説明

一酸化炭素によってフェニルアルキル誘導体をカルボニル化する方法

本発明は、一般式(I)のフェニルアルキルカルボン酸を製造する方法に関し、ここで同一または異なるR1およびR2が互いに独立して、−(C1−C4)−アルキルを表し、Zが水素原子または−(CH2)n−CH3であり(ここで、n=0〜9)、そしてR3が−C(O)−(C1−C4)−アルキル(これはClまたはBrによって置換されているか、または非置換である)、または−C(O)−(C3−C6)−シクロアルキルであり、式(II)の化合物(ここで、XがClまたはBrまたはOHであり、かつR4がR2に定義される通りであり、残りはXと一緒になってC=C二重結合を表す)を濃硫酸、フッ化水素または過酸の存在下、一酸化炭素と反応させ、続いて、水または式CH3−(CH2)n−OH(n=0〜9)のアルコールを添加することを包含する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超酸の存在下、一酸化炭素を用いて式Iのフェニルアルキルカルボン酸誘導体を製造する方法に関する。本発明は、さらに式Xのハロ−[4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル]アルキル−1−オン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
本方法の生成物は、多数の後続生成物を製造するための、例えば、4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル]−1−ヒドロキシブチル]−α,α−ジメチルフェニル酢酸(以下フェキソフェナジンという(US 4 254 129))のような抗アレルギー薬を製造するための、需要の多い化合物である。フェキソフェナジンの製造において中心となる合成ビルディングブロックは、2−[4−(4−クロロブタノイル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸である。
【0003】
2−[4−(4−クロロブタノイル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸の公知の製造方法(EP0703902、WO95/00482、US4254129、WO97/23213、WO97/22344、WO95/00480、WO93/21156、US4254130、WO2003/000658)は、多数の工程を有し、そして後に互いに分離しなければならないp位およびm位の位置異性体を生じさせる。さらに、公知の方法における中間体は、しばしば、カラムクロマトグラフィーによって精製しなければならず、パイロットプラント規模または生産規模の大量合成を複雑にする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
カラムクロマトグラフィーのような高価で不便な精製工程も省く、短時間で、効率的で、かつ異性体を含まない合成によって、上述の不利を回避できることを今や見出した。
【0005】
超酸の存在下、一酸化炭素を用いる式IIの化合物をカルボニル化することによって目的は達成される。このようにして、位置異性体の形成を防止し、そして式(I)の化合物をわずかに2〜4合成工程で高収率および高純度に製造し得る。
【0006】
従って、本発明は、式I:
【化1】

の化合物(ここで、
R1およびR2が同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルであり、
R3が、1)−C(O)−(C1−C4)−アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか、またはClもしくはBrによって一置換される)、または
2)−C(O)−(C3−C6)−シクロアルキルであり、かつ
Zが、水素原子または−(CH2n−CH3(nが整数0、1、2、3、4、5、6、7、8または9である)である)および/または式Iの化合物の塩を得る方法であって、
式II:
【化2】

の化合物(ここで、R1およびR3が各々式Iに定義される通りであり、XがCl、Brまたは−OHであり、かつ
R4が式IのR2基に定義される通りであるか、またはXと一緒になってC=C二重結合である)を、濃硫酸(H2SO4)、フッ化水素(HF)および/または超酸の存在下、一酸化炭素および/または一酸化炭素を放出する化合物と反応させ、次いで
a)水を添加して、式Iの化合物(Zが水素原子である)を得るか、または
b)XがClもしくはBrであるか、またはR4がXと一緒になってC=C二重結合である場合、(C1−C10)−アルキル−OHを添加して、式Iの化合物(Zが−(C1−C10)−アルキルである)を得ることを包含する方法に関する。
【0007】
本発明はまた、
R1およびR2が同時にメチルであり、
R3が、1.−C(O)−プロピル(プロピルがClによって一置換されている)または
2.−C(O)−シクロプロピルであり、そして
Zが、水素原子または−(CH2n−CH3(nは整数の0、1、2または3である)である、
式Iの化合物を得る方法に関する。
【0008】
工程b)の方法において、式Iの化合物(Zが−(CH2n−CH3であり、そしてnが整数0、1、2または3である)を得るためにメタノール、エタノール、1−プロパノールまたは1―ブタノールを添加することが好ましい。
【0009】
本発明はまた、超酸に対して十分に不活性である溶媒の存在下に反応を行う、式Iの化合物を得る方法に関する。
【0010】
本発明はまた、Zが水素原子である式Iの化合物を得る方法に関し、Zが−(C1−C10)−アルキルである式Iの化合物は対応するアルコールおよびカルボン酸に開裂される。
【0011】
本発明はまた、一酸化炭素の存在下、金属カルボニルに変換される添加物の存在下に反応を行う、式Iの化合物を得る方法に関する。
【0012】
用語「(C1−C4)−アルキル」とは、炭素鎖が直鎖または分枝鎖であり、そして1〜4個の炭素原子を含む炭化水素基、すわなち、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルをいう。
【0013】
用語「−(CH2n−CH3(nは整数0、1、2、3、4、5、6、7、8または9である)」または「−(C1−C10)−アルキル」とは、炭素鎖が直鎖または分枝鎖であり、そして1〜10個の炭素原子を含む炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシルをいう。
【0014】
「−(CH2n−CH3」基においてnが0である場合、結果はメチル基である。
【0015】
用語「(C1−C10)−アルキル−OH」とは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノールまたはデカノールのようなアルコールをいう。
【0016】
(C3−C6)−シクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルのような3〜6員の単環から誘導される化合物である。
【0017】
用語「一酸化炭素を放出する化合物」とは、反応条件下、一酸化炭素(CO)を放出する化合物、例えば、ギ酸、無機カチオンもしくは有機カチオンとのギ酸塩、および金属カルボニルをいう。
【0018】
用語「超酸」とは、濃硫酸(Ho=−12)よりも高い酸性度を有する酸をいう。超酸の例としては、過塩素酸、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロメンタンスルホン酸、ペルフルオロブタン−1−スルホン酸のようなプロトン酸、SO3、三塩化アルミニウムもしくは五フッ化アンチモンのようなルイス酸、または共役プロトン酸−ルイス酸複合体(conjugated protic acid−Lewis acid complex)(例えば、硫酸とSO3(発煙硫酸;ポリ硫酸(polysulfuric acid))、硫酸とホウ酸[HB(HSO44]、フルオロスルホン酸と五フッ化アンチモン(マジック酸)、トリフルオロメタンスルホン酸と五フッ化アンチモン、フッ化水素と五フッ化アンチモン(HSbF6)、HFとTaF3、BF3とHF(HBF4、テトラフルオロホウ酸)、H3PO4とBF3、またはフルオロスルホン酸とSO3)、または例えば、HSO3FとHFおよびSbF5、またはHSO3FとSO3およびSbF5の共役複合体が包含される。このような超酸は、例えば、G.A.Olah,G.K.Surya Prakash,「Superacids」,John Wiley&Sons,New York,1985,pages33−51に記載される。超酸の定義は、G.A.Olah,G.K.Surya Prakash,「Superacids」,John Wiley&Sons,New York,1985,pages4〜7に記載され;本明細書中で採用される用語超酸の定義は7頁に見出され、4頁に酸強度Hoの定義が見出される。
【0019】
使用される不活性溶媒は、例えば、液体二酸化硫黄、超臨界二酸化炭素、スルホランおよび4〜12個の炭素原子を有するn−アルカンであり得る。いくつかの超酸については、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、トルエン、クメン、ハロゲン化炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、n−酢酸ブチルおよび他の溶媒もまた使用可能である。
【0020】
用語「添加物」とは、主として、一酸化炭素と接触すると、迅速に金属カルボニルに変換され、そして濃硫酸または超酸に第一に容易に溶解し、第二に容易に解離する化合物をいう。これらの化合物の例としては、酸化銅(I)、酸化銀(I)および硝酸銀が包含される。有用な添加物はまた、COリガンドをカルボカチオンに転移させ、好ましくは、それに続いてCOとの反応によって始めの金属カルボニルを改質し得る安価な金属カルボニルである。このような金属カルボニルの例としては、ペンタカルボニル鉄Fe(CO)5、テトラカルボニル鉄酸二ナトリウム(−2)Na2Fe(CO)4、オクタカルボニル二コバルト(0)Co2(CO)8およびニッケルカルボニルNi(CO)4を包含する。
【0021】
用語「式IIIのシクロプロピルケト誘導体」とは、以下の化合物:
【化3】

をいう。
【0022】
記載された酸は、X基のプロトン化、続くHXの脱離(または、XおよびR4が一緒になってα,β−C=C二重結合となるアルケンの場合、この二重結合のプロトン化)によって、式(A)のカルボカチオンを生成することによって式(II)の反応物質のカルボニル化を可能にする。これらのカルボカチオンは一酸化炭素と反応して、式(B)のアシリウムイオンを形成し、このものから、式(I)のカルボン酸が水との反応により形成されるか、またはカルボン酸(I)の対応するエステルがC1−C10−アルコールとの反応によって形成される。
【化4】

