説明

一酸化炭素除去装置及び水素製造装置

【課題】一酸化炭素が十分に除去された高純度な水素を製造することが可能な一酸化炭素除去装置及びこれを備えた水素製造装置を提供する。
【解決手段】水素リッチな改質ガスに含まれる一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去装置22であって、改質ガスに含まれる一酸化炭素を水性シフト反応により低減するシフト部23と、シフト部23からの改質ガスと空気とを混合するチャンバ52と、チャンバ52からの混合ガスを混合ガス流路26と接することで冷却する冷却部としての改質用水流路27と、この冷却部で冷却された混合ガス中の一酸化炭素を選択酸化する選択酸化部25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば灯油等の水素製造用原料から製造された水素リッチな改質ガスに含まれる一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去装置及びこれを備える水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池による発電に使用するための水素を製造する水素製造装置として、例えば特許文献1に開示されてものがある。この装置では、メタノール等の水素製造用原料を改質触媒層で改質して水素リッチな改質ガスを生成し、燃料電池の電極触媒に被毒をもたらす改質ガス中の一酸化炭素(CO)を除去すべく、改質ガスをCO変成触媒層に通して水性シフト反応によりCOを低減し、更に、CO変成触媒層からの改質ガスをCO選択酸化触媒層に通して選択酸化によりCOをより一層低減している。
【0003】
このCO選択酸化触媒層による選択酸化では、COを酸化させるための酸素源が必要となるため、酸化除去部に空気を導入することが行われる。
【特許文献1】特開2004−31280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、改質ガスと空気とが十分に混ざっていなかったり、選択酸化触媒を最大限に活性化する温度範囲にガス温度が温度調整されていなかったりすると、CO選択酸化触媒層におけるCOの除去効率が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、一酸化炭素が十分に除去された高純度な水素を製造することが可能な一酸化炭素除去装置及びこれを備えた水素製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一酸化炭素除去装置は、水素リッチな改質ガスに含まれる一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去装置であって、改質ガスに含まれる一酸化炭素を水性シフト反応により低減するシフト部と、シフト部からの改質ガスと酸素含有ガスとを混合するチャンバと、チャンバからの混合ガスを冷却する冷却部と、冷却部で冷却された混合ガス中の一酸化炭素を選択酸化する選択酸化部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この一酸化炭素除去装置では、シフト部からの改質ガスと酸素含有ガスとを混合する混合チャンバを設けることにより、シフト部からの改質ガスと酸素含有ガスとを十分に混合させることが可能であるという特徴を有する。また、その後段に混合ガスと改質用水の熱交換器を設けることにより、混合ガスを冷却して選択酸化部での選択酸化に好適な温度に調整すると共に、改質用水に熱を供給することで改質効率を向上させることができる、という特徴を有する。以上により、改質部で効率的に水素を製造し、また、選択酸化部での選択酸化を効率的に行うことができるため、一酸化炭素が十分に除去された高純度な水素を効率的に製造することが可能となる。
【0008】
一酸化炭素除去装置は、略柱状の第1領域と、第1領域の外周側に位置し第1領域と同軸の環状領域である第2領域と、第2領域の外周側に位置し第1領域と同軸の環状領域である第3領域と、第3領域の外周側に位置し第1領域と同軸の環状領域である第4領域と、を備え、第1領域に、チャンバとシフト部からの改質ガスを該チャンバに導入するための中央ガス流路とを有し、第2領域に、シフト部を有し、第3領域に、チャンバからの混合ガスが通る混合ガス流路と選択酸化部とを有し、第4領域に冷却部を有する、ことを特徴としてもよい。このように同軸環状に各部を配置することで、コンパクトな構成で一酸化炭素の効率的な除去を行うことができる。
【0009】
