説明

一次電池の寿命判定方法

【課題】 放電による電池容量の減少を低減しつつ、一次電池の電池の容量不足を予め知ることができるリチウム一次電池の寿命判定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 マイコンを内蔵したパック電池を利用することにより、所定時期にリチウム一次電池を放電して、放電時の前記リチウム一次電池の電圧を測定して、測定電圧と、所定基準電圧と比較し、測定電圧が基準電圧以下であるとき、リチウム一次電池の寿命と判定することを特徴とする。また、前記所定時期は、周期的な時期である。そして、前記基準電圧は、電池温度により、変更することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次電池、特に、リチウム一次電池の寿命判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、二次電池であるニッケル-カドミウム電池、又は、一次電池であ
る乾電池を放電させて、ニッケル-カドミウム電池か、乾電池であるかの判別を行い、こ
の判別した電池の放電時に測定した電池電圧を用いて、残容量を判定している。
【特許文献1】特開平5−297082号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、同公報の段落0017に開示があるように、このような電池の判別、放電時の電池電圧による残容量の演算、判定は、電池を装填したとき、又は、使用者が残量検知ボタンを押したときに行っている。
【0004】
このような一次電池を、使用頻度が少ないもの、或いは、使用するときは必ず残量が必要なもの(例えば、電池を電源とする自動車の緊急通報装置)に使用するときに、予め残量を把握することが必要である。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するために成されたものであり、一次電池の電池の容量不足を予め知ることができる一次電池の寿命判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定時期に一次電池を放電して、放電時の前記一次電池の電圧を測定して、測定電圧と、所定基準電圧と比較し、前記測定電圧が前記基準電圧以下であるとき、一次電池の寿命と判定することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、所定時期にリチウム一次電池を放電して、放電時の前記リチウム一次電池の電圧を測定して、測定電圧と、所定基準電圧と比較し、前記測定電圧が前記基準電圧以下であるとき、リチウム一次電池の寿命と判定することを特徴とする。
【0008】
前記所定時期は、周期的な時期である。そして、前記基準電圧は、電池温度により、変更することを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の一次電池の寿命判定方法は、一次電池を放電抵抗を介して放電するスイッチング素子をオンに切り換えることなく、すなわち、一次電池を放電抵抗で放電しない状態で、一次電池が放電されたかどうかの放電モードを測定することができる。
【0010】
さらに、本発明の一次電池の寿命判定方法は、放電モードが測定されると一次電池の寿命と判定することができる。
【0011】
さらに、本発明の一次電池の寿命判定方法は、別電源の電力で動作するMPUでもって、一次電池の放電モードを測定することができる。
【0012】
さらに、本発明の一次電池の寿命判定方法は、一次電池を放電抵抗を介して放電するスイッチング素子をオンに切り換えることなく電池電圧を検出し、所定の時間後における該電池電圧と比較し、一次電池の電圧低下を測定し、電圧低下が設定値よりも大きいと一次電池を放電モードと判定することができる。
【0013】
さらに、本発明の一次電池の寿命判定方法は、一次電池の電圧を検出して検出電圧を不揮発メモリに記憶し、所定の時間後に検出される一次電池の検出電圧を不揮発メモリに記憶する検出電圧と比較して、電圧低下を検出することができる。
【0014】
さらに、本発明の一次電池の寿命判定方法は、一次電池を放電抵抗を介して放電するスイッチング素子をオンに切り換えることなく一次電池の放電電流を検出し、放電電流が検出されると一次電池が放電された放電モードと判定することができる。
【0015】
さらにまた、本発明の一次電池の寿命判定方法は、一次電池の放電モードを不揮発メモリに記憶することができる。
【0016】
