説明

三次元超音波検査装置

【課題】従来よりも検査精度の向上させた三次元超音波検査装置を提供する。
【解決手段】三次元超音波検査装置10は、複数の圧電振動子20をm×nに配設した超音波トランスデューサ11、順次選択される圧電振動子20から発振された超音波を検査対象物14の接合部15に入射させて反射したエコーを受信し、当該エコーの電気信号を検出し信号処理して三次元画像化データを生成する信号処理部17、三次元画像化データの深さ(z)方向の強度分布の第1ピーク及び第2ピークを検出するピーク検出部51,52、第1ピークと第2ピークのz方向距離をx−y平面にマッピングして接合部15の三次元画像を生成する接合部画像生成部36、接合部15の接合状態を二段階の良否判定によって判定する良否判定部37及び接合部三次元画像及び接合部15の接合良否判定結果を表示する表示部38を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の内部構造、接合部の状態、欠陥の状態を超音波で非破壊検査する三次元超音波検査装置に係り、特に、検査対象物の溶接部の状態、溶接欠陥の状態を三次元的に検査する三次元超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物である平板状構造部同士の接合部の溶接状態や溶接欠陥の状態を非破壊検査する技術の1つに超音波探傷技術がある。この超音波探傷技術を採用した超音波検査装置は、検査対象物の溶接部に超音波を照射し、その反射エコーを画像化処理して表示装置に超音波画像で表示し、表示された溶接部の画像を目視により判断し、溶接部の状態や溶接欠陥の状態を非破壊での検査を実施する。
【0003】
具体的には、特開平11−326287号公報(特許文献1)に記載されているように、平板状構造部を検査対象物とし、2つの平板状構造物を重ね合せ、スポット溶接により接合したとき、平板状構造物同士の溶接部の状態や溶接欠陥の状態を超音波検査装置で非破壊検査し、溶接部に溶融凝固部分が形成されているか否か、ブローホール等の溶接欠陥の有無・状態を検査することができる。
【0004】
また、日々三次元超音波検査装置の検査精度の向上が図られており、検査対象物の状態(層構造、検査対象物内の溶接部の欠陥、ボイド又は剥れの有無等)についての判断が精度よく定量的になされるようになってきている。例えば、特開2005−315582号公報(特許文献2)に記載される三次元超音波検査装置は、検査対象物に対する溶接部の位置関係を三次元的に正確にかつ精度よく定量的に検査するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−326287号公報
【特許文献2】特開2005−315582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載される三次元超音波検査装置の場合、接合部の三次元画像から接合部の接合状態を容易に視認できる状態で表示されているとは必ずしもいえなかった。また、中間部の透視画像や底面部の透視画像をすべての(x,y)で同じz範囲を切り取るため、例えば、検査対象の形状等に起因してプローブが少し傾いてしまうような状況が生じると、中間部や底面部を斜めに切り取ることになり、正しく接合部を判定できない。このように、上記従来技術に採用される透視画像を得る方式では、接合部の検査精度が低下してしまう場合があるという課題を招来していた。
【0007】
また、従来、圧接状態では、その圧接状態の程度にも因るが、経験を積んだ人であれば、目視によって圧接を判断することも可能であるものの、上記従来技術に採用される装置では超音波は反射せずに透過してしまうため、圧接状態を自動検出することは出来なかった。
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたものであり、接合部の三次元画像から接合
部の接合状態を従来よりも容易かつ視認性を高めて提供する共に、精密な接合部の検査結
果の取得を実現して接合部の検査精度の更なる向上を図った三次元超音波検査装置を提供
することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る三次元超音波検査装置は、上述した課題を解決するため、特許請求の範囲に記載したように、複数の圧電振動子をマトリクス状あるいはアレイ状に配設した超音波トランスデューサと、前記超音波トランスデューサの複数の圧電振動子のうち、超音波を発振させる圧電振動子を順次選択する駆動素子選択部と、前記駆動素子選択部に選択された圧電振動子から発振される超音波を音響伝播媒体を介して検査対象物の接合部に入射させ、この接合部からの反射エコーを受信し、その反射エコーの電気信号を検出する信号検出回路と、この信号検出回路で検出された電気信号を信号処理し、前記検査対象物の内部に設定された三次元画像化領域内に区画されたメッシュに対応させて三次元画像化データを生成する信号処理部と、前記信号処理部で生成された三次元画像化データの深さ方向(z方向)の強度分布の基準深さよりも深い位置に最初に出現する第1ピークを検出する第1ピーク検出部と、前記第1ピークの出現位置よりも深い位置に最初に出現する第2ピークを検出する第2ピーク検出部と、前記第1ピークの出現位置と前記第2ピークの出現位置との間の深さ方向の距離をx−y平面の各々の位置にマッピングして接合部の三次元画像を生成する接合部画像生成部と、前記接合部画像生成部で生成された接合部の三次元画像および予め記憶された判定基準に従って前記接合部が隙間無く所定の大きさ以上となっているか否かを判定するオープン・スモール判定部と、前記オープン・スモール判定部によって前記接合部が隙間無く所定の大きさ以上となっていると判定された前記接合部に対して圧接の有無を判定する圧接有無判定部と、前記接合部画像生成部で生成された接合部の三次元画像と前記オープン・スモール判定部および圧接有無判定部の判定結果との少なくとも何れか一方を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る三次元超音波検査装置によれば、接合部の三次元画像から接合部の接合状態を従来よりも視認性を高めて提供することができる。また、接合部の三次元画像と共に接合部の接合状態の良否判定結果も表示することもでき、より精密な検査結果を提供することができる。さらに、接合部の接合状態の良否を従来よりも正確に判定することができるので、検査精度を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る三次元超音波検査装置の構成を概略的に示した構成図。
【図2】本発明に係る三次元超音波検査装置に備えられる信号処理部のより詳細な構成を示した構成図。
【図3】本発明に係る三次元超音波検査装置に備えられる表示処理装置のより詳細な構成を示した構成図。
【図4】本発明に係る三次元超音波検査装置に備えられる他の表示処理装置のより詳細な構成を示した構成図。
【図5】本発明に係る三次元超音波検査装置の接合部画像生成部が実施するマッピング処理の概要を示した説明図であり、(a)はマッピングするx−y平面とメッシュとの関係を示した説明図、(b)は(a)に示されるA−A’における検査対象物の断面(z−x平面)を示した説明図。
【図6】本発明に係る三次元超音波検査装置の接合部画像生成部が取得するx−y平面上のメッシュm1,m2,m3(図5)の深さ方向(z方向)の強度分布を示した説明図であり、(a)はメッシュm1のz方向の強度分布、(b)はメッシュm2のz方向の強度分布、(c)はメッシュm3のz方向の強度分布。
【図7】本発明に係る三次元超音波検査装置の接合部画像生成部が生成する接合部の三次元画像の一例を表示した説明図。
【図8】本発明に係る三次元超音波検査装置に備えられる表示処理装置の良否判定部が行なう圧接有無判定の原理を説明する説明図であり、(a)はz−x平面における実際の反射(直接反射および多重反射)の一例を示した検査対象物の断面図(z−x平面)、(b)は(a)に対応するz−x平面における超音波画像の一例を示す説明図。
