説明

一酸化炭素除去触媒の活性化方法

【課題】水素消費を抑制しつつ一酸化炭素濃度の低減を可能な、前記一酸化炭素除去器の低温運転を可能とするための、前記一酸化炭素除去触媒の活性化方法を提供する
【解決手段】水素を主成分とする燃料ガス中の一酸化炭素を酸化除去する一酸化炭素除去触媒を、当該一酸化炭素除去触媒を使用する前の前処理として、不活性ガス又は有限値以上10体積%以下の水素を含み残余ガスが不活性ガスである混合ガスと接触させて活性化する一酸化炭素除去触媒の活性化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガス、ナフサ、灯油等の炭化水素類及びメタノール等のアルコール類を改質(水蒸気改質、部分燃焼改質等)して得られる改質ガスのように、水素(H2)ガスを主成分とし少量の一酸化炭素(CO)ガスを含むガスから、前記一酸化炭素ガスを酸化除去する一酸化炭素除去触媒の活性化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、天然ガス等の化石燃料を原燃料として、水素を主成分とする燃料ガス(水素を50体積%以上含むガス(ドライベース))を製造する燃料改質装置にあっては、前記原燃料を、連設した脱硫器、水蒸気改質器で、脱硫、水蒸気改質して、水素を主成分とし一酸化炭素、二酸化炭素(CO2)、水分(H2O)等を含む燃料ガスを得ていた。また、前記アルコール類、例えばメタノールを原燃料とする燃料改質装置は、メタノール改質触媒を内装したメタノール改質器を備え、メタノールから、水素を主成分とし一酸化炭素、二酸化炭素、水分等を含む燃料ガスを得ていた。
【0003】
ここで、リン酸型燃料電池に供する燃料ガスを製造する燃料改質装置にあっては、一酸化炭素の存在によって、燃料電池の電極触媒が被毒することが知られており、前記水素を主成分とするガスを一酸化炭素変成器に導入し、一酸化炭素変成反応によって、前記一酸化炭素を二酸化炭素(CO2)に変換し、ガス中の一酸化炭素濃度を所定値以下(例えば、0.5%)とした燃料ガスを得ていた。
しかし、固体高分子型燃料電池に供する燃料ガスを製造する燃料改質装置にあっては、固体高分子型燃料電池が約80℃という低温で作動することから、微量の一酸化炭素によって電極触媒が被毒されてしまうために、更に前記一酸化炭素を低減する必要があり、前記一酸化炭素変成器の下流に、一酸化炭素を酸化除去する一酸化炭素除去触媒を収容した一酸化炭素除去器を設けて、前記一酸化炭素変成器で処理された前記燃料ガスに、空気等の酸化剤を添加してこれに導入し、この一酸化炭素除去触媒の存在下で、一酸化炭素を二酸化炭素に酸化し、一酸化炭素濃度を所定濃度以下(例えば、100ppm以下)にまで低減した燃料ガスを得ていた。
【0004】
この種の一酸化炭素除去触媒としては、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等をアルミナ等の担体に担持した貴金属触媒が用いられていて、従来は、活性化処理を施さないまま一酸化炭素酸化除去に用いたり、前記一酸化炭素除去触媒を水素を主成分(50モル%以上)とするガス雰囲気下において前処理し、その後空気に触れさせることなく使用する活性化方法が提案されていた(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−29802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記一酸化炭素除去触媒は、一酸化炭素の酸化除去のみならず、水素を消費して、一酸化炭素、メタン、水を再生する副反応(夫々、一酸化炭素の逆シフト反応、一酸化炭素及び二酸化炭素のメタン化反応、水素の燃焼反応と呼ばれる。)をも起こすことがわかっていて、このような副反応は、可及的に抑制する必要があった。
これらの副反応は、前記一酸化炭素除去触媒の反応温度が高い(例えば200℃以上)と起こり易い傾向にあるため、前記一酸化炭素除去触媒は、理想的には100℃程度の低温で使用することが好ましい。
【0007】