さらにまた、本発明の一次電池の寿命判定方法は、一次電池を放電するとき、放電抵抗を使用し、この放電抵抗を、ヒューズまたはPTC素子とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、所定時期、又は、周期的な時期に、放電時の前記一次電池の電圧を測定して、一次電池の寿命を判定しているので、放電による電池容量の減少を低減しつつ、常に電池が寿命かどうかを認識することができる。
【0018】
また、電池温度により、基準電圧を変更するので、電池温度に応じた適切な寿命時点を判定することができる。
【0019】
さらに、本発明の一次電池の寿命判定方法は、一次電池を放電抵抗を介して放電するスイッチング素子をオンに切り換えることなく、すなわち、一次電池を放電抵抗で放電(=内部放電)しない状態で、外部の負荷に、一次電池が放電されたかどうかの放電モード(=放電履歴)を測定することができる。本発明の一次電池の寿命判定方法は、例えば、外部負荷として、車両に搭載される緊急通報装置の電源等に使用される場合、一次電池は、緊急時における確実な動作を行い、動作を保証し、要求される放電時間を確保することが大切である。具体的には、緊急通報装置の電源に使用される場合、通報および必要情報を通報センターに確実に送信する。このことから、一次電池の寿命判定を確実、正確に行い、保証して、緊急時に確実に緊急通報装置を動作させることが大切である。このことは、一次電池が放電抵抗以外で放電された放電モード(=放電履歴)、即ち、外部負荷に放電されたことを検出して実現できる。放電モードが検出されると、寿命判定の保証されない状態として、たとえば、一次電池の寿命と判定し、あるいは交換判定として、電池交換の必要性を使用者に連絡することができる。そして、電池を交換することで、十分な残容量の電池を利用でき、電池の緊急時に緊急通報装置を確実に動作できる。
【0020】
一次電池は、別電源の電力で動作するMPUでもって、一次電池の放電モードを測定することができる。この方法によると、一次電池の寿命判定に一次電池の電力を使用せず、一次電池の寿命を長くできる。
【0021】
さらに、機器に搭載される一次電池の放電モードは、一次電池を放電抵抗を介して放電するスイッチング素子をオンに切り換えることなく所定の時間後における一次電池の電圧低下を測定し、電圧低下が設定値よりも大きいと一次電池を放電モードと判定することができる。この方法は、一次電池の電圧を検出して検出電圧を不揮発メモリに記憶し、所定の時間前に検出した不揮発メモリに記憶されていた検出電圧に比較して、電圧低下を検出して放電モードを検出できる。この方法は、別電源から電力が供給されない状態で、検出電圧を不揮発メモリに記憶して、確実に放電モードを検出できる。
【0022】
また、機器に搭載される一次電池の放電モードは、放電抵抗を介して放電するスイッチング素子をオンに切り換えることなく一次電池の放電電流を検出し、放電電流が検出されると一次電池が放電された放電モードと判定することができる。
【0023】
さらに、一次電池の放電モードを不揮発メモリに記憶することができる。この方法によると、放電モードが不揮発メモリに記憶されるので、カーバッテリーの電力供給が遮断された後も、電力を供給して放電モードの履歴を検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施例を、図を用いて詳細に説明する。図1に示すように、本実施例においては、パック電池Aと、これを電源とする電子機器Cとを備えている。パック電池Aは、電池容量が減少して寿命となったとき、パック電池Aを交換することができる。また、寿命のとき、後述する電池1のみを交換しても良い。
【0025】
電子機器Cとしては、例えば、以下のような自動車の緊急通報装置Cが利用できる。パック電池Aからの電力により、負荷Lを駆動する。自動車の事故、故障等の発生時に、車両に搭載された通報装置Cの動作スイッチSWMを、利用者が押すとか或いは衝撃を感知して通報装置Cが自動的に、負荷L内にて別途設けられたGPS等を利用した車両の位置情報を所得し、その位置情報を、無線電波により発信する。これに加えて、事故、故障等の緊急事態であることを示す情報を、無線電波により発信する。このような位置情報、緊急事態の情報は、集中管理する緊急通報センター側が受け取り、位置情報、緊急事態の情報を基に、対応を取る。対応としては、自動車内の電話に通話をして緊急時の車両利用者の相談を受けたり、救急車の手配等を行う。
【0026】
