一次高融点金属の製造法
一次高融点金属(例えば、一次タンタル金属)を粒状高融点金属酸化物(例えば、五酸化タンタル)と加熱されたガス(例えば、プラズマ)との接触によって製造する方法が記載されている。加熱されたガスは、水素ガスからなる。加熱されたガスの温度範囲および水素ガスと高融点金属酸化物との質量比は、〜のようにそれぞれ選択される。(i)加熱されたガスが原子状水素からなり;(ii)高融点金属酸化物の供給材料が実質的に熱力学的に安定されており(即ち、原子状水素によって還元されていない亜酸化物の同時の形成は、最少化されている);および(iii)高融点金属酸化物は、加熱されたガスとの接触によって還元され、それによって一次高融点金属(例えば、一次タンタル金属および/または一次ニオブ金属)が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、高融点金属酸化物(例えば、五酸化タンタル)を水素からなる反応性ガスを含有する加熱されたガス(例えば、プラズマ)中で還元することによって一次高融点金属を製造する方法に関する。加熱されたガスの温度範囲および水素ガスと高融点金属酸化物との質量比は、加熱されたガスが原子状水素を含有し、高融点金属酸化物供給原料が実質的に熱力学的に安定化され、かつ高融点金属酸化物が加熱されたガスとの接触によって還元され、それによって一次高融点金属(例えば、一次タンタル金属)を形成するようにそれぞれ選択される。
【0002】
発明の背景
多少の高融点金属、例えばタンタルおよびニオブは、一部がそれらの前駆体、例えば酸化物の熱力学的安定性のために、純粋な(または一次)形で単離することが困難である。一次高融点金属の製造は、望まれている。それというのも、この一次高融点金属は、コンデンサ陽極が製造されうる原料としてかかる用途に使用されるからである。一次高融点金属を形成する現存する方法は、高融点金属酸化物(例えば、五酸化タンタルまたは五酸化ニオブ)または他の前駆体(例えば、タンタルハロゲン化物)が1つ以上の工程によって還元され、引続き製錬工程および清浄化工程が行なわれるような多工程法を含む。このような多工程法は、典型的に副産物の廃棄物流の形成を生じる。
【0003】
タンタル金属が製造されうる原料は、例えばヘプタフルオロタンタレート(K2TaF7)、タンタルハロゲン化物およびタンタル五酸化物を含む。ヘプタフルオロタンタル酸カリウムをナトリウムで還元することは、タンタル金属を製造する公知の古典的な方法である。ヘプタフルオロタンタル酸カリウムおよび小片のナトリウムは、金属管中に封止され、タンタル金属、ヘプタフルオロタンタル酸カリウム、ナトリウムおよび他の副産物を含む固体の質量を形成する点火温度に加熱される。更に、この固体混合物は、粉砕され、希酸で浸出され、タンタル金属を単離するが、このタンタル金属は、典型的には純粋とは言えない。
【0004】
また、タンタル金属は、ヘプタフルオロタンタル酸カリウムの溶融された組成物を希酸(例えば、塩化ナトリウム)の存在下に、反応器中への溶融されたナトリウム金属の導入によって一定の攪拌条件下に還元するような他の方法によって形成されてよい。溶融されたナトリウムの還元法は、タンタル金属、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムおよび他の副産物を含有する固体の質量を形成する。この固体質量は、粉砕され、希酸溶液で浸出され、タンタル金属を単離する。典型的には、付加的な処理工程、例えば凝集は、物理的性質の改善のために生成物のタンタル金属上で実施されなければならない。例えば、米国特許第2950185号明細書参照。
【0005】
タンタルの電解による製造は、五酸化タンタル(Ta2O5)を含有するヘプタフルオロタンタル酸カリウムの溶融された混合物を約700℃で金属容器中で電解することを含む。この電解還元は、タンタル金属、ヘプタフルオロタンタル酸カリウム、酸化タンタルおよび他の副産物を含有する固体質量の形成を生じる。更に、この固体質量は、粉砕され、希酸で浸出され、タンタル金属を単離するが、このタンタル金属は、典型的には純粋とは言えない。タンタル金属を製造するこのような電解方法は、典型的には現在、製造規模では使用されていない。
【0006】
高融点金属、例えばタンタル金属を製造する他の方法は、例えば米国特許第1728941号明細書中に記載されているような、塩化カルシウムの存在下でカルシウム金属での五酸化タンタルの還元;例えば米国特許第2516863号明細書中に記載されているような、珪化物、例えば珪化マグネシウムおよび水素化物、例えば水素化カルシウムの存在下での五酸化タンタルの還元を含む。このような他の方法は、多工程を含み、高融点金属が分離されなければならない副産物の形成を生じる。
【0007】
高融点金属、例えばタンタル金属を製造するよりいっそう最近の方法は、高融点金属酸化物とガス状還元剤、例えばガス状マグネシウムとの接触によって高融点金属酸化物(例えば、五酸化タンタルまたは五酸化ニオブ)を完全に還元するとは言えない還元を含む。更に、この完全に還元されたとは言えない高融点金属は、浸出され、さらに還元され、かつ凝集される。例えば、米国特許第6171363号明細書参照。
【0008】
高融点金属、例えばタンタルおよびニオブを製造する別の最近の方法は、最初に水素を粉末状高融点金属酸化物(例えば、五酸化タンタル)に通過させ、それによって中間体の高融点金属亜酸化物(例えば、一酸化タンタル)を製造することを含む。第2工程で高融点金属亜酸化物は、ガス状還元剤(例えば、ガス状マグネシウム)との接触によって還元される。更に、このほぼ完全に還元された高融点金属は、浸出され、さらに還元され、かつ凝集される。例えば、米国特許第6558447号明細書参照。
【0009】
更に、なお高融点金属を製造する方法は、高融点金属ハロゲン化物(例えば、五塩化タンタル)または高融点金属アルコキシド(例えば、タンタルアルコキシド)を水素ガスにより形成されたプラズマ中に導入されることを含む。このようなプラズマ法は、望ましくない副産物、例えば腐蝕性ガス状水素ハロゲン化物(例えば、ガス状塩化水素)およびガス状アルカノールの形成を生じる。高融点金属ハロゲン化物のプラズマ法は、例えば米国特許第3211548号明細書;および米国特許第6689187号明細書B2中にさらに詳細に記載されている。高融点金属アルコキシドのプラズマ法は、例えば米国特許第5711783号明細書中にさらに詳細に記載されている。
【0010】
米国特許第5972065号明細書には、プラズマアーク溶融によりタンタルを精製することが開示されている。米国特許第5972065号明細書の方法において、粉末タンタル金属は、容器中に置かれ、水素およびヘリウムから形成された流れるプラズマ流は、粉末タンタル金属上を通過する。
【0011】
欧州特許出願公開第1066899号明細書A2には、金属、例えばタンタルおよびニオブの高純度の球状粒子の製造法が開示されている。この欧州特許出願公開第1066899号明細書A2中に開示された方法は、水素ガスから形成されたプラズマ中にタンタル粉末を導入することを含む。プラズマの温度は、欧州特許出願公開第1066899号明細書A2に5000K〜10000Kであることが開示されている。
【0012】
多重の処理工程を含まず、好ましくは単独の還元工程だけを含む、実質的に純粋な高融点金属、例えば一次高融点金属を製造する方法を開発することが望まれている。また、このように新たに開発された、高融点金属を製造する方法により、直ちに利用可能でありかつ比較的安全に取り扱うことができる供給原料を使用こと;および少なくとも分離されなければならない、および/またはさもなければ後処理されなければならない望ましくない副産物の形成を最少化することが望まれている。
【0013】
発明の概要
本発明によれば、実質的に単独工程で達成することができかつ実質的に水からなる副産物を形成する、一次高融点金属の製造法が提供され、この方法は、次のこと:
(a)反応性ガスからなるガスを加熱し、この場合、この反応性ガスは、水素ガスからなり、それによって1つの温度範囲を有する加熱されたガスを形成すること;および
(b)粒状高融点金属を加熱されたガスと接触させることを含み、
(i)前記の加熱されたガスの温度範囲および(ii)前記の加熱されたガスの水素ガスと前記の粒状高融点金属酸化物の質量比がそれぞれ
加熱されたガスが原子状水素を有し、
高融点金属酸化物が実質的に熱力学的に安定化され、および
高融点金属酸化物が工程(b)で原子状水素によって還元されるように選択され、
それによって一次高融点金属を形成することによって特徴付けられる。
【0014】
また、本発明によれば、次のこと:
(a)反応性ガスからなるガスを加熱し、この場合、この反応性ガスは、水素ガスからなり、それによって加熱されたガスを形成すること;および
(b)粒状高融点金属を加熱されたガスと1900K(ケルビン)〜2900Kの温度で接触させ、それによって粒状五酸化タンタルを還元し、一次タンタル金属を形成させることを含み;
加熱されたガスの水素ガスおよび加熱されたガスと接触された粒状五酸化タンタルが1.5:1を上廻る水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比を有することを特徴とする、一次高融点金属の製造法が提供される。
【0015】
更に、本発明によれば、つぎのこと:
(a)反応性ガスからなるガスを加熱し、この場合、この反応性ガスは、水素ガスからなり、それによって加熱されたガスを形成すること;および
(b)二酸化ニオブ、五酸化ニオブおよびその組合せから構成される群から選択されたニオブの粒状酸化物を加熱されたガスと2100K〜2700Kの温度で接触させ、それによってニオブの粒状酸化物を還元し、一次ニオブ金属を形成させることを含み;
加熱されたガスの水素ガスおよび加熱されたガスと接触されたニオブの粒状酸化物が少なくとも9:1の水素ガスとニオブの粒状酸化物との質量比を有することを特徴とする、一次ニオブ金属の製造法が提供される。
【0016】
本発明を特徴付ける特徴は、特に特許請求の範囲に指摘されており、この場合この特許請求の範囲は、本明細書の開示の一部分に含まれかつこの一部分を成している。本発明の前記の特徴および他の特徴、操作の利点およびこれらの特徴の使用によって得られる特殊な対象は、次の詳細な説明および添付図面の記載から十分に理解されるであろう。
【0017】
別記しない限り、明細書および特許請求の範囲で使用される全ての数または表現、例えば構造的寸法、組成の量、処理条件等を表わす全ての数または表現は、全ての場合に"約"の表現によって変更されていてもよいと理解される。
【0018】
図1〜14においては、同様に参照の数字および特徴は、同じ構成成分および特徴を示す。
【0019】
発明の詳細な説明
本明細書中および特許請求の範囲内で使用されるように、"原子状水素"の用語は、ガス状の1原子水素(即ち、H(g)またはH)を意味し、即ちイオン形(例えば、ガス状水素カチオン、H+(g)またはH+)ではない。本明細書中で使用されるように、"水素ガス"の用語は、ガス状の分子状(2原子)水素(即ち、H2(g)またはH2)を意味する。
【0020】
本発明の方法において加熱されかつ高融点金属酸化物供給材料と接触されるガスは、水素ガスからなる反応性ガスを含む。更に、場合によっては、反応性ガスは、他の反応性成分、例えばアルカン(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタンおよびその組合せ)を含有する。反応性ガスが水素以外の反応性成分(例えば、メタン)を含む場合には、このような他の反応性成分は、典型的には少量で(例えば、反応性ガスの全質量に対して49質量%以下の量で)存在する。反応性ガスは、次のものを含むことができる:51〜99質量%、60〜85質量%または70〜80質量%の量の水素;および1〜49質量%、15〜40質量%または20〜30質量%の量の、水素以外の反応性成分(例えば、メタン)、この場合質量%は、反応性ガスの全質量に対するものである。好ましくは、反応性ガスは、実質的に水素ガス100質量%を含有する。
【0021】
更に、本発明の方法において加熱されかつ高融点金属酸化物供給材料と接触されるガスは、場合によっては不活性ガスを含むことができる。不活性ガスは、例えば元素の周期律表の第VIII族以上の希ガスから選択することができる。希ガスが選択されうる第VIII族の元素は、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびその組合せを含む。好ましい不活性ガスは、アルゴンである。不活性ガスが存在する場合には、加熱されかつ高融点金属酸化物と接触されるガス(供給ガス)は、典型邸には次のものを含む:反応性ガス20〜50質量%または反応性ガス25〜40質量%;および不活性ガス50〜80質量%または不活性ガス60〜75質量%、この場合この質量%は、供給ガスの全質量に対するものである。不活性ガスは、典型的には反応性ガスのためのキャリヤーとして使用される。本発明の方法をプラズマ手段によって行う場合には、ガス(供給ガス)は、典型的には不活性ガス、例えばアルゴンを含み、これは、本明細書中でさらに詳細に記載される。
【0022】
本発明の方法は、加熱されたガスの温度範囲および水素ガスと粒状高融点金属酸化物の供給材料との質量比の双方の選択を含み、この場合この供給材料は、加熱されたガスと接触される。前記のパラメーターは、次のように選択される:加熱されたガスは、原子状水素を含有し;高融点金属酸化物の供給原料は、実質的に熱力学的に安定化されており;および高融点金属酸化物の供給材料は、原子状水素によって還元されている。好ましくは、高融点金属酸化物の供給材料は、実質的に加熱されたガスとの接触中に原子状水素によって完全に還元される。
【0023】
加熱されたガスの温度範囲および水素ガスと粒状高融点金属酸化物との質量比の選択は、自明の努力ではなく、それ故に認識されたものではなかった。このことを証明するために、原子状水素で五酸化タンタルを還元することによる一次タンタル金属の形成は、次のように記載される。タンタル金属は、約3000℃の融点を有する。厳密な意味で、タンタルの融点を下廻る加熱されたガス温度およびタンタルの融点を若干上廻る加熱されたガス温度は、エネルギー費を最少化するという目的および溶融されたタンタル金属の形成が望ましいか否かに依存するという目的にとって重要である。
【0024】
分子状水素(即ち、H2(g))での五酸化タンタルの還元による一次タンタル金属の形成は、1000℃〜3600℃の温度範囲を上廻ると熱力学的に好ましくない。次の一般的な反応式(I)は、分子状水素による五酸化タンタルの還元の代表例である。
【0025】
【化1】
【0026】
一般的な反応式(I)は、ギブスエネルギー最少化分析法により、HSC Chemiatry 5.1の名称でフィンランド国のOutokumpu Research Oyから商業的に入手可能なコンピュータプログラムを用いて熱力学的に分析された。
【0027】
一般的な参考のために、標準のギブスの自由エネルギー値(即ち、AG値)が負である場合には、反応式(I)の反応は、有利であると考えられ、したがってこの反応式の平衡は、反応式の右側にシフトし、関連した平衡定数は、1.0より大きい。
【0028】
相応して、標準のギブスの自由エネルギー値が正である場合には、この反応は、あまり有利でないかまたは不利である(正の値の大きさに依存する)と考えられ、したがってこの反応式の平衡は、反応式の左側にシフトし、関連した平衡定数は、1.0未満である。零の標準のギブスの自由エネルギー値は、1.0の平衡定数に相応する。
【0029】
標準のギブスの自由エネルギー値は、次の一般的な等式を用いて計算される。
ΔG=−(R)×(T)×Ln(K)
上記の等式中:符号"R"は、ガスの定数を表わし;"T"は、ケルビン度での温度を表わし;および"K"は、平衡定数である。
【0030】
よりいっそう詳細には、HSC Chemistry5.1ソフトウェアを用いての反応式(I)のギブスのエネルギーの最少化のコンピューターによる分析結果は、次の第1表中に記載されている。
【0031】
【表1】
【0032】
第1表中に記載された結果は、一般的な反応式(I)によって表わされているように、分子状水素による五酸化タンタルの還元および一次タンタル金属の形成が1000℃〜3600℃の温度範囲を上廻ると熱力学的に有効でないということを示す。殊に、第1表のAG値が正であり、かつ評価された温度範囲を上廻って大きな大きさ(100Kcalの過剰量で)を有することは、注目すべきである(即ち、反応式(I)の平衡が左側/供給側に向かってシフトし、右側/生成物側から離れてシフトする)。厳密な意味で、五酸化タンタルの還元は、1000℃〜3600℃の温度範囲を上廻ると実現不可能である。
【0033】
第1表中および次の表中の符号は、次の意味を有する:Tは、温度を表わし;Hは、エンタルピーを表わし;Sは、エントロピーを表わし;AGは、標準のギブスの自由エネルギーを表わし;およびKは、関連した反応式の平衡定数を表わす。
【0034】
原子状水素による五酸化タンタルの還元は、次の代表的な反応式(II)によって表わされる。
【0035】
【化2】
【0036】
HSC Chemistry5.1ソフトウェアを用いての反応式(II)のギブスのエネルギーの最少化のコンピューターによる分析結果は、次の第2表中に記載されている。
【0037】
【表2】
【0038】
第2表中に記載された結果は、原子状水素での五酸化タンタルの還元による一次タンタル金属の形成が約3000℃以下の温度、よりいっそう有利には2800℃以下の温度で熱力学的に実現可能であることを示す。1000℃〜2600℃の温度範囲を上廻ると、第2表のAG値は、負となり、したがって反応式(II)の平衡定数において反応式の右側/生成物の側へ(即ち、一次タンタル金属の形成に向かって)のシフトを示す。標準のギブスの自由エネルギー値は、2800℃〜3000℃の温度で正であるけれども、タンタルが形成されるのに十分に小さな大きさを有する。概ね、第2表に記載された結果は、原子状水素による五酸化タンタルの還元がよりいっそう有利であり、2600℃以下の温度で行なわれるべきであることを示す。