第3領域にある環状の混合ガス流路には、チャンバからの混合ガスが導入される導入口が周方向の一部分に偏って設けられており、第3領域にある環状の選択酸化部には、選択酸化された改質ガスが導出される導出口が周方向の一部分に偏って設けられており、第1領域を中心とした周方向の位置関係において、導入口と導出口とは、第1領域を挟んで反対側に設けられていることを特徴としてもよい。ここで、導入口と導出口とが第1領域に関して同じ側にある場合は、導入口から選択酸化部に導入された混合ガスの大部分が選択酸化部の一部分に偏って通され、しかも導入口と導出口とを結ぶ最短距離で十分な選択酸化を施されることなく導出されるおそれがあるものの、このように導入口と導出口とを第1領域を挟んで反対側に設けることで、選択酸化部の特定部分に偏ることなく、且つその中をより長く通すことができるため、改質ガス中の一酸化炭素を十分に低減することが可能となる。
【0010】
第3領域にある環状の混合ガス流路内には、導入口から導入された混合ガスを周方向に分散させるための分散体が設けられていることを特徴としてもよい。このようにすれば、混合ガスを周方向に分散して一部に偏ることなく選択酸化部に通すことができるため、改質ガス中の一酸化炭素を十分に低減することが可能となる。
【0011】
選択酸化部と混合ガス流路とは、穴が複数空いた環状板により区画されていることを特徴としてもよい。このようにすれば、環状板において混合ガスの流量が制限されることで、混合ガスを周方向により一層分散させることができる。
【0012】
酸素含有ガスは、中央ガス流路を通してチャンバに導入されることを特徴としてもよい。このようにすれば、酸素含有ガスがシフト部を介して予熱されるため、改質ガスと酸素含有ガスとをチャンバにおいて混合させ易くなる。
第4領域にある環状の冷却部には改質用水が流され、その導入口が周方向の一部分に偏って設けられており、冷却部内には、改質用水を周方向に分散させるための分散体が設けられていることを特徴としてもよい。このようにすれば、改質用水を周方向に分散して一部に偏ることなく冷却部に通すことができるため、選択酸化部の周方向の温度を均一にすることができ、改質ガス中の一酸化炭素を十分に低減することが可能となる。
【0013】
本発明に係る水素製造装置は、水素製造用原料を改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質装置と、上記した一酸化炭素除去装置と、を備えることを特徴とする。この水素製造装置では、上記した一酸化炭素除去装置を備えるため、水素製造用原料から一酸化炭素が十分に除去された高純度な水素を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一酸化炭素が十分に除去された高純度な水素を製造することが可能な一酸化炭素除去装置及びこれを備えた水素製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る燃料電池システムの概略を示す図である。この燃料電池システム1は、水素製造装置2において水素製造用原料から水素リッチな改質ガスを生成し、この改質ガスを用いて燃料電池3で発電を行う。
【0017】
この燃料電池システム1で用いる水素製造用原料としては、水蒸気改質により水素を含む改質ガスを得られる物質であれば使用できる。例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類など分子中に炭素と水素を有する化合物を用いることができる。工業用あるいは民生用に安価に入手できる原料として、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、メタン、都市ガス、LPG(液化石油ガス)を挙げることができ、また石油から得られるガソリン、ナフサ、灯油、軽油など炭化水素油を挙げることができる。これらの中でも、液体原料が好ましく、特に灯油は入手容易でありその取扱が容易であるため好ましい。
【0018】
燃料電池システム1は、図1に示すように、水素製造装置(以下、「FPS」という)、2及び燃料電池3を備えている。燃料電池3としては、固体高分子形(以下、「PEFC」という)、リン酸形、アルカリ形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形など種々の形式のものが挙げられるが、本実施形態では、特に一酸化炭素(CO)による被毒が問題となるPEFCを前提に説明する。
【0019】
FPS2は、改質装置21と、一酸化炭素除去装置22とを備えている。改質装置21は、改質用水を用いて水素製造用原料としての灯油を水蒸気改質し、水素リッチな改質ガスを生成する。一酸化炭素除去装置22は、改質ガスからPEFC3において被毒となるCOを除去する。この一酸化炭素除去装置22は、シフト部23、チャンバ24、及び選択酸化部25を有している。
【0020】