【図9】本発明に係る三次元超音波検査装置に備えられる表示処理装置の良否判定部でなされる圧接有無判定で用いられる多重反射の経路を説明した説明図であり、(a)は板厚が異なる場合に生じ得る多重反射の経路を示した図、(b)は板厚が同じ場合に生じ得る多重反射の経路を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る三次元超音波検査装置の実施の形態について添付の図面を参照し説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る三次元超音波検査装置の一例である三次元超音波検査装置10の構成を概略的に示した構成図である。
【0014】
三次元超音波検査装置10は、超音波振動と電気信号を相互変換させ、所要周波数の超音波を送受信する超音波トランスデューサ11と、この超音波トランスデューサ11を駆動させる駆動信号を発生させる信号発生部12と、信号発生部12からの駆動信号を選択し、超音波トランスデューサ11の圧電振動子を選択的に駆動させる駆動素子選択部13と、超音波トランスデューサ11から発振される超音波を検査対象物14の接合部である溶接部15に照射し、この溶接部からの反射エコーの信号を超音波トランスデューサ11を介して検出する信号検出回路16と、この信号検出回路16で検出された反射エコーの電気信号を並列演算処理して三次元(3D)超音波画像を生成させる信号処理部17と、信号処理部17で処理された3D超音波画像のデータ処理をさらに行ない検査対象物14の内部構造や溶接部15の状態および溶接欠陥16の状態を自動的に精度よく判定して判定結果を表示させる表示処理装置18とを備える。
【0015】
超音波トランスデューサ11は、圧電素子からなる多数の圧電振動素子20を基板21にm行n列のマトリクス状に整列配置させてマトリクスセンサ11を構成している。超音波トランスデューサ11の各圧電振動子20mnには、信号発生部12で発生した駆動信号が駆動素子選択部13により選択されて加えられる。駆動素子選択部13の選択により各圧電振動子20mnの駆動順序が1個ずつあるいは複数個ずつ決定され、各圧電振動子20mnは所要の駆動タイミングで駆動される。圧電振動素子20はマトリクス状に配設する代りに、一列にあるいは十字のライン状に配列させ、アレイセンサを構成しても良い。
【0016】
超音波トランスデューサ11のセンサ面である超音波発受信面、具体的には、検査対象物14側に液体あるいは固体の音響伝播媒体23が密着される。音響伝播媒体23と検査対象物14との間には超音波の音響的整合をとるカップラント24が設けられる。カップラント24は、音響伝播媒体23が水等の液体を用いる場合は、不要である。
【0017】
また、音響伝播媒体23はボックス状となり、その開口面積は、検査対象物14の検査領域(ターゲット領域)である接合部15の大きさに応じて形成され、音響伝播媒体23の高さは、圧電振動子20から発振される超音波の発振角度(拡がり角度)により決定される。
【0018】
検査対象物14は、例えばスポット溶接にて接合された三枚の板状構造物14a,14b,14cを対象とし、この板状構造物14a,14b,14cのスポット溶接部は、三次元超音波検査装置10により超音波を用いて非破壊にて内部検査される。検査対象物14は、二枚又は四枚以上の板状構造物を重ね合せて溶接したものであっても良い。また、板状構造物の厚さは同一でも異なるものであっても良い。さらに、検査対象物14は金属材料であっても樹脂材料であっても良い。
【0019】
検査対象物14である三枚の板状構造物14a,14b,14cを重ね合せてスポット溶接により接合すると、板状構造物14は接合部15の外表面に溶接用電極による打痕部としての凹部25が形成され、接合部15の厚さTは、凹部25の形成分だけ、接合部15周りの非接合部26より小さくなる。
【0020】
なお、符号27は接合部15の溶融凝固部すなわち溶接による接合の状態が良好な部分であり、符号28は接合部15に生じたブローホール(気孔)等の溶接欠陥部を示す。
【0021】
一方、超音波トランスデューサ11に駆動信号を作用させる信号発生部12は、圧電振動子20の圧電体を駆動させて超音波を発生させるべく、外部電圧の印加により、パルス状あるいは連続した駆動信号を発生させる。発生した駆動信号は駆動素子選択部13により駆動させる各圧電振動子20mnが選択され、選択された圧電振動子20mnに駆動信号が所要のタイミングで作用せしめられる。駆動素子選択部13は、駆動すべき1つまたは複数の圧電振動子20を所要のタイミングで順次選択しており、選択された圧電振動子20に信号発生部12からの駆動信号が加えられると、圧電振動子20が駆動され、所要周波数の超音波Uを発振させるようになっている。
【0022】
超音波トランスデューサ11の各圧電振動子20mnから順次発振された超音波は、音響伝播媒体23を通り、カップラント24を経て検査対象物14の内部に入射され、検査対象物14の検査領域15(非接合部26、溶融凝固部27、ブローホール等の溶接欠陥部28、底面29)に達し、各境界層で反射する。
【0023】
検査対象物14の底面29、非接合部26、溶融凝固部27、溶接欠陥部28の各境界層で反射した超音波の反射エコーは、検査対象物14から音響伝播媒体23を経てマトリクスセンサとしての超音波トランスデューサ11の各圧電振動子20に時間差をもってそれぞれ入力され、各圧電振動子20に入力された反射エコーは、電気信号に変換されて信号検出回路16に入力され、ここで反射エコーの電気信号が各圧電振動子20毎に検出される。
【0024】
この三次元超音波検査装置10は、超音波トランスデューサ11の各圧電振動子20のうち、駆動素子選択部13で選択された圧電振動子20mnに駆動信号が加えられると、この圧電振動子20mnが作動して超音波Uを発振させる。この発振した超音波Uが音響伝播媒体23や必要に応じたカップラント24を経て検査対象物14の接合部15である検査領域に照射される。検査対象物14の検査領域15に照射された超音波Uは、検査領域15の密度的境界層から一部が反射して反射エコーとなる。この反射エコーは、カップラント24、音響伝播媒体23を通ってマトリクスセンサ(超音波トランスデューサ11)の各圧電振動子20で時間差を持ってそれぞれ受信し、各圧電振動子20による圧電
換により、反射エコーの電気信号として信号検出回路16に送られ、検出される。
【0025】
超音波トランスデューサ11は、各圧電振動子20mnに、駆動信号選択部13で駆動信号を順次作用させることにより、各圧電振動子20mnは、順次所要のタイミングで駆動され、各圧電振動子20mnから発振された超音波の反射エコーを、マトリクスセンサ11でそれぞれ2次元的に受信する。圧電振動子20mnのm行n列(図1に示される例ではx軸方向に10個×y軸方向に8個の計80個)が、マトリクス状に配設された場合、各圧電振動子20mnが駆動素子選択部13により順次駆動信号が加えられると、駆動信号が順次加えられるタイミングで各圧電振動子20mnから超音波Uが順次発振せしめられ、各圧電振動子20mnから順次発振された超音波の反射エコーをマトリクスセンサ11で順次受信し、その受信信号である反射エコーの電気信号をその都度信号検出回路16に送るようになっている。
【0026】
このため、信号検出回路16には、超音波トランスデューサ11の作動によりマトリクス状配列の個々の圧電振動子20mnから発振された超音波の反射エコーをマトリクスセンサ11で2次元的に受信する。マトリクスセンサ11は超音波を発振する個々の超音波振動子20mn分の反射エコーをそれぞれ受信し、反射エコーの電気信号として信号検出回路16に送られ、この信号検出回路16を経て信号処理部17に送られる。
【0027】
信号検出回路16は、マトリクスセンサ11で発生する反射エコーの電気信号を検出するものである。検出された電気信号のうち、検査に必要な複数のものは、信号処理部17内の増幅器31a,31b,…,31iにそれぞれ導かれる。
【0028】
増幅器31a,31b,…,31iは、導かれた反射エコーの電気信号をそれぞれ増幅し、これをA/D変換器32a,32b,…,32iにそれぞれ供給している。A/D変換器32a,32b,…,32iは、導かれた電気信号をA/D変換し、これを並列プロセッサ33a,33b,…,33iにそれぞれ導くものである。