【0039】
しかし、1000℃〜3000℃の温度範囲を上廻るイオン性水素(これは、五酸化タンタルの還元を可能にする)の形成は、熱力学的に実現不可能である。更に、原子状水素の形成は、2000℃以上の温度で実現可能であるけれども、本明細書中でさらに詳細に記載されるように、3000℃以上の温度でのみ有利になる。
【0040】
原子状水素の形成は、次の一般的な反応式(III)によって表わされる。
【0041】
【化3】
【0042】
HSC Chemistry5.1ソフトウェアを用いての一般的な反応式(III)によって表わされる一般的な反応のギブスのエネルギーの最少化のコンピューターによる分析結果は、次の第3表中に記載されている。
【0043】
【表3】
【0044】
第3表中のデータの要約から、原子状水素の形成のための標準のギブスの自由エネルギーは、1000℃〜3400℃の全温度範囲に亘って正であり、3600℃の温度で負になる。一般的な反応式(III)のための平衡定数(K)は、次の等式によって表わされている。
【0045】
K=(PH(g))2/(PH2(g))
符号"PH(g)"は、原子状水素の部分圧力に言及され、符号"PH(g)"は、分子状水素の部分圧力に言及される。100体積%の水素ガスの体積%および1atmの水素ガスの部分圧力を推定することにより、原子状水素の体積%の評価は、特殊な温度で平衡定数の平方根から定めることができる。例えば、2000℃の温度で、原子状水素の百分率での体積は、約1%であり、したがって分子状水素の体積%は、約99%である。2200℃の温度で、原子状水素の百分率での体積は、約2%であり、したがって分子状水素の体積%は、約98%である。
【0046】
2400℃の温度で、原子状水素の百分率での体積は、約10%であり、したがって分子状水素の体積%は、約90%である。厳密な意味で、原子状水素の形成は、2000℃未満の温度では十分には実現不可能である。2000℃〜2800℃の温度で、原子状水素の形成は、実現可能であるが、しかし、不所望にも少量で実現可能である。第3表中に記載された結果は、3000℃以上の温度が原子状水素の好ましい形成のために必要であることを示す。第3表中には示されていないけれども、4000℃を上廻る温度で、等式(III)の平衡は、右側に実質的にシフトする(即ち、実質的に全部の分子状水素が原子状水素に変換される)。
【0047】
イオン性水素の形成は、次の一般的な等式(IV)によって表わされる。
【0048】
【化4】
【0049】
反応式(III)のギブスのエネルギーの最少化のコンピューターによる分析は、HSC Chemiatry 5.1ソフトウェアを用いて実施され、その結果は、次の第4表中に記載されている。
【0050】
【表4】
【0051】
第4表の結果は、標準のギブスの自由エネルギー値が正であり、全ての温度範囲を上廻って大きな大きさを有する場合に、1000℃〜3600℃の温度範囲を上廻るイオン性水素の形成が熱力学的に有利でないことを示す。第4表中に示されていないけれども、イオン性水素は、約10000℃の温度を下廻ると著量では形成されない。
【0052】
第1表ないし第4表中に記載されているように反応式(I)〜(IV)の熱力学的分析は、五酸化タンタルが原子状水素によって適度に還元されてタンタル金属を形成する温度に関連して著しく異なる指標を提供する。殊に、第2表中に記載されているような反応式(II)の熱力学的分析は、原子状水素による五酸化タンタルの還元が2600℃以下の温度で熱力学的に好ましいことを示す。しかし、第3表中に記載されているような反応式(III)の熱力学的分析は、3000℃以上の温度が十分な量の原子状水素の形成に必要とされることを示す。厳密な意味で、等式(II)および(III)、ならびに第2表および第3表の一緒の熱力学的データを考慮した場合には、原子状水素の化学量論的量による五酸化タンタルの還元(即ち、0.02〜1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で)は、3000℃未満の温度で合理的には実現可能であるとは思われない。
【0053】
3000℃未満の温度での原子状水素の熱力学的に好ましくない形成に対する前記障害は、次のこと:〜の双方を注意深く選択することによって克服することができることが見出された。(i)水素ガス(即ち、分子状水素ガス)が加熱される温度範囲;および(ii)水素ガスと高融点金属酸化物との質量比。実証の目的のために、前記条件の選択は、一次タンタル金属(Ta)を形成させるための五酸化タンタル(Ta2O5)の還元に関連して議論される。
【0054】
次の議論においては、約1900K〜3600Kまたは約2100K〜3600Kの温度範囲が研究された。水素ガスと五酸化タンタルとの次の9つの質量(または重量)比は、前記の温度範囲に亘って研究された:0.1:1.0;0.25:1.0;0.4:1.0;0.7:1.0;1:1.0;1.5:1.0;2.3:1.0;4:1.0;および9:1.0。列挙された質量比は、ギブスのエネルギーの最少化法により、TERRAの名称でB.C. Trusov社, Moscow, Russia、から商業的に入手可能なコンピュータープログラムを用いて分析された。TERRAコンピューターによる分析は、反応体としての五酸化タンタルおよび水素ガスを含む反応系に対して種々の反応成分および生成物の平衡な質量画分を温度の関数としてプロットすることであった。更に、次の副産物の平衡な質量画分もグラフ中に示されている:二酸化タンタル(TaO2);
【0055】
および次の反応式(V)によって示されるような、五酸化タンタルの熱分解により生じる一酸化タンタル(TaO(g))。
【0056】
【化5】
【0057】
五酸化タンタルの還元のための質量画分対温度をプロットしたグラフは、図1〜9に示されている。図1〜9のグラフにおいて、式Ta2O5(c)およびTa(c)は、関連した縮合された種に言及される。図1〜9において、符号"H"は、ガス状の原子状水素に言及される。図1〜9において、下付符号(c)なしの全ての種は、ガス状種である。また、図1〜9においては、0.1MPaの全圧力で2100K〜3200Kの温度範囲に亘っての一次タンタル金属の平衡質量画分の表を含む。
【0058】
0.1:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量(または重量)比で、一次タンタル金属の形成は、比較的僅かである(2900Kの温度で0.049の最大の質量画分値を有する)。図1のグラフおよび表参照。更に、2900Kで、形成されたガス状二酸化タンタル(TaO2)の量は、この温度で形成された一次タンタル金属の最大量と不所望にも実質的に等量である。更に、本明細書中で議論されるように、特に亜酸化物が原子状水素によって還元されない場合には、供給原料の高融点金属酸化物の亜酸化物(例えば、五酸化タンタルの場合にTaOおよびTaO2)の形成は、典型的には望ましくない。
【0059】
0.25:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で形成される一次タンタルのレベルは、0.1:1.0の質量比と比較してよりいっそう大きい(例えば、2900Kの温度で0.097の最大の質量画分を有する)。図2のグラフおよび表参照。しかし、2900Kの温度で、形成されたガス状二酸化タンタルの量は、この温度で形成された一次タンタル金属の最大量と不所望にも実質的に等量である。
【0060】
0.4:1.0、0.7:1.0、1.0:1.0および1.5:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比は、0.1:1.0の質量比と比較して一次タンタル金属のよりいっそう高いレベルを形成する。図3〜6参照。しかし、0.25:1の質量比と同様に観察されるように、ガス状の亜酸化物(例えば、ガス状TaOおよび/またはTaO2)の形成レベルは、この質量比で一次タンタル金属の形成レベルと比較して不所望にも高い。更に、前記の質量比で、一次タンタル金属の最大またはピーク量は、比較的狭い温度範囲に亘って(例えば、1.5:1.0の質量比の場合に100Kの温度範囲に亘って、図6参照)形成される。このような狭い温度範囲を維持することは、実験室条件下では可能であるけれども、プラントの生産レベルでは望ましいこととは言えない。
【0061】
広い温度範囲に亘って一次高融点金属形成の十分に再現可能で実質的に一定のレベルのバランスを提供する、水素ガスと高融点金属酸化物の質量比は、望ましい。更に、特にガス状の亜酸化物が原子状水素によって還元されない場合には、高融点金属酸化物の供給材料(例えば、ガス状TaOおよびTaO2)の形成は、前記の温度範囲に亘って最小であることが望ましい。反応条件のこのようなバランスは、例えば装置の設計およびこれに関連した質量バランスのために、特にプラント(または商業的)生産レベルで望ましい。
【0062】
反応条件(即ち、十分に広い温度範囲およびガス状亜酸化物形成の減少されたかまたは最小のレベルと結合した十分に高い一次タンタル金属形成)のかかる好ましいバランスは、1.5:1.0の過剰量である、水素ガスと五酸化タンタルとの質量比によって提供される。本発明の実施態様において、水素ガスと五酸化タンタルとの質量比は、有利に少なくとも2.3:1.0、よりいっそう有利には少なくとも4.0:1.0である。図7および8参照。2.3:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で、高いレベルの一次タンタル金属形成とガス状亜酸化物(ガス状TaOおよびTaO2)の減少された形成との組合せは、約2200K〜2800Kの温度範囲に亘って達成される(図7)。4.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比は、一次タンタル金属形成の組合せが例えば約2100K〜約2900Kの温度範囲に亘ってガス状の亜酸化物形成の減少されたレベルと対になっている幅広い温度範囲を提供する(図8)。
【0063】
幅広い温度範囲に亘っての一次タンタル金属形成の十分に再現可能で実質的に一定のレベルの特に望ましいバランスは、少なくとも9.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比によって提供される。図9参照。9.0:1.0の質量比で、一次タンタル金属形成の十分な実質的に一定のレベル(約0.08の平衡な質量画分値)は、約1900K〜2700Kの温度範囲に亘って達成される。更に、前記の温度範囲(1900K〜2700K)に亘ってのガス状亜酸化物(ガス状TaOおよびTaO2)の形成は、さらに減少され、最少化される。
【0064】
また、原子状水素での五酸化タンタルの還元は、タンタルの収率の点で評価されることができる。タンタルの収率は、次の等式から計算される。
【0065】
タンタルの収率%={Ta(c)/Ta(供給原料)}×100
【0066】
"Ta(c)"の用語は、形成された縮合タンタル金属の量を表わし、"Ta(供給原料)"は、反応に供給されたタンタルの量を表わし、この場合このタンタルの量は、反応に供給された五酸化タンタル(Ta2O5)の質量から計算される。図10において、温度の関数としての百分率でのタンタルの収率は、9.0:1.0、2.3:1.0および0.1:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比のためにプロットされている。図10に関連して、9.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で、実質的に100%のタンタルの収率は、約2150K〜2750Kの望ましく幅広い温度範囲に亘って達成される。(図10に示されているように)水素ガスと五酸化タンタルとの質量比が増加するにつれて、百分率でのタンタルの収率および、このような収率が増加することが達成される温度範囲の双方が増加することに基づいて、9.0:1,0を上廻る水素ガスと五酸化タンタルとの質量比が十分に幅広い温度範囲の亘って(例えば、2000℃〜3000℃の温度範囲に亘って)実質的に100%のタンタルの収率を生じると思われることが予想される。
【0067】
また、加熱されたガス(水素ガスを含めて)の温度範囲および水素ガスと高融点金属酸化物との質量比は、それぞれ高融点金属酸化物の供給材料が実質的に熱力学的に安定化されているように選択される。本発明の方法において、高融点金属酸化物の供給材料を熱力学的に安定化することは、この供給材料からの当該高融点金属亜酸化物の形成を最少化し、この場合この高融点金属亜酸化物は、原子状水素との接触によって還元されることができない。従って、このような安定化は、高融点金属酸化物の供給材料のよりいっそう完全な還元が本発明の方法で達成されることをさらに良好に保証する。
【0068】
例えば、五酸化タンタルの熱分解は、反応式(V)によって表わされているようにガス状の一酸化物および二酸化物を形成し、これは、次のように再現される。
【0069】
【化6】
【0070】
反応式(V)のための平衡な等式は、次の等式(1)によって表わされる。
【0071】
【化7】
【0072】
等式(1)において、K(v)は、反応式(V)のための平衡な定数であり、それぞれの符号"P"は、当該の部分圧力に言及される。
【0073】
また、次の反応式は、五酸化タンタルの供給材料の熱力学的安定性の分析に関連して重要性を有する。
【0074】
【化8】
【0075】
反応式(VI)のための平衡な等式は、次の等式(2)によって表わされる。
【0076】
【化9】
【0077】
等式(2)において、K(VI)は、反応式(VI)のための平衡な定数であり、それぞれの符号"P"は、当該の部分圧力に言及される。
【0078】
五酸化タンタルが水素ガスの存在下で加熱される(上記式(II)参照)場合には、酸素の部分圧力は、反応式(1)と反応式(2)の双方を満足させなければならない。上記温度で、反応式(1)と反応式(2)の平衡な定数K(V)およびK(VI)は、それぞれ一定のままである。等式(2)の{PH2(g)/PH2O(g)}の比が減少する場合には、等式(2)のO2(g)の部分圧力は、増加し、したがって等式(1)のO2(g)の部分圧力も増加する。等式(1)のO2(g)の部分圧力が増加する場合には、TaO(g)およびTaO2(g)の多重の部分圧力は、減少する。相応して、TaO(g)およびTaO2(g)の多重の部分圧力が減少する場合には、Ta2O5の熱力学的安定性または熱的安定性は、増加し、殊にTa2O5の揮発は、最少化される。
【0079】
特殊な温度で五酸化タンタル供給材料の熱力学的安定化の際の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比の効果は、図6および図9に関連して証明することができる。図6に関連して、1.5:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比および2700Kの温度で、TaO2(g)の質量画分は、約0.06である。図9に関連して、9.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比および2700Kの温度で、TaO2(g)の質量画分は、無視しても構わない(0.01未満である)。水素ガスと五酸化タンタルとの質量比が増加する場合には、TaO2(g)の質量画分は、減少し、したがって五酸化タンタルの熱力学的安定性は、増加する。
【0080】
本発明の方法において、還元される高融点金属酸化物の供給材料は、粒状高融点金属酸化物の形である。高融点金属酸化物粒子は、球面形状、細長い球面形状、不規則な形状(例えば、鋭角を有する)、板状またはフレーク状の形状、ロッド状の形状、球状の形状およびその組合せから選択された形状を有することができるが、しかし、前記形状に制限されるものではない。粒状高融点金属酸化物の平均粒径は、粒状高融点金属酸化物が自由に流動するように選択される。粒状高融点金属酸化物は、典型的には20μm〜1000μm、よりいっそう典型的には30μm〜800μm、さらに典型的には50μm〜300μmの平均粒径を有する。
【0081】
本発明の方法で形成された一次高融点金属は、実質的に固体の形および連続的な材料の形(例えば、円筒体の形)であることができ、好ましくは、本発明の方法において形成された一次高融点金属は、粒状一次高融点金属の形であり、さらに好ましくは、自由に流動する粒状一次高融点金属である。粒状一次高融点金属製品は、典型的には200nm〜1000μm、よりいっそう典型的には1μm〜800μm、さらに典型的には10μm〜300μmの平均粒径を有する。
【0082】
本発明の方法において、少なくとも幾つかの粒状高融点金属酸化物は、加熱されたガスとの接触によって還元されて一次高融点金属を形成する。好ましくは、粒状高融点金属酸化物の質量に対して粒状高融点金属酸化物の少なくとも50質量%が加熱されたガスとの接触によって還元される。本発明の特に好ましい実施態様において、粒状高融点金属酸化物の質量に対して粒状高融点金属の少なくとも90質量%(例えば、98または100質量%)は、加熱されたガスとの接触によって還元される。ガスまたは供給ガス(水素ガスを含む)は、本発明の方法において、本明細書中に先に記載されたように加熱されたガスが原子状水素を含むように加熱される。好ましくは、加熱されたガスは、実質的にイオン性水素を含有しない。本明細書中および特許請求の範囲内で使用されているように、"実質的にイオン性水素を含有しない"の用語は、加熱されたガスが1×10-10未満(TERRAコンピュータプログラムを用いてギブスのエネルギーの最少化の計算によって定められた)のイオン性水素(H+(g))の質量画分を含有することを意味する。