パック電池A内においては、リチウム一次電池1と、電池1に密接して配置されたサーミスタを含む温度検出部3と、電池1の放電を監視、制御するマイコンであるマイクロプロセッサーユニット(以下、MPUと記す)とを備えている。詳細に図示しないが、電池1又はカーバッテリーよりマイコンMPUに電源が供給されている。
【0027】
マイコンMPUにおいては、電池電圧(測定箇所d)、温度検出部3からの出力のアナログ電圧が入力され、デジタル変換するA/D変換部を内蔵している。そして、制御手段としてマイコンMPUが、電池の寿命について、演算、比較、判定等を行う。
【0028】
マイコンMPUにより、所定時期にリチウム一次電池1を放電して、放電時の電池電圧を測定して、測定電圧と、所定基準電圧と比較し、測定電圧が基準電圧以下であるとき、電池の寿命と判定する。このような判定結果を基に、寿命と判定されたときは、マイコンMPUから信号が負荷Lに送信される。寿命の信号を受信した通報装置Cは、LED、LCD等により寿命を表示する表示(図示せず)を行う。
【0029】
パック電池Aにおいては、電池1と並列に、放電回路DSが設けられている。この放電回路DSは、放電抵抗R(=約2〜100Ω程度)と、FET等のスイッチング素子SWDとを直列に接続している。そして、マイコンMPUは、スイッチング素子SWDのゲート信号を制御している。また、図2に示すように、放電時においては、約200mA〜1Aの電流、例えば、500mAの電流が望ましく、又は、通報装置C駆動時の動作電流と同程度の電流を流すような抵抗値を採用することができる。マイコンMPUは、所定時期として、周期的な時期に、例えば、10時間〜3ケ月に1度、10〜1000mSec間、例えば、200mSec又は500mSec間、ゲート信号をオン信号とすることで、電池1から放電抵抗Rに放電させる。また、他の所定時期としては、別途設けられる検知手段(例えば、車両キーの操作を検出する方法等)を利用して、車両の運転時に、電池1を放電させて、電池電圧を検出しても良い。
【0030】
そして、図2に示すように、マイコンMPUは、放電を開始してから電圧が安定したとき(例えば、ゲート信号がオンした後、約5〜20mSec後の電池電圧を測定して、所定基準電圧と比較する。なお、図2においては、電池温度約23℃で使用前(=定格容量)2000mAhの電池を、5mAにて残容量1000mAhまで放電し、電池温度 -20℃にて、パルス放電させたときの電池電圧、電流の変化を示している。
【0031】
このような所定基準電圧は、図3の示すような、温度検出部3にて測定された電池温度により、異なる。図3は、放電容量(=放電時間)に対する種々の温度において、放電時(放電電流500mA)における電池電圧を示している。図3において、リチウム一次電池1としては、図3のグラフを基にして、放電が終わりに近づくとき、電池電圧が大きく低下する前付近にて、図示するように所定基準電圧を設定している。このような各温度毎の所定基準電圧は、データのテーブルとして、マイコンMPU内のメモリーに記録されており、比較、演算時に利用される。なお、図3では、電池温度約23℃において5mAにて放電するとき2000mAh容量を有する電池を利用した。また、図3においては、電池温度0〜40℃における開放電圧を示しており、図示するように、開放電圧は、温度によりあまり変化がなく、一つの放電曲線として示すことができるので、温度に応じた残容量を適切に把握することは難しい。また、このような開放電圧は、時々、残容量との対応に不安定な場合があるので、本実施例では、放電時の電池電圧を測定して、この電池電圧と残容量とを対応させている。
【0032】
ここで、寿命との意味は、残容量が少なくなっていることを意味しており、図3のグラフからも明らかのように、所定基準電圧以下においても、リチウム一次電池1は放電することは可能である。
上述のように、所定時期にリチウム一次電池1を放電して、放電時の電池電圧を測定して、測定電圧と、所定基準電圧と比較し、測定電圧が基準電圧以下であるとき、電池の寿命と判定しているが、このような測定電圧が基準電圧以下であることが、連続して、複数回、例えば、2〜5回(望ましくは、3回)検出したとき、電池の寿命と判定することもできる。
【0033】
さらに、本発明の他の実施例を、図4の回路図と図5のフローチャートを用いて詳細に説明する。上述の実施例と対応する構成については、説明を省略する。図4に示すように、この実施例においても、パック電池Bは、これを電源とする上述の実施例の通報装置Cのような電子機器Cに接続している。パック電池Bは、電池容量が減少して寿命となったとき、又は、電池が放電されたときに交換して、電子機器Cに安定して電力を供給する。パック電池Bは、電池1のみを交換しても良い。
