説明

三次元ビデオストリームの生成方法

【課題】MPEG4−AVCの二次元ビデオ映像をサイド・バイ・サイド方式で三次元立体画像のグラフィックスプレーンまたはバックグラウンドプレーンの画像を視認可能にする。
【解決手段】左目と右目用の映像信号のフレームがサイド・バイ・サイド方式で単位フレームとされた二次元ビデオストリームを有し、バックグラウンドプレーン又はグラフィックスプレーンの少なくとも一方を一つの表示イメージに合成して三次元ビデオストリームを生成する方法であって、グラフィックスデータ1を水平方向に対して1/2に圧縮処理して第1圧縮グラフィックスデータ2を生成し、前記第1圧縮グラフィックスデータを複写処理して当該第1圧縮グラフィックスデータと同一の第2圧縮グラフィックスデータ3を生成し、前記第1圧縮グラフィックスデータ2と前記第2圧縮グラフィックスデータ3とをサイド・バイ・サイド方式で並べたフレーム4を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルーレイディスク向けサイド・バイ・サイド方式により再生可能な三次元ビデオストリームの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元立体映像を再生するサイド・バイ・サイド方式は、図4(A)に示すように、右目用映像信号の1フレームと、左目用映像信号の1フレームとの2つのフレームをそれぞれ水平方向に1/2に圧縮し、これらを横に並べて1枚のフレームとして再生する方式である(特許文献1)。そして、同図(B)に示すように、MPEG4−AVCの二次元ビデオ映像をブルーレイ再生機でデコードし、サイド・バイ・サイド方式に対応したテレビジョン側で三次元立体画像に変換処理すれば、三次元立体画像として視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−34704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MPEG4−AVCの二次元ビデオストリームは、上記のように処理すればサイド・バイ・サイド方式に対応したテレビジョン装置で三次元立体画像として再生できる。
【0005】
しかしながら、三次元立体画像に他のグラフィック素材、たとえば画像の背景、操作ボタン、字幕などを合成して一つの表示イメージとして表示しようとすると以下の問題がある。すなわち、図5(C)に示すように、グラフィックプレーンは1枚の二次元画像であるため、サイド・バイ・サイド方式に対応したテレビジョン側でこのグラフィックスプレーンを再生すると、同図(D)に示すように、左目用エリアにあるグラフィックスが水平方向に引き伸ばされて左目でしか見えず、これを両目で見ようとすると視認に耐えないという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、MPEG4−AVCの二次元ビデオ映像をサイド・バイ・サイド方式で三次元立体画像として再生する場合に、合成して表示するグラフィックスプレーンまたはバックグラウンドプレーンの画像も視認可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、グラフィックスデータを水平方向に対して1/2に圧縮処理するとともにこれを複写処理して2つの圧縮グラフィックスデータを生成し、これら2つの圧縮グラフィックスデータをサイド・バイ・サイド方式で並べたフレームを生成する、ことによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、グラフィックスデータについてもサイド・バイ・サイド方式に準拠したフレームに変換処理するので、MPEG4−AVCの二次元ビデオ映像をサイド・バイ・サイド方式で三次元立体画像として再生する場合に、合成して表示されたグラフィックスプレーンまたはバックグラウンドプレーンの画像も円滑に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】発明の一実施の形態を適用した生成方法を示す工程図である。
【図2】図1の擬似サイドバイサイドミラー化処理(二次元画像)を示す工程図である。
【図3】図1の擬似サイドバイサイドミラー化処理(三次元画像)を示す工程図である。
【図4】一般的なサイド・バイ・サイド方式による三次元立体映像の表示方法を説明するための図である。
【図5】本発明が解決しようとする課題を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の本発明の一実施の形態においては、図1(D)に示すように、静止画である背景画像に、動画であるビデオストリームと静止画である操作ボタン画像とを合成してサイド・バイ・サイド方式による三次元立体画像をディスプレイに一つの表示イメージとして表示する例を挙げて本発明を説明する。ただし、本発明は動画と静止画とを合成して一つの表示イメージの三次元立体画像として表示するものであれば適用することができるので、本例にのみ限定されるものではない。
