又はペルオキソ二硫酸を、一次純水製造プロセス水に添加する。該ペルオキソ一硫酸及び/又はペルオキソ二硫酸の添加により、一次純水製造プロセス水のpHは酸性側に変化する。このペルオキソ硫酸中のペルオキソ硫酸イオンは、添加後の一次純水製造プロセス水中におけるペルオキソ硫酸濃度が5〜30mg/L特に10〜15mg/Lとなるように添加するのが好ましい。
【0037】
このようにして一次純水製造プロセス水にペルオキソ硫酸イオンを添加した後に、紫外線を照射する。
【0038】
このとき、ペルオキソ一硫酸イオンは、以下の反応式に従い、紫外線エネルギーによって励起されて硫酸ラジカルを発生し、この硫酸ラジカルの高い酸化力によって有機物を酸化分解させる。
【0039】
2SO2−→2SO+O
SO+e→SO2−
【0040】
また、このとき、ペルオキソニ硫酸イオンは、以下の反応式に従い、紫外線エネルギーによって励起されて硫酸ラジカルを発生し、この硫酸ラジカルの高い酸化力によって有機物を酸化分解させる。
【0041】
2−→2SO
2SO+e→SO2−
【0042】
本発明によると、ペルオキソ一硫酸イオン及び/又はペルオキソ二硫酸イオンから生成する硫酸ラジカルの高い酸化力により、尿素などの難分解性有機物を酸化分解除去することができる。
【0043】
本発明によると、ペルオキソ硫酸を用いているため、ペルオキソ硫酸塩を用いる場合のように、後段でこの塩を脱塩する必要がなく、脱塩の負荷が抑制される。
【0044】
また、本発明では、ペルオキソ硫酸を生成させる生成工程を有するため、一次純水製造プロセス水に添加するときに必要十分量のペルオキソ硫酸を生成させることができる。この生成されて間もないペルオキソ硫酸は、自己分解が進んでおらず、ペルオキソ硫酸濃度が高濃度であるため、難分解性有機物を効率よく分解除去することができる。また、ペルオキソ硫酸濃度が自己分解により大きく変化するよりも前に、該ペルオキソ硫酸を使用することができるため、一次純水製造プロセス水中のペルオキソ硫酸イオン濃度が所定濃度となるようにペルオキソ硫酸塩水溶液の添加量を調整することが容易である。従って、本発明によると、例えばTOC濃度1ppb未満の処理水を得ることができる。
【0045】
これに対し、ペルオキソ硫酸をタンクに貯留しておき、該タンクからペルオキソ硫酸を抜き出して使用する従来の方法によると、タンク内のペルオキソ硫酸が自己分解し、ペルオキソ硫酸濃度が低下するため、タンク内に長期間貯留されたペルオキソ硫酸を一次純水製造プロセス水に添加した場合、該一次純水製造プロセス水中のペルオキソ硫酸濃度が所定濃度に達しないおそれがある。そのため、より多量のペルオキソ硫酸を添加する必要があり、薬剤使用量が増加してしまう上、硫酸イオンの脱イオンの負荷が高くなってしまう。
【0046】
次に、図面を参照して本発明の一態様について説明する。図1は実施の形態に係る一次純水製造プロセス水の処理装置の系統図である。
【0047】
この一次純水製造プロセス水の処理装置においては、UV酸化器1、酸化剤除去装置2、脱気装置3及びイオン交換装置4がこの順に直列に接続されている。このUV酸化器1に、一次純水製造プロセス水を供給するための原水供給ライン10が接続されている。この原水供給ライン10の途中に、配管11を介して硫酸注入装置5が接続されている。この配管11の途中に、配管12を介して過酸化水素注入装置6が接続されている。イオン交換装置4の下流において、処理水中のTOC濃度がTOC測定器7によって測定可能になっている。
【0048】
UV酸化器1に使用する紫外線源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、水素放電管、キセノン放電管などが用いられる。このUV酸化器1内における被処理水の路幅は、3〜20mm特に5〜10mmであることが好ましい。路幅を狭くすることにより、照射した紫外線を、後述するペルオキソ一硫酸の分解(ラジカル化)に効率よく寄与させることができる。但し、路幅を狭くしすぎると、流量が小さくなると共に圧損が大きくなり、好ましくない。紫外線照射量は、0.1〜3.0kWh/m、特に1.0〜3.0kWh/mであることが好ましい。
【0049】