【0083】
高融点金属酸化物の高融点金属は、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、およびその組合せおよび合金から選択されてよい。好ましくは、高融点金属酸化物は、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、二酸化ニオブおよびその組合せから選択される。
【0084】
加熱されたガスおよび粒状高融点金属酸化物は、適当な手段によって一緒に接触させることができる。例えば、粒状高融点金属酸化物は、加熱されたガスの流れに導入することができるか、または加熱されたガスは、粒状高融点金属酸化物に通過させることができるかまたは粒状高融点金属酸化物上を通過することができる。
【0085】
1つの実施態様において、粒状高融点金属酸化物は、適当な容器(例えば、高融点金属、例えばタンタル、ニオブまたはモリブデンから製造された容器)中に入れられ、加熱されたガスは、容器内で粒状高融点金属酸化物に通過される(および粒状高融点金属酸化物上を通過する。)例えば、実質的に開いた端部、および末端部を覆う微細な金属メッシュを有する末端部を有する円筒状容器を使用することができる。粒状高融点金属酸化物は、円筒状容器中に置かれ、加熱されたガスは、開いた端部を通じて容器中に連続的に導入され、一方で、ガス状の副産物は、微細な金属メッシュを通じて容器から除去される。容器内で形成された一次高融点金属は、固体の連続的な形であることができるか、または好ましくは粒状の形であることができる。更に、製品の一次高融点金属は、容器から取り出すことができ、後処理(例えば、粉砕、圧縮、またはワイヤ、シートまたはフォイルへの二次加工)することができる。
【0086】
高融点金属酸化物と水素ガスを含有する加熱されたガスとの接触は、触媒の存在下で行なうことができる。本明細書中および特許請求の範囲内で使用されるように、高融点金属酸化物と加熱されたガスとの接触に関連する"触媒"の用語は、水素ガス(即ち、分子状水素ガス)からの原子状水素の形成速度を高めることを意味する。任意の理論によって関連付けられることを意図するものではないが、触媒が、水素ガスからの原子状水素の形成速度を、このような形成と関連した活性エネルギーを減少させることによって高めることは、確実なことである。触媒の存在により、原子状水素の形成および高融点金属酸化物の還元に必要とされる温度で還元が達成されてもよいことは、望ましいことである(例えば、2000℃、1500℃または1000℃以下の温度)。
【0087】
触媒は、好ましくはパラジウム、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、その組合せの少なくとも1つの金属およびその合金を含有する粒状触媒である。粒状触媒は、それによって備えられる高い表面積のために好ましい。典型的には、粒状触媒は、触媒1g当たり5〜25m2、例えば触媒1g当たり10m2の表面積を有する。
【0088】
触媒は、好ましくは粒状の形で、床中に置くことができ、この床に水素ガスを含有する加熱されたガスが通過され、それによって原子状水素を含有するガスの流れが形成され、次にこのガスの流れは、高融点金属酸化物と接触される。1つの実施態様において、粒状高融点金属酸化物は、複数の穿孔を有するスクリーン(例えば、タンタルスクリーン)の上面上に置かれる。粒状触媒は、スクリーンの下面と接触して維持される(例えば、複数の穿孔を有する他のスクリーンを用いて、この場合この粒状触媒は、スクリーンと他のスクリーンとの間に介在している)。水素ガスを含有する加熱されたガス(例えば、電気抵抗炉により加熱された)は、粒状触媒に通過され、それによって原子状水素が形成され、この原子状水素は、スクリーンに通過され、スクリーンの上面上に存在する粒状高融点金属酸化物と接触され、それによって高融点金属酸化物が還元され、一次高融点金属酸化物が形成される。このようなスクリーン法は、典型的にはバッチ法として行なわれる。
【0089】
触媒は、本発明による連続的方法において使用されてよい。複数の穿孔を有するスクリーン(例えば、タンタルの)は、連続ベルトの形で備えられている。このベルトは、内部体積を定義する内面を有し、この場合この内部体積中には、粒状触媒が導入され、かつ含まれる。粒状高融点金属酸化物は、ベルトが連続的に移動する際に上側ベルトの外面上に連続的に備えられる(例えば、ローラーで)。同時に、水素ガスを含有する加熱されたガスは、ベルトの下方部分を通過し、ベルトの内部体積内に含まれている粒状触媒を通過し、それによって原子状水素が形成される。更に、原子状水素は、ベルトの上方部分を通過し、上側ベルトの外面上に存在する粒状高融点金属酸化物と接触し、それによって一次高融点金属酸化物が形成される。このベルトは、場合によっては炉内に含まれていてよく、この場合この炉内には、水素ガスが導入される。
【0090】
本発明の1つの実施態様において、加熱されたガスは、プラズマである。プラズマは、不活性ガスおよび反応性ガスを含有する供給ガスから形成されている。よりいっそう詳述すれば、プラズマは、不活性ガスをイオン化することによって形成され(例えば、イオン化アルゴン)、この場合この不活性ガスは、十分に分布され、水素ガスと混合される。本明細書中および特許請求の範囲内で使用されているように、"プラズマ"の用語は、不活性ガス、不活性ガスイオンおよび反応性ガス(例えば、水素ガスおよび原子状水素)、および場合によっては少量の水素イオン(例えば、1×10-10未満の水素イオンの質量画分)を含む加熱されたガスを意味する。粒状高融点金属酸化物は、プラズマと接触され、還元され、一次高融点金属を形成する。
【0091】
不活性ガスおよびプラズマの反応性ガス、およびその相対量は、それぞれ本発明の方法において記載されたガスに関連する前記記載と同様である。例えば、不活性ガスは、第VIII族の希ガスの少なくとも1つから選択されていてよい(例えば、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびその組合せ)。
【0092】
プラズマの反応性ガスは、水素および場合によっては水素以外の他の反応性ガス、例えばアルカン(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタンおよびその組合せ)を含有する。相対量の水素および他の反応性ガスは、本発明の方法において加熱されるガスに関連して本明細書中で先に記載されたような量および範囲から選択することができる。好ましくは、プラズマの反応性ガスは、反応性ガスの全質量に対して水素100質量%を含有する。
【0093】
粒状高融点金属酸化物およびプラズマは、プラズマを粒状高融点金属酸化物に通過させおよび粒状高融点金属酸化物上に通過させることによって共に接触させることができる。例えば、粒状高融点金属酸化物は、容器(例えば、円筒状容器)中に置くことができ、粒状高融点金属酸化物と加熱されたガスとの接触に関連して本明細書中に前記されたように、前記容器にプラズマは、通過される。
【0094】
好ましくは、粒状高融点金属酸化物とプラズマは、粒状高融点金属酸化物をプラズマ(時々、プラズマ炎またはプラズマ流と呼称される)中に導入することによって共に接触させることができる。本明細書の方法において使用されうるプラズマ装置は、当業者に公知のものを含む。本発明の1つの実施態様において、プラズマ装置は、プラズマガン、プラズマ化学的反応器および生成物捕集装置を含む。プラズマ化学的反応器(例えば、細長い円筒体の形で)は、第1の端部および第2の端部を有する。プラズマガンは、プラズマ化学的反応器の第1の端部に固定され、生成物捕集装置は、プラズマ化学的反応器の第2の端部に接続されている。プラズマガンおよび生成物捕集装置は、それぞれプラズマ化学的反応器とガス状で接続されている。プラズマ装置は、好ましくは上端部でプラズマガンおよび下端部で生成物捕集装置と共に垂直方向に配向されており、この場合ガス流と重力との組合せは、生成物の一次高融点金属が捕集装置中に下降して駆出されることを可能にする。選択的に、プラズマ装置は、水平方向に配向されていてよい。
【0095】
供給ガス(例えば、3:1のアルゴンと水素との体積比でアルゴンおよび水素ガスを含有する)は、プラズマガン中に供給され、プラズマは、形成され、プラズマ化学的反応器の少なくとも一部分を通って拡大する。
【0096】
粒状高融点金属酸化物は、プラズマ化学的反応器中に供給され、この反応器中でプラズマと接触される。粒状高融点金属酸化物は、不活性なキャリヤーガス、例えばアルゴンにより反応器中に供給されることができる。場合によっては、付加的な反応性ガス(例えば、水素)は、別々にプラズマ化学的反応器中に供給されてよい。
【0097】
プラズマ化学的反応器中での粒状高融点金属酸化物とプラズマとの接触は、本発明に方法によれば、粒状高融点金属酸化物の還元を生じ、一次高融点金属酸化物を形成する。好ましくは、プラズマ化学的反応器中で形成される一次高融点金属は、粒状の形である。
【0098】
一次高融点金属生成物は、プラズマ化学的反応器から生成物捕集装置中を通過する。生成物捕集装置は、当業者に公知のものから選択されてよい。例えば、生成物捕集装置は、末端の円錐形の捕集部分を有する細長い円筒体の形であることができる。生成物捕集装置は、該装置中への付加的なガス(例えば、キャリヤーガス、例えばアルゴン)の導入および通過のためのポートを有することができ、一次高融点金属の生成物の捕集を簡易化する。付加的に、一次高融点金属が形成中にプラズマ化学的反応器中で溶融される場合には、生成物捕集装置中への付加的な不活性キャリヤーガスの導入は、粒状の形への一次高融点金属の硬化にも役立ちうる。
【0099】
生成物捕集装置は、場合によっては分析機器、例えば質量分析計を有していてよく、該生成物捕集装置を通過するガスの組成を(例えば、連続的に)監視する。1つの実施態様において、生成物捕集装置を通過するガスのリアルタイム分析の結果は、例えばプラズマ化学的反応器中に供給される供給ガスおよび粒状高融点金属酸化物の組成および供給速度を連続的に調節するために使用される。更に、生成物の一次高融点金属は、生成物捕集装置から除去されてよい。
【0100】
本発明の方法は、バッチ法としてかまたは連続的に行なうことができる。少なくとも部分的に粒状高融点金属酸化物で充填されている容器に加熱されたガスまたはプラズマを通過させることは、典型的にはバッチ法として実施される。粒状高融点金属酸化物を加熱されたガスまたはプラズマの流れ中に(例えば、本明細書中に前記されたようなプラズマ装置を用いて)導入することは、典型的には連続的方法として行なわれる。
【0101】
本発明の方法は、減圧、大気圧または高められた温度の条件下で行なうことができる。例えば、減圧は、プラズマ装置の生成物捕集装置の少なくとも一部分中で提供されてよい。典型的には、本発明の方法は、実質的に大気圧の条件下で行なわれる。殊に、加熱されたガス(またはプラズマ)と粒状高融点金属酸化物との接触は、好ましくは大気圧(例えば、周囲の大気圧)の条件下で行なわれる。
【0102】
また、本発明の方法を少なくとも大気圧の条件下で行なうことは、高融点金属酸化物(例えば、五酸化タンタル)を安定化するのに役立つ。Le Chatelier's Principleに基づいて本明細書中に前記された反応式(V)および等式(1)に関連して、反応(V)の平衡は、全部の圧力が増加する場合には、左側(五酸化タンタル側)にシフトする。
【0103】
本発明の1つの実施態様において、本方法は、粒状五酸化タンタルからの一次タンタル金属の製造を含む。一次タンタル金属の形成は、図1〜9に関連して本明細書中で先に議論された。粒状五酸化タンタルと接触しているガスは、1900K〜2900Kの温度に加熱される。
【0104】
加熱されたガスの水素ガスおよび加熱されたガスと接触された粒状五酸化タンタルが1.5:1を上廻る水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比を有する。好ましくは、水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、2.3:1以上である。好ましくは、水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、4.0:1以上である。特に好ましい実施態様において、水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、9.0:1以上である。水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比の上方範囲は、典型的には15:1以下、よりいっそう典型的には、10:1以下である。水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、列挙された値を含めて(別記しない限り)前記の上方値と下方値との任意の組合せの範囲内であることができる。例えば、水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、1.5:1を上廻り15:1まで、好ましくは2.3:1〜10:1、よりいっそう好ましくは4.0:1〜10:1、さらによりいっそう好ましくは9:1〜15:1、または9:1〜11:1、または9:1〜10:1の値の範囲に及ぶことができる。
【0105】
水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比が、9:1以上である場合には、粒状五酸化タンタルは、有利に1900K〜2700Kの温度で加熱されたガスと接触される。
【0106】
一次タンタル金属は、本発明の前記方法の記載によれば、粒状五酸化タンタルとプラズマとを接触させることによって製造することができる。
【0107】
粒状五酸化タンタルは、商業的に入手可能なグレードから選択されることができる。製品の一次タンタル金属の純度を改善するために、実質的に純粋な粒状五酸化タンタルを使用することは、好ましい。本発明の1つの実施態様において、粒状五酸化タンタルは、実質的に純粋である。実質的に純粋な五酸化タンタルは、典型的には、炭素、ニオブ、珪素、タングステン、アルミニウムおよび鉄を50ppm未満の全体量で含有する。本発明の殊に好ましい実施態様において、実質的に純粋な粒状五酸化タンタルは、10ppm未満の炭素含量を有する。
【0108】
本発明の実施態様において、一次ニオブ金属は、五酸化ニオブ(Nb2O5)および/または二酸化ニオブ(NbO2)から製造される。水素ガスと五酸化ニオブとの質量比は、2000K〜3800Kの温度でギブスのエネルギーの最少化方法によりTERRAの名称でB.G. Truscov社, Russiaから商業的に入手可能なコンピュータプログラムを用いて研究された。水素ガスと五酸化ニオブとの次の質量比が研究された:2.3:1.0;4.0:1.0および9.0:1.0。図11、12および13参照。
【0109】
また、図11〜13は、温度の関数として形成された一次ニオブ金属の質量画分の表を含み、この場合には、それぞれのグラフの一部分が記載されている。図11〜13において、挿入された符号"(c)"は、縮合された種と同一である(例えば、Nb(c)は、縮合されたニオブを意味する)。更に、図11〜13において、下付符号(c)なしの全ての種は、ガス状種である。
【0110】
本発明の方法によれば、実質的に全ての五酸化ニオブおよび/または二酸化ニオブを還元し、一次ニオブ金属を形成させることは、好ましい。しかし、一次ニオブ金属と一酸化ニオブとの組合せが商業的に有用である場合には、一酸化ニオブの副産物の形成も望ましい。
【0111】
2.3:1.0の水素ガスと五酸化ニオブとの質量比で、一次ニオブ金属の形成は、比較的狭い温度範囲(2600K〜2700K)を越えてピークに達する。更に、一次ニオブは、一次ニオブ金属と同時に形成される。図11参照。
【0112】
4.0:1.0の水素ガスと五酸化ニオブとの質量比で、一次ニオブ金属の形成は、2300Kの温度でピークに達し、この温度から温度は着実に降下する。一酸化ニオブは、同時に一次ニオブ金属が前記条件下で形成される間、下方の温度範囲および上方の温度範囲の双方で形成される。4.0:1.0の水素ガスと五酸化ニオブとの質量比で、一次ニオブ金属の形成は、有利に2300K〜2600Kの温度範囲を越えて実施される。図12参照。
【0113】
幅広い温度範囲に亘っての一次タンタル金属形成の十分に再現可能で実質的に一定のレベルの特に望ましいバランスは、少なくとも9.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比によって提供される。図13参照。9.0:1.0の質量比で、一次ニオブ金属形成の十分な実質的に一定のレベル(約0.06〜0.07の平衡な質量画分値を有する)は、約2100K〜2700Kの温度範囲に亘って達成される。更に、前記の温度範囲(2100K〜2700K)に亘っての亜酸化物(殊にNbO)の形成は、実質的に減少され、最少化される。
【0114】
本発明の1つの実施態様において、加熱されたガスの水素ガスおよび加熱されたガスと接触される粒状五酸化ニオブ(一次ニオブ金属を形成するため)は、2.3:1を上廻る水素ガスと粒状五酸化ニオブとの質量比を有する。好ましくは、水素ガスと粒状五酸化ニオブとの質量比は、4.0:1以上である。好ましくは、水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、9.0:1以上である。水素ガスと粒状五酸化ニオブとの質量比の上方範囲は、典型的には15:1以下、よりいっそう典型的には、11:1以下、さらに典型的には10:1である。水素ガスと粒状五酸化ニオブとの質量比は、列挙された値を含めて(別記しない限り)前記の上方値と下方値との任意の組合せの範囲内であることができる。例えば、水素ガスと粒状五酸化ニオブとの質量比は、2.3:1を上廻り15:1まで、好ましくは4.0:1〜11:1、よりいっそう好ましくは9.0:1〜15:1、または9.0:1〜11:1、または9.0:1〜10:1の値の範囲に及ぶことができる。