【0029】
信号処理部17内の並列プロセッサ33は、A/D変換器32a,32b,…,32iから導かれたディジタル信号を並列的にかつ迅速に演算処理し、それぞれ、検査領域(画像化領域)に区画された各メッシュからの反射強度を特定するものである。特定された反射強度は、統合プロセッサである三次元画像生成部34により統合されて三次元画像化情報(データ)となり、表示処理装置18に送られる。表示処理装置18は、導かれた三次元画像化データを接合部データ処理部35でデータ処理し、処理後のデータから接合部画像生成部36で接合部15の三次元画像を生成し、検査対象物14の検査領域(測定部)15の良否を判定部37で判断する一方、この良否判定結果や接合部画像生成部36からの三次元超音波画像を超音波探傷画像として表示部38に表示させる。
【0030】
図2は、三次元超音波検査装置10に備えられる信号処理部17のより詳細な構成を示した構成図である。
【0031】
図2では、図1に示される並列プロセッサ33および三次元画像生成部(統合プロセッサ)が詳細に示されている。具体的に説明すると、信号処理部17に備えられる並列プロセッサ33はそれぞれ、内部メモリ40a,40b,…,40i、および演算回路41a,41b,…,41iを有する。また、統合プロセッサである三次元画像生成部34は、画像統合処理部44、境界抽出処理部45、形状データ記憶部46、テーブルデータ格納部47をそれぞれ有する。
【0032】
内部メモリ40a,40b,…,40iは、それぞれA/D変換器32a,32b,…,32iから供給されたA/D変換信号とテーブルデータ格納部47から得た伝播時間データとを一時格納するものである。演算回路41a,41b,…,41iは、それぞれ、内部メモリ40a,40b,…,40iに格納されたA/D変換信号と伝播時間データとから、画像化領域(検査領域)の各メッシュからの反射強度を特定し、各メッシュと反射強度とを対応付けるものである。対応付けられた反射強度は三次元画像生成部(統合プロセッサ)34の画像統合処理部44に供給される。
【0033】
画像統合処理部44は、供給された反射強度を検査領域の各メッシュ毎に加算し三次元画像化データを生成するものである。生成された三次元(3D)画像化データは、表示処理装置18に導かれる。
【0034】
一方、境界抽出処理部45は、画像統合処理部44が出力する結果から検査対象物14の内部に存在する境界を抽出するものである。抽出された境界に関する情報はテーブルデータ格納部47に送られる。
【0035】
形状データ記憶部46は、検査対象物14に関する表面形状や境界層構造に関する情報を予め記憶するものである。記憶された情報は、必要に応じてテーブルデータ格納部47に送られる。
【0036】
テーブルデータ格納部47は、マトリクスセンサ11の各圧電振動子20mn間の超音波伝播時間(または等価的な距離でもよい。)をテーブル化し、予め格納しておくものである。格納された超音波伝播時間は、その一部または全部が、各並列プロセッサ33の内部メモリ40a,40b,…,40iに必要に応じて転送される。
【0037】
また、テーブルデータ格納部47に格納された超音波伝播時間は、境界抽出処理部45が供給したり、検査対象物14における抽出された境界に関する情報や形状データ記憶部46が供給する、検査対象物14に関する表面形状や層構造に関する情報により、再設定され得る。
【0038】
このように、信号処理部17の並列プロセッサ33と三次元(3D)画像生成部34は、A/D変換器32a,32b,…,32iから導かれたディジタル信号を処理し検査対象物14の接合部15の状態を可視化する三次元画像化データIを生成するものである。信号検出回路46により検出された反射エコーの電気信号から開口合成処理により、検査対象物14の内部に設定された三次元画像化領域内の各メッシュに対応させて三次元画像化データを生成する。
【0039】
三次元画像生成部34は、超音波トランスデューサ11から見て正面(x−y平面)の方向と、正面と直交する2つの側面(y−z平面)、(z−x平面)に対して垂直な方向の合計3つの方向から三次元画像化データIを透視すると共に、それぞれ三方向の三次元画像化データIのうち透視方向に重なった画像化データのうち最も値の大きいデータを平面に投影することで各方向から透視して三枚の平面(ニ次元)画像を生成する。三次元画像生成部34により生成された三次元画像化データIは、表示処理装置18に出力される。
【0040】
図3および図4は、三次元超音波検査装置10に備えられる表示処理装置18のより詳細な構成を示した構成図である。
【0041】
例えば、図3に示される表示処理装置18は、より詳細には、第1ピーク検出部51と、第2ピーク検出部52と、減衰補正処理部53と逆補正処理部54とを有する接合部データ処理部35と、接合部画像生成部36と、良否判定部37に加え、必要に応じて接合部画像生成部36および良否判定部37で利用される検査対象(板組み)14の情報(少なくとも板組みを構成する各板の厚さ情報を含む)を記憶する板組み情報記憶部56(図1において省略)を備える。
【0042】
図3に示される接合部データ処理部35は、第1ピーク検出部51、第2ピーク検出部52、減衰補正処理部53および逆補正処理部54によって、接合部15の三次元画像を生成するために必要となる各(x,y)に対する深さ方向(z方向)の強度分布の第1ピークおよび第2ピークを検出する。
【0043】
ここで、第1ピークとは、三次元画像化データIの深さ方向の強度分布(後述する図6に示す)においてz=0に最も近い位置に出現するピークをいい、第2ピークとは、第1ピークに続いて検査対象物14内の第1ピーク出現位置よりも深い位置に出現するピークをいう。なお、後述する図6において示されるピーク61,62が、それぞれ、第1ピークおよび第2ピークである。
【0044】
接合部画像生成部36は、接合部データ処理部35が検出した各(x,y)に対する深さ方向(z方向)の強度分布の第1ピークおよび第2ピークを用いて接合部15の三次元画像を生成する。
【0045】
良否判定部37は、接合部画像生成部36が生成した接合部15の三次元画像および二段階の判定基準に従って接合部15の接合状態の良否を判定する。図3に示されるように、良否判定部37は、より詳細には、第1段階の接合良否判定を行なうオープン・スモール判定部58と、第2段階の接合良否判定を行なう圧接有無判定部59とを有し、二つの接合良否判定段階を経て接合部15の接合状態の良否を判定する。
【0046】
ここで、オープン・スモールとは、オープンおよびスモールを意味し、オープンとは、接合部15が溶融および接合されておらず、空間としてオープンになっている状態を示し、スモールとは、接合部15の大きさが接合基準を満たす大きさとなっていない状態を示す。オープンおよびスモールの少なくとも一方の状態にある接合部15が存在する場合には「否」となり、オープンおよびスモールの何れの状態にも該当しない場合には「良」となる。
【0047】
表示処理装置18における接合部データ処理部35、接合部画像生成部36、板組み情報記憶部56および良否判定部37について順次説明する。
【0048】
接合部データ処理部35の第1ピーク検出部51は、三次元画像化データIの深さ方向の強度分布の第1ピークを検出する構成要素であり、第1ピークの検出を行なう範囲の設定を受け付けて保持する機能(第1ピーク検出範囲設定機能)、設定された範囲において最大強度のピークを第1ピークとして検出する機能(第1ピーク検出機能)および検査対象物14の表面(カップラント24側の面)の位置を測定する機能(表面位置測定機能)を有する。
【0049】
第1ピーク検出部51は、設定された第1ピークの検出範囲に従い、各(x,y)に対して当該検出範囲内における最大強度のピークを第1ピークとして検出する。そして、各(x,y)の第1ピーク検出位置(z座標)を用いて検査対象物14の表面(カップラント24側の面)の位置を求める。この時、圧痕深さ(図5に示されるt)も測定される。
【0050】