【0023】
強酸の存在下、対応するアルコール、ハロゲン化物またはアルケンを一酸化炭素を用いてカルボニル化することによるカルボン酸の合成は、おおむね公知である。このような反応の概説は、以下に見出すことができる:H.Bahrmann in「New Syntheses with Carbon Monoxide」,E.Falbe Edit.,Springer Verlag New York 1980,ch.5 「Koch Reactions」,page 372−413;
Houben−Weyl「Methoden der Organischen Chemie」[Methods of Organic Chemistry]Georg Thieme Verlag Stuttgart 1985,Volume E5(carboxylic acids and carboxylic acid derivatives),page 315−322;
A.L.Lapidus,,S.D.Pirozhkov「Catalytic synthesis of organic compounds by the carboxylation of unsaturated hydrocarbons and alcohols」,Russian Chemical Reviews 1989,58(2),page 117−137;
「Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis」,L.A.Paquette Edit.,John Wiley New York 1995,Vol.2,Carbon Monoxide,Reactions with Carbocations,page 991。
【0024】
しかし、この反応は、式(A)のα,α−ジアルキルベンジルカルベニウムイオンを介して式(II)の反応物質から式(I)のカルボン酸を合成するために未だ使用されていなかった。一般的に、カチオンカルボニル化でも、または遊離基カルボニル化もしくは遷移金属触媒カルボニル化でもなく、カルボニル化によってα,α−ジアルキルアリール酢酸を製造することは今まで不可能であった。
【0025】
強酸がプロモーターおよび溶媒としても同時に機能するという方法で、反応を行うことができる。この実施形態において、安価にまたは簡単に回収でき、そして一酸化炭素に対して高い溶解能を有する酸が好ましい。特に安価な酸としては、例えば、硫酸、発煙硫酸、硫酸−ホウ酸、BF3−H3PO4複合体およびHF−BF3を包含し、初めの3つが環境的な観点から有利である。トリフルオロメタンスルホン酸またはペルフルオロブタン−1−スルホン酸が比較的高価であるが、これらは水性ワークアップ残留物から簡単な方法で実際上、定量的に回収でき、そして一酸化炭素に対して実質的により高い溶解能を有する。B.L.Booth et al.,J.Chem.Soc.Perkin Trans.I,1979,page 2443によれば、95%トリフルオロメタンスルホン酸1リットルあたり155mlのCOが、27℃および標準気圧で溶解するが、同じ条件下で、95%硫酸1リットルあたり21mlのCOしか溶解しない。CF3SO3H中の7倍高いCO濃度が、カルボカチオン(A)のより高いカルボニル化率をもたらし、そしてより高い酸強度(CF3SO3HについてHo約−14、濃H2SO4についてHo約−12)と共にカルボン酸(I)の改善した収率をもたらす。
【0026】
あるいは、好ましくは、記載された強酸に対して不活性な溶媒中で、反応を行ってもよく、この場合において、強酸はプロモーターとしてのみ使用される。使用される不活性溶媒としては、例えば、液体二酸化硫黄、超臨界二酸化炭素、スルホランおよびn−アルカンを包含し得;いくつかの超酸については、例えば、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、トルエン、クメン、ハロゲン化炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、n−酢酸ブチルおよび他の溶媒もまた使用可能である。あるいは、液体反応物質(II)の場合には、溶媒を用いずに、固体反応物質(II)の場合には、懸濁液中で、反応を行ってもよい。液体反応物質(II)における反応が好ましい実施形態である。
【0027】
さらなる実施形態において、カルボニル化反応をオートクレーブ中で行い、このオートクレーブの撹拌器は、好ましくは液相へのガス相(一酸化炭素)の効率的な導入を確保する(例えば、スパージング撹拌器(sparging stirrer))。さらに、このオートクレーブはCO圧の測定を可能にするデバイスを備えている。場合によって、好ましくは不活性溶媒中に溶解された、酸および場合によって添加物を、オートクレーブに初めに装填する。オートクレーブ中の空気を、撹拌しながら窒素に置換し、次いで一酸化炭素を所望の圧力で注入する。次いで、所望の反応温度で、場合によって酸−不活性溶媒中に溶解されている反応物質(II)を、ゆっくりと添加する。中間体(B)または(C)がその最大量に達するまで混合物をさらに撹拌し、次いで、場合によってはガス相を先に減圧した後、0℃近くで冷却しながら過剰量の水または過剰量のC1−〜C10−アルコールのいずれかを初めに装填している第二の反応器に、反応混合物を押し込む(force)。あるいは、少なくとも記載された超酸の一部を使用した後、反応混合物のクエンチ/ワークアップをまた、冷却しながら、過剰量の水または過剰量のC1−〜C10−アルコールを直接、反応オートクレーブに計量して入れることによって行い得る。このワークアップ方法は、水または記載されるアルコールとの超酸の反応が、あまりに強力に発熱しすぎ、超酸に対しては不適切である。記載された添加物は、COと接触すると、金属カルボニルに迅速に変換される化合物であり、金属カルボニルは、濃硫酸または超酸中で第一に容易に溶解され、そして第二に容易に解離される。この方法において、このような添加物は、液相中でのCOの利用可能性を増大させる。好ましい添加物は、例えば、酸化銅(I)(Cu2O)である。これを<80%の硫酸中でCOと接触させると、銅(I)モノカルボニルイオンCu(CO)+に変換する。それに対し、>80%の硫酸および超酸中では、さらなるCOの付加が進行して銅(I)トリカルボニルイオンCu(CO)3+を形成し、CO圧の増加、温度の低下および酸強度の増加によって平衡がCu(CO)3+の方にシフトする。例えば、−10℃の100%の硫酸中での、1atmのCO下でCu+イオン1個あたり2.2のCOリガンドが存在し、7atmのCO下でCu+イオン1個あたり3.0のCOリガンドが存在する[Y.Souma,H.Sano,J.Iyoda J.Org.Chem.1973,38,2016−2020を参照のこと]。カルボカチオン(A)のようなCO受容体の存在下、COはCu(CO)+の再形成を伴って、Cu(CO)3+イオンからカルボカチオンに転移し、アシリウムイオン(B)を形成する。Cu+は、溶液中でガス相から反応カルボカチオンへの「COキャリア」として作用する。強酸(+場合によって不活性溶媒)中COを初めに装填した溶液に反応物質(II)をにゆっくりと計量して入れること(slow metering)は、カルボカチオン(A)の定常状態濃度を最小化するのに役立つ。カルボカチオン(A)の濃度があまりにも高く、アシリウムイオン(B)を得るためのCOと(A)との反応が比較的遅く進行し、そして使用される超酸が、全てのプロトン脱離を抑制するほど十分には強くない場合、一部のカルボカチオン(A)はα位からのプロトン脱離によって式(II)のアルケン(XおよびR4が一緒になってC=C二重結合)に変換する可能性があり、このアルケンは、次いで残りのカルボカチオン(A)とカチオン性重合体化の形式で反応して、オリゴマー、およびポリマー生成物を形成する。計量した反応物質の追加、適切な添加物の使用、および特に効率的な液相へのガス導入を伴う撹拌器の使用は、以下の場合において、所望のカルボン酸(I)の有意な収率の改善をもたらす:
−使用されるプロモーター酸がCOに対して乏しい〜中程度の溶解能しか有しないとき、
−プロモーター酸の酸強度がカルボカチオンの発生に必要とされる最低の酸強度であるとき、
−特に低いCO圧にてカルボニル化を行うとき。
【0028】
高いCO溶解能および高い酸強度Hoを有する特に適切なプロモーター酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸)を使用する場合、約20barのCO圧で、収率を低下させずに、計量した反応物質の追加、添加物および特別な撹拌器の使用の手間を省くことができる。このことは、実施するための、技術的に特に単純な以下の2つの手順をもたらす:
A)場合によって不活性溶媒に溶解された、超酸、濃硫酸、またはフッ化水素を初めにオートクレーブに装填する。オートクレーブ中の空気を撹拌しながら窒素に置換し、次いで一酸化炭素を注入する。混合物を約30分間撹拌し、その結果液相がCOで飽和される。次いで、ガス相を減圧し、反応物質(II)の全量を空気を除いて一度に添加し、そして所望の圧になるまでCOを再び直ちに注入する。クエンチ/ワークアップを上記のように達成する。
B)反応器を、場合によって不活性溶媒に溶解された、反応物質(II)で初めに装填する。第二の反応器において、溶存空気を超酸から追い出し(displace)、そして超酸を場合によって、一酸化炭素(CO)で飽和させる。次いで、初めに反応物質を装填した反応器中に一度で全ての超酸を押し込み、続いて所望の圧になるまでCOを直ちに注入する。クエンチ/ワークアップを上記のように達成する。
【0029】
カルボニル化を1bar〜500bar、好ましくは1〜40bar、より好ましくは5〜25barのCO圧で達成する。カルボニル化における反応温度は、−70℃〜+100℃、好ましくは−10℃〜+50℃、より好ましくは0℃〜+40℃である。反応時間は、一般的に、反応混合物の組成、選択された温度範囲およびCO圧に依存して、5分〜2日間、好ましくは15分〜5時間である。超酸はカルボニル化反応のプロモーターおよび溶媒として同時に機能する場合、超酸1リットルあたり0.1mol〜5.0molの反応物質(II)が使用され、好ましくは0.3mol〜3.0mol、より好ましくは0.4mol〜2.0molで使用される。超酸がプロモーターとしてのみ機能する場合、すなわち、溶媒を用いずに、または好ましくは酸不活性溶媒を使用して反応を行う場合、超酸はより少ない量しか必要とされない。好ましい超酸としては、発煙硫酸、硫酸とホウ酸、HFとBF3、BF3・H3PO4複合体、三塩化アルミニウム、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはペルフルオロブタン−1−スルホン酸、特に、トリフルオロメタンスルホン酸が挙げられる。添加物(「COキャリア」)は、反応物質(II)に基づいて5mol%〜100mol%、好ましくは10〜30mol%、特に約20mol%の量で使用される。
【0030】
本発明はまた、式IIの化合物を、水ならびに濃硫酸もしくはフッ化水素もしくは超酸、またはそれらの混合物の存在下、一酸化炭素または一酸化炭素遊離化合物と反応させる方法に関し、水は式IIの化合物に基づいて、2mol%〜800mol%の量で使用される。
【0031】
トリフルオロメタンスルホン酸中で、式(II)[X=臭素、R1=R2=メチル、R3=4−クロロブチリル]の臭化物をカルボニル化する場合、反応物質(II)の変換の完全性、ならびに達成された収率および所望のカルボン酸(I)の純度は、トリフルオロメタンスルホン酸の含水量に依存する。反応混合物への水の添加に有利である。水は、反応物質(II)に基づいて50mol%〜500mol%、好ましくは90〜300mol%、特に約200mol%の量で添加される。
【0032】
異なる手順によって水をオートクレーブ中に導入し得る。水は初めからオートクレーブ中に存在してもよい。計算された量の水を例えば、トリフルオロメタンスルホン酸に添加し得る。次いで、反応を上に示したように行い得る。より大きいバッチの場合、反応が進行するにつれて、カルボニル化の間に必要とされるまで水を添加しないのが有利である。この場合において、オートクレーブには、乾燥トリフルオロメタンスルホン酸を初めに装填する。不活性化(inertization)、反応温度の確立および反応溶液の注入の後、次いで、計算された量の水含有トリフルオロメタンスルホン酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸一水和物)を計量して入れてもよい。100mol%の水が、カルボニル化混合物中でアシリウムイオン(B)のカルボン酸(I)への変換によって消費される。カルボニル化溶液への水の直接的な添加は、非常に発熱性であり、従って、可能な限り避けるべきである。
【0033】
過剰量の水または過剰量の記載したアルコールと混合したカルボニル化溶液からの式(I)のカルボン酸またはそれらのメチルエステルもしくはエチルエステルは、当業者に公知の方法で単離される。最適な単離方法は、有機溶媒の存在または非存在、置換基R1、R2およびR3の性質、ならびに使用される超酸の性質、存在する場合、添加物の性質に依存する。
【0034】
単離の原理は以下である:
−有機溶媒の非存在下では、冷却および本物のカルボン酸の種結晶を入れることによってサポートされる、水溶液からのカルボン酸(I)の直接的結晶化。
−適切な不混和性有機溶媒(例えば、トルエン、酢酸エチル、MTBエーテルまたはジクロロメタン)を用いて酸性水性混合物を抽出し、次いで、有機抽出物を水で洗浄し、プロモーター酸の残留物を除去し、次いで有機相を濾過し、そして例えば、減圧で溶媒をエバポレートする。
【0035】
トリフルオロメタンスルホン酸中のカルボニル化反応物からのカルボン酸(I)[R1=R2=メチル、R3=4−クロロブチリル]の単離は、実施例に記載される。
【0036】
本発明に従う方法の利点は、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸を使用する場合、純粋で定量的な反応であることである。粗製のカルボン酸(式Iの化合物)でさえその純度は、HPLC分析によると、95〜99面積%より多く、これは粗製の、単離したカルボン酸の1H NMRスペクトルによっても確認された。
【0037】
アグレッシブな液体超酸の処理(特にラージスケールにおける)、カルボニル化反応からの生成物のワークアップおよび超酸の回収は、後者が固体支持体上の固定化形態で使用される場合、単純化され得る。シリカゲル、アルミナまたはベントナイトのような支持体上での固体ポリトリフルオロメタンスルホシロキサン超酸の製造は、すでに先行技術に記載されている。これらの固定化触媒は、ベンゼン誘導体のフリーデル−クラフツアシル化および分枝炭水化物のアルキル化に首尾よく使用されている(温和な反応条件、98%までの収率、活性を消失させることなく繰り返し再使用、反応溶液中へのトリフルオロメタンスルホン酸の「流出(bleeding)」を伴わない):
−R.−J.Hu,B.−G.Li Catalysis Letters 2004,98(1),43−47;
−D.−Q,Zhou,Y.−H.Zhang,M.−Y.Huang,Y.−Y.Jiang Polymers for Advanced Technologies 2003,14(3−5),360−363;
−F.Boisson,L.Gambut,G.Mignani(Rhodia Chimie)WO 2003080710 A1
−D.−Q.Zhou,C.−M.Wang,J.−H.Yang,M.−Y.Huang,Y.−Y.Jiang Polymers for Advanced Technologies 2002,13(3−4),169−172;
−A.de Angelis,C.Flego,P.Ingallina,L.Montanari,M.G.Clerici,C.Carati,C.Perego Catalysis Today 2001,65(2−4),363−371;
−D.−Q.Zhou,J.−H.Yang,G.−M.Dong,M.−Y.Huang,Y.−Y.Jiang Journal of Molecular Catalysis A:Chemical 2000,159(1),85−87;
−F.J.−Y.Chen,C.Le Deore,T.Hamaide,A.M.Guyot,V.Pinjala,J.D.−Y.Ou,US 6060633 A(2000);
−R.L.Mehlberg,G.A.Huff,Jr.(Amoco Corp.,USA)WO 9852887 A1(1998)。
【0038】
従って、本発明はまた、式(II)の反応物質をカスボニル化して式(I)の生成物にするための、固定化トリフルオロメタンスルホン酸または固定化フルオロスルホン酸の使用に関する。トリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO3H)またはフルオロスルホン酸(FSO3H)の適切な支持体は、それらの表面に遊離ヒドロキシル基を有する無機酸化物の固体である。これらは、酸化ケイ素(シリカゲル、シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)または酸化マグネシウム(マグネシア)のような単純な酸化物であってもよいが、シリカ−アルミナ、シリカ−アルミナ−トリア、ゼオライトまたは粘土土壌(clay earth)(粘土)のような複数の酸化物および複合酸化物でもあってもよい。このような無機酸化物の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−マグネシア、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、結晶性アルミノケイ酸塩(A−、X−およびZSM−5ゼオライトのような合成ゼオライト、ホージャサイト(faujasite)およびモルデン沸石のような天然のゼオライトが挙げられる)ならびにまたベントナイトおよびモンモリロナイトのような粘土土壌が包含される。
【0039】
トリフルオロメタンスルホン酸またはフルオロスルホン酸は、固体支持体に化学的に結合されるか、または支持体表面に物理的に強固に吸着されるのみであってもよい。
【0040】
固体支持体への化学的結合は、異なる方法によって達成してもよい。例えば、トリフルオロメタンスルホン酸は、以下に記載されるように、支持体表面上のポリトリフルオロメタンシロキサンの形成によって固定化され得る:
a)R.−J.Hu,B.−G Li,Catalysis Letters 2004,98(1),43−47
b)D.−Q.Zhou,Y.−H.Zhang,M.−Y.Huang,Y.−Y.Jiang,Polymers for Advanced Technologies 2003,14(3−5),360−363
c)D.−Q.Zhou,J.−H.Yang,G.−M.Dong,M.−Y.Huang,Y.−Y,Jiang,Journal of Molecular Catalysis A:Chemical 2000,159,85−87。
【0041】
この方法において、固体支持体、好ましくは非常に低密度で広い表面積の酸化ケイ素(「ヒュームド・シリカ」として公知)またはアルミナを、オルトケイ酸エチル、水、CF3SO3Hおよびエタノールと共に還流下沸騰させ、溶媒を蒸留して除去し、そして固体残留物を約180℃に加熱する。この化学結合の原理は以下のスキームに概説される:
【化5】

【0042】
あるいは、超酸の化学結合はまた、不活性溶媒中減圧で、加熱して脱水した固体支持体を、アルキル金属ハロゲン化物XnMRmと反応させ、そして得られた生成物を超酸と反応させることによって達成することができる。この式において、Xはハロゲンであり、Mは金属、好ましくはアルミニウム、ホウ素、スズまたはマグネシウムであり、そしてRは一価の炭化水素基である。nおよびmはMの原子価必要条件(valence requirement)に対応する整数である。nおよびmの両方は、0であってもよい。前者の場合、化合物はアルキル金属化合物であり、後者の場合は、金属ハロゲン化物である。XnMRmの好ましい定義は、AlCl3、C25AlCl2、(C252AlCl、(C253Al、BCl3、SnCl4およびMgBu2(Buはブチル基である)である。
【0043】
この方法は、以下に記載されている:
d)F.J.Chen,C.LeDeore,T.Hamaide,A.M.Guyot,V.Pinjala,J.D.−Y.Ou,US6,060,633(2000)。
【0044】
この化学結合の原理は、以下のスキームに例として概説される:
【化6】

iBuはイソブチル基を表す。
【0045】
あるいはまた、超酸を、湿気を排除し、沸点の直前で(CF3SO3Hの場合、150℃まで)、24時間、固体支持体、好ましくはシリカゲル60と共に加熱してもよい。
【0046】
この方法は以下に記載されている:
e)A.de Angelis,C.Flego,P.Ingallina,L.Montanari,M.G.Clerici,C.Carati,C.Perego,Catalysis Today 2001,65,363−371。
【0047】
反応条件下、水が完全に脱離し、そして支持体表面上にCF3SO3H H2Oが固定化されることがある。しかし、トリフルオロメタンスルホン酸水和物が物理的結合(強固に吸着されている)のみで高い分散形態で支持体表面上に存在するか否か、またはトリフルオロメタンスルホン酸がビシナルシラノール基と反応し、真の化学結合を形成するか否かを明確にすることはできない。原理は以下のスキームに概説される:
【化7】