【0115】
二酸化ニオブ(NbO2)からの一次ニオブ金属の形成は、1900K〜4000Kの温度でギブスのエネルギーの最少化方法によりTERRAの名称でB.G. Truscov社, Russiaから商業的に入手可能なコンピュータプログラムを用いて研究された。水素ガスと二酸化ニオブとの質量比は、9.0:1.0であることが研究された。
【0116】
図14参照。また、図14は、温度の関数として形成された一次ニオブ金属の質量画分の表を含み、この場合には、それぞれのグラフの一部分が記載されている。図11〜13の場合のように、図14において、挿入された符号"(c)"は、縮合された種と同一である(例えば、Nb(c)は、縮合されたニオブを意味する)、下付符号(c)なしの種は、ガス状種である。
【0117】
9.0:1.0の水素ガスと二酸化ニオブとの質量比で、一次ニオブ金属の形成は、2100Kの温度でピークに達し、この温度から温度は、最初緩徐に次に急速に降下する。幅広い温度範囲に亘っての一次タンタル金属形成の十分に再現可能で実質的に一定のレベルの特に望ましいバランスは、少なくとも9.0:1.0の水素ガスと二酸化ニオブとの質量比で達成される。図14参照。9.0:1.0の質量比で、一次ニオブ金属形成の十分な実質的に一定のレベル(約0.07の平衡な質量画分値を有する)は、約2100K〜2500Kの温度範囲に亘って達成される。更に、前記の温度範囲(2100K〜2500K)に亘っての亜酸化物(殊にNbO)の形成は、実質的に減少され、最少化される。
【0118】
本発明の方法において、水素ガスと粒状二酸化ニオブとの質量比の上方範囲は、典型的には15:1以下、よりいっそう典型的には、11:1以下、さらに典型的には10:1以下である。水素ガスと粒状二酸化ニオブとの質量比は、列挙された値を含めて前記の上方値と9:1の比との任意の組合せの範囲内であることができる。例えば、水素ガスと粒状二酸化ニオブとの質量比は、少なくとも9.0:1の値から15:1まで、好ましくは9.0:1〜11:1、よりっそう好ましくは9.0:1〜10:1の範囲内であることができる。
【0119】
粒状五酸化ニオブおよび二酸化ニオブは、それぞれ商業的に入手可能なグレードから独立に選択することができる。製品の一次ニオブ金属の純度を改善するために、実質的に純粋な粒状五酸化ニオブおよび/または二酸化ニオブを使用することは、好ましい。本発明の1つの実施態様において、ニオブの粒状酸化物(即ち、五酸化ニオブおよび/または二酸化ニオブ)は、実質的に純粋である。実質的に純粋な粒状五酸化ニオブおよび/または粒状二酸化ニオブは、典型的には、炭素、タンタル、鉄、珪素、タングステンおよびアルミニウムを50ppm未満の全体量で含有する。本発明の殊に好ましい実施態様において、ニオブの実質的に純粋な粒状酸化物は、10ppm未満の炭素含量を有する。
【0120】
一次ニオブ金属は、本発明によれば、一般に一次高融点金属および殊に一次タンタル金属に関連して本明細書中で先に記載された方法を用いて形成させることができる。例えば、加熱されたガスおよび五酸化ニオブおよび/または二酸化ニオブは、共に加熱されたガス(場合によってはプラズマの形で)を粒状五酸化ニオブに通過させおよび粒状五酸化ニオブ上に通過させることによって接触させることができ、一方で、この粒状五酸化ニオブは、容器(例えば、円筒状容器)内に維持される。また、粒状五酸化ニオブおよび/または二酸化ニオブは、本明細書中の前記記載と同様に、水素ガスを含有するプラズマ中に導入することができ、それによって一次ニオブ金属を形成させることができる。
【0121】
本発明の方法により製造される一次高融点金属(例えば、タンタルおよび/またはニオブ)を含むことができる製品は、電子用コンデンサ、コンピュータグレードの固体電解質、電気通信グレードの固体電解質、電気光学アセンブリおよび超伝導製品を含むが、これに限定されるものではない。殊に、所謂小型コンデンサ(単位容量当たりの高いキャパシタンスと安定した性能特性との組合せを有する)は、本発明の方法により製造される一次高融点金属から二次加工することができる。好ましくは、本発明による製造された一次高融点金属は、粒状一次高融点金属であり、列挙された製品(例えば、コンデンサ)は、粒状一次高融点金属から二次加工される。
【0122】
本発明は、特殊な実施態様の特殊な詳細に関連して記載された。このような詳細は、特許請求の範囲に記載される範囲に限定されることを除外して、本発明の範囲に制限されるものと見なされることを意図する訳ではない。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】0.1:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、図1は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図2】0.25:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、図2は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図3】0.4:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、図3は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図4】0.7:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、図4は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図5】1.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、図5は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図6】図6は、1.5:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、図6は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図7】図7は、2.3:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、図7は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図8】図8は、4.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、図8は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図9】図9は、9.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、図9は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図10】水素ガスと五酸化タンタルとの3つの別々の質量比のために温度の関数としてのタンタルの収率を百分率でグラフで表わした線図である。
【図11】2.3:1.0の水素ガスと五酸化ニオブとの質量比で一次ニオブ金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、温度の関数としての縮合された一次ニオブ金属(Nb(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図12】4.0:1.0の水素ガスと五酸化ニオブとの質量比で一次ニオブ金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、温度の関数としての縮合された一次ニオブ金属(Nb(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図13】9.0:1.0の水素ガスと五酸化ニオブとの質量比で一次ニオブ金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、温度の関数としての縮合された一次ニオブ金属(Nb(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図14】9.0:1.0の水素ガスと二酸化ニオブとの質量比で一次ニオブ金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、温度の関数としての縮合された一次ニオブ金属(Nb(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、高融点金属酸化物(例えば、五酸化タンタル)を水素からなる反応性ガスを含有する加熱されたガス(例えば、プラズマ)中で還元することによって一次高融点金属を製造する方法に関する。加熱されたガスの温度範囲および水素ガスと高融点金属酸化物との質量比は、加熱されたガスが原子状水素を含有し、高融点金属酸化物供給原料が実質的に熱力学的に安定化され、かつ高融点金属酸化物が加熱されたガスとの接触によって還元され、それによって一次高融点金属(例えば、一次タンタル金属)を形成するようにそれぞれ選択される。
【0002】
発明の背景
多少の高融点金属、例えばタンタルおよびニオブは、一部がそれらの前駆体、例えば酸化物の熱力学的安定性のために、純粋な(または一次)形で単離することが困難である。一次高融点金属の製造は、望まれている。それというのも、この一次高融点金属は、コンデンサ陽極が製造されうる原料としてかかる用途に使用されるからである。一次高融点金属を形成する現存する方法は、高融点金属酸化物(例えば、五酸化タンタルまたは五酸化ニオブ)または他の前駆体(例えば、タンタルハロゲン化物)が1つ以上の工程によって還元され、引続き製錬工程および清浄化工程が行なわれるような多工程法を含む。このような多工程法は、典型的に副産物の廃棄物流の形成を生じる。
【0003】
タンタル金属が製造されうる原料は、例えばヘプタフルオロタンタレート(K2TaF7)、タンタルハロゲン化物およびタンタル五酸化物を含む。ヘプタフルオロタンタル酸カリウムをナトリウムで還元することは、タンタル金属を製造する公知の古典的な方法である。ヘプタフルオロタンタル酸カリウムおよび小片のナトリウムは、金属管中に封止され、タンタル金属、ヘプタフルオロタンタル酸カリウム、ナトリウムおよび他の副産物を含む固体の質量を形成する点火温度に加熱される。更に、この固体混合物は、粉砕され、希酸で浸出され、タンタル金属を単離するが、このタンタル金属は、典型的には純粋とは言えない。
【0004】
また、タンタル金属は、ヘプタフルオロタンタル酸カリウムの溶融された組成物を希酸(例えば、塩化ナトリウム)の存在下に、反応器中への溶融されたナトリウム金属の導入によって一定の攪拌条件下に還元するような他の方法によって形成されてよい。溶融されたナトリウムの還元法は、タンタル金属、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムおよび他の副産物を含有する固体の質量を形成する。この固体質量は、粉砕され、希酸溶液で浸出され、タンタル金属を単離する。典型的には、付加的な処理工程、例えば凝集は、物理的性質の改善のために生成物のタンタル金属上で実施されなければならない。例えば、米国特許第2950185号明細書参照。
【0005】
タンタルの電解による製造は、五酸化タンタル(Ta2O5)を含有するヘプタフルオロタンタル酸カリウムの溶融された混合物を約700℃で金属容器中で電解することを含む。この電解還元は、タンタル金属、ヘプタフルオロタンタル酸カリウム、酸化タンタルおよび他の副産物を含有する固体質量の形成を生じる。更に、この固体質量は、粉砕され、希酸で浸出され、タンタル金属を単離するが、このタンタル金属は、典型的には純粋とは言えない。タンタル金属を製造するこのような電解方法は、典型的には現在、製造規模では使用されていない。
【0006】
高融点金属、例えばタンタル金属を製造する他の方法は、例えば米国特許第1728941号明細書中に記載されているような、塩化カルシウムの存在下でカルシウム金属での五酸化タンタルの還元;例えば米国特許第2516863号明細書中に記載されているような、珪化物、例えば珪化マグネシウムおよび水素化物、例えば水素化カルシウムの存在下での五酸化タンタルの還元を含む。このような他の方法は、多工程を含み、高融点金属が分離されなければならない副産物の形成を生じる。
【0007】
高融点金属、例えばタンタル金属を製造するよりいっそう最近の方法は、高融点金属酸化物とガス状還元剤、例えばガス状マグネシウムとの接触によって高融点金属酸化物(例えば、五酸化タンタルまたは五酸化ニオブ)を完全に還元するとは言えない還元を含む。更に、この完全に還元されたとは言えない高融点金属は、浸出され、さらに還元され、かつ凝集される。例えば、米国特許第6171363号明細書参照。
【0008】
高融点金属、例えばタンタルおよびニオブを製造する別の最近の方法は、最初に水素を粉末状高融点金属酸化物(例えば、五酸化タンタル)に通過させ、それによって中間体の高融点金属亜酸化物(例えば、一酸化タンタル)を製造することを含む。第2工程で高融点金属亜酸化物は、ガス状還元剤(例えば、ガス状マグネシウム)との接触によって還元される。更に、このほぼ完全に還元された高融点金属は、浸出され、さらに還元され、かつ凝集される。例えば、米国特許第6558447号明細書参照。
【0009】
更に、なお高融点金属を製造する方法は、高融点金属ハロゲン化物(例えば、五塩化タンタル)または高融点金属アルコキシド(例えば、タンタルアルコキシド)を水素ガスにより形成されたプラズマ中に導入されることを含む。このようなプラズマ法は、望ましくない副産物、例えば腐蝕性ガス状水素ハロゲン化物(例えば、ガス状塩化水素)およびガス状アルカノールの形成を生じる。高融点金属ハロゲン化物のプラズマ法は、例えば米国特許第3211548号明細書;および米国特許第6689187号明細書B2中にさらに詳細に記載されている。高融点金属アルコキシドのプラズマ法は、例えば米国特許第5711783号明細書中にさらに詳細に記載されている。
【0010】
米国特許第5972065号明細書には、プラズマアーク溶融によりタンタルを精製することが開示されている。米国特許第5972065号明細書の方法において、粉末タンタル金属は、容器中に置かれ、水素およびヘリウムから形成された流れるプラズマ流は、粉末タンタル金属上を通過する。
【0011】
欧州特許出願公開第1066899号明細書A2には、金属、例えばタンタルおよびニオブの高純度の球状粒子の製造法が開示されている。この欧州特許出願公開第1066899号明細書A2中に開示された方法は、水素ガスから形成されたプラズマ中にタンタル粉末を導入することを含む。プラズマの温度は、欧州特許出願公開第1066899号明細書A2に5000K〜10000Kであることが開示されている。
【0012】
多重の処理工程を含まず、好ましくは単独の還元工程だけを含む、実質的に純粋な高融点金属、例えば一次高融点金属を製造する方法を開発することが望まれている。また、このように新たに開発された、高融点金属を製造する方法により、直ちに利用可能でありかつ比較的安全に取り扱うことができる供給原料を使用こと;および少なくとも分離されなければならない、および/またはさもなければ後処理されなければならない望ましくない副産物の形成を最少化することが望まれている。
【0013】
発明の概要
本発明によれば、実質的に単独工程で達成することができかつ実質的に水からなる副産物を形成する、一次高融点金属の製造法が提供され、この方法は、次のこと:
(a)反応性ガスからなるガスを加熱し、この場合、この反応性ガスは、水素ガスからなり、それによって1つの温度範囲を有する加熱されたガスを形成すること;および
(b)粒状高融点金属を加熱されたガスと接触させることを含み、
(i)前記の加熱されたガスの温度範囲および(ii)前記の加熱されたガスの水素ガスと前記の粒状高融点金属酸化物の質量比がそれぞれ
加熱されたガスが原子状水素を有し、
高融点金属酸化物が実質的に熱力学的に安定化され、および
高融点金属酸化物が工程(b)で原子状水素によって還元されるように選択され、
それによって一次高融点金属を形成することによって特徴付けられる。
【0014】
また、本発明によれば、次のこと:
(a)反応性ガスからなるガスを加熱し、この場合、この反応性ガスは、水素ガスからなり、それによって加熱されたガスを形成すること;および
(b)粒状高融点金属を加熱されたガスと1900K(ケルビン)〜2900Kの温度で接触させ、それによって粒状五酸化タンタルを還元し、一次タンタル金属を形成させることを含み;
加熱されたガスの水素ガスおよび加熱されたガスと接触された粒状五酸化タンタルが1.5:1を上廻る水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比を有することを特徴とする、一次高融点金属の製造法が提供される。
【0015】
更に、本発明によれば、つぎのこと:
(a)反応性ガスからなるガスを加熱し、この場合、この反応性ガスは、水素ガスからなり、それによって加熱されたガスを形成すること;および
(b)二酸化ニオブ、五酸化ニオブおよびその組合せから構成される群から選択されたニオブの粒状酸化物を加熱されたガスと2100K〜2700Kの温度で接触させ、それによってニオブの粒状酸化物を還元し、一次ニオブ金属を形成させることを含み;