第2ピーク検出部52は、三次元画像化データIの深さ方向の強度分布の第2ピークを検出する構成要素であり、実質的には第1ピーク検出部51と同等の機能を有する。すなわち、第2ピークの検出を行なう範囲の設定を受け付けて保持する第2ピーク検出範囲設定機能、設定された範囲において最大強度のピークを第2ピークとして検出する第2ピーク検出機能および検査対象物14の底面29の位置を測定する底面位置測定機能を有する。
【0051】
第2ピーク検出部52は、設定された第2ピークの検出範囲に従い、各(x,y)に対して当該検出範囲内における最大強度のピークを第2ピークとして検出する。そして、各(x,y)の第2ピーク検出位置(z座標)を用いて検査対象物14の底面29の位置を求める。この時、底面側の圧痕深さも測定される。
【0052】
第2ピークの検出範囲は、第1ピークが存在するz座標よりも必ず大きいz座標となるように範囲設定される。例えば、第1ピーク位置(例えばz=z1)から所定の深さ(例えばα)を増した位置(z=z1+α)を第2ピーク検出範囲の開始位置とするように設定される。
【0053】
減衰補正処理部53は、音響伝播媒体23と板状構造物14aが密着しないときに音響伝播媒体23の底面エコーを第1ピークとして誤検出するのを防止するため、深さ方向(z方向)の強度分布に対して、深さが増すにつれて強度を増幅する補正(以下、「減衰補正」と称する)を行なう。具体的には、補正後のz方向の強度分布F(v)を、以下の数式1を用いて算出する。
[数1]
F(v)=v/rz
v:深さzにおける反射強度 r:補正係数 z:深さ
【0054】
減衰補正処理部53は、減衰補正処理に用いる数式1の情報、各パラメータの情報、補正係数rの設定値(0<r<1)の情報等の減衰補正処理の実行に必要な情報を格納しており、入力された三次元画像化データIから取得される深さzにおける強度vおよび深さzと、補正係数rと数式1にF(v)を算出する数式(=v/rz)とを取得して数式1のF(v)を算出する。
【0055】
減衰補正処理は、音響伝播媒体23と板状構造物14aが密着しないときに音響伝播媒体23の底面エコーを第1ピークとして誤検出するのを防止するための補正処理であって、音響伝播媒体23と板状構造物14aが密着しており音響伝播媒体23の底面エコーを第1ピークとして誤検出し得ないような場合にまで実施されるものではない。すなわち、減衰補正処理は、第1ピークの検出をより正確に行なうために必要に応じて実施される任意的処理(補助的処理)である。
【0056】
減衰補正処理部53は、z方向の強度分布の第1ピークの検出に際して減衰補正処理は任意であり常に実施を要するものではないので、減衰補正処理の実施又は未実施をユーザが適宜選択して設定可能に構成されており、減衰補正処理の実施が設定(選択)されている場合に限り減衰補正処理が実行する。なお、減衰補正処理部53の減衰補正は、補正後の強度F(v)を基の強度vよりも大きくする補正であるから、補正係数rは1未満の正数となる。
【0057】
逆補正処理部54は、第2ピークの繰り返しエコーである第3ピークや第4ピークを第2ピークと誤検出するのを防止するため、深さ方向(z方向)の強度分布に対して、深くなるにつれて強度を強制的に減衰させる(減衰の度合いをより強める)補正(以下、「逆補正」と称する)を行なう。
【0058】
第2ピークの誤検出は、第2ピークよりもより深い位置で検出される第3ピークや第4ピークの方が強い反射が起こった場合に生じる。例えば、第1ピークの位置が浅い位置であった場合、第2ピークの位置の検出を行なう範囲も浅い位置となる。理論的には第2ピークに比べて、第3ピークや第4ピーク等の第2ピーク以降のピークは繰り返しのエコーであるから繰り返しによって強度が減衰するので第2ピークよりも強い反射にはなり得ないはずである。しかし、実際には、トランスデューサ11の当て方や検査対象14の表面状態によっては第2ピークよりもその繰り返しエコーである第3ピークや第4ピークの方がより強い反射になる場合がある。逆補正処理部54はこのような第2ピークの誤検出が生じ得る場面において有効である。
【0059】
なお、逆補正処理部54と減衰補正処理部53との相違は、格納される補正係数rがr>1に設定されているか、0<r<1に設定されているかの相違であって基本的構成は実質的に相違しない。また、逆補正処理部54が実施する逆補正についても、減衰補正と同様の任意的処理(補助的処理)であって、第2ピークの検出をより正確に行なうために必要に応じて実施される補正処理である。
【0060】
一方、図4に示される接合部データ処理部35Aは、図3に示される接合部データ処理部35に対して第1ピークを検出する点では共通するが、第1ピーク検出部51の代わりに、第1ピーク検出部51とは第1ピークの検出手法が異なる第1ピーク検出部71を備える点で相違する。なお、他の構成要素については実質的に相違しないので、他の構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0061】
第1ピーク検出部71は、第1ピーク検出部51に対して、図2に示される音響伝播媒体23と板状構造物14aが密着しないことに起因する第1ピークの誤検出を防止するための機能(第1ピーク誤検出防止機能)を付加したものである。第1ピーク検出部71は、第1ピーク誤検出防止機能を有することによって、音響伝播媒体23と板状構造物14aが密着しない場合に音響伝播媒体23の底面エコーを第1ピークとして誤検出することを防止することができる。
【0062】
第1ピーク検出部71の第1ピーク誤検出防止機能は、第1ピーク検出部71が音響伝播媒体23と板状構造物14aが密着しないときに音響伝播媒体23の底面エコーについては位相が反転しないが、板状構造物14aからの反射エコーについては位相が反転することを利用して実現される。すなわち、第1ピーク検出部71は、位相の反転の有無を確認することによって、底面エコーであるか反射エコーであるかを識別して、音響伝播媒体23の底面エコーを第1ピークとして誤検出することを防止することができる。
【0063】
このように構成される接合部データ処理部35,35Aは、各(x,y)に対して深さ方向(z方向)の強度分布の第1ピークおよび第2ピークを検出し、検出した第1ピークおよび第2ピークの各(x,y)におけるz座標に基づいて検査対象14の表面および底面29の位置を測定する。
【0064】
表示処理装置18に備えられる接合部画像生成部36について、図5、図6および図7を適宜参照して説明する。
【0065】
図5(図5(a),図5(b))は、接合部画像生成部36が各(x,y)において実施するマッピング処理の概要を示した説明図である。より詳細には、図5(a)は、マッピングするx−y平面とメッシュとの関係を示した説明図、図5(b)は、図5(a)に示されるA−A’における検査対象物14(14a,14b,14c)の断面(z−x平面)を示した説明図である。なお、図5(b)に示される符号tは圧痕深さである。
【0066】
図6は、図5に示される三つのメッシュm1,m2,m3と対応する深さ方向(z方向)の強度分布を示した説明図であり、図6(a)、図6(b)および図6(c)は、それぞれ、図5に示されるメッシュm1,m2,m3と対応している。
【0067】
図7は、接合部画像生成部36が生成する接合部15の三次元画像の一例を表示した説明図である。なお、図7に示されるブランクのメッシュ、GのメッシュおよびBのメッシュは、それぞれ、赤色、緑色および青色を意味する表記である。
【0068】
接合部画像生成部36は、接合部データ処理部35(35A)が検出した各(x,y)に対する深さ方向(z方向)の強度分布における第1ピーク61と第2ピーク62からx−y平面の各メッシュ単位に反射の生じている深さを求める。
【0069】
例えば、図5(a)に示されるメッシュm1,m2,m3について、図5(b)に示されるように、それぞれ、一枚目の板状構造物14aと二枚目の板状構造物14bとの間に存在する非接合部26と、二枚目の板状構造物14bと三枚目の板状構造物14cとの間に存在する非接合部26と、底面29で反射しているものとする。
【0070】