【0034】
電子機器Cは、図1と同じように、自動車の緊急通報装置Cが利用できる。緊急通報装置Cの負荷Lは、カーバッテリーEとパック電池Bの両方から電力が供給される。緊急通報装置Cの負荷Lは、通常は、カーバッテリーEが電源として利用され、カーバッテリーEが電源として利用できないとき、パック電池Bは、カーバッテリーEのバックアップ電源となって、自動車の事故等でカーバッテリーEから電力を供給できない状態で、緊急通報装置Cの負荷Lに電力を供給する。
【0035】
この回路図のパック電池Bに内蔵されるマイコンMPUは、電池電圧と、電池温度に加えて、電池1に流れる電流も測定する。ここで、電池電圧測定時において、マイコンMPUは、スイッチSWVをオンさせて、測定箇所dの電圧を測定して、マイコンMPU内で電池電圧に換算して、電池電圧を測定する。また、同様にスイッチSWVをオフとして電池電圧を測定する。電池電流は、電池1と直列に接続している電流検出抵抗Riの両端に発生する電圧を測定して検出される。電流検出抵抗Riの電圧が、電流検出抵抗Riの電気抵抗に比例することから、電圧を検出して電流を演算する。電圧信号と電流信号は、内蔵されるA/D変換部でデジタル信号に変換されて、マイコンMPUがデジタル信号を演算して、上記の実施例と同様に電池の寿命と、電池の放電モード(=放電履歴)を判定する。ここで、放電モードとは、パック電池Bが緊急通報装置Cの負荷Lに電力を供給した履歴を意味する。そして、パック電池Bは、バックアップ電源として利用されるので、確実に電池1に残容量を備えることが必要であるので、1度でも、緊急通報装置Cの負荷Lに放電した放電モード(=放電履歴)があれば、要求される放電時間を確保し、放電ができることを保証することがむずかしいので、パック電池Bまたは電池1を交換することが望ましい。従って、換言するなら、放電モード(=放電履歴)を検出、判定することは、リチウム一次電池の残容量が少なくなっていることを意味しているので、寿命と判定することでもある。パック電池Bから、緊急通報装置Cの負荷Lへの放電は、出力1Aにて、約2〜9分程度、例えば、約5分程度の放電が行われる。
【0036】
さらに、パック電池BのマイコンMPUは、上記の実施例であって、図1のパック電池Aと同じように、所定時期にリチウム一次電池1を放電(=内部放電)して、放電時の電池電圧を測定して、測定電圧と、所定基準電圧と比較し、測定電圧が基準電圧以下であるとき、電池の寿命と判定する。
すなわち、所定時期にスイッチング素子SWDをオフからオンに切り換えて、放電抵抗Rにて放電させ、リチウム一次電池1の電圧を測定している。このような放電抵抗Rは、約2〜約100Ω程度が利用でき、さらには、約5〜30Ω、望ましくは、約15Ωを利用できる。
このような放電抵抗Rは、ヒューズの抵抗成分や、PTC素子(たとえば、PTCサーミスタ。PTCはPositive Temperture Coefficient(正温度特性)の略である。)を利用することもできる。これらを利用するなら、内部放電時の異常な過電流が放電抵抗Rを流れるとき、ヒューズにおいてはヒューズが溶断され、PTC素子においてはその抵抗値が大きくなることより、異常な過電流を防止することもできる。ここで、スイッチング素子SWDをオフからオンに切り換える上述の実施例で説明した所定時期において、次に説明するように、カーバッテリーEからマイコンMPUへの電力供給される。
【0037】
また、負荷側である車両のカーバッテリーEからマイコンMPUへの電力供給は、端子Vinを介して、レギュレーターRegより行われる。ここで、マイコンMPUの働きは、電池の寿命と、電池の放電モード(=放電履歴)を判定・記録することなので、常時、動作する必要がない。よって、カーバッテリーEからマイコンMPUへの電力供給は、車両MPU7の指示により、1日に1回程度、2〜30秒(望ましくは、5〜15秒)の間だけ行われる。電力が供給される時間以外は、マイコンMPUはシャットダウンされた状態(=非動作状態)となる。この電力供給方法によってマイコンMPUがリチウム一次電池1から電力を消費する場合に比べ、同容量のリチウム一次電池での保障期間、換言するなら、パック電池Bを緊急通報装置Cに搭載したときバックアップ電源としての保存期間を、長時間化とすることが可能となる。なお、これに代わって、負荷側である車両のカーバッテリーEからマイコンMPUへの電力供給を、常時行うことも可能であり、また、マイコンMPUへの電力供給を、リチウム一次電池1から得ることも可能である。
【0038】