【0048】
また、固体支持体(好ましくはシリカゲル)に、超酸(好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸またはフルオロスルホン酸)を室温で含浸させてもよい。
【0049】
この場合、超酸は、支持体表面に物理的にのみ結合(吸着)される。しかし、固定化シリカゲル床で充填されている流動反応器において、吸着は非常に強固であるので、反応器の注入口側から導入する場合、超酸は薄い吸着ゾーン内でのみ注入口の下流に直接結合される。次いで、この吸着ゾーンは、触媒反応ゾーンとして機能する。連続的な反応ストリームが反応器中に注入口側から導入される場合、固定床上のこの触媒超酸ゾーンが、反応物質ストリームの方向に非常にゆっくりと(実質的に、各場合において、触媒ゾーン中で生成物ストリームに変換されるその反応物質ストリームよりもゆっくりと)移動する。この方法は以下に記載されている:
f)R.Mehlberg,R.A.Kretchmer(Amoco Corp.)
WO 98/52887
g)Hommeltoft et al.(Topsoe Haldor AS)US 5,245,100
h)Hommeltoft et al.(Topsoe Haldor AS)US 5,220,095。
【0050】
超酸、特に、トリフルオロメタンスルホン酸の固定化のさらなる改良型は、以下に記載されている:
i)E.Benazzi,J.F.Joly(Institut Francais Du Petrole)EP 0 761 306(1996)
j)F.Chen,A.Guyot,T.Hamaide,C.LeDeore(Exxon)WO 95/26814
k)L.R.Kallenbach,M.M.Johnson(Phillips Petroleum Company)US5,349,116(1994)。
【0051】
以下のスキームに概説されるように、式(II)のカルボニル化反応物質は、式(V)のイソアルキルベンゼンから2〜3工程で製造され得、この式(V)は、市販品からか(R1=R4=CH3、およびまたR1=エチル、R4=メチル)、または市販の式(VI)の塩化アルキルを用いるベンゼンのフリーデル−クラフツアルキル化によるか、もしくはベンゼンへの式(VII)のアルケンの酸触媒求電子付加による単純な方法のいずれかで得られる。
【化8】

【0052】
式(III)の化合物は公知である(WO 95/00480 請求項7、179頁)。式(IV)のアシルハロゲン化物(4−クロロブチリルクロリド)を用いる式(V)のイソアルキルベンゼン(クメン)のフリーデル−クラフツアシル化の1つの例は、WO 95/00480(実施例1、39頁)に見出され得る。反応は、非常に高いパラ選択性を有し、良好な収率で進行する。(III)の位置異性体の比率は、わずかに0〜0.2%である(参考例1および2も参照のこと)。
【0053】
式(II)(X=Br)の臭化物は公知である(WO 95/00480、請求項7、179頁)。(III)(R1=R2=メチル、R3=4−クロロブチリル)のベンジル臭素化(benzylic bromination)の3つの実施形態は、WO 95/00480(実施例4、47〜49頁)に包含される。「方法A」(47頁)において、四塩化炭素中N−ブロモスクシンイミド(NBS)(1.05当量)と共に、触媒量の過酸化ジベンゾイル(0.13mol%)の存在下、(III)を1時間還流状態で加熱した。「方法B」(48頁)において、四塩化炭素中NBS(1.045当量)と共に、触媒量の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、8.2mol%)の存在下、窒素雰囲気下、発熱性遊離基連鎖反応が始まるまで80℃で(III)を加熱した。還流状態にて30分後、追加のNBS(0.025当量)を添加し、そして混合物をさらに15分間還流した。「方法C」(48頁)において、(III)のジクロロメタン溶液を、臭素酸ナトリウム(NaBrO3、0.35当量)の水溶液と混合し、そして撹拌しながら10℃にて光照射した。追加の臭素酸ナトリウム水溶液(0.70当量)をゆっくりと滴下して加え、そして混合物をさらに2時間撹拌し、そしてさらに30分間光照射した。しかしながら、本発明者ら自身の経験によれば、3つの実施形態全てが予備生産に不適切である。3つのケース全てにおいて、所望のベンジル臭化物(benzylic bromide)が反応混合物の主な成分として形成されるが、反応物質の変換は不完全であり、そして3つの異なる臭素化生成物が最初に形成された。熱に不安定であり(加熱過程においてHBrが除去される)、そしてまた容易に加水分解する(水と反応することによってベンジルのアルコール(benzylic alcohol)およびアルケンを形成する;以下参照のこと)ので、この混合物から標的生成物は満足のいく純度で、例えば、結晶化、抽出、減圧蒸留またはクロマトグラフィーによって取り出すことはできない。
【0054】
従って、本発明は、迅速な反応、反応物質の定量的変換および標的生成物の純粋な形成を特徴とする3つの新規な方法に関する(実施例1A、1Bおよび2を参照のこと)。
【0055】
従って、本発明は、さらに、式VIII:
【化9】

の臭化物(ここで、Yは水素原子、塩素原子または臭素原子であり、かつR1およびR4は同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルである)を得る方法であって、
式III:
【化10】

の化合物をN−ブロモスクシンイミドまたは1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインの存在下光照射し、同時にそれを加熱することを包含する方法に関する。
【0056】
Yが塩素原子であり、かつR1およびR4が各々メチルである、式IIIの化合物を使用することが好ましい。
【0057】
この方法において、化学的な遊離基連鎖反応開始剤の使用は必要ではなく、遊離基連鎖反応の開始が光照射によって達成され、反応物質(III、R1=R4=メチル、R3=CO(CH23−Y)は定量的に変換され、そして式(VIII)の生成物が良好な純度で形成される(GCおよび1H NMR分析によって92〜98%純度)。反応物質の溶液/NBS試薬の懸濁液(1.02〜1.10当量、好ましくは1.03〜1.07当量)を、不活性非極性溶媒(好ましくは、クロロベンゼン)中で太陽光ランプを使用して光照射しながら約65℃に加熱することが、第一の方法のさらなる特徴である。発熱性遊離基連鎖反応(exothermic free−radical chain reaction)が開始したらすぐに、ランプを除去し、そして反応温度のさらなる上昇を冷却によって制限する。
【0058】
第二の方法において、反応物質の溶液/1,3−ブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン試薬の懸濁液(0.51〜0.54モル当量、好ましくは0.52〜0.53モル当量)を、不活性非極性溶媒(好ましくは、クロロベンゼン)中で太陽光ランプを使用して光照射しながら約65℃に加熱する。発熱性遊離基連鎖反応が開始したらすぐに、ランプを除去し、そして反応温度のさらなる上昇を冷却によって制限する。
【0059】
本発明は、さらに、式VIII:
【化11】

の臭化物(ここで、Yは水素原子、塩素原子または臭素原子であり、かつR1およびR4は同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルである)を得る方法であって、
式III:
【化12】

の化合物を、水相が臭素塩を含み、そして第二相が水に不溶性かまたはわずかにしか溶けない液体からなる水性二相性混合物中で光照射することを包含する方法に関する。
【0060】
水性臭化水素酸を計量して水相に入れることもまた可能である。さらに、二相性混合物はまた、例えば、撹拌によって、効率的に混合されてもよい。均化(comproportionation)によってインサイチュで形成されたBr2は、これらの条件下、塩化メチレン相に連続的に抽出され、反応物質(III)のベンジル臭素化をもたらす臭素基に、光照射によって解離される。臭化物(VIII)を合成するためのこの第三の方法は、高収率および高純度で生成物を与え、そして中間体の燃焼から生ずるさらなる費用を発生させないので、ラージスケールで有利である。
【0061】
Yが塩素原子であり、かつR1およびR4が各々メチルである、式IIIの化合物を使用することが好ましい。
【0062】
適切なランプは、Br2を臭素基に解離するのに適した周波数を有する光を放つべきで
ある。適切な光は、例えば、低圧水銀灯(例えば、Original Hanau TQ150)によって放たれるような可視光線〜紫外線の範囲である。場合によって、Br−Br結合を切断させるのに必要ないくぶん低周波な光画分を通すが、反応生成物(VIII)のベンジル炭素原子と臭素原子との間の結合の切断をもたらし得るいくぶん高周波な光画分を通さないフィルターを使用することが可能である。
【0063】
適切な臭素塩は、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸バリウム、好ましくは臭素酸ナトリウムである。
【0064】
水に不溶性であるか、またはわずかにしか溶けない適切な液体は、例えば、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、種々のフリゲン(frigens)、クロロベンゼン、フルオロベンゼンまたはα,α,α−トリフルオロトルエンが包含される。ジクロロメタンが好ましい。式(III)の反応物質および生成物[式(VIII)の臭化物]もまた、水に不溶性であるか、またはわずかにしか溶けず、そしてしばしば0〜50℃の範囲の低い融点を有しており、溶媒の使用を最小限にして反応を行うこと(すなわち、最大量の空時収量)に関心があるからその反応物質自体もまた適切な液体としての機能を有し得る。この場合には、反応物質を液化するのに必要な溶媒の最小量のみを添加するか、または有機溶媒を用いずに操作を完全に達成し、そして反応物質がまさに溶融形態(液相として)として存在することになるように反応温度を選択する。
【0065】
適切な液体の溶解度は、20℃にて水1リットルあたり50g未満である。臭素酸ナトリウムの量は、水1リットルあたり1.0mol〜10.0molのNaBrO3、好ましくは水1リットルあたり2.7mol〜約7.5molのNaBrO3、より好ましくは水1リットルあたり5.0〜7.5molのNaBrO3である。これらのデータは、開始時から装填される初めの水の量に関し、水性臭化水素酸の計量添加過程において添加される水を含まない。約4mol/lの濃度まで臭素酸ナトリウムは水に溶解し、透明溶液を形成する。より高い濃度では、臭素酸ナトリウムはHBrとの均化反応によって消費されてBr2形成するので、反応過程において溶解する懸濁物として存在する。式(III)の反応物質1モルあたり0.3mol〜0.4molの臭素が使用され、好ましくは約0.34molが使用される。
【0066】
用語「水性二相混合物」とは、2つの液体の混合物をいい、第一の液体は水であり、そして第二の液体は水に不溶性であるか、またはわずかにしか溶けない液体である。少量の水の存在下、反応を行う場合、未溶解臭化酸塩は開始時にさらなる固相として存在する。臭素酸塩の消費によって、この固体は反応過程で溶解する。水性二相混合物は、一般的に、これ以上固相/液相の境界を含まない。しかし、低温でおよび式IIIまたはVIIIの化合物が高濃度のとき凝集を生ずることはあり得る。水性二相混合物は、相の良好な分布を確実にするために通例の方法によって撹拌または混合される。
【0067】
臭化水素が水溶液として、好ましくは48%水溶液として添加されるか、またはガス形態であってもよい。式(III)の反応物質1モルあたり1.00mol〜1.20molの量のHBrが添加され、好ましくは約1.15molが添加される。
【0068】
使用される水および水に不溶性であるか、またはわずかにしか溶けない液体の量は、広い範囲内で変動してもよく、そして当業者に容易に決定され得る。
【0069】
反応温度は、−15℃〜+70℃、好ましくは−5℃〜+10℃、より好ましくは−2℃〜+2℃である。
【0070】
0℃の温度では、反応時間は、一般的に10〜60分間である。臭化水素酸の計量添加時間およびまた全体の反応時間は、利用可能な冷却能力、すなわち、反応熱および照射ランプの放射熱が反応容器から取り除かれ得る速度に主に依存する。
【0071】
式(II)(X=Cl)の化合物の塩化物は公知である(WO95/00480 請求項7、179頁)。形成の1つの方法が(WO95/00480(実施例4、方法D、49頁)に記載される。この方法において、HClガスを67質量%の式(VIII)(Y=Cl)のベンジル臭化物および18質量%の対応するアルケンの混合物溶液に通して70分間泡立たせ、そしてベンジル臭化物(X=Br)およびベンジル塩化物(benzylic chloride)(X=Cl)の3:1の混合物を得た。
【0072】
本発明はさらに、製造に有用な方法で、式(IX)の塩化物を製造する方法を提供する。
【0073】
従って、本発明は、さらに式IX:
【化13】

の塩化物(ここで、Yは水素原子、塩素原子または臭素原子であり、かつR1およびR4は同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルである)を得る方法であって、
式III:
【化14】

の化合物(ここで、Yは水素原子、塩素原子または臭素原子であり、かつR1およびR4は同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルである)を反応させて、式IIIa:
【化15】