ここで、前記一酸化炭素除去触媒を、活性化処理を施さないまま一酸化炭素酸化除去に用いるとすれば、100℃程度の低温では、運転初期に一酸化炭素酸化除去活性をほとんど示さず、一酸化炭素を所定濃度以下にまで除去することが困難であることが判明した(図2〜4に記載の比較例参照)。逆に、比較的反応温度が高い場合には初期活性を示すが、前述したように、一酸化炭素、メタン、水蒸気等の不必要なガスの分圧が上昇すると共に、製造物である水素を消費してしまうという問題があった。
また、前記一酸化炭素除去触媒を、水素を主成分とするガスを用いて活性化するとすれば、やはり、水素を消費することになり、また、前記一酸化炭素除去触媒の活性化のためだけに高濃度の水素ガスを多量に必要とするので手間がかかるという問題点があった。さらには、この活性化処理に用いられたガスを系外に排出するにあたり、水素の爆発限界範囲(4〜75体積%)の濃度になる虞れがあるので、後処理を必要とするという問題点があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、上記欠点に鑑み、水素消費を抑制しつつ一酸化炭素濃度の低減を可能な、前記一酸化炭素除去器の低温運転を可能とするための、前記一酸化炭素除去触媒の活性化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するための本発明の一酸化炭素除去触媒の活性化方法の特徴手段は、請求項1に記載されているように、水素を主成分とする燃料ガス中の一酸化炭素を酸化除去する一酸化炭素除去触媒を、当該一酸化炭素除去触媒を使用する前の前処理として、不活性ガス又は有限値以上10体積%以下の水素を含み残余ガスが不活性ガスである混合ガスと接触させて活性化することにある。
【0010】
前記特徴手段において、請求項2に記載されているように、前記不活性ガスが、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスから選ばれる少なくとも1種のガスを含んでなることが好ましい。
【0011】
尚、前記一酸化炭素除去触媒の活性化は、120〜250℃で行なうことが好ましく、また、有限値以上10体積%以下の水素ガスを含み残余ガスが不活性ガスにより活性化した場合は、前記一酸化炭素除去触媒の活性化を80〜250℃で行なうことが好ましく、更には120〜250℃で行なうことが好ましい。
【0012】
また、請求項3に記載されているように、前記水素を主成分とする燃料ガスが、炭化水素類又はアルコール類を改質して得られる改質ガスであることが好ましい。
【0013】
そして、これらの作用効果は、以下の通りである。
【0014】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、請求項1に記載されているように、水素を主成分とする燃料ガス中の一酸化炭素を酸化除去する一酸化炭素除去触媒を、当該一酸化炭素除去触媒を使用する前の前処理として、不活性ガス又は有限値以上10体積%以下の水素を含み残余ガスが不活性ガスである混合ガスに接触させることによって活性化可能であるという新知見を得て、これに基づいて本発明を完成させた。このようにして活性化した前記一酸化炭素除去触媒を収容した前記一酸化炭素除去器を低温(例えば、70〜120℃)で運転したときにも、スタート時から良好な一酸化炭素酸化除去活性が得られる。なお、前記不活性ガスに水素を低比率で添加すると、前記一酸化炭素除去触媒の活性化温度を下げても、活性化後の前記一酸化炭素除去触媒は高い酸化除去性能を得ることができ、エネルギー消費を抑制可能であることを明らかとした。前記不活性ガスに添加する前記水素の比率は、実用的には50体積%未満で十分であるが、実施例から明らかに、10体積%以下でも前記一酸化炭素除去触媒の初期活性を高めるのに充分である。
これによって、前記一酸化炭素除去器は、運転スタート時から、改質ガスの一酸化炭素濃度を所定値以下にまで低減することができるようになり、前記固体高分子型燃料電池にも供給可能な高品質な改質ガスを、副反応による水素の損失を極力抑制した状態で得ることができる。また、前記一酸化炭素除去触媒の活性化のためだけに、高濃度の水素ガスを多量に用意する手間が省ける。
ここで、前記不活性ガスとは、それ単体では、前記一酸化炭素除去触媒と反応しないガスをいう。
【0015】