シフト部23は、シフト触媒を用いて水性シフト反応により改質ガス中のCOを除去する。選択酸化部25は、選択酸化触媒を用いて選択酸化により改質ガス中のCOを除去する。チャンバ24は、選択酸化のための酸素供給源としての空気(酸素含有ガス)と改質ガスとを混合する。なお、チャンバ24と選択酸化部25との間には、チャンバ24で混合された混合ガスが流れる混合ガス流路26が設けられており、これと改質用水が流れる冷却部としての改質用水流路27とが接して熱交換することにより、混合ガスを冷却する。
【0021】
燃料電池3は、このようにしてFPS2で製造された水素リッチな改質ガスを利用し、酸素との電気化学反応によって発電を行う。
【0022】
図2は、図1の燃料電池システム1が備えるFPS2の具体的な構成を示す縦断面図である。図2に示すように、FPS2の改質装置21は、熱源としてのバーナを備える燃焼筒31と、燃焼筒31を囲むように配置され、水素製造用原料を水蒸気改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質部32と、改質部32と燃焼筒31との間に設けられた排ガス流路33と、改質部32に導入される改質用水が通る上部水路34とを有している。
【0023】
改質部32は、図2及び図3に示すように、燃焼筒31の外側で、燃焼筒31と同軸に配置された筒状の内胴部35と、内胴部35の外側で、内胴部35に同軸に配置された外胴部36と、を備えている。燃焼筒31と内胴部35との間に、燃焼筒31からの排ガスが通過する排ガス流路33が形成されている。
【0024】
外胴部36の下部には、図2に示すように、上部よりも径が小さくなっている縮径部36aが形成されている。内胴部35と外胴部36との間には、原料ガスと水蒸気との水蒸気改質反応を促進して改質ガスを生成する改質触媒が収容されており、縮径部36aの下端には、改質触媒を支持する環状の多孔板32aが設けられている。これにより、多孔板32aを通って改質ガスが流出する。縮径部36a、多孔板32a及び縮径部36aに対面する内筒部35の下部によって改質ガスの流出部が形成されている。
【0025】
縮径部36aの外側には、図2及び図4に示すように、環状の仕切壁37が配置されている。仕切壁37は、流出部の下方に配置された円形のガイド板38に固定されており、ガイド板38は内胴部35の下端に固定されている。この仕切り壁37は、断熱構造を有している。例えば、他の筒体よりも肉厚に形成されていてもよく、WDS(商品名:独Wacker chemie GmbH社製)やグラスウール等の公知の断熱材を利用してもよい。あるいは、内部に空気等の気体が封入された、もしくは内部が真空とされた二重壁構造を利用してもよい。仕切壁37の外側には、外胴部36の上部と同径の筒状の外壁部39が配置され、外壁部39は、外胴部36の上部下端に固定されている。これらガイド板38及び仕切壁37によって改質ガスが流れる改質ガス流路42が形成される。すなわち、流出部から流出した改質ガスは、ガイド板38に衝突して流れ方向が変わり、仕切壁37に案内されながら縮径部36aの外周面に沿って上昇した後、仕切壁37の上端を抜けて折り返し、外壁部39の内周面に沿って下降する。このように、改質ガス流路42を流れる改質ガスは、縮径部36aの上部近傍では改質触媒よりも温度が高くなるため、縮径部36aを介して改質触媒と熱交換し、改質触媒の温度低下を防止する。
【0026】
外胴部36及び外壁部39の外側には、外胴部36及び外壁部39と同軸に配置された筒状の上部水路壁40が設けられている。外胴部36及び外壁部39と上部水路壁40との間には、水蒸気改質のための改質用水が流動する上部水路34が形成される。この改質用水は、改質ガス流路42を通る改質ガスと外壁部39を介して熱交換して加熱されながら、水蒸気として上部水路34を上昇し、改質部32の導入部に供給される。なお、改質部32の流出部から流出して改質ガス流路42を流れる改質ガスは、外壁部39を介して改質用水との間で熱交換されて冷却される。
【0027】
一酸化炭素(CO)除去装置22は、改質装置21で生成された改質ガス中の一酸化炭素を除去する。CO除去装置22は、改質装置21の下方に隣接して配置されており、縦型のFPS2が構成されている。このように、熱供給が必要な改質装置21を上部に配置する一方、冷却が必要なCO除去装置22を下部に配置したので、改質装置21の周りをCO除去装置が同軸に取り囲む構成とする場合と比べて熱効率を上げることができると共に、スリムな構成とすることができる。
【0028】
CO除去装置22は、略円柱状の第1領域S1と、第1領域S1の外周側に位置し、第1領域S1と同軸の環状領域である第2領域S2と、第2領域S2の外周側に位置し、第1領域S1と同軸の環状領域である第3領域S3と、第3領域S3の外周側に位置し、第1領域S1と同軸の環状領域である第4領域S4を備えている。
【0029】