加熱されたガスの水素ガスおよび加熱されたガスと接触されたニオブの粒状酸化物が少なくとも9:1の水素ガスとニオブの粒状酸化物との質量比を有することを特徴とする、一次ニオブ金属の製造法が提供される。
【0016】
本発明を特徴付ける特徴は、特に特許請求の範囲に指摘されており、この場合この特許請求の範囲は、本明細書の開示の一部分に含まれかつこの一部分を成している。本発明の前記の特徴および他の特徴、操作の利点およびこれらの特徴の使用によって得られる特殊な対象は、次の詳細な説明および添付図面の記載から十分に理解されるであろう。
【0017】
別記しない限り、明細書および特許請求の範囲で使用される全ての数または表現、例えば構造的寸法、組成の量、処理条件等を表わす全ての数または表現は、全ての場合に"約"の表現によって変更されていてもよいと理解される。
【0018】
図1〜14においては、同様に参照の数字および特徴は、同じ構成成分および特徴を示す。
【0019】
発明の詳細な説明
本明細書中および特許請求の範囲内で使用されるように、"原子状水素"の用語は、ガス状の1原子水素(即ち、H(g)またはH)を意味し、即ちイオン形(例えば、ガス状水素カチオン、H+(g)またはH+)ではない。本明細書中で使用されるように、"水素ガス"の用語は、ガス状の分子状(2原子)水素(即ち、H2(g)またはH2)を意味する。
【0020】
本発明の方法において加熱されかつ高融点金属酸化物供給材料と接触されるガスは、水素ガスからなる反応性ガスを含む。更に、場合によっては、反応性ガスは、他の反応性成分、例えばアルカン(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタンおよびその組合せ)を含有する。反応性ガスが水素以外の反応性成分(例えば、メタン)を含む場合には、このような他の反応性成分は、典型的には少量で(例えば、反応性ガスの全質量に対して49質量%以下の量で)存在する。反応性ガスは、次のものを含むことができる:51〜99質量%、60〜85質量%または70〜80質量%の量の水素;および1〜49質量%、15〜40質量%または20〜30質量%の量の、水素以外の反応性成分(例えば、メタン)、この場合質量%は、反応性ガスの全質量に対するものである。好ましくは、反応性ガスは、実質的に水素ガス100質量%を含有する。
【0021】
更に、本発明の方法において加熱されかつ高融点金属酸化物供給材料と接触されるガスは、場合によっては不活性ガスを含むことができる。不活性ガスは、例えば元素の周期律表の第VIII族以上の希ガスから選択することができる。希ガスが選択されうる第VIII族の元素は、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびその組合せを含む。好ましい不活性ガスは、アルゴンである。不活性ガスが存在する場合には、加熱されかつ高融点金属酸化物と接触されるガス(供給ガス)は、典型邸には次のものを含む:反応性ガス20〜50質量%または反応性ガス25〜40質量%;および不活性ガス50〜80質量%または不活性ガス60〜75質量%、この場合この質量%は、供給ガスの全質量に対するものである。不活性ガスは、典型的には反応性ガスのためのキャリヤーとして使用される。本発明の方法をプラズマ手段によって行う場合には、ガス(供給ガス)は、典型的には不活性ガス、例えばアルゴンを含み、これは、本明細書中でさらに詳細に記載される。
【0022】
本発明の方法は、加熱されたガスの温度範囲および水素ガスと粒状高融点金属酸化物の供給材料との質量比の双方の選択を含み、この場合この供給材料は、加熱されたガスと接触される。前記のパラメーターは、次のように選択される:加熱されたガスは、原子状水素を含有し;高融点金属酸化物の供給原料は、実質的に熱力学的に安定化されており;および高融点金属酸化物の供給材料は、原子状水素によって還元されている。好ましくは、高融点金属酸化物の供給材料は、実質的に加熱されたガスとの接触中に原子状水素によって完全に還元される。
【0023】
加熱されたガスの温度範囲および水素ガスと粒状高融点金属酸化物との質量比の選択は、自明の努力ではなく、それ故に認識されたものではなかった。このことを証明するために、原子状水素で五酸化タンタルを還元することによる一次タンタル金属の形成は、次のように記載される。タンタル金属は、約3000℃の融点を有する。厳密な意味で、タンタルの融点を下廻る加熱されたガス温度およびタンタルの融点を若干上廻る加熱されたガス温度は、エネルギー費を最少化するという目的および溶融されたタンタル金属の形成が望ましいか否かに依存するという目的にとって重要である。
【0024】
分子状水素(即ち、H2(g))での五酸化タンタルの還元による一次タンタル金属の形成は、1000℃〜3600℃の温度範囲を上廻ると熱力学的に好ましくない。次の一般的な反応式(I)は、分子状水素による五酸化タンタルの還元の代表例である。
【0025】
【化1】
【0026】
一般的な反応式(I)は、ギブスエネルギー最少化分析法により、HSC Chemiatry 5.1の名称でフィンランド国のOutokumpu Research Oyから商業的に入手可能なコンピュータプログラムを用いて熱力学的に分析された。
【0027】
一般的な参考のために、標準のギブスの自由エネルギー値(即ち、AG値)が負である場合には、反応式(I)の反応は、有利であると考えられ、したがってこの反応式の平衡は、反応式の右側にシフトし、関連した平衡定数は、1.0より大きい。
【0028】
相応して、標準のギブスの自由エネルギー値が正である場合には、この反応は、あまり有利でないかまたは不利である(正の値の大きさに依存する)と考えられ、したがってこの反応式の平衡は、反応式の左側にシフトし、関連した平衡定数は、1.0未満である。零の標準のギブスの自由エネルギー値は、1.0の平衡定数に相応する。
【0029】
標準のギブスの自由エネルギー値は、次の一般的な等式を用いて計算される。
ΔG=−(R)×(T)×Ln(K)
上記の等式中:符号"R"は、ガスの定数を表わし;"T"は、ケルビン度での温度を表わし;および"K"は、平衡定数である。
【0030】
よりいっそう詳細には、HSC Chemistry5.1ソフトウェアを用いての反応式(I)のギブスのエネルギーの最少化のコンピューターによる分析結果は、次の第1表中に記載されている。
【0031】
【表1】
【0032】
第1表中に記載された結果は、一般的な反応式(I)によって表わされているように、分子状水素による五酸化タンタルの還元および一次タンタル金属の形成が1000℃〜3600℃の温度範囲を上廻ると熱力学的に有効でないということを示す。殊に、第1表のAG値が正であり、かつ評価された温度範囲を上廻って大きな大きさ(100Kcalの過剰量で)を有することは、注目すべきである(即ち、反応式(I)の平衡が左側/供給側に向かってシフトし、右側/生成物側から離れてシフトする)。厳密な意味で、五酸化タンタルの還元は、1000℃〜3600℃の温度範囲を上廻ると実現不可能である。
【0033】
第1表中および次の表中の符号は、次の意味を有する:Tは、温度を表わし;Hは、エンタルピーを表わし;Sは、エントロピーを表わし;AGは、標準のギブスの自由エネルギーを表わし;およびKは、関連した反応式の平衡定数を表わす。
【0034】
原子状水素による五酸化タンタルの還元は、次の代表的な反応式(II)によって表わされる。
【0035】
【化2】
【0036】
HSC Chemistry5.1ソフトウェアを用いての反応式(II)のギブスのエネルギーの最少化のコンピューターによる分析結果は、次の第2表中に記載されている。
【0037】
【表2】
【0038】
第2表中に記載された結果は、原子状水素での五酸化タンタルの還元による一次タンタル金属の形成が約3000℃以下の温度、よりいっそう有利には2800℃以下の温度で熱力学的に実現可能であることを示す。1000℃〜2600℃の温度範囲を上廻ると、第2表のAG値は、負となり、したがって反応式(II)の平衡定数において反応式の右側/生成物の側へ(即ち、一次タンタル金属の形成に向かって)のシフトを示す。標準のギブスの自由エネルギー値は、2800℃〜3000℃の温度で正であるけれども、タンタルが形成されるのに十分に小さな大きさを有する。概ね、第2表に記載された結果は、原子状水素による五酸化タンタルの還元がよりいっそう有利であり、2600℃以下の温度で行なわれるべきであることを示す。
【0039】
しかし、1000℃〜3000℃の温度範囲を上廻るイオン性水素(これは、五酸化タンタルの還元を可能にする)の形成は、熱力学的に実現不可能である。更に、原子状水素の形成は、2000℃以上の温度で実現可能であるけれども、本明細書中でさらに詳細に記載されるように、3000℃以上の温度でのみ有利になる。
【0040】
原子状水素の形成は、次の一般的な反応式(III)によって表わされる。
【0041】
【化3】
【0042】
HSC Chemistry5.1ソフトウェアを用いての一般的な反応式(III)によって表わされる一般的な反応のギブスのエネルギーの最少化のコンピューターによる分析結果は、次の第3表中に記載されている。
【0043】
【表3】
【0044】
第3表中のデータの要約から、原子状水素の形成のための標準のギブスの自由エネルギーは、1000℃〜3400℃の全温度範囲に亘って正であり、3600℃の温度で負になる。一般的な反応式(III)のための平衡定数(K)は、次の等式によって表わされている。
【0045】
K=(PH(g))2/(PH2(g))
符号"PH(g)"は、原子状水素の部分圧力に言及され、符号"PH(g)"は、分子状水素の部分圧力に言及される。100体積%の水素ガスの体積%および1atmの水素ガスの部分圧力を推定することにより、原子状水素の体積%の評価は、特殊な温度で平衡定数の平方根から定めることができる。例えば、2000℃の温度で、原子状水素の百分率での体積は、約1%であり、したがって分子状水素の体積%は、約99%である。2200℃の温度で、原子状水素の百分率での体積は、約2%であり、したがって分子状水素の体積%は、約98%である。
【0046】
2400℃の温度で、原子状水素の百分率での体積は、約10%であり、したがって分子状水素の体積%は、約90%である。厳密な意味で、原子状水素の形成は、2000℃未満の温度では十分には実現不可能である。2000℃〜2800℃の温度で、原子状水素の形成は、実現可能であるが、しかし、不所望にも少量で実現可能である。第3表中に記載された結果は、3000℃以上の温度が原子状水素の好ましい形成のために必要であることを示す。第3表中には示されていないけれども、4000℃を上廻る温度で、等式(III)の平衡は、右側に実質的にシフトする(即ち、実質的に全部の分子状水素が原子状水素に変換される)。
【0047】
イオン性水素の形成は、次の一般的な等式(IV)によって表わされる。
【0048】
【化4】
【0049】
反応式(III)のギブスのエネルギーの最少化のコンピューターによる分析は、HSC Chemiatry 5.1ソフトウェアを用いて実施され、その結果は、次の第4表中に記載されている。
【0050】
【表4】
【0051】
第4表の結果は、標準のギブスの自由エネルギー値が正であり、全ての温度範囲を上廻って大きな大きさを有する場合に、1000℃〜3600℃の温度範囲を上廻るイオン性水素の形成が熱力学的に有利でないことを示す。第4表中に示されていないけれども、イオン性水素は、約10000℃の温度を下廻ると著量では形成されない。
【0052】
第1表ないし第4表中に記載されているように反応式(I)〜(IV)の熱力学的分析は、五酸化タンタルが原子状水素によって適度に還元されてタンタル金属を形成する温度に関連して著しく異なる指標を提供する。殊に、第2表中に記載されているような反応式(II)の熱力学的分析は、原子状水素による五酸化タンタルの還元が2600℃以下の温度で熱力学的に好ましいことを示す。しかし、第3表中に記載されているような反応式(III)の熱力学的分析は、3000℃以上の温度が十分な量の原子状水素の形成に必要とされることを示す。厳密な意味で、等式(II)および(III)、ならびに第2表および第3表の一緒の熱力学的データを考慮した場合には、原子状水素の化学量論的量による五酸化タンタルの還元(即ち、0.02〜1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で)は、3000℃未満の温度で合理的には実現可能であるとは思われない。
【0053】
3000℃未満の温度での原子状水素の熱力学的に好ましくない形成に対する前記障害は、次のこと:〜の双方を注意深く選択することによって克服することができることが見出された。(i)水素ガス(即ち、分子状水素ガス)が加熱される温度範囲;および(ii)水素ガスと高融点金属酸化物との質量比。実証の目的のために、前記条件の選択は、一次タンタル金属(Ta)を形成させるための五酸化タンタル(Ta2O5)の還元に関連して議論される。
【0054】
次の議論においては、約1900K〜3600Kまたは約2100K〜3600Kの温度範囲が研究された。水素ガスと五酸化タンタルとの次の9つの質量(または重量)比は、前記の温度範囲に亘って研究された:0.1:1.0;0.25:1.0;0.4:1.0;0.7:1.0;1:1.0;1.5:1.0;2.3:1.0;4:1.0;および9:1.0。列挙された質量比は、ギブスのエネルギーの最少化法により、TERRAの名称でB.C. Trusov社, Moscow, Russia、から商業的に入手可能なコンピュータープログラムを用いて分析された。TERRAコンピューターによる分析は、反応体としての五酸化タンタルおよび水素ガスを含む反応系に対して種々の反応成分および生成物の平衡な質量画分を温度の関数としてプロットすることであった。更に、次の副産物の平衡な質量画分もグラフ中に示されている:二酸化タンタル(TaO2);
【0055】
および次の反応式(V)によって示されるような、五酸化タンタルの熱分解により生じる一酸化タンタル(TaO(g))。
【0056】
【化5】
【0057】
五酸化タンタルの還元のための質量画分対温度をプロットしたグラフは、図1〜9に示されている。図1〜9のグラフにおいて、式Ta2O5(c)およびTa(c)は、関連した縮合された種に言及される。図1〜9において、符号"H"は、ガス状の原子状水素に言及される。図1〜9において、下付符号(c)なしの全ての種は、ガス状種である。また、図1〜9においては、0.1MPaの全圧力で2100K〜3200Kの温度範囲に亘っての一次タンタル金属の平衡質量画分の表を含む。
【0058】
0.1:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量(または重量)比で、一次タンタル金属の形成は、比較的僅かである(2900Kの温度で0.049の最大の質量画分値を有する)。図1のグラフおよび表参照。更に、2900Kで、形成されたガス状二酸化タンタル(TaO2)の量は、この温度で形成された一次タンタル金属の最大量と不所望にも実質的に等量である。更に、本明細書中で議論されるように、特に亜酸化物が原子状水素によって還元されない場合には、供給原料の高融点金属酸化物の亜酸化物(例えば、五酸化タンタルの場合にTaOおよびTaO2)の形成は、典型的には望ましくない。
【0059】
0.25:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で形成される一次タンタルのレベルは、0.1:1.0の質量比と比較してよりいっそう大きい(例えば、2900Kの温度で0.097の最大の質量画分を有する)。図2のグラフおよび表参照。しかし、2900Kの温度で、形成されたガス状二酸化タンタルの量は、この温度で形成された一次タンタル金属の最大量と不所望にも実質的に等量である。
【0060】
0.4:1.0、0.7:1.0、1.0:1.0および1.5:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比は、0.1:1.0の質量比と比較して一次タンタル金属のよりいっそう高いレベルを形成する。図3〜6参照。しかし、0.25:1の質量比と同様に観察されるように、ガス状の亜酸化物(例えば、ガス状TaOおよび/またはTaO2)の形成レベルは、この質量比で一次タンタル金属の形成レベルと比較して不所望にも高い。更に、前記の質量比で、一次タンタル金属の最大またはピーク量は、比較的狭い温度範囲に亘って(例えば、1.5:1.0の質量比の場合に100Kの温度範囲に亘って、図6参照)形成される。このような狭い温度範囲を維持することは、実験室条件下では可能であるけれども、プラントの生産レベルでは望ましいこととは言えない。
【0061】
広い温度範囲に亘って一次高融点金属形成の十分に再現可能で実質的に一定のレベルのバランスを提供する、水素ガスと高融点金属酸化物の質量比は、望ましい。更に、特にガス状の亜酸化物が原子状水素によって還元されない場合には、高融点金属酸化物の供給材料(例えば、ガス状TaOおよびTaO2)の形成は、前記の温度範囲に亘って最小であることが望ましい。反応条件のこのようなバランスは、例えば装置の設計およびこれに関連した質量バランスのために、特にプラント(または商業的)生産レベルで望ましい。
【0062】