さらには、かかる組成のガスは、前記一酸化炭素除去器の上流側に設けられる前記一酸化炭素変成器、並びにアルコール改質器(例えば、前記メタノール改質器)の還元に供するガスと共用することができるという格別な効果を有する。すなわち、前記アルコール改質器、前記一酸化炭素変成器に内装される触媒は酸化され易いので、例えば、銅−亜鉛系触媒の場合は酸化銅−酸化亜鉛という酸化物の状態で供給されることが多い。この酸化物としての触媒は、夫々の容器に充填された後、還元ガス(水素ガス)雰囲気下で加熱して酸化銅を銅に還元して使用する。ここで、この種の触媒にあっては、前記還元時に前記水素ガスの濃度が高いと、前記触媒と激しく反応して発熱し、シンタリングが起こり易かった。前記シンタリングが起こると触媒を劣化させることになるので、従来、前記水素ガスを窒素等の不活性ガスで10体積%以下に希釈して供給して、260℃以下で還元処理を施し、発熱を抑制していた。これに対して、前記一酸化炭素除去触媒(例えば、アルミナを担体とし、これにルテニウムを担持した触媒)は、ルテニウムが酸化され難いので、ルテニウムをアルミナに担持する際に還元処理を行なえば、特に使用前に還元しなくても使用することができるとされていた。
従って、前記水素ガスを窒素等の不活性ガスで10体積%以下に希釈したガスで、前記一酸化炭素除去触媒を活性化することができることは従来知られておらず、同一組成のガスで、前記アルコールの改質触媒、一酸化炭素変成触媒の還元と前記一酸化炭素除去触媒の活性化を同時に連続して行なうことができることは、本願発明者らが見出した新知見である。
このようにすると、燃料改質装置の使用前処理に、活性化のために必要な設備を設けるに際し、例えば、前記一酸化炭素変成触媒の還元設備と、前記一酸化炭素除去触媒の前処理設備及び資材を別々に備える必要がなくなる。
【0016】
さらには、前記特徴手段において、前記一酸化炭素除去触媒の活性化を80〜400℃で行なうことが好ましい(表1、2、図2〜4参照)。
この活性化を80℃以上で行なうと、図2〜4及び表1、2に示すように、例えば、改質ガス製造時において、前記燃料ガス中の一酸化炭素濃度を、大幅に減少させることができる。なお、400℃以上で行なうと加熱に要するエネルギーが過大となる上、触媒をシンタリングさせてしまうおそれがあるので、80〜400℃の範囲で行なうことが好ましい。
更に好ましくは、前記活性化の温度が120〜250℃であると、不活性ガスが水素を含んでいるか否かを問わず、前記燃料ガス中の一酸化炭素濃度を反応開始初期から100ppm以下にまで低減することができるので好ましい(図2〜4及び表1、2参照)。
また、水素ガスを10体積%以下含む不活性ガスにより活性化した場合は80〜250℃で活性化することによって、前記燃料ガス中の一酸化炭素濃度を、5000ppmから50或いは100ppm以下にまで削減することができる(図2〜4及び表2参照)。更には、120〜250℃で活性化することによって、一酸化炭素濃度を10ppm以下にまで削減することができる(図2〜4及び表2参照)。このレベルまで一酸化炭素濃度を低減させることができれば、前記燃料電池の電極触媒に対する被毒を抑制する効果が大きくなり、前記電極触媒の寿命を長く保つことができるようになる。
また、前記特徴手段において、請求項2に記載されているように、前記不活性ガスが、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスから選ばれる少なくとも1種のガスを含んでなるものであれば、比較的安価で入手・保管も容易であり、また、前記一酸化炭素除去触媒以外の部材を構成する材質とも反応し難いので、腐食等の弊害を招き難い。
【0017】
また、前記特徴手段において、請求項3に記載されているように、前記水素を主成分とする燃料ガスが、炭化水素類又はアルコール類を改質して得られる改質ガスである場合に、請求項1又は2に記載した方法により前記一酸化炭素除去触媒を活性化すると、一酸化炭素除去効果が高いので好ましい。
【0018】