酸化剤除去装置2としては、容器内に活性炭や酸化剤分解触媒(Ptなど)を充填した装置などを用いることができる。ここで除去される酸化剤は主に未反応の過酸化水素及びペルオキソ硫酸である。
【0050】
脱気装置3としては、従来の一次純水システムに用いられるような真空脱気装置、窒素脱気装置や特開平9−29251号公報に記載されるような膜式脱気装置などを用いることができる。
【0051】
イオン交換装置4としては、連続再生式電気脱イオン装置などを用いることができる。
【0052】
硫酸注入装置5としては、例えば、硫酸を貯留するタンクと、該タンク内の硫酸を配管11に通液するためのポンプよりなるもの等を用いることができる。
【0053】
過酸化水素注入装置6としては、例えば、過酸化水素水を貯留するタンクと、該タンク内の過酸化水素を配管12に通液するためのポンプよりなるもの等を用いることができる。
【0054】
なお、これら硫酸や過酸化水素水を通液するタンクや配管等の材質としては、それぞれ耐酸性及び耐酸化性のものが用いられる。
【0055】
この処理装置を用いた一次純水製造プロセス水の処理方法を以下に説明する。
【0056】
先ず、原水供給ライン10に一次純水製造プロセス水を通水する。
【0057】
また、硫酸注入装置5から配管11内に硫酸を通液すると共に、過酸化水素注入装置6から配管12を介して配管11内に過酸化水素水を通液し、該配管11内でこれら硫酸と過酸化水素水とをライン混合する。これにより、該配管11内において、これら硫酸化合物と酸化剤とが反応してペルオキソ一硫酸が生成する。
【0058】
ここで、硫酸と過酸化水素の混合比(硫酸/過酸化水素)は、モル比で2倍以上であることが好ましい。例えば、10%HSOと10%Hを用いる場合、98%HSOと30%Hをそれぞれ超純水などによって10%HSOと10%Hに希釈することにより、調製することができる。
【0059】
このようにして生成させたペルオキソ一硫酸を、該配管11から原水供給ライン10内の原水に直ちに添加した後、UV酸化器1に導入する。
【0060】
また、ペルオキソ一硫酸を一次純水製造プロセス水に添加させた時点から、UV酸化器1内へ導入するまでの時間は、できるだけ短い方が好ましい。この時間が短いと、生成させたペルオキソ一硫酸が、UV酸化器1内で有機物の分解除去に寄与する前に自己分解して消失してしまう量が少なくなる。
【0061】
このUV酸化器1内において、ペルオキソ一硫酸が添加された原水に、紫外線を照射する。このとき、ペルオキソ一硫酸が紫外線エネルギーによって励起され、硫酸ラジカルが発生する。この硫酸ラジカルは強力な酸化剤であるため、原水中に含まれる有機物を強力に酸化分解させる。
【0062】
次いで、UV処理後の原水を、酸化剤除去装置2、脱気装置3及びイオン交換装置4の順に導入し、酸化剤の除去、炭酸ガス等の脱気、及び硫酸イオン、亜硫酸イオンや次亜硫酸イオン等のイオン状の化学種の除去を行う。
【0063】
このようにして処理された処理水を、必要に応じてTOC測定器7によってTOC濃度の測定を行い、その後系外に供給する。
【0064】
図2は異なる実施の形態に係る一次純水製造プロセス水の処理装置の系統図である。
【0065】
図2の処理装置は、原水供給ライン10の途中に、配管21を介して硫酸注入装置5が接続されており、この配管21の途中に、電解酸化装置20が接続されている。
【0066】
この電解酸化装置20は、硫酸注入装置5から供給される硫酸溶液を電解酸化してペルオキソ二硫酸を生成させるものである。この電解酸化装置20の電極の素材としては、電極からの不純物の溶出を防止するため、ダイヤモンドなどの不純物の溶出がないものが好適に用いられる。
【0067】
このように、図2の処理装置は、図1の処理装置において、配管11,12及び過酸化水素注入装置6に代えて、配管21及び電解酸化装置20を設けたものであり、図1と同一符号は同一部分を示している。
【0068】
この図2の処理装置によっても、尿素や尿素様有機化合物等の難分解性有機物を効率よく分解除去することができると共に、後段における脱塩の負荷を抑制することができる。
【0069】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0070】