のシクロプロピルケト誘導体を得、次いでそれを塩化スルフリルまたは次亜塩素酸tert−ブチルでベンジル位において遊離基的に塩素化し、最後に式IXの化合物に変換することを包含する方法に関する。
【0074】
Yが塩素原子であり、かつR1およびR4が各々メチルである、式IIIの化合物を使用することが好ましい。
【0075】
これらの方法において、式(III)(R1=R2=メチル、R3=CO(CH23−Y)の反応物質を、無機塩基(好ましくは水酸化ナトリウム水溶液)のような塩基の作用下、中間体として式IIIaのシクロプロピルケト化合物に変換する。次いで、式IIIaの化合物を塩化スルフリルまたは代替として次亜塩素酸tert−ブチルを用いてベンジ
ル位で遊離基的に塩素化する。次いで、得られた塩化ベンジル化合物を酸(例えば、塩化水素)と反応させ、式IXの化合物を得る。反応混合物の光照射によってか、または触媒量の過酸化ジベンゾイルまたはAIBNを用いて連鎖反応(chain)を開始し得る。実施例82〜90は、例として、この合成の改良型の実施を説明する。
【0076】
M.J.Mintz,C.Walling Org.Synth.49,9,(1969)に従って、次亜塩素酸tert−ブチルを、tert−ブタノールの氷酢酸溶液を塩素漂白水溶液(aqueous chlorine bleaching liquor)に滴下して添加することによって得る。クメンの塩化スルフリルを用いるベンジル遊離基的塩素化は、M.S.Kharasch,H.C.Brown J.Am.Chem.Soc.1939,61,2142−2150;G.A.Russell,H.C.Brown J.Am.Chem.Soc.1955,77,4031−4035に記載されている。
【0077】
式(II)(XおよびR4が一緒になって、C=C二重結合を形成する)のアルケンは公知である(WO 95/00480 請求項11、181頁)。製造方法はWO 95/00480のスキームC(50頁)に概説される(実施例54をまた参照のこと)。
【0078】
本発明のさらなる局面は、式X:
【化16】

の化合物(ここで、Yは水素原子、塩素原子または臭素原子であり、かつR1およびR5は同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルである)に関する。
【0079】
本発明は、さらに、Yが塩素原子であり、かつR1およびR5が各々メチルである式Xの化合物に関する。
【0080】
本発明は、さらに、式Xの化合物を得る方法であって、
a)式III:
【化17】

の化合物(ここで、Yは水素原子、塩素原子または臭素原子であり、かつR1およびR4は同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルである)を酢酸コバルト(II)四水和物およびN−ヒドロキシフタルイミドの存在下、酸素と反応させるか、または
b)式XI:
【化18】

の化合物(ここで、Yが水素原子、塩素原子または臭素原子であり、Xが塩素原子または臭素原子であり、R1およびR4が同じかまたは異なり、かつ各々独立して、−(C1−C4)−アルキルであるか、またはR4とXが一緒になってC=C二重結合である)を水と反応させることを包含する方法に関する。
【0081】
式(II)(X=OH)のベンジルのアルコールは新規である。上記のスキームに従って、これらは式(III)の化合物を直接的にベンジル遊離基的に酸化することによって製造され得、この場合において、使用される酸化剤は、標準圧の酸素であり、使用される触媒は酢酸コバルト(II)四水和物およびN−ヒドロキシフタルイミドである(実施例27をまた参照のこと)。
【0082】
同じ方法によるクメンの密接に関連したベンジル酸化は、F.Minisci et al.,Proc.Res.& Dev.2004,8,163−168によって記載されている。あるいは、式(II)(X=OH)のアルコールはまた、式(II)(X=Br)の臭化物から加水分解的に(hydrolytically)製造され得る(実施例28をまた参照のこと)。式(II)(X=OH)のアルコールはまた、式(II)(X=Cl)の塩化物から、直接的な加水分解によってまたは中間体としてアルケンを介して同様に得ることができる。
【0083】
実施例を参照にして以下に本発明を詳細に説明する。最終生成物は、一般的に1H NMR(400MHz、CDCl3またはDMSO−d6中)によって決定される。温度データは摂氏度であり、RTとは室温(22℃〜26℃)を意味し、minとは分を意味する。使用される略語は、説明されるか、または通常の慣習に対応する。カルボニル化スクリーニング実験を、8つの2mlステンレス鋼オートクレーブからなる反応器ブロック中で行った。1ブロック8つのミニオートクレーブを、以下の実施例中でA1〜A8と呼ぶ。これらのミニオートクレーブの各々は、十字の9×9mmの磁気撹拌棒が装備された。ガス相および液相からの空気の置換(「パージング(purging)」)が完全に自動化された様式で達成され、ソフトウェアによって制御された。この過程において、CO反応ガスをその都度5barで3回注入し、次いで、オートクレーブをその都度わずかに真空にした(約0.5bar)。スパージング撹拌器を備えるHasteloyで作った500mlのBuechiオートクレーブ中で、製造用のカルボニル化実験を行った。スパージング撹拌器を1000回転/分の回転速度に調節した。
【0084】
参考例1:
イソプロピルベンゼン(クメン)からの4−クロロ−1−(4−イソプロピルフェニル)ブタン−1−オン(式III、R1=R2=メチル、R3=4−クロロブチリル)の合成
機械的ブレード撹拌器を備える2Lの4つ口フラスコに、初めにN2雰囲気下、塩化アルミニウム(166.70g、1.25mol)およびジクロロメタン(605.14g、455ml)を装填した。4−クロロブチリルクロリド(176.33g、139.9ml、1.25mol)を+10℃の内部温度で30分以内でこの懸濁液に計量して入れた。続いて、クメン(142.73g、166ml、1.187mol)を10℃にて40分以内で滴下して加えた。この過程において、HClガスが流出した。混合物を+10℃にてさらに45分間撹拌した。早ければ5分後、変換が完了した。黄色の反応溶液を90分以内で氷水(1000g)中に計量して入れた。混合物を0〜+5℃にてさらに30分間撹拌した。90分間さらに撹拌し続ける間、混合物をRTに温めた。相を分離した。水相をRTにて2回またはそれ以上、毎回ジクロロメタン(532g、400ml)で抽出した。合わせた有機相を20℃にて1回、5%炭酸水素ナトリウム溶液(412.10g、400ml)で洗浄した。ジクロロメタン相を、回転エバポレーター上30℃の浴槽温度にて、減圧でできる限り濃縮した。黄色油状物(280.3g)を得た。混合物を2:1のイソプロパノール/水混合物(240.60g、280ml)に溶解し、0℃にて冷却し、そして0℃にてさらに2時間撹拌した。わずか約5分後、乳状の不透明なエマルションからの結晶化が0℃にて始まった。結晶性生成物を吸引フィルターを使用して吸引して濾過し、そして2:1のイソプロパノール/水混合物(128.60g、150ml)で洗浄した。固体をN2ブランケット下RTにて減圧で乾燥させた。微細な無色のフレーク状の結晶(HPLC純度98.8%、融点(m.p.)38〜39℃(253.4g、1.128mol、理論値の95.0%))を得た。1H NMR(CDCl3):δ=1.28(d,6H,2×CH3),2.23(qui,2H,CH2),2.98(sept,1H,CH),3.16(t,2H,CH2),3.68(t,2H,CH2),7.32(ほとんどd,2H,arom.−H),7.91(ほとんどd,2H,arom.−H)。MS(Cl+,溶媒(sol.)メタノール(MeOH):m/z=227/225(11%/33%,M+H+),189(10%,M+H+−HCl),162(21%,M+H+ −CH2CH2Cl),147(100%,M+H+−CH2CH2CH2Cl)。IR(Kbr):v=1678(C=O),1600(アリールのC=C),1223cm-1
【0085】
参考例2:
イソプロピルベンゼン(クメン)からの4−クロロ−1−(4−イソプロピルフェニル)ブタン−1−オン(式III、R1=R2=メチル、R3=4−クロロブチリル)の合成
メカニカルブレード撹拌器を備える2Lの4つ口フラスコに、始めにN2雰囲気下、塩化アルミニウム(138.0g、1.03mol)およびジクロロメタン(1000ml)を装填した。4−クロロブチリルクロリド(142.4g、113ml、1.25mol)を+5℃の内部温度で氷で冷却しながら10分以内でこの懸濁液に計量して入れた。続いて、クメン(120.2g、139ml、1.00mol)をほとんど透明な黄色溶液に35分以内で滴下して加えた。HClガスの発生が増大し始めたので、その半分の時間後、氷浴から水浴に換えると、20分後にRTに達した。混合物をさらに30分間撹拌した。黄色の反応溶液を撹拌しながら90分以内で氷水(1000g)に計量して入れた。有機相を除去し、そして水相をジクロロメタン(2×200ml)で繰り返して抽出した。合わせた有機相を、5%炭酸水素ナトリウム溶液(300ml)で洗浄した。ジクロロメタン相を、回転エバポレーター上30℃の浴槽温度にて、減圧でできる限り濃縮し、そして黄色油状物をn−ヘプタン(200ml)に溶解し、そして再び減圧でできる限り濃縮した。残留物をRTにてn−ヘプタン(225ml)にN2雰囲気下で溶解し、透明溶液を得た。溶液をゆっくりと冷却させ、そして種結晶を入れた。約19℃にて、結晶化が始まった。+2℃に到達すると、厚い結晶性スラリーが形成され、これをさらに10分間撹拌し、次いでわずかに予め冷却したガラスフリットに通して吸引しながら濾過した。母液が完全にそれらから洗い流されるまで、結晶を氷冷n−ヘプタンで洗浄した。それらを強い吸引力で濾過して除去し、そして固体を高真空で乾燥させた。母液の濃縮物から無色の結晶(182.8g、GCにより97.7面積%、m.p.38℃)および黄色油状物(37.8g)を得た。n−ヘプタン(40ml)からの油状物の結晶化により、さらに無色の結晶(12.7g、GCにより97.7面積%、m.p.38℃)を得た。全収量:195.5g(870mmol、理論値の87%)。スペクトルは参考例1からの生成物と同一であった。GC システム(FID):30m HP1石英ガラスキャピラリーカラム、0.53mm ID、固定相の層厚さ1.5μm、カラムの流速:He8.5ml/分;温度プログラムは50℃にて開始された、2分間定温、次いで20℃/分で275℃まで;tret生成物=11.3分、異性体11.0分、クメン5.3分。
【0086】
実施例1A:
光照射下での、N−ブロモスクシンイミド(NBS)を用いる高純度の1−[4−(1−ブロモ−1−メチルエチル)フェニル]−4−クロロブタン−1−オン(式VIII、Y=Cl)の合成
撹拌棒、温度計および還流冷却器を備える50mlの三つ口スルホン化フラスコ中で、4−クロロ−1−(4−イソプロピルフェニル)ブタン−1−オン(97.9%,参考例2から)(2.30g、10.0mmol)およびN−ブロモスクシンイミド(99%、ABCR製)(1.93g、10.8mmol)をN2下、四塩化炭素(Merck Darmstadt製)(33ml)に溶解/懸濁した。フラスコを予め80℃に温めておいた油浴中にその高さの約半分まで浸し、そして懸濁液の表面から約10cmの間隔を有してOsram Ultra Vitaluxランプを用いて斜角で上から光照射した。約60℃から、非常に発熱性の遊離基連鎖反応が発泡を伴って起こった。連鎖反応が開始した後、温かい油浴をすぐに下ろした。60℃〜75℃の反応温度が反応熱およびランプの放射熱によって維持された。重いNBSが、懸濁液の表面上に白色固体として浮く軽いスクシンイミドに変換された。5分後、反応物質はすでにサンプルのGC分析によると、>99%程度変換されていた。15分後、ランプのスイッチを切り、そして反応混合物をRTまで冷却させた。スクシンイミドを吸引しながら濾過して除去し、そして少量のCCl4で洗浄した。濾液を冷水(3×11ml)で洗浄し、そして減圧で濃縮した。結晶化が始まるとすぐに、油状の残留物に生成物の種結晶を入れ、そしてさらに高真空で乾燥させた。淡いベージュ色の結晶(2.93g、9.65mmol、理論値の96%)(35.5〜36.5℃の融点)を得た。GC分析(参考例2にあるようなシステム)の過程で、生成物は非常に相当な程度HBrが取り除かれ、そして式IIのアルケンとして検出された(tret11.6分、94.5面積%)。GC分析は純度のおおよその測定に適しているる。臭化物のHPLC分析の過程では、加溶媒分解がかなりの程度進み、主にアルコール(X)(Y=Cl)および式IIのアルケンになった。加溶媒分解の程度および加溶媒分解生成物の正確な組成は、HPLCサンプルの製造および注入前の溶液の寿命に依存した。従って、HPLC分析は、純度のおおよその測定にさえ不適切である。よくても、純度は、1H NMR(CDCl3)で、アルケンの=CH2プロトン(2×s,2×1H,δ=5.21および5.49)、ならびに二臭化物のCH2Brプロトン(2×d,2×1H,δ=4.13および4.37)およびCH3プロトン(s,3H,δ=2.34)の、生成物の増大した積分値を評価することによって測定される。かくして、生成物が97.5mol%純度であり、そして1.6mol%の二臭化物、0.9mol%のアルケンおよび0mol%の反応物質を含むことを測定した。13C NMRにおいて、不純物は見られなかった。1H NMR(CDCl3):δ=2.20(s,6H,2×CH3),2.23(qui,2H,CH2),3.17(t,2H,CH2),3.68(t,2H,CH2),7.71(ほとんどdt,2H,arom.H),7.94(ほとんどdt,2H,arom.H)。13C NMR(CDCl3):d=26.87(CH2),35.33(2×CH3),35.47(CH2CO),44.75(CH2Cl),62.44(c−Br),126.25(2×arom.CH),128.22(2×arom.CH),135.99(arom.C),151.89(arom.C),198.39(C=O)。IR(固体):v=1679(C=O),1604(アリールのC=C),1409,1227,1092,842,776,738,728,612cm-1
【0087】
実施例1B:
光照射しながら、クロロベンゼン中での1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインを用いる1−[4−(1−ブロモ−1−メチルエチル)フェニル]−4−クロロブタン−1−オン(式VIII、Y=Cl)の合成
撹拌棒、温度計および還流冷却器を備える50mlの三つ口スルホン化フラスコ中で、4−クロロ−1−(4−イソプロピルフェニル)ブタン−1−オン(97.9%,参考例2から)(2.30g、10.0mmol)および1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(98%、Aldrich)(1.54g、5.3mmol)をN2下クロロベンゼン(Merck Darmstadt製)(33ml)に溶解/懸濁した。フラスコを予め63℃に温めておいた油浴中にその高さの約半分まで浸し、そして懸濁液の表面から約10cmの間隔を有してOsram Ultra Vitaluxランプを用いて斜角で上から照射した。約58℃から、はっきりとした発熱性遊離基連鎖反応が始まり、これにより約5分以内にさらに69℃までゆっくりと内部温度が上昇し、次いで、再び低下した。全体で約10分の反応時間の後に、油浴を取り除き、そしてランプのスイッチを切った。サンプルのGC分析によると、反応物質は定量的に変換され、そしてアルケンは92面積百分率(面積%)を示した。RTまで冷却した黄色でわずかに不透明な溶液を冷水(3×10ml)で洗浄し、減圧で濃縮し、そして高真空で乾燥させた。油状の残留物に純粋な生成物の種結晶を入れるとすぐに結晶化が始まった。生成物をさらに高真空で乾燥させた。淡いベージュ色の結晶(3.04g、10.0mmol、理論値の100%)(35.5〜36.5℃の融点)を得た。GC分析(参考例2にあるようなシステム)は、95.1面積%のアルケンを示した。実施例1に記載されるように、1H NMRによる分析は、94mol%の所望の生成物、3mol%の二臭化物および3mol%のアルケンを示した。
【0088】
実施例2A:
光照射、ならびに臭素酸ナトリウムおよび臭化水素の均化による臭化物のインサイチュ生成を用いる、二相性塩化メチレン/水混合物中での1−[4−(1−ブロモ−1−メチルエチル)フェニル]−4−クロロブタン−1−オン(式VIII、Y=Cl)の合成
磁気クロス(magnetic cross)、強い冷却器、蠕動ポンプ、PT100熱感知器および窒素ブランケットを備えた同心円筒型の250ml四つ口光照射装置(ガラス)中で、反応を行った。円筒の中心に、低温保持装置(Julabo型FP 40、50:50エタノール/水混合物)によって冷却した液浸(immersed)UVランプ(TQ150、Original Hanau)を配置した。
光照射装置に初めに98%臭素酸ナトリウム(5.21g、33.84mmol)および水(12.5ml)を装填し、そして撹拌しながら溶解した。溶液を窒素で覆った。4−クロロ−1−(4−イソプロピルフェニル)ブタン−1−オン(97.9面積%)(22.79g、99.28mmol)およびジクロロメタン(110ml)を添加した。0℃に予め冷却したUVランプを取り付け、そしてスイッチを入れた。さらに、光照射装置をドライアイス/エタノール混合物を用いて外部から冷却した。内部温度が0℃に達した後、(蠕動ポンプによって)計量した追加の48%臭化水素酸水溶液(19.64g、116.50mol)を入れ始めた。これを23分以内で計量添加した。この過程において、反応溶液は2℃まで温かくなった。蠕動ポンプのラインを水(5ml)で洗い流した。計量した追加のHBrを入れ終えた後、ランプをさらに15分作動させ、反応を完了させた。反応溶液は不透明で無色であった。反応溶液を分液漏斗に移し、そして10分の相分離後、相を分離した。下部相(DCM)は173.3gの重さであった;上部相(水)は32.4gの重さであった。
有機相を水(2×50ml)で洗浄した。有機相(163.7g)を回転エバポレーター上で、30℃の水浴温度にて20mbarの最終バキューム(end vacuum)までで濃縮した。同時に、共沸乾燥をも達成した。これにより、透明なほとんど無色の油状物(29.04g)が得られ、これは完全に結晶化した。
GC分析:0.5面積%の反応物質(tret 14.54分)、98.5面積%の生成物(これらのうち、97.8面積%がアルケン(tret 14.87分)、および0.7面積%が臭化物(tret 15.45分)として検出された)、1.0面積%の二臭化物(tret 16.00分)。29.04g(98.5面積%=100%生成物の28,6g)は理論値の94.9%の収率に対応する。スペクトルは実施例1Aに記載されるデータと一致した。
【0089】
実施例2B:
光照射、ならびに臭素酸ナトリウムおよび臭化水素の均化による臭化物のインサイチュ生成を用いる、初期三相性混合物(塩化メチレン/水および非溶解性固体臭素酸ナトリウム)中での、1−[4−(1−ブロモ−1−メチルエチル)フェニル]−4−クロロブタン−1−オン(式VIII、Y=Cl)の合成
磁気クロス、強い冷却器、蠕動ポンプ、PT100熱感知器および窒素ブランケットを備えた同心円筒型の250ml四つ口光照射装置(ガラス)中で、反応を行った。円筒の中心に、低温保持装置(Lauda RM6、50:50エタノール/水混合物)によって−6〜−10℃に冷却した液浸UVランプ(TQ150、Original Hanau)を配置した。
光照射装置中で、95.5%臭素酸ナトリウム(10.30g、67.9mmol)を水(12.5ml)に懸濁し、そして撹拌しながらある程度溶解させた。懸濁液を窒素で覆った。4−クロロ−1−(4−イソプロピルフェニル)ブタン−1−オン(98.4面積%、GC)(45.40g、202.0mmol)およびジクロロメタン(85ml)を添加するとすぐに、反応物質が溶解した。溶存酸素を除去するために撹拌したエマルション/懸濁液をアルゴンで散布し(sparged)、次いで氷/塩化ナトリウム浴(−15℃)で−7℃に冷却した。UVランプのスイッチをつけ、そして48%臭化水素水溶液(25.5g、225.0mol)を15分以内で蠕動ポンプによって計量添加し、この過程において、反応温度は最大+0.5℃上昇した。滴加が終了した直後、臭素酸ナトリウム固体は完全に消失し、液相はもはや茶色ではなかった。滴加の終了後、光照射をさらに2分間続け、次いでランプのスイッチを切った。液体二相混合物を分液漏斗に移し、相を分離し、そして下部の有機相を水(3×25ml)でかさねて洗浄した。有機相を共沸乾燥しながら、回転エバポレーター上減圧で濃縮した;油状の残留物を高真空で乾燥させた。種結晶を入れることにより、迅速で完全な結晶化が得られた。無色の結晶(61.05g)を得た。
GC分析:2.1面積%の反応物質、95.0面積%の生成物、0.9面積%の二臭化物。
61.05g(95.0面積%=100%生成物の58.0g)は、理論値の94.6%の収率に対応する。スペクトルは実施例1Aに記載されるデータに一致した。
1H NMR積分値の評価は、93.1mol%の所望の臭化物、1.9mol%のオレフィン、2.7mol%の二臭化物および2.3mol%の未変換反応物質であった。
【0090】
実施例3〜10:
添加物として予め形成された銅(I)トリカルボニルイオンの存在下、40℃で、超酸または濃硫酸中での臭化物(VIII、Y=Cl)のカルボニル化による2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(式I、R1=R2=メチル;R3=4−クロロブチリル)の合成
Cu2O(3.0mg、0.0419mmol、反応物質に基づいて22.8mol%)を8つのミニオートクレーブ(A1〜A8)の各々に測り取った。ミニオートクレーブを反応ブロック中に取り付け、そして密閉した。オートクレーブをパージし、そしてアルゴン向流中で、不活性化(inertized)GCバイアルによって、特定の溶媒(0.5ml)(A1〜A6は98%トリフルオロメタンスルホン酸CF3SO3H(Aldrich製)で;A7およびA8は96%スルホン酸(Merck Darmstadt製)を装填した。ミニオートクレーブをガス気密隔壁(gas−tight septum)で各々密閉し、再びパージし、そして一酸化炭素反応ガスを所望の圧になるまで注入した(A1およびA2について5bar、A3およびA4について25bar、A5およびA6について40bar、A7およびA8につい60bar)。ミニオートクレーブを磁気撹拌しながら(200回転/分)、反応ブロックを40℃の反応温度に加熱した。以下の30分のプレ形成段階(preformation phase)において、Cu2OとCOとの反応は、インサイチュで[Cu(CO)3]+添加物を形成した。この間に、反応溶液を調製した。この目的を達成するために、1−[4−(1−ブロモ−1−メチルエチル)フェニル]−4−クロロブタン−1−オン(実施例2から)(1.12g、3.68mmol)を2.5mlの標準フラスコに計量して入れ、そして四塩化炭素(約1.4ml)を用いてマークまで合わせ(make up)、透明溶液を形成した。プレ形成段階が終了した後、各場合において、反応溶液(125μl、0.184 mmol)を、圧密ガラスシリンジによって、各場合において1分以内で手動で8つの各ミニオートクレーブに隔壁を介して注入した(syringe)。反応物質の添加が完了すると、4.0時間の反応時間が開始した。反応の開始時にのみ、意図される圧になるまで正確にCOガスを注入した。カルボニル化の過程において、内部オートクレーブ圧は、CO消費の結果として少々低下する。従って、この方法は定圧ではない。反応時間が終了した後、反応ブロックを25℃に冷却し、そして減圧した。オートクレーブを取り外し、そして混合物を各々冷水(2.0ml)に溶解した。各場合において、不透明な水性混合物を四塩化炭素(2×2.0ml)で抽出した。各場合において、有機(下部)相を定量的に除去し、そして四塩化炭素で正確に10mlにした。このようにして得られた透明溶液(正確に1.0ml)をGCバイアルにピペットで入れた。サンプルをRTにて窒素ストリーム中で乾燥させ、そして得られた残留物をアセトニトリルに溶解した。溶液をHPLC(カラム:Zorbax Eclipse XDB−C8 150×4.6mm;温度:25℃、溶媒A:20mMトリエチルアミン/pH 7.0酢酸緩衝液;溶媒B:100%アセトニトリル;直線勾配プログラム:t=0分A:B=90:10、t=15分A:B=10:90;t=25分A:B=10:90;流速:1ml/分;検出:UV 254nm;注入体積:5.0μl)によって分析した。収率を、外部標準法によって予測されたカルボン酸(tret=7.26分)のピーク面積から計算し、そして測定したピーク面積を較正ラインと比較した。較正ラインを、真正のカルボン酸の定義された量から予め測定した。反応パラメータおよび計算された収率を、表にまとめる:
【表1】