接合部画像生成部36は、各メッシュ単位に反射の生じている深さを求めるため、図6に示されるような各(x,y)に対する深さ方向(z方向)の強度分布の検出された第1ピーク61と第2ピーク62との間の距離dを求める。図5に示される例の場合、メッシュm1,m2,m3の反射が生じている深さは、それぞれ、d1,d2,d3(d1<d2<d3)として算出される。
【0071】
各メッシュ単位に反射の生じている深さが算出されると、接合部画像生成部36は、算出された深さが予め設定された深さの範囲と表示部38に表示する色との関係に基づいて各メッシュの色を求めた深さと対応する色にマッピングして接合部画像を得る。
【0072】
例えば、図7に示されるように、算出された深さの検査対象物14の全体厚さ(接合部画像生成実行前に入力され接合部画像生成部36に与えられる)に対する比が0以上1/3未満は赤色(図7においてブランク)、1/3以上2/3未満は緑色(図7においてG)、2/3以上1未満は青色(図7においてB)と設定されている場合、求めた深さが上記の何れに該当するかが判断され、そのメッシュを何色で表示するかが決定される。なお、この例では誤差を加味して深さ範囲を設定していないが、誤差を加味して深さ範囲を設定しても良い。
【0073】
このようにして各(x,y)に対してマッピングする色が決定すると、各(x,y)について決定した色でマッピングして図7に示されるような接合部画像が得られる。接合部画像を見れば、図7に示される例の場合、青色のメッシュが三枚目まで接合されている範囲を示し、緑色のメッシュが二枚目まで接合されている範囲を示し、赤色のメッシュが二枚目まで接合されていない範囲又は溶接欠陥部28が存在する範囲を示しており、容易に接合部15の接合状態を視認(把握)することができる。
【0074】
なお、本実施形態では一例として検査対象物である板状構造物14a,14b,14cが三枚の場合を説明しているが、枚数が増加しても三枚目以降も順次接合枚数が増える毎に色を変えてマッピングできるようにすれば、説明した例と同様に何枚目まで接合しているかが判定できる接合部画像が生成できる。
【0075】
また、接合部画像生成部36は、接合部15の三次元画像(接合部画像)から検査対象物14内の接合部15の大きさ・位置および溶接欠陥部28の大きさ・位置を検出して計測する機能を有しており、検査対象物14内の接合部15の大きさ・位置および溶接欠陥部28の大きさ・位置の計測を行なうことができる。
【0076】
図7に示される接合部画像では、青色にマッピングされたメッシュと他の色(緑色および赤色)にマッピングされたメッシュとの外側の境界線(図7に示される太線箇所)が接合部輪郭形状として表される。また、ブローホール等の溶接欠陥部28が接合部内に存在する場合には、青色の連続領域の内部に形成された閉じた赤色領域(図7に示される例では単一のメッシュ)がブローホール等の溶接欠陥部28として飛び石状に表され、欠陥部輪郭形状は、連続する青色領域と赤色領域との境界線として表される。
【0077】
なお、溶接欠陥部28が存在しない場合には青色の連続領域内にはこの赤色領域は出現しない。また、溶接欠陥部28の深さ位置によっては、例えば二枚目の板状構造物14bと三枚目の板状構造物14cとの間に存在する非接合部26近傍に溶接欠陥部28があるような場合には、溶接欠陥部28は青色の連続領域の内部に形成された閉じた緑色領域、もしくは緑色と赤色からなる混合領域として表される場合も想定される。
【0078】
このようにして得られる接合部画像によって、接合部輪郭形状および欠陥部輪郭形状から接合部15の大きさと接合部15の中心位置が確定でき、接合部15内部に生成される溶接欠陥部28についても大きさと位置が確定できる。
【0079】
なお、接合部画像生成部36が接合部画像を生成するに当たり採用したマッピングの方式、色の選択又は表示のレベル数(何段階に表示するか)等は説明した例に限定されるものではなく種々のものから適宜選択し得るものであって任意の要素である。
【0080】
板組み情報記憶部56は、接合部画像生成部36における画像生成および良否判定部37における判定の精度を向上させるため、必要に応じて接合部画像生成部36および良否判定部37で利用される検査対象(板組み)14の各板厚さの情報を記憶する記憶領域である。
【0081】
例えば、検査対象(板組み)14の各板厚さがほぼ均等である場合には、測定誤差を加味しても深さ位置を誤検出して緑を青と判断したり、赤を緑と判断したりすることは少ない。しかしながら、板厚が異なる板状構造物で構成される検査対象の場合、上記説明例のような設定では深さ位置を誤検出する場合が生じ得る。そこで、この様な場合には、接合部画像生成部36は、各板状構造物の板厚の情報を参照しマッピングする色を決定する際の手掛かりとする。
【0082】
例えば、図5に示される検査対象(板組み)14(14a,14b,14c)の各板厚がそれぞれta,tb,tc(ta≠tb≠tc>0)であって、許容誤差をe、求めた各(x,y)の深さdとした場合、以下の数式(条件式)2の式(1)を満たす場合には赤色、式(2)を満たす場合には緑色、式(3)を満たす場合には青色という具合にマッピングする色が決定される。これ以降は上述した例と同様である。
[数2]
d<ta+e ・・・(1)
ta+tb−e<d<ta+tb+e ・・・(2)
ta+tb+tc−e<d<ta+tb+tc+e ・・・(3)
ここで、ta,tb,tcは板状構造物14a,14b,14cの各板厚、eは許容誤差、dは求めた各(x,y)の深さdである。なお、ここで、許容誤差eは上限と下限で異なる値に設定してもよい。
【0083】
接合部画像生成部36は、接合部15の三次元画像から検査対象物14内の接合部15の大きさ・位置および溶接欠陥部28の大きさ・位置の計測結果を良否判定部37および表示部38へ出力する。
【0084】
良否判定部37は、接合部画像生成部36から入力された接合部画像および良否判定部37に格納される判定基準の情報と当該判定基準で必要となる数式およびパラメータの情報に基づいて接合部15の接合状態の良否を二段階の判定によって判定する。具体的には、良否判定部37のオープン・スモール判定部58が第1段階の接合良否判定(オープン・スモール判定)を行ない、良否判定部37の圧接有無判定部59が第2段階の接合良否判定(圧接有無判定)を行なう。
【0085】
良否判定部37が接合部15の接合良否を二段階判定によって判定するのは、接合部画像生成部36が生成した接合部15の三次元画像のみでは、規定の大きさで空隙無く接してはいるものの二つの板材が溶着していない、すなわち、圧接の箇所を含む接合部15が存在する場合、圧接の状態(異常状態:否)と溶接により接合した状態(正常状態:良)との区別がつかず、接合部15の圧接状態を検出できないからである。これは、未接合部分(オープン部分)では明らかな反射があるため、赤色や緑色でマッピングできる一方、圧接部分は超音波エコーが非常に微弱なため、当該箇所を第2ピーク62として確実に検出することは困難となるからである。
【0086】
そうすると、接合部15の接合状態良否判定の精度を向上させるには、圧接状態の検出精度を高めることが重要である。そこで、良否判定部37は、まず、第1段階としてオープン・スモール判定を行い、オープン状態又はスモール状態にある明らかに不良(否)の検査対象物14を除外し、オープン・スモール判定を合格した残りの検査対象物14に対して、第2段階として接合部15の圧接の有無、すなわち、圧接箇所の存否を判定するように構成される。
【0087】
良否判定部37の接合部15の接合良否判定の第1段階判定であるオープン・スモール判定では、オープン・スモール判定部58が接合部15にオープンな空間が存在していない(オープン状態ではない)か、および、接合部15の大きさが接合基準を満たす大きさとなっている(スモール状態ではない)かのオープン・スモール判定を行なう。そこで、オープン・スモール判定部58が接合部15の接合状態を「良」と判定した場合に第2段階の接合良否判定である圧接有無判定を行う。一方、オープン・スモール判定部58が接合部15の接合状態を「否」(不良)と判定した場合、接合部15の接合状態の判定を終了する。
【0088】