さらに、このマイコンMPUは、パック電池内放電(=内部放電)をすることなく、言い換えるとスイッチング素子SWDをオンに切り換えて放電抵抗Rでリチウム一次電池1を放電することなく、電池が放電された履歴(=通報装置Cの負荷Lにリチウム一次電池1から通電された履歴)である放電モードを検出する。放電モードは、詳しくは後述するように、リチウム一次電池1の電圧低下と、電池に流れる電流を検出して検出される。パック電池Bが寿命と判定され、あるいは放電モードと判定されたときは、パック電池BのマイコンMPUから負荷側のマイコンである車両MPU7に電池の状態を示す信号、すなわち寿命信号、あるいは放電モード信号が送信される。これら信号(=交換判定の信号)である電池の状態を示す信号は、電池交換の必要性を示すものであり、パック電池のデータ端子(Dout)から負荷側の車両MPU7に送信される。パック電池Bの寿命信号を受信し、あるいは放電モード信号を受信した負荷側は、LEDやLCD等によりパック電池Bの寿命を表示し、またパック電池Bが放電された履歴の表示(=パック電池Bが放電されてバックアップ電源としての動作が保証できない表示)(図示せず)を行う。車両のディーラーやユーザーは、この表示を見てパック電池Bを交換し、又はリチウム一次電池1を交換して、パック電池Bから負荷Lの緊急通報装置Cに常に電力を供給できる状態とする。
【0039】
詳細には、マイコンMPUは、以下の3つの検出方法1〜3により、放電モード(=放電履歴)と判定する。
検出方法1(=電圧低下による検出):後述する図5のフローのn=5のステップに相当する。
内部放電していないとき、電池電圧を測定し、このときの測定した電池電圧と、前回測定した電池電圧と比較して、設定値(約0.05〜1.00V程度、例えば約0.1V)より大きい電圧低下があるとき、放電履歴があったとして放電モードと判定する。つまり、パック電池Bが緊急通報装置Cの負荷Lに放電したとき、換言するなら、パック電池Bが放電抵抗R以外の回路、すなわちパック内放電パス以外の回路で放電されると、リチウム一次電池1の電圧低下が大きくなる。一方で負荷Lに放電していないのであればリチウム一次電池1の電圧低下は、ほぼゼロとなる。したがって、リチウム一次電池1を放電抵抗Rを介して放電するスイッチング素子SWDをオンに切り換えることなく、時間間隔をおいて(=所定の時間後)、リチウム一次電池1の電池電圧を測定して、その電圧低下を測定し、電圧低下が設定値よりも大きいとリチウム一次電池1を放電モードと判定する。マイコンMPUは、たとえば1日に1回のサンプリングタイミングでリチウム一次電池1の電圧を検出し、検出した電圧を前回の測定電圧に比較して電圧低下を検出する。リチウム一次電池1の電圧低下を検出するサンプリングタイミングは、数時間ないし数日に一度とすることもできる。また、このようなサンプリングタイミングに代わって、負荷Lを車両の緊急通報装置Cとするパック電池Bは、車両のイグニッションスイッチをオンにする毎にリチウム一次電池1の電圧を検出し、前回に測定した電圧に比較して電圧低下を検出して、放電モードを検出することもできる。この場合、電池電圧を検出するサンプリングタイミングが一定でないので、サンプリングタイミングから、経過時間、内部放電、電池の自己放電等を考慮して、パック電池Bが緊急通報装置Cの負荷Lに放電をしないときのリチウム一次電池1の電圧低下を演算し、測定された電池の電圧低下が演算された電圧値よりも大きいと放電モードと判定する。
【0040】
検出方法2(=電流検出抵抗Riによる電流検出):後述する図5のフローのn=4のステップに相当する。
マイコンMPUは、カーバッテリーEからマイコンMPUへの電力供給時において、パック電池B(=リチウム一次電池1)から緊急通報装置Cの負荷Lへの放電を、その放電電流を電流検出抵抗Riにて検出することによって、リチウム一次電池1の電流を検出して放電モードを検出する。このマイコンMPUは、スイッチング素子SWDをオフに制御する状態で電流を検出すると、放電モードと判定する。この放電モードの検出は、パック電池BのマイコンMPUが動作状態にあるときに検出される。マイコンMPUは、カーバッテリーEから電力を供給して動作状態となる。動作状態にあるマイコンMPUは、スイッチング素子SWDをオフにして内部放電がないとき、電流を検出すると放電モードと判定する。
【0041】
検出方法3(=車両側からの放電モード情報による検出):後述する図5のフローのn=6のステップに相当する。