【0011】
本例の三次元立体画像の再生用データは、表示画像のうちの背景に相当するバックグラウンドプレーン(図1(A))を構成する背景用グラフィックスデータと、表示画像のうちの三次元立体動画像に相当するビデオプレーン(同図(B))を構成する二次元ビデオストリームと、表示画像のうちの操作ボタン又は字幕に相当するグラフィックスプレーン(同図(C))を構成する操作ボタン用グラフィックスデータと、を備え、これらのデータがBDなどの媒体又はサーバの記録装置に格納されている。
【0012】
そして、三次元立体画像の再生用データが格納されたBDを再生機にセットして当該再生機にてデータをデコードし、これら背景用グラフィックスデータと二次元ビデオストリームと操作ボタン用グラフィックスデータとを合成し(レンダリング又はオーバレイとも称される。)、これをサイド・バイ・サイド方式に対応したテレビジョンに出力する。これにより、同図(D)に示すようにテレビジョンのディスプレイに一つの表示イメージとしての三次元立体画像が表示される。なお、同図(D)において三次元立体画像が表現できないため、便宜的に二次元画像にて示している。
【0013】
三次元立体画像の再生用データのうちの二次元ビデオストリームは、MPEG4−AVC規格に準拠したビデオストリームであって、図1(B)に示すように、右目用映像信号の1フレームと、左目用映像信号の1フレームとの2つのフレームをそれぞれ水平方向に1/2に圧縮し、これらを横に並べて1枚のフレームとしたものであり、この形のフレームをストリームに対応した数だけ有する。この二次元ビデオストリームをエンコードしてBDに格納するが、再生時にはデコードし、これをサイド・バイ・サイド方式に対応したテレビジョンに出力すると、テレビジョン側で三次元立体動画像として表示することになる。
【0014】
三次元立体画像の再生用データのうちの操作ボタン用グラフィックスデータは、図1(E)の下に示すような二次元グラフィックス素材で構成され、これらグラフィックス素材は、特に限定はされないがたとえばJPEG(Joint Photographic Experts Group),PNG(Portable Network Graphics)などのファイルフォーマットの画像データで構成されている。同図(E)に示す例では、3つの操作ボタンが縦方向に並び、4つの操作ボタンが横方向に並んだ一つの操作ボタン用グラフィックス素材を有し、この背景用グラフィックス素材を用いて、図1(C)に示す再生用データのうちの操作ボタン用グラフィックスデータを生成する。
【0015】
三次元立体画像の再生用データのうちの操作ボタン用グラフィックスデータの生成方法は、図2(A)に示す操作ボタン用グラフィックス素材1(二次元画像データ)を水平方向に対して1/2に圧縮処理して第1圧縮グラフィックスデータ2を生成し、この第1圧縮グラフィックスデータ2を複写処理して当該第1圧縮グラフィックスデータ2と同一の第2圧縮グラフィックスデータ3を生成し、さらにこれら第1圧縮グラフィックスデータ2と第2圧縮グラフィックスデータ3とをサイド・バイ・サイド方式で並べた一つのフレーム4を生成することにより得られる。
【0016】
得られた一つのフレーム4を図2(B)及び図1(C)に示す。第1圧縮グラフィックスデータ2が左目エリアに、第2圧縮グラフィックスデータ3が右眼エリアにそれぞれ並べられることにより、サイド・バイ・サイド方式に対応したテレビジョンにて再生すると、両眼で見ても違和感のない画像として視認することができる。
【0017】
なお、本例の操作ボタン用グラフィックスデータは一つの静止画であり、常時同じ操作ボタンが表示されるが、複数の静止画の操作ボタン用グラフィックスデータを生成して、所定の時間に同期させて操作ボタンの表示を変更してもよい。また、映画などの字幕を表示したグラフィックス素材を同様の処理で複数のフレーム4を生成し、ビデオストリームのフレームに同期させて表示してもよい。本例では字幕のグラフィックスデータも便宜的に操作ボタン用グラフィックスデータと称する。
【0018】
上述した操作ボタン用グラフィックスデータは、操作ボタン用グラフィックス素材1の水平方向の圧縮処理(第1圧縮グラフィックスデータ2の生成)→第1圧縮グラフィックスデータ2の複写処理(第2圧縮グラフィックスデータ3の生成)→第1圧縮グラフィックスデータ2と第2圧縮グラフィックスデータ3とをサイド・バイ・サイド方式で並べてフレーム4の生成という手順で生成したが、操作ボタン用グラフィックスデータ1を複写処理して当該操作ボタン用グラフィックスデータを2つ生成し、これら2つの操作ボタン用グラフィックスデータ1をそれぞれ水平方向に対して1/2に圧縮処理して第1圧縮グラフィックスデータ2と第2圧縮グラフィックスデータ3を生成したのち、これらをサイド・バイ・サイド方式で並べてフレーム4を生成してもよい。ただし、この処理手順によると圧縮処理が2回必要とされるため処理時間の観点からは上述した手順の方が有利である。