良否判定部37の接合部15の接合良否判定の第2段階判定である圧接有無判定は、圧接有無判定部59が圧接状態にある、すなわち、規定の大きさで空隙無く接してはいるものの二つの板材が溶着していない状態にあるか否かを判定する。具体的には、圧接有無判定部59が接合部15として検出されたエリアに着目して、第1ピーク61と第2ピーク62の間(正確には1枚目の板状構造物14aの底面付近)のエコー強度を調べ、圧接の有無を判定する。
【0089】
圧接が存在しない検査対象物(正常品)14と圧接の存在する検査対象物14とでは、上述した1枚目の板状構造物14aの底面付近の領域において、超音波エコーの反射強度に違いが見られ、圧接の存在する検査対象物14の場合、圧接の存在しない正常な検査対象物14と比較すると、圧接の存在する検査対象物14よりも若干強い反射強度が得られる。そこで、圧接有無判定部59は、この得られる反射強度の違いを利用して圧接有無判定を行なう。
【0090】
また、発明者は、圧接の有無の検出の際には、第2ピーク62と第2ピーク62に続く第3ピークと間のエコー強度、すなわち、多重反射(後述する図8又は図9参照)に基づく情報を参照することによって、第1ピーク61と第2ピーク62との間のエコー強度を用いる場合よりも圧接の有無を正確に判定できるという知見を得ている。そこで、3次元超音波検査装置10の表示処理装置18に適用される良否判定部37の圧接有無判定部59では、多重反射している超音波エコーの強度を用いて圧接の有無を判定する。なお、上記知見は、圧接有無判定部59の圧接有無判定において、第1ピーク61と第2ピーク62との間のエコー強度を用いることを妨げるものではない。
【0091】
圧接有無判定部59が行なう圧接有無判定について、図8および図9を参照して説明する。
【0092】
図8は、良否判定部37の圧接有無判定部59が行なう圧接有無判定の原理を説明するために示した説明図であり、図8(a)は検査対象物14の内部で起こる実際の反射(直接反射および多重反射)の一例を示した検査対象物14の断面図(z−x平面)、図8(b)は図8(a)に対応する二次元(z−x平面)の超音波画像の一例を示す説明図である。なお、図8に示される検査対象物14は、説明の便宜上、二枚の板状構造物14a,14bからなる場合を一例として示す。
【0093】
ここで、図8(b)に示される符番について、75は図8(a)に示される検査対象物14の表面(上面)を示す線、76は検査対象物14の接合していない板状構造物14aの底面を示す線、77は検査対象物14の底面を示す線、78は直接反射した超音波エコーにより求まる接合部15の存在領域(以下、「直接反射領域」と称する。)、79は多重反射した超音波エコーにより求まる接合部15の存在領域(以下、「多重反射領域」と称する。)、80はオープン・スモール判定において接合部15の接合状態が良と判定されたメッシュが存在する領域(以下、「オープン・スモール判定良領域」と称する。)、82は圧接有無判定に使用するメッシュが存在する領域(以下、「圧接有無判定領域」と称する。)である。
【0094】
図8(a)に示されるように、検査対象物14に入射される超音波の反射は、反射波R1,R3のように直接反射するもののみならず、反射波R2,R4,R5のように多重反射するものがある。圧接有無判定では、図8(a)に示される反射波R2,R4,R5のような多重反射した超音波エコーを用いる。
【0095】
図8(b)に示される二次元の超音波画像は、図中のz方向の長さがトランスデューサ11から入射された超音波が反射して戻ってくる時間に比例している。検査対象物14を進行する超音波の速さは定数と考えられるので、図8(b)のz方向の長さは超音波の進んだ距離(経路長)に相当する。すなわち、図8(a)に示される左右の中央位置では表面から底面までの距離毎に検査対象物14の底面で反射した反射波に基づく検査対象物14の底面を示す線77が現れることになる。
【0096】
そこで、圧接有無判定部59の圧接有無判定では、検査対象物14の表面を示す線75と検査対象物14の底面で直接反射した反射波R3に基づいて求められる検査対象物14の底面に相当する位置を示す線77との間に存在する直接反射領域78ではなく、反射波R3に基づいて求められる検査対象物14の底面に相当する位置を示す線77と検査対象物14の底面で二度反射(多重反射の一例)した反射波R5に基づいて求められる検査対象物14の底面に相当する位置を示す線77との間に出現する多重反射領域79に着目する。
【0097】
圧接有無判定部59が行なう圧接有無判定では、まず、オープン・スモール判定部58が行なったオープン・スモール判定によって「良」と判定されたオープン・スモール判定良領域80のメッシュがどこに存在するかの情報をオープン・スモール判定部58から取得する。そして、図8(b)に示されるように、取得したオープン・スモール判定良領域80の外延から所定長の領域を除外した残りの領域を圧接有無判定領域82として抽出する。
【0098】
例えば、圧接有無判定部59が取得したオープン・スモール判定良領域80がx方向およびy方向にそれぞれ五つ、5×5=25の正方形で現される領域であって、除外する所定長をメッシュ一つ分とすると、圧接有無判定領域82は、オープン・スモール判定良領域80のx方向およびy方向にそれぞれについて両端から一つずつ削除して中央部分に残る(5−2)×(5−2)=9の正方形で現される領域となる。
【0099】
圧接有無判定領域82が決定すると、続いて、圧接有無判定部59は、接合部画像生成部36が取得しているx−y平面上に存在する各メッシュのz方向の超音波エコー強度(反射強度)を用いて、多重反射領域79に存在する1枚目の板状構造物14aの底面に相当する位置、すなわち、圧接が存在し得る位置(z座標)での超音波エコー強度を圧接の存在しない正常品の同位置における超音波エコー強度と比較する。比較基準となる正常品の超音波エコー強度は、予め他の検査方法等によって正常であることが確認されており、圧接有無判定部59に読み出し可能に格納される。
【0100】
具体的に多重反射領域79における1枚目の板状構造物14aの底面に相当する位置として設定されるz座標は、例えば、反射波R3に基づく検査対象物14の底面を示す線77の位置から1枚目の板状構造物14aの板厚taの分を加算した位置を圧接が存在し得る位置とみなして決定する。なお、z座標は板組み情報記憶部56に予め格納される板組みの情報から求める。
【0101】
ここで、圧接有無判定部59の圧接有無判定において直接反射した反射波よりも多重反射した反射波を用いる優位性について補足する。
【0102】
図9は、良否判定部37の圧接有無判定部59が行なう圧接有無判定で用いられる多重反射の経路を説明する説明図であり、図9(a)は板厚が異なる場合に生じ得る多重反射の経路を示した図であり、(b)は板厚が同じ場合に生じ得る多重反射の経路を示した図である。
【0103】
図9(a)に示されるように、直接反射の場合、同じ経路長を有する超音波の経路としては一通りしか存在しないが、多重反射の場合、同じ経路長を有する超音波の経路は、板厚が異なる場合でも二通り存在する。また、同じ板厚の場合には、図9(b)に示されるように四通り存在する。このように、多重反射の場合の方が超音波の経路が複数存在するため、情報が加算されて直接反射の場合よりも圧接有無判定の正確性が向上すると考えられる。
【0104】
なお、超音波は媒体中を伝播するにつれて、また、反射の度に減衰していくため、超音波の減衰を考慮して適切なz座標を選択する必要がある。圧接有無判定領域82として抽出し得る多重反射領域79は、検査対象物14の底面でp(pは2以上の自然数)回反射した反射波に基づいて求められる検査対象物14の底面を示す線77と、検査対象物14の底面でp+1(pは2以上の自然数)回反射した反射波に基づいて求められる検査対象物14の底面を示す線77に存在するが、pが大きくなるにつれてS/Nが低くなる傾向にあるため、p=5等のように反射回数がおおくなり過ぎると多重反射領域79から圧接有無判定領域82として抽出することが好ましくない場合もある。
【0105】
また、良否判定部37(オープン・スモール判定部58および圧接有無判定部59)は、どの判断基準を採用して良否判断を行なうかを設定可能に構成されており、格納される判定基準の中から少なくとも一以上の判定基準が設定される。