【0091】
実施例11〜18:
添加物として予め形成された銅(I)トリカルボニルイオンの存在下または非存在下、40℃の超酸または濃硫酸中での臭化物(VIII、Y=Cl)のカルボニル化による2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(式I、R1=R2=メチル;R3=4−クロロブチリル)の合成
カルボニル化を実施例3〜10のように行った。オートクレーブA1〜A4について96%硫酸を使用し、オートクレーブA5〜A8について98%トリフルオロメタンスルホン酸を使用した。オートクレーブA1、A2、A5およびA6において、Cu2O添加物を利用しなかった。全ての反応において、反応物質を計量して、反応温度およびCO圧にてCCl4に溶解した。結果を表にまとめる:
【表2】

【0092】
実施例19〜26:
添加物として予め形成された銅(I)トリカルボニルイオンの存在下または非存在下、0℃の超酸中での臭化物(VIII、Y=Cl)のカルボニル化による2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(式I、R1=R2=メチル;R3=4−クロロブチリル)の合成
カルボニル化を実施例3〜10のように行ったが、反応ブロックを0℃に冷却した。オートクレーブA1、A2、A5およびA6において、Cu2O添加物を利用しなかった。全ての反応において、反応物質を計量して0℃およびCO圧にてCCl4に溶解した。結果を表にまとめる:
【表3】