上述のようにマイコンMPUが動作する時間が少ないこともあり、マイコンMPUが動作していないとき(=非動作時)、通報装置Cの負荷Lにパック電池Bのリチウム一次電池1から放電されることも考えることができる。よって、車両側での機能として、車両側において、パック電池Bからの放電を検出する機能を備えることで、車両側の車両MPU7から、端子Doutを介して、放電モードを示す情報がパック電池B側に入力されて、マイコンMPUは、放電モード(=放電履歴)と判定する。
【0042】
さらに、図4のパック電池Bは、マイコンMPUに不揮発メモリ5(=EEPROM等)を接続している。なお、マイコンMPU内に不揮発メモリ(=EEPROM等)を内蔵させることも可能である。不揮発メモリ5は、リチウム一次電池1の電圧を検出して検出電圧を記憶する。上述の検出方法1(=電圧低下による検出)にて説明したように、このパック電池Bは、時間間隔をおいて(たとえば、所定の時間経過した後)、次に検出されるリチウム一次電池1の検出電圧を、先に検出して不揮発メモリ5に記憶している検出電圧に比較して、電圧低下を検出する。不揮発メモリ5を備えるパック電池Bは、カーバッテリーEからの電力供給が遮断された状態で、前回のリチウム一次電池1の検出電圧を記憶する。このように、不揮発メモリ5を備えるので、このパック電池Bは、上述のようにマイコンMPUに常時電力供給されることがなく、カーバッテリーEからマイコンMPUへの電力供給を遮断しても、リチウム一次電池1の電圧低下を検出できる。マイコンMPUの非動作状態において、リチウム一次電池1の検出電圧が不揮発メモリ5に記憶されるからである。
【0043】
さらに、不揮発メモリ5は、リチウム一次電池1の放電モードと、電池の電圧や温度も記憶する。このパック電池Bは、車両からの電力供給が遮断された状態においても、放電モードと電池電圧や電池温度を不揮発メモリ5に記憶するので、パック電池BにカーバッテリーEから電力が供給される状態になると、不揮発メモリ5に記憶する放電モードや電池電圧や電池温度を車両に送信することができる。
【0044】
図4のパック電池は、図5に示す以下のステップでリチウム一次電池の寿命と放電モードを検出する。
【0045】
[n=1〜3のステップ]
パック電池BのマイコンMPUに、負荷側である車両のカーバッテリーEから電力が、端子Vinより供給されて、パック電池B内のマイコンMPUが動作状態となり、不揮発メモリ5(EEPROM等)の内容を確認して、放電履歴があるかどうかを判定する。このようなカーバッテリーEからの電力供給は、本実施例においては、1日に1回程度、約2〜30秒(望ましくは、約5〜15秒)だけ行われて、n=1〜12のステップが終了すると、カーバッテリーEからの電力供給は停止される。
[n=4〜8ステップ]
このステップでマイコンMPUは、マイコンMPUの動作状態時において、リチウム一次電池1が放電モード(=放電履歴)かどうかを判定する。
n=4のステップは、マイコンMPUの動作状態時において、電流検出抵抗Riによって、放電電流を検出して放電モードと判定する(上述の電流検出抵抗Riによる電流検出である検出方法2)。
n=5のステップは、後述するn=9のステップにおいて、測定、検出された電池電圧について、その測定された電池電圧(この電池電圧は、前回に測定、検出された電池電圧に対しては、時間間隔をおいて(=所定の時間後)測定された電池電圧となる)と、所定の時間後EEPROM5内に記憶された前回に測定された電池電圧とを比較して、電圧低下が設定値よりも大きいと放電モードと判定する(=上述の電圧低下による検出である検出方法1)。
n=6のステップは、車両側での機能として、パック電池Bからの放電を検出する機能を備えることで、車両側の車両MPU7から放電モードを示す情報が入力されて放電モードと判定する(上述の車両側からの放電モード情報による検出である検出方法3)。
n=7のステップで放電モードと判定されると、n=8のステップに進んで不揮発メモリ5(EEPROM等)に履歴を記憶する。n=8のステップの後、n=11のステップに進み、車両側である本体にパック電池Bの交換判定を出力する。つまり、不揮発メモリ5(EEPROM等)に記憶される放電モードは、カーバッテリーEから電力が供給される状態で、パック電池BのマイコンMPUから負荷側である車両側の車両MPU7に、交換判定の信号として、放電モード信号を送信する。
[n=9〜11のステップ]
放電モードでないと、所定時期にスイッチング素子SWDをオンオフに切り換えて、放電抵抗Rにおける内部放電時と放電していないときの内部非放電時でリチウム一次電池1の電圧を検出する。上述の初めの実施例で説明したように、放電時の電池電圧を測定して、測定電圧と、所定基準電圧と比較し、測定電圧が基準電圧以下であるとき、電池の寿命と判定する。そして、寿命と判定されると、n=11のステップにおいて、車両側である本体にパック電池Bの交換判定の信号として、寿命信号を出力する。