【0106】
例えば、オープン・スモール判定部58が接合部15の接合状態の良否を判定する判定基準としては、接合部15の径、面積又は厚さや圧痕の深さが所定の範囲内にあるか、又は溶接欠陥部28の一例であるブローホールの面積が所定値(割合)以下であるか等が挙げられる。圧接有無判定部59が行なう圧接有無判定を行う基準としては、超音波のエコーの強度の絶対値、相対値等がある。また、良否判定をする際に設定される閾(しきい)値についても事前に複数設定しておき、適宜切り替えられるようにしても良い。
【0107】
このように構成される良否判定部37は、指定された判定対象と判定基準を比較し、判定基準を満たしているかを判定する。判定対象は1つ以上あればどの組合せでも判定できる。接合部15の接合状態の良否についての判定結果は、表示部38へ出力され表示される。なお、良否判定部37に格納される各種情報はユーザの情報更新操作によって事後的に更新することも可能である。
【0108】
次に、三次元超音波検査装置10の作用を説明する。
【0109】
この三次元超音波検査装置10による検査対象物14の検査領域(ターゲット領域)である接合部15の超音波探傷画像を得るために、マトリクスセンサである超音波トランスデューサ11を作動させる。
【0110】
超音波トランスデューサ11は、信号発生部12で発生したパルス状あるいは連続の駆動信号を駆動素子選択部13により、マトリクス状の各圧電振動子20に所要のタイミングをとって、1個ずつあるいは複数個ずつ順次加える。駆動素子選択部13により作動する圧電振動子20が選択され、選択された圧電振動子20mnに駆動信号(電気信号)が作用すると、圧電振動子20mnは圧電変換され、所要周波数の超音波が発振せしめられる。
【0111】
選択された圧電振動子20mnから発振された超音波Uは、音響伝播媒体23を通って検査対象物14の検査領域(接合部)15に所要の拡がりをもって入射される。検査対象物14の検査領域15に入射された超音波Uは、検査対象物14内部の密度の異なる境界層に順次到達し、面照射される。検査対象物14の内部に面(二次元)照射された超音波は、境界層で一部が反射し、その反射波は反射エコーとなって音響伝播媒体23を通ってマトリクスセンサ11に入射され、マトリクスセンサ11の各圧電振動子20に入射される。
【0112】
反射エコーを入射したマトリクスセンサ11の各圧電振動子20は、圧電変換素子として作用し、反射エコーの大きさに応じた電気信号を信号検出回路16に出力する。マトリクスセンサ11を構成する超音波トランスデューサ11には、多数の圧電振動子20mnが設けられており、各圧電振動子20mnから発振位置を異にして順次発振された超音波は、検査対象物14の接合部(検査領域)で次々と反射し、反射エコーとなってマトリクスセンサ11に入射され、このマトリクスセンサ11の各圧電振動子20から信号検出回路16に反射エコーの電気信号となって次々に送信される。
【0113】
信号検出回路16に送られた反射エコーの電気信号は、続いて信号処理部17に入射され、この信号処理部17で反射エコーの電気信号が信号処理され、検査対象物14の検査領域である接合部15の並列プロセッサ33および統合プロセッサである三次元画像生成部34により、三次元画像化データが作成される。
【0114】
その際、信号処理部17には、並列プロセッサ33が備えられ、信号処理部17に入力された反射エコーの電気信号を並列プロセッサ33で並列的に演算処理されているので、演算処理を短時間で迅速に行なうことができる。
【0115】
信号処理部17で生成された三次元画像化データから、三次元画像生成部34は、超音波トランスデューサ11から検査対象物14を見て正面の方向と、正面と直交する二つの側面に対して垂直な方向の計三方向から三次元超音波画像化データを透視すると共に、三次元超音波画像化データのうち透視方向に重なった画像化データのうち最も値の大きいデータを平面に投影することで各方向の三枚の平面画像を生成する。
【0116】
正面と直交する二つの側面の画像化データには、接合部15を有する複数の平板状検査対象物14の厚さ方向の情報が多数含まれており、接合されていない非接合部位では超音波トランスデューサ11から見て一枚目の平板状構造物14aの底面からの反射強度が高いことからこの平板状構造物14aの底面部位置が確定できる。一方、複数の平板状検査対象物14が接合されている部位では超音波の透過率が高いことから最も反射強度が高い部位として複数の平板状検査対象物14の底面部29位置が確定できる。
【0117】
三次元画像化データIから接合部データ処理部35(35A)は、各(x,y)に対する深さ方向(z方向)の強度分布の第1ピークおよび第2ピークを検出することができ、検出した結果は接合部画像生成部36へ送られる。接合部画像生成部36では検出された第1ピークおよび第2ピークの間の距離を算出して各(x,y)について反射が生じている深さを求めて接合部15の三次元画像を生成する。ユーザはこの接合部画像を見れば、接合部15の輪郭形状、大きさおよび位置や溶接欠陥部28の輪郭形状、大きさおよび位置を容易に把握することができる。接合部画像生成部36で生成された接合部15の三次元画像および計測結果は良否判定部37および表示部38へ出力される。
【0118】
良否判定部37では、接合部画像生成部36で生成された接合部15の三次元画像、計測結果を受け取り、まず、オープン・スモール判定部58がオープン・スモール判定を行う。この段階でオープン状態やスモール状態にある検査対象物14を検査合格対象から除外し、オープン・スモール判定で合格した検査対象物14についてのみ圧接有無判定部59が圧接有無判定行なう。
【0119】
接合部画像生成部36で生成された接合部15の三次元画像、計測結果、オープン・スオープン・スモール判定の結果および圧接有無判定の結果の少なくとも何れかを含む接合部15の接合状態の良否についての判定結果は、表示部38へ出力され表示される。
【0120】
このように構成される三次元超音波検査装置10によれば、超音波による内部検査の精度を向上し、検査の自動判定をすることができる。また、接合部画像を見れば、接合部15の接合状態や溶接欠陥部28の良否及びその範囲を一見して把握することができる。さらに、従来では斜めに画像が切り取られたことにより、接合部15を正しく判定できない場合でも、減衰補正処理をすることによって画像が斜めの状態で生成されるのを回避することができる。
【0121】
なお、本発明に係る三次元超音波検査装置は、上記実施の形態で説明したものに限定されず、種々の変形が考えられる。
【0122】
三次元超音波検査装置の一実施形態では、三次元画像化装置10の中に信号処理部17、表示処理装置18とを備える構成にしたが、それぞれ独立したコンピュータで実現してもよい。また、信号処理部17の三次元画像生成部34は、表示処理装置18の中にシフトさせて備えてもよい。さらに、表示処理装置18の接合部データ処理部35,35Aは、信号処理部17の中にシフトさせて備えてもよい。
【0123】
コンピュータは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づき、本実施形態における各処理を実行するものであって、パソコンなどの一つからなるコンピュータ装置、複数のコンピュータ装置がネットワーク接続されたコンピュータシステムなどのいずれの構成であってもよい。また、コンピュータとは、パーソナルコンピュータ(パソコン)に限らず、通信機器、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコンなども含み、プログラムによって本発明の機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0124】