【0093】
全ての反応において、所望のカルボン酸のHPLCピークは、全てのピークの>95面積%を有した。オートクレーブA5およびA6における生成物の場合、所望のカルボン酸のHPLCピークは、全てのピークの>98面積%を有した。オートクレーブA1〜A8からの水中に溶解して貯めたカルボニル化反応のCCl4抽出物を水で洗浄し、有機溶媒を減圧で除去し、そして残留物を高真空で乾燥させた。結晶性固体(250mg、0.93mmol、理論値の64%)を得、これの1H NMRスペクトル、HPLC保持およびUVスペクトルは、真正の基準物質と一致した。1H NMR(CDCl3):δ=1.63(s,6H,2×CH3),2.23(qui,2H,CH2),3.16(t,2H,CH2),3.67(t,2H,CH2),7.50(ほとんどd,2H,arom.H),7.96(ほとんどd,2H,arom.H)。UV(ダイオードアレイスペクトル):λmax=261および207nm。
【0094】
実施例27:
酸素を用いる(III)(R1=R2=メチル、R3=4−クロロブチリル)のベンジル酸化による1−[4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル]4−クロロブタン−1−オン(式X、Y=Cl)の合成
機械的撹拌器[接合部および撹拌シャフトはポリ(モノクロロトリフルオロエチレン)で密閉された]、酸素充填バルーン(天然ラテックス)を取り付けた還流冷却器および内部温度計を備える100mlの三つ口丸底フラスコ中で、4−クロロ−1−(4−イソプロピルフェニル)ブタン−1−オン(97.9%,参考例2から)(4.500g、19.6mmol)、N−ヒドロキシフタルイミド(NHP、97%、Aldrich)(659mg、3.92mmol、0.2当量)および酢酸コバルト(II)四水和物(99%、Merck)(99mg、0.392mmol、0.02当量)を、アセトニトリル(Roth)(25ml)に溶解した。密閉した酸素雰囲気下、撹拌過程において、反応混合物はすぐに茶色に変色した。混合物を油浴中で40℃に加熱した。7時間後、溶液は緑色に変色した。
この時点で、サンプルのHPLC(実施例3〜10のようなシステム)は、NHP(tret3.9分)に加えて、44面積%の予測されたアルコール(tret11.0分)、43面積%の対応するヒドロペルオキシド(tret11.8分)、4面積%の反応物質(tret=15.1分)および7面積%の副生成物(tret17.2分)を示した。40℃にて全体で9時間撹拌した後、加熱および撹拌のスイッチを切り、そして反応混合物を一晩RTにて放置した。その時サンプルのHPLCは、NHPに加えて、59面積%のアルコール、32面積%のヒドロペルオキシド、0.5面積%の反応物質および7面積%の副生成物を示した。溶液を3倍の量の水に注ぎ込み、そしてジクロロメタン(3×30ml)で抽出した。合わせた有機抽出物を水(2×15ml)で洗浄し、そして減圧で濃縮し、そして油状の残留物を高真空で乾燥させた。これを中圧(流速80ml/分)にて、シリカゲル60(Merck、0.04〜0.063mm)(434g)に通して、クロマトグラフィーで分離し、この過程において、ヒドロペルオキシド(100mg、0.4mmol)、次いで、いくつかの混合画分の後、所望のアルコール(2.98g、12.38mmol、理論値の63%)が溶離し、展開は、始めに90:10 n−ヘプタン/酢酸エチル(1.8L)を使用して、次いで85:15(1L)、続いて80:20(1L)を使用して達成した。アルコールのスペクトルおよび物理的特性は、実施例28の生成物に一致した。ヒドロペルオキシドは、以下のスペクトルデータを有した:
1H NMR(CDCl3);δ=1.62(s,2×CH3,6H),2.22(t,2H,CH2),3.17(t,2H,CH2),3.67(t,2H,CH2),7.57(ほとんどd,2H,arom.H),7.75(br s,1H,OOH),7.97(ほとんどd,2H,arom.H)。13C NMR(CDCl3);δ=26.10(2×CH3),26.78(CH2),35.33(2−CO),44.65(CH2Cl),83.79(C−OOH),125.74(2×arom.CH),128.32(2×arom.CH),135.76(arom.C),140.27(arom.C),150.55(C=O)。IR(液体フィルム):v=3600−3200(br,OO−H),1673(C=O),1266,1227,907,730cm-1。MS(ESI+):m/z=259.12(37ClでのM+H+),257.10(35ClでのM+H+)。
【0095】
実施例28:
pH7の緩衝液中での臭化物(式VIII、Y=Cl)の加水分解による1−[4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル]−4−クロロブタン−1−オン(式X;Y=Cl)の合成
pH7の緩衝液をミリポア水(1L)にトリエチルアミン(2.02g、20mmol)を溶解し、次いでpH7.00まで氷酢酸を添加することによって調製した。
2Lの丸底フラスコ中で、1−[4−(1−ブロモ−1−メチルエチル)フェニル]−4−クロロブタン−1−オン(式VIII、Y=Cl)(97.5%、実施例1)(19.1g、61.4mmol)を、窒素下、アセトニトリル(765ml)に溶解し、次いで緩衝溶液(383ml)を添加した。溶液を密閉したフラスコ中で1日RTにて放置し、そして冷蔵庫中+3℃にて2日間放置した。次いで、これを元の体積の3分の1になるまで減圧で濃縮し、ジクロロメタン(1×100mlおよび2×50ml)で抽出した。合わせた抽出物を水(50ml)で洗浄し、そして水相をジクロロメタン(50ml)で逆抽出した(back−extract)。合わせたジクロロメタン相を減圧で濃縮し、そして残留する油状物を高真空で乾燥させた。8:2 n−ヘプタン/酢酸エチル(30ml)+ジクロロメタン(2ml)に溶解した混合物を、シリカゲル60(Merck、0.04〜0.063mm)(1.9kg)を含み、9:1 ヘプタン/酢酸エチル(6L)で予め調整した中圧クロマトグラフィーカラム(直径9.5cm、長さ48cm)に導入した。展開および溶離は、ヘプタン/酢酸エチルの勾配(2L 90:10、6l 80:20、5L 75:25、3L 70:30、1L 60:40、3L 55:45、5L 50:50)で160ml/分の流速で達成した。150mlの画分を回収した。純粋な生成物は画分54〜75に溶出した。溶媒を減圧で除去し、そして残留物を撹拌しながら高真空で乾燥させた。油状物の収率:(11.1g、46.1mmol、理論値の75%)。
HPLC(実施例3〜10のようなシステム)により、アルコールは99.2面積%の純度を有した(tret 10.9分)。GC(参考例2のようなシステム):tret 12.0分。純粋な状態でさえ、アルコールは、わずかに濁った無色の油状物であり、これは冷凍庫中で結晶化するが、加熱過程において室温に近づくと再び溶ける。これをアルゴン下、冷凍庫で保存する。室温での貯蔵過程において、これは数日後、黄色に変色する。1H NMR(CDCl3:δ=1.60(s,6H,2×CH3),2.03(br s,1H,OH),2.22(qui,2H,CH2),3.17(t,2H,CH2),3.67(t,2H,CH2),7.59(ほとんどd,2H,arom.H),7.94(ほとんどd,2H,arom.H)。13C NMR(CDCl3):d=26.81(CH2),31.68(2×CH3),35.29(2−CO),44.67(CH2−Cl),72.54(C−OH),124.76(2×arom.CH),128.12(2×arom.CH),135.21(arom.C),154.62(arom.−CO),198.69(C=O)。
【0096】
実施例29〜36:
添加物として予め形成された銅(I)トリカルボニルイオンの存在下、30℃の超酸中でのアルコール(式X、Y=Cl)のカルボニル化による2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(式I、R1=R2=メチル;R3=4−クロロブチリル)の合成
Cu2O(3.0mg、0.0419mmol、反応物質に基づいて20.1mol%)を8つのミニオートクレーブ(A1〜A8)の各々に計量して入れた。ミニオートクレーブを反応ブロック中に取り付け、そして密閉した。オートクレーブをパージし、そしてアルゴン向流中で、不活性化GCバイアルによって、各場合において、98%トリフルオロメタンスルホン酸CF3SO3H(Aldrich)(0.5ml)を装填した。ミニオートクレーブをガス気密隔壁で各々密閉し、再びパージし、そして一酸化炭素反応ガスを所望の圧になるまで注入した(A1およびA2について5bar、A3およびA4について25bar、A5およびA6について40bar、A7およびA8につい60bar)。ミニオートクレーブを磁気撹拌しながら(200回転/分)、反応ブロックを30℃の反応温度まで加熱した。続く30分のプレ形成段階において、Cu2OとCOとの反応は、インサイチュで[Cu(CO)3]+添加物を形成した。この間に、反応溶液を調製した。この目的を達成するために、1−[4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル]−4−クロロブタン−1−オン(実施例28から)(1.00g、4.15mmol)を2.5mlの標準フラスコに測り取り、そして四塩化炭素(約1.5ml)を用いてマークまで合わせ、透明溶液を形成した。プレ形成段階が終了した後、各場合において、反応溶液(125μl、0.208mmol)を、圧密ガラスシリンジによって、各場合において1分以内で手動で8つの各ミニオートクレーブに隔壁を介して注入した。反応物質の添加後、4.0時間の反応時間が開始した。反応の開始時にのみ、意図される圧になるまで正確にCOガスを注入した。カルボニル化の経過において、内部オートクレーブ圧は、CO消費の結果として少々低下する。従って、実験は定圧ではない。反応時間が終了した後、反応ブロックを25℃に冷却し、そして減圧した。ワークアップおよび分析は実施例3〜10に記載されるように達成した。反応パラメータおよび計算された収率を、表にまとめる:
【表4】

【0097】
実施例37〜44:
添加物の非存在下、40℃の超酸中でのアルコール(式X;Y=Cl)のカルボニル化による2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(式I、R1=R2=メチル;R3=4−クロロブチリル)の合成
カルボニル化を実施例29〜36のように行ったが、40℃にて添加物の非存在下で行った。結果を表に要約する:
【表5】

【0098】
実施例45〜52:
CO圧(87bar)下、40℃の超酸または濃硫酸中でのアルコール(式X、Y=Cl)のカルボニル化による2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(式I、R1=R2=メチル;R3=4−クロロブチリル)の合成
各場合において、Cu2O(3.0mg、0.0419mmol、反応物質に基づいて20.1mol%)をミニオートクレーブA3、A4、A7およびA8に測り取り、そしてミニオートクレーブA1、A2、A5およびA6は、添加物を含まなかった。8つのオートクレーブを反応ブロック中に取り付け、そして密閉した。オートクレーブをパージし、0℃に冷却し、そしてアルゴン向流中で、不活性化GCバイアルによって、特定の溶媒(0.5ml)(A1〜A4については96%硫酸、A5〜A8については98%トリフルオロメタンスルホン酸CF3SO3H)および反応溶液(CCl4中)(125μl、0.208mmol)で充填した。柔軟性がなく自動化した反応順序のために、Cu2O含有混合物のプレ形成を、これらの反応から省いた。ミニオートクレーブを密閉し、再びパージし、そして一酸化炭素反応ガス(87bar)を注入した。ミニオートクレーブを磁気撹拌しながら(200回転/分)、反応ブロックを40℃に加熱した。加熱時間は15分であった。次いで、混合物を40℃にて4時間撹拌した。カルボニル化の過程において、内部オートクレーブ圧は、CO消費の結果として少々低下する。従って、実験は定圧ではない。反応時間が終了した後、反応ブロックを25℃に冷却し、そして減圧した。ワークアップおよび分析は実施例3〜10に記載されるように行った。反応パラメータおよび計算された収率を、表にまとめる:
【表6】

【0099】
実施例53:
実施例29〜52のカルボニル化からの2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸生成物(式I、R1=R2=メチル;R3=4−クロロブチリル)の単離
水に溶解した実施例29〜44および49〜52からのカルボニル化反応の貯めたCCl4抽出物を水で洗浄し、有機溶媒を減圧で除去し、そして残留物を高真空で乾燥させた。結晶性固体(622mg、2.31mmol、理論値の56%)を得、これの1H NMRスペクトル、HPLC保持およびUVスペクトルは、真正の基準物質と一致していた。
【0100】
実施例54:
ベンジル臭化物の脱臭化水素化によるアルケン1−[4−(2−プロペニル)フェニル]−4−クロロブタン−1−オン[式II、R1=メチル、R3=4−クロロブチリル、R4=メチレン]の合成
1−[4−[1−ブロモ−1−メチルエチル)フェニル]−4−クロロブタン−1−オン[式VIII、Y=Cl](97.5%、実施例1)(20.6g、67.8mmol)を、DMF(60ml)中の臭化リチウム(14.8g、170mmol)および炭酸リチウム(7.6g、102mmol)の混合物に添加し、そしてRTにて1日撹拌した。透明溶液が形成されるまで、水を懸濁液に添加した。これをn−ヘプタン(4×50ml)で抽出し、そして合わせたヘプタン抽出物を水(3×50ml)で洗浄した。ヘプタン相を減圧で濃縮し、そして残留物を高真空で乾燥させた(粗生成物(16.6g))。n−ヘプタン/ジエチルエーテル勾配(99:1〜90:10)を用いて、シリカゲル60(Merck、0.04〜0.063mm)(900g)の中圧クロマトグラフィーにより、無色の薄片状結晶(10.7g、48.0mmol、理論値の71%)を得た(m.p.54〜55℃)。1H NMR(CDCl3:δ=2.19(s,3H,CH3),2.22(qui,2H,CH2),3.18(t,2H,CH2),3.69(t,2H,CH2),5.21(s,1H,=CH),5.48(s,1H,=CH),7.55(ほとんどd,2H,arom.H),7.94(ほとんどd,2H,arom.H)。
【0101】
実施例55〜70
追加の定義された量の水の存在下、トリフルオロメタンスルホン酸中での臭化物(VIII、Y=Cl)のカルボニル化による2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(式I、R1=R2=メチル;R3=4−クロロブチリル)の合成
使用したミニオートクレーブ、容器、HPLCボトルおよびシリンジを減圧で60℃の乾燥室で乾燥させた。グローブボックス中で8つのHPLCボトルを、各場合においてCCl4(150μl)に溶解した臭化物(VIII、Y=Cl;98.5%)(75mg)で装填した。8つのガラス容器において、後に反応物質VIII(Y=Cl)に基づいて、それがそれぞれ、4mol%、23mol%、45mol%、90mol%、100mol%、200mol%、500mol%および2000mol%の含水量を有するような正確な量で水をトリフルオロメタンスルホン酸(Central Glass製、純度>99.5質量%、含水量160ppm、反応物質VIII(Y=Cl)に基づいて4mol%の含水量に対応する)に添加した。対応する水の質量%は、以下の表から理解できる。グローブボックス中で、各場合においてこの水性酸(500μl)を窒素下、シリンジにより8つのHPLCバイアルに移した。
【0102】
8つの2mlのミニオートクレーブ(A1〜A8)を有するラックをアルゴンで不活性化し、そして8つのHPLCバイアルからの酸をアルゴンを用いて、そしてアルゴンの流れに逆らって、8つのミニオートクレーブに押し込んだ。−5℃にて、ミニオートクレーブをパージし、次いでCOを注入し、そして0℃の反応温度を確立した。圧は40barに調節した。臭化物のCCl4溶液を圧密ガラスシリンジによって(各溶液について約30秒の添加時間)注入し、次いで20時間反応させた。8つ試験チューブを各々CCl4(5ml)で装填した。ミニオートクレーブを減圧し、そして開けた。ミニオートクレーブの各内容物を、各試験チューブ1つ1つに漏斗によって注いだ。各場合において、冷水(2ml)をさらに導入し、次いでオートクレーブおよび漏斗をCCl4(10ml)でリンスした。相を撹拌し、そして分離させた。各場合において、次いで、有機相(0.5ml)を除去し、そして窒素ストリーム中でエバポレートによって濃縮した。各場合において、残留物を、アセトニトリル(2.5ml)に溶解し、そしてHPLC中1:30の希釈で分析した。収率は検量線を使用してカルボン酸のピーク面積から計算した。
【表7】

【0103】
8つのミニオートクレーブのさらなるラックを使用して、カルボニル化が20時間後に代わって早ければ5時間後に終了することが唯一異なる同一の実験を行った。結果を以下の表にまとめた。不良のために、オートクレーブA5、A7およびA8の収率がここで測定できなかった。
【表8】