尚、燃料電池に供給される水素を主成分とする燃料ガスの供給路に備えられ、前記燃料ガス中の一酸化炭素を酸化除去する一酸化炭素除去触媒を収納した一酸化炭素除去器を運転するにあたって、前記一酸化炭素除去触媒を、当該一酸化炭素除去触媒を使用する前の前処理として、不活性ガス又は有限値以上10体積%以下の水素を含み残余ガスが不活性ガスである混合ガスと接触させて、前記一酸化炭素除去触媒を活性化した後、前記燃料ガスに対する一酸化炭素酸化除去を開始すると、前記一酸化炭素除去器は、低温で運転したときでも、運転スタート時から、改質ガスの一酸化炭素濃度を所定値以下にまで低減することができるようになり、前記固体高分子型燃料電池にも供給可能な高品質な改質ガスを、副反応による水素の損失を極力抑制した状態で得ることができる。また、前記一酸化炭素除去触媒の活性化のためだけに、高濃度の水素ガスを多量に用意する手間が省ける。
【0019】
また、上記において、前記混合ガスが、10体積%以下の水素ガスを含み残余ガスが不活性ガスであると、前記一酸化炭素除去器の上流側に設けられる前記一酸化炭素変成器、もしくはアルコール改質器(例えば、前記メタノール改質器)の還元に供するガスと共用することができる。
ここで、前記混合ガスにより前記一酸化炭素除去触媒を、80〜250℃の温度で活性化させると、改質ガス中の一酸化炭素濃度を100ppm以下にまで削減することができる(図2〜4及び表2参照)。このレベルまで一酸化炭素濃度を低減させることができれば、前記一酸化炭素除去器の運転開始時から、前記固体高分子型燃料電池に供給可能な前記燃料ガスを得ることができる。更には、120〜250℃の温度で活性化させることによって、一酸化炭素濃度を10ppm以下にまで削減することができる(図2〜4及び表2参照)。このレベルまで一酸化炭素濃度を低減させることができれば、前記燃料電池の電極触媒に対する被毒を抑制する効果が大きくなり、前記電極触媒の寿命を長く保つことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る一酸化炭素除去触媒の活性化方法を実施可能な燃料改質装置を示す。この燃料改質装置は、天然ガスを原燃料として、固体高分子型燃料電池に供する水素を主成分とする燃料ガスを製造するものであって、前記原燃料を供給する原燃料供給系1(たとえば、ガスボンベやガス管から配管を通じて前記原燃料を供給する)、脱硫触媒や脱硫剤が内装された脱硫器2、改質触媒が内装された改質器4、一酸化炭素変成触媒が内装された一酸化炭素変成器5及び前記一酸化炭素除去触媒が内装された一酸化炭素除去器6が、夫々配管を通じて連接されていて、これらを通過して改質された改質ガスは、固体高分子型燃料電池7に供給される。尚、本願においては、前記燃料改質装置と固体高分子型燃料電池7とをあわせて燃料電池システムという。
前記原燃料供給系1から供給された天然ガスは、前記脱硫器2を通過する際に、前記脱硫触媒(例えば、Ni−Mo系触媒やCo−Mo系触媒)により硫黄化合物が水素化され、ZnOと接触して硫黄分が除去される。そして、水蒸気発生器3から供給される水蒸気と混合された後に、前記改質器4に搬送されて、ここで、前記改質触媒(例えば、Ni系触媒やRu系触媒)と接触して、前記天然ガス中のメタン等の炭化水素が水素に改質される。このようにして得られたガスは、水素に富むもの、副生成物としての一酸化炭素を十数体積%含むので、前記固体高分子型燃料電池7に直接供給することができない。そこで、前記一酸化炭素変成器5において、銅−亜鉛系触媒のような一酸化炭素変成触媒と接触させて、一酸化炭素を二酸化炭素に変成させて、所定値にまで一酸化炭素濃度を下げ、更に温度調整手段6aを備えた前記一酸化炭素除去器6において、前記酸化剤供給手段9から供給される酸化剤(たとえば、酸素を含む空気)とともに、前記一酸化炭素除去触媒(例えば、ルテニウム、白金、ロジウム、パラジウム等の貴金属をアルミナ等の担体に担持したもの)と接触させて、一酸化炭素を酸化除去して二酸化炭素として、最終的には、所定の濃度以下とする。
【0021】
さて、このような燃料電池システムに使用される触媒は、上述した燃料電池システムが構築される前に、夫々活性化される。具体的には、前記一酸化炭素変成器5及び前記一酸化炭素除去器6に内装される触媒は、個々に、その活性化に必要な処理を施した後に外気の流入を遮断し、この状態で前記配管と夫々接続して、前記燃料電池システムに組み込むことができる。
【0022】