反応条件(即ち、十分に広い温度範囲およびガス状亜酸化物形成の減少されたかまたは最小のレベルと結合した十分に高い一次タンタル金属形成)のかかる好ましいバランスは、1.5:1.0の過剰量である、水素ガスと五酸化タンタルとの質量比によって提供される。本発明の実施態様において、水素ガスと五酸化タンタルとの質量比は、有利に少なくとも2.3:1.0、よりいっそう有利には少なくとも4.0:1.0である。図7および8参照。2.3:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で、高いレベルの一次タンタル金属形成とガス状亜酸化物(ガス状TaOおよびTaO2)の減少された形成との組合せは、約2200K〜2800Kの温度範囲に亘って達成される(図7)。4.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比は、一次タンタル金属形成の組合せが例えば約2100K〜約2900Kの温度範囲に亘ってガス状の亜酸化物形成の減少されたレベルと対になっている幅広い温度範囲を提供する(図8)。
【0063】
幅広い温度範囲に亘っての一次タンタル金属形成の十分に再現可能で実質的に一定のレベルの特に望ましいバランスは、少なくとも9.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比によって提供される。図9参照。9.0:1.0の質量比で、一次タンタル金属形成の十分な実質的に一定のレベル(約0.08の平衡な質量画分値)は、約1900K〜2700Kの温度範囲に亘って達成される。更に、前記の温度範囲(1900K〜2700K)に亘ってのガス状亜酸化物(ガス状TaOおよびTaO2)の形成は、さらに減少され、最少化される。
【0064】
また、原子状水素での五酸化タンタルの還元は、タンタルの収率の点で評価されることができる。タンタルの収率は、次の等式から計算される。
【0065】
タンタルの収率%={Ta(c)/Ta(供給原料)}×100
【0066】
"Ta(c)"の用語は、形成された縮合タンタル金属の量を表わし、"Ta(供給原料)"は、反応に供給されたタンタルの量を表わし、この場合このタンタルの量は、反応に供給された五酸化タンタル(Ta2O5)の質量から計算される。図10において、温度の関数としての百分率でのタンタルの収率は、9.0:1.0、2.3:1.0および0.1:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比のためにプロットされている。図10に関連して、9.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で、実質的に100%のタンタルの収率は、約2150K〜2750Kの望ましく幅広い温度範囲に亘って達成される。(図10に示されているように)水素ガスと五酸化タンタルとの質量比が増加するにつれて、百分率でのタンタルの収率および、このような収率が増加することが達成される温度範囲の双方が増加することに基づいて、9.0:1,0を上廻る水素ガスと五酸化タンタルとの質量比が十分に幅広い温度範囲の亘って(例えば、2000℃〜3000℃の温度範囲に亘って)実質的に100%のタンタルの収率を生じると思われることが予想される。
【0067】
また、加熱されたガス(水素ガスを含めて)の温度範囲および水素ガスと高融点金属酸化物との質量比は、それぞれ高融点金属酸化物の供給材料が実質的に熱力学的に安定化されているように選択される。本発明の方法において、高融点金属酸化物の供給材料を熱力学的に安定化することは、この供給材料からの当該高融点金属亜酸化物の形成を最少化し、この場合この高融点金属亜酸化物は、原子状水素との接触によって還元されることができない。従って、このような安定化は、高融点金属酸化物の供給材料のよりいっそう完全な還元が本発明の方法で達成されることをさらに良好に保証する。
【0068】
例えば、五酸化タンタルの熱分解は、反応式(V)によって表わされているようにガス状の一酸化物および二酸化物を形成し、これは、次のように再現される。
【0069】
【化6】
【0070】
反応式(V)のための平衡な等式は、次の等式(1)によって表わされる。
【0071】
【化7】
【0072】
等式(1)において、K(v)は、反応式(V)のための平衡な定数であり、それぞれの符号"P"は、当該の部分圧力に言及される。
【0073】
また、次の反応式は、五酸化タンタルの供給材料の熱力学的安定性の分析に関連して重要性を有する。
【0074】
【化8】
【0075】
反応式(VI)のための平衡な等式は、次の等式(2)によって表わされる。
【0076】
【化9】
【0077】
等式(2)において、K(VI)は、反応式(VI)のための平衡な定数であり、それぞれの符号"P"は、当該の部分圧力に言及される。
【0078】
五酸化タンタルが水素ガスの存在下で加熱される(上記式(II)参照)場合には、酸素の部分圧力は、反応式(1)と反応式(2)の双方を満足させなければならない。上記温度で、反応式(1)と反応式(2)の平衡な定数K(V)およびK(VI)は、それぞれ一定のままである。等式(2)の{PH2(g)/PH2O(g)}の比が減少する場合には、等式(2)のO2(g)の部分圧力は、増加し、したがって等式(1)のO2(g)の部分圧力も増加する。等式(1)のO2(g)の部分圧力が増加する場合には、TaO(g)およびTaO2(g)の多重の部分圧力は、減少する。相応して、TaO(g)およびTaO2(g)の多重の部分圧力が減少する場合には、Ta2O5の熱力学的安定性または熱的安定性は、増加し、殊にTa2O5の揮発は、最少化される。
【0079】
特殊な温度で五酸化タンタル供給材料の熱力学的安定化の際の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比の効果は、図6および図9に関連して証明することができる。図6に関連して、1.5:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比および2700Kの温度で、TaO2(g)の質量画分は、約0.06である。図9に関連して、9.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比および2700Kの温度で、TaO2(g)の質量画分は、無視しても構わない(0.01未満である)。水素ガスと五酸化タンタルとの質量比が増加する場合には、TaO2(g)の質量画分は、減少し、したがって五酸化タンタルの熱力学的安定性は、増加する。
【0080】
本発明の方法において、還元される高融点金属酸化物の供給材料は、粒状高融点金属酸化物の形である。高融点金属酸化物粒子は、球面形状、細長い球面形状、不規則な形状(例えば、鋭角を有する)、板状またはフレーク状の形状、ロッド状の形状、球状の形状およびその組合せから選択された形状を有することができるが、しかし、前記形状に制限されるものではない。粒状高融点金属酸化物の平均粒径は、粒状高融点金属酸化物が自由に流動するように選択される。粒状高融点金属酸化物は、典型的には20μm〜1000μm、よりいっそう典型的には30μm〜800μm、さらに典型的には50μm〜300μmの平均粒径を有する。
【0081】
本発明の方法で形成された一次高融点金属は、実質的に固体の形および連続的な材料の形(例えば、円筒体の形)であることができ、好ましくは、本発明の方法において形成された一次高融点金属は、粒状一次高融点金属の形であり、さらに好ましくは、自由に流動する粒状一次高融点金属である。粒状一次高融点金属製品は、典型的には200nm〜1000μm、よりいっそう典型的には1μm〜800μm、さらに典型的には10μm〜300μmの平均粒径を有する。
【0082】
本発明の方法において、少なくとも幾つかの粒状高融点金属酸化物は、加熱されたガスとの接触によって還元されて一次高融点金属を形成する。好ましくは、粒状高融点金属酸化物の質量に対して粒状高融点金属酸化物の少なくとも50質量%が加熱されたガスとの接触によって還元される。本発明の特に好ましい実施態様において、粒状高融点金属酸化物の質量に対して粒状高融点金属の少なくとも90質量%(例えば、98または100質量%)は、加熱されたガスとの接触によって還元される。ガスまたは供給ガス(水素ガスを含む)は、本発明の方法において、本明細書中に先に記載されたように加熱されたガスが原子状水素を含むように加熱される。好ましくは、加熱されたガスは、実質的にイオン性水素を含有しない。本明細書中および特許請求の範囲内で使用されているように、"実質的にイオン性水素を含有しない"の用語は、加熱されたガスが1×10-10未満(TERRAコンピュータプログラムを用いてギブスのエネルギーの最少化の計算によって定められた)のイオン性水素(H+(g))の質量画分を含有することを意味する。
【0083】
高融点金属酸化物の高融点金属は、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、およびその組合せおよび合金から選択されてよい。好ましくは、高融点金属酸化物は、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、二酸化ニオブおよびその組合せから選択される。
【0084】
加熱されたガスおよび粒状高融点金属酸化物は、適当な手段によって一緒に接触させることができる。例えば、粒状高融点金属酸化物は、加熱されたガスの流れに導入することができるか、または加熱されたガスは、粒状高融点金属酸化物に通過させることができるかまたは粒状高融点金属酸化物上を通過することができる。
【0085】
1つの実施態様において、粒状高融点金属酸化物は、適当な容器(例えば、高融点金属、例えばタンタル、ニオブまたはモリブデンから製造された容器)中に入れられ、加熱されたガスは、容器内で粒状高融点金属酸化物に通過される(および粒状高融点金属酸化物上を通過する。)例えば、実質的に開いた端部、および末端部を覆う微細な金属メッシュを有する末端部を有する円筒状容器を使用することができる。粒状高融点金属酸化物は、円筒状容器中に置かれ、加熱されたガスは、開いた端部を通じて容器中に連続的に導入され、一方で、ガス状の副産物は、微細な金属メッシュを通じて容器から除去される。容器内で形成された一次高融点金属は、固体の連続的な形であることができるか、または好ましくは粒状の形であることができる。更に、製品の一次高融点金属は、容器から取り出すことができ、後処理(例えば、粉砕、圧縮、またはワイヤ、シートまたはフォイルへの二次加工)することができる。
【0086】
高融点金属酸化物と水素ガスを含有する加熱されたガスとの接触は、触媒の存在下で行なうことができる。本明細書中および特許請求の範囲内で使用されるように、高融点金属酸化物と加熱されたガスとの接触に関連する"触媒"の用語は、水素ガス(即ち、分子状水素ガス)からの原子状水素の形成速度を高めることを意味する。任意の理論によって関連付けられることを意図するものではないが、触媒が、水素ガスからの原子状水素の形成速度を、このような形成と関連した活性エネルギーを減少させることによって高めることは、確実なことである。触媒の存在により、原子状水素の形成および高融点金属酸化物の還元に必要とされる温度で還元が達成されてもよいことは、望ましいことである(例えば、2000℃、1500℃または1000℃以下の温度)。
【0087】
触媒は、好ましくはパラジウム、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、その組合せの少なくとも1つの金属およびその合金を含有する粒状触媒である。粒状触媒は、それによって備えられる高い表面積のために好ましい。典型的には、粒状触媒は、触媒1g当たり5〜25m2、例えば触媒1g当たり10m2の表面積を有する。
【0088】
触媒は、好ましくは粒状の形で、床中に置くことができ、この床に水素ガスを含有する加熱されたガスが通過され、それによって原子状水素を含有するガスの流れが形成され、次にこのガスの流れは、高融点金属酸化物と接触される。1つの実施態様において、粒状高融点金属酸化物は、複数の穿孔を有するスクリーン(例えば、タンタルスクリーン)の上面上に置かれる。粒状触媒は、スクリーンの下面と接触して維持される(例えば、複数の穿孔を有する他のスクリーンを用いて、この場合この粒状触媒は、スクリーンと他のスクリーンとの間に介在している)。水素ガスを含有する加熱されたガス(例えば、電気抵抗炉により加熱された)は、粒状触媒に通過され、それによって原子状水素が形成され、この原子状水素は、スクリーンに通過され、スクリーンの上面上に存在する粒状高融点金属酸化物と接触され、それによって高融点金属酸化物が還元され、一次高融点金属酸化物が形成される。このようなスクリーン法は、典型的にはバッチ法として行なわれる。
【0089】
触媒は、本発明による連続的方法において使用されてよい。複数の穿孔を有するスクリーン(例えば、タンタルの)は、連続ベルトの形で備えられている。このベルトは、内部体積を定義する内面を有し、この場合この内部体積中には、粒状触媒が導入され、かつ含まれる。粒状高融点金属酸化物は、ベルトが連続的に移動する際に上側ベルトの外面上に連続的に備えられる(例えば、ローラーで)。同時に、水素ガスを含有する加熱されたガスは、ベルトの下方部分を通過し、ベルトの内部体積内に含まれている粒状触媒を通過し、それによって原子状水素が形成される。更に、原子状水素は、ベルトの上方部分を通過し、上側ベルトの外面上に存在する粒状高融点金属酸化物と接触し、それによって一次高融点金属酸化物が形成される。このベルトは、場合によっては炉内に含まれていてよく、この場合この炉内には、水素ガスが導入される。
【0090】
本発明の1つの実施態様において、加熱されたガスは、プラズマである。プラズマは、不活性ガスおよび反応性ガスを含有する供給ガスから形成されている。よりいっそう詳述すれば、プラズマは、不活性ガスをイオン化することによって形成され(例えば、イオン化アルゴン)、この場合この不活性ガスは、十分に分布され、水素ガスと混合される。本明細書中および特許請求の範囲内で使用されているように、"プラズマ"の用語は、不活性ガス、不活性ガスイオンおよび反応性ガス(例えば、水素ガスおよび原子状水素)、および場合によっては少量の水素イオン(例えば、1×10-10未満の水素イオンの質量画分)を含む加熱されたガスを意味する。粒状高融点金属酸化物は、プラズマと接触され、還元され、一次高融点金属を形成する。
【0091】
不活性ガスおよびプラズマの反応性ガス、およびその相対量は、それぞれ本発明の方法において記載されたガスに関連する前記記載と同様である。例えば、不活性ガスは、第VIII族の希ガスの少なくとも1つから選択されていてよい(例えば、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびその組合せ)。
【0092】
プラズマの反応性ガスは、水素および場合によっては水素以外の他の反応性ガス、例えばアルカン(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタンおよびその組合せ)を含有する。相対量の水素および他の反応性ガスは、本発明の方法において加熱されるガスに関連して本明細書中で先に記載されたような量および範囲から選択することができる。好ましくは、プラズマの反応性ガスは、反応性ガスの全質量に対して水素100質量%を含有する。
【0093】
粒状高融点金属酸化物およびプラズマは、プラズマを粒状高融点金属酸化物に通過させおよび粒状高融点金属酸化物上に通過させることによって共に接触させることができる。例えば、粒状高融点金属酸化物は、容器(例えば、円筒状容器)中に置くことができ、粒状高融点金属酸化物と加熱されたガスとの接触に関連して本明細書中に前記されたように、前記容器にプラズマは、通過される。
【0094】
好ましくは、粒状高融点金属酸化物とプラズマは、粒状高融点金属酸化物をプラズマ(時々、プラズマ炎またはプラズマ流と呼称される)中に導入することによって共に接触させることができる。本明細書の方法において使用されうるプラズマ装置は、当業者に公知のものを含む。本発明の1つの実施態様において、プラズマ装置は、プラズマガン、プラズマ化学的反応器および生成物捕集装置を含む。プラズマ化学的反応器(例えば、細長い円筒体の形で)は、第1の端部および第2の端部を有する。プラズマガンは、プラズマ化学的反応器の第1の端部に固定され、生成物捕集装置は、プラズマ化学的反応器の第2の端部に接続されている。プラズマガンおよび生成物捕集装置は、それぞれプラズマ化学的反応器とガス状で接続されている。プラズマ装置は、好ましくは上端部でプラズマガンおよび下端部で生成物捕集装置と共に垂直方向に配向されており、この場合ガス流と重力との組合せは、生成物の一次高融点金属が捕集装置中に下降して駆出されることを可能にする。選択的に、プラズマ装置は、水平方向に配向されていてよい。
【0095】
供給ガス(例えば、3:1のアルゴンと水素との体積比でアルゴンおよび水素ガスを含有する)は、プラズマガン中に供給され、プラズマは、形成され、プラズマ化学的反応器の少なくとも一部分を通って拡大する。
【0096】
粒状高融点金属酸化物は、プラズマ化学的反応器中に供給され、この反応器中でプラズマと接触される。粒状高融点金属酸化物は、不活性なキャリヤーガス、例えばアルゴンにより反応器中に供給されることができる。場合によっては、付加的な反応性ガス(例えば、水素)は、別々にプラズマ化学的反応器中に供給されてよい。
【0097】
プラズマ化学的反応器中での粒状高融点金属酸化物とプラズマとの接触は、本発明に方法によれば、粒状高融点金属酸化物の還元を生じ、一次高融点金属酸化物を形成する。好ましくは、プラズマ化学的反応器中で形成される一次高融点金属は、粒状の形である。
【0098】
一次高融点金属生成物は、プラズマ化学的反応器から生成物捕集装置中を通過する。生成物捕集装置は、当業者に公知のものから選択されてよい。例えば、生成物捕集装置は、末端の円錐形の捕集部分を有する細長い円筒体の形であることができる。生成物捕集装置は、該装置中への付加的なガス(例えば、キャリヤーガス、例えばアルゴン)の導入および通過のためのポートを有することができ、一次高融点金属の生成物の捕集を簡易化する。付加的に、一次高融点金属が形成中にプラズマ化学的反応器中で溶融される場合には、生成物捕集装置中への付加的な不活性キャリヤーガスの導入は、粒状の形への一次高融点金属の硬化にも役立ちうる。