【0104】
トリフルオロメタンスルホン酸中での式(VIII)(Y=Cl)の臭化物のカルボニル化において、達成される反応物質(VIII)の変換の完全性、ならびに所望のカルボン酸(I)の収率および純度は、トリフルオロメタンスルホン酸の含水量に非常に依存する。
【0105】
乾燥トリフルオロメタンスルホン酸[含水量160ppm、反応物質(VIII)に基づいて4mol%の含水量に対応する]を、さらに水を追加することなくカルボニル化(0℃、40barのCO)に使用した場合、これでは、反応物質(II)の50%未満の変換しか生じさせなかった。形成されるカルボン酸(I)は16%から19%の収率であり、そして精製されていないカルボニル化溶液のHPLC分析ではきれいな反応を示さなかった。他は同一の反応パラメータ条件下、トリフルオロメタンスルホン酸の含水量の増加に伴って、カルボニル化反応の変換および収率を連続的に増加させ、きれいな反応を得ることが可能であった。以下の表は水の量の関数としての収率をもう一度要約する:
【表9】

【0106】
水100〜200mol%の存在下、反応物質(VIII)の99%までの変換、非常にきれいな反応およびカルボン酸(I)の99%までの収率を得た。500mol%の水の存在下では、収率は87%だけに低下する一方、非常に高い含水量では、カルボニル化反応の完全な失敗を再度もたらした。トリフルオロメタンスルホン酸一水和物の使用におおよそ対応する2000mol%の含水量では、カルボン酸(I)を形成しなかった。
【0107】
実施例71
反応物質に基づいて200mol%の水の存在下、トリフルオロメタンスルホン酸中での臭化物(VIII、Y=Cl)の調製カルボニル化による2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(式I、R1=R2=メチル;R3=4−クロロブチリル)の合成
濃CCl4溶液中での反応物質の計量;炭酸ナトリウム水溶液を用いるカルボニル化反応のワークアップ。
スパージング撹拌器を備える500mlのHasteloy Buchiオートクレーブを、水(1.72ml)を予め添加しているトリフルオロメタンスルホン酸(Central Glass Co.製、99.5%、0.02%水)(100ml)を装填した。従って、酸の含水量は、反応物質[式(VIII)の臭化物]に基づいて200mol%であった。オートクレーブを気密様式で閉め、窒素を注入し、そして減圧し、次いで各3回COを注入し、混合物を激しく撹拌し、そして オートクレーブを再び減圧した。次いで、COを40barまで注入し、撹拌を1000回転/分の回転速度に調節し、そして反応温度を0℃に調節した。HPLCポンプによって、94.9%1−[4−(1−ブロモ−1−メチルエチル)フェニル]−4−クロロブタン−1−オン(15.7g、49.07mmol)の四塩化炭素(19.0ml)溶液を0℃にて3分以内で計量して入れ、次いで、混合物をCO(40bar)下、0℃にてさらに22時間撹拌した。オートクレーブを減圧し、そして内容物(黄色の透明溶液150ml、この表面のCCl4相は除去した)を排出した(discharge)。オートクレーブを撹拌しながらCCl4(150ml)でリンスし、そしてリンスした溶液を廃棄した。
トリフルオロメタンスルホン酸溶液を撹拌しながら15分以内で氷(400g)に滴下して加え、この過程において、反応溶液は脱色し、温度は0℃以下に下がり、そして無色の固体が沈殿した。ジクロロメタン(50ml)を撹拌しながら添加した。下部の淡い黄色の有機相を、上部の無色の水相から分離した(pH0.1)。水相をジクロロメタン(追加の50ml)で抽出した。合わせた有機相(177.37g)を毎回1分間冷水(50ml)で2回洗浄した(最後の洗浄溶液はpH3.7を有した)。有機相を0℃にて氷冷1M炭酸ナトリウム水溶液(50ml)で、次いでもう一度氷冷1M炭酸ナトリウム水溶液(25ml)で抽出した。最後の水性抽出物はpH10.5を有した。合わせた水性抽出物(pH9.4)を窒素を通して泡立たせることによって残りのジクロロメタンを除去し、次いで0〜+5℃(氷冷)にて、30%塩酸(18ml)を用いて撹拌しながら酸性化し、この過程において、カルボン酸は結晶形状で沈殿した。pHは、長時間pH6.7〜6.5を維持した。混合物を氷浴中で0.5時間撹拌した。沈殿物を吸引して濾過し、冷水(50ml)で洗浄し、そしてデシケーター中で、室温にて一晩五酸化リン上高真空で乾燥させた。無色の結晶(12.7g、47.26mmol、理論値の96.3)を得た。カルボン酸のHPLC分析により99.4面積%の純度を得た。
【0108】
実施例72
反応物質に基づいて200mol%の水の存在下、トリフルオロメタンスルホン酸中での臭化物(VIII、Y=Cl)の調製カルボニル化による2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(式I、R1=R2=メチル;R3=4−クロロブチリル)の合成
CH2Cl2溶液への反応物質の計量添加;炭酸ナトリウム水溶液を用いるカルボニル化反応のワークアップ。
スパージング撹拌器を備える500mlのHasteloy Buchiオートクレーブに、水(1.72ml)を予め添加しているトリフルオロメタンスルホン酸(Central Glass Co.製、99.5%、0.02%水)(100ml)を装填した。従って、酸の含水量は、反応物質[式(VIII)の臭化物]に基づいて200mol%であった。オートクレーブを気密様式で閉め、窒素を注入し、そして減圧し、次いで各3回COを注入し、混合物を激しく撹拌し、そして オートクレーブを再び減圧した。次いで、COを40barまで注入し、撹拌を1000回転/分の回転速度に調節し、そして反応温度を0℃に調節した。HPLCポンプによって、94.9%1−[4−(1−ブロモ−1−メチルエチル)フェニル]−4−クロロブタン−1−オン(15.08g、47.13mmol)のジクロロメタン(19.0ml)溶液を0℃にて3分以内で計量して入れ、次いで、混合物をCO(40bar)下、0℃にてさらに22時間撹拌した。オートクレーブを減圧し、そして内容物(黄色の透明溶液150ml)を排出した。オートクレーブを撹拌しながらジクロロメタン(170ml)でリンスし、そしてリンスした溶液を廃棄した。
トリフルオロメタンスルホン酸溶液を実施例71のようにワークアップした。無色の結晶(11.8g、43.91mmol、理論値の93.2%)を得た。カルボン酸のHPLC分析により、98.7面積%の純度を得た。
【0109】
実施例73
炭酸ナトリウム溶液に代わって水酸化ナトリウムを用いる調製カルボニル化混合物のワークアップの選択。pH10の正確なpHコントロール下での1M水酸化ナトリウム溶液に対する2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(式I、R1=R2=メチル;R3=4−クロロブチリル)の安定性
弱塩基条件下でさえ、クロロケト酸(式I、R3=4−クロロブチリル)はシクロプロピルケト酸(式I、R3=シクロプロピル)に容易に変換されることが公知である。クロロケト酸が閉環することなくpH10の正確なpHコントロール下、1M水酸化ナトリウム溶液に抽出でき、炭酸ナトリウム溶液に代わって1M水酸化ナトリウムを用いてカルボニル化溶液をワークアップすることが可能であるか否かを詳細に調査した。
2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(HPLC純度99.4面積%、実施例71からの生成物)(2.71g、10mmol)を、ジクロロメタン(24ml)に溶解した。水(1ml)を添加し、次いで氷浴中で内部温度0〜+5℃にて、混合物を始めは手で、後にシリンジポンプで25分以内で、1M水酸化ナトリウム溶液(10.3ml)でpH10に正確に調整した。pHは長時間7.65に維持され、そして1当量の水酸化ナトリウム水溶液(10.0ml)の添加後、非常に迅速に上昇した。滴定のこの最終段階では、pH10を超えてオーバーシュートしないように水酸化ナトリウム溶液は滴下して加えるべきである。有機相を除去した。水相を窒素を通して泡立たせることによって残りのジクロロメタンを除去し、次いで氷冷しながら0〜+5℃にて30%塩酸溶液(2ml)でpH1に酸性化した。懸濁液をさらに30分間氷浴中で撹拌し、そして固体を吸引しながら濾過し、冷水(5ml)で洗浄し、そして五酸化リン上高真空で乾燥させる。無色の結晶(2.60g、9.67mmol、理論値の96.7%)を得、これはHPLC分析によって99.0面積%の純度を有した。シクロプロピルケト酸の不純物は、0.3面積%の範囲でしか存在せず、ヒドロキシケト酸(式I、R3=4−ヒドロキシブチリル)の不純物は、0.2面積%の範囲でしか存在しなかった。
従って、1M水酸化ナトリウム溶液を用いるカルボニル化溶液のワークアップは可能である。
【0110】
実施例74〜81
代替の超酸中での臭化物(VIII、Y=Cl)のカルボニル化による2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(式I、R1=R2=メチル;R3=4−クロロブチリル)の合成
実験手順は、実施例55〜70に類似した。反応時間は4時間であった。固体としての三塩化アルミニウムを、反応器A7およびA8に移し、次いでジクロロメタンを添加し、その後、反応器A8に追加的に水(4.5μl)を添加した。反応器A5およびA6に使用される市販の三フッ化ホウ素−リン酸複合体(CAS No.:13669−76−6)は、b.p.147℃およびd=1.840を有した。水(4.5μl)を反応器A6に追加的に添加した。
【表10】