例えば、前記一酸化炭素変成器5及び前記一酸化炭素除去器6に内装される触媒を、夫々異なるガスを用いて還元、活性化するとすれば、前記一酸化炭素変成器5に内装された一酸化炭素変成触媒は、定法に従って、10体積%以下の水素ガスを混合したガスを通気しながら、260℃以下に加熱することによって還元する。また、前記一酸化炭素除去器6に内装された一酸化炭素除去触媒は、本発明に係る活性化方法を用いて、即ち、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスから選ばれる少なくとも1種の不活性ガス又は有限値以上50体積%未満の水素を含み残余ガスが前記不活性ガスである混合ガスを通気しながら活性化する。
前記活性化は80〜400℃の範囲で行なうことが好ましい。さらには、前記一酸化炭素除去触媒の活性化は、120〜250℃で行なうことが好ましく、また、有限値以上10体積%以下の水素ガスを含み残余ガスが不活性ガスにより活性化した場合は、前記一酸化炭素除去触媒の活性化を80〜250℃で行なうことが好ましく、更には120〜250℃で行なうことが好ましい。
【0023】
あるいは、本法によれば、前記一酸化炭素変成触媒の還元に用いるガスを、そのまま、前記一酸化炭素除去触媒の活性化に用いることも出来る。
つまり、前記一酸化炭素変成器5と前記一酸化炭素除去器6とを、前記配管で接続した状態で、前記不活性ガスに、10体積%以下の水素ガスを混合したガスを通気しながら、前記一酸化炭素変成器5と前記一酸化炭素除去器6とを、夫々の還元、活性化に適した温度に保持して、還元操作、活性化操作を行なうことができる。このようにすると、活性化(還元)ガスを1種類だけ用意すれば足りる。
【0024】
このようにして活性化された燃料電池システムに原燃料を導入し、前記一酸化炭素除去器を低温運転(例えば、70〜120℃)すれば、運転初期より、高度に一酸化炭素が除去された燃料ガスが得られる。このとき、前記一酸化炭素除去器に導入される入口ガスの酸素/一酸化炭素モル比は、例えば3以下でもよい。
【実施例】
【0025】
以下に本発明の実施例を説明する。
直径2〜4mmのアルミナ球を担体とし、この担体にルテニウム(Ru)を担持したRu/アルミナ触媒(一酸化炭素除去触媒)8ccを、ステンレス鋼製の反応管に充填して、一酸化炭素除去器を作成した。この一酸化炭素除去器は、前記反応管を外部から加熱可能なヒータ及び冷却可能な冷却器を備えた温度調節手段を備えていて、前記反応管の温度を制御可能に構成してある。
【0026】
(実施例1)
この一酸化炭素除去器(前記一酸化炭素除去触媒のルテニウム担持量は1.0重量%)に、前記一酸化炭素除去触媒を活性化するための混合ガス(水素6%、窒素94%)を、1000cc/分の流量で導入しながら、前記温度調節手段により、反応管温度が250℃になるまで昇温し、250℃で1.5時間保持した(前処理)。
この前処理の後、前記反応管の温度を100℃にまで降温させて、そのまま100℃に保ち、処理ガスを、空間速度(GHSV)7500/時間となるように、前記反応器に導入して、一酸化炭素の酸化除去反応を行なった。尚、前記処理ガスとしては、前記一酸化炭素変成器の出口ガスに、酸素/一酸化炭素のモル比が1.6となるように、空気を混合したものに相当する組成のガス(一酸化炭素0.5%、メタン0.5%、二酸化炭素20.9%、酸素0.8%、窒素3.1%、水5%、水素でバランス)を用いた。
このようにして酸化除去反応を行なったときの出口一酸化炭素濃度(ガスクロマトグラフ装置で測定)を、図2に示す。
【0027】
(実施例2)
前記一酸化炭素除去器(前記一酸化炭素除去触媒のルテニウム担持量は1.0重量%)に、前記一酸化炭素除去触媒を活性化するための混合ガス(水素10体積%、窒素90体積%)を、1000cc/分の流量で導入しながら、前記ヒータにより、反応管温度が200℃になるまで昇温し、200℃で2時間保持した(前処理)。