例えば、上記UV酸化装置1の後段に、上記脱気装置3やイオン交換装置4と共に又はこれらに代えて、逆浸透膜装置や限外濾過膜装置を設置してもよい。
【0071】
上記図1及び図2の処理装置を、逆浸透膜処理装置を直列に2段以上有する超純水製造ユニットにおける、1段目の逆浸透膜処理装置よりも後段側に設置してもよい。ここで、一次純水製造プロセス水として市水(TOC濃度1ppm程度)を用いる場合には、まずこの市水を活性炭処理してTOCを20〜30%除去し、次いで図1の処理装置よりも上流側の逆浸透膜処理装置でTOC濃度を100〜200ppb程度にまで除去しておくことが好ましい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0073】
[実施例1〜3、比較例1,2]
図1の装置を用い、一次純水製造プロセス水の模擬水の処理を行った。
【0074】
模擬水としては、市水を活性炭及び逆浸透膜に通水した後、尿素を5μg/L as Cとなるように添加したものを用いた。なお、市水を活性炭及び逆浸透膜に通水した後にTOC濃度を測定したところ、約100μg/L as Cであった。
【0075】
UV酸化器1としては、ランプとして低圧紫外線酸化ランプ(主波長185nm)を使用し、照射電力は1.7kWh/mとした。
【0076】
酸化剤除去装置2としては、容器内に活性炭を充填したものを用いた。
【0077】
脱気装置3としては、セルガード社製「リキセル:4インチ」を用いた。
【0078】
イオン交換装置4としては、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を1:1の割合で混合したものを用いた。
【0079】
TOC測定器7としては、SIEVERS社製のオンラインTOC分析計「PPT」を用いた。なおUV酸化器に導入する直前における被処理水のTOC濃度も、このTOC測定器7で測定できるようにした。
【0080】
硫酸注入装置5から供給する硫酸化合物としては、10%HSOを用いた。
【0081】
過酸化水素注入装置6から供給する過酸化水素としては、10%Hを用いた。
【0082】
先ず、これら10%HSOと10%Hとを、混合比(HSO/H)がモル比で2/1となるように混合した。次いで、この混合液を、上記の模擬水中のペルオキソ硫酸濃度が3(比較例1),5(実施例1),15(実施例2),30(実施襟3),50(比較例2)mg/Lとなるように、模擬水に添加した。
【0083】
この被処理水をUV酸化器1に供給し、さらに酸化剤除去装置2、脱気装置3及びイオン交換装置4の順に通水し、処理水を得た。
【0084】
なお、これら被処理水及び処理水のTOC濃度をTOC測定器7で測定した。また、TOC除去後の残留イオン量を調べるべく、酸化剤除去直後の処理水の導電率を図示しない導電率計で測定した。その結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
[実施例4、比較例3]
10%HSOと10%Hとをライン混合(実施例4)又はバッチ混合(比較例3)した後、模擬水に添加したこと以外は実施例1〜3と同様にして、模擬水の処理を行った。
【0087】
なお、これら10%HSOと10%Hとの混合比(HSO/H)は、実施例1〜3と同様、モル比で2/1とした。また、実施例2と同様、この混合液を、上記の模擬水中のペルオキソ硫酸濃度が15mg/Lとなるように、模擬水に添加した。
【0088】
実施例1〜3と同様にして、被処理水及び処理水のTOC濃度をTOC測定器7で測定した。その結果を表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
表1から明らかな通り、実施例1〜3によると、96%以上のTOC除去率が達成され、特に実施例2,3では、TOC濃度を1μg/L as C以下にまで低減することができた。
【0091】
また、比較例2では実施例3と比較してTOC除去率の伸びが小さい割に導電率の伸びが大きい。即ち、イオンが多量に放出されているため、後段の脱塩処理に高負荷がかかることになる。
【0092】