【0111】
実施例82
シクロプロピル(4イソプロピルフェニル)メタノン(式III、R1=R4=メチル、R3=シクロプロピルカルボニル)の合成
ガラス撹拌シャフト、PTFE撹拌ブレード、Pt100温度計およびpH電極を備えた4Lの四つ口丸底フラスコ中で、4クロロ−1−(4−イソプロピルフェニル)ブタン−1−オン(式III、R1=R2=メチル、R3=4−クロロブチリル)(457.9g、2.037mol)を、40℃にて、撹拌しながらメタノール(1832g)に溶解した(pH0.7)。水(250ml)を添加し(pH2.17)、そしてpHを32%水酸化ナトリウム水溶液を用いて12.6に調整した。2.5時間の反応時間の間、pHの低下は常に水酸化ナトリウム溶液を用いてpH12.5に調整して戻した。水酸化ナトリウム溶液の総消費は272.0gであった。形成された塩化ナトリウムを溶解するために、反応の間に水(200ml)を数回添加した。還流冷却器を短いClaisen冷却器に置き換え、次いでメタノール/水を減圧で(約60mbar)、30℃にて留去した。蒸留の間、固体が沈殿し始めた。懸濁液の撹拌を維持し続けるために、水(450ml)を添加した。一度の蒸留物の質量は980gであり、固体を吸引濾過して除去し(湿った物352g、乾燥物325g)、母液を+2℃に冷却し、30分後、もう一度沈殿した固体を同様に吸引して濾過して除去した(湿った物35g、乾燥物33g)。その後の母液の質量は827gであった。全収量:358g(1.902mol、理論値の93.3%)。この粗生成物の純度は、GCおよびHPLCの100%分析によって>99.7面積%であった。1Hおよび13C NMRでは、不純物は現れなかった。生成物は、少量の無機成分をなお含み、そして0.89質量%の含水量を有するが(Karl−Fischer滴定)、五酸化リン上減圧下では、その後の反応において所望される<0.1%の含水量まで常識的な時間(sensible period)内で減少させることができなかった。粗生成物(212.7g)を、20℃にて1L Erlenmeyerフラスコ中で、n−ヘプタン(500ml)に溶解して濁った溶液を形成し、この過程において、生じた冷えは、温めた水浴を用いて釣り合わせた。溶液を清澄化層に通して濾過し、そしてn−ヘプタンで洗浄した。透明な無色の濾液を減圧で濃縮した。これにより、減圧でドライアイスで冷却した場合、ほとんど完全に結晶化される無色の油状物を得た。残留する溶媒を高真空で乾燥することによって除去した。無色の結晶(207.3g、97.4%回収wt./wt.)、GC:99.9面積%、含水量(Karl−Fischer):0.06%。1H NMR(CDCl3):δ=1.02(ddd,2H,2×CH),1.22(ddd,2H,2×CH),1.27(d,6H,2×CH3),2.66(tt,1H,CH),2.97(sept.,1H,CH),7.32(ほとんどd,2H,arom.H),7.96(ほとんどd,2H,arom.H)。13C NMR(CDCl3):δ=11.48(2×CH2),17.09(CH),23.84(2×CH3),34.36(CH),126.70(2×arom.CH),128.39(2×arom.CH),136.02(arom.C),154.31(arom.H),200.31(C=O)。
【0112】
実施例83
光照射下、次亜塩素酸tert−ブチルを用いるベンジル塩素化による[4−(1−クロロ−1−メチルエチル)フェニル]シクロプロピルメタノン[式II、X=Cl、R1=R4=メチル、R3=シクロプロピルカルボニル]の合成
機械的撹拌器、温度計および還流冷却器(計泡器および不活性ガスのためのガス注入口チューブを備える)を備える1Lの四つ口フラスコ中で、シクロプロピル(4−イソプロピルフェニル)メタノン(実施例82から)(47.5g、250mmol)をクロロベンゼン(Merck Darmstadt)(475ml)に溶解し、そして溶液を15分間窒素を通して泡立たせ、溶存酸素を追い出した。その後、鏡のついたDewar容器中の冷塩化ナトリウム浴を使用して−9℃まで混合物を冷却し、次いで不活性ガスの供給を停止した。次亜塩素酸tert−ブチル(43.5ml、375mmol、1.5当量)を添加し、そして窒素注入口チューブを栓に置き換えた。その後、激しく撹拌しながら、光照射をOsram Ultra Vitalux 300Wランプ(「太陽灯」)を用いて達成した。最大限に冷却しながら、反応温度は、初めの5分で26℃の最大値まで上昇し、この過程において、初めの黄色溶液は完全に脱色された。次の4分以内で、なお最大限になお冷却しながら、次いで、反応温度は+5℃に戻し、次いで穏やかに冷却しながらさらに6分間0〜+1℃に維持した。ランプのスイッチを切った。冷水浴中でさらに20分後、無色の溶液を良好な真空で濃縮し、そして油状の残留物を磁気撹拌しながら高真空で乾燥させた。完全に乾燥していない生成物を冷蔵庫中で保護ガス下、一晩放置し、この過程において、生成物は結晶化した。これをさらに高真空で乾燥させ、部分的に結晶化した濃いスラリー(57.3g)を得た。これを窒素ブランケット下、強く吸引してガラスフリットに通して濾過した。結晶を2回少量の氷冷n−ヘプタンで洗浄し、窒素下吸引乾燥した。無色の粗い結晶(25.2g)を得た(m.p.37.5℃)。溶媒を減圧で除去し、そして冷蔵庫中で一晩放置した後、母液からさらに12.4gが結晶化した。全収量:37.6g(168.8mmol、理論値の67.5%)。GC純度は98.2面積%であり、残留する反応物質の含有量0.5面積%、ホモベンジルの塩化物(homobenzylic chloride)の含有量0.4面積%および二塩化物の含有量0.9面積%。1H NMR(CDCl3):δ=1.05(ddd,2H,2×CH),1.25(ddd,2H,2×CH),2.01(s,6H,2×CH3),2.66(tt,1H,CH),7.68(ほとんどd,2H,arom.H),7.99(ほとんどd,2H,arom.H)。13C NMR(CDCl3):δ=11.77(2×CH2),17.31(CH),34.25(2×CH3),68.95(C−Cl),125.81(2×arom.CH),128.21(2×arom.CH),137.18(arom.C),150.92(arom.C),200.06(C=O)。
次亜塩素酸tert−ブチル(0.35ml、3mmol)を含むクロロベンゼン(3.8ml)中で、シクロプロピル(4−イソプロピルフェニル)メタノン(実施例82から)(380mg、2mmol)を用いて類似の光反応により、先に精製することなく結晶化によって、ベンジル塩化物(100%収率(wt./wt.)で91面積%のGC純度)を得た。
次亜塩素酸tert−ブチル(0.35ml、3mmol)を含むベンゾトリフルオリド(α,α,α−トリフルオロトルエン)(3.8ml)中で、シクロプロピル(4イソプロピルフェニル)メタノン(実施例82から)(380mg、2mmol)を用いる類似の光反応により、先に精製することなく結晶化によって、ベンジル塩化物(97%収率(wt./wt.)で88面積%のGC純度)を得た。
【0113】
実施例84
塩化水素を用いるシクロプロピル開環による1−[4−(1−クロロ−1−メチルエチル)フェニル]−4−クロロブタン−1−オン(式IX、R1=R4=メチル)の合成
磁気撹拌棒、温度計および還流冷却器を備えた50mlの三つ口フラスコ中で、[4−(1−クロロ−1−メチルエチル)フェニル]シクロプロピルメタノン(実施例83から)(23.7g、105mmol)を、窒素下、38℃にて融解し、そして5分間窒素を通して泡立て、次いでなお窒素を通して泡立たせながら、内部温度115℃に加熱した。この温度にて、レクチャーボトルから塩化水素ガスをゆっくり通して泡立たせた。GCによる反応のモニタリングは、4時間後6%の残りの反応物質および7時間後2%の残りの反応物質を示した。HClを導入し続けながら氷浴中で反応混合物を冷却し、次いで窒素を通して泡立たせ、残っているHClを置き換えた。塩化水素レクチャーボトルの計量により、全量でHClガス(53.2g、1.47mol)を導入したことを示した。反応生成物を高真空で脱気し、この過程において、油状物ははっきりとより明るくなった。黄色の油状物(26.9g、103.8mmol、理論値の98.8% wt./wt.)を得、これは冷凍庫中で数日後に結晶化し始め、そして完全に結晶化した。黄色の油状物のGC分析は、95.0面積%の純度を示した。油状物は、1.7面積%の未変換反応物質および3.3面積%の不純物を含んだ。1H NMR(CDCl3):δ=2.00(s,6H,2×CH3),2.23(qui,2H,CH2),3.18(t,2H,CH2),3.68(t,2H,CH2),7.68(ほとんどd,2H,arom.H),7.96(ほとんどd,2H,arom.H)。
【0114】
実施例85および86
反応物質に基づいて約50mol%の含水量を有するトリフルオロメタンスルホン酸中での塩化物(式IX、R1=R4=メチル)のカルボニル化による2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(式I、R1=R2=メチル,R3=4−クロロブチリル)の合成
対応する臭化物について実施例23および24に記載されるように、2つの2mlオートクレーブ中で並行して、二重バッチ(double batch)として、カルボニル化を達成した。各場合において、0.206mmolの塩化物(実施例84から)を、40barのCO圧で、0℃にて、4時間、98%トリフルオロメタンスルホン酸(反応物質に基づいて約50mol%の含水量)(0.5ml)中で反応させた。外部標準法(実施例3〜10に記載される)による、HPLC分析は、所望のカルボン酸の収率が理論値の67%および69%であることを示した。粗カルボニル化溶液の収率および組成を、同じ反応条件下、反応物質として臭化物を用いて達成されている結果(実施例74反応を参照)と比較した。
【0115】
実施例87および88
フルオロスルホン酸中での塩化物(式IX、R1=R4=メチル)のカルボニル化による2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(式I、R1=R2=メチル、R3=4−クロロブチリル)の合成
対応する臭化物について実施例23および24に記載されるように、2つの2mlオートクレーブ中で並行して、二重バッチとして、カルボニル化を達成した。各場合において、0.206mmolの塩化物(実施例84から)を、40barのCO圧で、0℃にて、4時間、98%フルオロスルホン酸(含水量は測定されていない)(0.5ml)中で反応させた。外部標準法(実施例3〜10に記載される)による、HPLC分析は、所望のカルボン酸の収率が理論値の29%および31%であることを示した。粗カルボニル化溶液の収率および組成を、同じ反応条件下、反応物質として臭化物を用いて達成されている結果(実施例75を参照)と比較した。
【0116】
実施例89および90
反応物質に基づいて約200mol%の含水量を有するトリフルオロメタンスルホン酸中での塩化物(式IX、R1=R4=メチル)のカルボニル化による2−[4−(4−クロロブチリル)フェニル]−2−メチルプロピオン酸(式I、R1=R2=メチル、R3=4−クロロブチリル)の合成
対応する臭化物について実施例23および24に記載されるように、2つの2mlオートクレーブ中で並行して、二重バッチとして、カルボニル化を達成した。各場合において、0.206mmolの塩化物(実施例84から)を、40barのCO圧で、0℃にて、20時間、98%トリフルオロメタンスルホン酸(反応物質に基づいて約200mol%の含水量)(0.5ml)中で反応させた。外部標準法(実施例3〜10に記載される)による、HPLC分析は、所望のカルボン酸の収率が理論値の94%および95%であることを示した。粗カルボニル化溶液の収率および組成を、同じ反応条件下、反応物質として臭化物を用いて達成されている結果(実施例68を参照)と比較した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

〔式中、
R1およびR2が同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルであり、
R3が、1)−C(O)−(C1−C4)−アルキル(ここで、該アルキルは非置換であるか、またはClもしくはBrで一置換される)または
2)−C(O)−(C3−C6)−シクロアルキルであり、そして
Zが、水素原子または−(C1−C10)−アルキルである〕
の化合物および/または式Iの化合物の塩を得る方法であって、
式II:
【化2】

(式中、
R1およびR3が各々式Iで定義される通りであり、
Xが、Cl、Brまたは−OHであり、そして
R4が、式IのR2基について定義される通りであるか、またはXと一緒になってC=C二重結合である)
の化合物を、濃硫酸、フッ化水素もしくは超酸またはそれらの混合物の存在下、一酸化炭素または一酸化炭素を放出する化合物と反応させ、次いで
a)水を添加して、式I(ここで、Zは水素原子である)の化合物を得るか、または
b)XがClもしくはBrであるか、またはR4がXと一緒になってC=C二重結合である場合、(C1−C10)−アルキル−OHを添加して、式I(ここで、Zは−(C1−C10)−アルキルである)の化合物を得る
ことを包含する、上記方法。
【請求項2】
式I中、
R1およびR2が同時にメチルであり、
R3が、1.−C(O)−プロピル(ここでプロピルはClで一置換されている)または
2.−C(O)−シクロプロピルであり、そして
Zが水素原子または−(C1−C4)−アルキルである、
化合物を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用される一酸化炭素を放出する化合物が、ギ酸、無機カチオンもしくは有機カチオンとのギ酸塩または金属カルボニルの群からの少なくとも1種の化合物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
使用される超酸が、過塩素酸、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタン−1−スルホン酸またはルイス酸(例えば、SO3、三塩化アルミニウムもしくは五フッ化アンチモン)、または共役プロトン酸−ルイス酸複合体(例えば、硫酸とSO3、硫酸とホウ酸、フルオロスルホン酸と五フッ化アンチモン、トリフルオロメタンスルホン酸と五フッ化アンチモン、フッ化水素と五フッ化アンチモン、HFとTaF5、BF3とHF(HBF4、テトラフルオロホウ酸)、BF3・H3PO4複合体もしくはフルオロスルホン酸とSO3)、またはHSO3FとHFおよびSbF5、またはHSO3FとSO3およびSbF5の共役複合体の群からの酸である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
固定化された超酸、特に固定化されたトリフルオロメタンスルホン酸またはフルオロスルホン酸を使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
反応を、液体二酸化硫黄、超臨界二酸化炭素、スルホラン、4〜12個の炭素原子を有するn−アルカン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、トルエン、クメン、ハロゲン化炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、またはn−酢酸ブチルの群からの、超酸に対して十分に不活性な溶媒の存在下で行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
反応を、一酸化炭素と接触する条件下で、酸化銅(I)、酸化銀(I)、硝酸銀、ペンタカルボニル鉄Fe(CO)5、テトラカルボニル鉄酸二ナトリウム(−2)Na2Fe(CO)4、オクタカルボニル二コバルト(0)Co2(CO)8またはニッケルテトラカルボニルNi(CO)4のような金属カルボニルに迅速に変換される添加物の存在下で行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
式I(ここで、Zは−(C1−C10)−アルキルである)の化合物が対応するアルコールおよび式I(Z=H)のカルボン酸に開裂される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
反応を、1bar〜500bar、好ましくは1〜40bar、より好ましくは5〜25barのCO圧で行い、そして−70℃〜+100℃、好ましくは−10℃〜+50℃、より好ましくは0℃〜+40℃の反応温度で行う、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
超酸1リットルあたり0.1mol〜5.0mol、特に0.3mol〜3.0mol、好ましくは0.4mol〜2.0molの式IIの化合物を使用する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
式IIの化合物に基づいて、5mol%〜100mol%、好ましくは10〜30mol%、特に約20mol%の量で添加物を使用する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
式IIの化合物を、水および濃硫酸もしくはフッ化水素、もしくは超酸、またはそれらの混合物の存在下、一酸化炭素または一酸化炭素を放出する化合物と反応させ、この水が、式IIの化合物に基づいて、2mol%〜800mol%の量で存在する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
式II(Xが臭素であり、R1がメチルであり、R2がメチルであり、かつR3が4−クロロブチリルである)の化合物をトリフルオロメタンスルホン酸および水の存在下、一酸化炭素と反応させ、この水が式IIの化合物に基づいて、50mol%〜500mol%の量で存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式IIの化合物に基づいて、水を90mol%〜300mol%、特に約200mol%の量で使用する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式X:
【化3】

(ここでYが水素原子、塩素原子または臭素原子であり、かつ
R1およびR5が同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルである)の化合物。
【請求項16】
Yが塩素原子であり、かつR1およびR5が各々メチルである、請求項15に記載の式Xの化合物。
【請求項17】
請求項15に記載の式Xの化合物を得る方法であって、以下:
a)式III:
【化4】

(ここで、Yが水素原子、塩素原子または臭素原子であり、かつR1およびR4が同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルである)の化合物を酢酸コバルト(II)四水和物およびN−ヒドロキシフタルイミドの存在下、酸素と反応させる、または
b)式XI:
【化5】

(ここで、Yが水素原子、塩素原子または臭素原子であり、Xが塩素原子または臭素原子であり、R1およびR4が同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルであるか、またはR4とXが一緒になってC=C二重結合である)の化合物を水と反応させる
ことを包含する、上記方法。
【請求項18】
式VIII:
【化6】

(ここで、Yが水素原子、塩素原子または臭素原子であり、かつR1およびR4が同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルである)の臭化物を得る方法であって、式III:
【化7】

の化合物をN−ブロモスクシンイミドまたは1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインの存在下光照射し、同時にそれを加熱することを包含する、上記方法。
【請求項19】
Yが塩素原子であり、そしてR1およびR4が各々メチルである、式IIIの化合物を使用する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
式VIII:
【化8】

(ここで、Yが水素原子、塩素原子または臭素原子であり、そしてR1およびR4が同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルである)の臭化物を得る方法であって、式III:
【化9】

の化合物を、水相が臭素塩を含み、そして第二の相が水に不溶性かまたはわずかにしか溶けない液体からなる水性二相混合物中で光照射することを包含する、上記方法。
【請求項21】
水性二相混合物が水およびジクロロメタンからなり、そして臭素酸ナトリウムが水相中に存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
HBrを水相中に計量して入れる、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
式IX:
【化10】

(ここで、Yが水素原子、塩素原子または臭素原子であり、かつR1およびR4が同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルである)の塩化物を得る方法であって、式III:
【化11】

(ここで、Yが水素原子、塩素原子または臭素原子であり、かつR1およびR4が同じかまたは異なり、そして各々独立して、−(C1−C4)−アルキルである)の化合物を反応させて式IIIa:
【化12】

のシクロプロピルケト誘導体を得、次いでそれを塩化スルフリルまたは次亜塩素酸tert−ブチルでベンジル位で遊離基的に塩素化し、最後に式IXの化合物に変換することを包含する、上記方法。
【請求項24】
Yが塩素原子であり、かつR1およびR4が各々メチルである式IIIの化合物を使用する、請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2008−504314(P2008−504314A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518483(P2007−518483)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006414
【国際公開番号】WO2006/002762
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】