[n=12のステップ]
リチウム一次電池1が寿命でないと、内部放電時と内部非放電時の電池電圧や電池温度を不揮発メモリ5(EEPROM)に記憶する。
そして、n=11、n=12のステップの後は、カーバッテリーEからマイコンMPUへの電力供給は停止される。
【0046】
以上の実施例は、電池にリチウム一次電池1を利用しているが、これ以外の一次電池にも、本発明を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施例であるパック電池の回路ブロック図である。
【図2】本発明の放電時の電圧、電流値を示すグラフである。
【図3】各種電池温度におけるの放電時の電圧、電流値を示すグラフである。
【図4】本発明の他の実施例であるパック電池の回路ブロック図である。
【図5】図4に示すパック電池がリチウム一次電池の寿命と放電モードを検出するフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
A パック電池
B パック電池
C 電子機器(=緊急通報装置)
E カーバッテリー
L 負荷
MPU マイクロプロセッサユニット(=マイコン)
1 リチウム一次電池
3 温度検出部
5 不揮発メモリ
7 車両MPU
DS 放電回路
R 放電抵抗
SWM 動作スイッチ
SWD スイッチング素子
SWV スイッチ
Ri 電流検出抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定時期に一次電池を放電して、放電時の前記一次電池の電圧を測定して、測定電圧と、所定基準電圧と比較し、測定電圧が基準電圧以下であるとき、一次電池の寿命と判定することを特徴とする一次電池の寿命判定方法。
【請求項2】
所定時期にリチウム一次電池を放電して、放電時の前記リチウム一次電池の電圧を測定して、測定電圧と、所定基準電圧と比較し、前記測定電圧が前記基準電圧以下であるとき、リチウム一次電池の寿命と判定することを特徴とする一次電池の寿命判定方法。
【請求項3】
所定時期は、周期的な時期であることを特徴とする請求項1または2の一次電池の寿命判定方法。
【請求項4】
基準電圧は、電池温度により、変更することを特徴とする請求項1または2の一次電池の寿命判定方法。
【請求項5】
一次電池を放電抵抗を介して放電するスイッチング素子をオンに切り換えることなく、一次電池が放電されたかどうかの放電モードを測定する請求項1または2に記載される一次電池の寿命判定方法。
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【請求項6】
放電モードと測定されると一次電池の寿命と判定する請求項5に記載される一次電池の寿命判定方法。
【請求項7】
別電源の電力で動作するMPUでもって、一次電池の放電モードを測定する請求項6に記載される一次電池の寿命判定方法。
【請求項8】
一次電池を放電抵抗を介して放電するスイッチング素子をオンに切り換えることなく電池電圧を検出し、所定の時間後における該電池電圧と比較し、一次電池の電圧低下を測定し、電圧低下が設定値よりも大きいと一次電池を放電モードと判定する請求項7に記載される一次電池の寿命判定方法。
【請求項9】
一次電池の電圧を検出して検出電圧を不揮発メモリに記憶し、所定の時間後に検出される一次電池の検出電圧を、上記不揮発メモリに記憶する検出電圧と比較して、電圧低下を検出する請求項8に記載される一次電池の寿命判定方法。
【請求項10】
一次電池を放電抵抗を介して放電するスイッチング素子をオンに切り換えることなく一次電池の放電電流を検出し、放電電流が検出されると一次電池が放電された放電モードと判定する請求項7に記載される一次電池の寿命判定方法。
【請求項11】
一次電池の放電モードを不揮発メモリに記憶する請求項5に記載される一次電池の寿命判定方法。
【請求項12】
一次電池を放電するとき、放電抵抗を使用し、この放電抵抗は、ヒューズまたはPTC素子である請求項7に記載される一次電池の寿命判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−280935(P2007−280935A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27211(P2007−27211)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】