表2から明らかな通り、実施例4によると、ライン混合することによりペルオキソ硫酸を生成させた後、ペルオキソ硫酸が自己分解してその濃度が下がるよりも前に被処理水に供給されるため、長期にわたって安定したTOC分解除去性能を得ることができた。これに対し、比較例3のようにバッチ混合にすると、貯留槽内のペルオキソ硫酸が経時的に自己分解することによって該貯留槽内のペルオキソ硫酸濃度が低下し、結果として、TOC分解除去性能が経時的に低下した。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施の形態に係る一次純水製造プロセス水の処理装置を示す系統図である。
【図2】異なる実施の形態に係る一次純水製造プロセス水の処理装置を示す系統図である。
【符号の説明】
【0094】
1 UV酸化器
2 酸化剤除去装置
3 脱気装置
4 イオン交換装置
5 硫酸注入装置
6 過酸化水素注入装置
7 TOC測定器
20 電解酸化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルオキソ硫酸を生成させる生成工程と、
一次純水製造プロセス水に対して該ペルオキソ硫酸を、ペルオキソ硫酸濃度が所定濃度となるように添加する添加工程と、
該添加工程を経た該一次純水製造プロセス水に紫外線を照射し、該一次純水製造プロセス水に含まれる有機物を分解除去する分解工程と
を含むことを特徴とする一次純水製造プロセス水の処理方法。
【請求項2】
請求項1において、前記添加工程において、該一次純水製造プロセス水に対して前記ペルオキソ硫酸を、ペルオキソ硫酸濃度が5〜30mg/Lとなるように添加することを特徴とする一次純水製造プロセス水の処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ペルオキソ硫酸がペルオキソ一硫酸であり、
前記生成工程において、硫酸水溶液と過酸化水素水とをライン混合することによりペルオキソ一硫酸を生成させることを特徴とする一次純水製造プロセス水の処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記添加工程の前段において、前記一次純水製造プロセス水に含まれる易分解性有機物を除去する工程を有することを特徴とする一次純水製造プロセス水の処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記一次純水製造プロセス水は、逆浸透膜処理を直列に2段以上有する超純水製造プロセスにおいて1段目の逆浸透膜処理を行った後の処理水であることを特徴とする一次純水製造プロセス水の処理方法。
【請求項6】
ペルオキソ硫酸を生成させる生成手段と、
一次純水製造プロセス水に対して該ペルオキソ硫酸を、ペルオキソ硫酸濃度が所定濃度となるように添加する添加手段と、
該添加工程を経た該一次純水製造プロセス水に紫外線を照射し、該一次純水製造プロセス水に含まれる有機物を分解除去する紫外線照射装置と
を含むことを特徴とする一次純水製造プロセス水の処理装置。
【請求項7】
請求項6において、前記生成手段は、硫酸水溶液と過酸化水素水とをライン混合することによりペルオキソ一硫酸を生成させるライン混合手段であることを特徴とする一次純水製造プロセス水の処理装置。
【請求項8】
請求項6又は7において、前記添加手段の前段において、前記一次純水製造プロセス水に含まれる易分解性有機物を除去する易分解性有機物除去手段を有することを特徴とする一次純水製造プロセス水の処理装置。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか1項において、易分解性有機物除去手段が逆浸透膜装置であることを特徴とする一次純水製造プロセス水の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−246387(P2008−246387A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91668(P2007−91668)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】