また、表示処理装置18の内部構成は、ソフトウェアで実現できる。ソフトウェアは、フレキシブルディスク等のコンピュータが読み出し可能な記憶媒体に記憶されていてもよく、また、ソフトウェア(プログラム)単体としてLANやインターネット等のネットワーク上を伝送されるものでもよい。この場合、記憶媒体に記憶されたソフトウェア(プログラム)をコンピュータが読み出したり、LANやインターネット上のサイト(サーバ)からコンピュータがダウンロードしてハードディスクにインストールすることにより、コンピュータにおける処理が可能になる。
【0125】
つまり、本発明におけるソフトウェア(プログラム)は、コンピュータと独立した記憶媒体に記憶されているものだけに限らず、LANやインターネット等の伝送媒体を介して流通されるものも含まれる。
【0126】
なお、プログラムは、メモリ、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク(CD−ROM、CD−R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリ等の記憶媒体に、コンピュータが読取り可能に記憶されているものであれば、その言語形式、記憶形式はいずれの形態であってもよい。
【0127】
また、記憶媒体からコンピュータにインストールされたプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)や、データベース管理ソフト、ネットワークソフト等のMW(ミドルウェア)等が本実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。
【0128】
さらに、記憶媒体は、コンピュータと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝送されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記憶媒体も含まれる。また、記憶媒体は一つに限らず、複数の媒体から本実施形態における処理が実行される場合も本発明における記憶媒体に含まれ、媒体構成はいずれの構成であってもよい。
【符号の説明】
【0129】
10・・・3次元超音波検査装置、11・・・超音波トランスデューサ(マトリクスセンサ)、12・・・信号発生部、13・・・駆動素子選択部、14・・・検査対象物、14a,14b,14c・・・板状構造物、15・・・接合部(溶接部、検査領域、ターゲット領域)、16・・・信号検出回路、17・・・信号処理部、18・・・表示処理装置、20(20mn)・・・圧電振動子、21・・・基板、23・・・音響伝播媒体、24・・・カップラント、25・・・凹部(打痕部)、26・・・非接合部、27・・・溶融凝固部、28・・・溶接欠陥部、29・・・底面、31a,31b,…,31i・・・増幅器、32a,32b,…,32i・・・A/D変換器、33・・・並列プロセッサ、34・・・三次元画像生成部(統合プロセッサ)、35,35A・・・接合部データ処理部、36・・・接合部画像生成部、37・・・良否判定部、38・・・表示部、40a,40b,…,40i・・・内部メモリ、41a,41b,…,41i 演算回路、44・・・画像統合処理部、45・・・境界抽出処理部、46・・・形状データ記憶部、47・・・テーブルデータ格納部、51・・・第1ピーク検出部、52・・・第2ピーク検出部、53・・・減衰補正処理部(第1の補正処理部)、54・・・逆補正処理部(第2の補正処理部)、56・・・板組み情報記憶部、58・・・オープン・スモール判定部、59・・・圧接有無判定部、61・・・第1ピーク、62・・・第2ピーク、71・・・第1ピーク検出部、75…検査対象物の表面を示す線、76…接合していない板状構造物の底面を示す線、77・・・検査対象物の底面を示す線、78・・・直接反射領域、79・・・多重反射領域、80…オープン・スモール判定良領域、82・・・圧接有無判定領域、ta,tb,tc・・・板状構造物の厚さ、m1,m2,m3・・・メッシュ、R1,R2,R3,R4,R5・・・反射波。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電振動子をマトリクス状あるいはアレイ状に配設した超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサの複数の圧電振動子のうち、超音波を発振させる圧電振動子を順次選択する駆動素子選択部と、
前記駆動素子選択部に選択された圧電振動子から発振される超音波を音響伝播媒体を介して検査対象物の接合部に入射させ、この接合部からの反射エコーを受信し、その反射エコーの電気信号を検出する信号検出回路と、
この信号検出回路で検出された電気信号を信号処理し、前記検査対象物の内部に設定された三次元画像化領域内に区画されたメッシュに対応させて三次元画像化データを生成する信号処理部と、
前記信号処理部で生成された三次元画像化データの深さ方向(z方向)の強度分布の基準深さよりも深い位置に最初に出現する第1ピークを検出する第1ピーク検出部と、
前記第1ピークの出現位置よりも深い位置に最初に出現する第2ピークを検出する第2ピーク検出部と、
前記第1ピークの出現位置と前記第2ピークの出現位置との間の深さ方向の距離をx−y平面の各々の位置にマッピングして接合部の三次元画像を生成する接合部画像生成部と、
前記接合部画像生成部で生成された接合部の三次元画像および予め記憶された判定基準に従って前記接合部が隙間無く所定の大きさ以上となっているか否かを判定するオープン・スモール判定部と、
前記オープン・スモール判定部によって前記接合部が隙間無く所定の大きさ以上となっていると判定された前記接合部に対して圧接の有無を判定する圧接有無判定部と、
前記接合部画像生成部で生成された接合部の三次元画像と前記オープン・スモール判定部および圧接有無判定部の判定結果との少なくとも何れか一方を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする三次元超音波検査装置。
【請求項2】
前記接合部画像生成部は、前記接合部の三次元画像から前記検査対象物内の接合部の大きさ・位置および溶接欠陥部の大きさ・位置を検出して計測する機能を有し、前記検査対象物内の接合部の大きさ・位置および溶接欠陥部の大きさ・位置の計測結果を前記良否判定部および表示部へ出力することを特徴とする請求項1記載の三次元超音波検査装置。
【請求項3】
前記接合部画像生成部は、前記接合部の三次元画像からx−y平面に同程度と判断された深さの連続領域内に前記連続領域の深さとは異なる深さと判定された閉じた領域が存在する場合、前記連続領域内の閉じた領域を溶接欠陥部として位置・大きさを特定することを特徴とする請求項1記載の三次元超音波検査装置。
【請求項4】
前記検査対象の板組みを構成する各板の厚さの情報を有する板組み情報を記憶する板組み情報記憶部をさらに備え、
前記接合部画像生成部は、x−y平面の各々について前記第1ピークの出現位置と前記第2ピークの出現位置との間の深さ方向の距離を算出した位置が、この位置と前記板組み情報記憶部に記憶される板組み情報を参照して得られる前記板組みの各結合位置との関係から前記板組みの各結合位置の何れに位置するかを判断してマッピングするように構成されることを特徴とする請求項1記載の三次元超音波検査装置。
【請求項5】
前記検査対象物の三次元画像化データの深さ方向(z方向)の強度分布に深さが増すにつれて強度を増幅する補正処理を実行する第1の補正処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の三次元超音波検査装置。
【請求項6】
前記検査対象物の三次元画像化データの深さ方向(z方向)の強度分布に深さが増すにつれて強度を強制的に減衰させる補正処理を実行する第2の補正処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の三次元超音波検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−117877(P2011−117877A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276868(P2009−276868)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】