第2領域S2には、改質ガス中の一酸化炭素を水と二酸化炭素とに転化する水性シフト反応によって一酸化炭素を低減するシフト部23が設けられている。シフト部23は、高温シフト部23aと低温シフト部23bとを有しており、それぞれ異なる温度領域で活性化するシフト触媒が設けられている。改質装置21からの改質ガスは、700°C程度の非常に高い温度であり、高温シフト部23aには、高温での水性シフト反応の促進に有利なシフト触媒が収容されている。シフト触媒としては、例えばFe−Crの混合酸化物が挙げられる。低温シフト部23bには、高温シフト部23aのシフト触媒よりも低い温度での水性シフト反応の促進に有利なシフト触媒が収容されている。シフト触媒としては、例えばZn−Cuの混合酸化物が挙げられる。このシフト部23による水性シフト反応により、改質ガス中に含まれるCO濃度は1%程度にまで軽減される。なお、シフト部23の入口には、改質装置21からの改質ガスを入口全体に亘って分散させる分散板49が設けられている。この分散板49は、例えば複数の穴が空けられたパンチングメタルであり、ガス流量を制限することで、改質ガスを周方向に分散する。
【0030】
第1領域S1には、シフト部23からの改質ガスが流れる中央ガス流路51と、中央ガス流路51からの改質ガスと酸素含有ガスとしての空気とを混合するチャンバ52とが設けられている。なお、中央ガス流路51には細径の空気導入パイプ53が設けられており、FPS2外部から空気導入パイプ53を通してチャンバ52に空気が導入されるようになっている。
【0031】
第3領域S3には、チャンバ52からの混合ガスが流れる混合ガス流路26と、混合ガス流路26で冷却された混合ガス中の一酸化炭素を選択酸化する選択酸化部25とが設けられている。なお、チャンバ52と混合ガス流路26とは、図2及び図5に示すように、高温シフト部23aを貫く連絡流路54により連絡されている。このようにして、混合ガス流路26への混合ガスの導入口55が周方向の一部分に偏って集約化されている。混合ガス流路26には、図6に示すように、混合ガス流路26を画成する内周壁外面に分散体56が設けられている。分散体56は、導入口55から混合ガス流路26へ導入された混合ガスを周方向に分散させるものであり、導入口55直下の角度位置を中心とした270度程度の角度範囲に亘って、流路幅の半分程度を塞ぐように配置されている。
【0032】
混合ガス流路26と選択酸化部25とは、図2及び図7に示すように、穴が複数空いた環状板57により区画されている。選択酸化部25では、CO濃度は10ppm以下にまで低減される。選択酸化部25の下部には、図2に示すように、高純度の水素ガスを含む改質ガスが流出する改質ガス流出部58が設けられている。この改質ガス流出部58への導出口59から、改質ガスが導出される。このようにして、改質ガス流出部58への改質ガスの導出口59が周方向の一部分に偏って集約化されている。ここで、図2及び図8に示すように、第1領域S1を中心とした周方向の位置関係において、混合ガス流路26への導入口55と、改質ガス流出部58への導出口59とは、第1領域S1を挟んで反対側に設けられている。反対側とは、少なくとも、導入口55が設けられた角度位置を中心として左右に90度づつ進んだ180度の角度領域とは異なる他方の180度の角度領域をいう。特に本実施形態では、導入口55が設けられた角度位置を中心として左右に180度づつ進んだ正反対の角度位置に導出口59が設けられている。
【0033】
第4領域S4には、チャンバ52からの混合ガスを冷却する冷却部が設けられている。この冷却部は、第3領域と第4領域とを区画する内側筒体60とこれを囲む外側筒体61との間の改質用水流路27として構成されている。この冷却部としての改質用水流路27を改質用水が流れることで、混合ガス流路26の部位で改質用水と混合ガスとが熱交換し、混合ガスが冷却される。なお、改質用水流路27は混合ガス流路26の下方に設けられた選択酸化部25の下部まで延びており、選択酸化部25をも冷却する。
ここで、改質用水の導入口は、図2及び図9に示すように、周方向の一部の角度位置に偏って設けられているが、この導入口が設けられた部分の直上には、内側筒体60の外周面上に導入口の角度位置を中心とした120度程度の角度範囲に亘って、流路幅の半分程度を塞ぐように分散体63が配置されている。
【0034】