【0099】
生成物捕集装置は、場合によっては分析機器、例えば質量分析計を有していてよく、該生成物捕集装置を通過するガスの組成を(例えば、連続的に)監視する。1つの実施態様において、生成物捕集装置を通過するガスのリアルタイム分析の結果は、例えばプラズマ化学的反応器中に供給される供給ガスおよび粒状高融点金属酸化物の組成および供給速度を連続的に調節するために使用される。更に、生成物の一次高融点金属は、生成物捕集装置から除去されてよい。
【0100】
本発明の方法は、バッチ法としてかまたは連続的に行なうことができる。少なくとも部分的に粒状高融点金属酸化物で充填されている容器に加熱されたガスまたはプラズマを通過させることは、典型的にはバッチ法として実施される。粒状高融点金属酸化物を加熱されたガスまたはプラズマの流れ中に(例えば、本明細書中に前記されたようなプラズマ装置を用いて)導入することは、典型的には連続的方法として行なわれる。
【0101】
本発明の方法は、減圧、大気圧または高められた温度の条件下で行なうことができる。例えば、減圧は、プラズマ装置の生成物捕集装置の少なくとも一部分中で提供されてよい。典型的には、本発明の方法は、実質的に大気圧の条件下で行なわれる。殊に、加熱されたガス(またはプラズマ)と粒状高融点金属酸化物との接触は、好ましくは大気圧(例えば、周囲の大気圧)の条件下で行なわれる。
【0102】
また、本発明の方法を少なくとも大気圧の条件下で行なうことは、高融点金属酸化物(例えば、五酸化タンタル)を安定化するのに役立つ。Le Chatelier's Principleに基づいて本明細書中に前記された反応式(V)および等式(1)に関連して、反応(V)の平衡は、全部の圧力が増加する場合には、左側(五酸化タンタル側)にシフトする。
【0103】
本発明の1つの実施態様において、本方法は、粒状五酸化タンタルからの一次タンタル金属の製造を含む。一次タンタル金属の形成は、図1〜9に関連して本明細書中で先に議論された。粒状五酸化タンタルと接触しているガスは、1900K〜2900Kの温度に加熱される。
【0104】
加熱されたガスの水素ガスおよび加熱されたガスと接触された粒状五酸化タンタルが1.5:1を上廻る水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比を有する。好ましくは、水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、2.3:1以上である。好ましくは、水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、4.0:1以上である。特に好ましい実施態様において、水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、9.0:1以上である。水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比の上方範囲は、典型的には15:1以下、よりいっそう典型的には、10:1以下である。水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、列挙された値を含めて(別記しない限り)前記の上方値と下方値との任意の組合せの範囲内であることができる。例えば、水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、1.5:1を上廻り15:1まで、好ましくは2.3:1〜10:1、よりいっそう好ましくは4.0:1〜10:1、さらによりいっそう好ましくは9:1〜15:1、または9:1〜11:1、または9:1〜10:1の値の範囲に及ぶことができる。
【0105】
水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比が、9:1以上である場合には、粒状五酸化タンタルは、有利に1900K〜2700Kの温度で加熱されたガスと接触される。
【0106】
一次タンタル金属は、本発明の前記方法の記載によれば、粒状五酸化タンタルとプラズマとを接触させることによって製造することができる。
【0107】
粒状五酸化タンタルは、商業的に入手可能なグレードから選択されることができる。製品の一次タンタル金属の純度を改善するために、実質的に純粋な粒状五酸化タンタルを使用することは、好ましい。本発明の1つの実施態様において、粒状五酸化タンタルは、実質的に純粋である。実質的に純粋な五酸化タンタルは、典型的には、炭素、ニオブ、珪素、タングステン、アルミニウムおよび鉄を50ppm未満の全体量で含有する。本発明の殊に好ましい実施態様において、実質的に純粋な粒状五酸化タンタルは、10ppm未満の炭素含量を有する。
【0108】
本発明の実施態様において、一次ニオブ金属は、五酸化ニオブ(Nb2O5)および/または二酸化ニオブ(NbO2)から製造される。水素ガスと五酸化ニオブとの質量比は、2000K〜3800Kの温度でギブスのエネルギーの最少化方法によりTERRAの名称でB.G. Truscov社, Russiaから商業的に入手可能なコンピュータプログラムを用いて研究された。水素ガスと五酸化ニオブとの次の質量比が研究された:2.3:1.0;4.0:1.0および9.0:1.0。図11、12および13参照。
【0109】
また、図11〜13は、温度の関数として形成された一次ニオブ金属の質量画分の表を含み、この場合には、それぞれのグラフの一部分が記載されている。図11〜13において、挿入された符号"(c)"は、縮合された種と同一である(例えば、Nb(c)は、縮合されたニオブを意味する)。更に、図11〜13において、下付符号(c)なしの全ての種は、ガス状種である。
【0110】
本発明の方法によれば、実質的に全ての五酸化ニオブおよび/または二酸化ニオブを還元し、一次ニオブ金属を形成させることは、好ましい。しかし、一次ニオブ金属と一酸化ニオブとの組合せが商業的に有用である場合には、一酸化ニオブの副産物の形成も望ましい。
【0111】
2.3:1.0の水素ガスと五酸化ニオブとの質量比で、一次ニオブ金属の形成は、比較的狭い温度範囲(2600K〜2700K)を越えてピークに達する。更に、一次ニオブは、一次ニオブ金属と同時に形成される。図11参照。
【0112】
4.0:1.0の水素ガスと五酸化ニオブとの質量比で、一次ニオブ金属の形成は、2300Kの温度でピークに達し、この温度から温度は着実に降下する。一酸化ニオブは、同時に一次ニオブ金属が前記条件下で形成される間、下方の温度範囲および上方の温度範囲の双方で形成される。4.0:1.0の水素ガスと五酸化ニオブとの質量比で、一次ニオブ金属の形成は、有利に2300K〜2600Kの温度範囲を越えて実施される。図12参照。
【0113】
幅広い温度範囲に亘っての一次タンタル金属形成の十分に再現可能で実質的に一定のレベルの特に望ましいバランスは、少なくとも9.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比によって提供される。図13参照。9.0:1.0の質量比で、一次ニオブ金属形成の十分な実質的に一定のレベル(約0.06〜0.07の平衡な質量画分値を有する)は、約2100K〜2700Kの温度範囲に亘って達成される。更に、前記の温度範囲(2100K〜2700K)に亘っての亜酸化物(殊にNbO)の形成は、実質的に減少され、最少化される。
【0114】
本発明の1つの実施態様において、加熱されたガスの水素ガスおよび加熱されたガスと接触される粒状五酸化ニオブ(一次ニオブ金属を形成するため)は、2.3:1を上廻る水素ガスと粒状五酸化ニオブとの質量比を有する。好ましくは、水素ガスと粒状五酸化ニオブとの質量比は、4.0:1以上である。好ましくは、水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、9.0:1以上である。水素ガスと粒状五酸化ニオブとの質量比の上方範囲は、典型的には15:1以下、よりいっそう典型的には、11:1以下、さらに典型的には10:1である。水素ガスと粒状五酸化ニオブとの質量比は、列挙された値を含めて(別記しない限り)前記の上方値と下方値との任意の組合せの範囲内であることができる。例えば、水素ガスと粒状五酸化ニオブとの質量比は、2.3:1を上廻り15:1まで、好ましくは4.0:1〜11:1、よりいっそう好ましくは9.0:1〜15:1、または9.0:1〜11:1、または9.0:1〜10:1の値の範囲に及ぶことができる。
【0115】
二酸化ニオブ(NbO2)からの一次ニオブ金属の形成は、1900K〜4000Kの温度でギブスのエネルギーの最少化方法によりTERRAの名称でB.G. Truscov社, Russiaから商業的に入手可能なコンピュータプログラムを用いて研究された。水素ガスと二酸化ニオブとの質量比は、9.0:1.0であることが研究された。
【0116】
図14参照。また、図14は、温度の関数として形成された一次ニオブ金属の質量画分の表を含み、この場合には、それぞれのグラフの一部分が記載されている。図11〜13の場合のように、図14において、挿入された符号"(c)"は、縮合された種と同一である(例えば、Nb(c)は、縮合されたニオブを意味する)、下付符号(c)なしの種は、ガス状種である。
【0117】
9.0:1.0の水素ガスと二酸化ニオブとの質量比で、一次ニオブ金属の形成は、2100Kの温度でピークに達し、この温度から温度は、最初緩徐に次に急速に降下する。幅広い温度範囲に亘っての一次タンタル金属形成の十分に再現可能で実質的に一定のレベルの特に望ましいバランスは、少なくとも9.0:1.0の水素ガスと二酸化ニオブとの質量比で達成される。図14参照。9.0:1.0の質量比で、一次ニオブ金属形成の十分な実質的に一定のレベル(約0.07の平衡な質量画分値を有する)は、約2100K〜2500Kの温度範囲に亘って達成される。更に、前記の温度範囲(2100K〜2500K)に亘っての亜酸化物(殊にNbO)の形成は、実質的に減少され、最少化される。
【0118】
本発明の方法において、水素ガスと粒状二酸化ニオブとの質量比の上方範囲は、典型的には15:1以下、よりいっそう典型的には、11:1以下、さらに典型的には10:1以下である。水素ガスと粒状二酸化ニオブとの質量比は、列挙された値を含めて前記の上方値と9:1の比との任意の組合せの範囲内であることができる。例えば、水素ガスと粒状二酸化ニオブとの質量比は、少なくとも9.0:1の値から15:1まで、好ましくは9.0:1〜11:1、よりっそう好ましくは9.0:1〜10:1の範囲内であることができる。
【0119】
粒状五酸化ニオブおよび二酸化ニオブは、それぞれ商業的に入手可能なグレードから独立に選択することができる。製品の一次ニオブ金属の純度を改善するために、実質的に純粋な粒状五酸化ニオブおよび/または二酸化ニオブを使用することは、好ましい。本発明の1つの実施態様において、ニオブの粒状酸化物(即ち、五酸化ニオブおよび/または二酸化ニオブ)は、実質的に純粋である。実質的に純粋な粒状五酸化ニオブおよび/または粒状二酸化ニオブは、典型的には、炭素、タンタル、鉄、珪素、タングステンおよびアルミニウムを50ppm未満の全体量で含有する。本発明の殊に好ましい実施態様において、ニオブの実質的に純粋な粒状酸化物は、10ppm未満の炭素含量を有する。
【0120】
一次ニオブ金属は、本発明によれば、一般に一次高融点金属および殊に一次タンタル金属に関連して本明細書中で先に記載された方法を用いて形成させることができる。例えば、加熱されたガスおよび五酸化ニオブおよび/または二酸化ニオブは、共に加熱されたガス(場合によってはプラズマの形で)を粒状五酸化ニオブに通過させおよび粒状五酸化ニオブ上に通過させることによって接触させることができ、一方で、この粒状五酸化ニオブは、容器(例えば、円筒状容器)内に維持される。また、粒状五酸化ニオブおよび/または二酸化ニオブは、本明細書中の前記記載と同様に、水素ガスを含有するプラズマ中に導入することができ、それによって一次ニオブ金属を形成させることができる。
【0121】
本発明の方法により製造される一次高融点金属(例えば、タンタルおよび/またはニオブ)を含むことができる製品は、電子用コンデンサ、コンピュータグレードの固体電解質、電気通信グレードの固体電解質、電気光学アセンブリおよび超伝導製品を含むが、これに限定されるものではない。殊に、所謂小型コンデンサ(単位容量当たりの高いキャパシタンスと安定した性能特性との組合せを有する)は、本発明の方法により製造される一次高融点金属から二次加工することができる。好ましくは、本発明による製造された一次高融点金属は、粒状一次高融点金属であり、列挙された製品(例えば、コンデンサ)は、粒状一次高融点金属から二次加工される。
【0122】
本発明は、特殊な実施態様の特殊な詳細に関連して記載された。このような詳細は、特許請求の範囲に記載される範囲に限定されることを除外して、本発明の範囲に制限されるものと見なされることを意図する訳ではない。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】0.1:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、図1は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図2】0.25:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、図2は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図3】0.4:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、図3は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図4】0.7:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、図4は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図5】1.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、図5は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図6】図6は、1.5:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、図6は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図7】図7は、2.3:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、図7は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図8】図8は、4.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、図8は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図9】図9は、9.0:1.0の水素ガスと五酸化タンタルとの質量比で一次タンタル金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、図9は、温度の関数としての縮合された一次タンタル金属(Ta(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図10】水素ガスと五酸化タンタルとの3つの別々の質量比のために温度の関数としてのタンタルの収率を百分率でグラフで表わした線図である。
【図11】2.3:1.0の水素ガスと五酸化ニオブとの質量比で一次ニオブ金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、温度の関数としての縮合された一次ニオブ金属(Nb(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図12】4.0:1.0の水素ガスと五酸化ニオブとの質量比で一次ニオブ金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、温度の関数としての縮合された一次ニオブ金属(Nb(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図13】9.0:1.0の水素ガスと五酸化ニオブとの質量比で一次ニオブ金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、温度の関数としての縮合された一次ニオブ金属(Nb(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【図14】9.0:1.0の水素ガスと二酸化ニオブとの質量比で一次ニオブ金属を形成するために温度の関数として質量画分をプロットしてグラフで表わした線図であり、また、温度の関数としての縮合された一次ニオブ金属(Nb(c))の質量画分の表を含み、この場合には、グラフの一部分が記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.次のこと:
(a)反応性ガスからなるガスを加熱し、この場合、この反応性ガスは、水素ガスからなり、それによって1つの温度範囲を有する加熱されたガスを形成すること;および
粒状高融点金属を加熱されたガスと接触させることを含む一次高融点金属の製造法において、