【0019】
三次元立体画像の再生用データのうちの背景用グラフィックスデータは、図1(E)に示すような二次元グラフィックス素材で構成され、これらグラフィックス素材は、特に限定はされないがたとえばJPEG,PNGなどのファイルフォーマットの画像データで構成されている。同図(E)に示す例では、表示画面の中央または全体の背景、左右それぞれの背景、上下それぞれの背景といった5つの領域が異なる模様や色彩とされた一つの背景用グラフィックス素材を有し、この背景用グラフィックス素材を用いて、図1(A)に示す再生用データのうちの背景用グラフィックスデータを生成する。
【0020】
三次元立体画像の再生用データのうちの背景用グラフィックスデータは、図2を参照して説明した操作ボタン用グラフィックスデータと同様にして生成することができる。すなわち、図1(E)に示す背景用グラフィックス素材(二次元画像データ)を水平方向に対して1/2に圧縮処理して第1圧縮グラフィックスデータを生成し、この第1圧縮グラフィックスデータを複写処理して当該第1圧縮グラフィックスデータと同一の第2圧縮グラフィックスデータを生成し、さらにこれら第1圧縮グラフィックスデータと第2圧縮グラフィックスデータとをサイド・バイ・サイド方式で並べた一つのフレームを生成することにより得られる。
【0021】
なお、背景用グラフィックスデータを複写処理して当該背景用グラフィックスデータを2つ生成し、これら2つの背景用グラフィックスデータをそれぞれ水平方向に対して1/2に圧縮処理して第1圧縮グラフィックスデータと第2圧縮グラフィックスデータを生成したのち、これらをサイド・バイ・サイド方式で並べてフレームを生成してもよい。
【0022】
得られた一つのフレームを図1(A)に示す。第1圧縮グラフィックスデータが左目エリアに、第2圧縮グラフィックスデータが右眼エリアにそれぞれ並べられることにより、サイド・バイ・サイド方式に対応したテレビジョンにて再生すると両眼で見ても違和感のない画像として視認することができる。なお、本例の背景用グラフィックスデータは一つの静止画であり、常時同じ背景が表示されるが、複数の静止画の背景用グラフィックスデータを生成して、所定の時間に同期させて背景を変更してもよい。
【0023】
以上のように処理された三次元立体画像の再生用データは、背景用グラフィックスデータとビデオストリームと操作ボタン用グラフィックスデータとを合成することで一つの表示イメージに(レンダリング)してテレビジョンへ出力される。そして、テレビジョン側でサイド・バイ・サイド方式による三次元立体画像処理が実行されることにより、図1(D)に示すように、本例では背景及び操作ボタンが二次元画像として表示され、ビデオストリームが三次元立体画像としてテレビジョンのディスプレイに表示される。
【0024】
そして、背景用グラフィックスデータと操作ボタン用グラフィックスデータは、サイド・バイ・サイド方式に準拠したフレームに変換処理されているので、ビデオストリームに合成されて表示された背景及び操作ボタンの画像は、両眼で見ても違和感のない画像として視認することができる。
【0025】
以上の実施形態では、背景用グラフィックスデータと操作ボタン用グラフィックスデータをサイド・バイ・サイド方式で再生した際に違和感のない画像として視認できるように二次元画像としたが、これらを三次元立体画像とすることもできる。この場合は、上述した実施形態で生成した図2(B)のフレーム4をさらに処理する。
【0026】
図3は操作ボタン用グラフィックスデータを三次元立体画像としてテレビジョンのディスプレイに表示するための処理ステップを示す図であり、便宜的に一部の操作ボタンのみを図示する。本例では、図3(A)及び図3(B)の途中までは図2(A)及び図2(B)に示した処理ステップと同じ処理を実行する。
【0027】
すなわち、図3(A)に示す操作ボタン用グラフィックス素材1(二次元画像データ)を水平方向に対して1/2に圧縮処理して第1圧縮グラフィックスデータ2を生成し、この第1圧縮グラフィックスデータ2を複写処理して当該第1圧縮グラフィックスデータ2と同一の第2圧縮グラフィックスデータ3を生成し、さらにこれら第1圧縮グラフィックスデータ2と第2圧縮グラフィックスデータ3とをサイド・バイ・サイド方式で並べた一つのフレーム4を生成する。
【0028】