ここで、改質装置21とCO除去装置22との連結部分について説明する。この改質装置21の下端は、中央に小径の穴が空いた円形の内波板21aと、同じく中央に大径の穴が空いた外波板21bとにより塞がれている。一方、CO除去装置22の上端は、中央に小径の穴が空いた円形の内波板22aと、同じく中央に大径の穴が空いた外波板22bとにより塞がれている。そして、環状連絡流路41が両外波板21b,22bの穴に挿通されている。改質装置21側の内波板21aは、内周部が環状連絡流路41に接続されて封止されており、外周部が外壁部39に接続されて封止されている。また改質装置21側の外波板21bは、内周部が環状連絡流路41と離間され、外周部が上部水路壁40と接続され封止されている。一方、CO除去装置22側の内波板22aは、内周部が環状連絡流路41に接続されて封止されており、外周部が第3領域S3と第4領域S4とを区画する内側筒体60に接続されて封止されている。またCO除去装置22側の外波板22bは、内周部が環状連絡流路22bと離間され、外周部が外側筒体61と接続され封止されている。
【0035】
次に、上記したFPS2の作用について説明する。
【0036】
まず、改質用水がCO除去装置22の改質用水流路27を通って選択酸化部25を冷却すると共に、更に混合ガス流路26との間で混合ガスを冷却しながら上昇する。改質用水の導入口は、周方向の一部分に偏って設けられているが、この導入口が設けられた部分の直上には、内側筒体60の外周面上に導入口の角度位置を中心とした120度程度の角度範囲に亘って、流路幅の半分程度を塞ぐように分散体63が配置されている。従って、改質用水を周方向に分散して一部に偏ることなく改質用水流路27に通すことができるため、選択酸化部25の周方向の温度を均一にすることができ、改質ガス中の一酸化炭素を十分に低減することが可能となる。CO除去装置22の上部に至った改質用水は、CO除去装置22側の内波板22aと外波板22bとの間を通り、環状連絡流路41の側面を伝って、改質装置21側の内波板21aと外波板21bとの間を通り、上部水路34を通って改質部32に導入される。また、改質部32には、水素製造用原料としての灯油が導入される。
【0037】
改質部32では、燃焼筒31からの熱を受けながら灯油を水蒸気改質して、水素リッチな改質ガスを生成する。改質ガスは、流出部の多孔板32aを通して改質ガス流路42に送り出される。流出部から流出した改質ガスは、ガイド板38に衝突して流れ方向が変わり、仕切壁37に案内されながら縮径部36aの外周面に沿って上昇した後、仕切壁37の上端を抜けて折り返し、外壁部39の内周面に沿って下降する。これにより、内側の改質ガス流路42を流れる改質ガスは、縮径部36aの上部近傍では改質触媒よりも温度が高くなるため、縮径部36aを介して改質触媒と熱交換し、改質触媒の温度低下を防止する。一方で、外側の改質ガス流路42を通る改質ガスは、改質用水と外壁部39を介して熱交換して冷却される。
【0038】
改質装置21で生成された改質ガスは、環状連絡流路41を通ってCO除去装置22に導入される。導入された改質ガスは、分散板49により流量が制限されることで、周方向に分散される。そして、まず高温シフト部23a及び低温シフト部23bに順次導入されて水性シフト反応によりCOが除去される。次に、シフト部23下端に達した改質ガスは、下端の円盤状空間を通って、内側の中央ガス流路51を上昇する。中央ガス流路51の上部にはチャンバ52が設けられており、ここで空気導入パイプ53から導入された空気と改質ガスとが混合される。チャンバ52で混合された混合ガスは、連絡流路54を通って導入口55から混合ガス流路26に導入される。ここで混合ガスは改質用水との熱交換により冷却される。また、導入口55から混合ガス流路26へ導入された混合ガスは、分散体56により周方向に分散される。更に、混合ガス流路26と選択酸化部25とを区画する環状板57により流量が制限されることで、混合ガスが周方向により一層分散される。このように、周方向に分散された混合ガスが、環状板57の穴を通して選択酸化部25に導入される。選択酸化部25では、選択酸化により改質ガス中のCOが十分に除去された上で、導出口59から改質ガス流出部58へ導出される。このように、改質ガス流出部58へ導出された改質ガスが燃料電池に送られて、発電が行われる。
【0039】
以上詳述したように、本実施形態に係る一酸化炭素除去装置22によれば、シフト部23からの改質ガスと空気とを冷却前にチャンバ52において十分に混合することができ、また、その後で改質用水流路27と混合ガス流路26とが接する冷却部において混合ガスを冷却して選択酸化部25での選択酸化に好適な温度に調整することができるため、選択酸化部25での選択酸化を効率的に行うことができる。これにより、一酸化炭素が十分に除去された高純度な水素を製造することが可能となる。
【0040】
また、同軸環状に一酸化炭素除去装置22の各部を配置することで、コンパクトな構成で一酸化炭素の効率的な除去を行うことができる。
【0041】