(i)前記の加熱されたガスの温度範囲および(ii)前記の加熱されたガスの水素ガスと前記の粒状高融点金属酸化物の質量比がそれぞれ
加熱されたガスが原子状水素を有し、
高融点金属酸化物が実質的に熱力学的に安定化され、および
高融点金属酸化物が工程(b)で原子状水素によって還元されるように選択され、
それによって一次高融点金属が形成されることを特徴とする、一次高融点金属の製造法。
【請求項2】
粒状高融点金属酸化物少なくとも90質量%が工程(b)で還元され、一次高融点金属が形成される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
加熱されたガスが実質的にイオン性水素を含有しない、請求項1記載の方法。
【請求項4】
加熱されたガスがプラズマであり、この場合このプラズマは、不活性ガスおよび反応性ガスを含有する供給ガスから形成されており、および粒状高融点金属は、工程(b)でプラズマと接触される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
不活性ガスは、元素の周期律表の第VIII族の希ガスおよびその組合せから構成されている群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
粒状高融点金属酸化物は、プラズマ中への粒状高融点金属酸化物の導入によってプラズマと接触される、請求項4記載の方法。
【請求項7】
高融点金属酸化物の金属は、Ta、Nb、Ti、Zr、Hfおよびその組合せから構成されている群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
高融点金属酸化物は、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、二酸化ニオブおよびその組合せから構成されている群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
反応性ガスは、実質的に水素ガス100質量%を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
粒状高融点金属酸化物は、触媒存在下で加熱されたガスと接触される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
触媒は、パラジウム、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、その組合せから構成されている群から選択される1つの金属およびその合金を含有する粒状触媒である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
次のこと:
(a)反応性ガスからなるガスを加熱し、この場合、この反応性ガスは、水素ガスからなり、それによって加熱されたガスを形成すること;および
(b)粒状高融点金属を加熱されたガスと1900K(ケルビン度)〜2900Kの温度で接触させ、それによって粒状五酸化タンタルを還元し、一次タンタル金属を形成させることを含む一次タンタル金属の製造法において、
加熱されたガスの水素ガスおよび加熱されたガスと接触された粒状五酸化タンタルが1.5:1を上廻る水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比を有することを特徴とする、次タンタル金属の製造法。
【請求項13】
水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、少なくとも2.3:1である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、少なくとも4:1である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、少なくとも9:1であり、粒状五酸化タンタルは、1900K〜2700Kの温度で加熱されたガスと接触される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
粒状五酸化タンタル少なくとも98質量%は工程(b)で還元され、一次タンタル金属が形成される、請求項12記載の方法。
【請求項17】
形成された一次タンタル金属は、粒状一次タンタル金属である、請求項12記載の方法。
【請求項18】
加熱されたガスは、プラズマであり、この場合このプラズマは、不活性ガスおよび反応性ガスを含有する供給ガスから形成されており、および粒状五酸化タンタルは、工程(b)でプラズマと接触される、請求項12記載の方法。
【請求項19】
不活性ガスは、元素の周期律表の第VIII族の希ガスおよびその組合せから構成されている群から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
粒状五酸化タンタルは、プラズマ中への粒状五酸化タンタルの導入によってプラズマと接触される、請求項18記載の方法。
【請求項21】
反応性ガスは、実質的に水素ガス100質量%を含有する、請求項12記載の方法。
【請求項22】
五酸化タンタルは、実質的に純粋な五酸化タンタルである、請求項12記載の方法。
【請求項23】
五酸化タンタルは、10ppm未満の炭素含量を有する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
処理は、実質的に大気圧で行なわれる、請求項12記載の方法。
【請求項25】
次のこと:
(a)反応性ガスからなるガスを加熱し、この場合、この反応性ガスは、水素ガスからなり、それによって加熱されたガスを形成すること;および
(b)二酸化ニオブ、五酸化ニオブおよびその組合せから構成される群から選択されたニオブの粒状酸化物を加熱されたガスと2100K〜2700Kの温度で接触させ、それによってニオブの粒状酸化物を還元し、一次ニオブ金属を形成させることを含む一次ニオブ金属の製造法において、
加熱されたガスの水素ガスおよび加熱されたガスと接触されたニオブの粒状酸化物が少なくとも9:1の水素ガスとニオブの粒状酸化物との質量比を有することを特徴とする、一次ニオブ金属の製造法。
【請求項26】
ニオブの粒状酸化物少なくとも90質量%が工程(b)で還元され、一次ニオブ金属が形成される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
形成された一次ニオブ金属は、粒状一次ニオブ金属である、請求項25記載の方法。
【請求項28】
加熱されたガスは、プラズマであり、この場合このプラズマは、不活性ガスおよび反応性ガスを含有する供給ガスから形成されており、およびニオブの粒状酸化物は、工程(b)でプラズマと接触される、請求項25記載の方法。
【請求項29】
不活性ガスは、元素の周期律表の第VIII族の希ガスおよびその組合せから構成されている群から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
ニオブの粒状酸化物は、プラズマ中へのニオブの粒状酸化物の導入によってプラズマと接触される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
反応性ガスは、実質的に水素ガス100質量%を含有する、請求項25記載の方法。
【請求項32】
処理は、実質的に大気圧で行なわれる、請求項25記載の方法。
【請求項33】
ニオブの酸化物は、実質的に純粋な五酸化ニオブである、請求項25記載の方法。
【請求項34】
五酸化タンタルは、10ppm未満の炭素含量を有する、請求項33記載の方法。
【請求項35】
ニオブの粒状酸化物は、粒状二酸化ニオブであり、この粒状二酸化ニオブは、2100K〜2500Kの温度で加熱されたガスと接触され、加熱されたガスの水素ガスおよび加熱されたガスと接触される二酸化ニオブは、少なくとも9:1の水素ガスと粒状二酸化ニオブとの質量比を有する、請求項25記載の方法。
【請求項1】
1.次のこと:
(a)反応性ガスからなるガスを加熱し、この場合、この反応性ガスは、水素ガスからなり、それによって1つの温度範囲を有する加熱されたガスを形成すること;および
粒状高融点金属を加熱されたガスと接触させることを含む一次高融点金属の製造法において、
(i)前記の加熱されたガスの温度範囲および(ii)前記の加熱されたガスの水素ガスと前記の粒状高融点金属酸化物の質量比がそれぞれ
加熱されたガスが原子状水素を有し、
高融点金属酸化物が実質的に熱力学的に安定化され、および
高融点金属酸化物が工程(b)で原子状水素によって還元されるように選択され、
それによって一次高融点金属が形成されることを特徴とする、一次高融点金属の製造法。
【請求項2】
粒状高融点金属酸化物少なくとも90質量%が工程(b)で還元され、一次高融点金属が形成される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
加熱されたガスが実質的にイオン性水素を含有しない、請求項1記載の方法。
【請求項4】
加熱されたガスがプラズマであり、この場合このプラズマは、不活性ガスおよび反応性ガスを含有する供給ガスから形成されており、および粒状高融点金属は、工程(b)でプラズマと接触される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
不活性ガスは、元素の周期律表の第VIII族の希ガスおよびその組合せから構成されている群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
粒状高融点金属酸化物は、プラズマ中への粒状高融点金属酸化物の導入によってプラズマと接触される、請求項4記載の方法。
【請求項7】
高融点金属酸化物の金属は、Ta、Nb、Ti、Zr、Hfおよびその組合せから構成されている群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
高融点金属酸化物は、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、二酸化ニオブおよびその組合せから構成されている群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
反応性ガスは、実質的に水素ガス100質量%を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
粒状高融点金属酸化物は、触媒存在下で加熱されたガスと接触される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
触媒は、パラジウム、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、その組合せから構成されている群から選択される1つの金属およびその合金を含有する粒状触媒である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
次のこと:
(a)反応性ガスからなるガスを加熱し、この場合、この反応性ガスは、水素ガスからなり、それによって加熱されたガスを形成すること;および
(b)粒状高融点金属を加熱されたガスと1900K(ケルビン度)〜2900Kの温度で接触させ、それによって粒状五酸化タンタルを還元し、一次タンタル金属を形成させることを含む一次タンタル金属の製造法において、
加熱されたガスの水素ガスおよび加熱されたガスと接触された粒状五酸化タンタルが1.5:1を上廻る水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比を有することを特徴とする、次タンタル金属の製造法。
【請求項13】
水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、少なくとも2.3:1である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、少なくとも4:1である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
水素ガスと粒状五酸化タンタルとの質量比は、少なくとも9:1であり、粒状五酸化タンタルは、1900K〜2700Kの温度で加熱されたガスと接触される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
粒状五酸化タンタル少なくとも98質量%は工程(b)で還元され、一次タンタル金属が形成される、請求項12記載の方法。
【請求項17】
形成された一次タンタル金属は、粒状一次タンタル金属である、請求項12記載の方法。
【請求項18】
加熱されたガスは、プラズマであり、この場合このプラズマは、不活性ガスおよび反応性ガスを含有する供給ガスから形成されており、および粒状五酸化タンタルは、工程(b)でプラズマと接触される、請求項12記載の方法。
【請求項19】
不活性ガスは、元素の周期律表の第VIII族の希ガスおよびその組合せから構成されている群から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
粒状五酸化タンタルは、プラズマ中への粒状五酸化タンタルの導入によってプラズマと接触される、請求項18記載の方法。
【請求項21】
反応性ガスは、実質的に水素ガス100質量%を含有する、請求項12記載の方法。
【請求項22】
五酸化タンタルは、実質的に純粋な五酸化タンタルである、請求項12記載の方法。
【請求項23】
五酸化タンタルは、10ppm未満の炭素含量を有する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
処理は、実質的に大気圧で行なわれる、請求項12記載の方法。
【請求項25】
次のこと:
(a)反応性ガスからなるガスを加熱し、この場合、この反応性ガスは、水素ガスからなり、それによって加熱されたガスを形成すること;および
(b)二酸化ニオブ、五酸化ニオブおよびその組合せから構成される群から選択されたニオブの粒状酸化物を加熱されたガスと2100K〜2700Kの温度で接触させ、それによってニオブの粒状酸化物を還元し、一次ニオブ金属を形成させることを含む一次ニオブ金属の製造法において、
加熱されたガスの水素ガスおよび加熱されたガスと接触されたニオブの粒状酸化物が少なくとも9:1の水素ガスとニオブの粒状酸化物との質量比を有することを特徴とする、一次ニオブ金属の製造法。
【請求項26】
ニオブの粒状酸化物少なくとも90質量%が工程(b)で還元され、一次ニオブ金属が形成される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
形成された一次ニオブ金属は、粒状一次ニオブ金属である、請求項25記載の方法。
【請求項28】
加熱されたガスは、プラズマであり、この場合このプラズマは、不活性ガスおよび反応性ガスを含有する供給ガスから形成されており、およびニオブの粒状酸化物は、工程(b)でプラズマと接触される、請求項25記載の方法。
【請求項29】
不活性ガスは、元素の周期律表の第VIII族の希ガスおよびその組合せから構成されている群から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
ニオブの粒状酸化物は、プラズマ中へのニオブの粒状酸化物の導入によってプラズマと接触される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
反応性ガスは、実質的に水素ガス100質量%を含有する、請求項25記載の方法。
【請求項32】
処理は、実質的に大気圧で行なわれる、請求項25記載の方法。
【請求項33】
ニオブの酸化物は、実質的に純粋な五酸化ニオブである、請求項25記載の方法。
【請求項34】
五酸化タンタルは、10ppm未満の炭素含量を有する、請求項33記載の方法。
【請求項35】
ニオブの粒状酸化物は、粒状二酸化ニオブであり、この粒状二酸化ニオブは、2100K〜2500Kの温度で加熱されたガスと接触され、加熱されたガスの水素ガスおよび加熱されたガスと接触される二酸化ニオブは、少なくとも9:1の水素ガスと粒状二酸化ニオブとの質量比を有する、請求項25記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−534778(P2008−534778A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503028(P2008−503028)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/009174
【国際公開番号】WO2006/101850
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(503153986)ハー ツェー シュタルク インコーポレイテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck, Inc.
【住所又は居所原語表記】45 Industrial Place, Newton, MA 02461, USA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/009174
【国際公開番号】WO2006/101850
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(503153986)ハー ツェー シュタルク インコーポレイテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck, Inc.
【住所又は居所原語表記】45 Industrial Place, Newton, MA 02461, USA
【Fターム(参考)】
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