この前処理の後、前記反応管の温度を110℃にまで降温させて、そのまま110℃に保ち、前記処理ガスを、空間速度(GHSV)7500/時間となるように、前記反応管に導入して、一酸化炭素の酸化除去反応を行なった。尚、前記処理ガスとしては、前記一酸化炭素変成器の出口ガスに、酸素/一酸化炭素のモル比が1.6となるように、空気を混合したものに相当する組成のガス(一酸化炭素0.5%、メタン0.5%、二酸化炭素20.9%、酸素0.8%、窒素3.1%、水20%、水素でバランス)を用いた(以下、特に記載のない限り、この組成のガスを「処理ガス」という。)。
このようにして酸化除去反応を行なったときの出口一酸化炭素濃度(ガスクロマトグラフ装置で測定)を、図3に示す。
【0028】
(実施例3)
前記一酸化炭素除去器(前記一酸化炭素除去触媒のルテニウム担持量は0.5重量%)を用いて、一酸化炭素の酸化除去反応時の温度を120℃とした以外は、前記実施例2と同様に処理したものを、実施例3とした。
このようにして酸化除去反応を行なったときの出口一酸化炭素濃度(ガスクロマトグラフ装置で測定)を、図4に示す。
【0029】
(比較例1〜3)
前記一酸化炭素除去器に前処理を施していない以外は、前記実施例1〜3と同様に一酸化炭素の酸化除去反応を行なったものを、夫々比較例1〜3とした。
このようにして酸化除去反応を行なったときの出口一酸化炭素濃度(ガスクロマトグラフ装置で測定)を、それぞれ図2〜4に示す。
【0030】
図2に示すように、本法により活性化した一酸化炭素除去触媒を用いた一酸化炭素除去器の出口一酸化炭素濃度(実施例1)は、検出限界(5ppm)以下であり、運転開始直後から、前記固体高分子燃料電池の燃料ガスとして供給可能な改質ガスが得られ、前記一酸化炭素除去触媒の活性化の効果が現われていることがわかる。一方、前処理を施さなかった場合(比較例1)、運転開始から2時間後の出口一酸化炭素濃度は、4758ppmであり、100時間後でも4347ppmとなっていて、前記固体高分子燃料電池の燃料ガスとして供給可能な改質ガスが得られなかったどころか、ほとんど触媒反応が進行していなかった。
【0031】
また、図3、4に示すように、実施例2、3においても、同様に、運転開始直後から出口一酸化炭素濃度が検出限界(5ppm)以下となっていて、100〜120℃という低温条件で運転しても、前記固体高分子燃料電池の燃料ガスとして供給可能な改質ガスが得られた。一方、前処理を施さない従来法(比較例2、3)にあっては、やはり、運転初期の触媒活性がほとんど発揮されず、低温運転では4000ppm前後の一酸化炭素が出口ガスに含まれていた。
【0032】
(実施例4)
前処理に用いるガス種と、処理温度について検討した。
前記一酸化炭素除去器に充填された一酸化炭素除去触媒を、前記一酸化炭素除去触媒を活性化するための、前記一酸化炭素除去触媒とは反応しない不活性ガスである窒素ガス、又は水素ガスを10体積%含む窒素ガス(混合ガス)流下で、80〜250℃に保ち、2時間処理した。これらに、酸素/一酸化炭素のモル比が1.7となるように、前記一酸化炭素変成器の出口ガスに空気を混合したものに相当する組成のガス(一酸化炭素0.5%、メタン0.5%、二酸化炭素20.9%、酸素0.85%、窒素3.4%、水20%、水素でバランス)を、空間速度(GHSV)7500/時間となるように導入して、前記反応管温度を110℃に保って、一酸化炭素の酸化除去反応を行なったときの出口一酸化炭素濃度(ガスクロマトグラフ装置で測定)を、表1、2に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
前記固体高分子型燃料電池に直接導入可能な前記燃料ガスの一酸化炭素濃度は、50〜100ppmであるので、この水準に達するか否かを基準に前記活性化処理の効果を判断すると、表1に示すように、窒素ガスのみで活性化した場合には、120〜250℃で前述した水準にまで一酸化炭素を削減することができた。また、10体積%水素を含む窒素ガスを用いて活性化を施した場合には、表2に示すように、80〜250℃で前述した水準にまで一酸化炭素を削減することができた。特に、120℃以上で活性化を施した場合には、一酸化炭素除去反応開始直後から5ppm以下にまで一酸化炭素濃度を削減することができ、このようにして精製された改質ガスを前記固体高分子型燃料電池に供給すれば、前記電極触媒の被毒を抑制するのに、特に効果的である。