また、混合ガス流路26への混合ガスの導入口55が周方向の一部分に集約されているため、滞留時間を稼ぐことで、チャンバ52での改質ガスと空気との混合を促進することができる。また、選択酸化部25からの改質ガスの導出口59が周方向の一部分に集約されているため、滞留時間を稼ぐことで、選択酸化部25での選択酸化を促進することができる。また、混合ガス流路26への混合ガスの導入口55と選択酸化された改質ガスの導出口59とが第1領域S1に関して同じ側にある場合は、導入口55から混合ガス流路26に導入された混合ガスの大部分が選択酸化部25の一部分に偏って通され、しかも導入口55と導出口59とを結ぶ最短距離で十分な選択酸化を施されることなく導出されるおそれがあるものの、図5及び図8に示すように、本実施形態のように導入口55と導出口59とを第1領域S1を挟んで反対側に設けることで、混合ガスが選択酸化部25の特定部分に偏ることなく、且つ選択酸化部25中の触媒により長く通すことができるため、改質ガス中の一酸化炭素を十分に低減することが可能となる。
【0042】
また、混合ガス流路26内には、導入口55から導入された混合ガスを周方向に分散させるための分散体56が設けられているため、混合ガスを周方向に分散して一部に偏ることなく選択酸化部25に通すことができ、改質ガス中の一酸化炭素を十分に低減することが可能となる。
【0043】
また、選択酸化部25と混合ガス流路26とは、穴が複数空いた環状板57により区画されているため、環状板57において混合ガスの流量が制限されることで、混合ガスを周方向により一層分散させることができる。
【0044】
また、空気導入パイプ53を介し中央ガス流路51を通して空気がチャンバ52に導入されることで、空気がシフト部23を介して予熱されるため、改質ガスと空気とをチャンバ52において混合させ易くなる。
また、選択酸化部25の外周には改質用水流路27を兼ねた冷却部が設けられており、改質用水の導入口は、周方向の一部分に偏って設けられているが、この導入口が設けられた部分の直上には、導入口の角度位置を中心とした120度程度の角度範囲に亘って、流路幅の半分程度を塞ぐように分散体63が配置されている。従って、改質用水を周方向に分散して一部に偏ることなく改質用水流路27に通すことができるため、選択酸化部25の周方向の温度を均一にすることができ、改質ガス中の一酸化炭素を十分に低減することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係るFPS2は、改質装置21で生成した改質ガス中のCOを上記した一酸化炭素除去装置22で除去できるため、水素製造用原料から一酸化炭素が十分に除去された高純度な水素を製造することが可能となる。
【0046】
また本実施形態にかかる改質装置21は、改質部32と上部水路34との間に設けられた仕切り壁37を備えているため、改質部32から導出された改質ガスを縮径部36aの部分における改質部32の外周面に沿って案内することで、吸熱反応が行われる改質部32との熱交換により改質ガスの熱を回収することができると共に、上部水路34の内周面に沿って案内することで、上部水路34を流れる改質用水との熱交換により改質ガスの熱を回収することができ、熱効率を上げることができる。また、燃焼筒31、排ガス流路33、改質部32、及び上部水路34を順次外側から取り囲む構成とし、改質部32と上部水路34との間に仕切り壁37を設けるというシンプルな構成であるため、コンパクトな構成とすることができる。
【0047】
また、仕切り壁37は断熱構造を有するため、改質ガス流路42の改質部32側と上部水路34側との双方でバランスよく熱回収を進めることができ、より温度の低い上部水路34側でより多くの熱が回収されてしまうことを防ぐことができる。
【0048】
また本実施形態に係るFPS2は、分散板49によりシフト部23の入口全体に亘って改質ガスを分散させることができるため、シフト部23の一部に改質ガスが偏るのを防止し、全体を使って効率的にシフト反応させて、改質ガス中の一酸化炭素を除去することができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、上記した実施形態では、チャンバ52と混合ガス流路26との連絡流路54を一つのみ設けたが、連絡流路54は複数あってもよい。ただし、この場合は、導入口55を周方向の一部分に偏って配置するのが好ましい。改質ガス流出部58への導出口59も同様である。
【0050】
また、上記した実施形態では、改質部32を下部で縮径し、仕切り壁37をその縮径させた部分の高さ範囲にのみ設けているが、改質部32を全て均一径とし、仕切り壁37を改質部32の上端手前まで延ばして、改質ガス流路42の長さを稼いでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態に係る燃料電池システムの概略を示す図である。
【図2】図1の燃料電池システムが備える水素製造装置の具体的な構成を示す縦断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【図7】図2のVII−VII線断面図である。