さらに、得られたフレーム4の第1圧縮グラフィックスデータ2と第2圧縮グラフィックスデータ3のうちの一方、本例では第2圧縮グラフィックデータ3について、このなかで三次元立体化させたいオブジェクトを左右の視差に相当する距離yだけ水平方向にオフセット処理する。本例では操作ボタンの部分(Top Menu, Chapter, Makingと表示されたボタン部)を背景に対して水平方向にyだけオフセットする。これを操作ボタン用グラフィックスデータとして格納する。
【0029】
以上のように処理された三次元立体画像の再生用データを、背景用グラフィックスデータとビデオストリームと操作ボタン用グラフィックスデータとを合成して一つの表示イメージに(レンダリング)してテレビジョンへ出力すると、テレビジョン側でサイド・バイ・サイド方式による三次元立体画像処理が実行される。これにより、図3(C)に示すように、背景が二次元画像として表示され、ビデオストリーム及び操作ボタンが三次元立体画像としてテレビジョンのディスプレイに表示される。
【0030】
なお、背景用グラフィックスデータについても同様にしてオフセット処理することにより三次元立体画像として再生することができる。
【0031】
なお、上述した実施形態のプレーンは、バックグランドプレーンとビデオプレーンとグラフィックスプレーンとの3つで構成されているが、バックグランドプレーンとビデオプレーンの2つのプレーン又はビデオプレーンとグラフィックスプレーンの2つのプレーンで構成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…グラフィックス素材
2…第1圧縮グラフィックスデータ
3…第2圧縮グラフィックスデータ
4…フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左目用映像信号のフレームと右目用映像信号のフレームとがサイド・バイ・サイド方式で単位フレームとされたMPEG4−AVC規格の二次元ビデオストリームを有するビデオプレーンと、
グラフィックスデータを有する、バックグラウンドプレーン又はグラフィックスプレーンの少なくとも一方と、を一つの表示イメージに合成して三次元ビデオストリームを生成する方法であって、
前記グラフィックスデータを水平方向に対して1/2に圧縮処理して第1圧縮グラフィックスデータを生成する第1ステップと、
前記第1圧縮グラフィックスデータを複写処理して当該第1圧縮グラフィックスデータと同一の第2圧縮グラフィックスデータを生成する第2ステップと、
前記第1圧縮グラフィックスデータと前記第2圧縮グラフィックスデータとをサイド・バイ・サイド方式で並べたフレームを生成する第3ステップと、を備える三次元ビデオストリームの生成方法。
【請求項2】
左目用映像信号のフレームと右目用映像信号のフレームとがサイド・バイ・サイド方式で単位フレームとされたMPEG4−AVC規格の二次元ビデオストリームを有するビデオプレーンと、
第1グラフィックスデータを有する、バックグラウンドプレーン又はグラフィックスプレーンの少なくとも一方と、を一つの表示イメージに合成して三次元ビデオストリームを生成する方法であって、
前記第1グラフィックスデータを複写処理して当該第1グラフィックスデータと同一の第2グラフィックスデータを生成する第1ステップと、
前記第1グラフィックスデータ及び前記第2グラフィックスデータのそれぞれを水平方向に対して1/2に圧縮処理して第1圧縮グラフィックスデータ及び第2圧縮グラフィックスデータを生成する第2ステップと、
前記第1圧縮グラフィックスデータと前記第2圧縮グラフィックスデータとをサイド・バイ・サイド方式で並べたフレームを生成する第3ステップと、を備える三次元ビデオストリームの生成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の三次元ビデオストリームの生成方法において、
前記第1圧縮グラフィックスデータ及び前記第2圧縮グラフィックスデータの一方を視差に対応する距離だけ水平方向にオフセットしたフレームを生成する第4ステップをさらに備える三次元ビデオストリームの生成方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の三次元ビデオストリームの生成方法において、
前記第3ステップで生成されたフレームを、対応する二次元ビデオストリームに時間的同期をとって対応付ける三次元ビデオストリームの生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−70117(P2012−70117A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211684(P2010−211684)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(501064343)株式会社プランネット・アソシエイツ (8)
【Fターム(参考)】