かかる条件で活性化を施すと、前記一酸化炭素除去器の運転開始直後から、前記固体高分子型燃料電池に直接供給可能な改質ガスが得られるので改質ガスの製造効率を向上させることができ、その活性化温度も低くてすむので熱発生量を抑制することができる点で好ましいことがわかった。
【0036】
ここで、10体積%以下の水素を含む窒素ガスは、前記一酸化炭素除去器を設置すべき燃料改質装置に備えられる他の触媒、例えば、一酸化炭素変成触媒の活性化(還元)に使用する代表的な還元ガスとしても使用されるものでもある。従って、前述した一酸化炭素変成触媒等の還元ガスを、同時に、前記一酸化炭素除去触媒の活性化に使用するガスとして共用することができる。活性化ガスが他の触媒の活性化ガスと共用可能であり、熱発生量が少なくてもすむ。
【0037】
〔別実施形態〕
以下に別実施形態を説明する。
本発明に係る一酸化炭素除去器は、その上流に設けられる器材を、特に選ばない。従って、前記燃料ガス改質装置で用いる脱硫触媒、改質触媒、一酸化炭素変成触媒は、その種類を限定する必要はなく、公知のものを使用することができる。
また、本法は、前述したような、天然ガス(メタン)を改質する場合のみならず、メタノール改質により得られた改質ガスに含まれる一酸化炭素を除去する場合にも使用することができる。ここで、有限値以上10体積%以下の水素を含み残余ガスが不活性ガスである混合ガスを活性化に用いれば、前記一酸化炭素除去器を設置すべき燃料改質装置に備えられる他の触媒、例えば、一酸化炭素変成触媒や、アルコール(例えば、メタノール)を改質する場合に用いるアルコール(メタノール)改質触媒の活性化(還元)に使用する代表的な還元ガスとしても使用することができる。従って、前述した一酸化炭素変成触媒やアルコール改質触媒の還元ガスを、同時に、前記一酸化炭素除去触媒の活性化ガスとして共用することができ、また、前記一酸化炭素除去触媒の活性化温度を低下させることができるので熱発生量が少なくてすむ。
なお、前記不活性ガスとして窒素を用いたが、ヘリウムガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスを使用しても、比較的安価で入手・保管も容易であり、また、前記一酸化炭素除去触媒以外の部材を構成する材質とも反応し難いので、腐食等の弊害を招き難い等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を実施可能な燃料電池システムを表わす概念図
【図2】本発明実施の効果を表わすグラフ
【図3】本発明実施の効果を表わすグラフ
【図4】本発明実施の効果を表わすグラフ
【符号の説明】
【0039】
5 一酸化炭素変成器
6 一酸化炭素除去器
7 固体高分子型燃料電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を主成分とする燃料ガス中の一酸化炭素を酸化除去する一酸化炭素除去触媒を、当該一酸化炭素除去触媒を使用する前の前処理として、不活性ガス又は有限値以上10体積%以下の水素を含み残余ガスが不活性ガスである混合ガスと接触させて活性化する一酸化炭素除去触媒の活性化方法。
【請求項2】
前記不活性ガスが、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスから選ばれる少なくとも1種のガスを含んでなる請求項1に記載の一酸化炭素除去触媒の活性化方法。
【請求項3】
前記水素を主成分とする燃料ガスが、炭化水素類又はアルコール類を改質して得られる改質ガスである請求項1又は2に記載の一酸化炭素除去触媒の活性化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−264781(P2008−264781A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144686(P2008−144686)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【分割の表示】特願2000−281936(P2000−281936)の分割
【原出願日】平成12年9月18日(2000.9.18)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】