【図8】図2のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図2のIV−IV線断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1…燃料電池システム、2…水素製造装置(FPS)、3…燃料電池、21…改質装置、22…一酸化炭素除去装置、23…シフト部、25…選択酸化部、26…混合ガス流路、27…改質用水流路(冷却部)、31…燃焼筒、32…改質部、33…排ガス流路、34…上部水路、37…仕切り壁、42…改質ガス流路、49…分散板、51…中央ガス流路、52…チャンバ、53…空気導入パイプ、55…導入口、56…分散体、57…環状板、59…導出口、63…分散体、S1…第1領域、S2…第2領域、S3…第3領域、S4…第4領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素リッチな改質ガスに含まれる一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去装置であって、
前記改質ガスに含まれる一酸化炭素を水性シフト反応により低減するシフト部と、
前記シフト部からの改質ガスと酸素含有ガスとを混合するチャンバと、
前記チャンバからの混合ガスを冷却する冷却部と、
前記冷却部で冷却された前記混合ガス中の一酸化炭素を選択酸化する選択酸化部と、
を備えることを特徴とする一酸化炭素除去装置。
【請求項2】
略柱状の第1領域と、前記第1領域の外周側に位置し該第1領域と同軸の環状領域である第2領域と、前記第2領域の外周側に位置し前記第1領域と同軸の環状領域である第3領域と、前記第3領域の外周側に位置し前記第1領域と同軸の環状領域である第4領域と、を備え、
前記第1領域に、前記チャンバと前記シフト部からの改質ガスを該チャンバに導入するための中央ガス流路とを有し、
前記第2領域に、前記シフト部を有し、
前記第3領域に、前記チャンバからの前記混合ガスが通る混合ガス流路と前記選択酸化部とを有し、
前記第4領域に前記冷却部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の一酸化炭素除去装置。
【請求項3】
前記第3領域にある環状の前記混合ガス流路には、前記チャンバからの前記混合ガスが導入される導入口が周方向の一部分に偏って設けられており、
前記第3領域にある環状の前記選択酸化部には、選択酸化された改質ガスが導出される導出口が周方向の一部分に偏って設けられており、
前記第1領域を中心とした周方向の位置関係において、前記導入口と前記導出口とは、前記第1領域を挟んで反対側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の一酸化炭素除去装置。
【請求項4】
前記第3領域にある環状の前記混合ガス流路内には、前記導入口から導入された前記混合ガスを周方向に分散させるための分散体が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の一酸化炭素除去装置。
【請求項5】
前記選択酸化部と前記混合ガス流路とは、穴が複数空いた環状板により区画されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の一酸化炭素除去装置。
【請求項6】
前記酸素含有ガスは、前記中央ガス流路を通して前記チャンバに導入されることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の一酸化炭素除去装置。
【請求項7】
前記第4領域にある環状の前記冷却部には改質用水が流され、その導入口が周方向の一部分に偏って設けられており、
前記冷却部内には、前記改質用水を周方向に分散させるための分散体が設けられていることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の一酸化炭素除去装置。
【請求項8】
水素製造用原料を改質して前記水素リッチな改質ガスを生成する改質装置と、
請求項1〜7のいずれかに記載の一酸化炭素除去装置と、
を備えることを特徴とする水素製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−91230(P2009−91230A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81571(P2008−81571)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(500561595)荏原バラード株式会社 (68)
【Fターム(参考)】